説明

電圧制御発振器、並びにそれを用いたPLL回路、FLL回路、及び無線通信機器

【課題】発振周波数が温度によって変化する場合に、発振周波数の可変範囲を狭くすることなく発振周波数を所望の値に保持することができる電圧制御発振器、並びにそれを用いたPLL回路、FLL回路、及び無線通信機器の提供。
【解決手段】可変容量回路120を構成する可変容量素子121,122の接続点Yには、制御電圧Vtが印加される。容量スイッチ回路130を構成するスイッチング素子132には、制御信号Fselが印加される。インダクタ回路110を構成するインダクタ111,112の接続点Xには、制御部170によって電源電圧Vddが印加される。この電源電圧Vddの電圧値は、局部発振信号の発振周波数が温度変化に対して一定となるように制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機器で用いられる電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)、並びにそれを用いたPLL回路、FLL回路、及び無線通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無線通信機器の局部発振信号を発生させるデバイスとして、電圧制御発振器が広く使用されている。図12は、従来の電圧制御発振器の構成例を示す図である。図12に示された電圧制御発振器は、2つのインダクタ11,12と、2つの可変容量素子21,22と、スイッチング素子32と、2つの容量性素子31,33と、2つの発振トランジスタ41,42と、電流源50とを備えている。インダクタ11,12の接続点には、LDO(低ドロップアウトレギュレータ)から一定の電源電圧Vddが印加される。そして、可変容量素子21,22の接続点に制御電圧Vtが印加され、スイッチング素子32に制御信号Fselが入力される。この電圧制御発振器では、制御電圧Vt及び制御信号Fselを制御することによって電圧制御発振器全体の容量値を変化させている。その結果、電圧制御発振器から出力される局部発振信号の発振周波数が変化する。図13は、制御信号FselがLOWである場合の制御電圧Vtに対する発振周波数の変化を実線で、制御信号FselがHIGHである場合の制御電圧Vtに対する発振周波数の変化を破線で示している。
【0003】
ところで、電圧制御発振器の使用中に温度変化が生じた場合、それに伴って例えばインダクタ11,12のインダクタンスが変化する。その結果、局部発振信号の発振周波数が変動する。このような発振周波数の変動を抑制するために、電圧制御発振器の温度を検知して、その検知結果に応じて制御電圧Vtを可変範囲内で変化させることが考えられる。ここで、図13に示す制御電圧Vtの可変範囲とは、制御電圧Vtの取り得る範囲であり、この範囲外では安定した発振周波数特性を得ることができない。また、電圧制御発振器の温度を検知する手段としては、特許文献1,2に開示されているものが知られている。特許文献1には、抵抗及びNTCサーミスタからなる温度補償回路が示されている。特許文献2には、NTCサーミスタが示されている。
【特許文献1】特開平10−126154号公報
【特許文献2】特開平9−223929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように温度変化が生じた場合、発振周波数の温度特性は、図14(A)に示されるようなものとなる。図14(A)において、実線は常温時の発振周波数特性を、点線は低温時の発振周波数特性を、破線は高温時の発振周波数特性を示す。ここで、低温時に制御電圧Vtを可変範囲内のVtAに設定することによって、発振周波数がf0に選択されているとする。次に、この状態で温度が上昇して高温になると、発振周波数をf0に保持するために、制御電圧VtをVtAからVtBに変更する必要がある。しかしながら、VtBは制御電圧Vtの可変範囲外の電圧値であるため、発振周波数をf0に保持できないことになる。したがって、発振周波数が温度によって変化するような場合は、図14(B)に示されるようにFselがLOWである場合とFselがHIGHである場合の周波数バンドの間隔を狭くして、VtBが制御電圧Vtの可変範囲内となるようにする必要がある。すなわち、温度変化を原因とするインダクタンスの変化に対して制御電圧Vtを調整して発振周波数を保持する方法では、発振周波数の可変範囲が狭くなるという問題点があった。
【0005】
それ故に、本発明の目的は、発振周波数が温度によって変化する場合に、発振周波数の可変範囲を狭くすることなく発振周波数を所望の値に保持することができる電圧制御発振器、並びにそれを用いたPLL回路、FLL回路、及び無線通信機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一局面は、局部発振信号を発生させる電圧制御発振器である。この電圧制御発振器は、インダクタ回路と、可変容量回路と、少なくとも1つの容量スイッチ回路と、負性抵抗回路と、制御部とを備える。インダクタ回路は、インダクタが直列接続されたものである。可変容量回路は、両端子間の電位差によって容量値が変化する可変容量素子が直列接続されたものである。容量スイッチ回路は、容量性素子及びスイッチング素子から構成されている。インダクタ回路、可変容量回路、少なくとも1つの容量スイッチ回路、及び負性抵抗回路は、互いに並列接続されている。この構成において、制御部は、インダクタの接続点に電源電圧を印加する。また、可変容量素子の接続点に制御電圧が印加されると共に、容量スイッチ回路に制御信号が入力される。制御部は、局部発振信号の発振周波数が温度変化に対して一定となるように、温度変化に伴って電源電圧を変化させる。
【0007】
上記構成によれば、温度変化に伴う電源電圧の制御により、局部発振信号の発振周波数が温度変化に対して一定に保持される。すなわち、温度変化に対しては、制御電圧の制御はほとんど必要なくなる。
【0008】
他の局面では、制御部は、温度上昇に伴って電源電圧を大きくする。
【0009】
温度が上昇した場合、例えばインダクタのインダクタンスが大きくなり、その結果、局部発振信号の発振周波数が大きくなってしまう。この発振周波数は、インダクタのインダクタンスと、可変容量回路の容量値及び容量スイッチ回路の容量値との積に依存する。上記構成によれば、インダクタンスの増加を打ち消すように可変容量素子の容量値が小さくなる。その結果、局部発振信号の発振周波数が温度変化に対して一定に保持される。
【0010】
他の局面では、制御部は、記憶部と、検知部と、設定部とを含んでいる。記憶部は、温度と電圧値とを対応付けて記憶している。検知部は、温度を検知する。設定部は、検知部によって検知された温度に対応する電圧値を記憶部から読み出して電源電圧に設定する。
【0011】
記憶部の電圧値を適切な値に設定しておくことにより、温度変化に伴う局部発振信号の発振周波数の変化を容易に抑制することが可能となる。
【0012】
他の局面では、記憶部が記憶する温度と電圧値とは、温度が上昇するほど電圧値が大きくなるように設定されている。
【0013】
上記構成によれば、検知部によって検知された温度が高くなるほど、電源電圧がより大きな値に設定されるので、インダクタンスの増加が可変容量素子の容量値の減少によって相殺される。その結果、局部発振信号の発振周波数が温度変化に対して一定に保持されるという効果が得られる。
【0014】
他の局面では、制御部は、抵抗及びトランジスタを備える低ドロップアウトレギュレータである。抵抗の抵抗値は、発振周波数が温度変化に対して一定となるように設定されている。
【0015】
従来の低ドロップアウトレギュレータは、電源電圧が常に一定となるように構成されている。抵抗は、温度の上昇に伴って電圧値が増加するという正の特性を有している。上記構成によれば、抵抗の特性により、電源電圧が温度上昇に伴って大きくなり、その結果、発振周波数が温度変化に対して一定となる。
【0016】
他の局面では、電圧制御発振器は、当該電圧制御発振器の出力を取り出すバッファアンプを更に備えている。制御部は、インダクタの接続点に加えて、バッファアンプに電源電圧を印加する。
【0017】
これにより、電圧制御発振器から、温度によらずほぼ一定の出力が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電源電圧を変化させることによって可変容量素子の両端の電位差が変更されて、電圧制御発振器の容量値が変化する。この容量値の変化によって発振周波数が調整されるので、発振周波数が温度によって変化する場合に、周波数可変範囲を狭くすることなく発振周波数を所望の値に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る電圧制御発振器100の構成例を示す図である。電圧制御発振器100は、携帯電話等の無線通信機器の局部発振信号を発生させるデバイスである。図1に示されるように、電圧制御発振器100は、インダクタ回路110、可変容量回路120、容量スイッチ回路130、負性抵抗回路140、電流源150、及び制御部170を備えている。インダクタ回路110、可変容量回路120、容量スイッチ回路130、及び負性抵抗回路140は、互いに並列接続されている。なお、本実施形態では、電圧制御発振器100が1つの容量スイッチ回路130を備えている形態について説明するが、電圧制御発振器100に複数の容量スイッチ回路120が設けられていてもよい。
【0020】
インダクタ回路110は、直列に接続されたインダクタ111,112で構成されている。インダクタ111とインダクタ112との接続点Xには、制御部170から電源電圧Vddが印加される。この電源電圧Vddについては後述する。
【0021】
可変容量回路120は、本実施形態では、直列に接続された可変容量素子121,122で構成されている。可変容量素子121,122は、CMOSプロセスで用いられるゲート容量を利用した可変容量素子である。可変容量素子121,122は、両端子間の電位差によってその容量値が変化するものである。なお、本発明の電圧制御発振器の可変容量回路には、図1等で示す構成以外にも、Inversion型やAccumulation型のMOSトランジスタやC結合を用いた構成(図2(A)〜図2(D))を用いることも可能である。
【0022】
容量スイッチ回路130は、スイッチング素子としてのMOSトランジスタ132、及び容量性素子131,133から構成されている。容量性素子131,133は、MOSトランジスタ132のドレイン及びソースにそれぞれ接続されている。この容量スイッチ回路130は、バンド切り換え回路を構成する。
【0023】
負性抵抗回路140は、2つのトランジスタ141,142が互いにクロスカップリングされることによって構成されている。トランジスタ141,142としては、MOSトランジスタやバイポーラトランジスタ等が用いられる。
【0024】
電圧制御発振器100が出力する局部発振信号の発振周波数をフィードバック制御するために、可変容量素子121と可変容量素子122との接続点Yに制御電圧Vtが印加される。また、MOSトランジスタ132のゲートには制御信号Fselが印加され、制御信号FselがHIGHレベルとLOWレベルとの間で切り換えられることによって、局部発振信号の発振周波数のバンドが変化する。このHIGHレベルとLOWレベルとは、電源電圧Vddとグランド電圧(=0V)が適している。このように、電圧制御発振器100から出力される局部発振信号の発振周波数は、制御電圧Vtと制御信号Fselが変化することによって変化する。
【0025】
制御部170は、接続点Xに印加する電源電圧Vddを制御するものである。この制御部170は、入力部171、出力部172、検知部173、設定部174、及び記憶部175を有している。
【0026】
入力部171は、バッテリー等から入力された入力電圧を出力部172へ出力する。出力部172は、入力部171からの入力電圧を設定部174によって設定された電圧値に変圧して、電源電圧Vddとして接続点Xに印加する。検知部173は、インダクタ111,112周辺の温度を検知するものである。検知部173としては、NTCサーミスタなどが挙げられるが、検知部173は、その他の温度検知手段であってもよい。記憶部175は、温度と電圧値とを対応付けて記憶している(図4参照)。設定部174は、検知部173によって検知された温度に対応する電圧値を記憶部175から読み出して、出力部172から出力される電源電圧Vddの電圧値に設定する。
【0027】
ところで、電圧制御発振器100から出力される局部発振信号の発振周波数f0は、以下の式1で表される。
【0028】
【数1】

【0029】
式1において、Lはインダクタ111,112のインダクタンスであり、CVは可変容量素子121,122の容量値であり、CCは容量性素子131,133の容量値である。ここで、温度変化が生じた場合に、例えば可変容量素子121,122の容量値CV及び容量性素子131,133の容量値CCは変動せず、インダクタ111,112のインダクタンスLの値が変動したとする。インダクタンスLの値は、通常、温度の上昇に伴って大きくなるので、温度が上昇した場合には、式1から明らかなように、発振周波数f0が小さくなる。この温度上昇による発振周波数f0の変動を抑制するには、式1から明らかなように、可変容量素子121,122の容量値CVを小さくすればよい。可変容量素子121,122は、両端子間の電位差によってその容量値が変化するものである。このため、制御電圧Vtを一定にして可変容量素子121,122の容量値CVを小さくするためには、可変容量素子121,122の両端の電位差、つまり、制御電圧Vtと電源電圧Vddの電位差を制御すれば良い。
【0030】
図3は、電源電圧Vddが1.7Vである場合の制御電圧Vtに対する容量値CVの変化を破線で示し、電源電圧Vddが1.8Vである場合の制御電圧Vtに対する容量値CVの変化を実線で示し、電源電圧Vddが1.9Vである場合の制御電圧Vtに対する容量値CVの変化を点線で示している。図3から明らかなように、制御電圧Vtを変えなくても、電源電圧Vddを大きくすることで、容量値CVを小さくすることが可能である。このため、制御部170は、温度の上昇に伴って電源電圧Vddの電圧値が大きくなるように、電源電圧Vddの電圧値を制御する。
【0031】
以下、電源電圧Vddの制御方法について説明する。図4は、記憶部175に記憶されているルックアップテーブル176を例示する図である。このルックアップテーブル176によって、温度と電源電圧Vddとが対応付けられて記憶部175に記憶されている。設定部174は、検知部173によって検知された温度に対応する電圧値をルックアップテーブル176から読み出して出力部172へ出力する。これに対して、出力部172は、入力部171からの入力電圧を設定部174から出力された電圧値に変圧して、電源電圧Vddとして接続点Xに印加する。すなわち、設定部174は、検知部173によって検知された温度に対応する電圧値を記憶部175から読み出して電源電圧Vddの電圧値に設定する。
【0032】
例えば検知部173によって検知された温度が摂氏−40度である場合、電源電圧Vddが1.7Vに設定される。例えば検知部173によって検知された温度が摂氏25度である場合、電源電圧Vddは1.8Vに設定される。また、例えば検知部173によって検知された温度が摂氏100°である場合、電源電圧Vddは1.9Vに設定される。このように、ルックアップテーブル176に格納されている電圧値は、設定部174によって設定される電源電圧Vddが温度上昇に伴って大きくなるように適切な値に設定されている。
【0033】
以上の説明から明らかなように、制御部170が温度上昇に伴って電源電圧Vddを大きくすることで、容量値CVが小さくなる。その結果、温度上昇に伴うインダクタLの増加が容量値CVの減少によって相殺され、発振周波数f0が温度変化に対して一定となる。換言すれば、共振回路を構成する構成要素の容量値又はインダクタンスが温度によって変動しても、その変動分を可変容量回路120(本実施形態では、可変容量素子121,122)で吸収することができるので、制御電圧Vtをほとんど変えることなく、同じ発振周波数f0を取り出すことができる。このことについて、図5及び図6を参照しつつ、以下に説明する。
【0034】
図5は、電源電圧Vddを補正しなかった場合における制御電圧Vtに対する発振周波数f0の変化を示す図である。図6は、電源電圧Vddを補正した場合における制御電圧Vtに対する発振周波数f0の変化を示す図である。図5,6において、点線は摂氏−40度における発振周波数f0の周波数特性を示し、実線は摂氏27度における発振周波数f0の周波数特性を示し、破線は摂氏100度における発振周波数f0の周波数特性を示す。
【0035】
図5,6からも明らかなように、電源電圧Vddを温度変化(本実施形態ではインダクタンスLの変化)に応じて補正することで、温度変化に伴う発振周波数f0の変動が抑制されている。すなわち、局部発振信号の発振周波数f0が温度変化に対してほぼ一定となっている。
【0036】
図7は、バッファアンプ181,182を備える電圧制御発振器100の構成例を示す図である。バッファアンプ181,182は、電圧制御発振器100の出力を取り出すためのものである。バッファアンプ181は、DCカットコンデンサ183を介して電圧制御発振器100の一方の出力端子に接続されている。バッファアンプ182は、DCカットコンデンサ184を介して電圧制御発振器100の他方の出力端子に接続されている。そして、接続点Xに加えて、バッファアンプ181,182に対して電源電圧Vddが電源として制御部170から印加される。インバータアンプや差動アンプ等をバッファアンプとして用いる場合、温度が高くなるとトランジスタのゲインが小さくなって出力電力が小さくなるので、上述のように温度上昇に伴って電源電圧Vddを大きくすることで、温度変化と関係なくほぼ一定の出力電力を得ることが可能である。
【0037】
以上のように、第1の実施形態に係る電圧制御発振器100によれば、検知部173によって検知される温度が高くなるほど、設定部174によって電源電圧Vddがより大きな値に設定される。このため、発振周波数f0に対するインダクタ111,112のインダクタンスの増加の影響が、可変容量素子121,122の容量値の減少によって相殺される。よって、制御電圧Vtをほとんど変化させなくても、温度変化に伴う発振周波数f0の変動を抑制することができる。したがって、発振周波数f0の可変範囲を狭くすることなく発振周波数f0を所望の値に保持することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、電源電圧Vddを制御して温度変化に伴う発振周波数f0の変動を抑制する場合について説明したが、電源電圧Vddと制御電圧Vtとの両方を制御して、温度変化に伴う発振周波数f0の変動を抑制するようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、温度上昇に伴って電源電圧Vddを大きくする形態について説明したが、温度上昇に伴って電源電圧Vddを小さくするように制御してもよい。なぜなら、共振回路の温度特性や可変容量素子(可変容量回路)の容量特性によっては、温度上昇に伴って電源電圧Vddを小さくする必要がある場合も考えられるからである。本実施形態で説明したようにルックアップテーブル176を使用する場合、温度が上昇するほど電源電圧Vddが小さくなるように、温度と電圧値とを対応付けておけばよい。
【0040】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。図8は、本発明の第2の実施形態に係る電圧制御発振器200の構成例を示す図である。電圧制御発振器200は、制御部170(図1参照)に代えて低ドロップアウトレギュレータ(LDO)190を備えている他は、電圧制御発振器100と同様の構成である。したがって、第2の実施形態では、電圧制御発振器100と共通する構成についてはその説明を省略する。なお、図8では、バッファアンプ181,182が省略されている。
【0041】
インダクタ111,112の接続点Xには、低ドロップアウトレギュレータ190から電源電圧Vddが印加される。図9は、低ドロップアウトレギュレータ190の回路構成の一例を示す図である。低ドロップアウトレギュレータ190は、抵抗191,192,193と、PNP型トランジスタ194,195と、演算増幅器196とを備える。
【0042】
図9に示されるように、抵抗191の一端側は、抵抗193の一端側、及び演算増幅器196の出力端子と接続されている。抵抗191の他端側は、PNP型トランジスタ194のエミッタ、及び演算増幅器196の入力端子の一方と接続されている。抵抗192の一端側は、抵抗193の他端側、及び演算増幅器196の他方の入力端子と接続されている。抵抗192の他端側は、PNP型トランジスタ195のエミッタと接続されている。抵抗193の一端側は、抵抗191の一端側、及び演算増幅器196の出力端子と接続されている。抵抗193の他端側は、抵抗192の一端側、及び演算増幅器196の他方の入力端子と接続されている。PNP型トランジスタ194のエミッタは、抵抗191の他端側、及び演算増幅器196の一方の入力端子と接続されている。PNP型トランジスタ194のベース及びコレクタは接地されている。PNP型トランジスタ195のエミッタは、抵抗192の他端側と接続されている。PNP型トランジスタ195のベース及びコレクタは接地されている。
【0043】
ところで、PNP型トランジスタ194,195は、例えば、温度が1度上昇する毎に電源電圧Vddを2mV減少させるというように、温度の上昇に伴って電源電圧Vddを減少させるという負の温度特性を有している。一方、抵抗191,192,193は、例えば温度が1度上昇する毎に電源電圧Vddを10mV増加させるというように、温度の上昇に伴って電源電圧Vddを増加させるという正の温度特性を有している。したがって、抵抗191,192,193の抵抗値R1,R2,R3、及びPNP型トランジスタ194,195のQ1,Q2の値によって、電源電圧Vddの温度特性を決定することができる。
【0044】
従来のLDOであれば、抵抗191,192,193の抵抗値R1,R2,R3、及びPNP型トランジスタ194,195のQ1,Q2の値は、PNP型トランジスタ194,195と抵抗191,192,193との温度特性を相殺するように、すなわち温度変化に対して電源電圧Vddが一定となるように設定されている。これに対して、本実施形態に係る電圧制御発振器200では、電源電圧Vddが温度上昇に伴って大きくなり、その結果、制御電圧Vtをほとんど変化させなくても発振周波数f0が温度変化に対して一定となるように、抵抗値R1,R2,R3、及びQ1,Q2の値が設定されている。換言すれば、抵抗191,192,193の温度に対する電源電圧Vddの変化が、PNP型トランジスタ194,195の温度に対する電源電圧Vddの変化よりも大きくなるように、抵抗値R1,R2,R3、及びQ1,Q2の値が設定されている。
【0045】
以上のように、第2の実施形態に係る電圧制御発振器200によれば、抵抗191,192,193の抵抗値R1,R2,R3を変更するだけで電源電圧Vddの制御が可能である。このため、新規な回路構成を追加することなく、LDOを利用して電源電圧Vddを変化させて、温度変化に対する発振周波数f0の変動を抑制することができる。よって、制御電圧Vtをほとんど変化させなくても、温度変化に伴う発振周波数f0の変動を抑制することができる。したがって、発振周波数f0の可変範囲を狭くすることなく発振周波数f0を所望の値に保持することができる。
【0046】
[電圧制御発振器を用いた構成例]
図10は、本発明の第1及び第2の実施形態に係る電圧制御発振器100,200を用いたPLL回路300の構成例を示す図である。図10に示されるように、PLL回路300は、位相比較器(PD)301、ループフィルタ302、本発明の電圧制御発振器303(100,200)、及び分周器304を備える。
【0047】
位相比較器301は、入力される基準信号と、電圧制御発振器303の出力信号を分周器304で分周した信号とを比較する。位相比較器301から出力される信号は、ループフィルタ302を介して電圧制御発振器303に制御電圧Vtとして入力される。電圧制御発振器303は、制御電圧Vtに基づいて所望周波数の局部発振信号を出力する。この構成により、PLL回路300は、所望とされる周波数を固定(ロック)する。なお、分周器304の代わりにミキサを用いてもよいし、分周器304とミキサとを併用してもよい。
【0048】
図11は、PLL回路300を用いた無線通信機器400の構成例を示す図である。図11に示されるように、無線通信機器400は、アンテナ401、電力増幅器402、変調器403、スイッチ404、低雑音増幅器405、復調器406、及びPLL回路300を備える。
【0049】
無線信号を送信する場合、変調器403は、PLL回路300から出力される所望の高周波信号をベースバンド変調信号で変調して出力する。変調器403から出力される高周波変調信号は、電力増幅器402によって増幅され、スイッチ404を介してアンテナ401から放射される。無線信号を受信する場合、アンテナ401から受信された高周波変調信号は、スイッチ404を介して低雑音増幅器405に入力されて増幅され、復調器406に入力される。復調器406は、PLL回路300から出力される高周波信号によって、入力された高周波変調信号をベースバンド変調信号に復調する。なお、PLL回路300は、送信側及び受信側で複数用いてもよい。また、PLL回路300が変調器を兼ねてもよい。
【0050】
なお、ここでは電圧制御発振器100,200がPLL回路300に適用された場合について説明したが、電圧制御発振器100,200は、FLL回路に適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の電圧制御発振器は、無線通信機器の局部発振信号の生成等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電圧制御発振器100の構成例を示す図
【図2】可変容量回路120の構成の変形例を示す図
【図3】制御電圧Vtに対する容量値CVの変化を示す図
【図4】ルックアップテーブル176を示す図
【図5】電源電圧Vddを補正しなかった場合における制御電圧Vtに対する発振周波数の変化を示す図
【図6】電源電圧Vddを補正した場合における、制御電圧Vtに対する発振周波数の変化を示す図
【図7】バッファアンプ181,182を備える電圧制御発振器100の構成例を示す図
【図8】本発明の第2の実施形態に係る電圧制御発振器200の構成例を示す図
【図9】LDO190の回路構成の一例を示す図
【図10】本発明の電圧制御発振器を用いたPLL回路300の構成を示す図
【図11】PLL回路300を用いた無線通信機器400の構成を示す図
【図12】従来の電圧制御発振器の構成を示す図
【図13】制御電圧Vtに対する発振周波数の変化を示す図
【図14】温度が変化した場合における、制御電圧Vtに対する発振周波数の変化を示す図
【符号の説明】
【0053】
100 電圧制御発振器
110 インダクタ回路
111,112 インダクタ
120 可変容量回路
121,122 可変容量素子
130 容量スイッチ回路
131,133 容量性素子
132 MOSトランジスタ132
140 負性抵抗回路
170 制御部
173 検知部
174 設定部
175 記憶部
181,182 バッファアンプ
190 低ドロップアウトレギュレータ
191,192,193 抵抗
194,195 PNP型トランジスタ
300 PLL回路
400 無線通信機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部発振信号を発生させる電圧制御発振器であって、
インダクタが直列接続されたインダクタ回路と、
両端子間の電位差によって容量値が変化する可変容量素子が直列接続された可変容量回路と、
容量性素子及びスイッチング素子から構成された少なくとも1つの容量スイッチ回路と、
負性抵抗回路と、
前記インダクタの接続点に電源電圧を印加する制御部とを備え、
前記インダクタ回路、前記可変容量回路、前記少なくとも1つの容量スイッチ回路、及び前記負性抵抗回路が互いに並列接続されており、
前記可変容量素子の接続点に制御電圧が印加されると共に、前記容量スイッチ回路に制御信号が入力され、
前記制御部は、前記局部発振信号の発振周波数が温度変化に対して一定となるように、温度変化に伴って前記電源電圧を変化させることを特徴とする、電圧制御発振器。
【請求項2】
前記制御部は、温度上昇に伴って前記電源電圧を大きくすることを特徴とする、請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項3】
前記制御部は、
温度と電圧値とを対応付けて記憶する記憶部と、
温度を検知する検知部と、
前記検知部によって検知された温度に対応する電圧値を前記記憶部から読み出して前記電源電圧に設定する設定部とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項4】
前記記憶部が記憶する温度と電圧値とは、温度が上昇するほど電圧値が大きくなるように設定されていることを特徴とする、請求項3に記載の電圧制御発振器。
【請求項5】
前記制御部は、抵抗及びトランジスタを備える低ドロップアウトレギュレータであって、
前記抵抗の抵抗値は、前記発振周波数が温度変化に対して一定となるように設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項6】
当該電圧制御発振器の出力を取り出すバッファアンプを更に備え、
前記制御部は、前記インダクタの接続点に加えて、前記バッファアンプに前記電源電圧を印加することを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の電圧制御発振器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の電圧制御発振器を備えた、PLL回路。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の電圧制御発振器を備えた、FLL回路。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の電圧制御発振器を備えた、無線通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−239527(P2010−239527A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87038(P2009−87038)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】