説明

電子オルゴール

【課題】簡単な構成により、使用環境に溶け込んだ曲再生の可能な電子オルゴールを提供する。
【課題を解決するための手段】
複数曲分の音高およびタイミングを記憶する曲データ記憶部から対象となる曲の再生グループを選定し、予め記憶された乱数に基づいてグループ内の再生順を自動決定する。新曲は再生頻度が高くなるように重みをつける。所定回再生した曲は乱数に基づいて再生グループから入れ換える。近いテンポまたは拍子の曲で再生グループを構成し、テンポを修正して統一することで乳児を揺する連続あやし動作に対応する。予め記憶された1/fゆらぎデータの開始点を乱数で変えた情報で曲信号のタイミングに1/fゆらぎをかける。曲信号のタイミングに1/fゆらぎを伴うリタルダントやルバートをかける。1/fゆらぎをかけた減衰音信号を曲信号の音高および撥音開始タイミングデータに結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子オルゴールに関する。
【背景技術】
【0002】
オルゴールに関しては、機械式のものに加え、オーディオ信号をスピーカから流す電子オルゴールがあり、後者は乳児用のメリーゴーランド等に採用されている(特許文献1)。
一方、一般的なオーディォ分野では、電子音等の人の感情に対し優しくないサウンドを、人間の生体のリズムである1/fのゆらぎを付加させることで聴き心地の良い音楽に変えることができる演奏制御装置(特許文献2)が提案されている。また、電子楽器等の音源にゆらぎを与える場合、管楽器と弦楽器に相当する楽音に対していずれも同じ帯域幅および振幅でゆらぎを与えたときに不自然な音になることを防止するため、その楽音に最も適した帯域幅と振幅を持つゆらぎを持たせた楽音変調装置(特許文献3)も提案されている。
【0003】
しかしながら、電子オルゴールに関しては、簡単な構成で自然な音環境を提供する上でさらに検討すべき課題が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−311034号公報
【特許文献2】特開平8−328555号公報
【特許文献3】特開平5−73052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、簡単な構成により、使用環境に溶け込んだ曲再生の可能な電子オルゴールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため本発明は、複数曲を記憶する曲データ記憶部と、乱数を記憶する乱数記憶部と、乱数記憶部に記憶される乱数に基づいて前記曲データ記憶部の曲の再生順を自動的に決定する制御部とを有する電子オルゴールを提供する。これによって、通常の音楽に較べて極めて短い曲が極めて多くの回数繰り返されるオルゴールおいて、曲の順序が意識されるのを避けることができる。単に一曲のみを繰り返すオルゴールであれば繰り返しが無意識の中に溶け込むが、複数曲を同じ順序で繰り返す場合、次の曲に移るときの曲調の変化が耳につき、これが記憶されると次の曲の予測が意識を支配するので環境音としてはかえって不愉快なものとなる場合がある。上記の構成はこのような問題を回避し、オルゴール本来の無意識の中に溶け込んだ豊かな音空間の提供に有益である。また、乱数をあらかじめ記憶しているので簡単な構成によりランダムな曲順を実現でき、オルゴールのような簡単な機器に適する。
【0007】
なお、オーディオ再生装置においても、従来から再生順をランダムに変えるよう構成されたものが存在するが、これは、相当の長さを有する通常の音楽の再生において曲の切換わり頻度が小さい状況における構成である。しかも、オーディオは音楽の鑑賞が目的であって、複数曲の組合せからなる作品にあっては曲調の変化自体も意識を集中すべき作品構想の一部をなし、順序を変えること自体鑑賞の目的に反する。このように通常のオーディオの場合は順序を代えて同じ複数曲の組を何度も再生する意義が薄く、利用されるのも稀である。これに対し、本発明は電子オルゴールに関するものであって、格段に短い曲を格段に多い回数(例えば一日に100回以上)繰り返すことを宿命とするとともに、意識を集中すべき音楽鑑賞を目的とするものではなくむしろ意識を引かない穏やかな音環境を提供するものでなくてはならない。ここにおいて、上記の本発明は電子オルゴールにおいてきわめて効果の高い構成を提供するものである。
【0008】
本発明の具体的な特徴によれば、曲データ記憶部には音高およびタイミングを示す曲信号が記憶されているとともに、曲信号のタイミングを修正するタイミング修正部と、タイミング修正部によって修正された曲信号のタイミングにおいて曲信号の音高にて音信号を発生する音信号発生部が電子オルゴールに設けられる。これによって記憶部の記憶容量に負担をかけることなく複数曲の自然な曲再生が可能となる。
【0009】
本発明の他の具体的な特徴によれば、制御部は、曲データ記憶部に記憶される曲の中から再生の対象となる再生グループを選定するとともに、乱数記憶部に記憶される乱数に基づいて再生グループ内の曲について再生順を自動的に決定する。これによって多数の曲を準備しながら再生対象を再生グループ内の曲に限り、次々に新しい曲を再生するのではない限られた曲の快適な繰り返しを演出することができる。
【0010】
本発明の他の具体的な特徴によれば、制御部は、曲データ記憶部に記憶される曲の中から再生の対象となる再生グループを構成するとともに、乱数記憶部に記憶される乱数に基づいて再生グループに加入する曲を自動選定する。これによって再生グループに加入する曲が偏るのを防止することができる。
【0011】
本発明の他の具体的な特徴によれば、制御部は、曲データ記憶部に記憶される曲の中から再生の対象となる再生グループを選定するとともに、乱数記憶部に記憶される乱数に基づいて再生グループ内の曲の自動入れ換えを行う。これによって再生グループ内の局が固定化するのを防止することができる。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、複数曲を記憶する曲データ記憶部と、曲データ記憶部に記憶される曲の中から再生の対象となる再生グループを選定するとともに再生回数に基づいて前記再生グループ内の曲の自動入れ換えを行う制御部とを有する電子オルゴールが提供される。これによって、例えば再生回数が多くなって飽きられたと考えられる曲などを自動的に曲データ記憶部内の別の曲と入れ換えることができる。
【0013】
本発明の特徴によれば、複数曲を記憶する曲データ記憶部と、曲データ記憶部に記憶される曲の再生に条件をつける制御部とを有する電子オルゴールが提供される。この条件は、例えば、自動入れ換え条件は曲データ記憶部への新規加入曲かどうかである。この場合は、曲データ記憶部に新規に加入した曲を他の曲に優先して再生グループに加えて再生することができる。また上記条件の他の例は、自動入れ換え条件は曲のテンポまたは曲の拍子である。この場合は、近似したテンポまたは拍子の曲を再生グループにまとめることが可能となり、例えば乳児を抱いてオルゴール曲にあわせて体を揺すりながらあやしたり寝かしつけたりする場面において1分そこそこで次々と曲のテンポや拍子がめまぐるしく変わるような事態を回避することができる。また同様の目的のために、条件として同一曲の繰り返しを指定することも可能である。
【0014】
本発明の他の特徴によれば、複数曲を記憶する曲データ記憶部と、曲データ記憶部に記憶される異なった曲を連続して再生する際そのテンポが同一になるよう修正する制御部とを有する電子オルゴールが提供される。これによって、連続する曲のテンポが揃えられ、例えば乳児を抱いてオルゴール曲にあわせて体を揺すりながらあやしたり寝かしつけたりする場面において1分そこそこで次々と曲のテンポがめまぐるしく変わるような事態を回避することができる。
【0015】
上記本発明の具体的な特徴によれば、制御部はテンポの修正に先立って対象曲を限定する。この限定は、例えば、曲のテンポや拍子に基づいて行われる。これによって、機械的なテンポの統一の結果、本来の適切なテンポからあまりにかけ離れた不自然なテンポで極が再生されることを防止し、あくまで自然な環境音が流れるよう配慮することができる。
【0016】
本発明の特徴によれば、テンポの近似する複数曲を記憶する曲データ記憶部と、曲データ記憶部に記憶される曲を順次再生する制御部とを有する電子オルゴールが提供される。これによって、例えば乳児を抱いてオルゴール曲にあわせて体を揺すりながらあやしたり寝かしつけたりする場面において1分そこそこで次々と曲のテンポがめまぐるしく変わるような事態を回避することができる。上記本発明の具体的な特徴によれば、制御部は、曲データ記憶部の曲の再生順をランダムに自動決定し、単調さを回避する。
【0017】
本発明の特徴によれば、音高およびタイミングを示す曲信号を記憶する曲データ記憶部と、曲信号のタイミングを修正するタイミング修正部と、タイミング修正部によって修正された曲信号のタイミングにおいて曲信号の音高にて音信号を発生する音信号発生部とを有する電子オルゴールが提供される。上記本発明の具体的な特徴によれば、タイミング修正部は、タイミングにリタルダントまたはルバートをかける。さらに他の具体的な特徴によれば、タイミング修正部は、タイミングに1/fゆらぎをかける。これらの特徴によって、記憶部の記憶容量に負担をかけることなく自然な曲再生が可能となる。
【0018】
本発明の特徴によれば、音高およびタイミングを示す曲信号を記憶する曲データ記憶部と、1/fゆらぎデータを記憶する1/fゆらぎデータ記憶部と、1/fゆらぎデータ記憶部の1/fゆらぎデータに基づき曲信号のタイミングに1/fゆらぎをかける1/fゆらぎ付与部と、1/fゆらぎ付与部によって1/fゆらぎがかけられた曲信号に音信号を発生する音信号発生部とを有する電子オルゴールが提供される。これによって、記憶部の記憶容量に負担をかけることなく自然な曲再生が可能となる。また、1/fゆらぎデータをあらかじめ記憶しているので簡単な構成により自然なタイミング修正が可能となり、オルゴールのような簡単な機器に適する。
【0019】
上記本発明の具体的な特徴によれば、乱数を記憶する乱数記憶部が設けられ、1/fゆらぎ付与部は、1/fゆらぎデータ記憶部の1/fゆらぎデータおよび乱数記憶部の乱数に基づき曲信号のタイミングに1/fゆらぎをかける。これによって予め記憶した1/fゆらぎデータを繰り返し使用するにもかかわらず、自然に近い1/fゆらぎを実現することができる。さらに具体的な特徴によれば、1/fゆらぎ付与部は、乱数記憶部の乱数に基づき1/fゆらぎデータ記憶部の1/fゆらぎデータの開始点を決定する。これによってランダムな開始点の変更という簡単な構成により、特に意識が集中する音の開始点において画一化回避し、自然に近い1/fゆらぎを実現させることができる。
【0020】
本発明の他の特徴によれば、音高およびタイミングを示す曲信号を記憶する曲データ記憶部と、曲信号のタイミングにおいて減衰音信号を発生する音信号発生部とを有する電子オルゴールが提供される。これによって撥音の発生において各曲データに音の開始から減衰の終了までの音データを記憶する負担から曲データ記憶部を開放することができる。上記本発明の具体的な特徴によれば、減衰音信号に1/fゆらぎをかける1/fゆらぎ付与部が設けられる。
【0021】
本発明の他の特徴によれば、曲信号を記憶する曲データ記憶部と、1/fゆらぎデータを記憶する1/fゆらぎデータ記憶部と、乱数を記憶する乱数記憶部と、1/fゆらぎデータ記憶部の1/fゆらぎデータおよび乱数記憶部の乱数に基づき曲信号の再生に1/fゆらぎをかける1/fゆらぎ付与部とを有することを特徴とする請求項31記載の電子オルゴールが提供される。これによって簡単な構成により予め記憶された乱数および1/fゆらぎデータを繰り返し使用するにもかかわらず両者の組合せにより曲信号の再生の際に自然に近い1/fゆらぎをかけることができ、オルゴールのような簡単な機器に適した構成を提供できる。
【発明の効果】
【0022】
上記のように、本発明によれば簡単な構成により、使用環境に溶け込んだ曲再生の可能な電子オルゴールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例に関する電子オルゴールシステム全体を示すブロックでの図面代用写真である。
【図2】図1におけるオルゴール音信号発生部の詳細を関連する部分とともに示すブロック図の図面代用写真である。
【図3】図1のメリー制御部によって実行される機能を示すフローチャートを示した図面代用写真である。
【図4】図3のステップS2の詳細を示すフローチャートの図面代用写真である。
【図5】図2の信号発生制御部によって実行される機能に関するフローチャートの図面代用写真である。
【図6】図5のステップS96の詳細を示すフローチャートの図面代用写真である。
【図7】図5のステップS98の詳細を示すフローチャートの図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の実施例に関する電子オルゴールシステム全体を示すブロックであり、システムは乳児用のメリーゴーランド2、携帯電話4および曲データサーバ6を有する。メリーゴーランド2は、メリーゴーランド(以下「メリー」と略称)制御部8によって制御される。記憶部10は、メリー制御部8を動作させるためのプログラムを記憶するとともに、メリーの制御に関するデータの記憶も行う。メリーゴーランド2は、乳児の頭上に来るようベッドサイドなどに設置されている回転モビール部12を回転させるとともにこれに連動してオルゴール音を流す機能を有する。
【0025】
操作部14は、メリーゴーランド2のスイッチのオン・オフやオルゴール音の音量調節、および後述する選曲、曲データの受信、音のサンプリングなどの手動操作を行う。操作部12によってメリーゴーランド2のスイッチがオンされると、メリー制御部8の指示により、回転モビール部12が回転を始めるとともにオルゴール音信号発生部16から所定のオルゴール音信号が発生し、アンプ18を介してスピーカ20からオルゴール音が流れる。
【0026】
このとき、各オルゴール音の発生タイミングに対して1/fゆらぎデータ記憶部22から出力される一連のデータに基づく1/fゆらぎが順次かけられる。また、この一連の1/fゆらぎデータの採用開始点は、乱数記憶部24から出力される乱数に基づいてその都度異なるよう決定される。これらによって、オルゴール音の電子発生に伴う不自然さや同じオルゴール曲の繰り返しが耳につく不快感を回避し、乳児に快適な環境音を提供する。1/fゆらぎをかけるための構成の詳細については後述する。
【0027】
オルゴール音信号発生部16に提供されるオルゴール曲のデータは、曲データ記憶部26に複数記憶されており、これが乱数記憶部24から出力される乱数に基づいた順序でメリー制御部8から読み出され、オルゴール音信号発生部16に送られる。これによって、限られた曲数の短いオルゴール曲が循環的に何度も流れることにより曲順が記憶されて耳につく不快感を回避する。なお、乱数記憶部24からの乱数出力は、予め記憶されている乱数テーブルのアドレスを所定の順序で指定することにより行うものであるが、記憶データ自体が乱数テーブルなので出力は乱数となる。ただし、指定アドレスが一巡すると乱数記憶部24からはまた同じ順序で数値が出力され、これが循環するので厳密には乱数出力とは言えない。しかしながら人間が順序を覚えたり法則性を認識したりできる数をはるかに超えた規模の乱数テーブルが記憶されているので、実質的には乱数が出力されると考えてよい。乱数等による曲順の変更の詳細については後述する。
【0028】
なお、オルゴール音信号発生部16に提供されるオルゴール曲のデータは各音の高さとタイミングからなっており、同時に出せる構成音の数は4つになっている。また、後述のように、オルゴール曲の音源は減衰時間の決まった撥音状の音源なので、オルゴール曲のデータには音の長さの情報は含まれていない。また音源は一度撥音されると消音されることはないので、前の音が減衰するまでに次の音が撥音されると重なることになる。
【0029】
但し、オルゴール音信号発生部16における撥音の減衰時間の実行時には1/fゆらぎデータ記憶部22から出力される一連のデータに基づく1/fゆらぎがかけられることにより、その都度の減衰時間が微妙に変えられる。さらに、オルゴール音信号発生部16に提供されるオルゴール曲のデータはリタルダントやルバートなどの表情情報自体を一切含まない機械的な音の高さとタイミングのみのデータであり、このため極めて情報量の少ないデータとなっている。そしてオルゴール音信号発生部16においては、オルゴール曲のデータに含まれるリタルダントやルバート開始タイミングに基づいてその後の撥音タイミングに所定の自動遅延をかけてリタルダントやルバートを実行する。そしてこれらの自動遅延にも1/fゆらぎデータ記憶部22から出力される一連のデータに基づく1/fゆらぎがかけられ、画一的なリタルダントやルバートによる稚拙感を回避する。また、1/fゆらぎは、オルゴール音信号発生部16から発生する音信号の音量にたいしてもかけられる。これらの種々の1/fゆらぎ付与についても後述する。
【0030】
曲データ記憶部26に記憶されるオルゴール曲のデータはその容量の範囲で追加差し替えが可能である。そして、曲データの追加は、メリー近距離通信部28により外部から曲データを入力することにより可能である。例えば、携帯電話4が曲データサーバ6からインターネット30経由で配信を受ける曲データを受信することによりこれを曲データ記憶部26に格納することができる。
【0031】
また、マイク32を介して鼻歌などをサンプリング部34でサンプリングすることにより曲データ記憶部26に曲データを追加することも可能である。具体的には、サンプリング部34でサンプリングした音データを音高・タイミング抽出自動編曲部36に入力し、まずサンプリングした音データから音高および・タイミングを抽出する。この際、音高が音階からずれていたり、タイミングが拍からずれていたりした場合、これを自動的に半音単位および16分音符単位で最も近い音高およびタイミングに自動修正する。さらに、音高やタイミングが連続して著しく不安定な場合は鼻歌が歌い手の意図通り正確に歌われていないものと判断し、メロディーライン、拍子感、および曲末尾の終止感に不自然さがある部分についてこれを自動修正する。音高・タイミング抽出自動編曲部36は抽出した音高およびタイミングが単旋律であった場合、和声分析を行うとともに所定の簡単な伴奏を自動付加する。以上の自動修正および伴奏付加を「自動編曲」と称することとする。
【0032】
携帯電話制御部38は、本来、電話機能部40を含む携帯電話4全体を制御するためのもので、記憶部42に記憶されるプログラムによって動作する。操作部44および表示部46も、本来、電話機能部40の機能に関する操作および表示のために設けられているものであるが、上記のようなメリーゴーランド2に入力する曲データのダウンロードおよび携帯電話近距離通信部46による曲データの転送のための操作およびそれに必要な情報の表示に用いることができる。なお、携帯電話近距離通信部46およびメリー近距離通信部28は、具体的には赤外線通信部または近距離無線通信部として構成される。このようにして、携帯電話4は電子オルゴールシステムに組み込まれる。
【0033】
上記のように、携帯電話4は、電話機能部40によってインターネット30を介し曲データサーバ6と交信可能である。曲データサーバ6は、サーバ制御部48、曲データベース50および入出力インターフェース52を有し、ベビー用品業界関連が連携した種々の無料情報を提供するポータルサイトとなっている。さらに必要に応じ母子の健康管理を行う保健医療関連公的機関とも連携している。そして、所定のIDとパスワードで登録を行うことによってメリーゴーランド2購入時の契約条件に基づいて曲データの配信を受けることができる。なお、曲データサーバ6がさらに保健医療関連公的機関と連携しているときは、携帯電話4から乳児の発育や母親の健康状態のデータをIDとパスワードに基づいて非公開でアップすることにより、現時点において同様条件で他の参加者からアップされている最新の健康管理データを集計して更新された統計データの配信を受けることもできる。
【0034】
図2は、図1におけるオルゴール音信号発生部の詳細を関連する部分とともに示すブロック図であり、図1と同じ部分には同じ番号を付して必要のない限り説明を省略する。オルゴール音信号発生部16は、音源部54がシーケンサから音高とタイミングの指定をうけることにより、順次(重音部にあっては同時に)オルゴール音を発生する機能を有する。シーケンサは、メリー制御部8から送られる曲データに基づき音源部54の音源データの音高を曲に従ったタイミングで指定するための音高・タイミング信号を発生する基本シーケンサ56、この基本シーケンサから発生する音高・タイミング信号のタイミングに1/fゆらぎをかける1/fゆらぎタイミング遅延部58、1/fゆらぎタイミング遅延部58からの音高・タイミング信号のタイミングを必要に応じ修正することで曲に表情をつける修飾シーケンサ60、修飾シーケンサ60と連携してタイミング修飾を実行する1/fゆらぎリタルダント部62および1/fゆらぎルバート部64からなる。
【0035】
基本シーケンサ56によって音高・タイミング信号の発生が開始されるとき、これに先立って1/fゆらぎデータ記憶部22からの1/fゆらぎデータが1/fゆらぎデータレジスタ66に取り込まれる。そして、1/fゆらぎ順次出力部68は、基本シーケンサ56からの音高・タイミング信号に同期して1/fゆらぎデータレジスタ66を順次アドレス指定し、1/fゆらぎデータを順次出力していく。このとき最初に指定されるアドレスは乱数記憶部24からの乱数によって決定される。そして最終アドレスまでいくと先頭アドレスに戻り、以下循環的に1/fゆらぎデータが1/fゆらぎ順次出力部68から順次出力されていく。このような循環する法則性を持つデータは厳密には1/fゆらぎとはいえないが、人間が順序を覚えたり法則性を認識したりできる量をはるかに超えた規模のデータが順次出力されるので実質的には1/fゆらぎが出力されると考えてよい。また、乱数によりその都度1/fゆらぎデータの開始点を変えることにより、認知度の高い開始点近辺における1/fゆらぎデータのパターンが学習されるのを防止することができる。
【0036】
1/fゆらぎタイミング遅延部58は、上記のような1/fゆらぎ順次出力部64からのデータに従って基本シーケンサ56からの音高・タイミング信号のタイミングに1/fゆらぎをかける。つまり、1/fゆらぎタイミング遅延部58を通った音高・タイミング信号のタイミングは、それぞれが入力したタイミングでの1/fゆらぎデータに基づいて異なった遅延が付与されて修飾シーケンサ60に送られることになる。修飾シーケンサ60は、リタルダントやルバートの指示がないかぎり、通常は、1/fゆらぎタイミング遅延部58によって1/fゆらぎがかけられた音高・タイミング信号に従って音源部54における音源の音高とタイミングの指定を行う。
【0037】
一方、メリー制御部8から入力された曲データの終了直前の音高・タイミング信号にリタルダント開始データが付与されているとき、それ以降の音高・タイミング信号は1/fゆらぎリタルダント部62に送られ、リタルダントデータ部70のリタルダントデータに従って音高・タイミング信号のタイミングに順次大きくなる遅延がかけられて曲に終止感をつける修飾がなされる。またこのとき1/fゆらぎデータ順次出力部からおくられる1/fゆらぎデータにより遅延にさらに1/fゆらぎがかけられる。このようにしてタイミングに遅延および1/fゆらぎがかけられた音高・タイミング信号は順次修飾シーケンサに戻され、音源部54における音源の音高とタイミングの指定を行う。なお、リタルダントの際は、曲終了まで1/fゆらぎリタルダント部62が遅延をかけ続ける。
【0038】
また、メリー制御部8から入力された曲データ途中の音高・タイミング信号にルバート開始データが付与されているとき、それ以降の音高・タイミング信号は1/fゆらぎルバート部64に送られ、ルバートデータ72部のルバートデータに従って音高・タイミング信号のタイミングを前後にずらせ、曲に表情をつける修飾がなされる。またこのとき1/fゆらぎデータ順次出力部からおくられる1/fゆらぎデータによりタイミングの前後ずらし程度に1/fゆらぎがかけられる。このようにしてタイミングにおよび1/fゆらぎつきの前後のずれがかけられた音高・タイミング信号は順次修飾シーケンサ60に戻され、音源部54における音源の音高とタイミングの指定を行う。なお、ルバートの際は、ルバートデータによる所定のルバートが完了すると修飾シーケンサ60による通常の音高およびタイミングの指定に戻る。
【0039】
音源部54は、12音で3オクターブ分の音高のオルゴール音源を備えた音源データ保持部74および撥音の減衰を表す減衰データを保持する減衰データ保持部76を有し、修飾シーケンサ60の指定に従って音源データ保持部74のオルゴール音の音高が曲データに従ったタイミングで指定されることによりオルゴール信号を発生する。また減衰データ保持部76の減衰データは、撥音の開始から消滅への減衰の様子を表す減衰データを保持しており、これが結合部78で音源データ保持部74からのオルゴール音と結合されて撥音信号として出力される。このとき、1/fゆらぎ減衰修正部80は、1/fゆらぎデータレジスタ66の1/fゆらぎデータに基づいて減衰データ保持部76の減衰データを修正する。これによって、結合部78から出力される撥音信号は1/fゆらぎを伴った減衰を示すことになるが、このゆらぎは主に撥音当初の音量のゆらぎと減衰の早さのゆらぎとして現れ、撥音および減衰の画一性を回避する。
【0040】
結合部78からの出力はオルゴール音出力部82で音信号に変換されるが1/fゆらぎ音量修正部84を通すことにより音量に1/fゆらぎがかけられる。1/fゆらぎ音量修正部84は、1/fゆらぎデータレジスタ66の1/fゆらぎデータに基づいて時間的に変化する信号を発生する1/fゆらぎ信号発生部86によってオルゴール音出力部82からの音信号の音量に1/fゆらぎをかける。この音量変化はオルゴール音にビブラートをかける効果をもつ。以上説明したオルゴール音信号発生部16の各部の機能の連携および制御は、信号発生制御部88によって行われる。
【0041】
図3は、メリー制御部8によって実行される機能を示すフローチャートであり、操作部14によってメリーゴーランド2の電源オンまたは設定操作を検知することによってスタートする。なお、後述のように設定操作には新曲の入力操作も含まれる。フローがスタートすると、まず、ステップS2においてメリーゴーランド2の初期立上および設定処理が行われる。ステップS2で初期立上が終了し、その後所定時間(例えば3秒)内に設定操作が行われないと自動的にステップS4に移行する。このように設定処理を行う可能性の高い電源オン時点では所定時間待って自動的に設定操作を受付可能とするとともに、設定操作の意思がなければ何も操作しなくても所定時間でステップS4以下の曲再生機能に自動移行するので操作方法を知らなくても電源オンで再生をスタートさせることができる。なお、曲再生の任意の時点でも設定操作によって手動でフローを再スタートさせ、ステップS2の設定処理に入ることができる。ステップS2の初期立上および設定処理の詳細は後述する。
【0042】
ステップS4では、新曲が入力されているかどうかチェックし、新曲入力があればステップS6のランダム再生重み等の付与を行う。これは新曲のランダム再生頻度を上げるための処置であるがその詳細は後述する。次いでステップS8で新曲を再生グループに加入するとともに、入換えとして今まで最も再生頻度の高かったお気に入り指定曲以外の曲を再生グループから排除してステップS10に移行する。ここで、「再生グループ」とは所定曲数(例えば5曲)からなる再生候補曲のグループであって、後述のように再生グループの中の一曲が次々にランダム選択されて再生される。新曲はこのランダム選択の可能性が高くなるよう重み付けされる。一方、ステップS4で新曲の入力が検知されないときは直接ステップS10に移行する。
【0043】
ステップS10では、次の曲を開始するタイミングが到来しているかどうかのチェックがなされる。これは後述のように前曲のデータを出力した後その演奏所要時間のカウントを開始するので、カウント値が演奏所要時間プラス所定の空白時間に達したかどうかによって判定される。そして次曲タイミングが検知されるとステップS12に進み、乱数記憶部24から再生用アドレス順にしたがって乱数の一つを取り込み、取り込んだ乱数に該当する再生グループ内の曲をステップS14でオルゴール音信号発生部16に出力する。同時にステップS16でその曲の再生回数記録をインクリメントするとともに、その曲の演奏所要時間のカウントを開始してステップS18に移行する。
【0044】
ステップS18では、その曲の再生回数が所定回数(例えば200回)に達しているかどうかチェックし、所定回数に達していればステップS20に進んでその曲がお気に入り指定曲かどうかチェックする。そして該当しなければステップS22でその曲を再生グループかラ排除する。次いでステップS24で乱数記憶部24から入換用アドレス順にしたがって乱数の一つを取り込み、取り込んだ乱数に該当する曲を再生グループ以外から入換曲として1曲選定し、再生グループに加入してステップS28に移行する。一方、ステップS18でその曲の再生回数が所定回数に達していることが確認されないとき、またはステップS20でその曲がお気に入り指定曲であることが検知されたときは直接ステップS28に移行する。また、ステップS10で次曲タイミングの到来が検知されないときも、直接ステップS28に移行する。
【0045】
ステップS28では、お気に入り指定または解除の操作が行われたかどうかチェックする。そしてこれらの操作が確認されたときはステップS30に進み、再生中または次曲が始まる前の再生終了曲についてお気に入り指定または解除を行うことによりその曲のお気に入り指定を変更してステップS32に移行する。一方、ステップS28でお気に入り指定/解除操作が検知されなかったときは直ちにステップS32に移行する。ステップS32では電源オフ操作の有無をチェックし、電源オフ操作が検知されない時はステップS4に戻り、以下、ステップS4からステップS32を繰り返して、再生グループ内からの次曲の出力、新曲の再生グループへの加入、再生グループの曲入換え等を行う。一方、ステップS32で電源オフが検知されるとフローを終了する。これによってオルゴール曲の再生も停止する。
【0046】
図4は、図3のステップS2における初期立上/設定処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートするとステップS42でメリーゴーランドの初期立上各機能の点検を行いステップS44に移行する。ステップS44では所定時間(上記のように、例えば3秒)が経過したかどうかチェックし、経過がなければステップS46に進んで電源オン以外の何らかの操作があったかどうかチェックする。そして検知がなければステップS44に戻り、以下ステップS42からステップS46を繰り返して、所定時間の経過または操作を待つ。
【0047】
ステップS46で所定時間内の操作が検知されるとステップS48に進み、操作が新曲重み付け等の設定操作であるかどうかチェックする。そして該当すればステップS50で新曲に対応付けられる乱数の重み変更設定の処理を行う。ここで再生グループ内の曲と乱数の対応および重みづけについて述べると、例えば再生グループ内に重み均等の5曲があり、乱数が2桁であったときは、例えば一曲目に00から19、2曲目に20から29等の20個づつの番号がそれぞれ割り当てられ、00から99までの数のいずれかが乱数記憶部から一つずつ取り込まれて該当する数値の割り当てられた曲のデータが出力されるようになっている。そして例えば新曲の重みを3倍に設定した時は、新曲に00から42の43個の番号、旧曲には、1曲目に43から56、2曲目に57から70、3曲目に71から84のそれぞれ14個の番号、4曲目に85から99までの15個の番号を割りあて、新曲が他の旧4曲のほぼ3倍の確率で指定されるようにする。なお、各曲への番号の割当は再生グループの入換えがあるたびに番号の総数は維持しながら一曲ずつシフトさせることにより同一曲に常に同一番号が割り当てられることを防止する。ステップS50は、上記のような新曲への再生頻度の重み付けを操作部44の操作に基づいて予め変更設定しておくための処理である。
【0048】
さらにステップS52では、新曲に対する再生回数重み変更処理を行う。例えば、再生グループ入換えのための所定回数の標準を300回とすると、新曲の再生回数重みを3倍に設定したときは再生グループ入換えのための所定回数は900回となる。これによって新曲は他の曲の3倍の回数だけ再生されるまでは、再生グループから排除して他の曲と入れ換えられることはなくなり、新曲が再生される機会が延長される。ステップS52は、上記のような新曲への再生期間への重み付けを操作部44の操作に基づいて予め変更設定しておくための処理である。ステップS50およびステップS52における設定操作が完了するとステップS54に移行する。一方ステップS48で操作が新曲重み付け等の設定操作であることが検知されないときは直接ステップS54に移行する。
【0049】
ステップS54では、ステップS46で検知された操作が、あやしテンポ統一設定かどうかのチェックを行う。実施例では、再生グループ内の曲が乱数の指定に従って順次再生されていくが、通常は過度の単調さを避けるため再生グループに入る曲のテンポや拍子には特に条件はつけられない。この結果、4拍子のアンダンテの曲のあとにワルツの曲が続いたりする。また各曲はそれぞれ1分未満の短いオルゴール曲にまとめられている。ここで、乳児を抱いてオルゴール曲にあわせて体を揺すりながらあやしたり寝かしつけたりする場面を考えると、1分そこそこで次々と曲のテンポや拍子がめまぐるしく変わるよりは、比較的まとまった時間、同じテンポのオルゴール曲が続くことが望ましい。あやし用テンポ統一設定はこのような場合に行う設定である。
【0050】
ステップS54であやし用テンポ統一設定が検知されるとステップS56に進み、まず、その時点の通常再生グループのデータをコピーして退避させる。次いでステップS68で再生グループの中から調整不適テンポの曲を排除して他の曲に近いテンポの曲への入換えが行われる。例えばアンダンテの曲が多ければ、アレグレットの曲が排除され、他のアンダンテの曲と入れ換えられる。アレグレットの曲をアンダンテに間延びさせると曲に違和感が生じるからである。さらにステップS60では、再生グループの中からテンポ調整に不適な拍子の曲の入れ換えが行われる。例えば、他の曲が比較的ゆるやかな3拍子であったときに6/8拍子の曲があると、これを2拍子系にして1拍の早さを揃えると拍子感に違和感が生じるし、かといって3拍子二つに間延びさせて1拍の早さを揃えると曲に違和感が生じる。ステップS60では、例えば上記のような場合において、6/8拍子の曲を排除して3拍子の曲と入れ換える。そしてステップS62において以上のような入れ換えにより拍子間およびテンポの似通ったものが揃えられた再生グループ内の曲についてそれらのテンポをすべて同じものに統一するため曲データにおけるタイミングデータに修正を加えてステップS64に移行する。以上によってあやし用テンポ統一設定を行ったときは再生グループ内の曲が同じテンポで違和感なく次々に再生されることになる。
【0051】
一方、ステップS54であやし用テンポ統一設定がなされていないことが確認された時はステップS66に進み、通常の再生グループを採用してステップS64に移行する。以前にあやし用テンポ統一設定がなされており今回これが解除されたことが検知された場合に該当するときは、ステップS56で退避させておいた通常再生グループを呼出して復活させる。
【0052】
ステップS64では、ステップS46で検知された操作が、新曲入力操作かどうかチェックする。そして新曲入力操作であればステップS68に移行して新曲入力処理を行い、これが完了すればフローを終了する。これによって図3のステップS4からの再生機能に移行する。一方、ステップS64で新曲入力操作が検知されなかったときは、直ちにフローを終了する。さらに、ステップS44で所定時間の経過が確認されたときも直ちにフローを終了する。
【0053】
なお、図4のフローにおいて、ステップS56からステップS62では複数曲についてテンポを統一する処理を示したが、最も単純には、ステップS54であやし用テンポ統一設定が行われたときに、ステップS56からステップS62に代え、再生グループの中からあやし用に最も適切な比較的緩やかな曲を一曲選定して、その選定された同一曲を繰り返すように構成することも可能である。
【0054】
図5は、図2のオルゴール音信号発生部における信号発生制御部88によって実行される機能に関するフローチャートであり、メリー制御部の機能がスタートすることにより連携してスタートする。フローがスタートするとステップS72において、1/fゆらぎデータを1/fゆらぎデータ記憶部22から1/fゆらぎデータレジスタ66に取り込む。次いでステップS74で乱数菊部24から乱数の一つを取り込み、ステップS76でその乱数に基づいて1/fゆらぎデータレジスタにおける先頭アドレスを決定する。
【0055】
次いで、ステップS78では、1/fゆらぎデータレジスタ66のデータに基づいて1/fゆらぎ減衰修正部80により減衰データ保持部76の減衰データを修正させて減衰に1/fゆらぎがかかるようにする。さらに、ステップS80では、1/fゆらぎデータレジスタ66のデータに基づく1/fゆらぎ信号発生部からの1/fゆらぎが信号の発生開始を指示し、1/fゆらぎ音量修正部84を通過する音信号の音量に1/fゆらぎがかかるようにしてステップS82に移行する。
【0056】
ステップS82では、基本シーケンサ56にメリー制御部8から曲データが入力されたかどうかチェックし、入力があればステップS84に進んで、基本シーケンサ56からの音高・タイミング信号に基づく撥音タイミングかどうかチェックする。そして撥音タイミングであればステップS86に進み、そのタイミングに同期して1/fゆらぎデータ順次出力部66から1/fゆらぎデータを一つ取り込み、ステップS88に進む。ステップS88では、取り込まれた1/fゆらぎデータに基づいて1/fゆらぎタイミング遅延部58が基本シーケンサ56からの音高・タイミング信号における撥音タイミングに1/fゆらぎ遅延をかけてステップS90に移行する。
【0057】
ステップS90では、リタルダント中かどうかチェックし、該当しなければステップS92でルバート中どうかチェックしていずれにも該当しなければステップS94に至る。なお、リタルダント中かどうかまたはルバート中かどうかは、修飾シーケンサに入力された音高・タイミング信号にリタルダント開始信号やルバート開始信号が含まれているかどうかまたは後述のようにリタルダントやルバートの開始時に立てられるフラグがあるかどうかにより判断される。ステップS94では、ステップS88によりタイミングに1/fゆらぎがかけられた基本シーケンサ56からの音高・タイミング信号に基づいて所定の音高での撥音を修飾シーケンサ60から音源データ保持部74に指示させてステップS100に移行する。一方、ステップS90でリタルダント中であることが確認されるとステップS96のリタルダント修飾処理に入り、ステップS88でかけられた1/fゆらぎ遅延にさらにリタルダント遅延をかけてステップS94に移行する。また、ステップS92でルバート中であることが確認されるとステップS98のルバート修飾処理に入り、ステップS88でかけられた1/fゆらぎ遅延にさらにルバートをかけてステップS94に移行する。リタルダント修飾処理およびルバート修飾処理の詳細は後述する。
【0058】
ステップS100では、ステップS94で指示されたのが曲末尾の音高・タイミング信号のタイミングかどうかチェックし、曲末尾でなければステップS84に戻る。また、ステップS84で撥音タイミングが検知されなかった時は直接ステップS100に至り、このときも曲末尾でなければステップS84に戻る。以下、曲末尾タイミングが検知されない限り、ステップS84からステップS100を繰り返して、次の撥音タイミングを待つとともに撥音タイミングが到来すればステップS86からステップS92および必要に応じステップS96またはステップS98の処理を経てステップS94の撥音指示を行い、曲の再生を一音ずつ(重音や和音にあっては同一タイミングの一群ずつ)実行していく。
【0059】
ステップS100で曲末尾であることが検知されるとステップS102に進み、メリー制御部が停止したかどうかチェックする。そしてメリー制御部が動作中であればステップS82に戻る。また、ステップS82で曲データの入力が検知されなかった時は直接ステップS102に至り、このときもメリー制御部が動作中であればステップS82に戻る。以下、メリー制御部の停止が検知されない限りステップS82からステップS102を繰り返して、曲の再生を次々に実行していく。なお、ステップS100で曲末尾が検知された時は再生を終了した曲データは全て削除され、このときリタルダントやルバートの際に立てられたフラグも削除される。
【0060】
図6は、図5のステップS96におけるリタルダント修飾処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS112でリタルダントが既に開始されているかどうかチェックする。リタルダントが開始中でなければリタルダント開始信号が検知された場合なのでステップS114に進み、リタルダントデータ部70から単位リタルダントデータを取得するとともにリタルダントフラグを立てる。次いで、ステップS116で初回の遅延時間を単位リタルダントデータに基づいたものに設定するとともに、ステップS118では1/fゆらぎデータ順次出力部66から1/fゆらぎデータを一つ取り込んでさらに1/fゆらぎ遅延がかかるようにする。以上の処理に基づいて、ステップS124では1/fゆらぎがかかったリタルダントタイミング信号を出力するとともにステップS126で経過拍数を一つインクリメントしてフローを終了する。ステップS124で出力されたタイミング信号に基づき、図5のステップS94ではリタルダント時の所定音高発音指示を行う。
【0061】
一方、ステップS122で既にリタルダントが開始中であることが検知されたときはリタルダントフラグを検知した場合なのでステップS120に進み、リタルダントが開始されてから経過した拍数を読み取る。そしてステップS122で、遅延を単位リタルダントデータに経過拍数を掛けたものに設定してステップS118に以降する。以下遅延時間が異なるだけで初回の遅延の場合と同様にしてステップS118以下の処理が実行される。以上のようにして一つの撥音タイミングに関して図6のフローが実行されるたびに遅延が増加し、リタルダントが実現する。
【0062】
図7は、図5のステップS98におけるルバート修飾処理の詳細を示すフローチャートである。フローがスタートすると、ステップS132でルバートが既に開始されているかどうかチェックする。ルバートが開始中でなければルバート開始信号が検知された場合なのでステップS134に進み、ルバートデータ部72からリタルダントデータを取得するとともにルバートフラグを立てる。さらにステップS136でルバートをかける基準拍を決定してステップS138に移行する。なお、基準拍は通常、ルバートをかける一つ前の拍として決定される。一方、ステップS132で既にルバートが開始中であることが検知されたときはルバートフラグを検知した場合なので直接ステップS138に移行する。
【0063】
ステップS138では、基準拍から経過した拍数を読み取る。そしてステップS140では読み取った拍に該当するルバートデータを一つ読み出してステップS142に移行する。ステップS142では、ルバートデータがタイミングを伸長するものであるかどうかチェックし、該当すればステップS144に進んで拍のオンタイムのタイミングからデータに基づく量の遅延がかかるようにしてステップS146に移行する。一方、ステップS142でルバートデータが伸長でなければ直接ステップS146に移行する。ステップS146では、ルバートデータがタイミングを短縮するものであるかどうかチェックし、該当すればステップS148に進んで一拍前のオンタイムのタイミングからデータに基づく量のタイミングの前倒しが行われるようにしてステップS150に移行する。
【0064】
これに対し、ステップSステップS142でルバートデータが短縮でなかったときは伸長でも短縮でもなかったことを意味し、前のタイミングで伸長または短縮されたタイミングと取り戻すオンタイムの撥音タイミングが要求されていることを意味するので直接ステップS150に移行する。つまりこの場合はルバート中ではあるが、タイミングの伸長も短縮も行わず修飾シーケンサに入力されたとおりのタイミングでの撥音が基本となる。
【0065】
ステップS150では1/fゆらぎデータ順次出力部66から1/fゆらぎデータを一つ取り込んでさらに1/fゆらぎ遅延がかかるようにする。以上の処理に基づいて、ステップS152では1/fゆらぎがかかったルバートタイミング信号を出力するとともに、ステップS154で経過拍数を一つインクリメントする。さらにステップS156ではインクリメントした結果の経過拍が所定数に達したかどうかチェックする。この所定数は上記の基準拍からルバートを終了する拍までの拍数に該当するので、ステップS156で経過拍が所定数に達したことが検知されるとステップS158でルバートフラグを削除したフローを終了する。一方、ステップS156で経過拍が所定数に達したことが検知されない場合は直ちにフローを終了する。以上のようにして一つの撥音タイミングに関して図7のフローが実行されるたびそのタイミングでのルバートが実現し、所定期間のルバートが実現する。
【0066】
なお、リタルダント修飾処理は曲末尾の単純増加の遅延なので図6のように単位リタルダントデータに基づく簡単化した処理を行う構成としたが、リタルダント修飾処理においても図7のルバート修飾処理と同様、毎回の撥音タイミングで該当するリタルダントデータを読み出し、これに従って遅延時間を決めるよう構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば乳児用のメリーゴーランドに用いられる電子オルゴールなどに適用できる。
【符号の説明】
【0068】
26 曲データ記憶部
24 乱数記憶部
8 制御部
58、62、64 タイミング修正部
54 音信号発生部
22 1/fゆらぎデータ記憶部
58、62、64、66、68、80 1/fゆらぎ付与部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数曲を記憶する曲データ記憶部と、乱数を記憶する乱数記憶部と、前記乱数記憶部に記憶される乱数に基づいて前記前記曲データ記憶部の曲の再生順を自動的に決定する制御部とを有することを特徴とする電子オルゴール。
【請求項2】
前記曲データ記憶部には音高およびタイミングを示す曲信号が記憶されているとともに、前記曲信号のタイミングを修正するタイミング修正部と、前記タイミング修正部によって修正された曲信号のタイミングにおいて前記曲信号の音高にて音信号を発生する音信号発生部とを有することを特徴とする請求項1記載の電子オルゴール。
【請求項3】
前記制御部は、前記曲データ記憶部に記憶される曲の中から再生の対象となる再生グループを選定するとともに、前記乱数記憶部に記憶される乱数に基づいて前記再生グループ内の曲について再生順を自動的に決定することを特徴とする請求項1または2記載の電子オルゴール。
【請求項4】
前記制御部は、前記曲データ記憶部に記憶される曲の中から再生の対象となる再生グループを構成するとともに、前記乱数記憶部に記憶される乱数に基づいて前記再生グループに加入する曲を自動選定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子オルゴール。
【請求項5】
前記制御部は、前記曲データ記憶部に記憶される曲の中から再生の対象となる再生グループを選定するとともに、前記乱数記憶部に記憶される乱数に基づいて前記再生グループ内の曲の自動入れ換えを行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子オルゴール。
【請求項6】
前記制御部は、前記曲データ記憶部に記憶される曲の中から再生の対象となる再生グループを選定するとともに、再生回数に基づいて前記再生グループ内の曲の自動入れ換えを行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電子オルゴール。
【請求項7】
複数曲を記憶する曲データ記憶部と、前記曲データ記憶部に記憶される曲の中から再生の対象となる再生グループを選定するとともに再生回数に基づいて前記再生グループ内の曲の自動入れ換えを行う制御部とを有することを特徴とする電子オルゴール。
【請求項8】
前記制御部は、曲に応じ前記再生グループ内の曲の自動入れ換え条件に差を設けること特徴とする請求項7記載の電子オルゴール。
【請求項9】
前記自動入れ換え条件は前記曲データ記憶部への新規加入曲かどうかであること特徴とする請求項8記載の電子オルゴール。
【請求項10】
前記自動入れ換え条件は曲のテンポであることを特徴とする請求項8または9記載の電子オルゴール。
【請求項11】
前記自動入れ換え条件は曲の拍子であることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の電子オルゴール。
【請求項12】
複数曲を記憶する曲データ記憶部と、前記曲データ記憶部に記憶される曲の再生に条件をつける制御部とを有することを特徴とする電子オルゴール。
【請求項13】
前記曲の再生条件は曲のテンポであることを特徴とする請求項12記載の電子オルゴール。
【請求項14】
前記曲の再生条件は曲の拍子であることを特徴とする請求項12または13記載の電子オルゴール。
【請求項15】
前記曲の再生条件は同一曲の繰り返しであることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の電子オルゴール。
【請求項16】
複数曲を記憶する曲データ記憶部と、前記曲データ記憶部に記憶される異なった曲を連続して再生する際そのテンポが同一になるよう修正する制御部とを有することを特徴とする電子オルゴール。
【請求項17】
前記制御部は前記テンポの修正に先立って対象曲を限定することを特徴とする請求項16記載の電子オルゴール。
【請求項18】
前記限定は曲のテンポに基づいて行われることを特徴とする請求項17記載の電子オルゴール。
【請求項19】
前記限定は曲の拍子に基づいて行われることを特徴とする請求項17または18記載の電子オルゴール。
【請求項20】
テンポの近似する複数曲を記憶する曲データ記憶部と、前記曲データ記憶部に記憶される曲を順次再生する制御部とを有することを特徴とする電子オルゴール。
【請求項21】
前記制御部は前記曲データ記憶部の曲の再生順をランダムに自動決定することを特徴とする請求項20記載の電子オルゴール。
【請求項22】
音高およびタイミングを示す曲信号を記憶する曲データ記憶部と、前記曲信号のタイミングを修正するタイミング修正部と、前記タイミング修正部によって修正された曲信号のタイミングにおいて前記曲信号の音高にて音信号を発生する音信号発生部とを有することを特徴とする電子オルゴール。
【請求項23】
前記タイミング修正部は、タイミングにリタルダントをかけることを特徴とする請求項22記載の電子オルゴール。
【請求項24】
前記タイミング修正部は、タイミングにルバートをかけることを特徴とする請求項22または23記載の電子オルゴール。
【請求項25】
前記タイミング修正部は、タイミングに1/fゆらぎをかけることを特徴とする請求項22から24のいずれかに記載の電子オルゴール。
【請求項26】
音高およびタイミングを示す曲信号を記憶する曲データ記憶部と、1/fゆらぎデータを記憶する1/fゆらぎデータ記憶部と、前記1/fゆらぎデータ記憶部の1/fゆらぎデータに基づき前記曲信号のタイミングに1/fゆらぎをかける1/fゆらぎ付与部と、前記1/fゆらぎ付与部によって1/fゆらぎがかけられた曲信号のタイミングにおいて前記曲信号の音高にて音信号を発生する音信号発生部とを有することを特徴とする電子オルゴール。
【請求項27】
乱数を記憶する乱数記憶部を有し、前記1/fゆらぎ付与部は、前記1/fゆらぎデータ記憶部の1/fゆらぎデータおよび前記乱数記憶部の乱数に基づき前記曲信号のタイミングに1/fゆらぎをかけることを特徴とする請求項26記載の電子オルゴール。
【請求項28】
前記1/fゆらぎ付与部は、前記乱数記憶部の乱数に基づき前記1/fゆらぎデータ記憶部の1/fゆらぎデータの開始点を決定することを特徴とする請求項27記載の電子オルゴール。
【請求項29】
音高およびタイミングを示す曲信号を記憶する曲データ記憶部と、前記曲信号のタイミングにおいて減衰音信号を発生する音信号発生部とを有することを特徴とする電子オルゴール。
【請求項30】
前記減衰音信号に1/fゆらぎをかける1/fゆらぎ付与部を有することを特徴とする請求項29記載の電子オルゴール。
【請求項31】
曲信号を記憶する曲データ記憶部と、1/fゆらぎデータを記憶する1/fゆらぎデータ記憶部と、乱数を記憶する乱数記憶部と、前記1/fゆらぎデータ記憶部の1/fゆらぎデータおよび前記乱数記憶部の乱数に基づき前記曲信号の再生に1/fゆらぎをかける1/fゆらぎ付与部とを有することを特徴とする電子オルゴール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−227212(P2011−227212A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95553(P2010−95553)
【出願日】平成22年4月17日(2010.4.17)
【出願人】(508278745)NL技研株式会社 (21)
【出願人】(706000296)
【Fターム(参考)】