説明

電圧制御調整可能周波数応答を持つマルチチャネル表面弾性波フィルタ素子

【課題】周波数範囲の広い、マルチチャネル調整可能フィルタを提供する。
【解決手段】電圧制御により速度調整可能な圧電基板101上に形成される入力電極102及び並列接続される複数の入力補助電極103、並びに出力電極111及び並列接続される複数の出力補助電極108を含む。対応する複数ペアの入力補助電極103及び出力補助電極108が複数の平行チャネルを形成することにより、SAWを伝搬させる。入力電極102は電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成し、この周波数応答を出力電極111によって生成される電圧制御調整可能COMB周波数応答と合成してSAWフィルタ電圧制御調整可能な周波数応答を生成する。別の形態としては、マルチチャネルSAW共振器、2つの新規のSAWフィルタを直列接続するSAWフィルタ素子、及び2つの新規のSAW共振器を直列接続するSAWフィルタ素子などがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される例示的な実施形態は概して、表面弾性波(SAW)フィルタ素子に関し、特に電圧制御調整可能周波数応答を持つマルチチャネルSAWフィルタ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のSAWフィルタは、圧電基板の表面に形成される単一入力櫛形電極及び単一出力櫛形電極を利用する。入力電極入力電極は、入力電気信号をSAWに変換し、そしてSAWは、基板の表面に沿って伝搬して出力電極に達する。次に、出力電極は、SAWを変換して出力電気信号に戻す。入力電極及び出力電極がこのようにして、入力電極から出力電極にSAWが伝搬する単一チャネルによって特徴付けられるSAWフィルタを構成する。しかしながら、このようなSAWフィルタの周波数調整範囲は非常に狭く、かつ周波数応答波形は比較的固定されている。
【0003】
従来のSAWフィルタに対する一つの改良では、COMB周波数応答を生成するSAWフィルタを電圧制御により速度調整可能な圧電基板の上に形成する。SAWフィルタの入力及び出力電極のフィンガを周期的に引き出すことにより、COMB周波数応答をそれぞれ生成する。各トランスデューサに印加される電界を変化させて、各トランスデューサにおけるSAW伝搬速度を変化させることにより、周波数ピークの相対シフトを各COMB応答に生じさせる。入力及び出力電極の入力及び出力COMB応答をカスケード接続することにより、オフセット周波数の入力及び出力ピークが相殺され、そして同じ周波数の入力及び出力ピークが強調される。単一周波数ピーク応答は、入力及び出力電極を選択的にバイアスすることにより動作周波数範囲に亘ってスキャンすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第4,298,849号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第4,746,882号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第4,764,701号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第4,908,542号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第5,770,985号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第5,831,492号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第6,023,122号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第6,057,744号明細書
【特許文献9】米国特許第6,586,214号明細書
【特許文献10】米国特許第6,816,036号明細書
【特許文献11】米国特許第6,992,547号明細書
【特許文献12】米国特許第7,190,242号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2003/0117039号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2003/0168932号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2008/0042517号明細書
【特許文献16】特開昭57−062615号公報
【特許文献17】特開2002−299997号公報
【特許文献18】特開2003−060476号公報
【特許文献19】特開2003−249824号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T.Kodama,et al.,“Design of Low−Loss SAWFilters Emplying Distributed Acoustic Reflection Transducers,” 1986 Ultrasonics Symposium, pp59−64.
【非特許文献2】P.S.Cross and R.V.Schmidt,“Coupled Surface−Acoustic−Wave Resonanators,” The Bell Systems TEchnical Journal, Vol.56, No.8, October 1997, pp.1447−1482.
【非特許文献3】C.K.Campbell et al.,“Wide−Band Linear Phase SAW Filter Design Using slanted Transducer Fingers,”IEEE Transactions On Sonics and Ultrasonics, Vol.SU−29,No.6,July 1092,pp224−228.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
COMB周波数応答を生成し、かつ電圧制御速度調整可能基板の上に形成されるSAWフィルタは、調整範囲を広げることができる。しかしながら、このアプローチによって、フィルタ特性が、フィルタ・リジェクション、挿入損失、及び固定された帯域通過波形の点で低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来の、そしてごく最近のフィルタ構造に関して上に説明した制限に鑑みて、ずっと広い周波数範囲を、新規のSAWフィルタ素子を使用してカバーする例示的なマルチチャネル調整可能フィルタについて本明細書において説明する。平坦な通過帯域特性、急峻なリジェクション・スカート、及び良好な側帯波抑圧を含む調整可能なフィルタ波形が更に得られる。
【0008】
ここに説明する第1の例示的な実施形態は、マルチチャネル表面弾性波(SAW)フィルタであり、当該SAWフィルタは、電圧制御により速度調整可能な圧電基板と、基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて入力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の入力補助電極含む入力電極であって、各入力補助電極が固有電圧制御調整可能中心周波数を有する、前記入力電極と;基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて出力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の出力補助電極を含む出力電極であって、各出力補助電極が固有電圧制御調整可能中心周波数を有する、前記出力電極と、複数の入力補助電極及び複数の出力補助電極から成る対応する複数ペアにより形成される複数の平行チャネルと、を備え、入力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答及び出力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答を合成して関連するSAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を生成する。
【0009】
ここに説明する第2の例示的な実施形態は、マルチチャネル表面弾性波(SAW)共振器であって、当該SAW共振器は:少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板と、少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて入力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の入力補助共振器を含む入力共振器であって、これらの入力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、そして反射格子構造と、を含み、かつ固有電圧制御調整可能中心周波数の周波数応答を有する、前記入力共振器と、少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて出力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の出力補助共振器を含む出力共振器であって、これらの出力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、そして反射格子構造と、を含み、かつ固有電圧制御調整可能中心周波数の周波数応答を有する、前記出力共振器と、を備え、入力共振器及び出力共振器は電気的に直列接続され、そして入力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答及び出力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答を合成して、関連するSAW共振器電圧制御調整可能周波数応答を生成する。
【0010】
ここに説明する第3の例示的な実施形態は、マルチチャネル表面弾性波(SAW)フィルタ素子であり、当該SAWフィルタ素子は、電圧制御により速度調整可能な圧電基板と、第1SAWフィルタと、を備え、第1SAWフィルタは:基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第1入力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の第1入力補助電極を含む第1入力電極であって、各第1入力補助電極が固有電圧制御調整可能中心周波数を有する、前記第1入力電極と;基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第1出力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の第1出力補助電極を含む第1出力電極であって、各第1出力補助電極が固有電圧制御調整可能中心周波数を有する、前記第1出力電極と、複数の第1入力補助電極及び複数の第1出力補助電極から成る対応する複数ペアにより形成される複数の第1平行チャネルと、を含み、第1入力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答及び第1出力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答を合成して、関連する第1SAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を生成し、さらに、第1SAWフィルタに電気的に直列接続される第2SAWフィルタを備え、第2SAWフィルタは、基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第2入力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の第2入力補助電極を含む第2入力電極であって、各第2入力補助電極が固有電圧制御調整可能中心周波数を有する、前記第2入力電極と、基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第2出力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の第2出力補助電極を含む第2出力電極であって、各第2出力補助電極が固有電圧制御調整可能中心周波数を有する、前記第2出力電極と、複数の第2入力補助電極及び複数の第2出力補助電極から成る対応する複数ペアにより形成される複数の第2平行チャネルと、を含み、第2入力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答及び第2出力電極電圧制御調整可能COMB周波数応答を合成して、関連する第2SAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を生成し、そして第1SAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答及び第2SAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答をカスケード接続して、全SAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を生成する。
【0011】
ここに説明する第4の例示的な実施形態は、表面弾性波(SAW)フィルタ素子であり、当該SAWフィルタ素子は、少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板と、第1SAW共振器とを備え、第1SAW共振器は、少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第1入力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の第1入力補助共振器を含む第1入力共振器であって、これらの第1入力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、反射格子構造とを含み、かつ固有電圧制御調整可能中心周波数の周波数応答を有する、前記第1入力共振器と、少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第1出力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の第1出力補助共振器を含む第1出力共振器であって、これらの第1出力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、そして反射格子構造と、を含み、かつ固有電圧制御調整可能中心周波数の周波数応答を有する、前記第1出力共振器と、を含み、第1入力共振器及び第1出力共振器は電気的に直列接続され、第1入力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答及び第1出力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答を合成して、第1SAW共振器電圧制御調整可能周波数応答を生成し、さらに、第1SAW共振器に電気的に直列接続される第2SAW共振器を備え、第2SAW共振器は、少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第2入力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の第2入力補助共振器を含む第2入力共振器であって、これらの第2入力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、そして反射格子構造と、を含み、かつ固有電圧制御調整可能中心周波数の周波数応答を有する、前記第2入力共振器と少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第2出力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する複数の第2出力補助共振器を含む第2出力共振器であって、これらの第2出力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、そして反射格子構造と、を含み、かつ固有電圧制御調整可能中心周波数の周波数応答を有する、前記第2出力共振器と、を含み、第2入力共振器及び第2出力共振器は電気的に直列接続され、第2入力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答及び第2出力共振器電圧制御調整可能COMB周波数応答を合成して、第2SAW共振器電圧制御調整可能周波数応答を生成し、そして第1SAW共振器電圧制御調整可能周波数応答及び第2SAW共振器電圧制御調整可能周波数応答をカスケード接続して、全SAW共振器電圧制御調整可能周波数応答を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】例示的な実施形態によるマルチチャネルSAWフィルタの平面図である。
【図2】図1に示すマルチチャネルSAWフィルタのようなマルチチャネルSAWフィルタであって、マルチチャネルSAWフィルタをバイアスする電圧源を含むマルチチャネルSAWフィルタの正面図である。
【図3A】図1に示すマルチチャネルSAWフィルタのような第1マルチチャネルSAWフィルタの平面図である。
【図3B】図1に示すマルチチャネルSAWフィルタのような第2マルチチャネルSAWフィルタの平面図である。
【図3C】電気的に直列接続される図3Aの第1マルチチャネルSAWフィルタ及び図3Bの第2マルチチャネルSAWフィルタを備えるSAWフィルタ素子を示す図である。
【図4A】図3Aに示すマルチチャネルSAWフィルタのような第1マルチチャネルSAWフィルタの入力電極及び出力電極の両方の個々の周波数応答のグラフ表示である。
【図4B】図4Aに示す入力電極及び出力電極の合成周波数応答のグラフ表示である。
【図4C】図3Bに示すマルチチャネルSAWフィルタのような第2マルチチャネルSAWフィルタの入力電極及び出力電極の両方の個々の周波数応答のグラフ表示である。
【図4D】図4Cに示す入力電極及び出力電極の合成周波数応答のグラフ表示である。
【図5】図4B及び4Dに示す周波数応答の合成周波数応答のグラフ表示であり、そして電圧バイアスが印加されていない場合の図3Cに示すSAWフィルタ素子のようなSAWフィルタ素子の周波数応答の例である。
【図6A】図3Aに示すマルチチャネルSAWフィルタのような第1マルチチャネルSAWフィルタの入力電極及び出力電極の両方の個々の周波数応答のグラフ表示である。
【図6B】図6Aに示す入力電極及び出力電極の合成周波数応答のグラフ表示である。
【図6C】図3Bに示すマルチチャネルSAWフィルタのような第2マルチチャネルSAWフィルタの入力電極及び出力電極の両方の個々の周波数応答のグラフ表示である。
【図6D】図6Cに示す入力電極及び出力電極の合成周波数応答のグラフ表示である。
【図7】図6B及び6Dに示す周波数応答の合成周波数応答のグラフ表示であり、そして電圧バイアスが、両方のマルチチャネルSAWフィルタの入力電極及び出力電極に印加されている場合の図3Cに示すSAWフィルタ素子のようなSAWフィルタ素子の周波数応答の例である。
【図8A】図3Aに示すマルチチャネルSAWフィルタのような第1マルチチャネルSAWフィルタの入力電極及び出力電極の両方の個々の周波数応答のグラフ表示である。
【図8B】図8Aに示す入力電極及び出力電極の合成周波数応答のグラフ表示である。
【図8C】図3Bに示すマルチチャネルSAWフィルタのような第2マルチチャネルSAWフィルタの入力電極及び出力電極の両方の個々の周波数応答のグラフ表示である。
【図8D】図8Cに示す入力電極及び出力電極の合成周波数応答のグラフ表示である。
【図9】図8B及び8Dに示す周波数応答の合成周波数応答のグラフ表示であり、そして両方のマルチチャネルSAWフィルタの入力電極及び出力電極に対する電圧バイアスが「オフ」状態に設定されている場合の図3Cに示すSAWフィルタ素子のようなSAWフィルタ素子の周波数応答の例である。
【図10】別の例示的な実施形態によるマルチチャネルSAW共振器の平面図である。
【図11A】図10に示すマルチチャネルSAW共振器のような第1マルチチャネルSAW共振器の平面図である。
【図11B】図10に示すマルチチャネルSAW共振器のような第2マルチチャネルSAW共振器の平面図である。
【図11C】電気的に直列接続される図11Aの第1マルチチャネルSAW共振器及び図11Bの第2マルチチャネルSAW共振器を備えるSAWフィルタ素子を示す図である。
【図12A】図11Aに示すマルチチャネルSAW共振器のような第1マルチチャネルSAW共振器の入力共振器及び出力共振器の両方の個々の周波数応答のグラフ表示である。
【図12B】図12Aに示す入力電極及び出力電極の合成周波数応答のグラフ表示である。
【図12C】図11Bに示すマルチチャネルSAW共振器のような第2マルチチャネルSAW共振器の入力共振器及び出力共振器の両方の個々の周波数応答のグラフ表示である。
【図12D】図12Cに示す入力電極及び出力電極の合成周波数応答のグラフ表示である。
【図13】図12B及び12Dに示す周波数応答の合成周波数応答のグラフ表示であり、そして電圧バイアスが、両方のマルチチャネルSAW共振器の入力共振器及び出力共振器に印加されている場合の図11Cに示すSAWフィルタ素子のようなSAWフィルタ素子の周波数応答の例である。
【図14】電気的に直列接続されてSAWフィルタ素子から成るアレイを形成する、SAWフィルタ素子(SAWフィルタまたはSAW共振器)から成る2つのサブアレイを示し、各サブアレイは、電気的且つ物理的に並列接続される複数のマルチチャネルSAWフィルタ素子を含む。
【図15】マルチチャネルSAWフィルタ素子から成る2つのサブアレイから生成されるマルチチャネルSAWフィルタ素子から成る対応する複数ペアの動作範囲及びピーク周波数応答のグラフ表示であり、2つのサブアレイは電気的に直列接続されてアレイを形成する。
【図16】図15における設計構造とは別の設計構造のマルチチャネルSAWフィルタ素子から成る2つのサブアレイから生成されるマルチチャネルSAWフィルタ素子から成る対応する複数ペアの動作範囲及びピーク周波数応答のグラフ表示であり、2つのサブアレイは電気的に直列接続されてアレイを形成する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例示的な実施形態の更に別の目的及び利点は、本発明の好適な実施形態についての以下の詳細な記述を添付の図面と一緒に参照することにより、一層明らかになる。
次に、新規のSAWフィルタ、SAW共振器、及びSAWフィルタ素子の例示的な実施形態について詳細に記載する。説明を分かり易くするために、複数の図に示される同様の構成要素に付される参照番号は、必ずしも表示される、または説明されるという訳ではない。また、「第1」及び「第2」、「入力」及び「出力」などのような関係用語は、一つのエンティティ、アイテム、またはアクションを別のエンティティ、アイテム、またはアクションから区別するためにのみ使用され、必ずしもこのようなエンティティ、アイテム、またはアクションの間のどのような実際の関係も、または順番も必要としているか、または意味している訳ではないことを理解されたい。また、実施形態が仮に、複数のプロセスまたはステップを含むとした場合に、このようなプロセスまたはステップは、特定の順番に明示的に、かつ必然的に制限されることがない限り、どのような順番でも行なうことができることに留意されたい。
【0014】
図1は、例示的なマルチチャネルSAWフィルタ100の平面図を示している。フィルタ100は、電圧制御により速度調整可能な圧電基板101の上に形成され、電圧制御により速度調整可能な圧電基板101は通常、被支持基板の上の電気絶縁性ニオブ酸リチウムまたはGaNにより形成され、被支持基板は通常、シリコンまたは炭化シリコンにより作製される。フィルタ100は、入力電極102及び出力電極111により構成され、これらの電極は互いから基板101の表面の上で離間している。
【0015】
入力電極102は、第1入力電極104及び第1出力電極105を含み、これらの電極は一括して入力電極102の側部素子として形成される。複数の入力補助電極103はそれぞれ、上側からは、第1入力電極104の一部分、または第1出力電極105の一部分から、そして下側からは、対応する対向電極の一部分から延びる。これらの入力補助電極103は、この技術分野では公知のように、種々の方法で作製され、例えば分散型弾性反射電極(DARTs)または簡易なテーパ付き櫛形電極(TIDTs)として作製される。各入力補助電極103は、第1入力電極104及び第1出力電極105に対するバイアスに従って調整される固有電圧制御調整可能中心周波数の周波数応答を生成する。
【0016】
出力電極111は、入力電極102と同様に構成され、そして第2入力電極106及び第2出力電極107を含み、これらの電極は一括して出力電極111の側部素子として形成される。複数の出力補助電極108はそれぞれ、上側からは、第2入力電極106の一部分、または第2出力電極107の一部分から、そして下側からは、対応する対向電極の一部分から延出する。これらの出力補助電極108は、この技術分野では公知のように、種々の方法で作製され、例えばDARTs(分散型弾性反射電極)またはTIDTs(テーパ付き櫛形電極)として作製される。各出力補助電極108は、第2入力電極106及び第2出力電極107に対するバイアスに従って調整される固有電圧制御調整可能中心周波数の周波数応答を生成する。
【0017】
電極102,111のそれぞれにおける各セットの入力及び出力電極104,105,及び106,107を上記のように配置することにより、複数の入力補助電極103が電気的且つ物理的に並列に接続され、複数の出力補助電極108が電気的且つ物理的に並列に接続される。しかしながら、傾斜電極104,105,106,107(及び、図10に示すSAW共振器の電極1004,1005,1012,及び1013)を使用する手法が、全ての平行チャネル115を電気的に接続する唯一の方法であることに注目されたい。エアブリッジアプローチまたはワイヤボンディングアプローチは、傾斜電極によるSAW反射が大き過ぎて、トランスデューサ設計が不可能である場合に使用される。
【0018】
入力電極102では、電気的且つ物理的に並列に接続される複数の入力補助電極103が動作して、入力電極104及び出力電極105に対するバイアスに従って調整される電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する。同様にして、出力電極111では、電気的且つ物理的に並列接続される複数の出力補助電極108が動作して、入力電極106及び出力電極107に対するバイアスに従って調整される電圧制御調整可能COMB周波数応答を生成する。各電極102,111の電圧制御調整可能COMB周波数応答は、複数の入力補助電極103の各々によって生成される集合的な周波数応答、及び複数の出力補助電極108の各々によって生成される集合的な周波数応答からそれぞれ得られる応答である。電極102,111の電圧制御調整可能COMB周波数応答を合成して、SAWフィルタ100の電圧制御調整可能SAWフィルタ応答を生成する。
【0019】
図1に示すように、λ1〜λ9は、式(λ=V/fi)で表わされる複数の補助電極103の各補助電極の波長であり、Vは、ゼロバイアス電圧の入力補助電極103を通過するときのSAW速度であり、そしてfi(i=1,2,3,...,9)は各入力補助電極103の中心周波数である。同様に、λ1’〜λ9’は、式(λ’=V’/fi’)で表わされる複数の出力補助電極108の各出力補助電極の波長であり、V’は、ゼロバイアス電圧の出力補助電極108を通過するときのSAW速度であり、そしてfi’(i=1,2,3,...,9)は各出力補助電極108の中心周波数である。
【0020】
波長λi(i=1,2,3,...,9)の各入力補助電極103は、波長λi’(i=1,2,3,...,9)の各出力補助電極108に接続されるチャネルを形成する。複数のチャネルが、入力補助電極103及び出力補助電極108から成る対応する複数ペアの間に形成される。入力電極102及び出力電極111の両方における補助電極の数は等しいが、この数は変えることができる。各入力補助電極103の中心周波数fi(i=1,2,3,...,9)、及び各出力補助電極108の中心周波数fi’(i=1,2,3,...,9)は、図1に示すように、降順に並べることができるが、これらの中心周波数は、昇順、または昇順及び降順の組み合わせを含むいずれの順番でも並べることができる。図1では、λ1<λ2<λ3...<λ9及びλ1’<λ2’<λ3’...<λ9’である。
【0021】
本明細書に記載されるようなマルチチャネルトランスデューサには多くの有利な特徴がある。各チャネル115の開口は、各補助電極周波数ピークの相対挿入損失を制御するように正しく設計される。更に、各入力補助電極103及び各出力補助電極108は、当該補助電極自体のトランスデューサフィンガパターンを有するように設計され、当該フィンガパターンによって、当該パターン自体の固有周波数応答波形が得られる。
【0022】
図1から分かるように、SAWフィルタ100にテーパを付ける。すなわち、基板を横切って第1出力電極105と第2入力電極106との間に形成されるチャネル115は、CH1からCH9の方向に短くなる。フィルタ100にテーパを付ける理由は、チャネルの種々の波長を、波長の短い順に並べているからである。
【0023】
各チャネル115は、中心周波数fiにおける各入力補助電極103の周波数応答、及び中心周波数fi’における対応する出力補助電極108の周波数応答をカスケード接続することにより生成されるカスケード接続周波数応答に関連付けられる。一般的に、一つのチャネルを除き、λi≠ λi’及びfi ≠fi’が成り立つ。中心周波数fi 及びfi’を意図的にずらして、以下に説明するように、異なるDC電圧でバイアスされるときに、複数のピーク周波数を持つ入力電極102及び出力電極111によって形成されるカスケード接続周波数応答を異なる所定の挿入損失レベルで生成する。
【0024】
図2は、図1に示すSAWフィルタ100の構造にほぼ対応する構造を有する例示的なマルチチャネルSAWフィルタ200の正面図である。入力電極210及び出力電極211は電圧制御速度調整可能圧電層201の上に形成され、圧電層201は通常、シリコンまたは炭化シリコンの半導体層202の上に形成される。第1電圧源V1は、直流(DC)バイアスを入力電極202の第1入力電極及び第1出力電極に供給するのに対し、第2電圧源V2は、第2DCバイアスを出力電極211の第2入力電極及び第2出力電極に供給する。金属処理が施された裏面203は、電圧源のグランド電位を半導体層202を介して供給するので、電界が入力電極210及び出力電極211の両方の圧電層201に形成される。上記のバイアスが印加される結果、圧電層201の機械特性、圧電特性、及び誘電体特性が変化して、入力電極210及び出力電極211の両方におけるSAWの速度が影響を受けるので、入力電極210及び出力電極211の各々の周波数応答、及び複数の入力補助電極及び複数の出力補助電極の各々の中心周波数が変化する。
【0025】
図3Aは、図1に示す上述のSAWフィルタ100とほぼ同じタイプのフィルタである第1SAWフィルタ300aの平面図を示している。第1SAWフィルタ300aは、電圧制御により速度調整可能な圧電基板の上に形成される第1入力電極302a及び第1出力電極311aを含む。第1DC電圧源303aは、第1DCバイアスを第1入力電極302aの入力電極305a及び出力電極306aに供給する。第2DC電圧源304aは、第2DCバイアスを第1出力電極311aの入力電極307a及び出力電極308aに供給する。第1入力電極302aは、電気的且つ物理的に並列接続される複数の補助電極を含み、そして第1出力電極311aは、電気的且つ物理的に並列接続される複数の補助電極を含む。複数の平行チャネルが、第1入力電極302aと第1出力電極311aとの間に形成される。
【0026】
例示的なマルチチャネルSAWフィルタ300aでは、9個の補助電極が、第1入力電極302a及び第1出力電極311aの両方に設けられ、そして9個の平行チャネルが、第1入力電極302aと第1出力電極311aとの間に形成される。第1入力電極302a及び第1出力電極311aの両方の複数の補助電極の特性だけでなく、第1入力電極302aと第1出力電極311aとの間に形成される平行チャネルの特性は、図1に示すSAWフィルタ100に関連して上に説明した特性とほぼ一致するので、これらの特性をここで再度説明することはしない。
【0027】
図3Bは、図1に示すSAWフィルタ100に関連して上に説明したものとほぼ同じタイプのフィルタである第2SAWフィルタ300bの平面図を示している。第2SAWフィルタ300bは、電圧制御により速度調整可能な圧電基板の上に形成される第2入力電極302b及び第2出力電極311bを含む。第3DC電圧源303bは、第3DCバイアスを第2入力電極302bの入力電極305b及び出力電極306bに供給する。第4DC電圧源304bは、第4DCバイアスを第2出力電極311bの入力電極307b及び出力電極308bに供給する。第2入力電極302bは、電気的且つ物理的に並列接続される複数の補助電極を含み、そして第2出力電極311bは、電気的且つ物理的に並列接続される複数の補助電極を含む。
【0028】
複数の平行チャネルが、第2入力電極302bと第2出力電極311bとの間に形成される。例示的なマルチチャネルSAWフィルタ300bでは、7個の補助電極が、第2入力電極302b及び第2出力電極311bの両方に設けられ、そして7個の平行チャネルが、第2入力電極302bと第2出力電極311bとの間に形成される。第2入力電極302b及び第2出力電極311bの両方の複数の補助電極の特性だけでなく、第1入力電極302bと第1出力電極311bとの間に形成される平行チャネルの特性は、図1に示すSAWフィルタ100に関連して上に説明した特性とほぼ一致するので、これらの特性をここで再度説明することはしない。
【0029】
上の説明は次の点を間接的に示唆するが、マルチチャネルSAWフィルタ300a,300bの各々において並列接続されるチャネルの個数は異ならせることができることに明確に留意されたい。しかしながら、マルチチャネルSAWフィルタ300a,300bの各々において並列接続されるチャネルの個数は同じとすることもできる。
【0030】
図3Cは、接続線312及び313を介して電気的に直列接続されるSAWフィルタ300a及び300bを備える例示的なSAWフィルタ素子300cを示す回路図である。SAWフィルタ300a,300bは、単一基板の上に形成されるものとして示されるが、SAWフィルタ300a,300bの各々を同じタイプの個別基板の上に形成することができる、ということも可能である。一般的に、キャパシタ、インダクタ、及び/又は抵抗体から成るインピーダンス整合回路が、SAWフィルタ300a,300bの各々の入力及び出力電極の位置に必要となることにも留意されたいが、これらの回路は、図を分かり易くするためにここでは示していない。第1DC電圧源303aは、第1入力電極302aをバイアスし、そして第2DC電圧源304aは、第1出力電極311aをバイアスする。第3DC電圧源303bは、第2入力電極302bをバイアスし、そして第4DC電圧源304bは、第2出力電極311bをバイアスする。上に説明したSAWフィルタ300a及び300bはそれぞれ、例示的なSAWフィルタ100に関連して上に説明した電圧制御調整可能周波数応答を生成する。しかし、SAWフィルタ素子300cにおけるように電気的に直列接続される場合、SAWフィルタ群のうちのいずれかのSAWフィルタだけで個々に生成される場合よりも大きい減衰量のピーク周波数によって特徴付けられる全SAWが生成される。更に、全SAW電圧制御調整可能周波数応答のピーク周波数の位置は、第1〜第4電圧源303a,304a,303b,及び304bの各電圧源からそれぞれ供給されるバイアスの絶対値によって変わる形で調整することができる。
【0031】
図4Aは、図1のSAWフィルタ100、及び/又は図3Aの第1SAWフィルタ300aのような第1SAWフィルタの入力電極及び出力電極に関してシミュレートされたCOMB周波数応答のグラフ表示である。図4Bは、例示的なSAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を示し、この周波数応答は、図4Aに示す周波数応答を生成する入力及び出力電極を含む場合のSAWフィルタ100及び/又は第1SAWフィルタ300aと同様のSAWフィルタによって生成される。
【0032】
図4Cは、図1のSAWフィルタ100、及び/又は図3Bの第2SAWフィルタ300bと同様の第2SAWフィルタの入力電極及び出力電極に関してシミュレートされたCOMB周波数応答のグラフ表示である。図4Dは、例示的なSAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を示し、この周波数応答は、図4Cに示す周波数応答を生成する入力及び出力電極を含むSAWフィルタ100、及び/又は第2SAWフィルタ300bによって生成される。
【0033】
図5は、第1及び第2SAWフィルタが、図3CのSAWフィルタ素子300cと同様に、電気的に直列接続される場合の、図4Bのフィルタ応答を生成する第1SAWフィルタ、及び図4Dのフィルタ応答を生成する第2SAWフィルタの、ピーク周波数を含む合成フィルタ応答を示している。不所望の周波数ピークの減衰量はこの例では、直列に合成されない場合の図4B,4Dのフィルタ応答を生成する個々のSAWフィルタの減衰量よりもずっと大きい。周波数帯域の約1100〜1120MHzのピーク周波数位置は、第1〜第4DC電圧源の各電圧源によるバイアスがほぼ等しくなっている結果である。その結果、バイアスが全く印加されていないような状態になる。
【0034】
図6Aは、図1のSAWフィルタ100、及び/又は図3Aの第1SAWフィルタ300aと同様の第1SAWフィルタの入力電極及び出力電極に関してシミュレートされたCOMB周波数応答のグラフ表示である。図6Bは、例示的なSAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を示し、この周波数応答は、図6Aに示す周波数応答を生成する入力及び出力電極を含むSAWフィルタ100、及び/又は第1SAWフィルタ300aと同様のSAWフィルタによって生成される。
【0035】
図6Cは、図1のSAWフィルタ100、及び/又は図3Bの第2SAWフィルタ300bと同様の第2SAWフィルタの入力電極及び出力電極に関してシミュレートされたCOMB周波数応答のグラフ表示である。図6Dは、例示的なSAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を示し、この周波数応答は、図6Cに示す周波数応答を生成する入力及び出力電極を含むSAWフィルタ100、及び/又は第2SAWフィルタ300bと同様のSAWフィルタによって生成される。
【0036】
図7は、図3CのSAWフィルタ素子300cと同様に、電気的に直列接続される場合の、図6Bのフィルタ応答を生成する第1SAWフィルタ、及び図6Dのフィルタ応答を生成する第2SAWフィルタの、ピーク周波数を含む合成フィルタ応答を示している。約1005〜1015MHzのピーク周波数の減衰量はこの例では、直列に合成されない場合の図6B,6Dのフィルタ応答を生成する個々のSAWフィルタの減衰量よりもずっと大きい。ピーク周波数が周波数帯域の約1005〜1015MHzに位置するのは、バイアスが4つの異なる電圧の第1〜第4DC電圧源から供給される結果である。
【0037】
図8Aは、図1のSAWフィルタ100、及び/又は図3Aの第1SAWフィルタ300aと同様の第1SAWフィルタの入力電極及び出力電極に関してシミュレートされたCOMB周波数応答のグラフ表示である。図8Bは、例示的なSAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を示し、この周波数応答は、図8Aに示す周波数応答を生成する入力及び出力電極を含むSAWフィルタ100、及び/又は第1SAWフィルタ300aと同様のSAWフィルタによって生成される。
【0038】
図8Cは、図1のSAWフィルタ100、及び/又は図3Bの第2SAWフィルタ300bと同様の第2SAWフィルタの入力電極及び出力電極に関してシミュレートされたCOMB周波数応答のグラフ表示である。図8Dは、例示的なSAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を示し、この周波数応答は、図8Cに示す周波数応答を生成する入力及び出力電極を含むSAWフィルタ100、及び/又は第2SAWフィルタ300bと同様のSAWフィルタによって生成される。
【0039】
図9は、図3CのSAWフィルタ素子300cと同様に、電気的に直列接続される場合の、図8Bのフィルタ応答を生成する第1SAWフィルタ、及び図8Dのフィルタ応答を生成する第2SAWフィルタの合成フィルタ応答を示している。図9では、大きい減衰量を示すピーク周波数を確認することができない。これは、第1〜第4電圧源が「オフ」状態に設定される結果である。この構成は、以下に説明するように、アレイ状に配置されるフィルタに特に有用であり、この場合、所定のフィルタペアがオフになっているとともに、単一ペアまたは複数ペアのいずれかがオンになっている。
【0040】
図4A〜4D及び5、図6A〜6D及び7の応答だけでなく、図8A〜8D及び9の応答が、図3Cの同じSAWフィルタ素子300cによって生成されることに注目されたい。すなわち、図5,7,及び9は、SAWフィルタ素子300cの第1SAWフィルタ(例えば、第1SAWフィルタ300a)及び第2SAWフィルタ(例えば、第2SAWフィルタ300b)のバイアス電圧を変更することにより、カスケード接続応答のピーク周波数が、周波数窓の一端から他端に移動することができることを示している。
【0041】
図10は、例示的なマルチチャネルSAW共振器1000の平面図を示している。マルチチャネルSAW共振器1000は、少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板の上に形成され、この基板は通常、被支持基板の上の電気絶縁性ニオブ酸リチウムまたはGaNにより形成され、被支持基板は通常、シリコンまたは炭化シリコンにより作製される。共振器1000は、互いに対して接続線1022及び1023を介して電気的に直列接続される入力共振器1002及び出力共振器1011を含む。入力共振器1002及び出力共振器1011は、単一の電圧制御により速度調整可能な圧電基板の上に形成することができる、または別の構成として、同じタイプの個別基板の上に形成することができる。入力共振器1002は更に、入力共振器1002の側部素子として形成される第1入力電極1004及び第1出力電極1005と、そして第1格子電極1009と、を含む。複数の入力補助共振器1003の各入力補助共振器を形成して、第1入力電極1004に接続される入力電極1006と、第1出力電極1005に接続される出力電極1007と、そして第1格子電極1009に接続される反射格子構造1008と、を設ける。
【0042】
複数の入力補助共振器1003がこのようにして、電気的且つ物理的に並列接続されて、複数のチャネル1015を形成する。これらのチャネル1015を第1入力電極1004の左側に表示して、図が分かり易くなるようにしていることに留意されたい。複数の入力補助共振器1003の各入力補助共振器に形成されるチャネル1015は実際には、各入力電極1006から各出力電極1007に、かつ反射格子構造1008を横切って延びる。入力共振器1002の複数のチャネル1015の波長の関係の内容は、上に説明したマルチチャネルSAWフィルタ100の内容と同様であり、当該内容についてここでは詳細に説明するということはしない。各入力補助共振器1003は、固有電圧制御調整可能中心周波数の周波数応答を生成する。中心周波数の物理的効果として、どのような所定の入力補助共振器1003においても、入力電極1006によって励起されるSAWは、反射格子構造1008によって中心周波数で積極的に反射され、そして表面弾性定在波を、入力電極1006と出力電極1007との間に形成されるキャビティ内に形成する。
【0043】
出力共振器1011は、入力共振器1002と同様に構成され、そして出力共振器1011の側部素子として形成される第2入力電極1012及び第2出力電極1013と、そして第2格子電極1020と、を含む。複数の出力補助共振器1014の各出力補助共振器を形成して、第2入力電極1012に接続される入力電極1016と、第2出力電極1013に接続される出力電極1017と、そして第2格子電極1020に接続される反射格子構造1021と、を設ける。
【0044】
複数の出力補助共振器1014は従って、電気的且つ物理的に並列に接続されて、複数のチャネル1024を形成する。これらのチャネル1024を第2出力電極1013の右側に表示して、図が分かり易くなるようにしていることに留意されたい。複数の出力補助共振器1014の各出力補助共振器に形成されるチャネル1024は実際には、各入力電極1016から各出力電極1017に、かつ反射格子構造1021を横切って延びる。出力共振器1011の複数のチャネル1024の波長の関係の内容は、上に説明したマルチチャネルSAWフィルタ100の内容と同様であり、当該内容についてここでは詳細に説明するということはしない。各出力補助共振器1014は、固有電圧制御調整可能中心周波数の周波数応答を生成する。中心周波数の物理的効果として、どのような所定の出力補助共振器1014においても、入力電極1016によって励起されるSAWは、反射格子構造1021によって中心周波数で積極的に反射され、そして表面弾性定在波を、入力電極1016と出力電極1017との間に形成されるキャビティ内に形成する。
【0045】
入力共振器1002では、電気的且つ物理的に並列接続される複数の入力補助共振器1003が動作して、入力及び出力電極1004,1005、及び第1反射格子電極1009に対するバイアスに従って調整されるCOMB周波数応答を生成する。同様にして、出力共振器1011では、電気的且つ物理的に並列接続される複数の出力補助共振器1014の各出力補助共振器が動作して、入力及び出力電極1016,1017、及び第2反射格子電極1020に対するバイアスに従って調整されるCOMB周波数応答を生成する。各共振器1002,1011の電圧制御調整可能COMB周波数応答は、複数の入力補助共振器1003の各々によって生成される集合的な周波数応答、及び複数の出力補助共振器1014の各々によって生成される複数の周波数応答の各周波数応答からそれぞれ得られる応答である。
【0046】
共振器1002,1011は、接続線1022及び1023を介して電気的に直列接続される。一般的に、キャパシタ、インダクタ、及び/又は抵抗体から成るインピーダンス整合回路が、入力共振器1002の入力及び出力電極1006,1007、及び出力共振器11011の入力及び出力電極1016,1017の位置に設けられるが、これらの回路は、図を分かり易くするために示していない。共振器1002,1011の電圧制御調整可能COMB周波数応答を合成して、SAW共振器1000の電圧制御調整可能SAW共振器応答を生成する。
【0047】
図10から分かるように、第1入力電極1004、第1出力電極1005、第2入力電極1012、及び第2出力電極1013は、入力共振器1002及び出力共振器1011にテーパを付ける、すなわちマルチチャネル1015及び1024はCH4からCH1の方向に短くなるように構成される。これは、異なるチャネルの波長λに差があることに起因する。マルチチャネル1015を構成する入力共振器1002の補助共振器1003の個数、及びマルチチャネル1024を構成する出力共振器1011の出力補助共振器1014の個数は異ならせることができることにも留意されたい。
【0048】
図11Aは、図10のSAW共振器1000とほぼ同じタイプの共振器である第1SAW共振器1100aの平面図を示している。SAW共振器1100aは、接続線1107a及び1108aを介して電気的に直列接続され、かつ少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板の上に形成される第1入力共振器1102a及び第1出力共振器1111aを含む。入力共振器1102a及び出力共振器1111aは別の構成として、個別基板の上に形成することができる。第1DC電圧源1103aは、第1DCバイアスを、入力電極1104a、出力電極1105a,及び第1入力共振器反射格子電極1106aを含む第1入力共振器1102aの構成要素に供給する。第2DC電圧源1123aは、第2DCバイアスを、入力電極1112a、出力電極1113a,及び第1出力共振器反射格子電極1116aを含む第1出力共振器1111aの構成要素に供給する。格子電極1106a,1116aは共に、別の構成として、個別にバイアスして調整時の柔軟性を高めることができることに注目されたい。
【0049】
第1入力共振器1102aは、電気的且つ物理的に並列に接続される複数の入力補助共振器を含み、そして第1出力共振器1111aは、電気的且つ物理的に並列に接続される複数の出力補助共振器を含む。例示的な第1SAW共振器1100aでは、4つの補助共振器が第1入力共振器1102aに設けられ、そして4つの補助共振器が第1出力共振器1111aに設けられる。第1入力共振器1102aの補助共振器の個数、及び第1出力共振器1111aの補助共振器の個数は異ならせることができることに留意されたい。これらの個数は図11Aに示すように等しくする必要はない。第1入力共振器1102a及び第1出力共振器1111aの両方の複数の補助共振器の特性は、図10のSAW共振器1000に関して上に説明した特性とほぼ一致し、ここでは再度説明することはしない。
【0050】
図11Bは、図10のSAW共振器1000に関して上に説明した共振器とほぼ同じタイプの共振器である第2SAW共振器1100bの平面図を示している。第2SAW共振器1100bは、接続線1107b及び1108bを介して互いに電気的に直列接続され、かつ少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板の上に形成される第2入力共振器1102b及び第2出力共振器1111bを含む。入力共振器1102b及び出力共振器1111bは別の構成として、個別基板の上に形成することができる。第3DC電圧源1103bは、第3DCバイアスを、入力電極1104b、出力電極1105b,及び第2入力共振器反射格子電極1106bを含む第2入力共振器1102bの構成要素に供給する。第4DC電圧源1123bは、第4DCバイアスを、入力電極1112b、出力電極1113b,及び第2出力共振器反射格子電極1116bを含む第2出力共振器1111bの構成要素に供給する。格子電極1106b及び1116bは共に、個別にバイアスして調整時の柔軟性を高めることができることに注目されたい。
【0051】
第2入力共振器1102bは、電気的且つ物理的に並列接続される複数の入力補助共振器を含み、そして第2出力共振器1111bは、電気的且つ物理的に並列接続される複数の出力補助共振器を含む。例示的な第2SAW共振器1100bでは、4つの補助共振器が第2入力共振器1102bに設けられ、そして4つの補助共振器が第2出力共振器1111bに設けられる。第2入力共振器1102bの補助共振器の個数、及び第2出力共振器1111bの補助共振器の個数は異ならせることができることに留意されたい。これらの個数は図11Bに示すように等しくする必要はない。第2入力共振器1102b及び第2出力共振器1111bの両方の複数の補助共振器の特性は、図10のSAW共振器1000に関して上に説明した特性とほぼ一致し、ここでは再度説明することはしない。
【0052】
図11Cは、接続線1125,1126を介して電気的に直列接続される第1及び第2SAW共振器1100a,1100bを備える例示的なSAW共振器装置1100cを示す回路図である。一般的に、キャパシタ、インダクタ、及び/又は抵抗体の組み合わせから成るインピーダンス整合回路が、SAW共振器1100a,1100bの各々の入力電極及び出力電極の位置に必要となることに留意されたいが、これらの回路は、図を分かり易くするためにここでは示していない。第1DC電圧源1103aは、第1入力共振器1102aの構成要素をバイアスし、そして第2DC電圧源1123aは、第1出力共振器1111aの構成要素をバイアスする。第3DC電圧源1103bは、第2入力共振器1102bの構成要素をバイアスし、そして第4DC電圧源1123bは、第2出力共振器1111bの構成要素をバイアスする。上に説明した第1SAW共振器1100a及び第2SAW共振器1100bはそれぞれ、図10の例示的なSAW共振器1000に関連して上に説明した電圧制御調整可能周波数応答を生成する。しかしながら、SAW共振器1100cにおけるように電気的に直列接続される場合、第1及び第2SAW共振器1100a,1100bのうちのいずれかのSAW共振器だけで個々に生成される場合よりも大きい減衰量のピーク周波数によって特徴付けられる全SAW電圧制御調整可能周波数応答が生成される。更に、全SAW電圧制御調整可能周波数応答のピーク周波数の位置は、第1〜第4電圧源1103a,1104a,1103b,及び1123bの各電圧源からそれぞれ供給されるバイアスの絶対値によって変わる形で調整することができる。
【0053】
図12Aは、図10のSAW共振器1000、及び/又は図11Aの第1SAW共振器1100aと同様の第1SAW共振器の入力共振器及び出力共振器に関してシミュレートされた周波数応答のグラフ表示である(周波数応答が、4個の補助共振器ではなく、11個の補助共振器を表わしている点を除く)。図12Bは、例示的なSAW共振器電圧制御調整可能周波数応答を示し、この周波数応答は、図12Aに示す周波数応答を生成する入力及び出力共振器を含むSAW共振器1000及び/又はSAW共振器1100aと同様のSAW共振器によって生成される。
【0054】
図12Cは、図10のSAW共振器1000、及び/又は図11BのSAW共振器1100bと同様の第2SAW共振器の入力共振器及び出力共振器に関してシミュレートされた周波数応答のグラフ表示である(周波数応答が、4個の補助共振器ではなく、11個の補助共振器を表わしている点を除く)。図12Dは、例示的なSAW共振器電圧制御調整可能周波数応答を示し、この周波数応答は、図12Cに示す周波数応答を生成する入力及び出力電極を含むSAW共振器1000及び/又はSAW共振器1100bと同様のSAW共振器によって生成される。
【0055】
図13は、図12Bのグラフで表わされる第1SAW共振器、及び図12Dのグラフで表わされる第2SAW共振器が図11CのSAW共振器装置1100cと同様に、電気的に直列接続された状態の第1SAW共振器及び第2SAW共振器の、ピーク周波数を含む合成フィルタ応答を示している。約1000MHzのピーク周波数の減衰量はこの例では、直列に合成されない場合の図12B,12Dのフィルタ応答を生成する個々のSAW共振器の減衰量よりもずっと大きい。
【0056】
図14はアレイ1400を示している。アレイ1400は、2つのサブアレイ1401,1402を含む。サブアレイ1401,1402の各サブアレイは更に、複数のSAWフィルタ素子1410,1420をそれぞれ含む。SAWフィルタ素子1410,1420は全体的に、図1のSAWフィルタと同様のSAWフィルタであるか、または図10のSAW共振器と同様のSAW共振器である。サブアレイ1401では、これらのSAWフィルタ素子1410が電気的且つ物理的に並列接続され、そしてサブアレイ1402では、これらのSAWフィルタ素子1420が同様にして、電気的且つ物理的に並列接続される。サブアレイ1401,1402は更に、接続線1403,1404を介して電気的に直列接続される。一般的に、キャパシタ、インダクタ、及び/又は抵抗体から成るインピーダンス整合回路が、これらのSAWフィルタ素子の各SAWフィルタ素子の入力電極及び出力電極の位置に必要となるが、これらの回路は、図を分かり易くするためにここでは示していない。
【0057】
DCバイアスは各サブアレイ1401,1402に、DCバイアス線1405,1406をそれぞれ介して印加される。DCバイアス線1405は実際には、Nが、対応するSAWフィルタ素子の最大数を表わす場合に2N個のバイアス線から成るアレイである。DCバイアス線1405のアレイを構成するこれらのバイアス線は、各SAWフィルタ素子11,12,...,1Nの入力電極電極及び出力電極電極をバイアスする。同様に、DCバイアス線1406は、2N個のバイアス線から成るアレイであり、これらのバイアス線は、各SAWフィルタ素子21,22,...,2Nの入力電極電極及び出力電極電極をバイアスする。
【0058】
サブアレイ1401の各SAWフィルタ素子1410は、サブアレイ1402のSAWフィルタ素子1420に対応する。従って、図14から分かるように、サブアレイ1401のSAWフィルタ素子11は、サブアレイ1402のSAWフィルタ素子21に対応する。サブアレイ1401のSAWフィルタ素子12は、サブアレイ1402のSAWフィルタ素子22に対応する。サブアレイ1401のSAWフィルタ素子13は、サブアレイ1402のSAWフィルタ素子23に対応する。この関係が引き続き適用されて、Nが、対応するSAWフィルタ素子の最大数を表わす場合に、サブアレイ1401のSAWフィルタ素子1Nは、サブアレイ1402のSAWフィルタ素子2Nに対応するようになっている。
【0059】
図15は、図14の対応する複数ペアのSAWフィルタ素子1410,1420の動作範囲、及び中心周波数またはピーク周波数を示し、これらのSAWフィルタ素子は、特定のDCバイアスによりオン状態になる。図14のペアのSAWフィルタ素子11及びSAWフィルタ素子21のカスケード接続応答は、図15に示す動作範囲1501、及びピーク周波数1505によって表わされる。図14のペアのSAWフィルタ素子12及びSAWフィルタ素子22のカスケード接続応答は、図15に示す動作範囲1502、及びピーク周波数1506によって表わされる。図14のペアのSAWフィルタ素子1N及びSAWフィルタ素子2Nのカスケード接続応答は、図15に示す動作範囲1503、及びピーク周波数1507によって表わされる。
【0060】
サブアレイ1401,1402のカスケード接続応答は、サブアレイにおける各ペアのSAWフィルタ素子1410及び1420のカスケード接続応答の全動作範囲の合計である全動作範囲1504で表わされる。アレイ全体のピーク周波数1505,1506,...,1507の位置は、異なるバイアスを、図14のDCバイアス線1405及び1406を介して印加することにより調整することができる。アレイの調整可能範囲は、単純に電気的に直列接続されるSAWフィルタ素子のどの単一ペアよりもずっと広い。しかしながら、対応するSAWフィルタ素子1410,1420の一つのペアのみが、または複数ペアが所定の時点で動作することが可能である。
【0061】
図16は、図15にグラフ表示される設計構造とは異なる設計構造を有するSAWフィルタ素子1410,1420を使用する場合の別のアレイ1400の周波数応答を示している。対応ペアのSAWフィルタ素子1410及び1420の応答の動作範囲が図16に、動作範囲1601,1602,...,1603で表わされる。全動作範囲が範囲1604で表わされる。明らかなように、動作範囲1601,1602,...,1603は別の動作範囲にオーバーラップし、そしてピーク周波数1605,1606,...,1607も同様にオーバーラップする。図面の中で分かり易くするために、図14は、SAWフィルタ素子1410の対応ペアが3つだけアレイ1400に含まれていることを示すために提示されていることに留意されたい。しかしながら、オーバーラップする動作範囲及びピーク周波数の数を多くして、ずっと多くのペアのSAWフィルタ素子1410,1420を含むアレイに拡張することができる。
【0062】
図14のDCバイアス線1405及び1406を介して印加されるDCバイアスを使用して、更に広いピーク周波数範囲を、動作範囲及び対応するピーク周波数をオーバーラップさせることにより実現することができる。要約すると、更に別のアレイ1400を、図15及び16に示す結果と同様の結果を実現することができる更に異なる設計構造を持つSAWフィルタ素子1410,1420を使用して形成することが可能である。
【0063】
例示的な実施形態を本明細書において詳細に示し、そして説明してきたが、関連分野の当業者には、以下に示す次の請求項に規定される本発明の範囲に含まれると考えられる種々の変形、追加、置き換えなどを行なうことができることは明らかであろう。
【符号の説明】
【0064】
100:マルチチャネル表面弾性波(SAW)フィルタ、
101:圧電制御により速度調整可能な圧電基板、
102:入力電極、
103:入力補助電極、
104:第1入力電極、
105:第1出力電極、
106:第2入力電極、
107:第2出力電極、
108:出力補助電極、
111:出力電極、
115:平行チャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチチャネル表面弾性波(SAW)フィルタであって、
電圧制御により速度調整可能な圧電基板と、
前記基板の上に形成され、電気的且つ物理的に並列に接続されて入力補助電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を生成する複数の入力補助電極を含む入力電極であって、各入力補助電極が固有の電圧制御により調整可能な中心周波数を有する、前記入力電極と、
前記基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて出力電極電圧制により御調される、整可能COMB周波数応答を生成する複数の出力補助電極を含む出力電極であって、各出力補助電極が固有の電圧制御により調整可能な中心周波数を有する、前記出力電極と、
前記複数の入力補助電極及び前記複数の出力補助電極の対応するペアにより形成される複数の平行チャネルと、を備え、
前記入力電極電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答及び前記出力電極の電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を合成して関連するSAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を生成する、SAWフィルタ。
【請求項2】
前記SAWフィルタは、電気的且つ物理的に並列接続されて入力サブアレイを形成する複数の類似SAWフィルタのうちの一つの類似SAWフィルタであり、前記サブアレイは、入力サブアレイに対応する構成と、前記入力サブアレイの電圧制御により調整可能な周波数応答と合成される電圧制御により調整可能な周波数応答と、を有する出力サブアレイに電気的に直列にカスケード接続される、請求項1に記載のSAWフィルタ。
【請求項3】
前記入力電極は、第1入力電極及び第1出力電極を含み、前記第1入力電極及び前記第1出力電極は、前記複数の入力補助電極の各入力補助電極を電気的且つ物理的に並列接続するように配置され、
前記出力電極は、前記複数の出力補助電極の各出力補助電極を電気的且つ物理的に並列接続するように配置される第2入力電極及び第2出力電極を含む、
請求項1に記載のSAWフィルタ。
【請求項4】
前記第1入力電極、前記第1出力電極、前記第2入力電極、及び前記第2出力電極は、複数の平行チャネルに戻るSAW反射を最小にするテーパ付き構造を実現するように配置される、請求項3に記載のSAWフィルタ。
【請求項5】
更に、
第1DCバイアスを前記第1入力電極及び前記第1出力電極に印加する第1直流(DC)電圧源と、
第2DCバイアスを前記第2入力電極及び第2出力電極に印加する第2DC電圧源と、
を備える、請求項3に記載のSAWフィルタ。
【請求項6】
マルチチャネル表面弾性波(SAW)共振器であって、
少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板と、
前記少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、電気的且つ物理的に並列に接続されて入力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を生成する複数の入力補助共振器を含む入力共振器であって、前記入力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、反射格子構造とを含み、かつ固有の電圧制御により調整可能な中心周波数の周波数応答を有する、前記入力共振器と、
前記少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、電気的且つ物理的に並列接続されて出力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を生成する複数の出力補助共振器を含む出力共振器であって、前記出力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、反射格子構造とを含み、かつ固有の電圧制御により調整可能な中心周波数の周波数応答を有する、前記出力共振器と、を備え、
前記入力共振器及び前記出力共振器は電気的に直列接続され、
前記入力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答及び前記出力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を合成して、関連するSAW共振器電圧制御調整可能周波数応答を生成する、SAW共振器。
【請求項7】
前記表面弾性波共振器は、電気的且つ物理的に並列接続されて入力サブアレイを形成する複数の類似共振器のうちの一つの類似共振器であり、前記入力サブアレイは、前記入力サブアレイに対応する構成と、前記入力サブアレイの電圧制御により調整可能な周波数応答と合成される電圧制御により調整可能な周波数応答とを有する出力サブアレイに電気的かつ直列にカスケード接続される、請求項6に記載のSAW共振器。
【請求項8】
前記入力共振器は更に、第1反射格子電極と、第1入力電極と、そして第1出力電極とを含み、各電極は、前記複数の入力補助共振器を電気的且つ物理的に並列接続するように配置され、
前記出力共振器は更に、第2反射格子電極と、第2入力電極と、第2出力電極とを含み、各電極は、前記複数の出力補助共振器を電気的且つ物理的に並列接続するように配置される、
請求項6に記載のSAW共振器。
【請求項9】
更に:
第1DCバイアスを前記第1入力電極と、前記第1出力電極と、前記第1反射格子電極とに印加する、第1直流(DC)電圧源と、
第2DCバイアスを前記第2入力電極と、前記第2出力電極と、前記第2反射格子電極とに印加する、第2DC電圧源と、
を備える、請求項8に記載のSAW共振器。
【請求項10】
表面弾性波(SAW)フィルタ素子であって、
電圧制御により速度調整可能な圧電基板と、
第1SAWフィルタであって、
前記基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列に接続されて第1入力電極電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を生成する複数の第1入力補助電極を含む第1入力電極であって、各第1入力補助電極が固有の電圧制御により調整可能な中心周波数を有する、前記第1入力電極と、
前記基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列に接続されて第1出力電極電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を生成する複数の第1出力補助電極を含む第1出力電極であって、各第1出力補助電極が固有の電圧制御により調整可能な中心周波数を有する、前記第1出力電極と;
前記複数の第1入力補助電極と前記複数の第1出力補助電極とのペアにより形成される複数の第1平行チャネルと、
を含み、
前記第1入力電極電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答及び第1出力電極電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を合成して関連する第1SAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を生成する、
前記SAWフィルタと、
前記第1SAWフィルタに電気的に直列接続される第2SAWフィルタであって、
前記基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列に接続されて第2入力電極電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を生成する複数の第2入力補助電極を含む第2入力電極であって、各第2入力補助電極が固有の電圧制御により調整可能な中心周波数を有する、前記第2入力電極と、
前記基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列に接続されて第2出力電極電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を生成する複数の第2出力補助電極を含む第2出力電極であって、各第2出力補助電極が固有の電圧制御により調整可能な中心周波数を有する、前記第2出力電極と、
前記複数の第2入力補助電極及び前記複数の第2出力補助電極とのペアにより形成される複数の第2平行チャネルと、
を含む、前記第2SAWフィルタと
を備え、
前記第2入力電極電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答と第2出力電極電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答とを合成して関連する第2SAWフィルタ電圧制御調整可能周波数応答を生成し、
前記第1SAWフィルタ電圧制御により調整可能な周波数応答及び第2SAWフィルタ電圧制御により調整可能な周波数応答をカスケード接続して、全SAWフィルタ電圧制御により調整可能な周波数応答を生成する、
SAWフィルタ素子。
【請求項11】
前記第1入力電極は、入力電極及び出力電極を含み、各電極は、前記複数の第1入力補助電極の各第1入力補助電極を電気的且つ物理的に並列に接続するように配置され、
前記第1出力電極は、入力電極及び出力電極を含み、各電極は、前記複数の第1出力補助電極の各第1出力補助電極を電気的且つ物理的に並列に接続するように配置され、
前記第2入力電極は、入力電極及び出力電極を含み、各電極は、前記複数の第2入力補助電極の各第2入力補助電極を電気的且つ物理的に並列に接続するように配置され、
前記第2出力電極は、入力電極及び出力電極を含み、各電極は、前記複数の第2出力補助電極の各第2出力補助電極を電気的且つ物理的に並列に接続するように配置される、
請求項10に記載のSAWフィルタ素子。
【請求項12】
前記第1入力電極の前記入力電極及び出力電極、及び前記第1出力電極の前記入力電極及び出力電極は、前記複数の第1平行チャネルにおけるSAW反射を最小にするテーパ付き構造を実現するように配置され、
前記第2入力電極の前記入力電極及び前記出力電極、及び前記第2出力電極の前記入力電極及び前記出力電極は、前記複数の第2平行チャネルに戻るSAW反射を最小にするテーパ付き構造を実現するように配置される、
請求項11に記載のSAWフィルタ素子。
【請求項13】
更に、
第1DCバイアスを前記第1入力電極の前記入力電極と前記第1入力電極の前記出力電極とに印加する第1直流(DC)電圧源と、
第2DCバイアスを前記第1出力電極の入力電極と前記第1出力電極の出力電極とに印加する第2DC電圧源と、
第3DCバイアスを前記第2入力電極の前記入力電極と前記第2入力電極の出力電極とに印加する第3DC電圧源と、
第4DCバイアスを前記第2出力電極の前記入力電極と前記第2出力電極の出力電極とに印加する第4DC電圧源と、
を備える、請求項11に記載のSAWフィルタ素子。
【請求項14】
全SAW電圧制御により調整可能な周波数応答によって、前記第1SAWフィルタ電圧制御により調整可能な周波数応答及び前記第2SAWフィルタ電圧制御により調整可能な周波数応答のうちのいずれかの周波数応答によって個々に得られる減衰量よりも大きい減衰量が得られる、請求項10に記載のSAWフィルタ素子。
【請求項15】
表面弾性波(SAW)フィルタ素子であって、
少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板と、
第1SAW共振器であって、
前記少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第1入力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を生成する複数の第1入力補助共振器を含む第1入力共振器であって、前記第1入力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、反射格子構造とを含み、かつ固有の電圧制御により調整可能な中心周波数の周波数応答を有する、前記第1入力共振器と、
前記少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第1出力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を生成する複数の第1出力補助共振器を含む第1出力共振器であって、前記第1出力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、反射格子構造とを含み、かつ固有の電圧制御により調整可能な中心周波数の周波数応答を有する、前記第1出力共振器と、
を含み、
前記第1入力共振器と前記第1出力共振器とは電気的に直列に接続され、
前記第1入力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答と前記第1出力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答とを合成して、SAW共振器電圧制御により調整可能な第1波数応答を生成する
前記第1SAW共振器と、
第1SAW共振器に電気的に直列接続される第2SAW共振器であって、
前記少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第2入力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を生成する複数の第2入力補助共振器を含む第2入力共振器であって、前記第2入力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、反射格子構造とを含み、かつ固有の電圧制御により調整可能な中心周波数の周波数応答を有する、前記第2入力共振器と、
前記少なくとも一つの電圧制御により速度調整可能な圧電基板のうちの一つの基板の上に形成され、かつ電気的且つ物理的に並列接続されて第2出力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を生成する複数の第2出力補助共振器を含む、第2出力共振器であって、前記第2出力補助共振器の各々が、入力電極と、出力電極と、反射格子構造とを含み、かつ固有の電圧制御により調整可能な中心周波数の周波数応答を有する、前記第2出力共振器とを含み、
前記第2入力共振器と前記第2出力共振器とは電気的に直列接続され、
前記第2入力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答及び前記第2出力共振器電圧制御により調整可能なCOMB周波数応答を合成して、第2SAW共振器電圧制御により調整可能な周波数応答を生成し、
前記第1SAW共振器電圧制御により調整可能な周波数応答と前記第2SAW共振器電圧制御により調整可能な周波数応答とをカスケード接続して、全SAW共振器電圧制御により調整可能な周波数応答を生成する、
前記第2SAW共振器と
を備える、SAWフィルタ素子。
【請求項16】
前記第1入力共振器は、入力電極と、出力電極と、第1入力共振器反射格子電極とを含み、各電極は、前記複数の第1入力補助共振器の各第1入力補助共振器を電気的に接続し、且つ物理的に並列に接続するように配置され、
前記第1出力共振器は、入力電極と、出力電極と、第1出力共振器反射格子電極とを含み、各電極は、並列接続される複数の第1出力補助共振器の各第1出力補助共振器を電気的に接続し、且つ物理的に並列に接続するように配置され、
前記第2入力共振器は、入力電極と、出力電極と、第2入力共振器反射格子電極とを含み、各電極は、電気的且つ物理的に並列接続される前記複数の第2入力補助共振器の各第2入力補助共振器を電気的に接続するように配置され、
前記第2出力共振器は、入力電極と、出力電極と、第2出力共振器反射格子電極とを含み、各電極は、電気的且つ物理的に並列接続される複数の第2出力補助共振器の各第2出力補助共振器を電気的に接続するように配置される、
請求項15に記載のSAWフィルタ素子。
【請求項17】
更に:
第1DCバイアスを前記第1入力共振器の前記入力電極と前記第1入力共振器の前記出力電極と前記第1入力共振器反射格子電極とに印加する、第1直流(DC)電圧源と、
第2DCバイアスを前記第1出力共振器の前記入力電極と前記第1出力共振器の前記出力電極と前記第1出力共振器反射格子電極とに印加する、第2DC電圧源と、
第3DCバイアスを前記第2入力共振器の前記入力電極と前記第2入力共振器の前記出力電極と前記第2入力共振器反射格子電極とに印加する、第3DC電圧源と、
第4DCバイアスを前記第2出力共振器の前記入力電極と前記第2出力共振器の前記出力電極と前記第2出力共振器反射格子電極とに印加する、第4DC電圧源と、
を備える、請求項16に記載のSAWフィルタ素子。
【請求項18】
前記全SAW共振器電圧制御により調整可能な周波数応答によって、前記第1SAW共振器電圧制御により調整可能な周波数応答及び前記第2SAW共振器電圧制御により調整可能な周波数応答のうちのいずれかの周波数応答によって個々に得られる減衰量よりも大きい減衰量が得られる、請求項15に記載のSAWフィルタ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−57163(P2010−57163A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169015(P2009−169015)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(503178185)ノースロップ グラマン スペース アンド ミッション システムズ コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】Northrop Grumman Space & Mission Systems Corp.
【Fターム(参考)】