説明

電動送風機およびそれを用いた電気掃除機

【課題】インペラファン回転により負圧になり、軸受からファン側へ空気流れが発生し、軸受部品から潤滑グリスが洩れることにより、軸受部品の潤滑グリス不足による信頼性低下が発生。
【解決手段】インペラファン12の後面シュラウド12aとフレーム前10aとの間に円環状突起部31を有したシール板32を配し、フレーム前10aに支持されシール板32の突起部31と接触する円環状の軸受リング30を構成することにより、突起部31と軸受リング30のシール作用により、インペラファン12側への空気流れを少なくし、軸受9からの潤滑グリス洩れを抑えることができ、ファン効率向上および軸受9の信頼性向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易なシール構成により、軸受側からのファン負圧側への空気洩れせず、軸受信頼性向上を簡易な構成で行う電動送風機およびそれを用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動送風機は、家庭用の電気掃除機に多く利用されている。電気掃除機には、強い吸引力が望まれており、より強い吸引力を得るためには、電気掃除機の電動送風機の送風性能を向上する必要がある。送風性能向上には、ファン出力増加ともに、ファン効率向上も望まれている。ファン効率向上には、ファン開発における設計項目(直径アップ等)以外にファン小径による円盤摩擦損失を低減し、ファン高速回転化による効率向上も設計項目に含まれており、ファン効率向上のため、開発項目として必須である。
【0003】
電動送風機は、大きく5つの部品により構成されている。高速で回転することにより、風量と圧力(動圧と静圧)を発生させるファンとしてのインペラファン部品、インペラファンにより発生した動圧を静圧に変換し、ファンの効率に寄与できるようにするエアガイド部品。(いわゆるディフューザガイドである。)また、インペラファンとエアガイドを覆い、内部の空気を洩らさない、外部からの空気浸入させないために、構成される外郭部品のファンケース。電気により回転する回転軸を有する回転子と固定子により構成されるモータ部、回転軸の両端部を支持する軸受部とその軸受を保持し、軸受と固定子を覆うフレームの大きく5点により構成されている。
【0004】
インペラファンは、複数の部品により組立構成されている。中央に吸込み口を有する前面シュラウドと後面シュラウドと、一対のシュラウド間に狭時されるブレードと、ブレードの吸込口側を接合され、前面シュラウド及び後面シュラウドによって前後から押さえつけられるインデューサを有し、インデューサの基部を構成するハブ内部に、回転軸を固定する筒状スペーサーを有し構成されている。
【0005】
インペラファン部は、回転数増加に伴い、インペラファンへかかる負担も増加するため、インペラファン構造(強度、材料、構造体)や組付け時の組み付け不良等により、インペラファン部が他部品(エアガイドやファンケース)との接触により破損やインペラファン強度不足により回転数増大による遠心力増大、ファン出力増加によるインペラファンへかかる圧力増大によりインペラファンが変形し、ファンの性能低下、寿命低下(信頼性低下)が懸念される。
【0006】
前述のように、電動送風機のファン部のインペラファン部は、風量と圧力を発生させるファン性能にとって重要部品であるとともに、ファンの信頼性を確保する上でも重要部品である。
また、前述のインペラファンと同様に、回転軸の両端部を支持する軸受部についても、モータ部の回転トルクを損失を少なく、インペラファンに伝達する。ファンの信頼性を確保する上で重要部品である。
【0007】
軸受部はいわゆるころがり軸受(以下、軸受)が電動送風機には、一般的に使用されており、回転数増加に伴い、インペラファン同様に軸受へかかる負担も増加する。そのため、軸受が正規寿命を迎えるまでに、使用不能になる軸受の寿命低下(信頼性低下)が懸念される。
【0008】
一般的には、軸受が正規寿命までに使用不能になるには、軸受のころがり運動を行う、ころまたは球(ボール)への大荷重による破損や、組み付け時の組み付け不良以外には、軸受の外輪や内輪と、ころまたは球への潤滑を行う潤滑グリス不足による破損と軸受への異物混入による破損が多くの使用不能となる原因を占めている。潤滑グリス不足や異物混入等により破損を未然に防止し、より軸受を正規寿命までの状態へ導く軸受信頼性向上も必須技術である。
【0009】
従来では軸受の信頼性向上を図るため、様々な技術が開発されている。例えば軸受の信頼性向上には、以下の構成としたものもある。整流子モータのファン軸受の少なくともどちらか一方に接触式のシール板を配し、軸受を防塵し軸受信頼性を向上するものである(例えば特許第文献1参照)。
【0010】
図4〜図7において、図4は、上記特許文献1に記載された従来の電動送風機の断面図、図5は、同電動送風機の軸受拡大断面図、図6は、同電動送風機を用いた従来の電気掃除機の概略構成図である。
【0011】
図4において、従来のこの種の電動送風機51は、モ−タ部53と、ファン部52から構成され、モ−タ部53の回転子38は、整流子、回転子巻線(図示しない)を有し、前記回転子巻線は、電機子コア外周に巻かれている。
【0012】
前記回転子38は、モ−タ部53の回転軸37の両端には軸受40、41が圧入され、この軸受40,41がファン側フレーム54と反ファン側フレーム55にて保持されることにより、支持されている。そして、前記回転子38は、巻線を有した固定子39を内包し回転軸37を支持する軸受40,41を保持した反ファン側フレーム55により覆われて構成されている。
【0013】
ファン部52は、ファン側フレーム54と、空気を吸引、吹き出しを行うインペラファン43とインペラファン43の間に形成した吹き出された空気の動圧を静圧に変換・整流用のエアガイド44があり、インペラファン43の上方はファンケース46で覆われている。
【0014】
インペラファン43は、アルミなどのプレス部品によって組立てられ、複数枚のブレード42を、平面の円板形状からなる後面シュラウド42bと傘形の円板形状からなる前面シュラウド42aによって挟持しており、焼結や真鍮からなるスペーサー57、板金などからなる座金56、及びナット58により回転軸37に固定され、回転軸37とともに回転する。
【0015】
エアガイド44は、ネジ(図示せず)等にてファン側フレーム54に固定しており、ファン側フレーム54と反ファン側フレーム55もネジ(図示せず)等にて固定してある。
【0016】
次に、図5を用いて、前記電動送風機の軸受部の構成について説明する。
【0017】
図5において、軸受40の内部構成は、内輪40cと外輪40bと、その上下を覆うシール板40d、40eで内部をシールしており、ファン側のシール板40dは、内輪40cと非接触、反ファン側のシール板40eは、内輪40cと接触する仕様となっている。一般的には、非接触のシール板40dは鉄、接触する方のシール板40eはゴムでそれぞれ構成されている。
【0018】
従来の電動送風機(図示しない)では、負荷側の軸受の上下2つのシール板とともに非接触の鉄シールを施してきたが、電気掃除機の吸引性能の向上に伴い、ファン部内の真空
圧が向上し、結果、負荷側の軸受内部の僅かな隙間を通り、モ−タ部側からファン部側に向って僅かな空気洩れが発生し、その僅かな空気洩れにより、ファン部の吸引性能低下および軸受からの潤滑グリス洩れが発生する。そのため、ファン部吸引性能の低下および軸受の信頼性の低下要因の一つとなっていた。
【0019】
従って、図5に示すように、軸受40の反負荷側のシール板40eを内輪40cと接触させることで、モ−タ部53側からファン部52側に向っての空気洩れを防ぎ、ファン部52の吸引性能向上および軸受の潤滑グリス洩れの防止を図っていた。
【0020】
このような構造で、従来の電動送風機51は構成されており、動作・作用としてはインペラファン43が回転することによって発生する吹き出し風が、インペラファン43の吹き出し口11bの外周に設けた整流用のエアガイド44を通過した後、モ−タ部53の回転子38、固定子39を冷却し、反ファン側フレーム55を通過して後方に排気される。
【0021】
従来の電動送風機51が組み込まれた電気掃除機は、図6のような構造となっている。図6において、電気掃除機本体61(以下、「本体61」と称す)は、中央部に設けられた格子隔壁62より集塵室63と、モ−タ室64に分けられており、集塵室63には紙袋65が、モ−タ室64には上記電動送風機51が備えつけられている。本体61には、接続パイプ66、ホ−ス67、先端パイプ68、延長管69、ノズル70が順次接続されている。
【0022】
上記従来の電気掃除機の作用としては、電動送風機51の吸引力によりノズル70から集められたゴミは、延長管69、先端パイプ68、ホ−ス67、接続パイプ66を通り、集塵室63の紙袋65に集める構成になっている。
【0023】
また、軸受信頼性向上を図る構成として、前述以外の方法として図7に示すものもある。図7は、前述の従来の特許文献1以外の方法の電動送風機の軸受拡大図を示すものである。ファン部のインペラファン回転により負圧になるため、軸受部からの空気流入を防ぐために、モータハウジング室外径より大きい径の円形の接触リングをエアガイド底面部に接触固定し、空気洩れを少なくし、ファン性能を向上するものである。(例えば特許文献2参照)
図7は、負荷側の軸受40の反負荷側のシール板40eについても、非接触シール構成、で上下のシール板40d、40e共に非接触の標準ころがり軸受としたものである。
【0024】
インペラファン43を回転軸37に固定、位置決めするために、インペラファン43の後面シュラウド42bの底面部には、焼結や真鍮などからなるスペーサー57と、板金などからなる座金56を有し、後面シュラウド42bの吸引側面部は、座金56を介して、ナット58により回転軸37に固定されている。後面シュラウド42bの底面部に位置する座金56について、軸受40を収めたファン側フレーム54のハウジング室127の外径Aよりも大きい径とされており、座金56の反負荷側外周面には、先端が鋭角に形成された円形接触リング124が、樹脂で形成されたエアガイド44の底面部との接触を行う構成である。
【0025】
上記のような構成とすることで、インペラファン43の後面シュラウド42bの底面に設けた座金56はエアガイド44の中央部間で、接触シールを実施することができるため、負荷側軸受40の上下シール板40d、40eの両側共に非接触の標準軸受仕様であっても、ファン負圧によるモ−タ部53側からファン部52側への空気流れを防ぐことが可能となるとされるものである。接触ゴムシール仕様に比べて、ゴムと鉄からなる内輪40cとの接触であったのに対し、樹脂材料と鉄材料の接触おおび、円形接触リング124の先端部を鋭角な形状で構成していることから、接触による機械摩擦損失を接触ゴムシール
式軸受に比べ低減することができるとされているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特許第3538006号公報
【特許文献2】特開2010−144521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、従来の電動送風機51は、30,000〜45,000r/minという高速回転で運転される。前記従来の電動送風機51の特許文献1の構成では、軸受40の外輪部に取り付け固定されたゴム材質からなるシール板40eを、30,000〜45,000r/minという高速回転で軸受40の内輪と接触回転するもので、接触シール式軸受40は、非接触シール式軸受より、機械摩擦損失が増大し、入力電力も増大する。
【0028】
空気流れを少なくするのと軸受40の潤滑グリス漏れを少なくするためには軸受40を接触式シールにし、軸受40にシール板を配置構成する必要がある。いわゆる外輪40bと内輪40cのシール板40d、40eを構成し、軸受40隙間をタイトにする必要がある。従来の特許文献1の方法により、軸受40を通過する空気洩れを少なくすることはできるが、結果としてシール板が40d、40e高速回転で運転される電動送風機51では、接触による機械摩擦損失の増大によることから総合的には、ファン効率が低下するという課題を有していた。
【0029】
また、接触ゴムシール式の軸受40は、一般的に使用されている鉄材料で構成される非接触シール軸受と比較すると一般的に流通数が少なくゴムと鉄という異材料のため構成および組立が複雑化し、価格が高価になる。また、極めて軸受40近傍でゴムが接触することにより、接触部から発生するゴムの削りカスが軸受部へ侵入し、軸受40の信頼性低下を招くという課題を有していた。
【0030】
また、電動送風機51が更なる出力増加を求めるために、回転数増加を行った場合、例えば45,000〜120,000r/minという高速回転化を行った際には、機械摩擦損失は荷重に比例するため遠心力増加により増大する。
【0031】
また、接触ゴムシールのため、ゴムの削りカスも増大する。削りカスは軸受40部に侵入し、異物混入による軸受40の信頼性低下という課題を有していた。
【0032】
また、従来の特許文献2では、円形接触リング124と非接触シール式軸受40により、機械摩擦損失が従来特許文献1に比べ増大せず、ファン側への空気流入を少なくするため、ファン効率の低下は少ないものとされている。しかしながらインペラファン43の回転によりインペラファン43側へ発生した空気流れにより、軸受40の潤滑グリスが圧力差によりインペラファン43側へ洩れ出す。潤滑グリスは、円形接触リング124によりインペラファン43側へは洩れ出すことはないが、ハウジング外径以上の大きさで形成されているため、容積が大きく、円形接触リング124内部には、軸受40より洩れ出す潤滑グリスもその容積に比例し、増加。容積内に潤滑グリスがサイズに応じて溜まる量も比例する。
【0033】
電動送風機51が更なる高速運転が行われることにより、負圧による空気流れも増大し、軸受40から流出する潤滑グリスも増大し、軸受40の信頼性低下がさらに課題になる。
結果として、潤滑グリスが軸受40より洩れ出すことで信頼性低下という課題を有してい
た。
【0034】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、円環状の接触リングと円突起のシール作用で、軸受40からの潤滑グリス洩れを少なくすることにより、軸受部品の信頼性向上を図る構成であり、軸受部からインペラファン部への空気洩れも低減する高効率化も図る構成とした電動送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動送風機は、
回転軸を有する回転子と固定子とを対向配置したモータと、
前記回転軸の少なくとも一端を支持する軸受を保持し、前記軸受と前記固定子を覆うフレームと、
前記回転軸の端部に固定され、中央に吸込口を有する前面シュラウドと前記前面シュラウドに対向する後面シュラウドと前記1対のシュラウド間に挟持される複数枚のブレードとで構成されたインペラファンと、
中央に吸気口を有し、前記インペラファンを覆うファンケースと、
前記後面シュラウドと前記フレームとの間に配置され、前記フレーム側に突出した円環状突起を有したシール板と、
前記フレームに支持された円環状の軸受リングと、を備え、
前記円環状の軸受リングは、前記円環状の軸受リングの中心が前記回転軸の略中心に合うように配置され、前記シール板の円環状突起全周が前記円環状の軸受リングと接触するように構成したものである。
【0036】
これによって、フレームに支持された円環状の軸受リングと前記後面シュラウドと前記フレームとの間に、前記フレーム側に突出した円環状突起を有したシール板とによるシール作用により、ファン回転により負圧になったインペラファン部への軸受からの空気流れを少なくすることが出来る。また、インペラファンの回転による遠心力および圧力差による空気流れの影響により軸受からの潤滑グリスが洩れ出すが、後面シュラウドと前記フレームとの間に配した円環状突起を有したシール板よびフレームに支持された円環状の軸受リングにより、空気より粘性、密度、比重が大きな軸受の潤滑グリスはその接触部を通過することができず、潤滑グリス洩れを低減することができる。また、円環状突起と円環状軸受リングとのシールは、軸受外輪外径より小さく構成されているため、内部の容積が少ないことから、軸受から潤滑グリス少量しか洩れ出すスペースは無く、結果として、軸受からの潤滑グリス洩れを防止し、軸受の信頼性向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の電動送風機は、円環状の軸受リングと円環状突起のシール作用で軸受からの潤滑グリス洩れを少なくすることにより、軸受部品の信頼性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1における電動送風機の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における軸受部周辺の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における電気掃除機の本体構成の縦断面図
【図4】従来の電動送風機の一部断面図
【図5】従来の電動送風機の軸受部の部分断面図
【図6】従来の電動送風機を用いた電気掃除機の概略構成図
【図7】従来の電動送風機の軸受部の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0039】
第1の発明は、回転軸を有する回転子と固定子とを対向配置したモータと、
前記回転軸の少なくとも一端を支持する軸受を保持し、前記軸受と前記固定子を覆うフレームと、
前記回転軸の端部に固定され、中央に吸込口を有する前面シュラウドと前記前面シュラウドに対向する後面シュラウドと前記1対のシュラウド間に挟持される複数枚のブレードとで構成されたインペラファンと、
中央に吸気口を有し、前記インペラファンを覆うファンケースと、
前記後面シュラウドと前記フレームとの間に配置され、前記フレーム側に突出した円環状突起を有したシール板と、
前記フレームに支持された円環状の軸受リングと、を備え、
前記円環状の軸受リングは、前記円環状の軸受リングの中心が前記回転軸の略中心に合うように配置され、前記シール板の円環状突起全周が前記円環状の軸受リングと接触するように構成した。これによって、フレームに支持された円環状の軸受リングと前記後面シュラウドと前記フレームとの間に、前記フレーム側に突出した円環状突起を有したシール板とによるシール作用により、30,000〜45,000r/minという高速で運転される電動送風機でも、高速なインペラファン回転により負圧になったインペラファン部への軸受からの空気流れを少なくすることが出来る。
【0040】
また、高速なインペラファンの回転による遠心力および圧力差による空気流れの影響により軸受からの潤滑グリスが洩れ出すが、後面シュラウドと前記フレームとの間に配した円環状突起を有したシール板よびフレームに支持された円環状の軸受リングは、ラビリンスシールと呼ばれる構造を有しており、空気より粘性、密度、比重が大きな軸受の潤滑グリスはその接触部を通過することが少なくなり、潤滑グリス洩れを低減することができる。また、電動送風機の45,000〜120,000r/minという更なる高速回転化を行った際でも、インペラファン高速回転により、軸受部からインペラファン部への空気流れも増大し、軸受の潤滑グリス洩れも回転数に比例する。
【0041】
また、機械摩擦損失は荷重に比例するため遠心力増加によりに増大することになるが、円環状の突起部と軸受リングの接触により、シールすることにより、突起部の接触のため、接触面積を少なくし、摩擦損失を低減することができる。また、シールすることにより、潤滑グリス漏れおよび空気漏れも少なくすることができるため、電動送風機の効率低下を防止し、軸受の信頼性低下を防止することができる。
【0042】
第2の発明は、特に第1の発明の円環状突起を有したシール板を後面シュラウドと一体構成にした。これによって、円環状突起を有したシール板をダイカスト工法や鋳造、鋳物、鍛造、焼結あるいはプレスと様々な工法を用いて、前記後面シュラウドに一体として形成することにより、部品点数の削減、部品軽量化、組立工数削減、組み付け精度の向上することとなり、より簡易な構成で電動送風機の提供ができる。
【0043】
第3の発明は、特に第1または第2の発明の円環状突起の外径および前記円環状の軸受リングの外径は、前記軸受の外径より、小さくしたことにより、円環状の軸受リングと円環状突起のシール作用により、軸受からの空気流れを少なくすることができる。また、ファン回転による負圧により、圧力差による空気流れの影響によって軸受から潤滑グリスが若干シール部まで洩れ出すが、円環状突起と円環状軸受リングとのシールを軸受外輪外径より小さく構成することにより、シール部が内側に寄るためこの軸受よりシール部の内側まで漏れ出す潤滑グリスの容量を少なくすることができる。そのため、結果として、軸受からの潤滑グリス洩れを防止し、軸受の外輪や内輪ところまたは球への潤滑を行う潤滑グリス不足による破損を防止し信頼性向上を図ることとなる。
【0044】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の円環状の軸受リングを摩擦係数の低い樹脂材料にて構成したことにより、シール板部の素材であるアルミまたは鉄系の材
料、またはエンプラ等の高強度材料で構成された円環状の突起より、比較的軟らかい摩擦係数の低い樹脂材料の円環状の軸受リングとすることにより、円環状の突起が円環状の軸受リングとの接触面積が増える。
【0045】
また、接触面積が増えることにより、円環状の突起と円環状の軸受は接触シールと呼ばれる構造を有しており、通常の接触シールの機械摩擦損失は荷重に比例するため、回転数増加に対する遠心力増加により増大する。そのため、円環状の突起より比較的摺動性の良い、摩擦係数の低い樹脂材料で構成された円環状の軸受リングに接触することで、シール性が良好になると同時に、機械摩擦損失を低減することができる。
【0046】
また、その際、円環状の軸受リングは、フッ素樹脂(PTFE)に代表されるような低摩擦係数の樹脂材料を使用することにより、機械摩擦損失を低減することができ、摩擦損失によるファン性能低下を低減することができる。
【0047】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の電動送風機を搭載した電気掃除機とすることにより、強い吸引力を有し、ゴミ取れ性がよく、電動送風機の軸受信頼性が向上した電気掃除機となる。
【0048】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0049】
(実施の形態1)
図1〜図3は、本発明の第1の実施の形態における電動送風機の構成を示すものである。
【0050】
図1は同電動送風機の断面図であり、図2は、同電動送風機の軸受部周辺の断面図であり、図3は、同電動送風機を用いた電気掃除機の構成を表す縦断面図である。
【0051】
図1〜図3に示すように、電動送風機1aは、回転軸2を有する回転子3と、回転子3の外周に隙間を設けて配置され巻線4が巻かれたコア5aで構成される固定子6と、コア5a外周部に溝7aを設け嵌め合い固定した複数の第2の案内翼8aと、回転軸2の軸受9を保持し固定子6を覆う吸い込み気流上流側に位置する前側のフレーム前10aと吐き出し方向に位置するフレーム後10bとで構成されるブラシレスモータ11と、回転軸2に固定され、中央部に吸気口を有した傘形の円板形状からなる前面シュラウド12bと平らな円板形状をした後面シュラウド12aで、中心部から空気を吸い込み外周部に空気を吹き出すブレード12cを挟み込み支持して構成されたインペラファン12と、インペラファン12を覆うファンケース13と、フレーム前10aと当接して配置され複数の第1の独立風路16を形成するモータケース15を備えている。
【0052】
図2においては、本発明の電動送風機の軸受部周辺の断面図であり、前述したフレーム前10aと回転軸2と軸受9の断面形状を現している。
【0053】
その中でインペラファン12の底面部に位置する後面シュラウド12aのフレーム前10a側面には、フレーム前10a側に突出した円環状の突起部31を配したシール板32を配している。また、フレーム前10aには、シール板32の円環状の突起部31の全周が接触するように支持配置された円環状の軸受リング30を有している。
【0054】
尚、円環状の軸受リング30は、円環状の軸受リング30の中心と回転軸2の略中心が合うように支持配置されており、シール板32の円環状の突起部31の全周が円環状の軸受リング30を接触するように構成されている。
【0055】
軸受リング30は、フッ素樹脂(PTFE)等に代表されるような低摩擦係数の樹脂材料で構成された円環状の軸受リング30である。本実施の形態では、前述の樹脂材料を用いた構成で説明をするが、本発明はこれに限定されるものではなく、摺動性がよく、シール性を満たすものであればよく、ポリフェニレンサンファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、等の耐磨耗性を持った樹脂材料であればよい。また、他の樹脂材料でも可能であり、耐摩耗性および摺動性が良い樹脂材料で、接着剤との接着性がよい樹脂材料を用いて構成してもよい。
【0056】
また、樹脂材料以外の鉄、アルミ系、焼結合金、真鍮等材料、あるいは、ゴム等の弾性体の材料を用いて構成してもよく、シール板32の円環状の突起部31との接触で機械摩擦損失を低減し、なおかつ潤滑グリス洩れを低減するシール構成を保てれば、本発明は上述の樹脂材料に限定されるものではなく、本発明にかかる効果も同等に発揮できることは言うまでもない。
【0057】
なお、シール板32の円環状の突起部31と円環状の軸受リング30との接触代が接触シールによるタイト部になる。いわゆるクリアランスがなく常時接触している状態で構成することで、接触シールのシール性を良好に保つことなり、潤滑グリス洩れおよび空気洩れを低減することができる。
【0058】
しかしながら、この接触代を大きくするためには、シール板にかかるスラスト方向の荷重が大きくなる。
【0059】
機械摩擦損失は、荷重に比例するため、機械摩擦損失も増大する。したがって、接触代については、電動送風機の運転条件(回転数およびファン出力)により、左右されるため、電動送風機の運転条件に応じて実験的に最適値を求める必要がある。同様に突起部31の形状についても、先端形状については鋭角突起や鈍角突起、90度の直角三角形や、あるいはR面取り状の突起等の形状で構成することが可能である。
【0060】
あるいは、インペラファン12に円環状の突起部31を有したシール板32をダイカスト工法や鋳造、鋳物、鍛造、焼結あるいはプレスなどの工法を用いてインペラファン12に備える構成として、後面シュラウド12aに一体構成することも可能であるが、本発明は前述の形状に限定するものではなく、機械摩擦損失を抑える形状で、接触代を少なくシール性を保つ形状であればよく、本実施の形態の形状に限定するものではない。
【0061】
なお、円環状の突起部31やインペラファン12後面シュラウド12aに一体形状についての工法および寸法についても前述のとおり、電動送風機の運転条件に左右されるため、実験的に最適値を求める必要がある。
【0062】
回転軸2の軸受9については、フレーム前10aに構成配置されている外輪9bと回転軸2に構成配置され回転子3とインペラファン12と共に回転する内輪9c、回転軸2からの回転荷重を受けた内輪9cとつなげるボール部9a、ボール部9aを均等な位置間隔に配置し、外輪9bと内輪9cとにボール9aを保持する保持器(図示しない)により構成された、いわゆるころがり軸受である。
【0063】
この軸受9には、潤滑グリス(図示しない)が内臓されており、軸受9の外輪9b、内輪9c、ボール部9aを潤滑している。潤滑グリスの洩れを防止するのと軸受外部からの塵埃や異物の侵入を防止するシールプレート9dを軸受9のインペラファン12に対して、スラスト方向の前後に配置している。この前後のシールプレート9dは、外輪9bに固
定されており、内輪部9cには接触をしていない構成のいわゆる非接触シール構成とした軸受9である。
【0064】
加えてインペラファン12を回転軸2に固定および位置決めをするために、インペラファン12の底面部に位置する後面シュラウド12aの底面部には、フレーム前10a側に突出した円環状の突起部31を配したシール板32を配し、シール板22の底面部には、焼結や真鍮などからなる筒状のスペーサー33が構成されシール板32および筒状のスペーサー33を介して、ナット34により、回転軸2にインペラファン12は固定されている。
【0065】
シール板32は、アルミや鉄、焼結合金、真鍮等の金属により構成されている。フレームのモータケース15は通気路14上流から下流にかけて所定の角度で拡がる円錐形状を有しており、第1の案内翼15aはモータケース15内壁に当接している。それに伴い、第1の独立風路16とそれに連通する第2の独立風路18とで形成される一連の独立風路は、通気路14の上流から下流にかけて断面積が連続的に大きくなっている。
【0066】
またインペラファン12の前面シュラウド12bの中央に設けた吸気口の先端部とファンケース13の中央に設けた吸気口13aとは、インペラファン12が回転駆動可能な状態でPTFE等の樹脂材料で構成されて円環状のリング19を介して動的シールされている。
【0067】
図3において、電気掃除機20は、本体吸気口21に連通した集塵室22と本体排気口23を備えた送風室24とを有する掃除機本体25と、集塵室22に本体吸気口21と気密に装着された集塵袋26と、送風室24に設置された電動送風機1aと、電動送風機1aを覆う難燃性の樹脂材料等で構成された防音カバー27と、送風室24の上下に配置された吸音材28とから構成されている。なお図示していないが、本体吸気口21には、ホース、延長管が順次接続され、延長管の先端には、床面上の塵埃を吸引するノズルが取り付けられている。
【0068】
以上のように構成された電動送風機およびそれを用いた電気掃除機について、以下その動作、作用を説明する。
【0069】
まず、電動送風機1aの動作について説明する。図1において、巻線4を励磁することで回転磁界が発生し、回転磁界と同期して回転子3が回転し、回転軸2には、フレーム前10a側の軸受9から順に、筒状のスペーサー33、シール板32、インペラファン12となり、ナット34で回転軸2に締結され、固定されたインペラファン12が回転する。
【0070】
インペラファン12は、中央部に吸気口を有した傘形の円板形状からなる前面シュラウド12bと平らな円板形状をした後面シュラウド12aで、中心部から空気を吸い込み外周部に空気を吹き出すブレード12cを挟み込み支持して構成されているため、回転軸2の回転とともに、インペラファン12の回転で生じる遠心力により、インペラファン12内の空気がインペラファン12の中央部に配された吸気口から傘型の円板形状の前面シュラウド12bの形状に沿って、同じくインペラファン12に配されているブレード12cによって掻き出され、インペラファン12内の外周方向へかつ後方へと押しやられ、インペラファン12内は負圧になる。
【0071】
負圧になったインペラファン12内部には、ファンケース13の吸気口13aおよび前面シュラウド12bの中央部の吸込口からインペラファン12内へ空気が流れ込み、インペラファン12に流れ込む気流が発生する。気流はインペラファン12の中心部の吸気口13aから軸方向に流入し、前面シュラウド12b、ブレード12cに沿って流れた後イ
ンペラファン12から流出する。
【0072】
インペラファン12から流出した気流は、複数の第1の独立風路16に流入した後、それに連通する複数の第2の独立風路18をフレーム前10aの外周面に沿って流れて電動送風機1a外部へと流出する。
【0073】
その際、第1の独立風路16と第2の独立風路18とで形成される一連の独立風路の断面積は上流から下流にかけて大きくなるため、気流は減速されながら、動圧が静圧へと変換される。電動送風機1aの送風性能は、電動送風機1aを駆動するために入力した電力と、電動送風機1aが行う仕事(インペラファン12が回転することで発生する真空度と流量の積)との比であらわされる。そのため、実際に使用する流量において電動送風機1aが発生する真空度(静圧)を大きくすることが、電動送風機1aの送風性能をあげる上で大変重要となる。
【0074】
また、ブラシレスモータ11の発熱は、銅損、鉄損、機械損によるものがある。銅損は巻線4を流れる電流によって生じるジュール熱であり、電流の二乗に比例して大きくなる。また、鉄損はヒステリシス損と渦電流損に分けられる。ヒステリシス損は、ブラシレスモータ11の磁路を形成する電磁鋼板の物性が原因で発生するもので、回転による磁界の変化で磁束密度が変化することに起因する。また渦電流損は、コア5aに通る磁束の変動により磁束線のまわりに渦状の電流が流れ、その際の電気抵抗で発生するものである。
【0075】
機械損は、軸受9部の摩擦や回転子3と固定子6間の空気の攪拌抵抗に起因するものである。特に、鉄損については、ヒステリシス損及び渦電流損共に運転周波数に依存して大きくなるため、ブラシレスモータ11を高速回転で使用する際には、鉄損での発熱が大きくなり、これをいかに効率よく放熱させるかが重要となる。電気掃除機20では、電動送風機1aは高速回転領域での使用が大半であるため、小型で高い送風性能を得るためにはコア5aの冷却が大変重要である。
【0076】
コア5aで発生した熱は、コア5a外周部に設けられた直線状の溝7aに嵌合固定された複数の第2の案内翼8aへと伝導し、それぞれの案内翼の表面から独立風路を流れるインペラファン12からの気流に熱が伝達されてブラシレスモータ11外部へと出ていく。コア5aと第2の案内翼8aは熱伝導性の高い接着剤で接着されているので嵌合部に微小な隙間ができるのを防ぐことができ、嵌合部の熱的な接触抵抗が低減することで、コア5aから第2の案内翼8aへの熱伝導性を向上することができ、コア5aで発生した熱が第2の案内翼8aへ伝導しやすく、また第2の案内翼8aはインペラファン12からの気流によって連続的に強制冷却されているため、第2の案内翼8aとコア5aとの間に温度差が生じ、コア5a内部の熱伝導が促進されて効率よくコア5aの熱をブラシレスモータ11外部へと逃がすことができる。
【0077】
また熱伝導性の高いアルミニウムを使用することで、コア5aから伝導した熱が第2の案内翼8a全体へ伝わりやすく、第2の案内翼8aを放熱フィンとして扱うことができるようになり、ブラシレスモータ11を効率よく冷却することが可能となる。
【0078】
また、巻線4で発生した熱は、熱伝導性樹脂で成形されたモールド部17を伝導して、両端を保持されている複数の第2の案内翼8aへと伝わり、コア5aから伝導した熱と同様の過程を経てインペラファン12からの気流に伝達して、ブラシレスモータ11外部へと出ていく。モールド部17には熱伝導性樹脂を用いているため空気に比べて熱伝導率が飛躍的に高くなり、巻線4で発生した熱を効率的に放熱することができる。
【0079】
また、第2の案内翼8aには熱伝導性の高い材質を選定するのが好ましく、アルミニウ
ムの他にも、銅、銀などの金属材料や、熱伝導性の硬い金属や炭素の粉末や繊維などの充填剤(フィラー)を含有させることで熱伝導性を向上させた熱伝導性樹脂を用いてもよく、コア5aの熱を第2の案内翼8aへ伝えて放熱面積を大きくし、ブラシレスモータ11の冷却効果を高めることが可能である。
【0080】
熱伝導性樹脂としては、ポリフェニレンサンファイド樹脂(PPS)、ナイロンおよび液晶ポリマー(LCP)が知られている。導電性のフィラーとしては金属粉末、グラファイト、カーボンブラックなどが用いられ、絶縁性のフィラーとしては窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナなど焼結セラミックが用いられており、絶縁性の有無に応じて選択するフィラーを部位ごとに使い分ける必要がある。但し、放熱フィンとして機能する複数の第2の案内翼8aには、導電性フィラーを配合した樹脂を用いる方が、絶縁性フィラーを配合した樹脂に比べて熱伝導性を大きくすることができるため、導電性フィラーを配合した樹脂を用いるのが望ましい。
【0081】
充填剤の配合比率を大きくすると、溶融時の粘度が大きくなって成形性が低下するため、注意が必要である。また、第2の案内翼8aの厚みと翼枚数は、通気路14に形成される複数の第2の独立風路18に対して、ディフューザとして必要な断面積および断面積の変化率と固定子6の冷却に必要な放熱能力の双方から決める必要があり、実験的に最適値を求める必要がある。
【0082】
本実施の形態では、ブラシレスモータの構成を用いた説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、従来の電動送風機に用いられる整流子モータ等を用いた場合でも、本発明の効果を変わるものではない。
【0083】
また、本実施の形態は、図2で示すように、回転軸2に固定されたインペラファン12の底面に配置されている後面シュラウド12aのフレーム前10a側には、シール板32が配置構成されており、回転軸2に固定されている軸受9は、非接触シール式のシールプレート9dで構成されている。インペラファン12の回転により、インペラファン12外周方向へ空気は流れる。そのため、軸受9には、ブラシレスモータ11からインペラファン12の方向へ空気が流れる。空気は回転している軸受9の内部を通過し、非接触シール式のシールプレート9dの隙間からインペラファン12の方向へ空気が流れていく。シール板32に配置された円環状の突起部31とフレーム前10aに支持された円環状の軸受リング30による接触シール作用により、インペラファン12の回転により負圧になったインペラファン12部側へ引き込む軸受9からの空気の流れを少なくすることが出来る。
【0084】
また、そのインペラファン12の回転による負圧になった圧力差による空気流れの影響により、軸受9から若干潤滑グリスが洩れ出すことになるが、軸受9の外径より小さく構成された円環状の突起31とフレーム前10aに支持した円環状の軸受リング30が全周が接触するように構成された接触シールの構成を保つことで、空気より粘性、密度、比重が大きな潤滑グリスはその接触部を通過することはない。
【0085】
また、円環状の突起部31と円環状の軸受リング30は、軸受9外径より小さくしたことで、軸受9のシールプレート9dの隙間から接触シール部までの空間容積が少なる構成としていることから、軸受9から潤滑グリスは少量しか洩れ出すスペースしかないことになり、軸受9からの潤滑グリス洩れを防止し、軸受9の信頼性向上を図ることとなる。
【0086】
また、従来の軸受9を接触ゴムシール仕様にした場合は、ゴムと鉄からなる内輪40cとの接触であったのに対し、本実施の形態では、円環状の軸受リングの摺動性がよくなるよう摩擦係数の低い樹脂材料と突起部の金属材料の接触であり、且つ先端部の突起部のみに接触するように接触面積を少なく構成していることから、接触による機械摩擦損失を従
来の接触ゴムシール軸受に比べ低減することができる。
【0087】
また、板金のプレスで作成されることが一般的であるシール板32に、プレス加工で円環状の突起部31を形成するのみであるため、部品追加もなく、僅かな加工費増加のみであり、大幅な価格増加を抑制することも可能である。
【0088】
また、円環状の軸受リング30は、フッ素樹脂(PTFE)からなる摺動性がよく、摩擦係数の低い樹脂素材で構成されている。本実施の形態では、フッ素樹脂(PTFE)を用いた構成を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、摺動性がよく、シール性を満たすものであればよく、ポリフェニレンサンファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBS)やポリオキシメチレン(POM)等の耐摩耗性を持った樹脂材料であればよい。
【0089】
また、前述の円環状の突起部31と円環状の軸受リング30との接触シール構成があるため、軸受9には、従来の接触ゴムシール軸受に比べ、比較的コストが安価で簡易な構成をしている非接触シール式軸受を採用することが可能になる。
【0090】
このとき軸受のシールプレート9dに用いられる材料は、一般的には、鉄系材料ではあるが、アルミや樹脂材料等の他の材料を用いた場合の構成でも、前述の効果に変わりはない。
【0091】
また、軸受9には、接触ゴムシール式軸受を用いた場合でも、軸受の信頼性向上を図ることが可能となり、本発明の効果が軸受種類により、変わるものではない。
【0092】
また、電動送風機1aは、電気掃除機20の吸引性能向上のため、更なる出力向上が求められており、前述したとおり従来の電気送風機の回転数は30,000〜45,000r/minと高速運転を行っているが、更に電動送風機の回転数は、45,000〜120,000r/minとさらに高速運転が行われる。
【0093】
インペラファン12が高速で回転すると同時に、軸受9も同様に高速回転を行うため、インペラファン12回転によるファン出力増加に伴って負圧化による空気流れも増大することに伴い、軸受9の潤滑グリス抜けも増大する。
【0094】
ゴム材料を用いた接触ゴムシール式の軸受は、接触によるゴムシール削れおよび機械摩擦損失増大のため、前述の45,000〜120,000r/minの高速化に対応をした軸受は流通が少ない。しかしながら、本発明は、非接触シール式の軸受9でも軸受の潤滑グリス抜けを防止することが出来るため、特殊で高価な軸受を使用することなく、軸受の信頼性を向上することが可能となる。
【0095】
次に、電気掃除機20の動作について図3を用いて説明する。図3において、電動送風機1aのインペラファン12が回転すると、集塵室22が負圧状態になり、ノズル(図示せず)から吸引された塵埃を含む気流が本体吸気口を通過して集塵室22内に装着された集塵袋26へ流入する。集塵袋26で塵埃を濾過分離した清潔な気流は、電動送風機1aのインペラファン12へ流入し、第1の独立風路16とそれに連通する第2の独立風路18を通過した後、防音カバー27の排気口から流出して掃除機本体25外部へと放出される。
【0096】
電気掃除機20は、小型で送風性能の高い電動送風機1aを搭載しているため、強い吸引力を有し、ゴミ取れ性がよく、電動送風機1aの本体サイズが小さくて、重量が軽いので、小回りが利いて使い勝手がよい。また、掃除機本体25内に吸音材28が配置可能な
空間の拡大を図り、掃除機本体25内に設ける吸音材28の設置面積を大きくすることで、吸音面積を拡げて運転音の小さな電気掃除機20にすることも可能である。
【0097】
以上のように、本実施の形態においてはインペラファン12の後面シュラウド12aとフレーム前10aとの間に円環状突起部31を有したシール板32を配し、フレーム前10aに支持され、シール板32の突起部31と接触する円環状の軸受リング30を構成することにより、突起部31と軸受リング30のシール作用により、インペラファン12側への空気流れを少なくし、軸受9からの潤滑グリス洩れを抑えることができ、ファン効率向上および軸受9の信頼性向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上のように、本発明にかかる電動送風機は、機械摩擦損失を抑えながら、ファン負圧による軸受からの空気洩れを少なくし、軸受からの潤滑グリス洩れも少なくするため、軸受の信頼性向上が可能となるので、高効率な吸引性能および高信頼性な電動送風機を得ることが可能となり、床移動型交流掃除機にかぎらず、ハンディ型や、縦型、または直流充電式掃除機等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0099】
1a、b 電動送風機
2 回転軸
3 回転子
4 巻線
5a、b コア
6 固定子
7a、b 溝(凹部)
8a、b 第2の案内翼
9 軸受
9a ボール
9b 外輪
9c 内輪
9d シールプレート
10a フレーム前
10b フレーム後
11 ブラシレスモータ
12 インペラファン
12a 後面シュラウド
12b 前面シュラウド
12c ブレード
13 ファンケース
13a 吸気口
20 電気掃除機
30 軸受リング
31 突起部
32 シール板
33 筒状スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する回転子と固定子とを対向配置したモータと、
前記回転軸の少なくとも一端を支持する軸受を保持し、前記軸受と前記固定子を覆うフレームと、
前記回転軸の端部に固定され、中央に吸込口を有する前面シュラウドと前記前面シュラウドに対向する後面シュラウドと前記1対のシュラウド間に挟持される複数枚のブレードとで構成されたインペラファンと、
中央に吸気口を有し、前記インペラファンを覆うファンケースと、
前記後面シュラウドと前記フレームとの間に配置され、前記フレーム側に突出した円環状突起を有したシール板と、
前記フレームに支持された円環状の軸受リングと、を備え、
前記円環状の軸受リングは、前記円環状の軸受リングの中心が前記回転軸の略中心に合うように配置され、前記シール板の円環状突起全周が前記円環状の軸受リングと接触するように構成した電動送風機。
【請求項2】
前記円環状突起を有したシール板を前記後面シュラウドと一体構成にした請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
前記円環状突起の外径および前記円環状の軸受リングの外径は、前記軸受の外径より、小さくした請求項1または2に記載の電動送風機。
【請求項4】
前記円環状の軸受リングを摩擦係数の低い樹脂材料にて構成した請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項5】
請求項1〜5に記載の電動送風機を搭載した電気掃除機。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−193646(P2012−193646A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57485(P2011−57485)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】