電子エミッタ用基材、電子エミッタ用基材の製造方法および電子エミッタの製造方法
【課題】電子エミッタ作製プロセスが含むバッファ層を生成するプロセスを省略可能とすることである。
【解決手段】本電子エミッタ用基材10は、素材例である導電性ワイヤ11の表面に直流プラズマによる炭素膜成膜の条件に適合したバッファ層としての黒鉛含有膜12が付着している。本電子エミッタ用基材10の製造方法は、導電性基材16の表面に黒鉛含有ペースト20を付着させる工程を含む。本電子エミッタ製造方法は、真空成膜室32内で上記電子エミッタ用基材10の基材温度を700℃以上に昇温し炭素含有ガスを直流プラズマで分解し該基材表面に電界電子放出性能を有する炭素膜42を成膜して電子エミッタ44を製造する。
【解決手段】本電子エミッタ用基材10は、素材例である導電性ワイヤ11の表面に直流プラズマによる炭素膜成膜の条件に適合したバッファ層としての黒鉛含有膜12が付着している。本電子エミッタ用基材10の製造方法は、導電性基材16の表面に黒鉛含有ペースト20を付着させる工程を含む。本電子エミッタ製造方法は、真空成膜室32内で上記電子エミッタ用基材10の基材温度を700℃以上に昇温し炭素含有ガスを直流プラズマで分解し該基材表面に電界電子放出性能を有する炭素膜42を成膜して電子エミッタ44を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子エミッタ用基材、電子エミッタ用基材の製造方法および電子エミッタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真空成膜室に導入した炭素含有ガスを直流プラズマで分解して基材表面に電界放射により電子を放出する電界電子放出性能を有するサイズnmオーダーの炭素膜を成膜して電子エミッタを作製する作製プロセスが知られる。この電子エミッタ作製プロセスでは、上記炭素膜成膜前には、真空成膜室内部に配置した基材表面にバッファ層を作製して成膜条件を整えておくことが必要である。しかしながら、このバッファ層の作製プロセスには数十分という多大な時間を要するために、従来では電子エミッタの量産化は困難とされていた。
【0003】
なお、特表2002−509339公報に電子エミッタの製造方法として、ワイヤ上に黒鉛粒子およびガラスを含む複合層を形成しこの黒鉛粒子をウィスカに形成するものが提案されている。
【特許文献1】特表2002−509339公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明により解決すべき課題は、上記電子エミッタ作製プロセスが含む、成膜の前に予め基材表面にバッファ層を生成するプロセスを省略可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による電子エミッタ用基材は、基体の導電性表面に直流プラズマによる炭素膜成膜の条件に適合したバッファ層としての黒鉛含有膜が付着して構成されていることを特徴とする。
【0006】
上記基体は、その形状やサイズを特に限定しない。
【0007】
上記基体は、ワイヤ状に延びる導電性ワイヤや、平面視矩形形状をなすフラットパネル形の基体でもよい。
【0008】
上記基体は全体が導電性を有するものでも、内部絶縁性で表面が導電性を有するものでもよい。
【0009】
上記基体は内部中実でも内部中空でもよい。
【0010】
本発明では、上記電子エミッタ用基材を用いると真空成膜室内で基材表面にバッファ層を作製する必要がないから、電子エミッタ作製プロセスに要するプロセス時間を大幅に短縮化することができる。
【0011】
上記黒鉛含有膜は直流プラズマの炭素成分に接触作用して炭素膜生成を促進する触媒を含むことが好ましい。
【0012】
上記黒鉛含有膜は炭素膜を固着することができる粘度に調製されていることが好ましい。
【0013】
本発明による電子エミッタ用基材の製造方法は、基体の導電性表面に黒鉛含有ペーストを付着させる工程と、その付着した黒鉛含有ペーストを焼成する工程を含むことを特徴とする。上記付着には種々のコーティングや印刷を含むものであり、例へば、スピン、吹付、浸漬、ウェブ、ダイもしくは蒸発コーティング、無電解付着、インクジェット印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、スタンピングもしくはソフトリソグラフィ、等が含まれる。また、上記ペーストはペースト状のものを含み、スラリ−状も含むことができる。
【0014】
この基体はワイヤ状に延びる導電性ワイヤや、平面視矩形形状をなすフラットパネル形の基体でもよい。この基体は全体が導電性を有するものでも、内部絶縁性で表面が導電性を有するものでもよい。この基体は内部中実でも内部中空でもよい。内部絶縁性部材で構成されている場合、その表面の導電性材は、例えば吹付、浸漬、ウェブもしくはスピンコート、あるいは液体コーティングにより付着、あるいは真空蒸着もしくは蒸着してもよい。上記黒鉛含有ペーストは粉末状活物質である黒鉛と金属表面と付着性のある高分子結合剤等との混合物から調製したものでもよい。
【0015】
本発明による電子エミッタ用基材の製造方法では、例えば黒鉛含有ペーストを含む溶液中に導電性ワイヤ等の多数の基体を一度に浸漬することによりそれら表面に黒鉛含有ペーストを一度に付着させ、次いで例えば焼成炉で焼成することにより表面にペースト中の他の含有成分が気化して黒鉛含有純度が高い黒鉛含有膜を有する電子エミッタ用基材を大量に生産することができる。
【0016】
本発明による電子エミッタ製造方法は、真空成膜室内で上記電子エミッタ用基材の基材温度を700℃以上に昇温し炭素含有ガスを直流プラズマで分解し該基材表面に電界電子放出性能を有する炭素膜を成膜することを特徴とする。
【0017】
この電子エミッタの製造方法では、電子エミッタ用基材表面には既にバッファ層が設けられているので真空成膜室内での直流プラズマによるバッファ層作製プロセスが省略することができ、製造時間を大幅に短縮化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電子エミッタ作製プロセスが含む、成膜の前に予め基材表面にバッファ層を生成するプロセスを省略できるので上記電子エミッタ作製時間を大幅短縮することができ、電子エミッタの量産化が容易に実現可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電子エミッタ用基材、電子エミッタ用基材の製造方法および電子エミッタの製造方法を説明する。
【0020】
図1(a)(b)を参照して電子エミッタ用基材を説明する。図1(a)は電子エミッタ用基材の側面断面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。この電子エミッタ用基材10は、基体をなす導電性ワイヤ11の表面に直流プラズマによる炭素膜成膜の条件に適合したバッファ層としての黒鉛含有膜12が付着して構成されている。上記基体は一例として導電性ワイヤ11であったが、フラットパネル形状等の平面視矩形形状の基材でもよい。
【0021】
この黒鉛含有膜12は直流プラズマの炭素成分に接触作用して炭素膜生成を促進する触媒を含むことができる。この触媒は例えば鉄、ニッケル、コバルト、あるいはそれらの合金がある。
【0022】
黒鉛含有膜12は高純度、高密度な黒鉛からなる膜であることが好ましい。黒鉛は人工(人造)黒鉛でもよいが、例えば天然黒鉛のような高結晶性黒鉛が好ましい。天然黒鉛としては、特に制限はなく、F48C(日本黒鉛(株)製の商品名)、H−50(中越黒鉛(株)の商品名)等の市販品を用いることができる。黒鉛含有膜12中で黒鉛の形状には、球状等があるが、鱗状や鱗片状等、比較的鋭い端部を有する形状等に超微粒子化されていることが好ましい。この超微粒子化により直流プラズマ成膜装置での炭素膜成膜が促進することができて好ましい。
【0023】
図2ないし図4を参照して電子エミッタ用基材10の製造方法を説明する。 基体は表面が導電性を有すればその形状は何でもよいが、実施の形態では、説明の一例に導電性ワイヤ11を用いる。導電性ワイヤ11は図2(a)でその側面断面、図2(b)でそのB−B線断面で示すように全体が導電性を有する金属でよいが、これに限定されず、図3(a)でその側面断面、図3(b)でそのC−C線断面で示すように内部が円筒中実な絶縁体11aの表面に導電膜11bを備えた構成の基体、あるいは図4(a)でその側面断面、図4(b)でそのD−D線断面で示すように内部中空絶縁体11cでありその表面に導電膜11dを備えた構成の基体でもよい。実施の形態では基体全体が金属ワイヤ特に鉄系の導電性ワイヤ11で構成する。
【0024】
この導電性ワイヤ11を図5で示すように黒鉛含有ペースト溶液18内に多数浸漬する。黒鉛含有ペースト20は、「蛍光表示管用黒鉛ペースト」として市販されている日立粉末冶金株式会社製ヒタゾルGA−263を用いた。この黒鉛含有ペースト中には黒鉛以外に珪酸カリウム、グリセリン、アルミナが混合されている。この黒鉛含有ペースト20は水に対してすべての割合で溶解するので水を入れてその粘度を任意に調製することが可能となっている。この黒鉛含有ペースト20は、その粘度を揮発性溶剤で調整可能としてもよい。そのため導電性ワイヤ11表面に所望の膜厚で黒鉛含有ペースト20を付着させることができる。この導電性ワイヤ11を黒鉛含有ペースト溶液18から引き上げると、導電性ワイヤ11の表面に黒鉛含有ペースト20が付着する。その黒鉛含有ペースト溶液18に対する浸漬時間、その溶液からの引き上げ時間、水が含む割合調節等により黒鉛含有ペースト20を導電性ワイヤ11表面に所望の膜厚で付着させることができる。
【0025】
上記黒鉛含有ペースト溶液18中に図6で示すように触媒22を微粒子状で混合してもよい。これは直流プラズマ成膜装置で導電性ワイヤ11表面にその触媒22を炭素膜の成長核とすることができるからである。ただし、後述する直流プラズマ成膜装置を用いることによりこの触媒は必須となるものではない。
【0026】
上記導電性ワイヤ11の表面に黒鉛含有ペースト20を付着させた後、図7で示すように焼成炉24に導電性ワイヤ11を投入することにより黒鉛含有ペースト20中に含まれている黒鉛以外の混合物を蒸発気化させて乾燥させる。この乾燥後、導電性ワイヤ11を焼成炉24から取り出すと、図8(図1と同様であるが再掲)で示すように、導電性ワイヤ11の表面に高純度な黒鉛からなる黒鉛含有膜12が生成された電子エミッタ用基材10を製造することができる。この焼成炉24の焼成温度、焼成時間等は適宜実験等により設定することができる。焼成炉24は、バッチ式でも可能であるが、連続式が電子エミッタ用基材10の量産性向上には好ましい。連続式には、ローラーハースキルンやキルンカー形式のトンネルキルンに代表される連続式焼成炉がある。これは、導電性ワイヤ11をその焼成炉の入口から出口に向かって炉内を搬送することにより焼成することができる。
【0027】
以上の製造方法では黒鉛含有ペースト溶液18中に大量の導電性ワイヤ11を一度に浸漬し、また、焼成炉24に大量の導電性ワイヤ11を一度に投入して焼成することができるので、電子エミッタ用基材10を安価に迅速に大量生産して次に述べる電子エミッタの製造に準備しておくことができる。
【0028】
なお、ワイヤ状の電子エミッタ用基材10を量産する形式は単なる黒鉛含有ペースト溶液18に浸漬する形態に限定されるものではなく、同様に、焼成炉24で焼成したりして乾燥する形態に限定されるものではない。
【0029】
また、上記では黒鉛含有ペーストを用いたが、導電性ワイヤ11表面に表面被覆用ペーストを塗布し、そのペースト上に、黒鉛を含有する黒鉛含有シートを乗せた状態で、硬化炉で熱処理を行い、冷却することにより導電性ワイヤ11表面に黒鉛含有膜12を付着(被覆を含む概念)した構成としてもよい。
【0030】
図9を参照して上記電子エミッタ用基材10を用いた電子エミッタの製造方法を説明する。図9は同電子エミッタの製造方法の実施に用いる直流プラズマ成膜装置30の概略構成を示す図である。真空成膜室32内に筒状電極34が配置されている。筒状電極34は、周壁を構成する部材が網目(メッシュ)状をなしている。筒状電極34内空間には成膜対象である電子エミッタ用基材10が配置されている。筒状電極34は断面ほぼ円形で一方向に延びてその内部空間は一方向に延びる円筒形のプラズマ発生/閉じ込め空間をなしている。電子エミッタ用基材10はこの筒状電極34内空間のほぼ中央に配置されて細長く延びるワイヤ状に配置されている。筒状電極34の内周面と電子エミッタ用基材10の外周面とはその延設方向に所要の空間を隔てて相対向している。筒状電極34一端側は電圧可変型の直流電源36の負極に接続されて直流負電圧が印加されている。
【0031】
以上の構成を備えた直流プラズマ成膜装置30において、真空排気系38で真空成膜室32内を減圧しかつガス導入系39から炭化水素ガスと水素ガスとの混合ガスが処理用ガスとして導入され、直流電源36の負電圧が筒状電極34に印加されると、筒状電極34内空間に直流プラズマ40が発生する。この場合、電子エミッタ用基材10温度は例えば700℃以上である。この電子エミッタ用基材10の温度は電熱により達成するようにしてもよい。
【0032】
上記により電子エミッタ用基材10表面には図10で示すように炭素膜42が成膜される。この場合、筒状電極34は、触媒金属を含有する電極が好ましく、例えば、Fe(鉄),Ni(ニッケル),Co(コバルト)あるいはこれらの合金を例示することができる。筒状電極34が上記のような触媒金属で構成されている場合、電子エミッタ用基材10表面の炭素膜42中には触媒金属を含有する必要は無いが、筒状電極34が触媒金属で構成されていない場合では、電子エミッタ用基材10表面の炭素膜42中には触媒金属を含有している必要がある。この場合、図5で示す黒鉛含有ペースト溶液18内には触媒金属の微粒子を混入させるとよい。
【0033】
上記直流プラズマ40が発生すると筒状電極34が含有する触媒金属がスパッタリングされて、そのスパッタ金属粒子41が、電子エミッタ用基材10表面に付着する。この触媒金属粒子41が付着すると、この触媒金属粒子41の触媒作用により電子エミッタ用基材28表面に電界電子放出性能を持つ炭素膜42が成膜されて電子エミッタ44が製造される。
【0034】
また、筒状電極34が触媒金属で構成されていない場合では、電子エミッタ用基材10表面の黒鉛含有膜12中の触媒金属微粒子の触媒作用により電子エミッタ用基材10表面に電界電子放出性能を持つ炭素膜42が成膜されて電子エミッタ44が製造される。
【0035】
以上の電子エミッタ44の製造方法では、電子エミッタ用基材10表面に炭素膜42成膜のためのバッファ層を形成する成膜プロセスを経る必要がなくなり製造時間を大幅に短縮化することができる。これは電子エミッタ用基材10表面には炭素膜42の成膜に必要な黒鉛含有膜12が形成されているからである。
【0036】
なお、このバッファ層無しで上記成膜操作を行った場合、炭素膜42は成膜されにくいか成膜されない。そのため従来では上記成膜プロセス中には500℃以下の低温で数十分かけて導電性ワイヤ11表面にバッファ層を形成し、それから700℃以上でバッファ層を利用して炭素膜を成膜することが行われていた。
【0037】
以上の実施の形態による電子エミッタ製造方法は筒状電極を用いずに、真空成膜室に陰極と陽極とがそれぞれの互いの電極面を所定間隔隔てて平行に対向した状態で配置し、陽極を接地し、陰極に直流電源負極を接続する構造の直流プラズマ成膜装置でも実施することができる。この直流プラズマ成膜装置においては、真空成膜室にガスを導入し、陰極に直流負電圧を印加することにより陽極の電極面上にプラズマを発生させ、陽極の電極面上に配置した実施の形態の電子エミッタ用基材10表面に炭素膜を成膜することにより電子エミッタを製造することができる。
【0038】
また、直流プラズマ成膜装置としては、図11で示すものでもよい。この装置は、筒状電極50が複数連設されると共にこれら複数の筒状電極50それぞれの供給口52と排出口54とが電子エミッタ用基材10の図中矢印で示す搬送方向に一列になって連通している。搬送機構の図示は略する。図11で供給口52入口では電子エミッタ用基材10であったものが排出口54からは電子エミッタ44として排出される。
【0039】
筒状電極50は、互いの周方向両端部が所定の隙間を隔てて対向する2つ一対の半筒状電極50a,50bからなり、この2つ一対の半筒状電極50a,50bにおける、周方向一端側の対向隙間が上記供給口52に、また、周方向他端側の対向隙間が上記排出口54になっている。2つ一対の半筒状電極50a,50bは複数対連設されると共にこれら複数対の半筒状電極50a,50bそれぞれの対向隙間56は電子エミッタ用基材10搬送方向に一列になって連通している。2つ一対の半筒状電極50a,50bは互いの対向隙間56が成膜時に閉じ、搬送時に開くようになっている。
【0040】
この真空成膜室58内部に成膜ガスを導入すると共に半筒状電極50a,50bに電圧を印加してこの成膜ガスをプラズマ化し、電子エミッタ用基材10表面に成膜することができるようになっている。
【0041】
上記装置では、複数の電子エミッタ用基材10を筒状電極50の開口を通じて該筒状電極50内部に対して順次に供給すると共に該筒状電極50の開口から順次に電子エミッタ44として排出することができるようになっているので、複数の電子エミッタ用基材10に筒状電極50の内部で順次に成膜処理を施して電子エミッタ44を製造することができるので、電子エミッタ44の量産性が大きく向上する。
【0042】
図12(a)(b)に上記電子エミッタ製造方法により製造した電子エミッタ44を組み込んだフィールドエミッションランプ60を示す。図12(a)は側面からの断面図、図12(b)は図12(a)のE−E線断面図である。このフィールドエミッションランプ60ではガラス管62の管内面に陽極64と蛍光体66とを膜状に積層すると共に、ガラス管62内にワイヤ状の電子エミッタ44を空中架設した構成されている。
【0043】
図13にそのフィールドエミッションランプ60の発光写真を示す。この発光写真で示すように実施の形態の電子エミッタ44をワイヤ状に配置したフィールドエミッションランプ60では発光特性に実用的な明るさで発光している。
【0044】
なお、フィールドエミッションランプは上記管タイプに限定されず、上下一対のフラットパネルを備え、一方のフラットパネルの内面にワイヤ状に実施の形態の電子エミッタ44を配置し他方のフラットパネルの内面に蛍光体付き陽極を設けたフラットタイプにも適用することができる。
【0045】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で、種々な変更ないしは変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1(a)は、本発明の実施の形態に係る電子エミッタ用基材の断面構成を示す図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。
【図2】図2(a)は、電子エミッタ用基材の他の例を示す断面図、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図である。
【図3】図3(a)は導電性ワイヤの側面断面図、図3(b)は図3(a)のC−C線断面図である。
【図4】図4(a)は導電性ワイヤの他の例の側面断面図、図4(b)は図4(a)のD−D線断面図である。
【図5】図5は、電子エミッタ用基材の製造方法において黒鉛含有ペースト溶液内に導電性ワイヤを浸漬する状態を示す図である。
【図6】図6は黒鉛含有ペースト溶液の他の例を示す図である。
【図7】図7は電子エミッタ用基材の製造方法において焼成炉に黒鉛含有ペースト浸漬後の導電性ワイヤを焼成する状態を示す図である。
【図8】図8は上記焼成により製造した電子エミッタ用基材の側面断面図である。
【図9】図9は、電子エミッタの製造方法の実施に用いる直流プラズマ成膜装置の概略構成を示す図である。
【図10】図10は、直流プラズマ成膜装置で電子エミッタ用基材表面に炭素膜が成膜されてなる電子エミッタを拡大して示す断面図である。
【図11】図11は、直流プラズマ成膜装置の他の例を示す断面図である。
【図12】図12(a)は直流プラズマ成膜装置で製造した電子エミッタの側面からの断面図、図12(b)は図12(a)のE−E線断面図である。
【図13】図13はそのフィールドエミッションランプの発光写真を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10 電子エミッタ用基材
11 導電性ワイヤ
12 黒鉛含有膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子エミッタ用基材、電子エミッタ用基材の製造方法および電子エミッタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真空成膜室に導入した炭素含有ガスを直流プラズマで分解して基材表面に電界放射により電子を放出する電界電子放出性能を有するサイズnmオーダーの炭素膜を成膜して電子エミッタを作製する作製プロセスが知られる。この電子エミッタ作製プロセスでは、上記炭素膜成膜前には、真空成膜室内部に配置した基材表面にバッファ層を作製して成膜条件を整えておくことが必要である。しかしながら、このバッファ層の作製プロセスには数十分という多大な時間を要するために、従来では電子エミッタの量産化は困難とされていた。
【0003】
なお、特表2002−509339公報に電子エミッタの製造方法として、ワイヤ上に黒鉛粒子およびガラスを含む複合層を形成しこの黒鉛粒子をウィスカに形成するものが提案されている。
【特許文献1】特表2002−509339公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明により解決すべき課題は、上記電子エミッタ作製プロセスが含む、成膜の前に予め基材表面にバッファ層を生成するプロセスを省略可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による電子エミッタ用基材は、基体の導電性表面に直流プラズマによる炭素膜成膜の条件に適合したバッファ層としての黒鉛含有膜が付着して構成されていることを特徴とする。
【0006】
上記基体は、その形状やサイズを特に限定しない。
【0007】
上記基体は、ワイヤ状に延びる導電性ワイヤや、平面視矩形形状をなすフラットパネル形の基体でもよい。
【0008】
上記基体は全体が導電性を有するものでも、内部絶縁性で表面が導電性を有するものでもよい。
【0009】
上記基体は内部中実でも内部中空でもよい。
【0010】
本発明では、上記電子エミッタ用基材を用いると真空成膜室内で基材表面にバッファ層を作製する必要がないから、電子エミッタ作製プロセスに要するプロセス時間を大幅に短縮化することができる。
【0011】
上記黒鉛含有膜は直流プラズマの炭素成分に接触作用して炭素膜生成を促進する触媒を含むことが好ましい。
【0012】
上記黒鉛含有膜は炭素膜を固着することができる粘度に調製されていることが好ましい。
【0013】
本発明による電子エミッタ用基材の製造方法は、基体の導電性表面に黒鉛含有ペーストを付着させる工程と、その付着した黒鉛含有ペーストを焼成する工程を含むことを特徴とする。上記付着には種々のコーティングや印刷を含むものであり、例へば、スピン、吹付、浸漬、ウェブ、ダイもしくは蒸発コーティング、無電解付着、インクジェット印刷、スクリーン印刷、マイクロコンタクト印刷、スタンピングもしくはソフトリソグラフィ、等が含まれる。また、上記ペーストはペースト状のものを含み、スラリ−状も含むことができる。
【0014】
この基体はワイヤ状に延びる導電性ワイヤや、平面視矩形形状をなすフラットパネル形の基体でもよい。この基体は全体が導電性を有するものでも、内部絶縁性で表面が導電性を有するものでもよい。この基体は内部中実でも内部中空でもよい。内部絶縁性部材で構成されている場合、その表面の導電性材は、例えば吹付、浸漬、ウェブもしくはスピンコート、あるいは液体コーティングにより付着、あるいは真空蒸着もしくは蒸着してもよい。上記黒鉛含有ペーストは粉末状活物質である黒鉛と金属表面と付着性のある高分子結合剤等との混合物から調製したものでもよい。
【0015】
本発明による電子エミッタ用基材の製造方法では、例えば黒鉛含有ペーストを含む溶液中に導電性ワイヤ等の多数の基体を一度に浸漬することによりそれら表面に黒鉛含有ペーストを一度に付着させ、次いで例えば焼成炉で焼成することにより表面にペースト中の他の含有成分が気化して黒鉛含有純度が高い黒鉛含有膜を有する電子エミッタ用基材を大量に生産することができる。
【0016】
本発明による電子エミッタ製造方法は、真空成膜室内で上記電子エミッタ用基材の基材温度を700℃以上に昇温し炭素含有ガスを直流プラズマで分解し該基材表面に電界電子放出性能を有する炭素膜を成膜することを特徴とする。
【0017】
この電子エミッタの製造方法では、電子エミッタ用基材表面には既にバッファ層が設けられているので真空成膜室内での直流プラズマによるバッファ層作製プロセスが省略することができ、製造時間を大幅に短縮化できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電子エミッタ作製プロセスが含む、成膜の前に予め基材表面にバッファ層を生成するプロセスを省略できるので上記電子エミッタ作製時間を大幅短縮することができ、電子エミッタの量産化が容易に実現可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電子エミッタ用基材、電子エミッタ用基材の製造方法および電子エミッタの製造方法を説明する。
【0020】
図1(a)(b)を参照して電子エミッタ用基材を説明する。図1(a)は電子エミッタ用基材の側面断面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。この電子エミッタ用基材10は、基体をなす導電性ワイヤ11の表面に直流プラズマによる炭素膜成膜の条件に適合したバッファ層としての黒鉛含有膜12が付着して構成されている。上記基体は一例として導電性ワイヤ11であったが、フラットパネル形状等の平面視矩形形状の基材でもよい。
【0021】
この黒鉛含有膜12は直流プラズマの炭素成分に接触作用して炭素膜生成を促進する触媒を含むことができる。この触媒は例えば鉄、ニッケル、コバルト、あるいはそれらの合金がある。
【0022】
黒鉛含有膜12は高純度、高密度な黒鉛からなる膜であることが好ましい。黒鉛は人工(人造)黒鉛でもよいが、例えば天然黒鉛のような高結晶性黒鉛が好ましい。天然黒鉛としては、特に制限はなく、F48C(日本黒鉛(株)製の商品名)、H−50(中越黒鉛(株)の商品名)等の市販品を用いることができる。黒鉛含有膜12中で黒鉛の形状には、球状等があるが、鱗状や鱗片状等、比較的鋭い端部を有する形状等に超微粒子化されていることが好ましい。この超微粒子化により直流プラズマ成膜装置での炭素膜成膜が促進することができて好ましい。
【0023】
図2ないし図4を参照して電子エミッタ用基材10の製造方法を説明する。 基体は表面が導電性を有すればその形状は何でもよいが、実施の形態では、説明の一例に導電性ワイヤ11を用いる。導電性ワイヤ11は図2(a)でその側面断面、図2(b)でそのB−B線断面で示すように全体が導電性を有する金属でよいが、これに限定されず、図3(a)でその側面断面、図3(b)でそのC−C線断面で示すように内部が円筒中実な絶縁体11aの表面に導電膜11bを備えた構成の基体、あるいは図4(a)でその側面断面、図4(b)でそのD−D線断面で示すように内部中空絶縁体11cでありその表面に導電膜11dを備えた構成の基体でもよい。実施の形態では基体全体が金属ワイヤ特に鉄系の導電性ワイヤ11で構成する。
【0024】
この導電性ワイヤ11を図5で示すように黒鉛含有ペースト溶液18内に多数浸漬する。黒鉛含有ペースト20は、「蛍光表示管用黒鉛ペースト」として市販されている日立粉末冶金株式会社製ヒタゾルGA−263を用いた。この黒鉛含有ペースト中には黒鉛以外に珪酸カリウム、グリセリン、アルミナが混合されている。この黒鉛含有ペースト20は水に対してすべての割合で溶解するので水を入れてその粘度を任意に調製することが可能となっている。この黒鉛含有ペースト20は、その粘度を揮発性溶剤で調整可能としてもよい。そのため導電性ワイヤ11表面に所望の膜厚で黒鉛含有ペースト20を付着させることができる。この導電性ワイヤ11を黒鉛含有ペースト溶液18から引き上げると、導電性ワイヤ11の表面に黒鉛含有ペースト20が付着する。その黒鉛含有ペースト溶液18に対する浸漬時間、その溶液からの引き上げ時間、水が含む割合調節等により黒鉛含有ペースト20を導電性ワイヤ11表面に所望の膜厚で付着させることができる。
【0025】
上記黒鉛含有ペースト溶液18中に図6で示すように触媒22を微粒子状で混合してもよい。これは直流プラズマ成膜装置で導電性ワイヤ11表面にその触媒22を炭素膜の成長核とすることができるからである。ただし、後述する直流プラズマ成膜装置を用いることによりこの触媒は必須となるものではない。
【0026】
上記導電性ワイヤ11の表面に黒鉛含有ペースト20を付着させた後、図7で示すように焼成炉24に導電性ワイヤ11を投入することにより黒鉛含有ペースト20中に含まれている黒鉛以外の混合物を蒸発気化させて乾燥させる。この乾燥後、導電性ワイヤ11を焼成炉24から取り出すと、図8(図1と同様であるが再掲)で示すように、導電性ワイヤ11の表面に高純度な黒鉛からなる黒鉛含有膜12が生成された電子エミッタ用基材10を製造することができる。この焼成炉24の焼成温度、焼成時間等は適宜実験等により設定することができる。焼成炉24は、バッチ式でも可能であるが、連続式が電子エミッタ用基材10の量産性向上には好ましい。連続式には、ローラーハースキルンやキルンカー形式のトンネルキルンに代表される連続式焼成炉がある。これは、導電性ワイヤ11をその焼成炉の入口から出口に向かって炉内を搬送することにより焼成することができる。
【0027】
以上の製造方法では黒鉛含有ペースト溶液18中に大量の導電性ワイヤ11を一度に浸漬し、また、焼成炉24に大量の導電性ワイヤ11を一度に投入して焼成することができるので、電子エミッタ用基材10を安価に迅速に大量生産して次に述べる電子エミッタの製造に準備しておくことができる。
【0028】
なお、ワイヤ状の電子エミッタ用基材10を量産する形式は単なる黒鉛含有ペースト溶液18に浸漬する形態に限定されるものではなく、同様に、焼成炉24で焼成したりして乾燥する形態に限定されるものではない。
【0029】
また、上記では黒鉛含有ペーストを用いたが、導電性ワイヤ11表面に表面被覆用ペーストを塗布し、そのペースト上に、黒鉛を含有する黒鉛含有シートを乗せた状態で、硬化炉で熱処理を行い、冷却することにより導電性ワイヤ11表面に黒鉛含有膜12を付着(被覆を含む概念)した構成としてもよい。
【0030】
図9を参照して上記電子エミッタ用基材10を用いた電子エミッタの製造方法を説明する。図9は同電子エミッタの製造方法の実施に用いる直流プラズマ成膜装置30の概略構成を示す図である。真空成膜室32内に筒状電極34が配置されている。筒状電極34は、周壁を構成する部材が網目(メッシュ)状をなしている。筒状電極34内空間には成膜対象である電子エミッタ用基材10が配置されている。筒状電極34は断面ほぼ円形で一方向に延びてその内部空間は一方向に延びる円筒形のプラズマ発生/閉じ込め空間をなしている。電子エミッタ用基材10はこの筒状電極34内空間のほぼ中央に配置されて細長く延びるワイヤ状に配置されている。筒状電極34の内周面と電子エミッタ用基材10の外周面とはその延設方向に所要の空間を隔てて相対向している。筒状電極34一端側は電圧可変型の直流電源36の負極に接続されて直流負電圧が印加されている。
【0031】
以上の構成を備えた直流プラズマ成膜装置30において、真空排気系38で真空成膜室32内を減圧しかつガス導入系39から炭化水素ガスと水素ガスとの混合ガスが処理用ガスとして導入され、直流電源36の負電圧が筒状電極34に印加されると、筒状電極34内空間に直流プラズマ40が発生する。この場合、電子エミッタ用基材10温度は例えば700℃以上である。この電子エミッタ用基材10の温度は電熱により達成するようにしてもよい。
【0032】
上記により電子エミッタ用基材10表面には図10で示すように炭素膜42が成膜される。この場合、筒状電極34は、触媒金属を含有する電極が好ましく、例えば、Fe(鉄),Ni(ニッケル),Co(コバルト)あるいはこれらの合金を例示することができる。筒状電極34が上記のような触媒金属で構成されている場合、電子エミッタ用基材10表面の炭素膜42中には触媒金属を含有する必要は無いが、筒状電極34が触媒金属で構成されていない場合では、電子エミッタ用基材10表面の炭素膜42中には触媒金属を含有している必要がある。この場合、図5で示す黒鉛含有ペースト溶液18内には触媒金属の微粒子を混入させるとよい。
【0033】
上記直流プラズマ40が発生すると筒状電極34が含有する触媒金属がスパッタリングされて、そのスパッタ金属粒子41が、電子エミッタ用基材10表面に付着する。この触媒金属粒子41が付着すると、この触媒金属粒子41の触媒作用により電子エミッタ用基材28表面に電界電子放出性能を持つ炭素膜42が成膜されて電子エミッタ44が製造される。
【0034】
また、筒状電極34が触媒金属で構成されていない場合では、電子エミッタ用基材10表面の黒鉛含有膜12中の触媒金属微粒子の触媒作用により電子エミッタ用基材10表面に電界電子放出性能を持つ炭素膜42が成膜されて電子エミッタ44が製造される。
【0035】
以上の電子エミッタ44の製造方法では、電子エミッタ用基材10表面に炭素膜42成膜のためのバッファ層を形成する成膜プロセスを経る必要がなくなり製造時間を大幅に短縮化することができる。これは電子エミッタ用基材10表面には炭素膜42の成膜に必要な黒鉛含有膜12が形成されているからである。
【0036】
なお、このバッファ層無しで上記成膜操作を行った場合、炭素膜42は成膜されにくいか成膜されない。そのため従来では上記成膜プロセス中には500℃以下の低温で数十分かけて導電性ワイヤ11表面にバッファ層を形成し、それから700℃以上でバッファ層を利用して炭素膜を成膜することが行われていた。
【0037】
以上の実施の形態による電子エミッタ製造方法は筒状電極を用いずに、真空成膜室に陰極と陽極とがそれぞれの互いの電極面を所定間隔隔てて平行に対向した状態で配置し、陽極を接地し、陰極に直流電源負極を接続する構造の直流プラズマ成膜装置でも実施することができる。この直流プラズマ成膜装置においては、真空成膜室にガスを導入し、陰極に直流負電圧を印加することにより陽極の電極面上にプラズマを発生させ、陽極の電極面上に配置した実施の形態の電子エミッタ用基材10表面に炭素膜を成膜することにより電子エミッタを製造することができる。
【0038】
また、直流プラズマ成膜装置としては、図11で示すものでもよい。この装置は、筒状電極50が複数連設されると共にこれら複数の筒状電極50それぞれの供給口52と排出口54とが電子エミッタ用基材10の図中矢印で示す搬送方向に一列になって連通している。搬送機構の図示は略する。図11で供給口52入口では電子エミッタ用基材10であったものが排出口54からは電子エミッタ44として排出される。
【0039】
筒状電極50は、互いの周方向両端部が所定の隙間を隔てて対向する2つ一対の半筒状電極50a,50bからなり、この2つ一対の半筒状電極50a,50bにおける、周方向一端側の対向隙間が上記供給口52に、また、周方向他端側の対向隙間が上記排出口54になっている。2つ一対の半筒状電極50a,50bは複数対連設されると共にこれら複数対の半筒状電極50a,50bそれぞれの対向隙間56は電子エミッタ用基材10搬送方向に一列になって連通している。2つ一対の半筒状電極50a,50bは互いの対向隙間56が成膜時に閉じ、搬送時に開くようになっている。
【0040】
この真空成膜室58内部に成膜ガスを導入すると共に半筒状電極50a,50bに電圧を印加してこの成膜ガスをプラズマ化し、電子エミッタ用基材10表面に成膜することができるようになっている。
【0041】
上記装置では、複数の電子エミッタ用基材10を筒状電極50の開口を通じて該筒状電極50内部に対して順次に供給すると共に該筒状電極50の開口から順次に電子エミッタ44として排出することができるようになっているので、複数の電子エミッタ用基材10に筒状電極50の内部で順次に成膜処理を施して電子エミッタ44を製造することができるので、電子エミッタ44の量産性が大きく向上する。
【0042】
図12(a)(b)に上記電子エミッタ製造方法により製造した電子エミッタ44を組み込んだフィールドエミッションランプ60を示す。図12(a)は側面からの断面図、図12(b)は図12(a)のE−E線断面図である。このフィールドエミッションランプ60ではガラス管62の管内面に陽極64と蛍光体66とを膜状に積層すると共に、ガラス管62内にワイヤ状の電子エミッタ44を空中架設した構成されている。
【0043】
図13にそのフィールドエミッションランプ60の発光写真を示す。この発光写真で示すように実施の形態の電子エミッタ44をワイヤ状に配置したフィールドエミッションランプ60では発光特性に実用的な明るさで発光している。
【0044】
なお、フィールドエミッションランプは上記管タイプに限定されず、上下一対のフラットパネルを備え、一方のフラットパネルの内面にワイヤ状に実施の形態の電子エミッタ44を配置し他方のフラットパネルの内面に蛍光体付き陽極を設けたフラットタイプにも適用することができる。
【0045】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で、種々な変更ないしは変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1(a)は、本発明の実施の形態に係る電子エミッタ用基材の断面構成を示す図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。
【図2】図2(a)は、電子エミッタ用基材の他の例を示す断面図、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図である。
【図3】図3(a)は導電性ワイヤの側面断面図、図3(b)は図3(a)のC−C線断面図である。
【図4】図4(a)は導電性ワイヤの他の例の側面断面図、図4(b)は図4(a)のD−D線断面図である。
【図5】図5は、電子エミッタ用基材の製造方法において黒鉛含有ペースト溶液内に導電性ワイヤを浸漬する状態を示す図である。
【図6】図6は黒鉛含有ペースト溶液の他の例を示す図である。
【図7】図7は電子エミッタ用基材の製造方法において焼成炉に黒鉛含有ペースト浸漬後の導電性ワイヤを焼成する状態を示す図である。
【図8】図8は上記焼成により製造した電子エミッタ用基材の側面断面図である。
【図9】図9は、電子エミッタの製造方法の実施に用いる直流プラズマ成膜装置の概略構成を示す図である。
【図10】図10は、直流プラズマ成膜装置で電子エミッタ用基材表面に炭素膜が成膜されてなる電子エミッタを拡大して示す断面図である。
【図11】図11は、直流プラズマ成膜装置の他の例を示す断面図である。
【図12】図12(a)は直流プラズマ成膜装置で製造した電子エミッタの側面からの断面図、図12(b)は図12(a)のE−E線断面図である。
【図13】図13はそのフィールドエミッションランプの発光写真を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10 電子エミッタ用基材
11 導電性ワイヤ
12 黒鉛含有膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の導電性表面に直流プラズマによる炭素膜成膜の条件に適合したバッファ層としての黒鉛含有膜が付着して構成されている、ことを特徴とする電子エミッタ用基材。
【請求項2】
上記黒鉛含有膜は直流プラズマ中の炭素成分に接触作用して炭素膜生成を促進する触媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子エミッタ用基材。
【請求項3】
基体の導電性表面に黒鉛含有ペーストを付着させる工程、および
上記付着した黒鉛含有ペーストを焼成する工程
を含むことを特徴とする電子エミッタ用基材の製造方法。
【請求項4】
上記黒鉛含有ペースト中に直流プラズマ中の炭素成分に接触作用して炭素膜生成を促進する触媒を含むことを特徴とする請求項3に記載の電子エミッタ用基材の製造方法。
【請求項5】
真空成膜室内で請求項1または2に記載の電子エミッタ用基材の基材温度を700℃以上に昇温し炭素含有ガスを直流プラズマで分解し該基材表面に電界電子放出性能を有する炭素膜を成膜することを特徴とする電子エミッタ製造方法。
【請求項1】
基体の導電性表面に直流プラズマによる炭素膜成膜の条件に適合したバッファ層としての黒鉛含有膜が付着して構成されている、ことを特徴とする電子エミッタ用基材。
【請求項2】
上記黒鉛含有膜は直流プラズマ中の炭素成分に接触作用して炭素膜生成を促進する触媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子エミッタ用基材。
【請求項3】
基体の導電性表面に黒鉛含有ペーストを付着させる工程、および
上記付着した黒鉛含有ペーストを焼成する工程
を含むことを特徴とする電子エミッタ用基材の製造方法。
【請求項4】
上記黒鉛含有ペースト中に直流プラズマ中の炭素成分に接触作用して炭素膜生成を促進する触媒を含むことを特徴とする請求項3に記載の電子エミッタ用基材の製造方法。
【請求項5】
真空成膜室内で請求項1または2に記載の電子エミッタ用基材の基材温度を700℃以上に昇温し炭素含有ガスを直流プラズマで分解し該基材表面に電界電子放出性能を有する炭素膜を成膜することを特徴とする電子エミッタ製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−192534(P2008−192534A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27745(P2007−27745)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(504224371)ダイヤライトジャパン株式会社 (105)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(504224371)ダイヤライトジャパン株式会社 (105)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]