説明

電動車両およびその制御方法

【課題】昇圧コンバータの昇圧が制限されている際に電動機を駆動するインバータの制御モードを切り替える際に生じ得るショックを抑制する。
【解決手段】昇圧コンバータがゲート遮断された状態で矩形波制御モードを用いて回生制御しているときには、モータトルク指令Tm*に基づいてインバータの制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに変更するモード変更車速Vchngを求め(S110)、モード変更車速Vchngが車両にショックを生じさせ得る範囲として予め定められた閾値Vref1未満のときには、昇圧コンバータにより昇圧を行ない、車速Vが閾値Vref1より若干大きな閾値Vref2未満に至ったときに制御モードを変更する(S150,S160)。これにより、インバータの制御モードを変更する際に生じ得るショックを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両およびその制御方法に関し、詳しくは、走行用の動力を入出力する電動機と、充放電可能な二次電池と、二次電池が接続された電池電圧系と電動機が接続された駆動電圧系とに接続されて駆動電圧系の電圧を電池電圧系の電圧以上に昇圧する昇圧コンバータと、を備える電動車両、および、こうした電動車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動車両としては、直流電源と、直流電源の電圧を昇圧する昇圧コンバータと、昇圧コンバータにより昇圧された電力を用いて駆動する走行用モータと、を備え、燃費スイッチにより低燃費走行指示が受け付けられたときには、昇圧コンバータの昇圧を禁止するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、燃費スイッチにより低燃費走行指示が受け付けられたときには昇圧コンバータの昇圧を禁止することにより、燃費の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−159214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、走行用のモータを駆動するためのインバータは、直流電圧に対してパルス幅を変調することによって得られる擬似的三相交流電圧を印加するパルス幅変調制御方式によるPWM制御モードと矩形波電圧を印加する矩形波制御方式による矩形波制御モードとを切り替えて制御される。こうした制御モードの切り替え時には、制御が不安定になることから、モータの回転数によっては車両に振動などのショックを生じさせる場合がある。
【0005】
本発明の電動車両およびその制御方法は、昇圧コンバータの昇圧が制限されている際に電動機を駆動するインバータの制御モードを切り替える際に生じ得るショックを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動車両およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電動車両は、
走行用の動力を入出力する電動機と、前記電動機を駆動するインバータと、充放電可能な二次電池と、前記二次電池が接続された電池電圧系と前記インバータが接続された駆動電圧系とに接続されて前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上に昇圧して前記駆動電圧系と前記電池電圧系とで電力の授受を行なう昇圧コンバータと、を備える電動車両であって、
前記昇圧コンバータによる昇圧が予め定められた所定制限電圧までに制限されているときに、前記電動機の回転数が前記インバータの制御モードを変更すると車両に振動などのショックを生じさせ得る回転数範囲として予め定められたショック回転数範囲内で前記インバータの制御モードを変更する必要が生じる所定モード変更必要状態に至っていないときには前記所定制限電圧の範囲内で前記電動機を駆動するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御し、前記所定モード変更必要状態に至ったときには前記所定制限電圧までの制限を一時的に解除して前記駆動電圧系の電圧を前記所定制限電圧より高い電圧とした状態で前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲内となる前に又は前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲外となった後に前記インバータの制御モードを変更するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の電動車両では、昇圧コンバータによる昇圧が予め定められた所定制限電圧までに制限されているときに、電動機の回転数がインバータの制御モードを変更すると車両に振動などのショックを生じさせ得る回転数範囲として予め定められたショック回転数範囲内でインバータの制御モードを変更する必要が生じる所定モード変更必要状態に至っていないときには、所定制限電圧の範囲内で電動機を駆動するよう昇圧コンバータとインバータとを制御する。これにより、燃費の向上を図ることができる。一方、昇圧制限スイッチがオンとされて昇圧コンバータによる昇圧が所定制限電圧までに制限されているときに、所定モード変更必要状態に至ったときには、所定制限電圧までの制限を一時的に解除して駆動電圧系の電圧を所定制限電圧より高い電圧とした状態で電動機の回転数がショック回転数範囲内となる前に又は電動機の回転数がショック回転数範囲外となった後にインバータの制御モードを変更するよう昇圧コンバータとインバータとを制御する。即ち、電動機の回転数がショック回転数範囲内となる前に昇圧コンバータによって駆動電圧系の電圧を所定制限電圧より高くなるよう昇圧してインバータの制御モードを変更するか、電動機の回転数がショック回転数範囲外となった後に昇圧コンバータによって駆動電圧系の電圧を所定制限電圧より高くなるよう昇圧してインバータの制御モードを変更するのである。これにより、電動機の回転数がショック回転数範囲外であるときにインバータの制御モードが変更されることになるから、電動機の回転数がショック回転数範囲内であるときにインバータの制御モードが変更されることによって生じ得る車両のショック(振動等によるショック)を抑制することができる。
【0009】
こうした本発明の電動車両において、前記制御手段は、前記電動機を回生制御して前記電動機の回転数が減少している際に前記所定モード変更必要状態に至ったときには、前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲内となる前に前記駆動電圧系の電圧を前記所定制限電圧より高い電圧とした状態として前記インバータの制御モードを変更するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御する手段である、ものとすることもできるし、前記制御手段は、前記電動機を力行制御して前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲内で増加している際に前記所定モード変更必要状態に至ったときには、前記駆動電圧系の電圧を前記所定制限電圧より高い電圧とした状態として前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲外となった後で前記インバータの制御モードを変更するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御する手段である、ものとすることもできる。
【0010】
また、本発明の電動車両において、前記昇圧制限スイッチは、前記昇圧コンバータによる前記駆動電圧系の昇圧を禁止するスイッチである、ものとすることもできる。また、前記ショック回転数範囲は、所定回転数以下の範囲である、ものとすることもできる。
【0011】
本発明の電動車両の制御方法は、
走行用の動力を入出力する電動機と、前記電動機を駆動するインバータと、充放電可能な二次電池と、前記二次電池が接続された電池電圧系と前記インバータが接続された駆動電圧系とに接続されて前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上に昇圧して前記駆動電圧系と前記電池電圧系とで電力の授受を行なう昇圧コンバータと、を備える電動車両の制御方法であって、
前記昇圧コンバータによる昇圧が予め定められた所定制限電圧までに制限されているときに、前記電動機の回転数が前記インバータの制御モードを変更すると車両に振動などのショックを生じさせ得る回転数範囲として予め定められたショック回転数範囲内で前記インバータの制御モードを変更する必要が生じる所定モード変更必要状態に至っていないときには前記所定制限電圧の範囲内で前記電動機を駆動するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御し、前記所定モード変更必要状態に至ったときには前記所定制限電圧までの制限を一時的に解除して前記駆動電圧系の電圧を前記所定制限電圧より高い電圧とした状態で前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲内となる前に又は前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲外となった後に前記インバータの制御モードを変更するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御する、
ことを特徴とする。
【0012】
この本発明の電動車両の制御方法では、前記昇圧コンバータによる昇圧が予め定められた所定制限電圧までに制限されているときに、電動機の回転数がインバータの制御モードを変更すると車両に振動などのショックを生じさせ得る回転数範囲として予め定められたショック回転数範囲内でインバータの制御モードを変更する必要が生じる所定モード変更必要状態に至っていないときには、所定制限電圧の範囲内で電動機を駆動するよう昇圧コンバータとインバータとを制御する。これにより、燃費の向上を図ることができる。一方、昇圧制限スイッチがオンとされて昇圧コンバータによる昇圧が所定制限電圧までに制限されているときに、所定モード変更必要状態に至ったときには、所定制限電圧までの制限を一時的に解除して駆動電圧系の電圧を所定制限電圧より高い電圧とした状態で電動機の回転数がショック回転数範囲内となる前に又は電動機の回転数がショック回転数範囲外となった後にインバータの制御モードを変更するよう昇圧コンバータとインバータとを制御する。即ち、電動機の回転数がショック回転数範囲内となる前に昇圧コンバータによって駆動電圧系の電圧を所定制限電圧より高くなるよう昇圧してインバータの制御モードを変更するか、電動機の回転数がショック回転数範囲外となった後に昇圧コンバータによって駆動電圧系の電圧を所定制限電圧より高くなるよう昇圧してインバータの制御モードを変更するのである。これにより、電動機の回転数がショック回転数範囲外であるときにインバータの制御モードが変更されることになるから、電動機の回転数がショック回転数範囲内であるときにインバータの制御モードが変更されることによって生じ得る車両のショック(振動等によるショック)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】モータ32やインバータ34を中心とした電機駆動系の構成図である。
【図3】エコスイッチ69がオンとされている状態で矩形波制御モードを用いてモータ32を回生制御しているときに電子制御ユニット50により実行される回生時制御モード変更制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】エコスイッチ69がオンとされている状態でPWM制御モードを用いてモータ32を力行制御しているときに電子制御ユニット50により実行される力行時制御モード変更制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】回生時制御モード関係マップの一例とモード変更車速Vchngを導出する様子の一例を示す説明図である。
【図6】力行時制御モード関係マップの一例とモード変更車速Vchngを導出する様子の一例を示す説明図である。
【図7】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図8】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、例えば同期発電電動機として構成されて駆動輪26a,26bにデファレンシャルギヤ24を介して接続された駆動軸22に動力を入出力可能なモータ32と、モータ32を駆動するためのインバータ34と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ36と、インバータ34が接続された電力ライン(以下、高電圧系電力ラインという)42とバッテリ36が接続された電力ライン(以下、電池電圧系電力ラインという)44とに接続されて高電圧系電力ライン42の電圧VHを電池電圧系電力ライン44の電圧VL以上かつ最大許容電圧VHmax以下の範囲内で調節すると共に高電圧系電力ライン42と電池電圧系電力ライン44との間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータ40と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット50と、を備える。ここで、最大許容電圧VHmaxは、後述のコンデンサ46の耐圧以下の電圧として予め定められたものを用いることができる。
【0016】
モータ32は、永久磁石が埋め込まれたロータと三相コイルが巻回されたステータとを備える周知の同期発電電動機として構成されており、回転に伴って逆起電圧を発生する。インバータ34は、図2のモータ32やインバータ34を中心とした電機駆動系の構成図に示すように、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT11〜T16と、トランジスタT11〜T16に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16と、により構成されている。トランジスタT11〜T16は、高電圧系電力ライン42の正極母線と負極母線とに対してソース側とシンク側となるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータ32の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。したがって、インバータ34に電圧が作用している状態でトランジスタT11〜T16のオン時間の割合を制御することにより、三相コイルに回転磁界を形成でき、モータ32を回転駆動することができる。高電圧系電力ライン42の正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ46が接続されている。
【0017】
昇圧コンバータ40は、図2に示すように、2つのトランジスタT31,T32とトランジスタT31,T32に逆方向に並列接続された2つのダイオードD31,D32とリアクトルLとからなる昇圧コンバータとして構成されている。2つのトランジスタT31,T32は、それぞれ高電圧系電力ライン42の正極母線と高電圧系電力ライン42および電池電圧系電力ライン44の負極母線とに接続されており、その接続点にリアクトルLが接続されている。また、リアクトルLと高電圧系電力ライン42および電池電圧系電力ライン44の負極母線とにはそれぞれバッテリ36の正極端子と負極端子とが接続されている。したがって、トランジスタT31,T32をオンオフ制御することにより、電池電圧系電力ライン44の電力を昇圧して高電圧系電力ライン42に供給したり、高電圧系電力ライン42の電力を降圧して電池電圧系電力ライン44に供給したりすることができる。リアクトルLと高電圧系電力ライン42および電池電圧系電力ライン44の負極母線とには平滑用のコンデンサ48が接続されている。
【0018】
電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52の他に処理プログラムを記憶するROM54と、データを一時的に記憶するRAM56と、図示しない入出力ポートと、を備える。電子制御ユニット50には、モータ32のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ32aからのモータ32のロータの回転位置や、モータ32とインバータ34との接続ライン(電力ライン)に取り付けられた図示しない電流センサからの相電流,バッテリ36の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧Vb,バッテリ36の出力端子に接続された電力ラインに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ36に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度,コンデンサ46の端子間に取り付けられた電圧センサ46aからのコンデンサ46の電圧(高電圧系電力ライン42の電圧)VHやコンデンサ48の端子間に取り付けられた電圧センサ48aからのコンデンサ48の電圧(電池電圧系電力ライン44の電圧)VL,イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号,シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSP,アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ68からの車速V,運転席近傍に取り付けられて燃費向上運転を指示するエコスイッチ69からのスイッチ信号ESWなどが入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット50からは、インバータ34のトランジスタT11〜T16へのスイッチング制御信号や昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、電子制御ユニット50は、回転位置検出センサ32aからのモータ32のロータの回転位置に基づいてモータ32の回転数Nmも演算している。
【0019】
こうして構成された実施例の電気自動車20は、図示しない駆動制御ルーチンにより駆動制御されている。駆動制御としては、エコスイッチ69からのスイッチ信号ESWがオフのときには、アクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Accと車速センサ68からの車速Vとに応じて駆動軸22に出力すべき要求トルクTr*を設定し、設定した要求トルクTr*をモータ32から出力すべきトルク指令Tm*として設定し、設定したトルク指令Tm*と回転数Nmとからなる動作点でモータ32を駆動するのに必要な電圧を高電圧系電力ライン42の目標電圧VH*として設定し、設定したトルク指令Tm*でモータ32が駆動されるようインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御すると共に高電圧系電力ライン42の電圧VHが目標電圧VH*となるよう昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32をスイッチング制御することが行なわれる。一方、エコスイッチ69からのスイッチ信号ESWがオフのときには、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32をゲート遮断するよう昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32を制御すると共に、アクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Accと車速センサ68からの車速Vとに応じて駆動軸22に出力すべき要求トルクTr*を設定し、設定した要求トルクTr*をモータ32から出力すべきトルク指令Tm*として設定し、電池電圧系電力ライン44の電圧VLの範囲内で設定したトルク指令Tm*でモータ32が駆動されるようインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御することが行なわれる。
【0020】
インバータ34のトランジスタT11〜T16は、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいて、モータ32の回転数Nmが比較的小さいときやトルク指令Tm*が比較的小さいときにはPWM制御モードによってスイッチング制御され、モータ32の回転数Nmが比較的大きいときやトルク指令Tm*が比較的大きいときには矩形波制御モードによってスイッチング制御される。なお、PWM制御モードは、三角波比較によるパルス幅変調(PWM)制御における三角波の振幅以下の振幅で正弦波状の出力電圧指令値を生成して変換した擬似的三相交流電圧としてのPWM信号でインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチングする制御モードであり、矩形波制御モードは、トルク指令に応じた電圧位相の矩形波電圧でインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチングする制御モードである。モータ32やインバータ34の特性として、PWM制御モードの方が矩形波制御モードに比してモータ32の出力応答性や制御性が良くなり、出力可能なトルクが小さくなり、インバータ34のスイッチング損失などの損失が大きくなることが分かっているから、低回転数低トルクの領域では、PWM制御モードを用いてインバータ34を制御することにより、モータ32の出力応答性や制御性を良くすることができ、高回転数高トルク領域では、矩形波制御モードを用いてインバータ34を制御することにより、より大きなトルクを出力可能とすると共にインバータ34のスイッチング損失などの損失を低減することができる。
【0021】
次に、こうして構成された実施例の電気自動車20の動作、特に、エコスイッチ69がオンとされているときにインバータ34の制御モードを変更する際の動作について説明する。上述したように、エコスイッチ69がオンのときには、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32はゲート遮断されるから、インバータ34(高電圧系電力ライン42)には電池電圧系電力ライン44の電圧VLがそのまま印加されることになり、電池電圧系電力ライン44の電圧VLによりモータ32が駆動制御されることになる。したがって、インバータ34の制御モードは、モータ32の回転数Nmやトルク指令Tm*が比較的小さい状態でPWM制御モードと矩形波制御モードとが変更されることになる。なお、エコスイッチ69がオンのときに昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32をゲート遮断することにより昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32のスイッチング損失を低減することができ、インバータ43を矩形波制御モードを用いて制御する頻度が高くなることによりインバータ34のスイッチング損失を低減することができる。
【0022】
図3はエコスイッチ69がオンとされている状態で矩形波制御モードを用いてモータ32を回生制御しているときに電子制御ユニット50により実行される回生時制御モード変更制御ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図4はエコスイッチ69がオンとされている状態でPWM制御モードを用いてモータ32を力行制御しているときに電子制御ユニット50により実行される力行時制御モード変更制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。まず、図3を用いてエコスイッチ69がオンとされている状態で矩形波制御モードを用いてモータ32を回生制御しているときに制御モードを変更する際の制御について説明し、その後、図4用いてエコスイッチ69がオンとされている状態でPWM制御モードを用いてモータ32を力行制御しているときに制御モードを変更する際の制御について説明する。なお、矩形波制御モードを用いてモータ32を回生制御しているときに制御モードを変更する際としては、走行中に運転者がブレーキペダル65を踏み込んだことにより矩形波制御モードを用いてモータ32を回生制御し、その後、制動力によりモータ32の回転数Nm(車速V)が小さくなったことによって矩形波制御モードからPWM制御モードに切り替える状態を想定することができ、PWM制御モードを用いてモータ32を力行制御しているときに制御モードを変更する際としては、停車時や低車速時から運転者がアクセルペダル63を踏み込んだことによりPWM制御モードを用いてモータ32を力行制御(加速用のトルクを出力する制御)し、その後、加速したことによりモータ32の回転数Nm(車速V)が大きくなったことによってPWM制御モードから矩形波制御モードに切り替える状態を想定することができる。
【0023】
図3の回生時制御モード変更制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50のCPU52は、まず、モータ32のトルク指令Tm*と車速Vとを入力し(ステップS100)、回生制御時におけるモータ32のトルクTmと車速Vと制御モードとの関係を示す回生時制御モード関係マップとトルク指令Tm*とに基づいて矩形波制御モードからPMW制御モードへの変更が必要となるモード変更車速Vchngを設定する(ステップS110)。図5に回生時制御モード関係マップの一例を示す。図5の破線に示すように、マップとトルク指令Tm*とからモード変更車速Vchngを導出することができる。
【0024】
こうしてモード変更車速Vchngを設定すると、モード変更車速Vchngが閾値Vref1未満であるか否かを判定する(ステップS120)。ここで、閾値Vref1は、矩形波制御モードからPWM制御モードに変更すると車両に振動などのショックを生じさせ得るとして予め定めたモータ32の回転数範囲の上限の回転数に対応する車速であり、実験などにより定めることができる。モード変更車速Vchngが閾値Vref1以上であると判定されたときには、車速Vがモード変更車速Vchng未満に至ったときに制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに変更しても車両にショックは生じないと判断し、車速Vがモード変更車速Vchng未満に至ったときに(ステップS130)、制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに変更して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。
【0025】
ステップS120でモード変更車速Vchngが閾値Vref1未満であると判定されたときには、車速Vがモード変更車速Vchng未満に至ったときに制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに変更すると車両にショックが生じ得ると判断し、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32のゲート遮断を解除してモータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに応じた昇圧を行ない(ステップS140)、車速Vが閾値Vref1より若干大きな閾値Vref2未満に至ったときに(ステップS150)、制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに変更して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。ここで、ステップS140の昇圧コンバータ40による昇圧は、車速Vが閾値Vref2であるときにPWM制御モードを用いた制御が可能な電圧までの昇圧が好ましい。閾値Vref2は、例えば閾値Vref1より5km/hや10km/hだけ大きな値を用いることができる。このように、昇圧コンバータ40によって昇圧し、矩形波制御モードからPWM制御モードに変更する車速Vを閾値Vref1未満から車両にショックを生じさせ得る範囲より大きな閾値Vref2とすることにより、インバータ34の制御モードを切り替える際に生じ得るショックを抑制することができる。
【0026】
図4の力行時制御モード変更制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50のCPU52は、まず、モータ32のトルク指令Tm*と車速Vとを入力し(ステップS200)、力行制御時におけるモータ32のトルクTmと車速Vと制御モードとの関係を示す力行時制御モード関係マップとトルク指令Tm*とに基づいてPWM制御モードから矩形波制御モードへの変更が必要となるモード変更車速Vchngを設定する(ステップS210)。図6に力行時制御モード関係マップの一例を示す。図6の破線に示すように、マップとトルク指令Tm*とからモード変更車速Vchngを導出することができる。
【0027】
こうしてモード変更車速Vchngを設定すると、モード変更車速Vchngが上述した閾値Vref1未満であるか否かを判定し(ステップS220)、モード変更車速Vchngが閾値Vref1以上であると判定されたときには、車速Vがモード変更車速Vchng以上に至ったときに制御モードをPWM制御モードから矩形波制御モードに変更しても車両にショックは生じないと判断し、車速Vがモード変更車速Vchng以上に至ったときに(ステップS230)、制御モードをPWM制御モードから矩形波制御モードに変更して(ステップS260)、本ルーチンを終了する。
【0028】
ステップS220でモード変更車速Vchngが閾値Vref1未満であると判定されたときには、車速Vがモード変更車速Vchng以上に至ったときに制御モードをPWM制御モードから矩形波制御モードに変更すると車両にショックが生じ得ると判断し、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32のゲート遮断を解除してモータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに応じた昇圧を行ない(ステップS240)、車速Vが閾値Vref1より若干大きな閾値Vref3以上に至ったときに(ステップS250)、制御モードをPWM制御モードから矩形波制御モードに変更して(ステップS260)、本ルーチンを終了する。ここで、ステップS240の昇圧コンバータ40による昇圧は、車速Vが閾値Vref3であるときにモータ32をトルク指令Tm*でPWM制御モードを用いて制御することが可能な電圧までの昇圧が好ましい。閾値Vref3は、例えば閾値Vref1より5km/hや10km/hだけ大きな値を用いることができ、閾値Vref2と同じでもよいし異なるものとしてもよい。このように昇圧コンバータ40によって昇圧し、PWM制御モードから矩形波制御モードに変更する車速Vを閾値Vref1未満から車両にショックを生じさせ得る範囲より大きな閾値Vref3とすることにより、インバータ34の制御モードを切り替える際に生じ得るショックを抑制することができる。
【0029】
以上説明した実施例の電気自動車20によれば、エコスイッチ69がオンとされたことにより昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32がゲート遮断された状態で矩形波制御モードを用いて回生制御しているときには、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに変更するモード変更車速Vchngを求め、モード変更車速Vchngが車両にショックを生じさせ得る範囲として予め定められた閾値Vref1未満のときには、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32のゲート遮断を解除してモータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに応じた昇圧を行ない、車速Vが閾値Vref1より若干大きな閾値Vref2未満に至ったときに制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに変更することにより、インバータ34の制御モードを変更する際に生じ得るショックを抑制することができる。また、エコスイッチ69がオンとされたことにより昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32がゲート遮断された状態でPWM制御モードを用いて力行制御しているときには、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードをPWM制御モードから矩形波制御モードに変更するモード変更車速Vchngを求め、モード変更車速Vchngが車両にショックを生じさせ得る範囲として予め定められた閾値Vref1未満のときには、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32のゲート遮断を解除してモータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに応じた昇圧を行ない、車速Vが閾値Vref1より若干大きな閾値Vref3以上に至ったときに制御モードをPWM制御モードから矩形波制御モードに変更することにより、インバータ34の制御モードを変更する際に生じ得るショックを抑制することができる。
【0030】
実施例の電気自動車20では、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードを変更するモード変更車速Vchngを求め、モード変更車速Vchngが車両にショックを生じさせ得る範囲として予め定められた閾値Vref1未満であるか否かを判定するものとしたが、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードを変更するモータ32の回転数(モード変更回転数Nchng)を求め、モード変更回転数Nchngが車両にショックを生じさせ得るモータ32の回転数範囲として予め定められた閾値Nref1未満であるか否かを判定するものとしてもよい。このように、車速Vをモータ32の回転数Nmに置き換えることができるのは、図1の電気自動車20の構成から、車速Vはモータ32の回転数Nmにデファレンシャルギヤ24などのギヤ比を乗じたものに一致するからである。なお、車両の振動などのショックが生じる要因としてはモータ32の回転数Nmが閾値Vref1未満に相当する回転数範囲となることであるから、車速Vよりはモータ32の回転数Nmによって制御することが本質であると考えられる。
【0031】
実施例の電気自動車20では、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードを変更するモード変更車速Vchngを求め、モード変更車速Vchngが車両にショックを生じさせ得る範囲として予め定められた閾値Vref1未満であるか否かを判定するものとしたが、車両にショックを生じさせ得るモータ32の回転数範囲が閾値Vref1に相当する回転数未満ではなく、値0より大きな下限回転数と上限回転数とによって定められるときには、モード変更車速Vchngが下限回転数に相当する下限閾値と上限回転数に相当する上限閾値とによって定められる範囲内であるか否かを判定するものとすればよい。この場合も、車速Vではなく、モータ32の回転数Nmによって判定するものとしてもよい。即ち、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードを変更するモータ32の回転数(モード変更回転数Nchng)を求め、モード変更回転数Nchngが車両にショックを生じさせ得るモータ32の下限回転数と上限回転数とによって定められる範囲内であるか否かを判定するものとしてもよいのである。
【0032】
実施例のハイブリッド自動車20では、エコスイッチ69がオンとされたときには、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32をゲート遮断するものとしたが、エコスイッチ69がオンとされたときには、昇圧コンバータ40による昇圧を最大許容電圧VHmaxと電池電圧系電力ライン44の電圧VLとの間の電圧として予め定められた電圧、例えばVL+(Vmax−VL)/5により計算される電圧など、までに制限するものとしてもよい。
【0033】
実施例のハイブリッド自動車20では、エコスイッチ69がオンとされたときに昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32をゲート遮断するものとしたが、エコスイッチ69を備えず、比較的中低車速で走行しており、且つ、比較的急加速が要求されていない通常走行時にはンバータ40のトランジスタT31,T32をゲート遮断するものとしたり、昇圧コンバータ40による昇圧を最大許容電圧VHmaxと電池電圧系電力ライン44の電圧VLとの間の電圧として予め定められた電圧、例えばVL+(Vmax−VL)/5により計算される電圧など、までに制限するものとしてもよい。
【0034】
実施例では、駆動輪26a,26bに接続された駆動軸22に動力を入出力可能なモータ32とモータ32を駆動するためのインバータ34とを備える電気自動車20に適用するものしたが、例えば、図7の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、遊星歯車機構126を介して駆動軸22に接続されたエンジン122およびモータ124と、駆動軸22に動力を入出力可能なモータ32と、を備えるハイブリッド自動車120に適用するものとしてもよいし、図8の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、駆動軸22にモータ32を取り付けると共に、モータ32の回転軸にクラッチ229を介してエンジン122を接続する構成とし、エンジン122からの動力をモータ32の回転軸を介して駆動軸22に出力すると共にモータ32からの動力を駆動軸22に出力するハイブリッド自動車220に適用するものとしてもよい。
【0035】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ32が「電動機」に相当し、インバータ34が「インバータ」に相当し、バッテリ36が「二次電池」に相当し、昇圧コンバータ40が「昇圧コンバータ」に相当し、エコスイッチ69が「昇圧制限スイッチ」に相当し、エコスイッチ69がオンとされたことにより昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32がゲート遮断された状態で矩形波制御モードを用いて回生制御しているときには、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに変更するモード変更車速Vchngを求め、モード変更車速Vchngが車両にショックを生じさせ得る範囲として予め定められた閾値Vref1未満のときには、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32のゲート遮断を解除してモータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに応じた昇圧を行ない、車速Vが閾値Vref1より若干大きな閾値Vref2未満に至ったときに制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに変更する図3の回生時制御モード変更制御ルーチンを実行し、エコスイッチ69がオンとされたことにより昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32がゲート遮断された状態でPWM制御モードを用いて力行制御しているときには、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードをPWM制御モードから矩形波制御モードに変更するモード変更車速Vchngを求め、モード変更車速Vchngが車両にショックを生じさせ得る範囲として予め定められた閾値Vref1未満のときには、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32のゲート遮断を解除してモータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに応じた昇圧を行ない、車速Vが閾値Vref1より若干大きな閾値Vref3以上に至ったときに制御モードをPWM制御モードから矩形波制御モードに変更する図4の力行時制御モード変更制御ルーチンを実行する電子制御ユニット50が「制御手段」に相当する。
【0036】
ここで、「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータ32に限定されるものではなく、車軸に動力を入出力可能で回転に伴って逆起電圧を発生するものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「インバータ」としては、インバータ34に限定されるものではなく、複数のスイッチング素子のスイッチングによって電動機を駆動するものであれば如何なるタイプのインバータであっても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ36に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「昇圧コンバータ」としては、昇圧コンバータ40に限定されるものではなく、二次電池が接続された電池電圧系とインバータが接続された駆動電圧系とに接続されて駆動電圧系の電圧を電池電圧系の電圧以上に昇圧して駆動電圧系と電池電圧系とで電力の授受を行なうものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、エコスイッチ69がオンとされたことにより昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32がゲート遮断された状態で矩形波制御モードを用いて回生制御しているときには、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに変更するモード変更車速Vchngを求め、モード変更車速Vchngが車両にショックを生じさせ得る範囲として予め定められた閾値Vref1未満のときには、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32のゲート遮断を解除してモータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに応じた昇圧を行ない、車速Vが閾値Vref1より若干大きな閾値Vref2未満に至ったときに制御モードを矩形波制御モードからPWM制御モードに変更する図3の回生時制御モード変更制御ルーチンを実行し、エコスイッチ69がオンとされたことにより昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32がゲート遮断された状態でPWM制御モードを用いて力行制御しているときには、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードをPWM制御モードから矩形波制御モードに変更するモード変更車速Vchngを求め、モード変更車速Vchngが車両にショックを生じさせ得る範囲として予め定められた閾値Vref1未満のときには、昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32のゲート遮断を解除してモータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに応じた昇圧を行ない、車速Vが閾値Vref1より若干大きな閾値Vref3以上に至ったときに制御モードをPWM制御モードから矩形波制御モードに変更する図4の力行時制御モード変更制御ルーチンを実行するものに限定されるものではなく、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードを変更するモータ32の回転数(モード変更回転数Nchng)を求め、モード変更回転数Nchngが車両にショックを生じさせ得るモータ32の回転数範囲として予め定められた閾値Nref1未満であるか否かを判定するものとしたり、モータ32の回転数Nmとトルク指令Tm*とに基づいてインバータ34の制御モードを変更するモータ32の回転数(モード変更回転数Nchng)を求め、モード変更回転数Nchngが車両にショックを生じさせ得るモータ32の下限回転数と上限回転数とによって定められる範囲内であるか否かを判定するものとしたり、エコスイッチ69がオンとされたときには、昇圧コンバータ40による昇圧を最大許容電圧VHmaxと電池電圧系電力ライン44の電圧VLとの間の電圧として予め定められた電圧までに制限するものとしたりするなど、昇圧制限スイッチがオンとされて昇圧コンバータによる昇圧が所定制限電圧までに制限されているときに、電動機の回転数がインバータの制御モードを変更すると車両に振動などのショックを生じさせ得る回転数範囲として予め定められたショック回転数範囲内でインバータの制御モードを変更する必要が生じる所定モード変更必要状態に至っていないときには所定制限電圧の範囲内で電動機を駆動するよう昇圧コンバータとインバータとを制御し、所定モード変更必要状態に至ったときには所定制限電圧までの制限を一時的に解除して駆動電圧系の電圧を所定制限電圧より高い電圧とした状態で電動機の回転数がショック回転数範囲内となる前に又は電動機の回転数が前記ショック回転数範囲外となった後にインバータの制御モードを変更するよう昇圧コンバータとインバータとを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0037】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0038】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、電動車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
20 電気自動車、22 駆動軸、24 デファレンシャルギヤ、26 バッテリ、26a,26b 駆動輪、32 モータ、32a 回転位置検出センサ、34 インバータ、36 バッテリ、40 昇圧コンバータ、42 高電圧系電力ライン、44 電池電圧系電力ライン、46 コンデンサ、46a 電圧センサ、48 コンデンサ、48a 電圧センサ、50 電子制御ユニット、52 CPU、54 ROM、56 RAM、60 イグニッションスイッチ、61 シフトレバー、62 シフトポジションセンサ、63 アクセルペダル、64 アクセルペダルポジションセンサ、65 ブレーキペダル、66 ブレーキペダルポジションセンサ、68 車速センサ、120,220 ハイブリッド自動車、122 エンジン、124 モータ、126 遊星歯車機構、229 クラッチ、D11〜D16,D31,D32 ダイオード、L リアクトル、T11〜T16,T31,T32 トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を入出力する電動機と、前記電動機を駆動するインバータと、充放電可能な二次電池と、前記二次電池が接続された電池電圧系と前記インバータが接続された駆動電圧系とに接続されて前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上に昇圧して前記駆動電圧系と前記電池電圧系とで電力の授受を行なう昇圧コンバータと、を備える電動車両であって、
前記昇圧コンバータによる昇圧が予め定められた所定制限電圧までに制限されているときに、前記電動機の回転数が前記インバータの制御モードを変更すると車両に振動などのショックを生じさせ得る回転数範囲として予め定められたショック回転数範囲内で前記インバータの制御モードを変更する必要が生じる所定モード変更必要状態に至っていないときには前記所定制限電圧の範囲内で前記電動機を駆動するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御し、前記所定モード変更必要状態に至ったときには前記所定制限電圧までの制限を一時的に解除して前記駆動電圧系の電圧を前記所定制限電圧より高い電圧とした状態で前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲内となる前に又は前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲外となった後に前記インバータの制御モードを変更するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御する制御手段と、
を備える電動車両。
【請求項2】
請求項1記載の電動車両であって、
前記制御手段は、前記電動機を回生制御して前記電動機の回転数が減少している際に前記所定モード変更必要状態に至ったときには、前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲内となる前に前記駆動電圧系の電圧を前記所定制限電圧より高い電圧とした状態として前記インバータの制御モードを変更するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御する手段である、
電動車両。
【請求項3】
請求項1または2記載の電動車両であって、
前記制御手段は、前記電動機を力行制御して前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲内で増加している際に前記所定モード変更必要状態に至ったときには、前記駆動電圧系の電圧を前記所定制限電圧より高い電圧とした状態として前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲外となった後で前記インバータの制御モードを変更するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御する手段である、
電動車両。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の電動車両であって、
前記昇圧制限スイッチは、前記昇圧コンバータによる前記駆動電圧系の昇圧を禁止するスイッチである、
電動車両。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載の電気自動車であって、
前記ショック回転数範囲は、所定回転数以下の範囲である、
電動車両。
【請求項6】
走行用の動力を入出力する電動機と、前記電動機を駆動するインバータと、充放電可能な二次電池と、前記二次電池が接続された電池電圧系と前記インバータが接続された駆動電圧系とに接続されて前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上に昇圧して前記駆動電圧系と前記電池電圧系とで電力の授受を行なう昇圧コンバータと、を備える電動車両の制御方法であって、
前記昇圧コンバータによる昇圧が予め定められた所定制限電圧までに制限されているときに、前記電動機の回転数が前記インバータの制御モードを変更すると車両に振動などのショックを生じさせ得る回転数範囲として予め定められたショック回転数範囲内で前記インバータの制御モードを変更する必要が生じる所定モード変更必要状態に至っていないときには前記所定制限電圧の範囲内で前記電動機を駆動するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御し、前記所定モード変更必要状態に至ったときには前記所定制限電圧までの制限を一時的に解除して前記駆動電圧系の電圧を前記所定制限電圧より高い電圧とした状態で前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲内となる前に又は前記電動機の回転数が前記ショック回転数範囲外となった後に前記インバータの制御モードを変更するよう前記昇圧コンバータと前記インバータとを制御する、
ことを特徴とする電動車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−182912(P2012−182912A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44327(P2011−44327)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】