説明

電圧・電流検出装置

【課題】磁気方式で電圧及び電流の両方の検出が行われる場合に、従来よりも磁性体コアの数を少なくすることができ、ひいては磁性体コアの取り付け工数及び配置スペースを低減できること。
【解決手段】電圧・電流検出装置1が備える磁性体コア10は、面対称な第一の環状経路R1と、その第一の環状経路R1の対称面F0に対して相互に対称に形成された第二の環状経路R2及び第三の環状経路R3と、の各々に沿って一体に形成された磁性体からなる。第二の環状経路R2及び第三の環状経路R3は、それぞれが第一の環状経路R1の一部をなす一連の部分経路R111の半分ずつを含むとともに対称面F0に沿う中央経路Rcを共通に含む。さらに、磁性体コア10には、第一の環状経路R1における部分経路R111以外の1箇所及び中央経路R1の1箇所の各々に第一のギャップ部151及び第二のギャップ部152の各々が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧と電流との両方を検出可能な電圧・電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車又は電気自動車などの電動車両には、バッテリからモータなどの負荷に印加された電圧を検出する電圧検出装置、及びバッテリに接続されたバスバーなどの電力線に流れる電流を検出する電流検出装置が搭載されることが多い。
【0003】
従来、車両に搭載される小型の電圧検出装置及び電流検出装置としては、磁気平衡方式の電圧検出装置、及び磁気比例方式の電流検出装置が知られている。磁気平衡方式の電圧検出装置は、例えば、特許文献1などに示されている。また、磁気比例方式の電流検出装置は、例えば、特許文献2及び特許文献3などに示されている。
【0004】
磁気平衡方式の電圧検出装置、及び磁気比例方式の電流検出装置は、特許文献1から特許文献3に示されるように、磁性体コアと磁電変換素子とを備える。磁性体コアは、両端がギャップ部を介して対向し、中空部の周囲を囲んで一連に形成された概ねリング状の磁性体である。
【0005】
磁電変換素子は、磁性体コアのギャップ部に配置され、磁性体コアのギャップ部に生じる磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する素子である。磁電変換素子としては、通常、ホール素子が採用される。
【0006】
磁気平衡方式の電圧検出装置において、磁性体コアは、被検出電圧の検出点と電気的に接続される一次側コイルと、磁電変換素子の検出信号のレベルに応じた電流が供給される二次側コイルとが巻き付けられ、コアコイルのコアとして機能する。
【0007】
また、磁気平衡方式の電圧検出装置は、磁電変換素子の検出信号のレベルに応じた電流を二次側コイルに供給することによって磁性体コアのギャップ部の磁束を平衡させるフィードバック回路を備える。そして、磁気平衡方式の電圧検出装置において、フィードバック回路が二次側コイルに対して出力する電流のレベルが、被検出電圧のレベルに相当する。なお、特許文献1において、フィードバック回路は、作動増幅回路及びプッシュプル回路(電流バッファ)として示されている。
【0008】
一方、磁気比例方式の電流検出装置において、磁性体コアの中空部は、被検出電流が通過する空間(電流検出空間)であり、磁性体コアは、その中空部を通過する被検出電流の周囲に生じる磁束を強化する役割を果たす。磁気比例方式の電流検出装置において、磁電変換素子の検出信号のレベルが、被検出電流のレベルに相当する。
【0009】
ところで、電動車両のバッテリは、多数のセル電池が直列に接続された組電池である。そのような組電池の状態を正確に監視するためには、セル電池各々の出力電圧及び出力電流を検出することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−86813号公報
【特許文献2】特開平10−104279号公報
【特許文献3】特開2009−58451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の磁気方式の電圧検出装置及び電流検出装置において、磁性体コアは、電圧及び電流各々の検出点ごとに個別に必要である。そのため、従来の磁気方式の電圧検出装置及び電流検出装置は、組電池のように検出点の数が非常に多い検出対象に適用されると、磁性体コアの数が非常に多くなり、磁性体コアの取り付け工数及び配置スペースが著しく増大するという問題点を有している。
【0012】
本発明は、磁気方式で電圧及び電流の両方の検出が行われる場合に、従来よりも磁性体コアの数を少なくすることができ、ひいては磁性体コアの取り付け工数及び配置スペースを低減できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る電圧・電流検出装置は、磁気平衡方式により電圧を検出するとともに磁気比例方式により電流を検出する装置であり、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、磁性体コアである。この磁性体コアは、面対称な第一の環状経路と、その第一の環状経路の対称面に対して相互に対称に形成され、それぞれが第一の環状経路の一部をなす一連の部分経路の半分ずつを含むとともに前記対称面に沿う中央経路を共通に含む第二の環状経路及び第三の環状経路と、の各々に沿って一体に形成された磁性体からなる。さらに、当該磁性体コアには、第一の環状経路における前記部分経路以外の1箇所及び前記中央経路の1箇所の各々に第一のギャップ部及び第二のギャップ部の各々が形成されている。
(2)第2の構成要素は、第一のギャップ部の磁束を検出する電圧検出用の第一の磁電変換素子である。
(3)第3の構成要素は、第二のギャップ部の磁束を検出する電流検出用の第二の磁電変換素子である。
(4)第4の構成要素は、磁性体コアにおける第一のギャップ部の両側の部分の一方に巻かれ、被検出電圧の検出点と電気的に接続される一次側コイルである。
(5)第5の構成要素は、磁性体コアにおける第一のギャップ部の両側の部分の他方に巻かれた二次側コイルである。
(6)第6の構成要素は、第一の磁電変換素子の検出信号のレベルに応じた電流を二次側コイルに供給することにより第一のギャップ部の磁束を平衡させるフィードバック回路である。
【0014】
第2発明に係る電圧・電流検出装置は、第1発明に係る電圧・電流検出装置の構成要素を備え、さらに、以下の構成要素を備える。
(7)第7の構成要素は、第二の環状経路及び第三の環状経路の両方の中空部を貫通し、被検出電流の伝送経路における前段及び後段各々の接続端と連結される端子部が両端部分に形成された電流検出用の導電部材である。
【0015】
第3発明に係る電圧・電流検出装置は、第2発明に係る電圧・電流検出装置において、さらに、以下の構成を有する。即ち、磁性体コアは扁平に形成され、電流検出用の導電部材は、磁性体コアにおける中央経路に沿う部分を跨ぐ曲げ部が形成されている。
【0016】
第4発明に係る電圧・電流検出装置は、第2発明に係る電圧・電流検出装置において、さらに、以下の構成を有する。即ち、電流検出用の導電部材は一の直線に沿って形成され、磁性体コアは、電流検出用の導電部材を跨ぐ部分が形成されている。
【0017】
第5発明に係る電圧・電流検出装置は、第2発明から第4発明のいずれかの発明に係る電圧・電流検出装置において、さらに、以下の構成を有する。即ち、一次側コイルの一端は、電流検出用の導電部材に対して電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0018】
第1発明に係る電圧・電流検出装置において、1つの磁性体コアが、電圧検出用の磁性体コアと、電流検出用の磁性体コアとを兼ねる。そのため、第1発明によれば、磁気方式で電圧及び電流の両方の検出が行われる場合に、従来よりも磁性体コアの数を半分にすることができ、ひいては磁性体コアの取り付け工数及び配置スペースを大幅に低減できる。その効果は、電圧及び電流の検出点の数が多い場合に特に顕著となる。
【0019】
また、第1発明によれば、後述するように、被検出電圧により生じる磁束と、被検出電流により生じる磁束とが、1つの磁性体コア内で干渉することによる電圧及び電流の検出不良が生じることもない。
【0020】
また、第2発明によれば、電圧・電流検出装置を、被検出電流の伝送経路の途中に設けられた端子台などの接続端に対して後付けすることが可能となる。
【0021】
また、第3発明に係る電圧・電流検出装置において、成形が難しい磁性体からなる磁性体コアは、比較的作りやすい扁平な形状で形成される。また、成形が容易な金属板又は被覆電線などが、電流検出用の導電部材として採用可能である。従って、第3発明によれば、磁性体コア及び電流検出用の導電部材の製造が容易となる。
【0022】
一方、第4発明に係る電圧・電流検出装置は、被検出電流の伝送経路が直線状に形成されるべき場所への設置が可能である。
【0023】
また、第5発明に係る電圧・電流検出装置は、検出対象が組電池である場合のように、電流の検出点が、電圧の検出点でもある場合に適用される。第5発明によれば、当該電圧・電流検出装置が取り付けられる際に、一次側コイルの両端のうちの一端を電圧の検出点に接続する手間が省かれる。その効果は、電圧及び電流の検出点の数が多い場合に特に顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電圧・電流検出装置1の三面図である。
【図2】電圧・電流検出装置1が備える磁性体コア10の平面図である。
【図3】電圧・電流検出装置1が備えるフィードバック回路を含む電圧検出系回路の概略図である。
【図4】被検出電流が流れることによって磁性体コア10に生じる磁束を矢印によって表す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電圧・電流検出装置1Aの三面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る電圧・電流検出装置1Bの三面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0026】
本発明の各実施形態に係る電圧・電流検出装置1,1A,1Bは、例えば、電気自動車又はハイブリッド自動車などの電動車両に搭載される。そして、電圧・電流検出装置1,1A,1Bは、組電池を構成する複数のセル電池各々の電圧及び電流、或いは、バッテリとモータなどの機器とを電気的に接続するバスバーにおける電圧及び電流を検出する。
【0027】
<第1実施形態>
まず、図1から図3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る電圧・電流検出装置1の構成について説明する。なお、図1(a)は、電圧・電流検出装置1の平面図、図1(b)は、電圧・電流検出装置1の正面図、図1(c)は、電圧・電流検出装置1の側面図である。
【0028】
図1に示されるように、電圧・電流検出装置1は、1つの磁性体コア10と、2つのホール素子21,22と、一次側コイル31及び二次側コイル32と、電流検出用バスバー50と、電圧検出系回路60と、電流検出系回路70とを備えている。さらに、電圧・電流検出装置1は、2つのホール素子21,22、電圧検出系回路60及び電流検出系回路70が実装された電子基板40を備え、その電子基板40には、コネクタ42及び端子付き電線43も実装されている。以下、2つのホール素子21,22のうちの一方を第一ホール素子21、他方を第二ホール素子22と称する。
【0029】
<磁性体コア>
磁性体コア10は、フェライト又はケイ素鋼などの磁性体からなる一体の部材である。図1及び図2に示されるように、磁性体コア10は、面対称な第一の環状経路R1と、基準平面F0に対して相互に対称に形成された第二の環状経路R2及び第三の環状経路R3と、の各々に沿って一体に形成されている。基準平面F0は、第一の環状経路R1の対称面である。以下、磁性体コア10において、第一の環状経路R1に沿う部分を第一コア部11、第二の環状経路R2に沿う部分を第二コア部12、第三の環状経路R3に沿う部分を第三コア部13と称する。
【0030】
また、第一の環状経路R1の中空部のことを第一の中空部141、第二の環状経路R2の中空部のことを第二の中空部142、第三の環状経路R3の中空部のことを第三の中空部143と称する。磁性体コア10は、第一の中空部141、第二の中空部142及び第三の中空部143の各々を囲う3つの環状経路R1,R2,R3に沿って一体に形成されている。
【0031】
また、磁性体コア10が沿う第二の環状経路R2及び第三の環状経路R3は、それぞれが第一の環状経路R1の一部をなす一連の部分経路R11の半分ずつを含み、さらに、基準平面F0に沿う中央経路Rcを共通に含む。部分経路R11は、基準平面F0に対して面対称な経路である。
【0032】
以下、磁性体コア10において、部分経路R11に沿う部分のことを第一共通部111、中央経路Rcに沿う部分のことを第二共通部112と称する。従って、第二コア部12及び第三コア部13は、第一コア部11の一部である第一共通部111の半分ずつを含み、さらに、第二共通部112を共通に含む。
【0033】
また、磁性体コア10には、第一の環状経路R1における部分経路R11以外の1箇所に第一のギャップ部151が形成され、さらに、中央経路Rcの1箇所に第二のギャップ部152が形成されている。即ち、第一のギャップ部151は、第一コア部11における第一共通部111以外の部分の1箇所に形成され、第二のギャップ部152は、第二共通部112の1箇所に形成されている。なお、図1及び図2において、第一のギャップ部151は、基準平面F0からずれた一に形成されているが、第一のギャップ部151が基準平面F0に沿う位置に形成されることも考えられる。
【0034】
また、本実施形態における磁性体コア10は、一の平面に沿って扁平に形成されている。また、磁性体コア10は、電子基板40に対し、スペーサ41を介して固定されている。本実施形態において、スペーサ41は、電子基板40と磁性体コア10との間に、電流検出用バスバー50が通る隙間を形成するための部材である。
【0035】
<ホール素子>
第一ホール素子21は、第一のギャップ部151に配置され、第一のギャップ部151に生じる磁束を検出し、その磁束の検出信号を電気信号として出力する磁電変換素子の一例である。また、第二ホール素子22は、第二のギャップ部152に配置され、第二のギャップ部152に生じる磁束を検出し、その磁束の検出信号を電気信号として出力する磁電変換素子の一例である。第一ホール素子21は、電圧検出用の磁電変換素子であり、第二ホール素子22は、電流検出用の磁電変換素子である。第一ホール素子21及び第二ホール素子22は、電子基板40に実装されている。
【0036】
磁性体コア10と、第一ホール素子21及び第二ホール素子22の各々とは、電子基板40を介してそれぞれの位置関係が固定されている。
【0037】
<コイル>
一次側コイル31は、磁性体コア10における第一のギャップ部151の両側の部分の一方に巻かれ、被検出電圧の検出点と電気的に接続されるコイルである。また、二次側コイル32は、磁性体コア10における第一のギャップ部151の両側の部分の他方に巻かれたコイルである。一次側コイル31及び二次側コイル32は、磁気平衡方式での電圧検出用のコイルである。
【0038】
本実施形態においては、一次側コイル31の第一の端部311は、予め電流検出用バスバー50に対して抵抗素子を介して電気的に接続されている。また、一次側コイル31の第二の端部312は、予め端子付き電線43に対して電気的に接続されている。端子付き電線43は、一方の端部に端子431が設けられた電線である。端子付き電線43の他方の端部は、電子基板40に固定されるとともに、一次側コイル31の第二の端部312と電気的に接続されている。
【0039】
端子付き電線43の端子431は、例えば、第一の電流伝送経路を構成する第一のバスバー81に設けられた端子部811に対し、ボルトなどの固定具によって連結される。また、二次側コイル32の両端部は、電圧検出系回路60と接続されている。その詳細については後述する。なお、図1において、第一のバスバー81と、電流検出用バスバー50の接続先となる第二のバスバー82及び第三のバスバー83とは、仮想線(二点鎖線)で描かれている。
【0040】
一般に、一次側コイル31は、二次側コイル32よりも巻き数が多い。そのため、本実施形態においては、第一のギャップ部151が、基準平面F0よりも二次側コイル32側へずれた位置に形成されている。これにより、磁性体コア10の第一コア部11において、巻き数の多い一次側コイル31を巻くために十分な領域が確保される。
【0041】
<電流検出用バスバー>
電流検出用バスバー50は、第二の中空部142及び第三の中空部143の両方を貫通する導電部材である。電流検出用バスバー50の両端部分には、被検出電流の伝送経路における前段及び後段各々の接続端と連結される端子部51が形成されている。
【0042】
例えば、電流検出用バスバー50の各端子部51は、被検出電流の伝送経路の一部を構成する前段の第二のバスバー82の端子部821と、被検出電流の伝送経路の一部を構成する後段の第三のバスバー83の端子部831との各々に対し、ボルトなどの固定具によって連結される。
【0043】
電流検出用バスバー50は、例えば、銅などの金属からなる板状の導電部材であり、両端の端子部51が前段及び後段各々の接続端と連結されることにより、被検出電流の伝送経路の一部を構成する。電流検出用バスバー50は、端子部51が電子基板40の外側へ張り出す状態で、電子基板40に固定されている。なお、電流検出用バスバー50の代わりに、両端部分に端子部が設けられた被覆電線もしくはエナメル線などが採用されることも考えられる。電流検出用バスバー50は、電流検出用の導電部材の一例である。
【0044】
本実施形態において、電流検出用バスバー50には、磁性体コア10における第二共通112、即ち、中央経路Rcに沿う部分を跨ぐ曲げ部52が形成されている。これにより、磁性体コア10が扁平な形状であっても、電流検出用バスバー50は、磁性体コア10の第二の中空部142及び第三の中空部143の両方を貫通することができる。
【0045】
<電圧検出系回路>
電圧検出系回路60は、磁気平衡方式での電圧検出に関する電子回路である。図3は、電圧検出系回路60の概略図である。図3に示されるように、電圧検出系回路60は、フィードバック回路61と、分圧回路62とを含む。
【0046】
フィードバック回路61は、第一ホール素子21における検出信号出力端子に接続された差動増幅回路611と、二次側コイル32の第一の端部321に接続されたプッシュプル回路612とを含む。
【0047】
一次側コイル31に被検出電圧Vinに応じた電流が流れた場合、被検出電圧Vinに応じた磁束が、磁性体コア10の第一コア部11に生じる。その磁束は、当然ながら、第一のギャップ部151にも生じる。そのため、第一ホール素子21が、被検出電圧Vinに応じた検出信号を出力する。差動増幅回路611は、第一ホール素子21の検出信号を増幅し、プッシュプル回路612は、差動増幅回路611の出力電圧の正負及びレベルに応じた電流を、二次側コイル32に供給する。
【0048】
また、差動増幅回路611及びプッシュプル回路612のゲインは、一次側コイル31の電流によって生じる磁束が、二次側コイル32の電流に起因する逆方向の磁束よって打ち消されるように、即ち、第一のギャップ部151の磁束が平衡状態となるように、予め調整されている。即ち、フィードバック回路61は、第一ホール素子21の検出信号のレベルに応じた電流を二次側コイル32に供給することにより、第一のギャップ部151の磁束を平衡させる回路である。
【0049】
また、2つの抵抗素子621,622からなる分圧回路62は、二次側コイル32の第二の端部322に接続され、フィードバック回路61が二次側コイル32に出力する電流のレベルを、電圧信号Voutとして出力する回路である。この電圧信号Voutのレベルが、被検出電圧Vinのレベルの指標値となる。
【0050】
<電流検出系回路>
電流検出系回路70は、例えば、第二ホール素子22から出力される磁束の検出信号を増幅する回路などを含む。
【0051】
電圧検出系回路60及び電流検出系回路70は、コネクタ42の端子と電気的に接続され、コネクタ42を介して、外部の回路と電気的に接続される。例えば、電圧検出系回路60及び電流検出系回路70は、外部の回路からコネクタ42を通じて電力の供給を受け、コネクタ42を通じて、電圧及び電流の検出信号を出力する。
【0052】
なお、電圧検出系回路60及び電流検出系回路70の他、2つのホール素子21,22各々に対して一定の電流を供給する電源回路などが、電子基板40に実装されることも考えられる。
【0053】
<被検出電圧により生じる磁束の説明>
前述したように、磁性体コア10において、一次側コイル31の電流によって生じる磁束は、フィードバック回路61の作用により、二次側コイル32の電流に起因する逆方向の磁束と平衡し、第一のギャップ部151の磁束は平衡状態となる。
【0054】
また、磁性体コア10において、被検出電圧Vinに起因して生じる磁束は、第二コア部12及び第三コア部13にも生じる。しかしながら、第二コア部12及び第三コア部13は、基準平面F0に対して対象な経路に沿っているため、第二コア部12及び第三コア部13においても、検出電圧Vinに起因する磁束と二次側コイル32の電流による逆方向の磁束とが平衡状態となる。
【0055】
従って、被検出電圧Vinに応じた電流が一次側コイル31に流れた場合でも、フィードバック回路61の作用により、磁性体コア10には、電流の検出に悪影響を及ぼすような偏った磁束は生じない。
【0056】
<被検出電流により生じる磁束の説明>
被検出電流が、電流検出用バスバー50に沿って、第二の中空部142及び第三の中空部143を通過すると、磁性体コア10に磁束が生じる。図4は、被検出電流が流れることによって磁性体コア10に生じる磁束を矢印によって表す図である。
【0057】
図4において、第二の中空部142及び第三の中空部143の位置に示されるマークは、被検出電流の向きを表す。図4に示されるように、被検出電流は、第二の中空部142及び第三の中空部143の各々を逆方向に通過する。当然ながら、第二の中空部142を通過する電流の大きさと、第三の中空部143を通過する電流の大きさは等しい。
【0058】
図4において、環状の実線に記した矢印は、被検出電流が第二の中空部142を通過することによって生じる磁束の向きを表す。また、環状の点線に記した矢印は、被検出電流が第三の中空部143を通過することによって生じる磁束の向きを表す。
【0059】
図4に示されるように、第二コア部12及び第三コア部13において、第二共通部112及び第二のギャップ部には、第二の中空部142の被検出電流による磁束と、第三の中空部143の被検出電流による磁束とが、同じ方向に生じる。このことは、被検出電流が2つの中空部142,143を通過することにより、第二のギャップ部152に生じる磁束が強化されることを示している。
【0060】
従来の一般的な磁気比例方式の電流検出装置において、被検出電流は、磁性体コアにおける1つの中空部を1回だけ通過する。従って、第二のギャップ部152に配置された第二ホール素子22は、従来の電流検出装置が備えるホール素子に比べ、被検出電流に応じた磁束をより高感度で検出できる。
【0061】
また、図4に示されるように、被検出電流に起因して生じる磁束は、第一コア部11にも生じる。磁性体コア10において、第二コア部12及び第三コア部13は、基準平面F0に対して相互に対象な第二の環状経路R2及び第三の環状経路R3に沿っており、第一コア部11は、基準平面F0に対して面対称な第一の環状経路R1に沿っている。そのため、第一コア部11において、第二の中空部142の被検出電流による磁束と、第三の中空部143の被検出電流による磁束とは、同じ大きさで向きが反対となり、平衡状態となる。
【0062】
また、第二の中空部142及び第三の中空部143を通る被検出電流の向きが、図4に示される向きと逆である場合、磁束の向きは、図4に示される矢印の向きと反対の向きとなる。従って、被検出電流の向きが図4に示される向きと逆である場合も、第一コア部11における磁束は平衡状態となる。
【0063】
従って、被検出電流が電流検出用バスバー50に流れた場合でも、磁性体コア10の形状の特性により、磁性体コア10の第一コア部11には、電圧の検出に悪影響を及ぼすような偏った磁束は生じない。
【0064】
<効果>
電圧・電流検出装置1において、1つの磁性体コア10が、電圧検出用の磁性体コアと、電流検出用の磁性体コアとを兼ねる。そのため、電圧・電流検出装置1によれば、従来よりも磁性体コアの数を半分にすることができ、ひいては磁性体コアの取り付け工数及び配置スペースを大幅に低減できる。その効果は、電圧及び電流の検出点の数が多い場合に特に顕著となる。
【0065】
また、前述したように、電圧・電流検出装置1においては、被検出電圧Vinにより生じる磁束と、被検出電流により生じる磁束とが、1つの磁性体コア10内で干渉することによる電圧及び電流の検出不良が生じることもない。
【0066】
また、電圧・電流検出装置1は、電流検出用バスバー50を備えるため、被検出電流の伝送経路の途中に設けられた端子台などの接続端に対して後付けすることが可能である。
【0067】
また、電圧・電流検出装置1において、成形が難しい磁性体からなる磁性体コア10は、比較的作りやすい扁平な形状で形成される。また、電流検出用バスバー50は、成形が容易であるため、電流検出用バスバー50に曲げ部52を設けることは容易である。従って、電圧・電流検出装置1において、磁性体コア10及び電流検出用バスバー50の製造は容易である。なお、その効果は、電流検出用バスバー50が、成形が容易な被覆電線などに置き換えられた場合でも同様に得られる。
【0068】
また、電圧・電流検出装置1において、一次側コイル31の第一の端部311が、電流検出用バスバー50に対して予め電気的に接続されている。このような電圧・電流検出装置1は、検出対象が組電池である場合のように、電流の検出点が、電圧の検出点でもある場合に適用される。電圧・電流検出装置1が採用されることにより、その取り付けの際に、一次側コイル31の第一の端部311を電圧の検出点に接続する手間が省かれる。その効果は、電圧及び電流の検出点の数が多い場合に特に顕著となる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、図5を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係る電圧・電流検出装置1Aについて説明する。この電圧・電流検出装置1Aは、磁性体コア10と一部の形状が異なる磁性体コア10Aを備える点、及び電流検出用バスバー50と形状が異なる電流検出用バスバー50Aを備える点のみが、図1に示された電圧・電流検出装置1と異なる。図5において、図1に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電圧・電流検出装置1Aにおける電圧・電流検出装置1と異なる点についてのみ説明する。
【0070】
電圧・電流検出装置1Aにおいて、電流検出用バスバー50Aは、一の直線に沿う棒状に形成されている。また、磁性体コア10Aは、その電流検出用バスバー50Aを跨ぐ部分が形成されている。より具体的には、磁性体コア10Aの第二コア部12及び第三コア部13のうち、第二共通部112は、その他の部分から起立した2つの起立部113を含む。これにより、磁性体コア10Aの第二共通部112は、電流検出用バスバー50Aを跨いで形成されている。
【0071】
図5に示されるような電圧・電流検出装置1Aも、本発明の実施形態の一例である。電圧・電流検出装置1Aが採用されることにより、電圧・電流検出装置1が採用された場合と同様の効果が得られる。また、電圧・電流検出装置1Aは、被検出電流の伝送経路が直線状に形成されるべき場所への設置が可能である。
【0072】
<第3実施形態>
次に、図6を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係る電圧・電流検出装置1Bについて説明する。この電圧・電流検出装置1Bは、磁性体コア10と一部の形状が異なる磁性体コア10Bを備える点、及び電流検出用バスバー50と形状が異なる電流検出用バスバー50Aを備える点のみが、図1に示された電圧・電流検出装置1と異なる。図6において、図1に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、電圧・電流検出装置1Bにおける電圧・電流検出装置1と異なる点についてのみ説明する。
【0073】
電圧・電流検出装置1Bにおいて、電流検出用バスバー50Aは、一の直線に沿う棒状に形成されている。また、磁性体コア10Bは、その電流検出用バスバー50Aを跨ぐ部分が形成されている。より具体的には、磁性体コア10Bにおける第一共通部111及び第二共通部112以外の部分のうち、第二コア部12の一部と第三コア部13の一部との各々が、その他の部分から起立した2つの起立部114を含む。これにより、磁性体コア10Bにおける第二コア部12の一部と第三コア部13の一部とは、電流検出用バスバー50Aを跨いで形成されている。
【0074】
図6に示されるような電圧・電流検出装置1Bも、本発明の実施形態の一例である。電圧・電流検出装置1Bが採用されることにより、電圧・電流検出装置1が採用された場合と同様の効果が得られる。また、電圧・電流検出装置1Bも、電圧・電流検出装置1Aと同様に、被検出電流の伝送経路が直線状に形成されるべき場所への設置が可能である。
【0075】
<その他>
以上に示された各実施形態において、一次側コイル31の第一の端部311は、予め電流検出用バスバー50,50Aに対して電気的に接続されているが、そうでなくてよい。例えば、一次側コイル31の第一の端部311が、第二の端部312と同様に、予め端子付き電線に接続されることも考えられる。
【0076】
また、一次側コイル31の第二の端部312を電圧の検出点に接続する手段として、端子付き電線43に代えて、両端に端子部が設けられた電圧検出用バスバーが採用されることも考えられる。この場合、第一の電流伝送経路を構成する第一のバスバー81は、第二の電流伝送経路と同様に、予め前段のバスバーと後段のバスバーとに分断されている。そして、電圧検出用バスバーは、第一の電流伝送経路における前段及び後段の各バスバーに設けられた端子部に接続される。
【0077】
また、被検出電流が、被覆電線などのように、第二の中空部142及び第三の中空部143に後から通すことが可能な媒体を流れる場合には、電圧・電流検出装置1,1A,1Bにおいて、電流検出用バスバー50,50Aが省かれることも考えられる。
【符号の説明】
【0078】
1,1A,1B 電圧・電流検出装置
R1 第一の環状経路
R2 第二の環状経路
R3 第三の環状経路
R11 部分経路
10,10A,10B 磁性体コア
11 第一コア部
12 第二コア部
13 第三コア部
13 第三コア部
21 第一ホール素子
22 第二ホール素子
31 一次側コイル
32 二次側コイル
40 電子基板
41 スペーサ
42 コネクタ
43 端子付き電線
50,50A 電流検出用バスバー
51 端子部
52 曲げ部
60 電圧検出系回路
61 フィードバック回路
62 分圧回路
70 電流検出系回路
81 第一のバスバー
82 第二のバスバー
83 第三のバスバー
111 第一共通部
112 第二共通部
113,114 起立部
141 第一の中空部
142 第二の中空部
143 第三の中空部
151 第一のギャップ部
152 第二のギャップ部
311 一次側コイルの第一の端部
312 一次側コイルの第二の端部
321 二次側コイルの第一の端部
322 二次側コイルの第二の端部
431 端子
611 差動増幅回路
612 プッシュプル回路
621,622 抵抗素子
811 第一のバスバーの端子部
821 第二のバスバーの端子部
831 第三のバスバーの端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気平衡方式により電圧を検出するとともに磁気比例方式により電流を検出する電圧・電流検出装置であって、
面対称な第一の環状経路と、該第一の環状経路の対称面に対して相互に対称に形成され、それぞれが前記第一の環状経路の一部をなす一連の部分経路の半分ずつを含むとともに前記対称面に沿う中央経路を共通に含む第二の環状経路及び第三の環状経路と、の各々に沿って一体に形成された磁性体からなり、前記第一の環状経路における前記部分経路以外の1箇所及び前記中央経路の1箇所の各々に第一のギャップ部及び第二のギャップ部の各々が形成された磁性体コアと、
前記第一のギャップ部の磁束を検出する電圧検出用の第一の磁電変換素子と、
前記第二のギャップ部の磁束を検出する電流検出用の第二の磁電変換素子と、
前記磁性体コアにおける前記第一のギャップ部の両側の部分の一方に巻かれ、被検出電圧の検出点と電気的に接続される一次側コイルと、
前記磁性体コアにおける前記第一のギャップ部の両側の部分の他方に巻かれた二次側コイルと、
前記第一の磁電変換素子の検出信号のレベルに応じた電流を前記二次側コイルに供給することにより前記第一のギャップ部の磁束を平衡させるフィードバック回路と、を備えることを特徴とする電圧・電流検出装置。
【請求項2】
前記第二の環状経路及び前記第三の環状経路の両方の中空部を貫通し、被検出電流の伝送経路における前段及び後段各々の接続端と連結される端子部が両端部分に形成された電流検出用の導電部材をさらに備える、請求項1に記載の電圧・電流検出装置。
【請求項3】
前記磁性体コアは扁平に形成され、
前記電流検出用の導電部材は、前記磁性体コアにおける前記中央経路に沿う部分を跨ぐ曲げ部が形成されている、請求項2に記載の電圧・電流検出装置。
【請求項4】
前記電流検出用の導電部材は一の直線に沿って形成され、
前記磁性体コアは、前記電流検出用の導電部材を跨ぐ部分が形成されている、請求項2に記載の電圧・電流検出装置。
【請求項5】
前記一次側コイルの一端は、前記電流検出用の導電部材に対して電気的に接続されている、請求項2から請求項4のいずれかに記載の電圧・電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−220384(P2012−220384A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87829(P2011−87829)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】