説明

電圧制御型発振器、発振器用シールドケース、受信装置および通信装置

【課題】 シールド効果を維持しつつ、放熱性を向上させる。
【解決手段】 シールドケース12の互いに対向する側面に、矩形状の開口部13a、13bを形成するとともに、その開口部13a、13bを増幅器2の近辺に配置する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電圧制御型発振器、発振器用シールドケース、受信装置および通信装置に関し、特に、高周波発振器に適用して好適なものである。
【0002】
【従来の技術】従来の高周波発振器では、発振器内部で発生するノイズが外部に放射されたり、外部で発生したノイズが発振器内部に入射したりすることを防止するため、シールドケースが用いられている。例えば、特開平10−215119号公報には、シールド効果を得るために、電圧制御型発振器を構成する電子部品が実装された基板上に、導体からなる箱状のシールドケースを接合する方法が開示されている。
【0003】また、特開平10−41709号公報には、アルミダイキャストなどを材料とした箱状のシールドケースで電圧制御型発振器を密閉するように包み込む方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のシールドケースでは、シールド効果を上げるために、密閉構造が用いられている。この結果、シールドケース内の通気性が悪化し、アンプなどの発熱部品がシールドケース内にある場合には、シールドケース内の温度が上昇する。
【0005】このため、回路の電気的特性が変化し、特に、発振器では発振周波数が変化するという問題があった。また、変化の激しい温度サイクルが繰り返されるため、部品の劣化が激しくなり、製品の寿命が短くなるという問題もあった。そこで、本発明の目的は、シールド効果を維持しつつ、放熱性を向上させることが可能な電圧制御型発振器、発振器用シールドケース、受信装置および通信装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するために、請求項1記載の電圧制御型発振器によれば、増幅器と、前記増幅器に対して帰還回路を構成する共振素子と、前記増幅器および共振素子を覆うとともに、前記増幅器で発生する熱を対流させる開口部が設けられたシールドケースとを備えることを特徴とする。
【0007】これにより、シールドケースに局所的に開口部を設けるだけで、シールドケース内部で発生した熱を外部に放出させることが可能となり、シールド効果を維持しつつ、放熱性を向上させることが可能となる。このため、シールドケース内に増幅器が設けられている場合においても、シールドケース内の温度の上昇を抑制することが可能となり、発振器の発振周波数の変動を抑えることが可能となるとともに、部品の劣化を抑制して、製品の寿命を向上させることが可能となる。
【0008】また、請求項2記載の電圧制御型発振器によれば、前記開口部は、前記シールドケースの互いに対向する側面の少なくとも2個所に形成されていることを特徴とする。これにより、シールドケースに開口部を形成するだけで、増幅器で発生した熱がシールドケース内に滞留することを防止して、増幅器で発生した熱を外部に効率よく放出させることが可能となり、シールドケースの構成が複雑化することを防止しつつ、放熱性を向上させることが可能となる。
【0009】また、請求項3記載の電圧制御型発振器によれば、前記開口部は円形状または矩形状であり、前記円形状または矩形状の開口部の直径または長辺の長さは、発振周波数の波長の20分の1以下であることを特徴とする。これにより、シールドケースに開口部を形成した場合においても、シールド効果を維持しつつ、シールドケース内部で発生した熱を外部に放出させることが可能となる。
【0010】また、請求項4記載の電圧制御型発振器によれば、発振周波数を調整するレーザトリミング素子をさらに備え、前記開口部は、前記レーザトリミング素子の上方に形成されていることを特徴とする。これにより、シールドケース内部で発生した熱を外部に放出させることを可能として、放熱性を向上させることが可能となるとともに、シールドケースの実装後に、発振周波数を調整することが可能となり、量産性を向上させることが可能となる。
【0011】また、請求項5記載の電圧制御型発振器によれば、前記シールドケースの上面に最も近い部品導体部との距離は、1.8mm以上であることを特徴とする。これにより、実装部品上にシールドケースを設けた場合においても、実装部品とシールドケースとの間の電磁干渉により発生する損失を抑制することが可能となり、シールド効果を維持しつつ、発振器特性への悪影響を抑えることができる
【0012】また、請求項6記載の電圧制御型発振器によれば、増幅器と、前記増幅器に対して帰還回路を構成する共振素子と、前記増幅器および共振素子が配置された基板と、前記基板上に設けられ、前記増幅器および共振素子の周囲に配置された第1グランド層と、前記基板の裏面に設けられた第2グランド層と、前記第1グランド層と前記第2グランド層とを接続するビアと、前記増幅器および共振素子を覆うとともに、前記第1グランド層に接合するシールドケースと、前記シールドケースに設けられ、前記増幅器で発生する熱を対流させる開口部とを備えることを特徴とする。
【0013】これにより、電圧制御型発振器をマイクロストリップライン構成とした場合においても、基板上にシールドケースをかぶせるだけで、シールド効果を維持しつつ、放熱性を向上させることが可能となり、シールドケースの構成を複雑化することなく、電圧制御型発振器を安定して動作させることが可能となるとともに、電圧制御型発振器のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0014】また、請求項7記載の発振器用シールドケースによれば、内部に設けられた発熱体から発生する熱を対流させる開口部が形成されていることを特徴とする。これにより、シールドケースに局所的に開口部を設けるだけで、シールドケース内部で発生した熱を外部に放出させることが可能となり、シールド効果を維持しつつ、放熱性を向上させることが可能となる。
【0015】また、請求項8記載の発振器用シールドケースによれば、前記開口部は、前記シールドケースの互いに対向する側面の少なくとも2個所に形成されていることを特徴とする。これにより、シールドケースに開口部を形成するだけで、発熱体から発生した熱を外部に効率よく放出させることが可能となり、シールドケースの構成が複雑化することを防止しつつ、放熱性を向上させることが可能となる。
【0016】また、請求項9記載の発振器用シールドケースによれば、前記開口部は円形状または矩形状であり、前記円形状または矩形状の開口部の直径または長辺の長さは、発振周波数の波長の20分の1以下であることを特徴とする。これにより、シールドケースに開口部を形成した場合においても、シールド効果の低減を抑制しつつ、シールドケース内部で発生した熱を外部に放出させることが可能となる。
【0017】また、請求項10記載の発振器用シールドケースによれば、前記開口部は、レーザトリミング素子の配置位置に対応して形成されていることを特徴とする。これにより、シールドケース内部で発生した熱を外部に放出させることを可能として、放熱性を向上させることが可能となるとともに、発振器の組み立て実装後に、発振周波数を調整することが可能となり、量産性を向上させることが可能となる。
【0018】また、請求項11記載の発振器用シールドケースによれば、前記シールドケースの上面に最も近い部品導体部との距離が1.8mm以上になるように、前記シールドケースの高さが設定されていることを特徴とする。これにより、実装部品上にシールドケースを設けた場合においても、実装部品とシールドケースとの間の電磁干渉により発生する損失を抑制することが可能となり、シールド効果を維持しつつ、発振器特性への悪影響を抑えることができる
【0019】また、請求項12記載の受信装置によれば、光信号を電気信号に変換するフォトダイオードと、前記電気信号からデータおよび同期信号を抽出するクロックデータリカバリと、前記クロックデータリカバリを動作させるための信号を供給する電圧制御発振器と、前記クロックデータリカバリにより抽出されたシリアルデータをパラレルデータに変換するデシリアライザと、前記パラレルデータを復号する復号器とを備え、前記電圧制御発振器は、増幅器と、前記増幅器に対して帰還回路を構成する共振素子と、前記増幅器および共振素子を覆うとともに、前記増幅器で発生する熱を対流させる開口部が設けられたシールドケースとを備えることを特徴とする。
【0020】これにより、電圧制御発振器の構成が複雑化することを抑制しつつ、データ伝送速度が数ギガビット/秒から数10ギガビット/秒のデータ処理を安定して行なわせることが可能となるとともに、受信装置の寿命を向上させることが可能となる。また、請求項13記載の通信装置によれば、データのアクセス制御を行なうアクセス制御部と、同期クロックを生成する発振器と、前記発振器からの出力をもとに周波数制御を行なうPLL制御部と、前記アクセス制御部から出力されたパラレルデータと前記同期クロックとを合成し、符号化する符号器と、前記前記同期クロックと合成されたパラレルデータをシリアルデータに変換するシリアライザと、前記シリアルデータを光信号に変換する半導体レーザと、前記光信号を電気信号に変換するフォトダイオードと、前記電気信号からデータおよび同期信号を抽出するクロックデータリカバリと、前記クロックデータリカバリを動作させるための信号を供給する電圧制御発振器と、前記クロックデータリカバリにより抽出されたシリアルデータをパラレルデータに変換するデシリアライザと、前記パラレルデータを復号し、前記アクセス制御部に出力する復号器とを備え、前記電圧制御発振器は、増幅器と、前記増幅器に対して帰還回路を構成する共振素子と、前記増幅器および共振素子を覆うとともに、前記増幅器で発生する熱を対流させる開口部が設けられたシールドケースとを備えることを特徴とする。
【0021】これにより、寿命が長く、安定して動作するギガビットネットワークシステムをコンパクトに構築することが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態に係る電圧制御型発振器について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電圧制御型発振器の構成を示すブロック図である。
【0023】図1において、発振用の増幅器2の出力側および入力側の帰還回路として、弾性表面波素子1と、外部から制御電圧Vcを入力して発振ループ内の位相を可変させる移相器3と、発振ループ内の位相を微調整する位相調整回路4と、発振ループ内の電力を等分配して発振ループ外に出力する等分配器5が直列に介挿され、これら各ブロックは一定の特性インピーダンス、例えば、50Ωに全て整合接続されている。
【0024】そして、移相器3によって帰還回路の位相を変化させることにより、発振周波数を変化させることができる。ここで、移相器3として、−3dB90°ハイブリッドカプラとそれに付随したリアクタンス可変回路を用いることにより、低挿入損失・低リターンロスで大きな位相変化をもたらすことができる。
【0025】その結果、電圧制御型発振器の周波数可変幅を大きく取ることができ、制御電圧Vcに対し、良好な周波数可変特性を得ることが可能になり、数ギガビット/秒の伝送速度を上回る通信ネットワーク系の基準発振器として用いることが可能となる。また、低挿入損失・低リターンロスであることから、回路損失も最小限に抑えることができ、出力変動が少なく、効率のよい電圧制御型発振器を実現することができる。
【0026】さらに、等分配器5によって発振ループ内のインピーダンスを乱すことなく、電力を等分配して発振ループ外に出力することができるため、負荷に対してより安定的な回路動作をさせることができる。また、弾性表面波素子1、増幅器2、移相器3、位相調整回路4および等分配器5をシールドケースで覆うとともに、増幅器2近辺のシールドケースの互いに対向する側面の少なくとも2個所に開口部を設けることにより、シールド効果を維持しつつ、増幅器2で発した熱を開口部を介して外部に効率よく放出させることが可能となる。
【0027】このため、増幅器2で発した熱に弾性表面波素子1が晒されることを抑制して、弾性表面波素子1の温度上昇を抑えることが可能となり、発振周波数の変動を抑制して、電圧制御型発振器を安定して動作させることが可能となる。図2(a)は、本発明の第1実施形態に係る発振器用シールドケースの構成を示す斜視図、図2(b)は、図2(a)の発振器用シールドケースを透視した場合の電圧制御型発振器の構成を示す斜視図、図3(a)は、図2(b)のA−A線で切断した断面図、図3(b)は、図2(b)のB−B線で切断した断面図である。
【0028】図2、3において、多層基板11は、例えば、4層配線基板から構成され、この4層配線基板には、絶縁層Z1〜Z3を介して第1〜第4配線層が設けられている。ここで、第2配線層にはグランド層G2が設けられるとともに、第4配線層にはグランド層G3が設けられ、第3配線層にはストリップラインSLが形成されている。
【0029】そして、このストリップラインSLにより、−3dB90°ハイブリッドカプラや等分配器5を分布定数回路で形成することができ、実装基板のコンパクト化を図ることができる。また、基板中に内蔵できない弾性表面波素子1、増幅器2およびチップ部品Pは第1配線層上に搭載されるとともに、第1配線層には、これらの部品を取り囲むようにしてグランド層G1が形成されている。
【0030】そして、絶縁層Z1〜Z3には、これらのグランド層G1〜G3を互いに接続するためのビアホールB1〜B4が形成されている。また、多層基板11上にはシールドケース12が配置され、シールドケース12は、例えば、半田付けにより多層基板11のグランド層G1と接合される。これにより、多層基板11上にシールドケース12をかぶせるだけで、弾性表面波素子1や増幅器2などの部品をグランド層で取り囲むことが可能となり、電圧制御型発振器のコンパクト化を図りつつ、シールド効果を得ることが可能となる。
【0031】また、シールドケース12の互いに対向する側面には、矩形状の開口部13a、13bが形成され、その開口部13a、13bは増幅器2の近辺に配置されている。これにより、開口部13a、13bを通して増幅器2上を通過する気流の通り道を形成することが可能となり、増幅器2で発生する熱をこの気流に乗せて外部に逃がすことが可能となる。
【0032】このため、弾性表面波素子1が増幅器2で発生する熱に晒されることを防止することが可能となり、弾性表面波素子1の温度上昇を抑制して、発振周波数が狂うことを防止することが可能となる。ここで、矩形状の開口部13a、13bの長辺の長さは、発振周波数の波長の20分の1以下であることが好ましい。
【0033】これにより、シールドケース12に開口部13a、13bを設けた場合においても、開口部13a、13bから電磁波が漏れることを防止して、シールド効果を維持することが可能となる。なお、開口部13a、13bの形状は矩形状以外にも、円形状またはそれ以外の形状でもよい。
【0034】また、開口部13a、13bは打ち抜きなどにより形成することができ、シールドケース12の構成を複雑化することなく、シールドケース12内部の放熱性を向上させることができる。ここで、実装された部品の中で高さの一番高い導体部と、シールドケース12上面との距離をHとした場合、この距離Hが小さいと、シールドケース12の高さ方向のサイズを小さくすることができ、発振器のより一層のコンパクト化が可能となる。
【0035】しかし、この距離Hが小さすぎると、金属導体であるシールドケース12との間で電磁干渉が発生し、発振器特性に悪影響を与える。図4(a)は、本発明の一実施形態に係る電圧制御型発振器の距離Hと定在波比(SWR)との関係を示す図である。なお、横軸は、実装部品とシールドケース12上面との距離H、縦軸は、定在波比(SWR)で示した影響度合いであり、定在波比の値が1に近いほど、電磁干渉の影響が小さいことを示す
【0036】図4(a)において、距離Hが小さくなると、定在波比は大きくなり、特に、距離Hが1mmより小さくなると、定在波比は急激に大きくなる。図4(b)は本発明の一実施形態に係る電圧制御型発振器の距離Hと損失との関係を示す図である。なお、横軸は、実装部品とシールドケース12上面との距離H、縦軸は、実装部品とシールドケース12との間の電磁干渉により発生する損失を示す
【0037】図4(b)において、距離Hが小さくなると、損失は大きくなり、特に、距離Hが1mmより小さくなると、損失は急激に大きくなる。一方、距離Hがある程度以上になると、損失はほぼ一定になり、距離Hをそれ以上大きくしても、損失がほとんど減らない。このため、距離Hによる電磁干渉の影響および損失は、使用周波数に依存するものの、概ね数GHz程度の範囲内であれば、距離H=1.8mm以上とすればよい。
【0038】これにより、電磁干渉の影響が顕著にならない範囲で、シールドケース12の高さを低くすることが可能となり、電圧制御型発振器の基本特性を満足させつつ、電圧制御型発振器のコンパクト化を図ることが可能となる。なお、上述した実施形態によれば、共振素子として弾性表面波素子1を用いた場合について説明したが、誘電体共振子やマイクロストリップラインなどを共振素子として用いるようにしてもよい。
【0039】また、上述した実施形態では、弾性表面波素子1や増幅器2などを多層基板11に実装する方法について説明したが、単層基板や両面基板に実装するようにしてもよい。図5は、本発明の第2実施形態に係る発振器用シールドケースの構成を示す斜視図である。
【0040】図5において、多層基板21は、例えば、4層配線基板から構成され、この4層配線基板には、絶縁層Z11〜Z13を介して第1〜第4配線層が設けられている。ここで、第2配線層および第4配線層にはグランド層が設けられ、第3配線層にはストリップラインが形成されている。
【0041】また、基板中に内蔵できない弾性表面波素子、増幅器および位相調整回路などは第1配線層上に搭載されるとともに、第1配線層には、これらの部品を取り囲むようにしてグランド層G11が形成されている。そして、絶縁層Z11〜Z13には、これらのグランド層を接続するためのビアホールB11、B12が形成されている。
【0042】多層基板21上にはシールドケース22が配置され、シールドケース22は、例えば、半田付けにより多層基板21のグランド層G11と接合される。ここで、シールドケース22の上面には円形状の開口部23が形成され、この開口部23は位相調整回路に対応する位置に対置されている。これにより、シールドケース22内部の増幅器で発生した熱を外部に放出させることを可能として、放熱性を向上させることが可能となるとともに、シールドケース22の実装後に、位相調整回路をレーザトリミングして発振周波数を調整することが可能となる。
【0043】ここで、開口部23の形状は円形状以外にも、矩形状でもよく、円形状の開口部23の直径は、発振周波数の波長の20分の1以下であることが好ましい。これにより、シールドケース22に開口部23を設けた場合においても、開口部23から電磁波が漏れることを防止して、シールド効果を維持することが可能となる。
【0044】また、位相調整回路として、例えば、オープンスタブが接続されたチップインダクタを、発振回路の帰還ループに直列に挿入するようにしてもよい。そして、電圧制御型発振器の発振周波数を調整する場合、開口部23を介してオープンスタブをレーザトリミングすることにより、オープンスタブの長さを1/4波長以内の範囲で調整する。
【0045】また、位相調整回路として、ショートスタブが接続されたチップコンデンサを、発振回路の帰還ループに直列に挿入するようにしてもよい。そして、ショートスタブの長さを1/4波長以内の範囲に設定し、等価的にインダクタとして機能させるとともに、開口部23を介してチップコンデンサをレーザトリミングすることにより、チップコンデンサの値を調整する。
【0046】これにより、位相調整回路のコンパクト化を図りつつ、シールドケース22を多層基板21上に実装した後に、電圧制御型発振器の発振周波数を調整することができる。図6は、本発明の一実施形態に係る通信装置の構成を示すブロック図である。なお、この実施形態では、図2の電圧制御型発振器が使用されるギガビットネットワークシステムの一例を示す
【0047】ギガビットネットワークシステムでは、インターネットの普及によって音声や静止画像データだけでなく、動画像データも取り扱われる。動画像データの場合、静止画像データに比べそのデータ量は莫大であり、例えば、数100メガバイトから数ギガバイトにも及ぶ。この莫大なデータをコンピュータ間でスムーズに取り扱うには、コンピュータ間を結ぶネットワークシステムを高速化する必要があり、このネットワークシステムのデータ伝送速度は、1秒間当たり数ギガビットから数10ギガビットになる。
【0048】図6において、データアクセス制御部101は、送信部102および受信部103に接続され、送信部102から送出された光信号は光ファイバ104を介して受信部103に送られる。送信部102には、発振器111、PLL制御部112、符号器113、シリアライザ114および半導体レーザ115が設けられている。
【0049】また、受信部103には、フォトダイオード121、電圧制御発振器122、クロックデータリカバリ123、デシリアライザ124および復号器125が設けられている。データアクセス制御部101からは、オリジナルのパラレルデータが送信部102に出力される。送信部102では、このパラレルデータを受信すると、符号器113により符号化され、発振器111およびPLL制御部112で生成された同期クロックと合成される。
【0050】合成されたパラレルデータは、シリアライザ114でシリアルデータに変換され、半導体レーザ115からのレーザ光をこのシリアルデータにより変調させる。そして、この変調されたレーザ光は、光ファイバ104を介して伝送される光ファイバ104により伝送された変調光は、受信部103に入力される。受信部103に入力された変調光は、フォトダイオード121で受光され、光信号が電気信号に変換される。
【0051】ここで、この電気信号の中には、データと共に同期クロックも含まれているため、クロックデータリカバリ123によって、データと同期クロックとを抽出・再生する。この際、クロックデータリカバリ123は、電圧制御型発振器122から出力される信号により機能し、電圧制御型発振器122としては、例えば、図2の構成を用いることができる。
【0052】クロックデータリカバリ123により再生されたシリアルデータは、デシリアライザ124によりパラレルデータに変換される。そして、デシリアライザ124から出力されたパラレルデータは復号器125によって復号化され、オリジナルのパラレルデータが再生受信され、データアクセス制御部101に出力される。
【0053】このように、電圧制御型発振器122として、図2の構成を用いることにより、受信装置103の基本特性を満足させつつ、受信装置103のコンパクト化を図ることが可能となるとともに、受信装置103の高寿命化を図ることが可能となる。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、シールドケースに開口部を設けることにより、シールド効果を維持しつつ、放熱性を向上させることが可能となり、シールドケース内に発熱体が設けられている場合においても、シールドケース内の温度の上昇を抑制することが可能となるとともに、部品の劣化を抑制して、製品の寿命を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る電圧制御型発振器の構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、本発明の第1実施形態に係る発振器用シールドケースの構成を示す斜視図、図2(b)は、図2(a)の発振器用シールドケースを透視した場合の電圧制御型発振器の構成を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は、図2(b)のA−A線で切断した断面図、図3(b)は、図2(b)のB−B線で切断した断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の一実施形態に係る電圧制御型発振器の距離Hと定在波比(SWR)との関係を示す図、図4(b)は本発明の一実施形態に係る電圧制御型発振器の距離Hと損失との関係を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る発振器用シールドケースの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る通信装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 弾性表面波素子
2 増幅器
3 移相器
4 位相調整回路
5 等分配器
11、21 多層基板
12、22 シールドケース
13a、13b、23 開口部
B1〜B4、B11、B12 ビア
Z1〜Z3 絶縁層
G1〜G3、G11 GND層
SL ストリップライン
101 データアクセス制御部
102 送信部
103 受信部
104 光ファイバ
111 発振器
112 PLL制御部
113 符号器
114 シリアライザ
115 半導体レーザ
121 フォトダイオード
122 電圧制御発振器
123 クロックデータリカバリ
124 デシリアライザ
125 復号器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 増幅器と、前記増幅器に対して帰還回路を構成する共振素子と、前記増幅器および共振素子を覆うとともに、前記増幅器で発生する熱を対流させる開口部が設けられたシールドケースとを備えることを特徴とする電圧制御型発振器。
【請求項2】 前記開口部は、前記シールドケースの互いに対向する側面の少なくとも2個所に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電圧制御型発振器。
【請求項3】 前記開口部は円形状または矩形状であり、前記円形状または矩形状の開口部の直径または長辺の長さは、発振周波数の波長の20分の1以下であることを特徴とする請求項2記載の電圧制御型発振器。
【請求項4】 発振周波数を調整するレーザトリミング素子をさらに備え、前記開口部は、前記レーザトリミング素子の上方に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電圧制御型発振器。
【請求項5】 前記シールドケースの上面に最も近い部品導体部との距離は、1.8mm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の電圧制御型発振器。
【請求項6】 増幅器と、前記増幅器に対して帰還回路を構成する共振素子と、前記増幅器および共振素子が配置された基板と、前記基板上に設けられ、前記増幅器および共振素子の周囲に配置された第1グランド層と、前記基板の裏面に設けられた第2グランド層と、前記第1グランド層と前記第2グランド層とを接続するビアと、前記増幅器および共振素子を覆うとともに、前記第1グランド層に接合するシールドケースと、前記シールドケースに設けられ、前記増幅器で発生する熱を対流させる開口部とを備えることを特徴とする電圧制御型発振器。
【請求項7】 内部に設けられた発熱体から発生する熱を対流させる開口部が形成されていることを特徴とする発振器用シールドケース。
【請求項8】 前記開口部は、前記シールドケースの互いに対向する側面の少なくとも2個所に形成されていることを特徴とする請求項7記載の発振器用シールドケース。
【請求項9】 前記開口部は円形状または矩形状であり、前記円形状または矩形状の開口部の直径または長辺の長さは、発振周波数の波長の20分の1以下であることを特徴とする請求項8記載の発振器用シールドケース。
【請求項10】 前記開口部は、レーザトリミング素子の配置位置に対応して形成されていることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項記載の発振器用シールドケース。
【請求項11】 前記シールドケースの上面に最も近い部品導体部との距離が1.8mm以上になるように、前記シールドケースの高さが設定されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項記載の発振器用シールドケース。
【請求項12】 光信号を電気信号に変換するフォトダイオードと、前記電気信号からデータおよび同期信号を抽出するクロックデータリカバリと、前記クロックデータリカバリを動作させるための信号を供給する電圧制御発振器と、前記クロックデータリカバリにより抽出されたシリアルデータをパラレルデータに変換するデシリアライザと、前記パラレルデータを復号する復号器とを備え、前記電圧制御発振器は、増幅器と、前記増幅器に対して帰還回路を構成する共振素子と、前記増幅器および共振素子を覆うとともに、前記増幅器で発生する熱を対流させる開口部が設けられたシールドケースとを備えることを特徴とする受信装置。
【請求項13】 データのアクセス制御を行なうアクセス制御部と、同期クロックを生成する発振器と、前記発振器からの出力をもとに周波数制御を行なうPLL制御部と、前記アクセス制御部から出力されたパラレルデータと前記同期クロックとを合成し、符号化する符号器と、前記前記同期クロックと合成されたパラレルデータをシリアルデータに変換するシリアライザと、前記シリアルデータを光信号に変換する半導体レーザと、前記光信号を電気信号に変換するフォトダイオードと、前記電気信号からデータおよび同期信号を抽出するクロックデータリカバリと、前記クロックデータリカバリを動作させるための信号を供給する電圧制御発振器と、前記クロックデータリカバリにより抽出されたシリアルデータをパラレルデータに変換するデシリアライザと、前記パラレルデータを復号し、前記アクセス制御部に出力する復号器とを備え、前記電圧制御発振器は、増幅器と、前記増幅器に対して帰還回路を構成する共振素子と、前記増幅器および共振素子を覆うとともに、前記増幅器で発生する熱を対流させる開口部が設けられたシールドケースとを備えることを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2003−124746(P2003−124746A)
【公開日】平成15年4月25日(2003.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−315533(P2001−315533)
【出願日】平成13年10月12日(2001.10.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】