説明

電動機

【課題】清掃周期の延長、および油の補給周期、交換周期の延長を図ることが可能な電動機を提供する。
【解決手段】電動機は、密閉ケース内に取付けられた固定子2と、ケース内に延在し、その両端部が軸受6、7に回転自在に支持された回転軸8と、回転軸の中央部に取付けられ回転子9と、各軸受の近傍でケースの外面側に設けられ、潤滑油15を貯留する給油室25、26と、それぞれ回転軸に固定され、潤滑油に接触した状態で給油室内に配設され、回転により潤滑油を軸受に供給する給油部材27と、それぞれ回転子と軸受との間で回転軸に固定され、回転軸と一体に回転自在な一対の放熱円板23、24と、各放熱円板の外周縁とケース内面との間の環状の微小隙間により形成されたラビリンス構造部X、Yと、各放熱円板のケース内面と対向する壁面とケース内面との間に規定され、ケースに形成された連通口を介して機外空間に連通した環状の流通空間44、46と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両を駆動する全閉形の電動機、特に、油潤滑方式の電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用駆動装置、例えば、鉄道車両用の駆動装置は、車輪の近傍で台車内にそれぞれ設置された主電動機と、これらの主電動機を駆動する制御装置と、を備えている。主電動機の出力軸はギア列を介して車輪に接続され、車輪を駆動する。駆動用電動機は、従来より、外気を機内に流通させて冷却を行う自己通風冷却構造を有し、回転軸を支持している軸受は充填グリースで潤滑される。
【0003】
鉄道車両用の電動機は台車に搭載されているため、様々な外部環境により、粉塵、雨、雪など外部からの異物に曝される場合が少なくない。そのため、電動機は、分解を伴う定期的なメインテナンスが必要となり、外部からの異物により汚損した機内の清掃が推奨されている。
【0004】
その一方、メインテナンス周期の延長、即ち、省メインテナンス性の高い電動機のニーズが高まっている。このようなニーズを満たすため、機内の汚損防止や潤滑グリースの更新周期の延長を図る全閉形で、かつ軸受油潤滑方式の駆動用電動機の開発が進められている(例えば、特許文献1)。
【0005】
駆動用電動機は、円筒状のフレームの内周側に設けられステータコイルを有するステータ鉄心と、フレームの両端側に取付けられ、密閉ケースを構成したブラケットおよびハウジングと、を備え、これらブラケットおよびハウジングにそれぞれ軸受が内蔵されている。ケース内には、ロータ軸が延在され、その両端部は、軸受によって回転自在に支持されている。ロータ軸の中央部にロータ鉄心が取付けられ、ステータ鉄心の内側に位置している。また、ケース内で、ロータ軸の一端部に、内気循環ファンが取付けられている。
【0006】
ブラケットの機外側位置に給油室が構成されている。給油室の内部のロータ軸上に給油円板が取付けてあり、給油円板の下方の一部分は、給油室内の底部に溜めた潤滑油に浸っている。給油室内の上部に油受けが設けられ、油受けの底部は供給管を通して軸受の上方空間に連通している。軸受の下方空間は、戻し管によって給油室の下方内部と連通している。また、フレームの機外上部に冷却ダクトが取付けられ、この冷却ダクトの内部は電動機の機内空間と連通している。
【0007】
駆動用電動機の運転時には、内気循環ファンの回転によって機内空気が冷却ダクト内を流通しながら機内空間を循環し、機内を冷却してする。また、給油円板の回転によって給油室内底部の潤滑油が上方に掻き上げられ、軸受内に流入してこれを潤滑する。同時に、上方の油受けに溜った潤滑油は、供給管内を通って反対側の軸受に流入してこれを潤滑する。他方の軸受から排出した潤滑油は、戻し管を通って給油室内に還元する。
【0008】
上記のように構成された駆動用電動機によれば、全閉冷却形で外気が機内を流通しないため、機内の汚損がなく、分解清掃保守が不要になる。また、軸受を油潤滑しているため、従来のグリース潤滑に比べて、潤滑剤の更新保守周期を延ばすことができる。
【特許文献1】特開2003−32946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した駆動用電動機では、内気循環ファンの回転によって、機内の軸受ラビリンス部分に大きな負圧が発生する。そのため、軸受部に発生した霧状のオイルミストが軸受ラビリンスを介して機内側に流入し、次第に機内各部をオイルで汚損する。また、オイルミストが漏れ出すため、給油箱内に溜めている潤滑油の消耗が早くなり、補給の期間が早くなってしまう。
【0010】
全閉型の電動機では、電動機全体が一様に温度上昇するため、軸受部および給油室も温度が高くなり、潤滑油の熱劣化が進んで早期の油交換が必要となる問題もある。
【0011】
この発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、オイルミストによる機内の汚損を防止しするとともに潤滑油の温度上昇を低減し、清掃周期の延長、および油の補給周期、交換周期の延長を図ることが可能な電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の態様に係る電動機は、密閉されたケースと、前記ケース内に取付けられた固定子と、前記固定子の両側で前記ケースに内蔵された一対の軸受と、前記ケース内に延在し、その両端部が前記軸受に回転自在に支持された回転軸と、前記回転軸の中央部に取付けられ、前記固定子に対向した回転子と、前記各軸受の近傍で前記ケースの外面側に設けられ、潤滑油を貯留する給油室と、前記回転軸と一体的に回動自在にそれぞれ回転軸に固定されているとともに、前記潤滑油に接触した状態で前記給油室内に配設され、回転することにより前記潤滑油を前記軸受に供給する給油部材と、それぞれ前記回転子と前記軸受との間で前記回転軸に固定され、前記回転軸と一体に回転自在な一対の放熱円板と、
前記各放熱円板の外周縁と前記ケース内面との間の環状の微小隙間により形成されたラビリンス構造部と、前記各放熱板の前記ケース内面と対向する壁面と前記ケース内面との間に規定されているとともに、前記ケースに形成された連通口を介して機外空間に連通した環状の流通空間と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
この発明の様態によれば、オイルミストによる機内の汚損を防止しするとともに潤滑油の温度上昇を低減し、清掃周期の延長、および油の補給周期、交換周期の延長を図ることが可能な電動機が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施形態に係る油潤滑方式の全閉型電動機について詳細に説明する。
【0015】
始めに、全閉型電動機を備えた鉄道車両について説明する。図5は鉄道車両を概略的に示している。この鉄道車両は、それぞれ車輪50が設けられた一対の台車フレーム52と、台車フレーム上に空気ばね54を介して支持された車両55と、を備えている。各台車フレーム52上で車輪50の近傍には主電動機として機能する電動機40が載置されている。電動機40は、図示しないカップリングおよびギアボックスを介して回転力を車輪50に伝達できるように接続されている。車輪50は図示しないレール上に載置されている。車輪50、台車フレーム52、空気ばね54で構成される構造を総称して台車と呼ぶ。
【0016】
車両55の天井側にはパンタグラフ57が設けられ、このパンダグラフは架線58と接触している。架線58からパンタグラフ57に供給された電力は、図示しない制御装置に供給される。電力は制御装置により直流から交流に変換され、図示しない配線を通して、各電動機40に供給される。電動機40は供給された電力により稼動し、カップリングおよびギアボックスを介して車輪50を回転させる。これにより、車両55はレール上を走行する。
【0017】
次に、この発明の実施形態に係る全閉型電動機について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る潤滑油式の全閉型電動機を示す縦断面図、図2は、全閉型電動機の駆動側を示す正面図である。
【0018】
図1に示すように、全閉型電動機40は、円筒状のフレーム18を備え、その内周側に円筒状のステータ鉄心2が同心状に固定されている。ステータ鉄心2の両端面には、環状の一対の鉄心押さえ41a、41bが固定されている。ステータ鉄心2の駆動端側に位置した鉄心押さえ41aには、第1外周ブラケット19が取り付けられている。第1外周ブラケット19の内周側には、第1内周ブラケット21がボルトにて締結されている。第1内周ブラケット21の中央部に、第1軸受6が内蔵されている。第1外周ブラケット19および第1内周ブラケット21は、この発明における第1ブラケットを構成している。
【0019】
ステータ鉄心2の反駆動端側に位置した鉄心押さえ41bには、第2外周ブラケット20が取り付けられている。第2外周ブラケット20の内周側には、第2内周ブラケット(ハウジング)22がボルトにて締結されている。第2内周ブラケット22の中央部に、第2軸受7が内蔵されている。第2外周ブラケット20および第2内周ブラケット22は、この発明における第2ブラケットを構成している。
【0020】
そして、フレーム18、鉄心押え41a、41b、第1外周ブラケット19、第1内周ブラケット21、第2外周ブラケット20、第2内周ブラケット22により、内部が密閉されたケース(機体)が構成されている。
【0021】
ステータ鉄心2は、磁性材、例えば、珪素鋼板からなる環状の金属板を多数枚積層して構成されている。ステータ鉄心2の内周部には、それぞれ軸方向に延びた複数のスロットが形成され、これらのスロットにステータコイル3が埋め込まれている。ステータコイル3のコイルエンドはステータ鉄心2の両端面から軸方向に張り出している。ステータ鉄心2およびステータコイル3によりステータ(固定子)が構成されている。
【0022】
ステータ鉄心2の内径側には、隙間を置いて、円柱形状のロータ鉄心9が同軸的に配置されている。ロータ鉄心9の中心部には回転軸8が取り付けられ、その両端部は第1軸受6および第2軸受7によって回転自在に支持されている。これにより、回転軸8は、ケース内に同軸的に延在している。回転軸8の駆動側端部8aは機外に延出し、この部分に駆動歯車装置を接続するための継手が取り付けられる。
【0023】
ロータ鉄心9は、磁性材、例えば、珪素鋼板からなる環状の金属板を多数枚積層して構成されている。ロータ鉄心9は、回転軸8に取り付けられた一対の鉄心押え42a、42bにより、軸方向両側面から挟まれるように支持されている。鉄心押え板42a、42bは、環状に形成され、その外径は、ロータ鉄心9の外径よりも僅かに小さく形成されている。
【0024】
ロータ鉄心9の外周部には、それぞれ軸方向に延びる複数の溝が形成され、各溝には、ロータバー10が埋め込まれている。ロータバー10の両端部はロータ鉄心9から張出し、その張出部分をエンドリングで一体に接続して誘導電動機のかご形ロータを形成している。ステータコイル3に通電することにより、ロータ鉄心9が誘導されて回転し、回転軸8がロータ鉄心9と一体に回転される。
【0025】
駆動端側の第1軸受6とロータ鉄心9との間で回転軸8に第1放熱円板23が同軸的に取付けられ、回転軸8と一体に回転自在となっている。第1放熱円板23は、ほぼロート形状に形成され、ロータ鉄心9側から第1外周ブラケット19に向かって傾斜して延びている。第1放熱円板23の外周縁部と第1外周ブラケット19の機内側の張出部の内周部とは、円環状の微小間隙を置いて、互いに係合している。この円環状の微小間隙部は、互いに凹凸形状の二段構造に形成され、ラビリンス構造部Xを形成している。
【0026】
反駆動端側の第2軸受7とロータ鉄心9との間で回転軸8に第2放熱円板24が同軸的に取付けられ、回転軸8と一体に回転自在となっている。第2放熱円板24は、ほぼロート形状に形成され、ロータ鉄心9側から第2外周ブラケット20に向かって傾斜して延びている。第2放熱円板24の外周縁部と第2外周ブラケット20の機内側の張出部の内周部とは、円環状の微小間隙を置いて、互いに係合している。この円環状の微小間隙部は、互いに凹凸形状の二段構造に形成され、ラビリンス構造部Yを形成している。
【0027】
第1放熱円板23および第2放熱円板24は、ラビリンス構造部X、Yを介して、ケース内に密閉空間11を形成している。ステータ2およびロータ9は、密閉空間11内に配設されている。
【0028】
第1放熱円板23の第1軸受6側の壁面、つまり、第1放熱円板23の外面と、第1内周ブラケット21の内面、つまり、第1内周ブラケット21の第1放熱円板と対向する内面、とにより囲まれた円環状の流通空間(流通路)44がケース内に形成されている。第1軸受6は流通空間44によって囲まれている。この流通空間44は、第1放熱円板23により、機内内の密閉空間11から仕切られている。流通空間44は、第1内周ブラケット21に形成された複数個の入気口21aおよび複数個の排気口21bによって機外空間に連通している。入気口21aおよび排気口21bは、連通口として機能する。
【0029】
流通空間44内には、第1内周ブラケット21に固定されたロート状の仕切り部材21cが配設され、流通空間44を内周側空間44aと外周側空間44bとの2つに仕切っている。内周側空間44aおよび外周側空間44bは、回転軸8側に位置した内周側端で互いに連通している。内周側空間44aの外周側端は第1内周ブラケット21に形成された入気口21aを通して機外空間に連通し、外周側空間44bの外周側端は第1内周ブラケット21に形成された排気口21bを通して機外空間に連通している。
【0030】
第2放熱円板24の第2軸受7側の壁面、つまり、第2放熱円板24の外面、と第2内周ブラケット22の内面、つまり、第2放熱円板24と対向する内面と、により囲まれた円環状の流通空間(流通路)46が形成されている。第2軸受7は流通空間46によって囲まれている。この流通空間46は、第2放熱円板24により、機内の密閉空間11から仕切られている。流通空間46は、第2内周ブラケット22に形成された複数個の入気口22aおよび複数個の排気口22bによって機外空間に連通している。入気口22aおよび排気口22bは、連通口として機能する。
【0031】
流通空間46内には、第2内周ブラケット22に固定されたロート状の仕切り部材22cが配設され、流通空間46を内周側空間46aと外周側空間46bとの2つに仕切っている。内周側空間46aおよび外周側空間46bは、回転軸8側に位置した内周側端で互いに連通している。内周側空間46aの外周側端は第2内周ブラケット22に形成された入気口22aを通して機外空間に連通し、外周側空間46bの外周側端は第2内周ブラケット22に形成された排気口22bを通して機外空間に連通している。
【0032】
第1内周ブラケット21の中央部に設けられた第1軸受6の機外側には、キャップ状のカバー47が固定されている。回転軸8の駆動側端部8aは、カバー47を貫通して延びている。このカバー47と第1内周ブラケット21とにより、第1軸受6に隣接した給油室25が形成されている。給油室25の底部には、潤滑油15が充填されている。
【0033】
回転軸8の駆動側端部に給油部材としての給油円板27が取付けられ、潤滑油15に一部が浸漬された状態で、給油室25内に配設されている。給油円板27は、回転軸8と一体的に回転することにより、給油室25内の潤滑油15を掻き上げて第1軸受6に給油する。
【0034】
他方、第2内周ブラケット22の中央部に設けられた第2軸受7の機外側には、キャップ状のカバー48が固定され、回転軸8の反駆動側端部を覆っている。このカバー48と第2内周ブラケット22とにより、第2軸受7に隣接した給油室26が形成されている。給油室26の底部には、潤滑油15が充填されている。
【0035】
回転軸8の反駆動側端部に給油部材としての給油円板28が取付けられ、潤滑油15に一部が浸漬された状態で、給油室26内に配設されている。給油円板28は、回転軸8と一体的に回転することにより、給油室26内の潤滑油15を掻き上げて第2軸受7に給油する。
【0036】
図2に示すように、上記のように構成された電動機40は、フレーム18に設けられた取付腕部60を台車フレーム52にボルトで締結固定される。そして、電動機40は、回転軸8の駆動側端部8aに接続した継手を介して、電動機の回転力を歯車装置から車輪に伝達して車両を走行させる。
【0037】
次に、全閉型電動機40の動作及び作用効果について以下に説明する。
運転時、電動機40内に発生した熱は、フレーム18や第1、第2外周ブラケット19、20の外周面より機外に放出され、電動機が冷却される。また、機内の熱は、第1放熱円板23および第2放熱円板24から流通空間44、46に放出され、電動機が冷却される。
【0038】
第1および第2放熱円板23、24からの放熱により加熱された流通空間44、46内の空気は、それぞれの排気口21b、22bから機外に排気され、代りに入気口21a、22aから冷たい外気が流通空間44、46に流入する。これにより、流通空間44、46において外気の流通が生じ、第1および第2放熱円板23,24の熱が機外に放出される。同時に、第1軸受6および第2軸受7の熱は、流通空間44、46を流通する外気に放熱され、これらの軸受が冷却される。
【0039】
運転時、回転軸8と一体に第1放熱円板23および第2放熱円板24が回転するため、これら放熱円板表面のファン作用により、流通空間44、46内の空気は内径側から外径側に運ばれ、外気の流通が一層促進される。これにより、第1および第2放熱円板23、24の放熱効果が向上し、電動機の冷却効果が向上する。
【0040】
入気口21a、22aから流入する冷却外気は、仕切り部材21c、22cにより第1、第2放熱円板23、24の内径側に導入されるため、外気の流通が円滑に行われると共に、第1、第2放熱円板の放熱効果は向上する。
【0041】
また、運転時、給油円板27、28の回転によって給油室25、26内の潤滑油15が掻き上げられてそれぞれの第1、第2軸受6、7に供給され、軸受を潤滑する。第1、第2軸受6、7を潤滑した潤滑油は給油室25、26内に排出される。
【0042】
このように構成された全閉型電動機40によれば、第1、第2放熱円板23、24のラビリンス構造部は、常時外気が流通する流通空間44、46に接しているため、ラビリンス構造部に発生する負圧を低減することができる。これにより、第1、第2軸受6、7内のオイルミストがラビリンス構造部を介して機内に吸込まれることがなく、潤滑油による機内各部の汚損を防止することができる。同時に、油漏れを防止し、潤滑油の消耗を抑制することができる。
【0043】
また、第1、第2軸受と電動機の発熱部との間に、冷却外気が流通する流通空間44、46を形成することにより、これら流通空間の断熱効果と冷却作用によって軸受の温度上昇を大幅に抑制することができる。これにより、潤滑油の温度が低減し、油の熱劣化が防止され、油の交換周期を延ばすことが可能となる。
【0044】
以上のことから、オイルミストによる機内の汚損を防止しするとともに潤滑油の温度上昇を低減し、清掃周期の延長、および油の補給周期、交換周期の延長を図ることが可能な全閉形電動機が得られる。
【0045】
次に、この発明の第2の実施形態に係る全閉型電動機について説明する。なお、第2の実施形態において、前述した第1の実施形態と同一又は類似の部分には同一の符号を付してあり、重複する説明は一部省略する。
図3は、第2の実施形態に係る全閉型電動機の縦断面図、図4は、全閉型電動機の正面図である。
【0046】
第2の実施形態によれば、駆動側の第1内周ブラケット21の中央部に設けられた第1軸受6の機外側には、キャップ状のカバー47が固定されている。回転軸8の駆動側端部8aは、カバー47を貫通して延びている。このカバー47と第1内周ブラケット21とにより、第1軸受6に隣接した給油室25が形成されている。また、第1内周ブラケット21の機外側で給油室25の下方に、油タンク62が取り付けられ、この油タンク62により貯油室29bが形成されている。給油室25の底部は、通油孔29cにより貯油室29bに連通し、給油室25の中間部は、複数の通気孔29dにより貯油室29bの上部に連通している。
【0047】
給油室25の底部および貯油室29bに潤滑油15が溜められている。給油室25に溜められた潤滑油15の油面高さ、および貯油室29bに溜められた潤滑油15の油面高さは同一高さとなっている。油タンク62には、潤滑油15の油面高さを測定する油面計32、給油室25および貯油室29bに潤滑油を注入するための注入孔を閉じた給油栓33、および、給油室25および貯油室29bの潤滑油を排出するためのドレインを閉じた排油栓34が設けられている。
【0048】
回転軸8の駆動側端部に給油部材としての給油円板27が取付けられ、潤滑油15に一部が浸漬された状態で、給油室25内に配設されている。給油円板27は、回転軸8と一体的に回転することにより、給油室25内の潤滑油15を掻き上げて第1軸受6に給油する。
【0049】
第2内周ブラケット22の中央部に設けられた第2軸受7の機外側には、キャップ状のカバー48が固定され、回転軸8の反駆動側端部を覆っている。このカバー48と第2内周ブラケット22とにより、第2軸受7に隣接した給油室26が形成されている。給油室26の底部は、機外を通って延びた連通管31によって駆動側の貯油室29bに連通している。給油室26の底部には、貯油室29bの潤滑油が導入され、駆動側の給油室25と同じ油面高さに潤滑油が溜めてある。
【0050】
回転軸8の反駆動側端部に給油部材としての給油円板28が取付けられ、潤滑油15に一部が浸漬された状態で、給油室26内に配設されている。給油円板28は、回転軸8と一体的に回転することにより、給油室26内の潤滑油15を掻き上げて第2軸受7に給油する。
電動機40の他の構成は、前述した第1の実施形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
上記のように構成された全閉型電動機40では、前述した第1の実施例と同様に、軸受外部へのオイルミストの漏れ出しを防いで潤滑油の補給期間の延長を図り、また、軸受部の温度を低減して潤滑油の熱劣化を防止し、潤滑油の交換周期を延長する効果を発揮できる。同時に、貯油室29aに多量の潤滑油を貯留できることから、潤滑油の消耗に伴う給油室25、26内の油面の低下速度を遅くすることができ、その結果、潤滑油の補給期間を一層延ばすことができる。また、潤滑油の保持量を多くすることにより、軸受油滑に伴う潤滑油の劣化による油全体の劣化速度を遅くすることができ、潤滑油の交換周期を延長することが出来る。
【0052】
従来の構造では給油室の潤滑油の保持量を多くした場合、車両運転時の加速、減速や振動によって給油室内の多量の油が動揺し、給油円板に浸る潤滑油の油面高さが大幅に変動し、給油円板に掻き上げ給油量が過大となったり、逆に過小となったりして給油作用が不安定となる問題があった。本実施形態に係る電動機40によれば、給油室25、26内に溜められている潤滑油の量は少なく、車両運転時の油面の動揺の影響が少ない。すなわち、貯油室29b内の潤滑油が動揺しても給油室25、26内の潤滑油の変動は少なくなる。これにより、安定した給油作用を維持することができる。
【0053】
反駆動側の給油室26は、駆動側の貯油室29bおよび給油室25と連通管31によって連通しているため、給油室25と給油室26の油面高さは同一となる。そのため、単一の油面計32により両給油室25、26の油面管理を行うことができ、油面計32による油面点検管理が容易になる。更に、潤滑油の補給や潤滑油の交換も貯油室29bの給油栓33、排油栓34を介して行うことにより、駆動側の給油室25および反駆動側の給油室26に対する補給、交換を同時に行なうことができ、保守が容易になる。
【0054】
この発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0055】
この発明に係る電動機は、鉄道車両用の電動機に限らず、自動車用モータ、産業用モータ、発電機など種々の電動機に適用可能である。電動機の構成要素の材質、寸法等は、上述した実施形態に限定されることなく、必要に応じて種々選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る全閉型電動機を示す縦断面図。
【図2】図2は、前記全閉型電動機の正面図。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に係る全閉型電動機を示す縦断面図。
【図4】図4は、第2の実施形態に係る前記全閉型電動機の正面図。
【図5】図5は、全閉型電動機が搭載された鉄道車両を示す側面図。
【符号の説明】
【0057】
2…ステータ鉄心、3…ステータコイル、6…第1軸受、7…第2軸受、
8…回転軸、9…ロータ鉄心、11…密閉空間、15…潤滑油、
19…第1外周ブラケット、20…第2外周ブラケット、21…第1内周ブラケット、
22…第2内周ブラケット、21c、22c…仕切り部材、21a、22a…入気口、
21b、22b…排気口、23…第1放熱円板、24…第2放熱円板、
25、26…給油室、29b…貯油室、31…連通管、44、46…流通空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉されたケースと、
前記ケース内に取付けられた固定子と、
前記固定子の両側で前記ケースに内蔵された一対の軸受と、
前記ケース内に延在し、その両端部が前記軸受に回転自在に支持された回転軸と、
前記回転軸の中央部に取付けられ、前記固定子に対向した回転子と、
前記各軸受の近傍で前記ケースの外面側に設けられ、潤滑油を貯留する給油室と、
前記回転軸と一体的に回動自在にそれぞれ回転軸に固定されているとともに、前記潤滑油に接触した状態で前記給油室内に配設され、回転することにより前記潤滑油を前記軸受に供給する給油部材と、
それぞれ前記回転子と前記軸受との間で前記回転軸に固定され、前記回転軸と一体に回転自在な一対の放熱円板と、
前記各放熱円板の外周縁と前記ケース内面との間の環状の微小隙間により形成されたラビリンス構造部と、
前記各放熱板の前記ケース内面と対向する壁面と前記ケース内面との間に規定されているとともに、前記ケースに形成された連通口を介して機外空間に連通した環状の流通空間と、
を備えた電動機。
【請求項2】
それぞれ前記流通空間内に配設され、前記流通空間を外周側空間と内周側空間との2つに仕切った一対の仕切り部材を備え、
前記外周側空間および内周側空間は、前記回転軸側に位置した内周側端で互いに連通し、前記内周側空間の外周側端は前記ケースに形成された入気口によって機外空間に連通し、前記外周側空間の外周側端は前記ケースに形成された排気口によって機外空間に連通している請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
一方の給油室の底部と他方の給油室の底部とを連通し、前記2つの給油室間で潤滑油を流通する連通管を備えている請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項4】
少なくとも一方の給油室に隣接して前記ケースの外面側に設けられ潤滑油を貯留する貯油室と、前記給油室の底部と前記貯油室とを連通した通油孔と、を有し、
前記給油室内の潤滑油と前記貯油室内の潤滑油との油面高さが互いに等しい請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項5】
一方の給油室に隣接して前記ケースの外面側に設けられ潤滑油を貯留する貯油室と、前記一方の給油室の底部と前記貯留室の内部とを連通した通油孔と、他方の給油室の底部と前記貯留室の内部とを連通する連通管と、を備え、
前記2つの給油室内の潤滑油の油面高さと前記貯油室内の潤滑油の油面高さが等しい請求項1又は2に記載の電動機。
【請求項6】
前記ケースは、その内周側に固定子鉄心が取付けられた円筒状の支持フレームと、前記支持フレームの一端側および他端側にそれぞれ取付けられた第1ブラケットおよび第2ブラケットと、を有している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電動機。
【請求項7】
固定子を内蔵し、一対の軸受を有するケースと、
前記ケース内に延在し、その両端部が前記軸受に回転自在に支持された回転軸と、
前記回転軸の中央部に取付けられ、前記固定子に対向した回転子と、
前記回転軸の前記軸受と回転子との間に設けられ、ラビリンス構造部を介して、前記ケース内を密閉空間として形成する放熱円板と、
前記各軸受の近傍で前記ケースの外面側に設けられ、潤滑油を貯留する給油室と、
前記回転軸と一体的に回動自在にそれぞれ回転軸に固定されているとともに、前記潤滑油に接触した状態で前記給油室内に配設され、回転することにより前記潤滑油を前記軸受に供給する給油部材と、
前記各放熱板の外面と前記ケース内面とにより囲まれ、外気と連通する流通路と、
を備えた電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−93932(P2010−93932A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260797(P2008−260797)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】