説明

電子デバイスおよびその製造方法、並びに、上記電子デバイスを備えた照明装置およびセンサーシステム

【課題】ナノワイヤセンサーの出力が微弱であっても高速で動作可能である。
【解決手段】非常に微細なナノワイヤ素子からなるナノワイヤセンサー素子4を含むナノワイヤセンサーの出力を、非常に微細なナノワイヤ素子からなるナノワイヤ増幅素子5およびナノワイヤ抵抗素子6,7を含むナノワイヤ回路で直接受ける。こうして、出力を増幅するためのナノワイヤ増幅素子5やナノワイヤセンサー素子4からナノワイヤ増幅素子5までの配線12が持つ寄生容量を非常に小さくして、出力が微弱なナノワイヤセンサー素子4を備えていても、電子デバイス1を高速に動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、微細なセンサー素子と微細な素子からなる回路とを含む電子デバイスおよびその製造方法、並びに、上記電子デバイスを備えた照明装置およびセンサーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノワイヤを機能化して種々のセンサーとして応用する技術が提案されている。このような技術として、特開2009‐42232号公報(特許文献1)に開示されたナノセンサがある。このナノセンサは、表面が選択的に官能基化されたナノチューブおよびナノワイヤによって、タンパク質,核酸,炭水化物,脂質およびステロイド等の検体を検出する。このようなナノワイヤによるナノセンサーであるナノワイヤセンサーは、そのサイズの小ささのために極微小な領域に設置することが可能であり、さらには、ごく少量のサンプルからの検体の検出が可能であり、高い検出感度が得られると期待されている。
【0003】
しかしながら、上記従来ナノセンサーには以下のような問題がある。
【0004】
すなわち、上記ナノワイヤセンサー等の微細なセンサーからの出力は、そのサイズの小ささの故に、一般的には非常に微弱である。そのため、上記微細なセンサーからの出力を増幅するための増幅素子やナノワイヤセンサーから増幅素子までの配線が有する寄生容量によって、著しく動作速度が遅くなるという問題がある。
【0005】
さらには、動作速度や精度を確保するために、出力の増幅装置として高性能で非常に高価なものを使わざるを得ないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009‐42232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明の第1の課題は、ナノワイヤセンサーが有する非常に小さいという利点を生かしつつ、上記ナノワイヤセンサーからの出力が微弱であっても高速で動作し、且つ低コストな電子デバイス、および、その製造方法を提供することにある。
【0008】
また、第2の課題は、上記電子デバイスを備えた照明装置およびセンサーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明の電子デバイスは、
ナノワイヤで構成されると共に、周囲環境の状態を検知して検知信号を出力するナノワイヤセンサー素子と、
ナノワイヤ素子で構成されると共に、上記ナノワイヤセンサー素子からの上記検知信号が直接入力されて、上記検知信号に応答して増幅,スイッチングあるいは演算を含む動作を行うナノワイヤ回路と
を備えたことを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、非常に微細なナノワイヤで構成された非常に微細なナノワイヤセンサー素子から出力される検知信号を、非常に微細なナノワイヤ素子で構成されたナノワイヤ回路に直接入力するようにしている。したがって、上記検知信号に応答して増幅,スイッチングあるいは演算を含む動作行うための上記ナノワイヤ素子が有する寄生容量や、上記ナノワイヤセンサー素子から上記ナノワイヤ素子までの間の配線が有する寄生容量を、非常に小さくすることができる。したがって、例え、上記ナノワイヤセンサー素子が、出力する検知信号が微弱なナノワイヤセンサー素子であっても、当該電子デバイスを高速に動作させることができる。
【0011】
さらに、当該電子デバイスの動作速度や当該電子デバイスの精度を確保するために、上記ナノワイヤセンサー素子から出力される上記検知信号の増幅装置として、高性能で非常に高価な増幅装置を用いる必要がない。したがって、低コストの電子デバイスを提供することができる。
【0012】
また、1実施の形態の電子デバイスでは、
上記ナノワイヤ回路を構成するナノワイヤ素子であるナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子および上記ナノワイヤセンサー素子は、同一の基板上に配置されている。
【0013】
この実施の形態によれば、微細な上記ナノワイヤセンサー素子と上記ナノワイヤ回路を構成する微細なナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子とを微細な領域に配置することが可能になるので、電子デバイスを更に微細化することが可能になる。
【0014】
また、1実施の形態の電子デバイスでは、
上記ナノワイヤセンサー素子は、第1導電型の半導体と第2導電型の半導体とが接合された半導体素子である。
【0015】
上記ナノワイヤセンサー素子から出力される上記検知信号のダイナミックレンジを大きくすることができるので好ましい。特に、上記ナノワイヤセンサー素子がナノワイヤ受光素子である場合に暗電流を極めて小さくすることができ、当該電子デバイスを低消費電力化することが可能になる。
【0016】
また、1実施の形態の電子デバイスでは、
上記ナノワイヤ回路は、上記ナノワイヤセンサー素子から直接入力された上記検知信号の増幅動作を行う。
【0017】
この実施の形態によれば、上記ナノワイヤセンサー素子の周囲環境の状態を表す環境値を、定量的に測定することができる。
【0018】
また、1実施の形態の電子デバイスでは、
上記ナノワイヤ回路は、上記ナノワイヤセンサー素子から直接入力された上記検知信号が予め設定された設定値を超えると第1の出力状態となる一方、上記設定値以下になると上記第1の出力状態とは異なる第2の出力状態となるスイッチング動作を行う。
【0019】
この実施の形態によれば、上記ナノワイヤセンサー素子の周囲環境の状態を表す環境値が閾値を超えたか否かに応じて、スイッチング動作を行うことができる。
【0020】
また、1実施の形態の電子デバイスでは、
上記ナノワイヤセンサー素子は、周囲の明るさに応じた検知信号を出力するナノワイヤ受光素子である。
【0021】
この実施の形態によれば、非常に微小な領域や非常に微小な空間における明るさを検知することができる。
【0022】
また、1実施の形態の電子デバイスでは、
ナノワイヤで構成されると共に、光を放出するナノワイヤ発光素子を備えて、
上記ナノワイヤ回路は、上記ナノワイヤセンサー素子からの周囲の明るさに応じた検知信号に基づいて、上記ナノワイヤ発光素子の駆動動作を行う。
【0023】
この実施の形態によれば、上記ナノワイヤセンサー素子の周囲の明るさに応じてナノワイヤ発光素子を制御することが可能になる。さらに、受光素子として機能する上記ナノワイヤセンサー素子を非常に微小な空間に設置できるので、上記受光素子の設置場所の自由度を大きくして応用範囲を広くできる。さらには、設置場所の自由度が大きい受光素子付きのナノワイヤ発光素子を備えた電子デバイスを、低コストで提供することができる。
【0024】
また、1実施の形態の電子デバイスでは、
複数の上記ナノワイヤ発光素子が配列されて照明デバイスを構成している。
【0025】
この実施の形態によれば、受光素子として機能する上記ナノワイヤセンサー素子および照明デバイスを構成する上記ナノワイヤ発光素子を非常に微小な空間に設置できるので、上記受光素子付き照明デバイスの設置場所の自由度を広くすることができる。さらには、設置場所の自由度が大きい受光素子付きの照明デバイスを備えた電子デバイスを、低コストで提供することができる。
【0026】
また、1実施の形態の電子デバイスでは、
上記ナノワイヤセンサー素子は、上記ナノワイヤ発光素子が放出する光を受光するように配置されており、
上記ナノワイヤ回路は、上記ナノワイヤセンサー素子からの上記ナノワイヤ発光素子が放出する光の明るさに応じた検知信号に基づいて、上記ナノワイヤ発光素子を制御するフィードバック動作を行う。
【0027】
この実施の形態によれば、上記ナノワイヤ発光素子の発光量を一定に制御することが可能になる。さらに、受光素子として機能する上記ナノワイヤセンサー素子を非常に微小な空間に設置できるので、上記受光素子の設置場所の自由度を大きくして応用範囲を広くできる。さらには、設置場所の自由度が大きい受光素子付きのナノワイヤ発光素子を備えた電子デバイスを、低コストで提供することができる。
【0028】
また、1実施の形態の電子デバイスでは、
上記ナノワイヤセンサー素子は、周囲環境における特定のガスの濃度に応じた検知信号を出力するナノワイヤガスセンサー素子である。
【0029】
この実施の形態によれば、小型であって周囲環境における特定のガスに対して高感度であり、且つ低コストの電子デバイスを提供することができる。
【0030】
また、1実施の形態の電子デバイスでは、
上記ナノワイヤセンサー素子は、周囲環境に存在する特定の蛋白質あるいは核酸と結合することによって変化する検知信号を出力するナノワイヤバイオセンサー素子である。
【0031】
この実施の形態によれば、小型であって周囲環境における特定の蛋白質あるいは核酸に対して高感度であり、且つ低コストの電子デバイスを提供することができる。
【0032】
また、この発明の電子デバイスの製造方法は、
上記ナノワイヤセンサー素子および上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子が配置される上記基板上に、少なくとも第1の電極対と第2の電極対とを形成する電極対形成工程と、
上記電極対が形成された上記基板上に上記ナノワイヤセンサー素子を含む液体を導入すると共に、上記第1の電極対に交流電圧を印加して、上記第1の電極対における互いに対向する2つの電極の間で規定される位置に、上記ナノワイヤセンサー素子を配置させるナノワイヤセンサー素子配置工程と、
上記電極対が形成された上記基板上に上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子を含む液体を導入すると共に、上記第2の電極対に交流電圧を印加して、上記第2の電極対における互いに対向する2つの電極の間で規定される位置に、上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子を配置させるナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子配置工程と
を含むことを特徴としている。
【0033】
上記構成によれば、微細なナノワイヤセンサー素子と微細なナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子とを、同一の基板上に高密度で配置することが可能になる。したがって、非常に微細化された電子デバイスを簡易な製造方法で提供することができる。
【0034】
また、1実施の形態の電子デバイスの製造方法では、
上記ナノワイヤセンサー素子および上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子のうちの少なくとも一方は、一端側と他端側とが夫々異なる極性を有する有極性素子であり、
上記第1の電極対と上記第2の電極対とのうち上記有極性素子が配置される電極対に印加される上記交流電圧には、直流電圧が重畳されており、
上記有極性素子が配置される電極対における互いに対向する2つの電極の間で規定される位置に配置される上記有極性素子の両端の向きが、上記電極対に印加される上記直流電圧によって定められる。
【0035】
この実施の形態によれば、上記ナノワイヤセンサー素子あるいは上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子が極性を有する有極性素子であっても、上記極性の向きを含めて正しい向きに上記有極性素子を上記基板上に配値することができる。したがって、上記有極性素子を含む複雑で高度な電子デバイスを簡易な製造方法で提供することができる。
【0036】
また、この発明の照明装置は、上記この発明の電子デバイスを備えたことを特徴としている。
【0037】
上記構成によれば、受光素子として機能する上記ナノワイヤセンサー素子、発光素子として機能する上記ナノワイヤ発光素子、および、上記ナノワイヤセンサー素子からの周囲の明るさに応じた検知信号に基づいて上記ナノワイヤ発光素子の駆動動作を行う上記ナノワイヤ回路を備えているので、周囲の明るさに応じて上記ナノワイヤ発光素子の発光強度を変化させることができる。さらには、上記受光素子,上記発光素子および上記ナノワイヤ回路の何れにもナノワイヤ素子を用いているため、当該照明装置の設置場所の自由度が飛躍的に高くなると共に、低コスト化を実現することができる。
【0038】
また、この発明のセンサーシステムは、上記この発明の電子デバイスを備えたことを特徴としている。
【0039】
上記構成によれば、周囲環境における特定のガスを検知するガスセンサー素子あるいは周囲環境における特定の蛋白質や核酸を検知するバイオセンサー素子として機能する上記ナノワイヤセンサー素子、および、上記ナノワイヤセンサー素子からの検知信号に基づいて増幅,スイッチングあるいは演算を含む動作を行う上記ナノワイヤ回路を備えているので、周囲環境における特定のガスや蛋白質や核酸の把握が可能である。さらに、上記ガスセンサー素子あるいは上記バイオセンサー素子と上記ナノワイヤ回路との何れにもナノワイヤ素子を用いているので、当該センサーシステムの設置場所の自由度が飛躍的に高くなると共に、低コスト化を実現することができる。
【発明の効果】
【0040】
以上より明らかなように、この発明の電子デバイスは、非常に微細なナノワイヤで構成された非常に微細なナノワイヤセンサー素子から出力される検知信号を、非常に微細なナノワイヤ素子で構成されたナノワイヤ回路に直接入力するので、上記検知信号に応答して増幅,スイッチングあるいは演算を含む動作行うための上記ナノワイヤ素子が有する寄生容量や、上記ナノワイヤセンサー素子から上記ナノワイヤ素子までの間の配線が有する寄生容量を、非常に小さくすることができる。したがって、例え、上記ナノワイヤセンサー素子が、出力する検知信号が微弱なナノワイヤセンサー素子であっても、当該電子デバイスを高速に動作させることができる。
【0041】
さらに、当該電子デバイスの動作速度や当該電子デバイスの精度を確保するために、上記ナノワイヤセンサー素子から出力される微弱な上記検知信号の増幅装置として、高性能で非常に高価な増幅装置を用いる必要がない。したがって、低コストの電子デバイスを提供することができる。
【0042】
また、この発明の電子デバイスの製造方法は、電極対が形成された基板上に上記ナノワイヤセンサー素子を含む液体を導入すると共に、第1の電極対に交流電圧を印加して、上記ナノワイヤセンサー素子を配置させる一方、上記基板上に上記ナノワイヤ回路を構成するナノワイヤ素子であるナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子を含む液体を導入すると共に、第2の電極対に交流電圧を印加して、上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子を配置させるので、上記ナノワイヤセンサー素子と上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子とを、簡易に且つ極めて接近した位置に配置することができる。
【0043】
したがって、微細な上記ナノワイヤセンサー素子と微細な上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子とを同一の基板上に高密度で配置することを可能にし、非常に微細化された電子デバイスを簡易な製造方法で提供することができる。
【0044】
また、この発明の照明装置は、受光素子として機能するナノワイヤセンサー素子、発光素子として機能するナノワイヤ発光素子、および、上記ナノワイヤセンサー素子からの周囲の明るさに応じた検知信号に基づいて上記ナノワイヤ発光素子の駆動動作を行うナノワイヤ回路を備えているので、周囲の明るさに応じて上記ナノワイヤ発光素子の発光強度を変化させることができる。さらには、上記受光素子,上記発光素子および上記ナノワイヤ回路の何れにもナノワイヤ素子を用いているため、当該照明装置の設置場所の自由度が飛躍的に高くなると共に、低コスト化を実現することができる。
【0045】
また、この発明のセンサーシステムは、周囲環境における特定のガスを検知するガスセンサー素子あるいは周囲環境における特定の蛋白質や核酸を検知するバイオセンサー素子として機能するナノワイヤセンサー素子、および、上記ナノワイヤセンサー素子からの検知信号に基づいて増幅,スイッチングあるいは演算を含む動作を行うナノワイヤ回路を備えているので、周囲環境における特定のガスや蛋白質や核酸の把握が可能である。さらには、上記ガスセンサー素子あるいは上記バイオセンサー素子と上記ナノワイヤ回路との何れにもナノワイヤ素子を用いているため、当該センサーシステムの設置場所の自由度が飛躍的に高くなると共に、低コスト化が実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の第1実施の形態の電子デバイスにおける回路図である。
【図2】図1に示す電子デバイスにおける概略平面図である。
【図3】図2におけるナノワイヤセンサー素子の構造を示す概略図である。
【図4】図2におけるナノワイヤ増幅素子の構造を示す概略図である。
【図5】図2におけるナノワイヤ抵抗素子の構造を示す概略図である。
【図6】第2実施の形態の電子デバイスにおける回路図である。
【図7】図6に示す電子デバイスにおける概略平面図である。
【図8】図7におけるナノワイヤセンサー素子の構造を示す概略図である。
【図9】図7におけるナノワイヤ増幅素子の構造を示す概略図である。
【図10】第3実施の形態の電子デバイスにおける回路図である。
【図11】図10におけるナノワイヤ増幅素子の構造を示す概略図である。
【図12】図10におけるナノワイヤ発光素子の構造を示す概略図である。
【図13】第4実施の形態の電子デバイスにおける回路図である。
【図14】第5実施の形態の電子デバイスにおける回路図である。
【図15】図14におけるナノワイヤセンサー素子の構造を示す概略図である。
【図16】第6実施の形態の電子デバイスにおける回路図である。
【図17】図16におけるナノワイヤセンサー素子の構造を示す概略図である。
【図18】ナノワイヤセンサー素子(フォトダイオード)の形成手順を示す図である。
【図19】図18に続く形成手順を示す図である。
【図20】図19に続く形成手順を示す図である。
【図21】図20に続く形成手順を示す図である。
【図22】図21に続く形成手順を示す図である。
【図23】図22に続く形成手順を示す図である。
【図24】図23に続く形成手順を示す図である。
【図25】図24に続く形成手順を示す図である。
【図26】ナノワイヤ増幅素子(電界効果トランジスタ)の形成手順を示す図である。
【図27】図26に続く形成手順を示す図である。
【図28】図27に続く形成手順を示す図である。
【図29】ナノワイヤ発光素子(発光ダイオード)の形成手順を示す図である。
【図30】図29に続く形成手順を示す図である。
【図31】図30に続く形成手順を示す図である。
【図32】図31に続く形成手順を示す図である。
【図33】図32に続く形成手順を示す図である。
【図34】図2に示す電子デバイスの形成手順を示す図である。
【図35】図34に続く形成手順を示す図である。
【図36】図35に続く形成手順を示す図である。
【図37】図36に続く形成手順を示す図である。
【図38】図37に続く形成手順を示す図である。
【図39】図38に続く形成手順を示す図である。
【図40】図39に続く形成手順を示す図である。
【図41】この発明の照明装置におけるブロック図である。
【図42】この発明のセンサーシステムにおけるブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0048】
先ず、この発明に用いられるナノワイヤセンサーおよびナノワイヤ回路について簡単に説明する。
【0049】
上記ナノワイヤセンサーは、所謂ナノワイヤをベースとしてデバイス化されたものである。その直径はナノサイズであり、例えば1nm〜1μmである。これに対して、その長さは、通常は直径よりもはるかに大きく10nm〜50μmであり、マイクロメートルサイズであってもよい。より好ましくは、直径が10nm以上500nm以下、長さが100nm以上50μm以下である。
【0050】
しかしながら、この発明に用いられるナノワイヤセンサーは、非常に小さいセンサーであって出力が微弱であるナノワイヤセンサーであればよく。直径が10μm以下であり、長さが500μm以下であるものを含んでいる。
【0051】
ここで、この発明におけるナノワイヤ回路とは、ナノワイヤセンサーと同程度の大きさのナノワイヤ素子を用いた回路のことである。また、ナノワイヤ回路は、増幅,スイッチングおよび演算等の機能を有することができる。
【0052】
・第1実施の形態
本実施の形態の電子デバイスは、周囲の状態に応じて外部に出力を行うセンサーとしての機能を有するナノワイヤセンサーと、上記ナノワイヤセンサーからの出力を直接入力するナノワイヤ回路とを備えている。
【0053】
図1は、本実施の形態の電子デバイスの回路図である。図2は、本実施の形態の電子デバイスにおける概略平面図である。図3〜図5は、本実施の形態の電子デバイスにおけるナノワイヤセンサー素子,ナノワイヤ増幅素子およびナノワイヤ抵抗素子の構造を説明するための概略図である。
【0054】
図1に示すように、本電子デバイス1は、ナノワイヤセンサー2とナノワイヤセンサー2の出力を増幅する機能を有するナノワイヤ回路3とで構成されている。さらに、上記ナノワイヤセンサー2は、ナノワイヤセンサー素子4を含んでいる。また、ナノワイヤ回路3は、ナノワイヤ増幅素子5,ナノワイヤ抵抗素子6およびナノワイヤ抵抗素子7を含んでいる。
【0055】
上記ナノワイヤセンサー素子4,ナノワイヤ増幅素子5,ナノワイヤ抵抗素子6およびナノワイヤ抵抗素子7は、図2に示すように基板8上に横倒しで配置されている。そして、基板8上には、端子9〜端子11が形成されている。また、基板8上には配線12が形成されており、各端子9〜11と各素子との間および各素子間を電気的に接続している。
【0056】
上記ナノワイヤセンサー素子(受光素子であるフォトダイオード)4は、図3に示すように、長手方向にN型半導体領域13,I型半導体領域14およびP型半導体領域15がこの順に接続されてフォトダイオードを構成している。
【0057】
上記ナノワイヤ増幅素子(バイポーラトランジスタ)5は、図4に示すように、長手方向にコレクタとしてのN型半導体領域16、ベースとしてのP型半導体領域17、および、エミッタとしてのN型半導体領域18が、この順に接続されてバイポーラトランジスタを構成している。
【0058】
上記ナノワイヤ抵抗素子6およびナノワイヤ抵抗素子7は、図5に示すように、一様な抵抗体あるいは半導体からなるナノワイヤ19およびナノワイヤ20で構成され、抵抗を構成している。
【0059】
上記ナノワイヤセンサー素子4とナノワイヤ抵抗素子6とは、高電位が与えられる端子9と低電位が与えられる端子11との間に直列に接続されている。そして、ナノワイヤセンサー素子4の出力は、ナノワイヤ増幅素子5のP型半導体領域(ベース)17に入力される。ナノワイヤ増幅素子5とナノワイヤ抵抗素子7とは、高電位が与えられる端子9と低電位が与えられる端子11との間に直列に接続されている。そして、ナノワイヤ増幅素子5の出力は、出力端子となる端子10に伝えられる。
【0060】
本実施の形態においては、上記ナノワイヤ増幅素子5,ナノワイヤ抵抗素子6およびナノワイヤ抵抗素子7でナノワイヤ回路3を構成しており、ナノワイヤセンサー素子4で構成されるナノワイヤセンサー2の出力を増幅する機能を有している。
【0061】
上記構成において、上記ナノワイヤセンサー2の周囲が暗闇の場合、すなわち、上記ナノワイヤセンサー素子4に光が入射しない場合には、ナノワイヤセンサー素子4には電流が流れないためナノワイヤセンサー2の出力は低電位であり、端子(出力端子)10は低電位となる。一方、ナノワイヤセンサー2の周囲が明るい場合、すなわち、ナノワイヤセンサー素子4に光が入射する場合には、ナノワイヤセンサー素子4に電流が流れるためナノワイヤセンサー2の出力は明るさに応じて電位が上昇し、端子(出力端子)10の電位も上昇する。
【0062】
上記ナノワイヤ回路3は、ナノワイヤセンサー2の出力を増幅することができ、ナノワイヤセンサー2の出力に応じてスイッチング動作することもできる。そして、ナノワイヤ回路3を増幅動作させた場合には、ナノワイヤセンサー2付近の明るさを定量的に測定することができる。一方、ナノワイヤ回路3をスイッチング動作させた場合は、ナノワイヤセンサー2の付近の明るさが閾値を超えたか否かに応じてスイッチング動作を行うことができる。
【0063】
上述したように、上記ナノワイヤセンサー素子4はフォトダイオードであり、例えば、シリコン,ゲルマニウム,InGaAsおよび硫化鉛等を用いることができる。尚、材料の選択は、受光対象の光を吸収できるものから行う。ナノワイヤセンサー素子4の構造は、図3に示すように、N型半導体領域13とP型半導体領域15との間にI型半導体領域(真性領域)14を設けることが、感度が上がるため好ましい。また、N型半導体領域13とP型半導体領域15とを、I型半導体領域(真性領域)14を介さずに直接接合させて形成していても良い。
【0064】
上記ナノワイヤセンサー素子4のサイズは、例えば、直径が200nmであり、長さが10μmである。しかしながら、ナノワイヤセンサー素子4のサイズはこれに限らず、直径は1nm〜10μm、長さは10nm〜500μmとすることができる。より好ましくは、十分な受光感度が得られ、且つ通常のフォトダイオードに比べて極めて小さい、直径が10nm〜500nm、長さが100nm〜50μmである。
【0065】
上記ナノワイヤ増幅素子5は上述のごとくバイポーラトランジスタであり、例えば、シリコン,GaAs,GaN等を用いることができる。尚、ナノワイヤ増幅素子5のサイズは、ナノワイヤセンサー素子4のサイズと同程度である。また、ナノワイヤ増幅素子5の構造は、図4に示すように、長手方向にN型半導体領域(コレクタ)16,P型半導体領域(ベース)17およびN型半導体領域(エミッタ)18が、この順に接続されている。
【0066】
上記ナノワイヤ抵抗素子6は、図5に示すように、均一の材質からなるナノワイヤ19で構成される。ナノワイヤ19は、例えば、シリコン,ゲルマニウムおよびカーボンナノチューブのような半導体,酸化金属および金属を用いることができる。ここで、ナノワイヤ19の材料として半導体を選んだ場合には、導電型を与える不純物濃度を変えることによって、抵抗率を調節することができる。無論、ナノワイヤ19の直径と長さによって、適切な抵抗値を選択することも可能である。ナノワイヤ抵抗素子7は、ナノワイヤ抵抗素子6と同様の構造の抵抗値を適宜調節すればよい。
【0067】
上記ナノワイヤ抵抗素子6およびナノワイヤ抵抗素子7のサイズは、抵抗率を調節することによって、ナノワイヤセンサー素子4やナノワイヤ増幅素子5と同程度にすることができる。
【0068】
上記基板8としては、ガラスおよび樹脂等の絶縁性基板を用いることができる。あるいは、基板8として、絶縁膜をコーティングした金属や半導体を用いても良い。
【0069】
上記基板8上に形成される端子9〜端子11および配線12としては、金,銀,銅,アルミニウム,タングステンおよび導電性を与える不純物を高濃度にドープしたポリシリコンなどの半導体を用いることができる。
【0070】
本実施の形態における電子デバイス1は、非常に微細なナノワイヤ素子からなるナノワイヤセンサー素子4を含むナノワイヤセンサー2の出力を、非常に微細なナノワイヤ素子からなるナノワイヤ増幅素子5およびナノワイヤ抵抗素子6,7を含むナノワイヤ回路3で直接受けている。そのために、出力を増幅するためのナノワイヤ増幅素子5やナノワイヤセンサー素子4からナノワイヤ増幅素子5までの配線12が有する寄生容量を非常に小さくすることができる。したがって、出力が微弱なナノワイヤセンサー素子4を備えていても、電子デバイス1を高速に動作させることができる。
【0071】
さらに、動作速度や動作精度を確保するために出力の増幅を行う場合に、高性能で非常に高価な増幅装置を用いる必要がない。したがって、低コストの電子デバイス1を提供することができる。
【0072】
また、本実施の形態の電子デバイス1においては、上記ナノワイヤセンサー素子4は、周囲の明るさに応じて出力が変化するナノワイヤからなる受光素子である。このように、ナノワイヤセンサー素子4として受光素子を用いた場合には、非常に微小な領域や空間の明るさを検知することができる。
【0073】
また、本実施の形態のごとく、上記ナノワイヤセンサー2を構成するナノワイヤセンサー素子4と、ナノワイヤ回路3を構成するナノワイヤ増幅素子5およびナノワイヤ抵抗素子6,7とを、同一基板上に配置するのが好ましい。これにより、ナノワイヤセンサー2およびナノワイヤ回路3を構成する微細なナノワイヤ素子を微細な領域に配置することが可能になり、電子デバイス1をさらに微細化することが可能になる。
【0074】
また、本実施の形態のように、上記ナノワイヤセンサー素子4は、第1導電型の半導体と第2導電型の半導体との接合を有する半導体素子であることが好ましい。
【0075】
上記ナノワイヤセンサー素子4がこのような構成である場合には、ナノワイヤセンサー素子4の周囲が明るい場合と暗い場合とにナノワイヤセンサー素子4を流れる電流値の比を大きくすることができるので好ましい。すなわち、ナノワイヤセンサー素子4のダイナミックレンジを大きくすることができるのである。特に、ナノワイヤセンサー素子4の周囲が暗い場合にナノワイヤセンサー素子4を流れる電流値(暗電流)を極めて小さくすることができる。したがって、例えば、本実施の形態の電子デバイス1の場合には、微細なナノワイヤ抵抗素子6の抵抗値を高くすることができるので、電子デバイス1を低消費電力化することが可能になる。
【0076】
また、上記ナノワイヤ回路3が、上記ナノワイヤセンサー2におけるナノワイヤセンサー素子4の出力を直接入力して増幅する場合には、ナノワイヤセンサー素子4付近の明るさを定量的に測定することができる。一方、ナノワイヤ回路3が、ナノワイヤセンサー素子4の出力を直接入力してスイッチング動作する場合には、ナノワイヤセンサー素子4付近の明るさが閾値を超えたか否かに応じて(つまり、ナノワイヤセンサー素子4の出力値が予め設定された設定値を超えたか否かに応じて)、予め設定された設定電圧を超える出力電圧(第1の出力状態)と上記設定電圧以下の出力電圧(第2の出力状態)とに切り換えるスイッチング動作を行うことができる。
【0077】
・第2実施の形態
本実施の形態の電子デバイスは、上記第1実施の形態における電子デバイス1の場合と同様に、周囲の状態に応じて外部に出力を行うセンサーとしての機能を有するナノワイヤセンサー素子と、上記出力を直接入力するナノワイヤ回路とを備えている。
【0078】
図6は、本実施の形態の電子デバイスの回路図である。図7は、本実施の形態の電子デバイスにおける概略平面図である。図8および図9は、本実施の形態の電子デバイスにおけるナノワイヤセンサー素子およびナノワイヤ増幅素子の構造を説明するための概略図である。
【0079】
図6に示すように、本電子デバイス21は、ナノワイヤセンサー22と、ナノワイヤセンサー22の出力を増幅する機能を有するナノワイヤ回路23とで構成されている。さらに、ナノワイヤセンサー22は、ナノワイヤセンサー素子24を含んでいる。また、ナノワイヤ回路23は、ナノワイヤ増幅素子25,ナノワイヤ抵抗素子26およびナノワイヤ抵抗素子27を含んでいる。
【0080】
上記ナノワイヤセンサー素子24,ナノワイヤ増幅素子25,ナノワイヤ抵抗素子26およびナノワイヤ抵抗素子27は、図7に示すように、基板28上に横倒しで配置されている。そして、基板28上には、端子29〜端子31が形成されている。また、基板28上には配線32が形成されており、各端子29〜31と各素子との間および各素子間を電気的に接続している。
【0081】
上記ナノワイヤセンサー素子(受光素子であるフォトトランジスタ)24は、図8に示すように、長手方向にN型半導体領域33,P型半導体領域34およびN型半導体領域35がこの順に接続されてフォトトランジスタを構成している。
【0082】
上記ナノワイヤ増幅素子(N型の電界効果トランジスタ)25は、図9に示すように、長手方向に、ソース領域あるいはドレイン領域となるN型半導体領域36と、チャネル領域となるP型半導体領域37と、ドレイン領域あるいはソース領域となるN型半導体領域38とが、この順に接続されている。そして、チャネル領域となるP型半導体領域37は、ゲート絶縁膜となるインナーシェル39およびゲート電極となるアウターシェル40で覆われている。
【0083】
上記ナノワイヤ抵抗素子26およびナノワイヤ抵抗素子27は、一様な抵抗体あるいは半導体からなるナノワイヤ41およびナノワイヤ42で構成され、抵抗を構成している。
【0084】
上記ナノワイヤセンサー素子24とナノワイヤ抵抗素子26とは、高電位が与えられる端子29と低電位が与えられる端子31との間に直列に接続されている。そして、ナノワイヤセンサー素子24の出力は、ナノワイヤ増幅素子25のゲート電極(アウターシェル40)に入力される。さらに、ナノワイヤ増幅素子25とナノワイヤ抵抗素子27とは、高電位が与えられる端子29と低電位が与えられる端子31との間に直列に接続されている。そして、ナノワイヤ増幅素子25の出力は、端子(出力端子)30に伝えられる。
【0085】
本実施の形態においては、上記ナノワイヤ増幅素子25およびナノワイヤ抵抗素子26,27でナノワイヤ回路23を構成しており、ナノワイヤセンサー22の出力を増幅する機能を有している。
【0086】
上記構成において、上記ナノワイヤセンサー22の周囲が暗闇の場合、すなわち、ナノワイヤセンサー素子24に光が入射されない場合には、ナノワイヤセンサー素子24には電流が流れないためナノワイヤセンサー22の出力は低電位であって、出力端子30は低電位となる。一方、ナノワイヤセンサー22の周囲が明るい場合、すなわち、ナノワイヤセンサー素子24に光が入射される場合には、ナノワイヤセンサー素子24には電流が流れるためナノワイヤセンサー22の出力は明るさに応じて電位が上昇し、出力端子30の電位も上昇する。
【0087】
上記ナノワイヤセンサー素子24はフォトトランジスタであり、例えば、シリコン,ゲルマニウム,InGaAsおよび硫化鉛を用いることができる。材料の選択は、受光対象の光を吸収できるものから行う。フォトトランジスタであるナノワイヤセンサー素子24は、それ自身が増幅作用を有するため、上記第1実施の形態の場合のごとくフォトダイオードで構成した場合に比べて、遥かに感度が高いという利点を有している。
【0088】
また、上記ナノワイヤセンサー素子24のサイズは、例えば、直径が200nmであって、長さが10μmである。しかしながら、ナノワイヤセンサー素子4のサイズはこれに限らず、直径は1nm〜10μm、長さは10nm〜500μmとすることができる。より好ましくは、十分な受光感度が得られ、且つ通常のフォトダイオードに比べて極めて小さい、直径が10nm〜500nm、長さが100nm〜50μmである。
【0089】
上記ナノワイヤ増幅素子25はN型の電界効果トランジスタであり、例えば、シリコン,GaAsおよびGaNを用いることができる。また、ナノワイヤ増幅素子25のサイズは、上記ナノワイヤセンサー素子24のサイズと同程度である。
【0090】
上記ナノワイヤ抵抗素子26およびナノワイヤ抵抗素子27は、上記第1実施の形態の場合におけるナノワイヤ抵抗素子6,7と同様の構造であればよく、抵抗値を適宜調節すればよい。また、ナノワイヤ抵抗素子26,27のサイズは、抵抗率を調節することによって、上記第1実施の形態の場合におけるナノワイヤセンサー素子4やナノワイヤ増幅素子5と同程度とすることができる。
【0091】
上記基板28,端子29〜31および配線32は、夫々上記第1実施の形態の場合における基板8,端子9〜11および配線12と同様の構造であればよい。
【0092】
・第3実施の形態
本実施の形態の電子デバイスは、上記第1実施の形態における電子デバイス1の場合と同様に、周囲の状態に応じて外部に出力を行うセンサーとしての機能を有するナノワイヤセンサー素子と、上記出力を直接入力するナノワイヤ回路とを備えている。さらに、本実施の形態の電子デバイスは、ナノワイヤ発光部を備えており、上記ナノワイヤ回路は上記出力に応じて上記ナノワイヤ発光部を駆動する。
【0093】
図10は、本実施の形態の電子デバイスの回路図である。図11および図12は、本実施の形態の電子デバイスにおけるナノワイヤ増幅素子およびナノワイヤ発光素子の構造を説明するための概略図である。
【0094】
図10に示すように、本電子デバイス51は、ナノワイヤセンサー52とナノワイヤ回路53とナノワイヤ発光部54とで構成されている。さらに、上記ナノワイヤセンサー52は、ナノワイヤセンサー素子(受光素子であるフォトトランジスタ)55を含んでいる。また、ナノワイヤ回路53は、2つのナノワイヤ増幅素子(P型の電界効果トランジスタ)56およびナノワイヤ抵抗素子57を含んでいる。また、ナノワイヤ発光部54は、複数のナノワイヤ発光素子(発光ダイオード)58を含んでいる。
【0095】
上記ナノワイヤ増幅素子56は、図11に示すように、長手方向にソース領域あるいはドレイン領域となるP型半導体領域59と、チャネル領域となるN型半導体領域60と、ドレイン領域あるいはソース領域となるP型半導体領域61とが、この順に接続されている。そして、チャネル領域となるN型半導体領域60は、ゲート絶縁膜となるインナーシェル62およびゲート電極となるアウターシェル63で覆われている。
【0096】
上記ナノワイヤ発光素子(発光ダイオード)58は、図12に示すように、N型の半導体コア64をP型の半導体シェル65で囲んで構成されており、その一端ではN型の半導体コア64が露出している。
【0097】
上記ナノワイヤセンサー素子55とナノワイヤ抵抗素子57とは、電源端子(Vcc)と接地端子(GND)および出力端子66との間に直列に接続されている。そして、ナノワイヤセンサー素子55の出力は、P型電界トランジスタであるナノワイヤ増幅素子56のゲート電極(アウターシェル63)に入力される。ナノワイヤ増幅素子56のソースとドレインは、夫々電源端子(Vcc)と出力端子67に接続されている。
【0098】
本実施の形態においては、上記2つのナノワイヤ増幅素子56およびナノワイヤ抵抗素子57でナノワイヤ回路53を構成しており、ナノワイヤセンサー52の出力を反転増幅あるいはスイッチングする機能を有している。
【0099】
一方、上記ナノワイヤ発光部54を構成する複数のナノワイヤ発光素子58は、アノード(P型の半導体シェル65)が入力端子68に接続され、カソード(N型の半導体コア64)が入力端子69に接続されている。そして、ナノワイヤ発光部54の入力端子68,69は、夫々ナノワイヤ回路53の出力端子67,66に接続されている。尚、ナノワイヤ発光部54を構成するナノワイヤ発光素子58は1つであっても差し支えない。
【0100】
上記構成において、上記ナノワイヤセンサー52の周囲が暗闇の場合、すなわち、ナノワイヤセンサー素子55に光が入射しない場合には、ナノワイヤセンサー素子55には電流が流れないためナノワイヤセンサー52の出力は低電位であって、出力端子67はナノワイヤ発光素子58のオン電圧以上の高電位となる。一方、ナノワイヤセンサー52の周囲が明るい場合、すなわち、ナノワイヤセンサー素子55に光が入射する場合には、ナノワイヤセンサー素子55に電流が流れるためナノワイヤセンサー52の出力は周囲の明るさに応じて電位が上昇し、出力端子67の電位は逆に上記オン電圧を下回る電位に低下する。
【0101】
したがって、上記ナノワイヤセンサー52の周囲が暗闇の場合、あるいは、上記周囲の光量が予め設定された設定光量よりも少ないため、出力端子67の出力電位がナノワイヤ発光素子58のオン電圧以上の高電位となる場合には、ナノワイヤ発光部54のナノワイヤ発光素子58を点灯させることができる。これに対し、ナノワイヤセンサー52周囲の光量が上記設定光量以上であるため、出力端子67の出力電位がナノワイヤ発光素子58のオン電圧を下回る低電位となる場合には、ナノワイヤ発光部54のナノワイヤ発光素子58を消灯させることができる。
【0102】
尚、上記ナノワイヤ増幅素子56の数は、負荷であるナノワイヤ発光部54を十分に駆動できるよう設定する。
【0103】
また、本実施の形態においては、上記ナノワイヤセンサー素子55,ナノワイヤ増幅素子56,ナノワイヤ抵抗素子57およびナノワイヤ発光素子58は、何れも非常に微細なナノワイヤ素子で構成されているため、非常に微小な領域や空間に設置することが可能である。
【0104】
また、上記ナノワイヤ発光素子58を複数備えることによって、ナノワイヤ発光部54を照明デバイスとして機能させることができる。例えば、図12に示すような2層構造を有し、GaNからなる直径が500nmで長さが20μmのナノワイヤ発光素子58を10万本備えて、ナノワイヤ発光部54を構成した場合には、約500ルーメンで発光させることができ、小さな部屋を照らすことが可能になる。無論、微小な空間を照明する場合は、より少ないナノワイヤ発光素子58で足りる。
【0105】
ここで、上記ナノワイヤセンサー素子55は、上記第2実施の形態の場合におけるナノワイヤセンサー素子24と同様の構造である。
【0106】
また、上記ナノワイヤ増幅素子56は上述したようにP型の電界効果トランジスタであり、例えば、シリコン,GaAsおよびGaN等を用いることができる。ナノワイヤ増幅素子56のサイズは、ナノワイヤセンサー素子55のサイズと同程度にすることができる。
【0107】
上記ナノワイヤ抵抗素子57は、上記第2実施の形態の場合におけるナノワイヤ抵抗素子26と同様の構造であり、抵抗値を適宜調節すればよい。
【0108】
上記ナノワイヤ発光素子58は、GaAsP系,GaP系,GaAlAs系,AlGaInP系およびInGaN系等を用いることができる。図12では、ナノワイヤ発光素子58をN型の半導体コア64とP型の半導体シェル65との2層構造としているが、高効率発光化のために多層構造を有していても良い。例えば、InGaN系を用いる場合には、N型の半導体コア,InGaN活性層シェルおよびP型の半導体シェルをこの順に積層したものを用いることができる。さらには、活性層を複数積層した多重量子井戸構造としてもよい。
【0109】
上記ナノワイヤ発光素子58は、その側面が発光するため、そのサイズに比して発光強度を強くすることが可能である。
【0110】
上記ナノワイヤ発光素子58のサイズは、例えば、直径が500nmであり、長さが20μmである。しかしながら、ナノワイヤ発光素子58のサイズはこれに限らず、直径は1nm〜10μm、長さは10nm〜500μmとすることができる。より好ましくは、十分な光量が得られ、且つ通常のLEDチップに比べて極めて小さい、直径が100nm〜500nm、長さが1μm〜50μmである。
【0111】
以上のごとく、本実施の形態の電子デバイス51は、非常に微細な受光素子であるナノワイヤセンサー素子55を含むナノワイヤセンサー52の出力を、非常に微細なナノワイヤ素子であるナノワイヤ増幅素子56およびナノワイヤ抵抗素子57を含むナノワイヤ回路53で直接受けており、ナノワイヤ回路53は上記出力に応答して非常に微細なナノワイヤ素子であるナノワイヤ発光素子58を含むナノワイヤ発光部54を駆動するものである。
【0112】
これにより、上記ナノワイヤセンサー素子55付近の明るさに応じてナノワイヤ発光素子58を制御することが可能になる。また、ナノワイヤセンサー素子55を非常に微小な空間に設置できるため、ナノワイヤセンサー52の設置場所の自由度が大きくなって応用範囲が広くなる。さらには、上述のようなナノワイヤセンサー52付きのナノワイヤ発光部54を備えた電子デバイス51を低コストで提供することができる。
【0113】
また、上記複数のナノワイヤ発光素子58で、照明デバイスを構成することが可能である。その場合には、ナノワイヤセンサー52付きの照明デバイスの設置の自由度が広がると共に、ナノワイヤセンサー52付きの照明デバイスを低コストで提供することが可能になる。
【0114】
・第4実施の形態
本実施の形態の電子デバイスは、上記第1実施の形態における電子デバイス1の場合と同様に、周囲の状態に応じて外部に出力を行うセンサーとしての機能を有するナノワイヤセンサー素子と、上記出力を直接入力するナノワイヤ回路とを備えている。さらに、本実施の形態の電子デバイスは、ナノワイヤ発光素子を備えており、上記ナノワイヤ回路は上記出力に応じて上記ナノワイヤ発光素子を駆動する。また、上記ナノワイヤセンサー素子は、上記ナノワイヤ発光素子が放出する光を受光して、上記ナノワイヤ回路を介して上記ナノワイヤ発光素子にフィードバックする。
【0115】
図13は、本実施の形態の電子デバイスの回路図である。図13に示すように、本電子デバイス71は、ナノワイヤセンサー72とナノワイヤ回路73とナノワイヤ発光部74とで構成されている。さらに、ナノワイヤセンサー72は、ナノワイヤセンサー素子(受光素子であるフォトトランジスタ)75を含んでいる。また、ナノワイヤ回路73は、ナノワイヤ制御回路76を含んでいる。また、ナノワイヤ発光部74は、複数のナノワイヤ発光素子(発光ダイオード)77を含んでいる。
【0116】
上記ナノワイヤセンサー素子75の出力は、ナノワイヤ制御回路76の入力部(Vin)に入力される。また、ナノワイヤ制御回路76の出力部(Iout)は出力端子78に接続されている。電源端子(Vcc)は、ナノワイヤセンサー素子75およびナノワイヤ制御回路76に電圧を供給する。接地端子(GND)は、ナノワイヤ制御回路76に接続されると共に、出力端子79に接続されている。
【0117】
一方、上記ナノワイヤ発光部74を構成する複数のナノワイヤ発光素子77は、並列に接続されており、アノードが入力端子80に接続されて、カソードが入力端子81に接続されている。そして、ナノワイヤ発光部74の入力端子80,81は、夫々ナノワイヤ回路73の出力端子78,79に接続されている。尚、ナノワイヤ発光部74を構成するナノワイヤ発光素子77は1つであっても差し支えない。
【0118】
上記ナノワイヤ発光部74は、ナノワイヤ発光素子77が放出した光がナノワイヤセンサー素子75で受光されるように、ナノワイヤセンサー72と対向して設置されている。
【0119】
上記ナノワイヤ制御回路76は、ナノワイヤ増幅素子,ナノワイヤ抵抗素子およびナノワイヤコンデンサ素子等を組み合わせて構成されている。そして、ナノワイヤ制御回路76は、ナノワイヤセンサー素子75の出力に応じて、ナノワイヤ発光部74に出力する電流値を制御するフィードバック動作を行う。
【0120】
上記構成によれば、上記ナノワイヤセンサー素子75は、ナノワイヤ発光素子77が放出する光を受光して、ナノワイヤ回路73のナノワイヤ制御回路76を介してナノワイヤ発光素子77にフィードバックすることができる。例えば、ナノワイヤ制御回路76により、ナノワイヤセンサー素子75の受光量が略一定になるようにナノワイヤ発光素子77をフィードバック制御することによって、ナノワイヤ発光部74が発生する光量が電源電圧の変動や本電子デバイス71の経時変化や本電子デバイス71のデバイス特性のばらつき等で変化する場合であっても、ナノワイヤ発光部74の光量を一定に保つことができるのである。
【0121】
さらには、例えば、自発光表示装置において、画素毎に本電子デバイス71を配置しておけば、画素毎の明るさのばらつきを自動的に校正することが可能になる。
【0122】
ここで、上記ナノワイヤセンサー素子75としては、上記第2実施の形態におけるナノワイヤセンサー素子24と同様のものを用いることができる。さらに、ナノワイヤ発光素子77は、上記第3実施の形態におけるナノワイヤ発光素子58と同様のものを用いることができる。
【0123】
本実施の形態における電子デバイス71は、上記ナノワイヤ発光素子77が放出する光をナノワイヤセンサー素子75で受光して、ナノワイヤ回路73のナノワイヤ制御回路76を介してナノワイヤ発光素子77にフィードバックようになっている。こうすることにより、ナノワイヤ発光部74の光量を一定に制御することが可能になる。また、ナノワイヤセンサー72を非常に微小な空間に設置できるため、ナノワイヤセンサー72の設置場所の自由度が大きくなって応用範囲が広くなる。さらには、ナノワイヤセンサー72付きナノワイヤ発光部74を備えた電子デバイス71を、低コストで提供することができる。
【0124】
・第5実施の形態
本実施の形態の電子デバイスは、上記第1実施の形態における電子デバイス1の場合と同様に、周囲の状態に応じて外部に出力を行うセンサーとしての機能を有するナノワイヤセンサー素子と、上記出力を直接入力するナノワイヤ回路とを備えている。
【0125】
図14は、本実施の形態の電子デバイスの回路図である。図15は、本実施の形態の電子デバイスにおけるナノワイヤセンサー素子の構造を説明する概略図である。
【0126】
図14に示すように、本電子デバイス91は、ナノワイヤセンサー92とナノワイヤ回路93とで構成されている。さらに、ナノワイヤセンサー92は、ナノワイヤセンサー素子(特定のガスを検知する可変抵抗器)94を含んでいる。また、ナノワイヤ回路73は、ナノワイヤ制御回路95を含んでいる。
【0127】
上記ナノワイヤセンサー素子94の出力は、ナノワイヤ制御回路95の入力部(Vin)に入力される。また、ナノワイヤ制御回路95の出力部(Vout)は出力端子96に接続されている。電源端子(Vcc)は、ナノワイヤセンサー素子94およびナノワイヤ制御回路95に電圧を供給する。接地端子(GND)はナノワイヤ制御回路95に接続される。
【0128】
上記ナノワイヤ制御回路95は、ナノワイヤ増幅素子,ナノワイヤ抵抗素子およびナノワイヤコンデンサ素子等を組み合わせて構成されている。そして、ナノワイヤ制御回路95は、ナノワイヤセンサー素子94の出力に応じて、ナノワイヤセンサー素子94によって検出された特定のガスの有無や濃度を、出力端子96に出力する。
【0129】
上記ナノワイヤセンサー素子94は、図15に示すように、金属や金属酸化物からなるナノワイヤ97で構成され、ナノワイヤ97の電気抵抗がガスの吸着により変化することを利用して上記特定のガスを検知する。例えば、水素を検知する場合には、ナノワイヤ97としてパラジウムナノワイヤを用いることができる。また、エタノール等の有機ガスを検知する場合には、ZnOナノワイヤやSeナノワイヤを用いることができる。
【0130】
尚、上記ナノワイヤ制御回路95を構成する上記ナノワイヤ増幅素子のサイズは、ナノワイヤセンサー素子94のサイズと同程度とする。
【0131】
上述のように、本実施の形態における電子デバイス91は、ガスセンサーとして機能する微細なナノワイヤセンサー素子94と、ナノワイヤセンサー素子94からの出力を直接入力する微細なナノワイヤ制御回路95とを備えている。したがって、小型であって特定のガスに対して高感度であり、且つ低コストな電子デバイス91を提供することができるのである。
【0132】
・第6実施の形態
本実施の形態の電子デバイスは、上記第1実施の形態における電子デバイス1の場合と同様に、周囲の状態に応じて外部に出力を行うセンサーとしての機能を有するナノワイヤセンサー素子と、上記出力を直接入力するナノワイヤ回路とを備えている。
【0133】
図16は、本実施の形態の電子デバイスの回路図である。図17は、本実施の形態の電子デバイスにおけるナノワイヤセンサー素子の構造を説明する概略図である。
【0134】
図16に示すように、本電子デバイス101は、ナノワイヤセンサー102とナノワイヤ回路103とで構成されている。さらに、ナノワイヤセンサー102は、ナノワイヤセンサー素子(特定の蛋白質または核酸を検知する電界効果トランジスタ)104を含んでいる。また、ナノワイヤ回路103は、ナノワイヤ制御回路105を含んでいる。
【0135】
上記ナノワイヤセンサー素子104の出力は、上記ナノワイヤ制御回路105の入力部(Vin)に入力される。また、ナノワイヤ制御回路105の出力部(Vout)は出力端子106に接続されている。電源端子(Vcc)は、ナノワイヤセンサー素子104およびナノワイヤ制御回路105に電圧を供給し、接地端子(GND)はナノワイヤ制御回路105に接続される。
【0136】
上記ナノワイヤ制御回路105は、ナノワイヤ増幅素子,ナノワイヤ抵抗素子およびナノワイヤコンデンサ素子等を組み合わせて構成されている。そして、ナノワイヤ制御回路105は、ナノワイヤセンサー素子104の出力に応じて、ナノワイヤセンサー素子104によって検出された特定のタンパク質または核酸の有無や濃度を、出力端子106に出力する。
【0137】
上記ナノワイヤセンサー素子104は電界効果トランジスタであり、例えばシリコンを用いることができる。ナノワイヤセンサー素子104の構造は、図17に示すように、長手方向に、ソース領域あるいはドレイン領域となるN型半導体領域107と、チャネル領域となるP型半導体領域108と、ドレイン領域あるいはソース領域となるN型半導体領域109とが、この順に接続されている。
【0138】
上記チャネル領域となるP型半導体領域108は、ゲート絶縁膜110により覆われている。さらに、ゲート絶縁膜110には、特定の蛋白質あるいは核酸と結合する抗体111が結びつけられている。ナノワイヤセンサー素子104には、電気的に電位を与えるゲート電極は存在せず、抗体111がその役割を果たす。すなわち、抗体111に特定の蛋白質あるいは核酸が結合すると、抗体111からゲート絶縁膜110上に電荷が移動し、ナノワイヤセンサー素子104に流れる電流が変化するのである。
【0139】
上述のように、本実施の形態における電子デバイス101は、上記蛋白質あるいは核酸センサーとして機能する微細なナノワイヤセンサー素子104と、ナノワイヤセンサー素子104からの出力を直接入力する微細なナノワイヤ制御回路105とを備えている。したがって、小型であって特定の蛋白質あるいは核酸に対して高感度であり、且つ低コストな電子デバイス101を提供することができるのである。
【0140】
・第7実施の形態
本実施の形態は、上記第1実施の形態〜上記第6実施の形態における電子デバイス1〜電子デバイス101の製造方法における各電子デバイスに共通する製造方法に関する。
【0141】
(1)電子デバイスの製造手順
先ず、上記第1実施の形態〜上記第6実施の形態における電子デバイス1〜電子デバイス101を製造する手順を説明する。
【0142】
上記第1実施の形態〜上記第6実施の形態における電子デバイス1〜電子デバイス101は、何れもナノワイヤ素子が基板上に配置され、さらに配線されることによって製造される。より具体的には、ナノワイヤ素子を基板上で多数形成した後、それらのナノワイヤ素子を上記基板から切り離す。次に、切り離されたナノワイヤ素子を上記基板とは別の本来の基板上の所定の位置に配列し、配線するのである。
【0143】
以下に、上記ナノワイヤ素子の形成方法と、上記ナノワイヤ素子の基板上への配列方法とについて、詳細に説明する。
【0144】
(2)ナノワイヤ素子の形成方法
ここでは、ナノワイヤ素子の形成方法について、3通りの方法を説明する。
【0145】
第1の方法
上記ナノワイヤ素子の形成方法のうちの第1の方法として、上記第1実施の形態におけるナノワイヤセンサー素子(フォトダイオード)4の形成方法を例に挙げて説明する。
【0146】
上記ナノワイヤセンサー素子4は、PIN構造を有しており、シリコンからなるものとする。尚、上記第2〜第4実施の形態におけるナノワイヤセンサー素子(フォトトランジスタ)24,55,75、および、上記第1実施の形態におけるナノワイヤ増幅素子(バイポーラトランジスタ)5も、適切な材料を用いて適切な不純物プロファイルを形成することにより、同様の方法で形成することができる。また、上記第5実施の形態におけるナノワイヤセンサー素子(可変抵抗器)94、および、上記第1〜第3実施の形態におけるナノワイヤ抵抗素子6,7,26,27,57は、PN接合を有していないが、棒状素子全体に渡って一様な不純物プロファイルを与えるなどすれば、やはり同様な方法で形成することができる。
【0147】
先ず、図18に示すように、シリコン基板121を準備する。
【0148】
次に、図19に示すように、開口部が設けられたシリコン酸化膜122をシリコン基板121上に形成する。具体的には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、シリコン基板121上に例えば100nmの厚さでシリコン酸化膜を成膜する。その後、フォトリソグラフィ工程によって、上記シリコン酸化膜に、例えば200nmの大きさの開口部をパターニングしてシリコン基板121表面の一部を露出させて、シリコン酸化膜122を形成する。
【0149】
次に、図20に示すように、金からなる金属触媒粒123を、シリコン酸化膜122の開口部であってシリコン基板121が露出している部分に形成する。具体的には、パターニングされたシリコン酸化膜122が形成されたシリコン基板121上の全面に、例えば厚さ3nmの金をスパッタにより成膜し、900℃程度でアニールすることによって金を凝集させればよい。
【0150】
次に、図21に示すように、上記シリコン酸化膜122の開口部から露出しているシリコン基板121上に、CVD装置を用いて、例えば3μmの長さにp型シリコンをVLS(Vapor Liquid Solid)成長させてP型半導体領域124を形成する。成長温度は800℃程度であり、成長ガスとしてシランを用い、キャリアガスとして水素を用い、導電性を与える不純物を含むガスとしてジボランを用いる。
【0151】
次に、図22に示すように、上記導電性を与える不純物を含むガス(ジボラン)の供給を停止してさらに成長を続け、例えば3μmの長さに無ドープ(イントリンシック)シリコンを成長させてI型半導体領域(真性領域)125を形成する。
【0152】
次に、図23に示すように、上記導電性を与える不純物を含むガスとしてホスフィンを流してさらに成長を続け、例えば3μmの長さにn型シリコンを成長させてN型半導体領域126を形成する。こうして、長さ方向にP型半導体領域124,I型半導体領域125およびN型半導体領域126が順に並んだシリコンワイヤが形成される。
【0153】
次に、図24に示すように、上記シリコン酸化膜122および金属触媒粒123を夫々ウェットエッチングにより除去し、最後に、図25に示すように、シリコン基板121とその表面上に形成された棒状の構造物とを水等の液体中に浸し、超音波を照射することによって、上記棒状の構造物をシリコン基板121から切り離す。こうしてシリコン基板121から切り離された個々の棒状の構造物は、上記第1実施の形態において、長手方向にP型半導体領域13,I型半導体領域14およびN型半導体領域15がこの順で接続されてフォトダイオードの機能を有するナノワイヤセンサー素子4となる。
【0154】
第2の方法
上記ナノワイヤ素子の形成方法のうちの第2の方法として、上記第2実施の形態におけるナノワイヤ増幅素子(電界効果トランジスタ)25の形成方法を例に挙げて説明する。
【0155】
上記ナノワイヤ増幅素子25は、NPN構造を有しており、シリコンからなるとする。尚、上記第3実施の形態におけるナノワイヤ増幅素子(PNP型の電界効果トランジスタ)56も、適切な材料を用いて適切な不純物プロファイルを形成することによって、同様の方法で形成することができる。また、上記第6実施の形態におけるナノワイヤセンサー素子(特定の蛋白質または核酸を検知する電界効果トランジスタ)104は、ゲート電極を形成する代わりに、ゲート絶縁膜に抗体を結びつける工程(機能化)を行うことによって、略同様の方法で形成することができる。
【0156】
先ず、図26に示すように、シリコン基板127上に、根元側から長さ方向にN型半導体領域128,P型半導体領域129およびN型半導体領域130がこの順に接続されたシリコンワイヤを形成する。このシリコンワイヤは、上記第1の方法と同様にして形成すればよい。尚、シリコンワイヤの太さは、例えば200nmとし、長さは、例えば10μmとする。
【0157】
次に、図27に示すように、上記N型半導体領域128,P型半導体領域129およびN型半導体領域130の表面に、ゲート絶縁膜となるシリコン酸化膜131を、例えば10nmの厚さで形成する。シリコン酸化膜131は、CVD法により形成するか、N型半導体領域128,P型半導体領域129およびN型半導体領域130の表面を熱酸化することによって形成することができる。次に、シリコン酸化膜131の表面に、ゲート電極となるN型に高濃度ドープしたポリシリコン膜132を、CVD法によって形成する。ポリシリコン膜132の厚さは、例えば50nmとする。
【0158】
最後に、図28に示すように、上記シリコン基板127とその表面上に形成した棒状の構造物を水等の液体中に浸し、超音波を照射することによって、上記棒状の構造物をシリコン基板127から切り離す。こうしてシリコン基板127から切り離された個々の棒状の構造物は、上記第2実施の形態において、長手方向にN型半導体領域36とP型半導体領域37とN型半導体領域38とがこの順に接続されると共に、P型半導体領域37がゲート絶縁膜となるインナーシェル39およびゲート電極となるアウターシェル40で覆われて電界効果トランジスタの機能を有するナノワイヤ増幅素子25となる。
【0159】
ところで、図28のナノワイヤ増幅素子25は、N型半導体領域36(128),38(130)に対して配線をする必要があるので、図9に示すように、両端部においてゲート絶縁膜39(131)およびゲート電極40(132)を剥いておく必要がある。そのため、ナノワイヤ増幅素子25の両端部の領域133および領域134において、シリコン酸化膜131およびポリシリコン膜132を除去しなければならない。そこで、この両端部の領域133,134の除去は、ナノワイヤ増幅素子25を基板127とは別の本来の基板28上の所定の位置に配列した後、配線を行う前に、適切なエッチングマスクを形成したうえでエッチングで除去することによって行うのである。
【0160】
第3の方法
上記ナノワイヤ素子の形成方法のうちの第3の方法として、上記第3実施の形態におけるナノワイヤ発光素子(発光ダイオード)58の形成方法を例に挙げて説明する。尚、上記第4実施の形態におけるナノワイヤ発光素子(発光ダイオード)77も同様の方法で形成することができる。
【0161】
上記ナノワイヤ発光素子(発光ダイオード)58は、N型のGaNコア64とP型のGaNシェル65とを有し、N型のGaNコア64とP型のGaNシェル65との間には、InGaNシェル(発光層)が形成されているものとする。
【0162】
このようなナノワイヤ発光素子は、上記第2の方法と類似している上記VLS法とMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法とを組み合わせた方法で形成することもできるが、ここではエッチングとMOCVD法とを組み合わせた方法で形成する場合を例に説明する。
【0163】
先ず、図29に示すように、サファイア基板135の表面上にn型GaN膜136を形成する。n型GaN膜136は、MOCVD装置で、例えば10μmの厚さで成膜する。
【0164】
次に、図30に示すように、上記n型GaN膜136にシリコン酸化膜を堆積し、フォトリソグラフィ工程によってパターニングして、シリコン酸化膜からなるハードマスク137を形成する。上記シリコン酸化膜は、CVD法によって、例えば1μmの厚さで堆積する。また、シリコン酸化膜からなるハードマスク137は、例えば直径が500nmの円形,三角形,四角形あるいは六角形等に形成する。
【0165】
次に、図31に示すように、上記シリコン酸化膜からなるハードマスク137をマスクとして、非等方的なドライエッチングによって、n型GaN膜136をエッチングして、n型GaNからなる棒状の半導体138を形成する。尚、ハードマスク137の断面形状を変えることによって、棒状の半導体138の断面形状を自由に変えることができる。したがって、例えば、n型GaN膜136をその表面がc面になるように成長させれば、ハードマスク137の断面形状を三角形にすることによって、棒状の半導体138の全ての側面を非極性面(a面やm面)にすることができる。
【0166】
ここで、上記n型GaNからなる棒状の半導体138が形成されたサファイア基板135をアニール処理することが好ましい。その場合のアニール温度は、例えば700℃〜900℃以下である。これにより、n型GaNからなる棒状の半導体138の結晶欠陥を回復させて、結晶性を改善することができる。
【0167】
あるいは、上記n型GaNからなる棒状の半導体138が形成されたサファイア基板135を、例えば150℃の熱リン酸に浸して、上記エッチングによって生じた結晶欠陥層を選択的に除去することが好ましい。この場合も、n型GaNからなる棒状の半導体138の結晶欠陥を回復させて、結晶性を改善することができる。
【0168】
次に、図32に示すように、上記n型GaNからなる棒状の半導体138の側面および上面に、例えば200nmの厚さでn型GaN膜139を形成する。このn型GaN膜139は、棒状の半導体138と一体となってN型のGaNコア64となる。
【0169】
このように、上記n型GaNからなる棒状の半導体138の側面および上面に改めてn型GaN膜139を形成することによって、均一で結晶性のよいn型GaN結晶を表面に露出させることができる。特に、本第3の方法の手順では棒状の半導体138はエッチングによって形成されているためエッチングダメージを受けており、n型GaN膜139を形成することによって半導体表面の結晶欠陥を減らす効果が大きい。
【0170】
その後、上記n型GaN膜139の側面および上面に、例えば5nmの厚さでInGaN膜からなる発光層140を形成する。さらに、発光層140の側面および上面に、例えば100nmの厚さでp型GaN膜からなるP型半導体シェル141を形成する。
【0171】
図示しないが、この後、上記P型半導体シェル141上に、さらにミストCVD等によってITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極からなるシェルを形成することが好ましい。そうした場合には、動作時にP型半導体シェル141の電位が一様になって微細な棒状発光素子71の発光効率を高くすることができる。
【0172】
最後に、図33に示すように、上記サファイア基板135とその表面上に形成された棒状の構造物とを水等の液体中に浸し、超音波を照射することによって、上記棒状の構造物をサファイア基板135から切り離す。こうしてサファイア基板135から切り離された個々の棒状の構造物は、上記第3実施の形態において、N型のGaNコア64とP型のGaNシェル65とを備えて発光ダイオードの機能を有するナノワイヤ発光素子58となる。
【0173】
ところで、図33のナノワイヤ発光素子58は、N型GaNコア64(138,139)に対して配線をする必要があるので、図12に示すように、一方の端部においてP型GaNシェル65(141)を剥いておく必要がある。そのため、ナノワイヤ発光素子58の領域142および領域143の何れか一方において、発光層140およびP型半導体シェル65(141)を除去しなければならない。そこで、この領域142あるいは領域143の除去は、ナノワイヤ発光素子58をサファイア基板135とは別の本来の基板上の所定の位置に配列した後、配線を行う前に、適切なエッチングマスクを形成したうえでエッチングで除去することによって行うのである。
【0174】
(3)ナノワイヤ素子の基板上への配置方法
以上説明したナノワイヤ素子の形成方法によって形成された種々のナノワイヤ素子は、基板上の所定の位置に配置された後、配線が行われる。以下では、上記第1実施の形態における電子デバイス1を形成する方法を挙げて説明する。
【0175】
先ず、図34に示すように、表面に電極145〜149が形成されている基板8を準備する。ここで、電極145〜149は、フォトリソグラフィあるいは印刷技術によって形成することができる。尚、図34では省略されているが、電極145〜149には外部から電位を与えられるように、パッドが形成されている。
【0176】
上記電極145と電極146、電極145と電極147、電極145と電極148、および、電極145と電極149は、夫々第1,第2,第3および第4の電極対を構成している。そして、第1の電極対(電極145と電極146)の部分は、ナノワイヤセンサー素子4が配置される位置を規定している。同様に、第2の電極対(電極145と電極147)の部分はナノワイヤ抵抗素子6が配置される位置を規定し、第3の電極対(電極145と電極148)の部分はナノワイヤ増幅素子5が配置される位置を規定し、第4の電極対(電極145と電極149)の部分はナノワイヤ抵抗素子7が配置される位置を規定している。
【0177】
次に、図35および図36に示すように、上記第2の電極対(電極145と電極147)の部分に、ナノワイヤ回路部3のナノワイヤ素子であるナノワイヤ抵抗素子6を配置する(ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子配置工程)。尚、図35および図36は、図34におけるA‐A'矢視断面図である。
【0178】
先ず、図35に示すように、上記基板8上に、ナノワイヤ抵抗素子6を含んだイソプロピルアルコール(IPA)150を薄く塗布する。IPA150に換えて、エチレングリコール,プロピレングリコール,メタノール,エタノール,アセトンの何れか一つ、あるいは、それらの混合物であってもよい。あるいは、IPA150に換えて、他の有機物からなる液体や水等を用いることができる。
【0179】
上記ナノワイヤ抵抗素子6を含むIPA150を塗布する厚さは、ナノワイヤ抵抗素子6を配置できるように、IPA150中においてナノワイヤ抵抗素子6が移動できる厚さである。つまり、IPA150を塗布する厚さは、ナノワイヤ抵抗素子6の太さ以上であり、例えば、数μm〜数mmである。ここで、塗布する厚さは薄すぎるとナノワイヤ抵抗素子6が移動し難くなり、厚すぎるとIPA150を乾燥する時間が長くなる。また、IPA150の量に対するナノワイヤ抵抗素子6の量は、1×104本cm-3〜1×107本cm-3が好ましい。
【0180】
上記ナノワイヤ抵抗素子6を含むIPA150を塗布するために、ナノワイヤ抵抗素子6を配置させる領域の外周囲に枠を形成し、その枠内にナノワイヤ抵抗素子6を含むIPA150を所望の厚さになるように充填してもよい。しかしながら、ナノワイヤ抵抗素子6を含むIPA150が粘性を有する場合は、枠を必要とせずに、所望の厚さに塗布することが可能である。
【0181】
次に、図36に示すように、上記第2の電極対を形成する電極145と電極147との間に、例えば1Vの交流を印加する。第2の電極対に印加する交流電圧は0.1V〜10Vとすることができるが、0.1V以下の場合にはナノワイヤ抵抗素子6の配置が悪くなり、10V以上では電極間に流れる電流によってIPA150が好ましくない対流を起こす。したがって、1V〜5Vが好ましく、1V程度とするのがより好ましい。
【0182】
上記ナノワイヤ抵抗素子6が上記第2の電極対で規定される位置に配置される原理は、誘電泳動あるいは容量結合による引力で説明される。その結果、各電極145,147とナノワイヤ抵抗素子6との間に引力が働き、ナノワイヤ抵抗素子6は、電極145,147間に生じる電気力線に沿うように向きを揃え、電極145,147に架橋するように配置される。
【0183】
また、上記電極145,147に与える交流電圧の周波数は10Hz〜1MHzとするのが好ましく、50Hz〜1kHzとするのが、ナノワイヤ抵抗素子6の配置が最も安定してより好ましい。さらに、電極145と電極147との間に印加する交流電圧は、正弦波に限らず、矩形波,三角波およびノコギリ波等の周期的に変動するものであればよい。
【0184】
尚、上記第1,第3および第4の電極対には電圧を印加していないため、ナノワイヤ抵抗素子6は配置されない。したがって、ナノワイヤ抵抗素子6は、上記第2の電極対で規定される位置にのみ選択的に配置されるのである。
【0185】
次に、上記ナノワイヤ抵抗素子6を配置させた後の基板8を加熱することによってIPA150の液体を蒸発させて乾燥させ、ナノワイヤ抵抗素子6を電極145および電極147に架橋するように配置させて固着させる。
【0186】
次に、図37および図38に示すように、第1の電極対(電極145と電極146)の部分に、ナノワイヤセンサー素子4を配置する(ナノワイヤセンサー素子配置工程)。尚、図37および図38は、図34におけるA‐A'矢視断面図である。
【0187】
先ず、図37に示すように、上記基板8上に、ナノワイヤセンサー素子4を含んだIPA151を薄く塗布する。
【0188】
ところで、上記ナノワイヤセンサー素子4はPN接合を有するダイオードであり、極性を有する素子(有極性素子)である。そのため、例えば図37において、ナノワイヤセンサー素子4は、P型半導体領域13を左に向け、N型半導体領域15を右に向けて配置されなければならない。もし、ナノワイヤセンサー素子4が反対を向いて基板8上に配置された場合には、得られる電子デバイス1は不良となる。ところが、上記第2の電極対で規定される位置にナノワイヤ抵抗素子6を配置する方法では、ナノワイヤ抵抗素子6が配置される2つの向きがとる確率は共に50%である。
【0189】
そこで、図38に示すように、上記第1の電極対における電極145および電極146には、交流電圧に重ねて直流電圧を印加するのである。ナノワイヤセンサー素子4の接合部には空乏層が形成されているため、空乏層電荷が電気二重層を形成している。そして、P型半導体領域13側の空乏層は負に、N型半導体領域15側の空乏層は正に帯電している。この電気二重層は電気双極子モーメントを有しているため、電極145側を実質的に負電圧に、電極146側を実質的に正電圧にすることによって、ナノワイヤセンサー素子4はP型半導体領域13を左側にして配置されるのである。
【0190】
尚、上記第2,第3および第4の電極対には電圧を印加していないため、ナノワイヤセンサー素子4は配置されない。したがって、ナノワイヤセンサー素子4は、上記第1の電極対で規定される位置にのみ選択的に配置させるのである。
【0191】
次に、上記ナノワイヤセンサー素子4を配置させた後の基板8を加熱することにより、IPA151の液体を蒸発させて乾燥させ、ナノワイヤセンサー素子4を電極145および電極146に架橋するように配置させて固着させる。
【0192】
次に、図示しないが、上記第3の電極対(電極145と電極148)の部分に、ナノワイヤ増幅素子5を配置する(ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子配置工程)。ナノワイヤ増幅素子5は有極性素子なので、上述した第1の電極対の対向部で規定される位置にナノワイヤセンサー素子4を配置する方法を用いればよい。
【0193】
この場合も、上記第1,第2および第4の電極対には電圧を印加していないため、ナノワイヤ増幅素子5は配置されない。したがって、ナノワイヤ増幅素子5は、上記第3の電極対で規定される位置にのみ選択的に配置させるのである。
【0194】
次に、上記ナノワイヤ増幅素子5を配置させた後の基板8を加熱することによって、上記IPAの液体を蒸発させて乾燥させ、ナノワイヤ増幅素子5を電極145および電極148に架橋するように配置させて固着させる。
【0195】
次に、図示しないが、上記第4の電極対(電極145と電極149)の部分に、ナノワイヤ抵抗素子7を配置する(ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子配置工程)。ナノワイヤ抵抗素子7には極性がないので、上述した第2の電極対の対向部で規定される位置にナノワイヤ抵抗素子6を配置する方法を用いればよい。
【0196】
この場合も、上記第1,第2および第3の電極対には電圧を印加していないため、ナノワイヤ抵抗素子7は配置されない。したがって、ナノワイヤ抵抗素子7は、上記第4の電極対で規定される位置にのみ選択的に配置させるのである。
【0197】
次に、上記ナノワイヤ抵抗素子7を配置させた後の基板8を加熱することによって、上記IPAの液体を蒸発させて乾燥させ、ナノワイヤ抵抗素子7を電極145および電極149に架橋するように配置させて固着させる。
【0198】
以上、上述した4回の配置工程によって、図39に示すように、基板8上に、ナノワイヤセンサー素子4,ナノワイヤ増幅素子5,ナノワイヤ抵抗素子6およびナノワイヤ抵抗素子7が、夫々所定の位置に配置される。特に、有極性素子であるナノワイヤセンサー素子4およびナノワイヤ増幅素子5は、基板8上の所定の位置に、極性の向きを含めて正しく配置される。
【0199】
最後に、図40に示すように、上記基板8上に、端子9〜11および配線12を形成する。これにより、各端子9〜11と各素子4,5,6,7との間が電気的に正しく接続される。こうして、電子デバイス1が完成する。
【0200】
以上の上記電子デバイス1を製造する方法においては、少なくとも第1,第2の2つの電極対が形成された基板8上に、ナノワイヤセンサー素子4を含んだIPA151の液体を導入し、上記第1の電極対に電圧を印加してナノワイヤセンサー素子4を上記第1の電極対を構成する電極145と電極146との対向部で規定される位置に配置させるナノワイヤセンサー素子配置工程と、基板8上に、上記ナノワイヤ回路を構成するナノワイヤ素子であるナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子を含んだ上記IPAの液体を導入し、上記第2の電極対に電圧を印加して上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子を上記第2の電極対を構成する2つの電極の対向部で規定される位置に配列させるナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子配置工程とを含んでいる。
【0201】
したがって、上記電子デバイス1を製造する方法で例示されるナノワイヤ素子の基板上への配置方法によれば、微細なナノワイヤセンサー素子と微細なナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子とを、同一の基板上に高密度で配置することが可能である。したがって、非常に微細な電子デバイス、および、電子デバイスを非常に微細化できる簡易な電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【0202】
この電子デバイスの製造方法においては、さらに、上記ナノワイヤセンサー素子配置工程で配列される上記ナノワイヤセンサー素子、および、上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子配置工程で配列される上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子の少なくとも1つが、一端および他端に夫々異なる極性を有する有極性素子である場合には、上記有極性素子を、上記一端および上記他端の位置関係を含めて所定の向きで上記基板上に配列するようにしている。
【0203】
このような電子デバイスの製造方法では、極めて微細なナノワイヤ素子が極性を有している場合であっても、上記基板上に極性の向きを含めて正しい向きで当該ナノワイヤ素子を配置できるため、ナノワイヤ素子を組み合わせた複雑で高度な回路を実現することができるのである。
【0204】
・第8実施の形態
本実施の形態は、上記第3実施の形態における電子デバイス51あるいは上記第4実施の形態における電子デバイス71を備えた照明装置に関する。図41は、本実施の形態の照明装置におけるブロック図である。
【0205】
本実施の形態の照明装置161は、センサー部162,演算部163,発光デバイス部164および太陽電池165からなる。
【0206】
上記センサー部162は、周囲の状態に応じて外部に出力を行うセンサーとしての機能を有するナノワイヤセンサー素子を備えている。また、演算部163は、上記ナノワイヤセンサー素子からの出力を直接入力すると共に、ナノワイヤ素子を用いたナノワイヤ回路を備えている。また、発光デバイス部164は、ナノワイヤ発光素子を備えている。
【0207】
上記センサー部162,演算部163および発光デバイス部164は、例えば、上記第3実施の形態におけるナノワイヤセンサー52,ナノワイヤ回路53およびナノワイヤ発光部54で構成される。
【0208】
上記太陽電池165は、センサー部162,演算部163および発光デバイス部164に電力を供給する。
【0209】
上記構成を有する照明装置161は、上記センサー部162,演算部163および発光デバイス部164を極めて小さな領域に形成することができる。したがって、微小な生物の巣の中の照明等の極めて微小な空間の照明管理等に応用することが可能である。
【0210】
さらに、上記センサー部162として非常に微小なナノワイヤセンサー素子を用いる場合であっても、演算部163に用いられているナノワイヤ回路によって、上記ナノワイヤセンサー素子からの微少な出力を直接入力して増幅することができる。したがって、上記ナノワイヤセンサー素子からの微小な出力を増幅するために、特殊で高価なデバイスを使用する必要がない。
【0211】
以上のごとく、本実施の形態における照明装置161は、上記センサー部162,演算部163および発光デバイス部164を備えているので、周囲の状況によって発光デバイス部164における上記ナノワイヤ発光素子の発光強度を変化させることができる。さらには、センサー部162,演算部163および発光デバイス部164の何れにもナノワイヤ素子を用いているため、本照明装置161の設置場所の自由度が飛躍的に高くなると共に、低コスト化を実現することができる。
【0212】
・第9実施の形態
本実施の形態は、上記第5実施の形態における電子デバイス91あるいは上記第6実施の形態における電子デバイス101を備えたセンサーシステムに関する。図42は、本実施の形態のセンサーシステムにおけるブロック図である。
【0213】
本実施の形態のセンサーシステム171は、センサー部172,演算部173,バッファ部174,表示部175,警報スピーカー176および太陽電池177からなる。
【0214】
上記センサー部172は、周囲の状態に応じて外部に出力を行うセンサーとしての機能を有するナノワイヤセンサー素子を備えている。演算部173は、上記ナノワイヤセンサー素子からの出力を直接入力すると共に、ナノワイヤ素子を用いたナノワイヤ回路を備えている。バッファ部174は、上記ナノワイヤ回路で増幅および演算されたナノワイヤセンサー素子からの信号を、さらに増幅する増幅回路を備えている。表示部175は、上記ナノワイヤセンサー素子によってセンシングされた検知物(特定のガス,蛋白質,核酸等)の強度等を表示する。警報スピーカー176は、上記検知物の強度が基準値を超えた場合に警報を発する。
【0215】
上記センサー部172および演算部173は、例えば、上記第6実施の形態におけるナノワイヤセンサー102およびナノワイヤ回路103で構成される。
【0216】
上記太陽電池177は、センサー部172,演算部173,バッファ部174,表示部175および警報スピーカー176に電力を供給する。
【0217】
上記構成を有するセンサーシステム171は、上記センサー部172および演算部173を極めて小さな領域に形成することができる。したがって、微小な生物の巣の中の環境等の極めて微小な空間のセンシングが可能である。
【0218】
さらに、上記センサー部172として非常に微小なナノワイヤセンサー素子を用いる場合であっても、演算部173に用いられているナノワイヤ回路によって、上記ナノワイヤセンサー素子からの微少な出力を直接入力して増幅することができる。したがって、上記ナノワイヤセンサー素子からの微小な出力を増幅するために、特殊で高価なデバイスを使用する必要がない。
【0219】
以上のごとく、本実施の形態におけるセンサーシステム171は、上記センサー部172,演算部173およびインターフェース(表示部175,警報スピーカー176)を備えているので、環境を把握することが可能である。さらには、センサー部172および演算部173の何れにもナノワイヤ素子を用いているため、センサー部172の設置場所の自由度が飛躍的に高くなると共に、低コスト化を実現することができる。
【0220】
尚、上記各実施の形態においては、上記「周囲環境の状態」として、「明るさ」,「特定のガスの有無」および「特定の蛋白質や核酸の有無」を例示したが、この発明はこれに限定されるものではない、例えば、上記ナノワイヤセンサー素子として、温度によって出力値が変化する可変抵抗器を用いることにより、「温度」を検知することが可能である。その他、「圧力」や「微細な物体の有無」等も上記ナノワイヤセンサー素子によって検知可能である。
【符号の説明】
【0221】
1,21,51,71,91,101…電子デバイス、
2,22,52,72,92,102…ナノワイヤセンサー、
3,23,53,73,93,103…ナノワイヤ回路、
4…ナノワイヤセンサー素子(フォトダイオード)、
5…ナノワイヤ増幅素子(バイポーラトランジスタ)、
6,7,26,27,57…ナノワイヤ抵抗素子、
8,28…基板、
9〜11,29〜31…端子、
12,32…配線、
15,17,34,37,59,61,124,108,129…P型半導体領域、
14,125…I型半導体領域、
13,18,33,35,36,38,60,107,109,126,128,130…N型半導体領域、
19,20,41,42,97…ナノワイヤ、
24,55,75…ナノワイヤセンサー素子(フォトトランジスタ)、
25,56…ナノワイヤ増幅素子(電界効果トランジスタ)、
39,62…インナーシェル(ゲート絶縁膜)、
40,63…アウターシェル(ゲート電極)、
54,74…ナノワイヤ発光部、
58,77…ナノワイヤ発光素子(発光ダイオード)、
64…半導体コア、
65,141…半導体シェル
76,95,105…ナノワイヤ制御回路、
94…ナノワイヤセンサー素子(ガス検知可変抵抗器)、
104…ナノワイヤセンサー素子(蛋白質,核酸検知電界効果トランジスタ)、
110…ゲート絶縁膜、
111…抗体、
121,127…シリコン基板、
131…シリコン酸化膜(ゲート絶縁膜)、
132…ポリシリコン膜(ゲート電極)、
135…サファイア基板、
138…棒状の半導体(n型GaN)、
139…n型GaN膜、
140…発光層、
145〜149…電極、
150,151…IPA、
161…照明装置、
162,172…センサー部、
163,173…演算部、
164…発光デバイス部、
165,177…太陽電池、
171…センサーシステム、
174…バッファ部、
175…表示部、
176…警報スピーカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノワイヤで構成されると共に、周囲環境の状態を検知して検知信号を出力するナノワイヤセンサー素子と、
ナノワイヤ素子で構成されると共に、上記ナノワイヤセンサー素子からの上記検知信号が直接入力されて、上記検知信号に応答して増幅,スイッチングあるいは演算を含む動作を行うナノワイヤ回路と
を備えたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電子デバイスにおいて、
上記ナノワイヤ回路を構成するナノワイヤ素子であるナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子および上記ナノワイヤセンサー素子は、同一の基板上に配置されている
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2に記載の電子デバイスにおいて、
上記ナノワイヤセンサー素子は、第1導電型の半導体と第2導電型の半導体とが接合された半導体素子である
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一つに記載の電子デバイスにおいて、
上記ナノワイヤ回路は、上記ナノワイヤセンサー素子から直接入力された上記検知信号の増幅動作を行う
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項5】
請求項1から請求項3までの何れか一つに記載の電子デバイスにおいて、
上記ナノワイヤ回路は、上記ナノワイヤセンサー素子から直接入力された上記検知信号が予め設定された設定値を超えると第1の出力状態となる一方、上記設定値以下になると上記第1の出力状態とは異なる第2の出力状態となるスイッチング動作を行う
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか一つに記載の電子デバイスにおいて、
上記ナノワイヤセンサー素子は、周囲の明るさに応じた検知信号を出力するナノワイヤ受光素子である
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の電子デバイスにおいて、
ナノワイヤで構成されると共に、光を放出するナノワイヤ発光素子を備えて、
上記ナノワイヤ回路は、上記ナノワイヤセンサー素子からの周囲の明るさに応じた検知信号に基づいて、上記ナノワイヤ発光素子の駆動動作を行う
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の電子デバイスにおいて、
複数の上記ナノワイヤ発光素子が配列されて照明デバイスを構成している
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項9】
請求項7に記載の電子デバイスであって、
上記ナノワイヤセンサー素子は、上記ナノワイヤ発光素子が放出する光を受光するように配置されており、
上記ナノワイヤ回路は、上記ナノワイヤセンサー素子からの上記ナノワイヤ発光素子が放出する光の明るさに応じた検知信号に基づいて、上記ナノワイヤ発光素子を制御するフィードバック動作を行う
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項10】
請求項1から請求項5までの何れか一つに記載の電子デバイスにおいて、
上記ナノワイヤセンサー素子は、周囲環境における特定のガスの濃度に応じた検知信号を出力するナノワイヤガスセンサー素子である
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項11】
請求項1から請求項5までの何れか一つに記載の電子デバイスにおいて、
上記ナノワイヤセンサー素子は、周囲環境に存在する特定の蛋白質あるいは核酸と結合することによって変化する検知信号を出力するナノワイヤバイオセンサー素子である
ことを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
請求項2に記載の電子デバイスの製造方法であって、
上記ナノワイヤセンサー素子および上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子が配置される上記基板上に、少なくとも第1の電極対と第2の電極対とを形成する電極対形成工程と、
上記電極対が形成された上記基板上に上記ナノワイヤセンサー素子を含む液体を導入すると共に、上記第1の電極対に交流電圧を印加して、上記第1の電極対における互いに対向する2つの電極の間で規定される位置に、上記ナノワイヤセンサー素子を配置させるナノワイヤセンサー素子配置工程と、
上記電極対が形成された上記基板上に上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子を含む液体を導入すると共に、上記第2の電極対に交流電圧を印加して、上記第2の電極対における互いに対向する2つの電極の間で規定される位置に、上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子を配置させるナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子配置工程と
を含むことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電子デバイスの製造方法において、
上記ナノワイヤセンサー素子および上記ナノワイヤ回路部ナノワイヤ素子のうちの少なくとも一方は、一端側と他端側とが夫々異なる極性を有する有極性素子であり、
上記第1の電極対と上記第2の電極対とのうち上記有極性素子が配置される電極対に印加される上記交流電圧には、直流電圧が重畳されており、
上記有極性素子が配置される電極対における互いに対向する2つの電極の間で規定される位置に配置される上記有極性素子の両端の向きが、上記電極対に印加される上記直流電圧によって定められる
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項14】
請求項7から請求項9までの何れか一つに記載の電子デバイスを備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項15】
請求項10あるいは請求項11に記載の電子デバイスを備えたことを特徴とするセンサーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2013−80874(P2013−80874A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221160(P2011−221160)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】