電動車両のバッテリ昇温制御装置
【課題】バッテリ昇温性能を向上可能な電動車両のバッテリ昇温制御装置を提供すること。
【解決手段】統合コントローラ1が、バッテリ温度があらかじめ設定された開始設定温度よりも低温であるときには、クラッチCLを開放させた状態で、第2モータジェネレータMG2を回転させてバッテリBATの電力を消費する電力消費処理と、第2モータジェネレータMG2を発電させてモータ回転数を低下させるとともに発電した電力をバッテリBATに蓄電する蓄電処理とを、あらかじめ設定された終了条件が成立するまで交互に繰り返すバッテリ昇温処理を実行することを特徴とする電動車両のバッテリ昇温制御装置とした。
【解決手段】統合コントローラ1が、バッテリ温度があらかじめ設定された開始設定温度よりも低温であるときには、クラッチCLを開放させた状態で、第2モータジェネレータMG2を回転させてバッテリBATの電力を消費する電力消費処理と、第2モータジェネレータMG2を発電させてモータ回転数を低下させるとともに発電した電力をバッテリBATに蓄電する蓄電処理とを、あらかじめ設定された終了条件が成立するまで交互に繰り返すバッテリ昇温処理を実行することを特徴とする電動車両のバッテリ昇温制御装置とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの昇温を図る電動車両のバッテリ昇温制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリ低温時に、バッテリを昇温させる制御を実行する制御装置が、例えば、特許文献1などにより知られている。
【0003】
この従来技術は、クルーズモードによる車両走行時に、バッテリ温度が所定温度に達していない場合に、クルーズ発電量を引き上げ、バッテリ温度が所定の温度に達するまで、バッテリに対する充電を持続させる。そして、満充電状態と判断された場合、エンジンの周期的な駆動力の変動分を相殺するように、駆動力が増大した場合は発電を行い、駆動力が減少した場合は、モータを、出力トルクを発生させる力行状態としてエンジン出力の補助を行なっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−57709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、寒冷地、極寒地などでは、バッテリ温度が極めて低い温度となる。このように、バッテリ温度が極めて低い温度となると、バッテリの充電受け入れ電力が非常に低くなる。
【0006】
そこで、早期にバッテリを昇温させることが求められるが、上述の従来技術では、目標駆動力を、モータトルクとエンジントルクとを足し合わせて得るようにしているため、モータで発電および消費できる量が限られ、バッテリの昇温に時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、バッテリ昇温性能を向上可能な電動車両のバッテリ昇温制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両のバッテリ昇温制御装置は、モータおよび発電機の駆動を制御する制御手段が、バッテリ温度があらかじめ設定された開始設定温度よりも低温であるときには、モータと駆動輪との間に設けられたクラッチを開放させた状態で、モータを回転させてバッテリの電力を消費する電力消費処理と、発電機を発電させてモータ回転数を低下させるとともに発電した電力を前記バッテリに蓄電する蓄電処理とを、あらかじめ設定された終了条件が成立するまで交互に繰り返すバッテリ昇温処理を実行することを特徴とする電動車両のバッテリ昇温制御装置とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電動車両のバッテリ昇温制御装置にあっては、バッテリ温度が開始設定温度よりも低温のときには、クラッチを開放させて、モータ側と駆動輪側との連結を絶って、モータを回転させる電力消費処理と、発電機を発電させてモータ回転数を低下させる蓄電処理とを交互に繰り返すバッテリ昇温処理を実行する。
このように、電力消費処理と蓄電処理とが繰り返され、バッテリの電力消費と蓄電とが交互に繰り返されることで、バッテリ温度が上昇し、かつ、過放電および過充電の発生を抑制できる。
しかも、バッテリ昇温制御は、クラッチを開放して行ない、目標駆動力に関係なく実行できるため、従来のように、目標駆動トルクの一部を担う範囲で電力消費および蓄電を行なう場合と比較して、モータ回転数を高くして電力消費量および発電量も高くできる。したがって、バッテリの昇温時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の電動車両のバッテリ昇温制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両の一例を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の電動車両のバッテリ昇温制御装置におけるバッテリ昇温処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の作動例を示すタイムチャートである。
【図4】実施例2の電動車両のバッテリ昇温制御装置における第2モータジェネレータMG2の駆動効率を示す効率特性図であり、実線で示す高効率特性HPと、点線で示す低効率特性LPとの2通りの特性を示している。
【図5】実施例2の電動車両のバッテリ昇温制御装置の作動例を示すタイムチャートである。
【図6】実施例3の電動車両のバッテリ昇温制御装置において、実施例1と同様にバッテリ昇温処理を実行したときの作動状態を示すタイムチャートである。
【図7】実施例4の電動車両のバッテリ昇温制御装置を適用した後輪駆動のハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図8】実施例4の作動例を示すタイムチャートである。
【図9】実施例5の電動車両のバッテリ昇温制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両の一例を示す概略図である。
【図10】本発明の電動車両のバッテリ昇温制御装置の他の実施例の概略を示す概略図である。
【図11】本発明の電動車両のバッテリ昇温制御装置の他の実施例の概略を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態のクラッチ制御装置は、駆動輪を駆動可能なモータ(MG2)と、電力を生成する発電機(MG2)と、前記モータに電力を供給するとともに、前記発電機が発電した電力を充電するバッテリ(BAT)と、このバッテリの温度を検出するバッテリ温度センサ(28)と、前記モータと前記駆動輪(LT,RT)との駆動伝達経路に設けられ、両者で駆動伝達可能な締結状態と駆動伝達不可能な開放状態とに切換可能なクラッチ(CL)と、前記モータおよび発電機の駆動を制御する制御手段(1)と、を備え、前記制御手段(1)が、前記バッテリ温度があらかじめ設定された開始設定温度よりも低温であるときには、前記クラッチ(CL)を開放させた状態で、前記モータ(MG2)を回転させて前記バッテリ(BAT)の電力を消費する電力消費処理と、前記発電機(MG2)を発電させてモータ回転数を低下させるとともに発電した電力を前記バッテリ(BAT)に蓄電する蓄電処理とを、あらかじめ設定された終了条件が成立するまで交互に繰り返すバッテリ昇温処理を実行することを特徴とする電動車両のバッテリ昇温制御装置である。
【実施例1】
【0012】
図1〜図3に基づき、この発明の最良の実施の形態の実施例1のクラッチ制御装置について説明する。
【0013】
(実施例1の構成)
まず、図1の実施例1の電動車両のバッテリ昇温制御装置が適用された後輪駆動式のハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す概略図に基づき、駆動系および制御系の構成を説明する。
【0014】
実施例1を適用したハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEng、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2、バッテリBAT、クラッチCL、遊星歯車機構PG、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左駆動輪LT、右駆動輪RTを備えている。
【0015】
エンジンEngは、希薄燃焼可能であり、スロットルアクチュエータによる吸入空気量とインジェクタによる燃料噴射量と、点火プラグによる点火時期の制御により、エンジントルクが指令値と一致するように制御される。
【0016】
遊星歯車機構PGは、周知のように、サンギヤSG、キャリアCG、リングギヤRGを備えている。
そして、エンジンEngの出力でキャリアCGを回転可能に、エンジンEngの出力軸EOSがキャリアCGに同軸に結合されている。また、第1モータジェネレータMG1のロータ101が一体に設けられた入出力軸MG1Sが、サンギヤSGに結合されている。第2モータジェネレータMG2のロータ102が一体に設けられた入出力軸MG2Sが、リングギヤRGに同軸に結合されている。リングギヤRGの回転をプロペラシャフトPSに伝達可能な出力ギヤOTGが設けられている。
【0017】
上記の遊星歯車機構PGの構成に基づいて、第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2は、共に発電機として駆動することができるとともに、電動機として駆動できる同期発電電動機を構成しており、インバータ2,2を介してバッテリBATと電力のやり取りを行なう。
【0018】
したがって、両モータジェネレータMG1,MG2の一方で発電される電力を、もう一方で消費することができるようになっている。
そこで、本実施例1では、主として、第2モータジェネレータMG2をモータとして駆動させ、第1モータジェネレータMG1を発電機として使用する。
【0019】
すなわち、第1モータジェネレータMG1が、電動機として機能するときには、キャリアCGから入力されるエンジンEngからの動力と、サンギヤSGから入力される第1モータジェネレータMG1からの動力とを統合して、リングギヤRGに出力する。
また、第2モータジェネレータMG2が電動機として機能するときには、その動力を、リングギヤRGに出力する。
【0020】
なお、リングギヤRGに出力された駆動力は、出力ギヤOTG、クラッチCL、プロペラシャフトPSを介して、左右駆動輪LT,RTに伝達される。
【0021】
クラッチCLは、本実施例1では、スプリング(図示省略)の付勢力にて常時締結(ノーマルクローズ)の乾式クラッチが用いられ、第2モータジェネレータMG2が連結されたリングギヤRGに連結されたプロペラシャフトPSにおいて、第2モータジェネレータMG2と左右駆動輪LT,RTとの間の締結/半締結/開放を行なう。
クラッチCLの、半締結/開放の制御は、クラッチコントローラ14から出力される指令値に基づく油圧アクチュエータ50によるストローク制御により行われる。
【0022】
実施例1を適用したハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、統合コントローラ(制御手段)1と、エンジンコントローラ11と、モータコントローラ12と、バッテリコントローラ13と、クラッチコントローラ14と、を備えている。
【0023】
さらに、ハイブリッド車両の制御系は、走行状態を検出する手段として、第1モータ回転数センサ21と、第2モータ回転数センサ22と、アクセルセンサ23と、エンジン回転数センサ24と、クラッチストロークセンサ25と、ブレーキストロークセンサ26と、車速センサ27と、バッテリ温度センサ28を備えている。
【0024】
統合コントローラ1は、バッテリ状態、アクセル開度、車速(変速機出力回転数に同期した値)、などから発電トルク指令値およびモータトルク指令値などを演算する。そして、この演算結果に基づき、両モータジェネレータMG1,MG2、エンジンEngに対する指令値を、各コントローラ11,12,13,14へと送信する。
【0025】
エンジンコントローラ11は、エンジン回転数センサ24からのセンサ情報を入力するとともに、統合コントローラ1からのエンジントルク指令値を達成するようにエンジントルク抑制制御を行なう。
【0026】
モータコントローラ12は、統合コントローラ1からの発電トルク指令値、モータトルク指令値、モータ回転数指令値を達成するように両モータジェネレータMG1,MG2の制御を行なう。
【0027】
バッテリコントローラ13は、バッテリBATの充電状態(バッテリ充放電量SOC)を管理し、その情報を統合コントローラ1へと送信する。
【0028】
クラッチコントローラ14は、前述のように、油圧アクチュエータ50を制御して、クラッチCLの反締結および開放を制御する。
【0029】
第1モータ回転数センサ21は、第1モータジェネレータMG1の入出力軸MG1Sの回転数を検出する。
第2モータ回転数センサ22は、第2モータジェネレータMG2の入出力軸MG2Sの回転数を検出する。
アクセルセンサ23は、図外のアクセルペダルの操作伝達系に設けられ、アクセル開度を検出する。
エンジン回転数センサ24は、エンジンEngの出力軸回転数を検出する。
クラッチストロークセンサ25は、クラッチCLのストローク位置を検出する。
ブレーキストロークセンサ26は、ブレーキペダル(図示省略)の踏込ストロークを検出する。
車速センサ27は、遊星歯車機構PGのリングギヤRGからプロペラシャフトPSの駆動伝達系に設けられ、車速を検出する。
バッテリ温度センサ28は、バッテリBATの温度を検出する。
【0030】
次に、統合コントローラ1において実行されるバッテリ昇温制御について、図2のフローチャートに基づいて説明する。なお、この制御は、図外のイグニッションスイッチをONとした起動時から実行される。
【0031】
まず、ステップS1では、バッテリ温度が、あらかじめ設定された温度閾値(Tth:開始設定温度および終了設定温度)以下の低温であるか否か判定し、温度閾値よりも高ければステップS11の通常制御に進んで、1回の処理を終了し、温度閾値以下の場合はステップS2以降のバッテリ昇温処理に進む。
なお、温度閾値は、摂氏でマイナスの温度、例えば、−30℃よりも低温に設定されている。この温度閾値は、−30℃に限定されるものではなく、バッテリBATのインピーダンス特性に基づいて適宜設定されるもので、0℃以下の最適温度に設定する。例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池など電池の種類により、インピーダンス特性が異なっており、リチウムイオン電池の場合、ニッケル水素電池よりも温度閾値を相対的に高温に設定する。
【0032】
次に、ステップS2以降のバッテリ昇温処理について説明する。
ステップS2では、運転者の走行要求があるか否か判定し、走行要求が有ればステップS8に進み、走行要求がなければステップS3に進む。運転者の走行要求は、本実施例1では、アクセルセンサ23の検出に基づくアクセルペダルの踏込有無判定により行なう。
したがって、本実施例1では、走行要求が無い場合、車両停止時に加え、惰性走行時が含まれる。
【0033】
ステップS3では、クラッチCLを開放させ、ステップS4に進む。ステップS4では、第2モータジェネレータMG2の回転数である第2モータ回転数が切換設定値以下であるか否か判定し、切換設定値以下の場合はステップS5に進み、切換設定値よりも大きい場合はステップS6に進む。
【0034】
ステップS5では、第2モータジェネレータMG2を力行駆動させて空転させるモータ空回し処理を行ない1回の処理を終了する。
【0035】
ステップS6では、第2モータジェネレータMG2を回生させて慣性力で回転するロータ102、入出力軸MG2S、リングギヤRGを制動するモータブレーキ処理を実行する。なお、このモータブレーキ処理は、ステップS7の処理に基づいて、第2モータ回転数が0となるまで行ない、その後、1回の処理を終了する。
【0036】
運転者の走行要求が有る場合に進むステップS8では、第2モータ回転数が車速に略一致したか否か判定し、略一致した場合はステップS9に進み、略一致しない場合はステップS10に進む。なお、略一致とは、第2モータ回転数と車速との差が、あらかじめ設定された誤差範囲内に収まった状態を言う。
【0037】
ステップS9では、クラッチCLを締結させる。また、ステップS10では、第2モータ回転数が、車速に略一致するようモータ回転数制御を行なう。
なお、このモータ回転数制御では、車両停止時に、バッテリ昇温処理を実行した場合は、車速=0であり、第2モータ回転数は0に向けて制御する。また、惰性走行を行なっている場合にバッテリ昇温処理を実行した場合は、その時点の車速に向けて第2モータ回転数を制御する。
【0038】
(実施例1の作用)
次に、実施例1の作用を説明する。
極寒地においてバッテリ温度が温度閾値よりも低下した状態で、図外のイグニッションスイッチONとして起動した時の動作を説明する。
【0039】
起動時に、バッテリ温度が温度閾値よりも低温であれば、運転者がアクセルペダルを踏込む走行要求操作が成されるまで、バッテリ温度を昇温させるバッテリ昇温処理を行なう(ステップS1→S2→S3)。
【0040】
このバッテリ昇温処理では、クラッチCLを開放させて、第2モータジェネレータMG2の駆動トルクが、左右駆動輪LT,RT側に伝達されない状態とした上で、モータ空回し処理による電力消費と、モータブレーキ処理による発電とを交互に繰り返す。
【0041】
すなわち、運転者の走行要求が無い場合、ステップS3→S4→S5の処理に基づいて、第2モータ回転数が切換設定値(Nth)に達するまで第2モータジェネレータMG2を空回りさせる。そして、モータ回転数が切換設定値(Nth)に達したら、ステップS4→S6→S7第2モータジェネレータMG2により発電させて、リングギヤRG、入出力軸MG2S、ロータなどの慣性回転に制動力を与え、第2モータジェネレータMG2の回転を停止させる。
【0042】
したがって、図3に示すように、第2モータ回転数は、上下を繰り返し、これにより、放電(電力消費処理)と充電(蓄電処理)とが交互に繰り返される。このように、バッテリBATに対して、電力消費と蓄電とが交互に繰り返されることで、バッテリ温度が上昇する。
【0043】
このバッテリ昇温処理は、運転者の走行要求が生じた(ステップS2のYES判定)場合は、中断される。また、バッテリ温度が温度閾値(Tth)を越える終了条件が成立した時点(ステップS1のYES判定)で終了される。
すなわち、バッテリ温度が温度閾値(Tth)を超えた場合には、ステップS1→S11により通常制御が行なわれる。ちなみに、極寒時には、通常、車両を起動させた後、フロントウインドウガラスの曇り取りなどを行なうため、走行を開始するまでに時間を要し、上述のバッテリ昇温処理を行なうのに充分な時間を得ることができる。
【0044】
一方、バッテリ温度が温度閾値(Tth)に満たないタイミングで運転者の走行要求が生じた場合は、第2モータ回転数を、車速に略一致させた後、クラッチCLを締結させる(ステップS8〜S10)。これにより、第2モータジェネレータMG2のモータトルクにより、あるいは必要に応じてこれにエンジントルクを加算して、走行を行なう。
このように、クラッチCLを締結させる前に、第2モータ回転数を車速に一致させるため、クラッチCLの締結時に、ショックが生じることを防止できる。
【0045】
その後、アクセルペダル(図示省略)から足を離して走行要求が無くなった時点で、バッテリ温度が温度閾値(Tth)に達していない場合は、再び、ステップS2〜S6の処理に基づいて、モータジェネレータ空回りとモータブレーキを交互に繰り返すバッテリ昇温処理が、バッテリ温度が温度閾値(Tth)に達するまで行なわれる。
【0046】
(実施例1の効果)
以上説明したように、実施例1では、以下列挙する効果を得ることができる。
a)バッテリ温度が温度閾値(Tth)よりも低温のときには、クラッチCLを開放させて、第2モータジェネレータMG2を空回りさせる電力消費処理と、第2モータジェネレータMG2を発電させて第2モータ回転数を低下させる蓄電処理とを交互に繰り返して、バッテリ温度を上昇させるバッテリ昇温処理が実行される。
このバッテリ昇温処理は、クラッチCLを開放させて行なうため、従来のように、目標駆動トルクの一部を担う範囲で電力消費および蓄電を行なう場合と比較して、第2モータ回転数を高くして電力消費量を高くでき、それに伴い発電量も高くできる。したがって、バッテリBATの昇温に要する時間を短縮できる。
【0047】
b)バッテリ昇温処理は、車両停止時を含み、運転者の走行要求が無い場合に実行するようにしたため、クラッチCLを開放させて、モータトルクあるいはエンジントルクが左右駆動輪LT,RTに伝達されない状態としても、運転者に、その状態を認識させず違和感を与えない
c)バッテリ昇温処理の終了条件は、バッテリ温度が終了設定温度としての温度閾値に達した場合としたため、バッテリBATが過充電されるのを防止できる。
また、運転者の走行要求が生じた場合は、バッテリ昇温処理を中断するようにしたため、運転者の走行要求に応じて、発進あるいは加速を行なうことができ、運転者に違和感を与えることを防止できる。
【0048】
d)バッテリ昇温処理を終了する際には、第2モータ回転数を車速に略一致させてからクラッチCLを締結するため、停車時および惰性走行時共に、クラッチCLの締結時に、ショックが発生するのを防止できる。
【0049】
(他の実施例)
以下に、他の実施例について説明するが、これら他の実施例は、実施例1の変形例であるため、その相違点についてのみ説明し、実施例1あるいは他の実施例と共通する構成については共通する符号を付けることで説明を省略する。
【実施例2】
【0050】
(実施例2の効果)
実施例2は、実施例1の変形例であり、バッテリ昇温処理の一部の処理が実施例1と異なっている。
【0051】
実施例2では、ステップS5のモータ空回り処理(電力消費処理)と、ステップS6のモータブレーキ処理(蓄電処理)とで、第2モータジェネレータMG2の駆動効率を変えている。
すなわち、モータ空回り処理では、モータブレーキ処理と比較して低効率で駆動させている。図4は、第2モータジェネレータMG2の駆動効率を示しており、実線で示す高効率特性HPと、点線で示す低効率特性LPとの2通りの特性が設定されている。
【0052】
なお、
実施例2では、ステップS5のモータ空回り処理(電力消費処理)と、ステップS6のモータブレーキ処理(蓄電処理)とで、モータ効率を変えている。
すなわち、モータ空回り処理では、モータブレーキ処理と比較して低効率で駆動させている。図4は、第2モータジェネレータMG2の駆動効率を示しており、実線で示す高効率特性HPと、点線で示す低効率特性LPとの2通りの特性が設定されている。
【0053】
なお、モータ効率を変えるのにあたり、上述のように第2モータジェネレータMG2の効率を、力行(電力消費)時と回生(蓄電)時とで、異ならせてもよいが、遊星歯車機構PGの変速比に基づいて、両モータジェネレータMG1,MG2とで、効率の良いほうを回生に用い、効率が悪い方を力行に用いるようにしてもよい。
【0054】
(実施例2の作用)
次に、実施例2の作用を説明する。
図5は実施例2において、実施例1と同様にバッテリ昇温処理を実行したときの作動状態を示すタイムチャートである。
この図において、モータ空回り処理(電力消費処理)の実行時には、点線で示す低効率特性LPで駆動し、モータブレーキ処理(蓄電処理)の実行時には、高効率特性HPで運転させる。
【0055】
したがって、モータ空回り処理では、低効率特性LPで運転させることで、第2モータ回転数を同じ切換設定値Nthまで上昇させるのに、高効率特性で運転させる場合よりもバッテリBATの電流を多く消費でき、その分、昇温効果が高まる。
また、モータブレーキ処理の際は、高効率特性で充電が行なわれ、低効率特性で充電する場合よりも、バッテリBATへの充電量を増やすことができる。
このように、電力消費量および蓄電量を高くでき、バッテリ昇温効果を、さらに高めることができる。
【0056】
(実施例2の効果)
以上説明したように、モータ空回り処理(電力消費処理)の際に、モータブレーキ処理(蓄電処理)の場合よりも、低効率で駆動させることでバッテリBATの電流消費量を高めることができるとともに、モータブレーキ処理の際に、高効率で駆動させることでバッテリBATへの充電量を増やし、バッテリ昇温効果を、さらに高めることができる。
【実施例3】
【0057】
(実施例3の構成)
実施例3は、実施例1の変形例であり、バッテリ昇温処理の一部の処理が実施例1と異なっている。
【0058】
実施例3では、ステップS5のモータ空回り処理(電力消費処理)と、ステップS6のモータブレーキ処理(蓄電処理)とを、実行する際に、回転数上昇勾配および回転数下降勾配を、バッテリ温度に応じて異ならせている。すなわち、バッテリ温度が低いほど、両勾配を緩やかにしている。
【0059】
(実施例3の作用)
次に、実施例3の作用を説明する。
図6は実施例3において、実施例1と同様にバッテリ昇温処理を実行したときの作動状態を示すタイムチャートである。
この図に示すように、バッテリ温度が低い場合(=T1)は、第2モータ回転数の上昇勾配および下降勾配が緩やかであり、電流消費量(放電量)および充電量が、相対的に高温時よりも低くなっている。
これに対し、バッテリ温度が高い場合(=T2)は、第2モータ回転数の上昇勾配および下降勾配が緩やかであり、電流消費量(放電量)および充電量が、相対的に低温時よりも高くなっている。
【0060】
(実施例3の効果)
以上説明したように、バッテリ温度が低い場合、モータ回転数の上昇下降を緩やかに行なうことで、極低温時の、過放電、過充電を防止できる。
【実施例4】
【0061】
(実施例4の構成)
実施例4は、実施例1の変形例であり、図7に示すように、クラッチCLの位置が実施例1と異なり、第2モータジェネレータMG2の入出力軸MG2Sに設けられている。
【0062】
この実施例4では、クラッチCLを開放させている状態でも、エンジンEngを駆動させるとともに、第1モータジェネレータMG1で発電を行なうことで、エンジンEngの駆動力で走行させることができる。
【0063】
(実施例4の作用)
実施例4では、バッテリ昇温処理中に、運転者の走行要求が生じた場合、実施例1のステップS2からステップS8の処理に進む間に、エンジンEngの駆動力により走行を開始する処理を行なう。
【0064】
したがって、実施例4の作動例を示す、図8に示すように、運転者の走行要求が生じた時点t1から、エンジンEngの駆動トルクで発進を開始して、瞬時に車速が立ち上がっている。
【0065】
また、実施例4では、第2モータジェネレータMG2に対しては、実施例1と同様に、ステップS8〜S10の処理が成され、第2モータ回転数制御により、第2モータ回転数を車速に一致させる処理を行なった後に、クラッチCLが締結される。これにより、クラッチCLの締結時のショック発生を抑制できる。
【0066】
(実施例4の効果)
以上説明したように、実施例4では、バッテリ昇温効果を高めながら、運転者の走行要求に応じて、タイムラグ無しに、瞬時に走行開始が可能である。
【実施例5】
【0067】
(実施例5の構成)
実施例5は、図9に示すように、各モータジェネレータMG1,MG2、バッテリBAT、エンジンEngを同一系統の冷却装置200で冷却した例である。
【0068】
冷却装置200は、オイル、水、空気などの冷却媒体を、各モータジェネレータMG1,MG2、バッテリBAT、エンジンEngを循環させる冷却路201を備えている。また、冷却路201には、冷却媒体の放熱を行なう冷却器202および冷却媒体を循環させるポンプ203を備えている。
【0069】
(実施例5の作用)
バッテリ温度が温度閾値(Tth)よりも低温の場合、実施例1〜4で示したバッテリ昇温処理を実行することで、バッテリBATが暖められる。また、バッテリ昇温処理によりバッテリ、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2を昇温させた際に、その熱が、冷却装置200によりエンジンEngにも伝達され、エンジンEngの昇温を早め、燃費向上を図ることができる。
【0070】
また、走行によりエンジンEngで発生した熱を、バッテリBATに伝達して、バッテリ昇温処理が実行できないときでも、バッテリBATの昇温を図ることができる。
【0071】
(実施例5の効果)
以上のように、実施例5では、冷却装置200によりバッテリ昇温処理で発生した熱を、エンジンEngにも回して、燃費の向上を図ることができる。
【0072】
また、この効果を効果的に得るには、冷却媒体の温度が低い場合には、冷却器202を迂回するバイパス路およびバルブを設けるのが好ましい。
また、圧力発生手段を備え、図示を省略した能動的な制動が可能なブレーキ装置を備えている場合、左右駆動輪LT,RTを制動し、さらに、クラッチCLを締結させ、第2モータジェネレータMG2を、負荷を大きくした状態で駆動させると、いっそう昇温効果を高めることができる。
【0073】
以上、本発明のクラッチ制御装置を、実施の形態および実施例1〜5に基づき説明してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0074】
例えば、実施例1〜5では、第2モータジェネレータMG2が、電力消費処理および蓄電処理を行なう例を示したが、図10に示すように、力行のみを行なって左右駆動輪LT,RTを回転させるモータMOと、エンジンEngからの回転入力で発電のみを行なう発電機GEを設けた構成としてもよい。
【0075】
また、実施例1〜5では、ハイブリッド車両を示したが、図11に示すように、エンジンEngを有しない電動車両に適用してもよい。この図11に示す例では、モータジェネレータMGは、力行と発電とを行なうことができ、特許請求の範囲のモータと発電機とを兼ねる。
【0076】
また、実施例1〜5では、開始設定温度と終了設定温度とを共通の温度である温度閾値(Tth)としたが、これに限定されず、両温度を異なる温度に設定してもよい。例えば、開始設定温度を終了設定温度よりも低く設定し、バッテリ昇温処理を、バッテリ温度が開始設定温度よりも高くなるまで実行するようにしてもよい。
【0077】
また、実施例1〜5では、運転者の走行要求が生じた場合は、バッテリ昇温処理を中断するようにした例を示したが、運転者の走行要求が生じた時点で、バッテリ昇温処理を終了するようにしてもよい。この場合、運転者の走行要求に応じて、発進あるいは加速を行なうことができ、運転者に違和感を与えることを防止できる。この場合、バッテリBATが温度閾値に達する前にバッテリ消音処理を終了したとしても、バッテリ昇温処理を行なわないものよりも、バッテリ温度を高めることができる。特に、実施例5を適用している場合、走行を開始すれば、冷却装置200を利用してバッテリ温度が上昇されるため、バッテリ昇温処理を終了しても、バッテリ温度を上昇させることができる。
【0078】
実施例1〜5では、FRハイブリッド車両に適用した例を示したが、例えば、FFや4輪駆動のハイブリッド車両および電動車両に対しても本発明の制御装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 統合コントローラ(制御手段)
28 バッテリ温度センサ
BAT バッテリ
CL クラッチ
Eng エンジン
GE 発電機
LT 左駆動輪
RT 右駆動輪
MG モータジェネレータ
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 モータジェネレータ(モータ、発電機)
MO モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの昇温を図る電動車両のバッテリ昇温制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリ低温時に、バッテリを昇温させる制御を実行する制御装置が、例えば、特許文献1などにより知られている。
【0003】
この従来技術は、クルーズモードによる車両走行時に、バッテリ温度が所定温度に達していない場合に、クルーズ発電量を引き上げ、バッテリ温度が所定の温度に達するまで、バッテリに対する充電を持続させる。そして、満充電状態と判断された場合、エンジンの周期的な駆動力の変動分を相殺するように、駆動力が増大した場合は発電を行い、駆動力が減少した場合は、モータを、出力トルクを発生させる力行状態としてエンジン出力の補助を行なっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−57709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、寒冷地、極寒地などでは、バッテリ温度が極めて低い温度となる。このように、バッテリ温度が極めて低い温度となると、バッテリの充電受け入れ電力が非常に低くなる。
【0006】
そこで、早期にバッテリを昇温させることが求められるが、上述の従来技術では、目標駆動力を、モータトルクとエンジントルクとを足し合わせて得るようにしているため、モータで発電および消費できる量が限られ、バッテリの昇温に時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、バッテリ昇温性能を向上可能な電動車両のバッテリ昇温制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電動車両のバッテリ昇温制御装置は、モータおよび発電機の駆動を制御する制御手段が、バッテリ温度があらかじめ設定された開始設定温度よりも低温であるときには、モータと駆動輪との間に設けられたクラッチを開放させた状態で、モータを回転させてバッテリの電力を消費する電力消費処理と、発電機を発電させてモータ回転数を低下させるとともに発電した電力を前記バッテリに蓄電する蓄電処理とを、あらかじめ設定された終了条件が成立するまで交互に繰り返すバッテリ昇温処理を実行することを特徴とする電動車両のバッテリ昇温制御装置とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電動車両のバッテリ昇温制御装置にあっては、バッテリ温度が開始設定温度よりも低温のときには、クラッチを開放させて、モータ側と駆動輪側との連結を絶って、モータを回転させる電力消費処理と、発電機を発電させてモータ回転数を低下させる蓄電処理とを交互に繰り返すバッテリ昇温処理を実行する。
このように、電力消費処理と蓄電処理とが繰り返され、バッテリの電力消費と蓄電とが交互に繰り返されることで、バッテリ温度が上昇し、かつ、過放電および過充電の発生を抑制できる。
しかも、バッテリ昇温制御は、クラッチを開放して行ない、目標駆動力に関係なく実行できるため、従来のように、目標駆動トルクの一部を担う範囲で電力消費および蓄電を行なう場合と比較して、モータ回転数を高くして電力消費量および発電量も高くできる。したがって、バッテリの昇温時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の電動車両のバッテリ昇温制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両の一例を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の電動車両のバッテリ昇温制御装置におけるバッテリ昇温処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の作動例を示すタイムチャートである。
【図4】実施例2の電動車両のバッテリ昇温制御装置における第2モータジェネレータMG2の駆動効率を示す効率特性図であり、実線で示す高効率特性HPと、点線で示す低効率特性LPとの2通りの特性を示している。
【図5】実施例2の電動車両のバッテリ昇温制御装置の作動例を示すタイムチャートである。
【図6】実施例3の電動車両のバッテリ昇温制御装置において、実施例1と同様にバッテリ昇温処理を実行したときの作動状態を示すタイムチャートである。
【図7】実施例4の電動車両のバッテリ昇温制御装置を適用した後輪駆動のハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図8】実施例4の作動例を示すタイムチャートである。
【図9】実施例5の電動車両のバッテリ昇温制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両の一例を示す概略図である。
【図10】本発明の電動車両のバッテリ昇温制御装置の他の実施例の概略を示す概略図である。
【図11】本発明の電動車両のバッテリ昇温制御装置の他の実施例の概略を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態のクラッチ制御装置は、駆動輪を駆動可能なモータ(MG2)と、電力を生成する発電機(MG2)と、前記モータに電力を供給するとともに、前記発電機が発電した電力を充電するバッテリ(BAT)と、このバッテリの温度を検出するバッテリ温度センサ(28)と、前記モータと前記駆動輪(LT,RT)との駆動伝達経路に設けられ、両者で駆動伝達可能な締結状態と駆動伝達不可能な開放状態とに切換可能なクラッチ(CL)と、前記モータおよび発電機の駆動を制御する制御手段(1)と、を備え、前記制御手段(1)が、前記バッテリ温度があらかじめ設定された開始設定温度よりも低温であるときには、前記クラッチ(CL)を開放させた状態で、前記モータ(MG2)を回転させて前記バッテリ(BAT)の電力を消費する電力消費処理と、前記発電機(MG2)を発電させてモータ回転数を低下させるとともに発電した電力を前記バッテリ(BAT)に蓄電する蓄電処理とを、あらかじめ設定された終了条件が成立するまで交互に繰り返すバッテリ昇温処理を実行することを特徴とする電動車両のバッテリ昇温制御装置である。
【実施例1】
【0012】
図1〜図3に基づき、この発明の最良の実施の形態の実施例1のクラッチ制御装置について説明する。
【0013】
(実施例1の構成)
まず、図1の実施例1の電動車両のバッテリ昇温制御装置が適用された後輪駆動式のハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す概略図に基づき、駆動系および制御系の構成を説明する。
【0014】
実施例1を適用したハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEng、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2、バッテリBAT、クラッチCL、遊星歯車機構PG、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左駆動輪LT、右駆動輪RTを備えている。
【0015】
エンジンEngは、希薄燃焼可能であり、スロットルアクチュエータによる吸入空気量とインジェクタによる燃料噴射量と、点火プラグによる点火時期の制御により、エンジントルクが指令値と一致するように制御される。
【0016】
遊星歯車機構PGは、周知のように、サンギヤSG、キャリアCG、リングギヤRGを備えている。
そして、エンジンEngの出力でキャリアCGを回転可能に、エンジンEngの出力軸EOSがキャリアCGに同軸に結合されている。また、第1モータジェネレータMG1のロータ101が一体に設けられた入出力軸MG1Sが、サンギヤSGに結合されている。第2モータジェネレータMG2のロータ102が一体に設けられた入出力軸MG2Sが、リングギヤRGに同軸に結合されている。リングギヤRGの回転をプロペラシャフトPSに伝達可能な出力ギヤOTGが設けられている。
【0017】
上記の遊星歯車機構PGの構成に基づいて、第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2は、共に発電機として駆動することができるとともに、電動機として駆動できる同期発電電動機を構成しており、インバータ2,2を介してバッテリBATと電力のやり取りを行なう。
【0018】
したがって、両モータジェネレータMG1,MG2の一方で発電される電力を、もう一方で消費することができるようになっている。
そこで、本実施例1では、主として、第2モータジェネレータMG2をモータとして駆動させ、第1モータジェネレータMG1を発電機として使用する。
【0019】
すなわち、第1モータジェネレータMG1が、電動機として機能するときには、キャリアCGから入力されるエンジンEngからの動力と、サンギヤSGから入力される第1モータジェネレータMG1からの動力とを統合して、リングギヤRGに出力する。
また、第2モータジェネレータMG2が電動機として機能するときには、その動力を、リングギヤRGに出力する。
【0020】
なお、リングギヤRGに出力された駆動力は、出力ギヤOTG、クラッチCL、プロペラシャフトPSを介して、左右駆動輪LT,RTに伝達される。
【0021】
クラッチCLは、本実施例1では、スプリング(図示省略)の付勢力にて常時締結(ノーマルクローズ)の乾式クラッチが用いられ、第2モータジェネレータMG2が連結されたリングギヤRGに連結されたプロペラシャフトPSにおいて、第2モータジェネレータMG2と左右駆動輪LT,RTとの間の締結/半締結/開放を行なう。
クラッチCLの、半締結/開放の制御は、クラッチコントローラ14から出力される指令値に基づく油圧アクチュエータ50によるストローク制御により行われる。
【0022】
実施例1を適用したハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、統合コントローラ(制御手段)1と、エンジンコントローラ11と、モータコントローラ12と、バッテリコントローラ13と、クラッチコントローラ14と、を備えている。
【0023】
さらに、ハイブリッド車両の制御系は、走行状態を検出する手段として、第1モータ回転数センサ21と、第2モータ回転数センサ22と、アクセルセンサ23と、エンジン回転数センサ24と、クラッチストロークセンサ25と、ブレーキストロークセンサ26と、車速センサ27と、バッテリ温度センサ28を備えている。
【0024】
統合コントローラ1は、バッテリ状態、アクセル開度、車速(変速機出力回転数に同期した値)、などから発電トルク指令値およびモータトルク指令値などを演算する。そして、この演算結果に基づき、両モータジェネレータMG1,MG2、エンジンEngに対する指令値を、各コントローラ11,12,13,14へと送信する。
【0025】
エンジンコントローラ11は、エンジン回転数センサ24からのセンサ情報を入力するとともに、統合コントローラ1からのエンジントルク指令値を達成するようにエンジントルク抑制制御を行なう。
【0026】
モータコントローラ12は、統合コントローラ1からの発電トルク指令値、モータトルク指令値、モータ回転数指令値を達成するように両モータジェネレータMG1,MG2の制御を行なう。
【0027】
バッテリコントローラ13は、バッテリBATの充電状態(バッテリ充放電量SOC)を管理し、その情報を統合コントローラ1へと送信する。
【0028】
クラッチコントローラ14は、前述のように、油圧アクチュエータ50を制御して、クラッチCLの反締結および開放を制御する。
【0029】
第1モータ回転数センサ21は、第1モータジェネレータMG1の入出力軸MG1Sの回転数を検出する。
第2モータ回転数センサ22は、第2モータジェネレータMG2の入出力軸MG2Sの回転数を検出する。
アクセルセンサ23は、図外のアクセルペダルの操作伝達系に設けられ、アクセル開度を検出する。
エンジン回転数センサ24は、エンジンEngの出力軸回転数を検出する。
クラッチストロークセンサ25は、クラッチCLのストローク位置を検出する。
ブレーキストロークセンサ26は、ブレーキペダル(図示省略)の踏込ストロークを検出する。
車速センサ27は、遊星歯車機構PGのリングギヤRGからプロペラシャフトPSの駆動伝達系に設けられ、車速を検出する。
バッテリ温度センサ28は、バッテリBATの温度を検出する。
【0030】
次に、統合コントローラ1において実行されるバッテリ昇温制御について、図2のフローチャートに基づいて説明する。なお、この制御は、図外のイグニッションスイッチをONとした起動時から実行される。
【0031】
まず、ステップS1では、バッテリ温度が、あらかじめ設定された温度閾値(Tth:開始設定温度および終了設定温度)以下の低温であるか否か判定し、温度閾値よりも高ければステップS11の通常制御に進んで、1回の処理を終了し、温度閾値以下の場合はステップS2以降のバッテリ昇温処理に進む。
なお、温度閾値は、摂氏でマイナスの温度、例えば、−30℃よりも低温に設定されている。この温度閾値は、−30℃に限定されるものではなく、バッテリBATのインピーダンス特性に基づいて適宜設定されるもので、0℃以下の最適温度に設定する。例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池など電池の種類により、インピーダンス特性が異なっており、リチウムイオン電池の場合、ニッケル水素電池よりも温度閾値を相対的に高温に設定する。
【0032】
次に、ステップS2以降のバッテリ昇温処理について説明する。
ステップS2では、運転者の走行要求があるか否か判定し、走行要求が有ればステップS8に進み、走行要求がなければステップS3に進む。運転者の走行要求は、本実施例1では、アクセルセンサ23の検出に基づくアクセルペダルの踏込有無判定により行なう。
したがって、本実施例1では、走行要求が無い場合、車両停止時に加え、惰性走行時が含まれる。
【0033】
ステップS3では、クラッチCLを開放させ、ステップS4に進む。ステップS4では、第2モータジェネレータMG2の回転数である第2モータ回転数が切換設定値以下であるか否か判定し、切換設定値以下の場合はステップS5に進み、切換設定値よりも大きい場合はステップS6に進む。
【0034】
ステップS5では、第2モータジェネレータMG2を力行駆動させて空転させるモータ空回し処理を行ない1回の処理を終了する。
【0035】
ステップS6では、第2モータジェネレータMG2を回生させて慣性力で回転するロータ102、入出力軸MG2S、リングギヤRGを制動するモータブレーキ処理を実行する。なお、このモータブレーキ処理は、ステップS7の処理に基づいて、第2モータ回転数が0となるまで行ない、その後、1回の処理を終了する。
【0036】
運転者の走行要求が有る場合に進むステップS8では、第2モータ回転数が車速に略一致したか否か判定し、略一致した場合はステップS9に進み、略一致しない場合はステップS10に進む。なお、略一致とは、第2モータ回転数と車速との差が、あらかじめ設定された誤差範囲内に収まった状態を言う。
【0037】
ステップS9では、クラッチCLを締結させる。また、ステップS10では、第2モータ回転数が、車速に略一致するようモータ回転数制御を行なう。
なお、このモータ回転数制御では、車両停止時に、バッテリ昇温処理を実行した場合は、車速=0であり、第2モータ回転数は0に向けて制御する。また、惰性走行を行なっている場合にバッテリ昇温処理を実行した場合は、その時点の車速に向けて第2モータ回転数を制御する。
【0038】
(実施例1の作用)
次に、実施例1の作用を説明する。
極寒地においてバッテリ温度が温度閾値よりも低下した状態で、図外のイグニッションスイッチONとして起動した時の動作を説明する。
【0039】
起動時に、バッテリ温度が温度閾値よりも低温であれば、運転者がアクセルペダルを踏込む走行要求操作が成されるまで、バッテリ温度を昇温させるバッテリ昇温処理を行なう(ステップS1→S2→S3)。
【0040】
このバッテリ昇温処理では、クラッチCLを開放させて、第2モータジェネレータMG2の駆動トルクが、左右駆動輪LT,RT側に伝達されない状態とした上で、モータ空回し処理による電力消費と、モータブレーキ処理による発電とを交互に繰り返す。
【0041】
すなわち、運転者の走行要求が無い場合、ステップS3→S4→S5の処理に基づいて、第2モータ回転数が切換設定値(Nth)に達するまで第2モータジェネレータMG2を空回りさせる。そして、モータ回転数が切換設定値(Nth)に達したら、ステップS4→S6→S7第2モータジェネレータMG2により発電させて、リングギヤRG、入出力軸MG2S、ロータなどの慣性回転に制動力を与え、第2モータジェネレータMG2の回転を停止させる。
【0042】
したがって、図3に示すように、第2モータ回転数は、上下を繰り返し、これにより、放電(電力消費処理)と充電(蓄電処理)とが交互に繰り返される。このように、バッテリBATに対して、電力消費と蓄電とが交互に繰り返されることで、バッテリ温度が上昇する。
【0043】
このバッテリ昇温処理は、運転者の走行要求が生じた(ステップS2のYES判定)場合は、中断される。また、バッテリ温度が温度閾値(Tth)を越える終了条件が成立した時点(ステップS1のYES判定)で終了される。
すなわち、バッテリ温度が温度閾値(Tth)を超えた場合には、ステップS1→S11により通常制御が行なわれる。ちなみに、極寒時には、通常、車両を起動させた後、フロントウインドウガラスの曇り取りなどを行なうため、走行を開始するまでに時間を要し、上述のバッテリ昇温処理を行なうのに充分な時間を得ることができる。
【0044】
一方、バッテリ温度が温度閾値(Tth)に満たないタイミングで運転者の走行要求が生じた場合は、第2モータ回転数を、車速に略一致させた後、クラッチCLを締結させる(ステップS8〜S10)。これにより、第2モータジェネレータMG2のモータトルクにより、あるいは必要に応じてこれにエンジントルクを加算して、走行を行なう。
このように、クラッチCLを締結させる前に、第2モータ回転数を車速に一致させるため、クラッチCLの締結時に、ショックが生じることを防止できる。
【0045】
その後、アクセルペダル(図示省略)から足を離して走行要求が無くなった時点で、バッテリ温度が温度閾値(Tth)に達していない場合は、再び、ステップS2〜S6の処理に基づいて、モータジェネレータ空回りとモータブレーキを交互に繰り返すバッテリ昇温処理が、バッテリ温度が温度閾値(Tth)に達するまで行なわれる。
【0046】
(実施例1の効果)
以上説明したように、実施例1では、以下列挙する効果を得ることができる。
a)バッテリ温度が温度閾値(Tth)よりも低温のときには、クラッチCLを開放させて、第2モータジェネレータMG2を空回りさせる電力消費処理と、第2モータジェネレータMG2を発電させて第2モータ回転数を低下させる蓄電処理とを交互に繰り返して、バッテリ温度を上昇させるバッテリ昇温処理が実行される。
このバッテリ昇温処理は、クラッチCLを開放させて行なうため、従来のように、目標駆動トルクの一部を担う範囲で電力消費および蓄電を行なう場合と比較して、第2モータ回転数を高くして電力消費量を高くでき、それに伴い発電量も高くできる。したがって、バッテリBATの昇温に要する時間を短縮できる。
【0047】
b)バッテリ昇温処理は、車両停止時を含み、運転者の走行要求が無い場合に実行するようにしたため、クラッチCLを開放させて、モータトルクあるいはエンジントルクが左右駆動輪LT,RTに伝達されない状態としても、運転者に、その状態を認識させず違和感を与えない
c)バッテリ昇温処理の終了条件は、バッテリ温度が終了設定温度としての温度閾値に達した場合としたため、バッテリBATが過充電されるのを防止できる。
また、運転者の走行要求が生じた場合は、バッテリ昇温処理を中断するようにしたため、運転者の走行要求に応じて、発進あるいは加速を行なうことができ、運転者に違和感を与えることを防止できる。
【0048】
d)バッテリ昇温処理を終了する際には、第2モータ回転数を車速に略一致させてからクラッチCLを締結するため、停車時および惰性走行時共に、クラッチCLの締結時に、ショックが発生するのを防止できる。
【0049】
(他の実施例)
以下に、他の実施例について説明するが、これら他の実施例は、実施例1の変形例であるため、その相違点についてのみ説明し、実施例1あるいは他の実施例と共通する構成については共通する符号を付けることで説明を省略する。
【実施例2】
【0050】
(実施例2の効果)
実施例2は、実施例1の変形例であり、バッテリ昇温処理の一部の処理が実施例1と異なっている。
【0051】
実施例2では、ステップS5のモータ空回り処理(電力消費処理)と、ステップS6のモータブレーキ処理(蓄電処理)とで、第2モータジェネレータMG2の駆動効率を変えている。
すなわち、モータ空回り処理では、モータブレーキ処理と比較して低効率で駆動させている。図4は、第2モータジェネレータMG2の駆動効率を示しており、実線で示す高効率特性HPと、点線で示す低効率特性LPとの2通りの特性が設定されている。
【0052】
なお、
実施例2では、ステップS5のモータ空回り処理(電力消費処理)と、ステップS6のモータブレーキ処理(蓄電処理)とで、モータ効率を変えている。
すなわち、モータ空回り処理では、モータブレーキ処理と比較して低効率で駆動させている。図4は、第2モータジェネレータMG2の駆動効率を示しており、実線で示す高効率特性HPと、点線で示す低効率特性LPとの2通りの特性が設定されている。
【0053】
なお、モータ効率を変えるのにあたり、上述のように第2モータジェネレータMG2の効率を、力行(電力消費)時と回生(蓄電)時とで、異ならせてもよいが、遊星歯車機構PGの変速比に基づいて、両モータジェネレータMG1,MG2とで、効率の良いほうを回生に用い、効率が悪い方を力行に用いるようにしてもよい。
【0054】
(実施例2の作用)
次に、実施例2の作用を説明する。
図5は実施例2において、実施例1と同様にバッテリ昇温処理を実行したときの作動状態を示すタイムチャートである。
この図において、モータ空回り処理(電力消費処理)の実行時には、点線で示す低効率特性LPで駆動し、モータブレーキ処理(蓄電処理)の実行時には、高効率特性HPで運転させる。
【0055】
したがって、モータ空回り処理では、低効率特性LPで運転させることで、第2モータ回転数を同じ切換設定値Nthまで上昇させるのに、高効率特性で運転させる場合よりもバッテリBATの電流を多く消費でき、その分、昇温効果が高まる。
また、モータブレーキ処理の際は、高効率特性で充電が行なわれ、低効率特性で充電する場合よりも、バッテリBATへの充電量を増やすことができる。
このように、電力消費量および蓄電量を高くでき、バッテリ昇温効果を、さらに高めることができる。
【0056】
(実施例2の効果)
以上説明したように、モータ空回り処理(電力消費処理)の際に、モータブレーキ処理(蓄電処理)の場合よりも、低効率で駆動させることでバッテリBATの電流消費量を高めることができるとともに、モータブレーキ処理の際に、高効率で駆動させることでバッテリBATへの充電量を増やし、バッテリ昇温効果を、さらに高めることができる。
【実施例3】
【0057】
(実施例3の構成)
実施例3は、実施例1の変形例であり、バッテリ昇温処理の一部の処理が実施例1と異なっている。
【0058】
実施例3では、ステップS5のモータ空回り処理(電力消費処理)と、ステップS6のモータブレーキ処理(蓄電処理)とを、実行する際に、回転数上昇勾配および回転数下降勾配を、バッテリ温度に応じて異ならせている。すなわち、バッテリ温度が低いほど、両勾配を緩やかにしている。
【0059】
(実施例3の作用)
次に、実施例3の作用を説明する。
図6は実施例3において、実施例1と同様にバッテリ昇温処理を実行したときの作動状態を示すタイムチャートである。
この図に示すように、バッテリ温度が低い場合(=T1)は、第2モータ回転数の上昇勾配および下降勾配が緩やかであり、電流消費量(放電量)および充電量が、相対的に高温時よりも低くなっている。
これに対し、バッテリ温度が高い場合(=T2)は、第2モータ回転数の上昇勾配および下降勾配が緩やかであり、電流消費量(放電量)および充電量が、相対的に低温時よりも高くなっている。
【0060】
(実施例3の効果)
以上説明したように、バッテリ温度が低い場合、モータ回転数の上昇下降を緩やかに行なうことで、極低温時の、過放電、過充電を防止できる。
【実施例4】
【0061】
(実施例4の構成)
実施例4は、実施例1の変形例であり、図7に示すように、クラッチCLの位置が実施例1と異なり、第2モータジェネレータMG2の入出力軸MG2Sに設けられている。
【0062】
この実施例4では、クラッチCLを開放させている状態でも、エンジンEngを駆動させるとともに、第1モータジェネレータMG1で発電を行なうことで、エンジンEngの駆動力で走行させることができる。
【0063】
(実施例4の作用)
実施例4では、バッテリ昇温処理中に、運転者の走行要求が生じた場合、実施例1のステップS2からステップS8の処理に進む間に、エンジンEngの駆動力により走行を開始する処理を行なう。
【0064】
したがって、実施例4の作動例を示す、図8に示すように、運転者の走行要求が生じた時点t1から、エンジンEngの駆動トルクで発進を開始して、瞬時に車速が立ち上がっている。
【0065】
また、実施例4では、第2モータジェネレータMG2に対しては、実施例1と同様に、ステップS8〜S10の処理が成され、第2モータ回転数制御により、第2モータ回転数を車速に一致させる処理を行なった後に、クラッチCLが締結される。これにより、クラッチCLの締結時のショック発生を抑制できる。
【0066】
(実施例4の効果)
以上説明したように、実施例4では、バッテリ昇温効果を高めながら、運転者の走行要求に応じて、タイムラグ無しに、瞬時に走行開始が可能である。
【実施例5】
【0067】
(実施例5の構成)
実施例5は、図9に示すように、各モータジェネレータMG1,MG2、バッテリBAT、エンジンEngを同一系統の冷却装置200で冷却した例である。
【0068】
冷却装置200は、オイル、水、空気などの冷却媒体を、各モータジェネレータMG1,MG2、バッテリBAT、エンジンEngを循環させる冷却路201を備えている。また、冷却路201には、冷却媒体の放熱を行なう冷却器202および冷却媒体を循環させるポンプ203を備えている。
【0069】
(実施例5の作用)
バッテリ温度が温度閾値(Tth)よりも低温の場合、実施例1〜4で示したバッテリ昇温処理を実行することで、バッテリBATが暖められる。また、バッテリ昇温処理によりバッテリ、第1モータジェネレータMG1、第2モータジェネレータMG2を昇温させた際に、その熱が、冷却装置200によりエンジンEngにも伝達され、エンジンEngの昇温を早め、燃費向上を図ることができる。
【0070】
また、走行によりエンジンEngで発生した熱を、バッテリBATに伝達して、バッテリ昇温処理が実行できないときでも、バッテリBATの昇温を図ることができる。
【0071】
(実施例5の効果)
以上のように、実施例5では、冷却装置200によりバッテリ昇温処理で発生した熱を、エンジンEngにも回して、燃費の向上を図ることができる。
【0072】
また、この効果を効果的に得るには、冷却媒体の温度が低い場合には、冷却器202を迂回するバイパス路およびバルブを設けるのが好ましい。
また、圧力発生手段を備え、図示を省略した能動的な制動が可能なブレーキ装置を備えている場合、左右駆動輪LT,RTを制動し、さらに、クラッチCLを締結させ、第2モータジェネレータMG2を、負荷を大きくした状態で駆動させると、いっそう昇温効果を高めることができる。
【0073】
以上、本発明のクラッチ制御装置を、実施の形態および実施例1〜5に基づき説明してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0074】
例えば、実施例1〜5では、第2モータジェネレータMG2が、電力消費処理および蓄電処理を行なう例を示したが、図10に示すように、力行のみを行なって左右駆動輪LT,RTを回転させるモータMOと、エンジンEngからの回転入力で発電のみを行なう発電機GEを設けた構成としてもよい。
【0075】
また、実施例1〜5では、ハイブリッド車両を示したが、図11に示すように、エンジンEngを有しない電動車両に適用してもよい。この図11に示す例では、モータジェネレータMGは、力行と発電とを行なうことができ、特許請求の範囲のモータと発電機とを兼ねる。
【0076】
また、実施例1〜5では、開始設定温度と終了設定温度とを共通の温度である温度閾値(Tth)としたが、これに限定されず、両温度を異なる温度に設定してもよい。例えば、開始設定温度を終了設定温度よりも低く設定し、バッテリ昇温処理を、バッテリ温度が開始設定温度よりも高くなるまで実行するようにしてもよい。
【0077】
また、実施例1〜5では、運転者の走行要求が生じた場合は、バッテリ昇温処理を中断するようにした例を示したが、運転者の走行要求が生じた時点で、バッテリ昇温処理を終了するようにしてもよい。この場合、運転者の走行要求に応じて、発進あるいは加速を行なうことができ、運転者に違和感を与えることを防止できる。この場合、バッテリBATが温度閾値に達する前にバッテリ消音処理を終了したとしても、バッテリ昇温処理を行なわないものよりも、バッテリ温度を高めることができる。特に、実施例5を適用している場合、走行を開始すれば、冷却装置200を利用してバッテリ温度が上昇されるため、バッテリ昇温処理を終了しても、バッテリ温度を上昇させることができる。
【0078】
実施例1〜5では、FRハイブリッド車両に適用した例を示したが、例えば、FFや4輪駆動のハイブリッド車両および電動車両に対しても本発明の制御装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 統合コントローラ(制御手段)
28 バッテリ温度センサ
BAT バッテリ
CL クラッチ
Eng エンジン
GE 発電機
LT 左駆動輪
RT 右駆動輪
MG モータジェネレータ
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 モータジェネレータ(モータ、発電機)
MO モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を駆動可能なモータと、
電力を生成する発電機と、
前記モータに電力を供給するとともに、前記発電機が発電した電力を充電するバッテリと、
このバッテリの温度を検出するバッテリ温度センサと、
前記モータと前記駆動輪との駆動伝達経路に設けられ、両者で駆動伝達可能な締結状態と駆動伝達不可能な開放状態とに切換可能なクラッチと、
前記モータおよび発電機の駆動を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段が、前記バッテリ温度があらかじめ設定された開始設定温度よりも低温であるときには、前記クラッチを開放させた状態で、前記モータを回転させて前記バッテリの電力を消費する電力消費処理と、前記発電機を発電させてモータ回転数を低下させるとともに発電した電力を前記バッテリに蓄電する蓄電処理とを、あらかじめ設定された終了条件が成立するまで交互に繰り返すバッテリ昇温処理を実行することを特徴とする電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記バッテリ昇温処理を、車両停止時に実行することを特徴とする請求項1に記載の電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記バッテリ昇温処理の終了条件が、前記バッテリ温度があらかじめ設定された終了設定温度に達するか、車両停止状態が解除されるかの、少なくとも一方であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記バッテリ昇温処理の実行時において、電力消費処理時に前記モータを駆動させる際に、前記蓄電処理時に前記発電機を駆動させる際と比較して、仕事効率が悪く設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記電力消費処理の実行時に、前記バッテリ温度が低いほど、モータ回転数を低く制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【請求項6】
前記モータおよび前記発電機との少なくとも一方と、前記バッテリとに、同一系統の冷却媒体を循環させて冷却装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【請求項1】
駆動輪を駆動可能なモータと、
電力を生成する発電機と、
前記モータに電力を供給するとともに、前記発電機が発電した電力を充電するバッテリと、
このバッテリの温度を検出するバッテリ温度センサと、
前記モータと前記駆動輪との駆動伝達経路に設けられ、両者で駆動伝達可能な締結状態と駆動伝達不可能な開放状態とに切換可能なクラッチと、
前記モータおよび発電機の駆動を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段が、前記バッテリ温度があらかじめ設定された開始設定温度よりも低温であるときには、前記クラッチを開放させた状態で、前記モータを回転させて前記バッテリの電力を消費する電力消費処理と、前記発電機を発電させてモータ回転数を低下させるとともに発電した電力を前記バッテリに蓄電する蓄電処理とを、あらかじめ設定された終了条件が成立するまで交互に繰り返すバッテリ昇温処理を実行することを特徴とする電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記バッテリ昇温処理を、車両停止時に実行することを特徴とする請求項1に記載の電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記バッテリ昇温処理の終了条件が、前記バッテリ温度があらかじめ設定された終了設定温度に達するか、車両停止状態が解除されるかの、少なくとも一方であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記バッテリ昇温処理の実行時において、電力消費処理時に前記モータを駆動させる際に、前記蓄電処理時に前記発電機を駆動させる際と比較して、仕事効率が悪く設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記電力消費処理の実行時に、前記バッテリ温度が低いほど、モータ回転数を低く制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【請求項6】
前記モータおよび前記発電機との少なくとも一方と、前記バッテリとに、同一系統の冷却媒体を循環させて冷却装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電動車両のバッテリ昇温制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−200570(P2010−200570A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45439(P2009−45439)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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