説明

電子マネーの選択が簡単な電子マネー決済装置

【課題】複数のアンテナを設置して電子マネー記憶媒体との通信を行う電子マネー決済装置において、利用者が使用する領域が望ましく、利用し易い装置を提供する。
【解決手段】ICカード、携帯電話機等の電子マネー記憶媒体と非接触で通信する通信用の、同一面に並列配置された3つのアンテナ(中央3a及び各側方3b、3c)と、3つのアンテナの互いに隣り合うアンテナ間にそれぞれ設けられ各側方アンテナ3b又は3cの一側面と、その側方アンテナの正面の一部を覆うシールド4と、各側方アンテナ3b、3cの正面側にそれぞれ設けられフィルター7と、アンテナ3b、3a、3cのそれぞれに対応した電子マネーの種類が視覚可能な電子マネー発光表示部と、電子マネー発光表示部が表示する電子マネーを決済対象の電子マネーとして選択完了するまで案内する発光インジケータ部と、発光を制御する制御部とを具えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子マネー記憶媒体と非接触で通信する電子マネー決済装置であって、特に電子マネーの選択が簡単な電子マネー決裁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子マネーによる決済は自動販売機にまで普及しており、携帯電話機を使用した電子マネーによる決済が盛んに行われている。電子マネーとは貨幣価値を有する電子データであるが、この電子マネーには多数の種類が存在し、携帯電話機、ICカードその他の電子マネーが記憶された記憶媒体(以下、電子マネー記憶媒体という。)が複数種存在している。
電子マネーの種類はそれを扱う店舗を限定するので、電子マネーの種類が複数存在することは電子マネー普及の障害となっていたが、複数の電子マネーによる決済が可能な装置の開発によって、この障害は乗り越えられてきた。
例えば、従来の電子マネー決済装置には、利用者が決済時に用いる電子マネーの種類を、利用者の入力動作、たとえば選択ボタンを押す動作により選択し、選択された電子マネーに対応する決済処理プログラムを実行する電子マネー端末装置がある。この電子マネー端末装置によると、Edy(登録商標)、Suica(登録商標)、Quickpay(登録商標)などの複数種の電子マネー決済が1台の端末装置で対応することができる。
また、本願出願人においても、電子マネー決済装置のかざし部から見て、その上部に、この選択ボタンを設けた電子マネー端末を実施している。
【0003】
しかし、上記した従来の技術では、せっかく電子マネー記憶媒体をかざし部にかざすだけで決済を行えるのに、選択しようとする電子マネーの種別を決済端末に入力する(あるいは選択ボタンを押す)といった操作が必要なので、利用者に煩わしさを起こさせ、電子マネー決済が遅延化する。
【0004】
そこで、電子マネーの種別ごとにエリアが区分けして形成されるとともに、各エリアに対する電子マネー記憶媒体の近接操作または接触操作を受け付けるガイド部を有する操作受付手段と、前記ガイド部に形成されたエリアのうち、前記電子マネー記憶媒体の近接操作または接触操作がいずれのエリアに行われたかを特定するエリア特定手段とを備えた電子マネー決済端末が提案されている。この電子マネー決済端末によれば、利用者が決済に用いる電子マネーの種別に対応するエリアに、電子マネー記憶媒体を近接若しくは接触させれば、電子マネーの種別を指定する操作を別途行うことなく決済ができる(例えば、引用文献1参照)。
【0005】
更に従来、複数のアンテナを設け、各アンテナにそれぞれ対応する電子マネーを設定しておき、作業者が1つのアンテナを選択して電子マネー記憶媒体をアンテナに近接させることで、電子マネー記憶媒体と通信するカードリーダーライターが提案されおり、このカードリーダーライターでは、選択されたアンテナを特定するために複数のアンテナの間に導体を設けるようにしている(たとえば、特許文献2参照)。
【0006】
なお、従来、電子マネーの種別を選択させる電子マネー決済装置ではないが、複数の商品から利用者が購入したい商品を選択させる商品自動選択装置がある。この商品自動選択装置は、複数のアンテナを設け、各アンテナにそれぞれ対応する商品を設定しておき、作業者が1つのアンテナを選択して電子マネー記憶媒体をアンテナに近接させることで、電子マネー記憶媒体と通信する。この商品選択装置では、利用者が、購入したい商品に対応するアンテナにマネー電子記憶媒体をかざすという簡易な動作によって、商品の購入することができる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−258853号公報
【特許文献2】特開2009−266062号公報
【特許文献3】特開2000−268239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、複数の電子マネーによる決済が可能で、利用者の煩わしさの解消や電子マネー決済の迅速化を図るという課題を解消した電子マネー決済装置はすでに提案されているが(特許文献1及び特許文献2参照)、上記操作受付手段を具えた従来の電子マネー決済装置(特許文献1の図6参照)の場合、操作受付手段のガイド部を設けることが難しく、そのため電子マネー決済装置全体の製作が難しいという課題がある。この課題は、上述した複数のアンテナを設けた電子マネー決済装置によって解消できる(特許文献2、特許文献3参照)。
【0009】
しかし、このカードリーダーライター(特許文献2参照)では、アンテナからの電磁波の拡がりによって、アンテナから離れたところでは電磁波が重なり合うので、利用者が電子マネーの種別選択に使用する領域(アンテナの感度範囲)はかざし部の表面に限られるという問題がある。
【0010】
したがって、本願の課題は、限られた範囲内に複数のアンテナを設置して電子マネー記憶媒体との通信を行う電子マネー決済装置において、利用者が電子マネーの種別選択に使用する領域が望ましく、利用し易い電子マネー決済装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本願請求項1の発明は、ICカード、携帯電話機その他の電子マネー記憶媒体と非接触で通信する電子マネー決済装置であって、前記電子マネー記憶媒体との通信用として同一面に並列配置された3つのアンテナと、前記3つのアンテナの互いに隣り合うアンテナ間にそれぞれ設けられ、前記3つのアンテナのうちの各側方アンテナの一側面と、その側方アンテナの正面の一部を覆うシールドと、前記各側方アンテナの正面側にそれぞれ設けられたフィルターと、前記3つのアンテナのそれぞれに対応した電子マネーの種類が視覚可能な電子マネー発光表示部と、前記電子マネー発光表示部が表示する電子マネーを決済対象の電子マネーとして選択完了するまで案内する発光インジケータ部と、前記電子マネー発光表示部の点灯を制御し、かつ前記発光インジケータの発光を制御する制御部とを具えたことを特徴としている。
【0012】
また、本願請求項2の発明は、本願請求項1の発明において、前記シールドは、側方アンテナの正面の一部を覆う第一の片と、その側方アンテナの一側面を覆う第二の片と、その側方アンテナの背面の一部を覆う第三の片とを有する断面L字状の板金を具えたことを特徴としている。
【0013】
また、本願請求項3の発明は、本願請求項1の発明において、前記フィルターは、水平方向に沿って形成された複数の長孔からなるスリットを設けた板金であることを特徴としている。
【0014】
また、本願請求項4の発明は、本願請求項1の発明において、前記シールドと前記フィルターとが、一体的に形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子マネー決済装置は、電子マネー記憶媒体と非接触で通信する電子マネー決済装置であって、電子マネー記憶媒体との通信用として同一面に並列配置された3つのアンテナと、3つのアンテナの互いに隣り合うアンテナ間にそれぞれ設けられ、3つのアンテナのうちの各側方アンテナの一側面と、その側方アンテナの正面の一部を覆うシールドと、各側方アンテナの正面側にそれぞれ設けられたフィルターと、3つのアンテナのそれぞれに対応した電子マネーの種類が視覚可能な電子マネー発光表示部と、電子マネー発光表示部が表示する電子マネーを決済対象の電子マネーとして選択完了するまで案内する発光インジケータ部と、電子マネー発光表示部の点灯を制御し、かつ発光インジケータの発光を制御する制御部とを具えているため、3つのアンテナを近づけて設置しても、それぞれのアンテナは十分な感度を保持しつつ、利用者が使用するかざし部正面に近接する箇所では、側方アンテナの感度範囲が中央アンテナの感度範囲から遠ざかるため、利用者が使用し易いという効果がある。
【0016】
したがって、この発明により、限られた範囲内に複数のアンテナを設置して電子マネー記憶媒体との通信を行う電子マネー決済装置であって、利用者が電子マネーの種別選択に使用する領域が望ましく、利用し易い電子マネー決済装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本願実施例1の電子マネー決済装置が自動販売機に取り付けられた状態を示す概念斜視図であって、自動販売機の正面から露出した箇所を示している。
【図2】図2は図1の電子マネー決済装置の構成のうち、アンテナ、フィルター及びシールドの構成を示す図であって、図2(a)はアンテナ、フィルター及びシールドの配置関係を説明する電子マネー決済装置の概念水平断面図であり、図2(b)はフィルターの構成と、フィルター及びアンテナの配置関係を説明する電子マネー決済装置の概念鉛直断面図である。
【図3】図3は図1の電子マネー装置の構成を示す分解組み立て斜視図である。
【図4】図4は図1の電子マネー装置の装置本体の分解組み立て斜視図である。
【図5】自動販売機に取り付けられた図1の電子マネー決済装置の概念水平断面図である。
【図6】図6は図1の電子マネー決済装置の制御ブロック図である。
【図7】図7はフィルター及びシールドが中央アンテナおよびその両側の側方アンテナの各感度範囲におよぼす影響についての実験を説明する図であり、特に図7(a)はその測定方法に関して図示し、図7(b)はフィルターとシールドを設けない従来の電子マネー決済装置の実験結果を示し、図7(c)はフィルターとシールドを設けた本願実施例の電子マネー決済装置の実験結果を示したものである。
【図8】図8は図1の電子マネー決済装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】図9(a)〜(g)は図1の電子マネー決済装置の電子マネー発光表示部、発光インジケータ部及びかざし発光部の動作を示す、電子マネー決済装置の各概念正面図である。
【図10】図10は本願実施例2の電子マネー決済装置が自動販売機に取り付けられた様子を示す概念水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明に係わる電子マネー決済装置を詳述する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本願実施例1の電子マネー決済装置が自動販売機に取り付けられた状態を示す概念斜視図であって、自動販売機101の正面101aから露出した箇所を示している。
この実施例1の電子マネー決済装置1は、電子マネー記憶媒体81と非接触で通信する装置であって、少なくとも3種の電子マネーA、B、Cによる決済が可能な装置である。
【0020】
図1の電子マネー決済装置1の正面1aには、インターフェースシール16が配設されており、このインターフェースシール16は、かざし部2の表面を形成するとともに、かざし部2の背面側からの光を通過させることで電子マネーの種類名称(ロゴを含む。以下同じ)が表示される電子マネー発光表示部51と、電子マネー記憶媒体81と通信して電子マネーの決済処理を行うとき、電子マネー表示部51が発光によって示す電子マネーの選択の開始から決定までの状況を光によって示す為の発光インジケータ部55とを形成している。
【0021】
このうち、電子マネー発光表示部51は、電子マネーB、A、Cの種類名称がそれぞれ表示される発光部53、52、54を具えている。
この各発光部53、52、54は、インターフェースシール16に表示され電子マネーB、A、Cの各ロゴをそれぞれ囲む領域に配置され、この各領域を発光させることによって、それぞれ、電子マネーB、A、Cの種類名称を表示するものである。
【0022】
また、発光インジケータ部55は、選択要求発光部56、「書き込み」発光部57、選択機能タイマー発光部58を具えている。
このうちの選択要求発光部56は、発光により、利用者に対し選択を要求する旨を表示する。
また、「書き込み」発光部57は、発光により、書き込み処理が行われている旨を表示する。
選択機能タイマー発光部58は、一列に配置された複数の発光部58aを具えている。
選択機能タイマー発光部58は、自動販売機の商品販売ボタンが押圧され、これによる代金要求信号(後述)を受けた時点から、電子マネーの種別選択が機能する一定時間(以下「選択機能時間」という。)が終了するまでの経過時間を表示するものであり、この経過時間を、一端側の発光部58aから順次発光させ、この発光する発光部58aの数を1つずつ増加させることにより表示する。
【0023】
また、インターフェースシール16は、発光によってかざし部2の位置を示すかざし発光部59をも形成しており、かざし発光部59はかざし部2を囲む領域に配置されている。
【0024】
電子マネー表示部51の発光部53、52、54、発光インジケータ部55の選択要求発光部56、「書き込み」発光部57、選択機能タイマー発光部58の各発光部58aおよびかざし発光部59は、それぞれ無機ELによって発光する発光部である。
なお、インターフェースシール16には、選択機能タイマー発光部58の各発光部58aの発光数が、選択機能時間の終了までの経過時間を示している旨が表示されている。
【0025】
図2は、図1の電子マネー決済装置の構成のうち、アンテナ、フィルター及びシールドの構成を示す図である。図2(a)はアンテナ、フィルター及びシールドの配置関係を説明する電子マネー決済装置の概念水平断面図であり、図2(b)はフィルターの構成と、フィルター及びアンテナの配置関係を説明する電子マネー決済装置の概念鉛直断面図である。なお、図2乃至後述する図10では、図1と同一部分を同一符号を用いて図示している。
図2(a)で示すように、電子マネー決済装置1には、かざし部2の背面側に、電子マネー記憶媒体81との通信用の3つのアンテナ3b、3a、3cが設けられている。この3つのアンテナ3b、3a、3cは、図2(b)で示すように同一面上に並列配置されたアンテナであり、同一種のアンテナである。
また、3つのアンテナ3b、3a、3cは、これらのうち中央に位置するアンテナ3a(以下「中央アンテナ」という。)と、中央アンテナとそれぞれ隣り合う2つのアンテナ3b、3c(この各アンテナを「側方アンテナ」という。)からなる。
この一方の側方アンテナ3b、中央アンテナ3a、および他方の側方アンテナ3cは、電子マネーB、AおよびC(図1参照)にそれぞれ対応して設けられている。
また、図2(a)のR2、R1、R3は、それぞれ電子マネー記録媒体81に記録された電子マネーB、A、Cを検出可能な領域を示し、互いに重ならない様に設定されていることを示している。
これにより、電子マネー記録媒体81がR2の領域にあると側方アンテナ3bによって電子マネーAを検出し、R1の領域にあると中央アンテナ3aによって電子マネーBを検出し、R3の領域にあると電子マネーCを検出することができる。
【0026】
また、この電子マネー決済装置1は、図2(a)で示すように3つのアンテナ3b、3a、3cの互いに隣り合うアンテナ間に、シールド4がそれぞれ設けられている。この各シールド4は、少なくとも断面L字状の板金を具えて構成されている。
【0027】
また、図2(a)及び図2(b)で示すように、側方アンテナ3b、3cの各正面側に、フィルター7がそれぞれ設けられている。この各フィルター7は、側方アンテナ3b又は3cの正面を間隔を隔てて覆っている。
各フィルター7は、図2(b)で示すように複数のスリット8を設けた板金である。この各スリット8は板金に形成された長孔からなる。各スリット8は、その長手方向が3つのアンテナ3b、3a、3cを並べた方向である水平方向に沿って形成されている。また、複数のスリット8は鉛直高さ方向に並べて形成されている。
【0028】
また、各フィルター7の横幅W1は、各側方アンテナ3b、3cの横幅Dの、少なくとも2倍の大きさである(W1≧2×D)。また、各フィルター7には、その横幅方向の両側に、スリット8が形成されていない端部7a、7bが形成されている。この端部7a、7bのうち中央アンテナ3a側に位置する端部7aは、側方アンテナ3b、3cの、横幅方向の中央アンテナ側の端10aをシールド4を介し覆っており、また各スリット8は、フィルター7により覆われる側方アンテナ3b、3cの横幅を超えた位置まで達している。そして、フィルター7の中央アンテナ3cとは反対側に位置する端部7bの横幅W3は端部7aの横幅W2よりも小さくされている。さらに、この実施例の電子マネー決済装置1の各フィルター7および各スリット8は、ケース13(後述)の外側まで延設されている。
また各フィルター7および各シールド4は、その各高さが、いずれも各アンテナ3b、3a、3cの高さhを超える高さに設定されている。なお、図2(b)では、各フィルター7の高さHがアンテナの高さhを超えている点を図示している。
【0029】
次に、この電子マネー決済装置1のより詳細な構成について説明する。
図3は図1の電子マネー装置の構成を示す分解組み立て斜視図である。
図3で示すように、電子マネー決済装置1は、3つのアンテナ3b、3a、3cと各シールド4が収容された装置本体11と、接着シート15と、フィルター7と、インターフェースシール16とを具えている。
【0030】
装置本体11は、その分解組み立て斜視図である図4で示すように、ベース14が取り付けられた本体12と、その正面側を覆うケース13とを具えている。このベース14に各シールド4を取り付け、さらにベース14に側方アンテナ3b、中央アンテナ3aおよび側方アンテナ3cを取り付ける。そして、ベース14、3つのアンテナ3b、3a、3cおよび各シールド4をケース13で覆い、該ケース13を本体部12に固定すると、装置本体11を組み立てることができる。
【0031】
また、組み立てた装置本体11を、図3で示すように、自動販売機101の正面101aの背面側に配置するとともに、ケース13を自動販売機101の正面101aの孔101bに臨ませ、装置本体11を正面101aに取り付ける。またこの正面101aに接着シート15とを配置し、その接着シート15の正面にフィルター7を配置する。さらにフィルター7の正面にインターフェースシール16を配置する。すると、電子マネー決済装置1を組み立てて自動販売機101に取り付けることができる。
なお、接着シート15にはその両面に接着剤が塗布されている。また、インターフェースシール16は背面に接着剤が塗布されたシートである。なお、符号15bは、接着シート15を自動販売機101に取り付ける際、自動販売機101の孔101bに位置決め合致される接着シート15の孔である。
【0032】
図5は、自動販売機に取り付けられた図1の電子マネー決済装置の概念水平断面図である。
図5で示すように、各シールド4は、側方アンテナ3b又は3cの正面の一部を覆う第一の片4aと、その側方アンテナ3b又は3cの一側面を覆う第二の片4bと、その側方アンテナ3b又は3cの背面の一部を覆う第三の片4cとを具えている。
また、このうちの第二の片4bは、第一の片4aと第三の片4cとを連結しており、第二の片4bは中央アンテナ3aと一方の側方アンテナ3b間、およびに中央アンテナ3aと他方の側方アンテナ3cとの間にそれぞれ配置される。
また、各第二の片4bは、一方の表面で側方アンテナ3b又は3cの一側面を覆い、他方の表面で中央アンテナ3aの一側面を覆う。また、中央アンテナ3aは、その横幅方向の両側面を、2つの側方アンテナ3b及び3cの各第二の片4bに挟まれる。
また、第一の片4aによって覆われる側方アンテナ3b又は3cの正面の一部には、側方アンテナ3b又は3cの、中央アンテナ3aが配置されている側の端10aが含まれており、この端10aから側方アンテナ3b又は3cの正面の一部が第一の片4aによって覆われる。
また、第三の片4cによって覆われる側方アンテナ3b又は3cの背面の一部には、側方アンテナ3b又は3cの、中央アンテナ3aが配置されている側の端10bが含まれており、この端10bから側方アンテナ3b又は3cの背面の一部が第三の片4cによって覆われる。
なお、第一の片4a、第二の片4b、第三の片4cは、それぞれが覆っている側方アンテナ3b又は3cと中央アンテナ3aとから間隔を隔てて配置されている。
なお、中央アンテナ3aの正面および背面は、シールド4によって覆われることはない。
【0033】
図6は図1の電子マネー決済装置の制御ブロック図である。
この電子マネー決済装置101は、その装置本体11内に、図6で示すように電子マネー記憶媒体81と通信を行う通信部31を具えている。
この通信部31は、3本のアンテナ3によって電子マネー記憶媒体81を検出し、また検出した電子マネー記憶媒体81に記憶された利用可能な電子マネーの種別を検出する。なお、通信部31は、3本のアンテナ3b、3a、3cが接続されたアンテナコントロールボードを具えてなる。
【0034】
次に、フィルター4及びシールド7が、中央アンテナ3aおよびその両側の側方アンテナ3b、3cの各感度範囲におよぼす影響を、図7で示すように実験によって確認した。
図7は、フィルター4及びシールド7が中央アンテナ3aおよびその両側の側方アンテナ3b、3cの各感度範囲におよぼす影響についての実験を説明する図であり、このうち図7(a)は特にその測定方法に関して図示したものである。
この実験は、電子マネー記憶媒体81の一例である携帯電話機が、中央アンテナ3aおよびその両側の側方アンテナ3b、3cのそれぞれと通信が成立するのは、携帯電話機が、3つのアンテナ3a、3b、3cに対しどの配置にかざされたかを調べるものである。その配置を調べる基準として中央アンテナ3aの中心位置O(中央アンテナ3aの横幅の中心でありかつ高さの中心位置)を用いた。
【0035】
より具体的には、図7(a)で示すように、中央アンテナ3aの中心位置Оと携帯電話機の中心位置Pとの間の横幅方向の距離(アンテナの幅方向の距離)X、およびその測定値Xにあるアンテナ3b、3a、3cと携帯電話機との間に通信が成立する、中央アンテナ3aの中心Оと携帯電話機の中心Pとの間の奥行方向の距離Yを測定した。
なお、中央アンテナ3aの正面と側方アンテナ3b、3cの各正面は同一の平面上に並列配置されている。また、中央アンテナ3aと側方アンテナ3b、3cは同一種のアンテナである。
【0036】
図7(b)はフィルターとシールドを設けない場合の電子マネー決済装置の実験結果を示し、図7(c)はフィルターとシールドを設けた本願実施例の電子マネー決済装置の実験結果を示したものである。そして、図中30a、30b、30cはそれぞれ中央アンテナ3a、一方の側方アンテナ3b、他方の側方アンテナ3cの感度範囲を示している。
図7(b)に示すように、フィルター7とシールド4を設けない場合には、感度範囲30aと感度範囲30bの重なり、感度範囲30aと感度範囲30cの重なりがそれぞれ大きい。これらの各重なりに比べ、図7(c)で示すように、フィルター7とシールド4とを設けた場合には、感度範囲30aと感度範囲30bとの重なり、感度範囲30aと30cとの重なりはそれぞれ小さい。
これは、シールド4によって隣り合うアンテナ同士の干渉、すなわち中央アンテナ3aと一方の側方アンテナ3bの干渉又は隣り合う中央アンテナ3aと他方の側方アンテナ3aの干渉を防ぎ、フィルター7によって感度範囲30b、又は30cを全体的に狭くし且つ中央アンテナ3aから遠ざかる方向に感度範囲30b又は30cが変わっていることを示している。
【0037】
このように、この電子マネー決済装置1では、シールド4が、3つのアンテナ3b、3a、3cの互いに隣り合うアンテナ間にそれぞれ設けられるとともに、この各シールド4が、少なくとも、各側方アンテナ3b又は3cの一側面と、その側方アンテナ3b又は3cの正面の一部を覆っているから、隣り合うアンテナ同士の感度範囲の干渉を可及的に防ぐことができる。
より具体的には、側方アンテナ3bからの電磁波による感度範囲30b又は側方アンテナ3cからの電磁波による感度範囲30cが、中央アンテナ3aからの電磁波による感度範囲30aに干渉することを可及的に防ぐことができる。
特に、利用者が使用するかざし部2の正面に近接する箇所では、該正面から離れた箇所に比べて隣り合うアンテナ同士の感度範囲の干渉防止効果が大きい。
【0038】
また、この電子マネー決済装置1では、各側方アンテナ3b、3cの正面側にそれぞれ2つのフィルター7を設けているから、各フィルター7を設けない場合に比べ、各感度範囲30b、30cをそれぞれ全体的に狭くし且つ中央アンテナ3aの感度範囲30aから遠ざかる方向に感度範囲を変えることができる。
【0039】
従来、仮に3つのアンテナ3b、3a、3cを設置した電子マネー決済装置を創作しようとすると、図7(b)のように、利用者が使用するかざし部正面に近接する箇所では、隣り合うアンテナ同士の感度範囲の干渉が生じ、これを防止するためには、アンテナ3b、3a、3cを互いに離して配置する必要がある。
これに対し、本願発明の電子マネー決済装置1では、上記したように、シールド4とフィルター7を具えているから、3つのアンテナ3b、3a、3cを互いに近づけて設置しても、各アンテナ3b、3a、3cは十分な感度を保持しつつ、利用者が使用するかざし部2の正面に近接する箇所では、各側方アンテナ3b、3cの感度範囲30b、30cが中央アンテナ3aの感度範囲30aから遠ざかることで、利用者が使用し易くできる。
そのため、この発明によれば、限られた範囲内に複数のアンテナ3a、3b、3cを設置して電子マネー記憶媒体81との通信を行う電子マネー決済装置1において、利用者が電子マネーの種別選択に使用する領域(各アンテナ3a、3b、3cの感度範囲)が望ましいものとなり、利用し易い電子マネー決済装置を提供することができる。
【0040】
またさらに、この実施例の電子マネー決済装置1のように、シールド4を、各側方アンテナ3b又は3cの正面の一部を覆う第一の片4aと、その側方アンテナ3b又は3cの一側面を覆う第二の片4bと、その側方アンテナ3b又は3cの背面の一部を覆う第三の片4cを有する断面L字状の板金を具えたものとすれば、第三の片4cは上述した第一の片4aと同様に隣り合うアンテナ同士の感度範囲の干渉を可及的に防ぐ効果を生じさせるため、第三の片4cを具えていないシールド4に比べてこの干渉を防ぐ効果を一層高めることができる。
【0041】
さらに、この実施例の電子マネー決済装置1のように、シールド4を、各側方アンテナ3b又は3cの正面の一部を覆う第一の片4aと、その側方アンテナ3b又は3cの一側面を覆う第二の片4bと、その側方アンテナ3b又は3cの背面の一部を覆う第三の片4cを有する断面L字状の板金を具えたものとすれば、シールド4の第一の片4a第二の片4b及び第三の片4cを個々にベース14に取り付ける場合に比べて、シールド4の取り付けが簡単となる。なお、第三の片4cはベース14に沿って配置され、シールド4をベース14に取り付けるための取付部としても機能するので、この第三の片4cがあると、シールド4のベース14への取り付けが一層簡単となる。
【0042】
なお、上述したように、この電子マネー決済装置1では、フィルター7によって各側方アンテナ3b、3cの感度範囲30b、30cを、中央アンテナ3aの感度範囲30aから遠ざかる方向に変えることができるが、これは、特にフィルター7が複数の長孔からなるスリット8を設けた板金であって、各スリット8が3つのアンテナ3b、3a、3cを並べた方向に沿って形成されているので、各側方アンテナ3b、3cからの電磁波が、その側方アンテナの正面側を覆うフィルター7の各スリット8の形成方向(長手方向)である水平方向に沿ってガイドされ、これにより、各電磁波による感度範囲30b、30cが中央アンテナ3aの感度範囲30aから遠ざかる方向に変わることによるものである。
【0043】
ただし、この電子マネー決済装置1では、図7(c)で示すように、中央アンテナ3aと各側方アンテナ3b、3cの感度範囲とが重なる部分は、少ないが存在する。この感度範囲が重なる部分では、中央アンテナ3aと側方アンテナ3bの双方が携帯電話機等の電子マネー記憶媒体81を検出し、又は中央アンテナ3aと側方アンテナ3cの双方が電子マネー記憶媒体81を検出する。そこで、この場合には、制御部41(後述)が、中央アンテナ3aによる検出結果を、各側方アンテナ3b、3cによる検出結果よりも優先させ、中央アンテナ3aによって電子マネー記憶媒体81が検知されたとみなす。
図2(a)には、このみなし処理によって、中央アンテナ3aによる電子マネー記憶媒体81の検出があったとみなされる感度範囲R1、側方アンテナ3bによる電子マネー記憶媒体81の検出があったとみなされる感度範囲R2および側方アンテナ3cによる電子マネー記憶媒体81の検出があったとみなされる感度範囲R3で図示しており、これら感度範囲R1、R2、R3が互いに重らない様子が概念的に表されている。
【0044】
次に本実施例の電子マネー決済装置1の動作について説明する。
図6に示す通信部31のアンテナコントロールボードは、3つのアンテナ3b、3a、3cのうちいずれか一つのアンテナを、電子マネー記憶媒体81の位置を検出するためのアンテナとするアンテナの切り替え動作を行っている。この検出のためのアンテナとして、側方アンテナ3b、中央アンテナ3a、側方アンテナ3cを一定時間おきに順次切り替えるが、このアンテナ3b→3a→3cの切り替えを1サイクルとして、そのサイクルを繰り返し行っている。
【0045】
また、電子マネー決済装置は、通信部31によって検出した結果を受け付ける制御部41を具えている。制御部41は、受け付けた検出結果から、3つのアンテナ3のうちどのアンテナによって電子マネー記憶媒体81を検出したか、および検出した電子マネーの種別はA、B、Cのいずれに該当するか、利用可能な電子マネーは存在するか又は利用可能な電子マネーは複数あるか等を判断する。
【0046】
また、制御部41は、電子マネーの種別が選択されたと判断したときは、その選択された電子マネー記憶媒体81の種別A、B、Cに対応した各決済アプリケーションを実行し、またその実行に基づき、決済処理を行う。
また制御部41は、電子マネー記憶媒体81に対して情報の書き込み処理を行うリーダライタ部(図示しない)を具えており、決済状況により、このリーダライタ部に、通信部31を介して決済情報の書き込み処理を行わせる。
【0047】
また、制御部41は、決済処理状況や通信部31からの検出結果等に基づきスピーカー部33を制御する。
【0048】
また、制御部41は、決済処理状況や通信31からの検出結果等に基づき、電子マネー発光表示部51の発光、発光インジケータ部55の発光、かざし発光部59の発光を制御する。
【0049】
また、スピーカー部33は、スピーカーを具えてなり、制御部41の指示により、決済処理状況や通信部31からの検出結果等を、スピーカー音の発生またはその停止によって利用者に案内する。
【0050】
電子マネー発光表示部51は、3つのアンテナのそれぞれに対応した電子マネーの種類B、A、Cを各発光によって視覚可能にしている。
この電子マネー発光表示部51は、制御部41の指示により、通信部31からの検出結果等を、電子マネーB、A、Cに対応する各発光部53、52、54の発光又はその停止を行うことによって利用者に案内する。
【0051】
また、発光インジケータ部55は、電子マネー発光表示部51が表示する電子マネーを決済対象の電子マネーとして選択完了するまで案内するものである。
この発光インジケータ部55は、制御部41の指示により、決済処理状況を、選択要求発光部56、「書き込み」発光部57、選択機能タイマー発光部58の各発光部58aの各発光又はその停止を、それぞれ行うことによって、利用者に案内する。
【0052】
また、かざし発光部59は制御部41の指示により、決済処理状況又は検出結果等を、かざし部2を囲む領域59の発光又はその停止によって、利用者に案内する。
【0053】
次に、電子マネー決済装置1の動作を、フローチャートを用いて説明し、併せて構成をより詳細に説明する。
図8は図1の電子マネー決済装置の動作を示すフローチャートであり、図9(a)〜(g)は、図1の電子マネー決済装置の電子マネー発光表示部、発光インジケータ部及びかざし発光部の動作を示す、電子マネー決済装置の各概念正面図である。
【0054】
図8で示すように、まず自動販売機に電子マネー決済装置1を搭載した場合、電子マネー決済装置1は、決済処理を停止しているスタンバイモードであり(ステップS101)、図9(a)で示すように、かざし発光部59と、電子マネーB、A及びCに対応する各電子マネー発光表示部51の発光部53、52および54、選択要求発光部56(図9(b)参照)、「書き込み」発光部57(図9(b)参照)及び選択機能タイマー発光部58の各発光部58a(図9(e)参照)は、発光していない。
このスタンバイモードにおいて、自動販売機の商品選択ボタンが押されると、制御部41は、図示しない自動販売機の制御部から商品選択ボタンの押下によって選択された商品(ジュース等)の代金要求信号を受信し、その代金要求信号に基づいて電子マネーの決済処理(決済モード)が開始する。
まず、この電子マネー決済処理の一処理として、上記した代金要求信号に基づき、通信部31は、代金要求信号を受けた時点からの経過時間の測定を開始し(ステップ102)、通信部31は通信を開始する。この通信では、電子マネー記憶媒体81の位置を検出するための複数のアンテナをアンテナ3b→3a→3cの順で順次切り替える上記サイクルを行う(ステップ103)。
なお、上記した経過時間の測定の開始は、選択機能時間のカウントダウンに用いられる。
【0055】
また、上記した代金要求信号に基づき、図9(b)で示すように、かざし発光部59が発光し、電子マネー発光表示部51の電子マネーB、A及びCに対応する各発光部53、52および54が発光する。
【0056】
また、制御部41は、選択機能時間内に、アンテナにおいて通信できる電子マネー記憶媒体81があるか否かのチェックを行う(ステップ104)。
このチェックで、各アンテナにおいて通信出来る電子マネー記憶媒体81の電子マネーが検出されないときは(ステップ104でNO)、選択機能時間に達したか(タイムアウトしたか)否かを判断し(ステップ105)、選択機能時間に達していない場合はステップ103に戻る。一方、ステップ105で選択機能時間に達したと判断した場合は、決済処理が出来なかった旨の信号を自動販売機の制御部へ送出し(ステップ106)、決済処理を停止して、スタンバイモードに戻る(ステップ101)。
【0057】
また、ステップ104で制御部41は選択機能時間内に、通信できる電子マネー記憶媒体81の電子マネーが検知されたと判断したときは(ステップ104でYES)、電子マネー記憶媒体81に、決済状況に基づき、利用可能な電子マネーがあるか否か、及びその利用可能な電子マネーの種別を特定する。そして、この利用可能な電子マネーが複数あるか否かを判断する(ステップ107)。
そして、この判断によって、利用可能な電子マネーが複数でないと判断したときは(ステップ107でNO)、さらに、利用可能な電子マネーがあるか否かを判断し(ステップ108)、利用可能な電子マネーがない場合には(ステップ108でNO)、決済処理が出来なかった旨の信号を自動販売機の制御部へ送出し(ステップ106)、決済処理を停止して、スタンバイモード(ステップ101)に復帰する。
【0058】
一方、ステップ108で制御部41が利用可能な電子マネーがある場合には(ステップ108でYES)、利用可能な電子マネーが1種類であると判断し、選択機能時間の終了を待たずに、その検出した電子マネー記憶媒体81の種別B、A、Cに対応した決済アプリケーションを自動的に実行し、決済状況により電子データ記憶媒体81に対し決済情報の書き込み処理を行わせる(ステップ109)。
たとえば、図9(c)で示すように、かざし部2にかざれた電子マネー記憶媒体81が1種類の電子マネーBが記憶されたカードであって、この電子マネーBを検出した場合には、制御部41は、その電子マネーBが自動的に選択されたと判断し、選択機能時間の終了を待たずに、この電子マネーの種別Bに対応した決済アプリケーションを自動的に実行し、決済状況によって、このカードに対し決済情報の書き込み処理を行わせる(ステップ109)。
また、電子マネー記憶媒体81が携帯電話機であって、この携帯電話機で利用可能な電子マネーが1種類、たとえば電子マネーBであると制御部41が判断した場合にも、制御部41は、ステップ109の処理を行う。
また、決済情報の書き込み処理(ステップ109)の終了後は、制御部41は、その処理結果である決済情報の書き込み処理を終了した旨の信号を自動販売機の制御部に送信し(ステップ106)その後、スタンバイモードに復帰する(ステップ101)。なお、ステップ108において、検出した電子マネーの種類が1種類のときは、いずれのアンテナが検出してもステップ109の処理を行う。
また、自動販売機の制御部は、ステップ106での、この処理結果の信号を受信して商品排出口から商品を排出させる。
【0059】
また、ステップ109の決済処理の際、図9(c)で示すように、かざし発光部59および選択された電子マネーBに対応する電子マネー発光表示部53が発光し、選択されなかった電子マネーA及びCに対応する各電子マネー発光表示部52、54は発光しない。また、「書き込み」発光部57は発光して書き込み処理が行われている旨を表示させる。また、選択要求発光部56(図9(b)参照)および選択機能タイマー発光部58の各発光部58a(図9(e)参照)は発光しない。
【0060】
一方、ステップ107において、制御部41が利用可能な電子マネーの種別を検知した結果、検知した電子マネーの種別が複数であると判断したときには(ステップ107でYES)、通信しているアンテナの位置から決済する電子マネー記憶媒体81の電子マネーの種別を判定し(ステップ110)、選択機能時間が終了していない場合には(ステップ111でNO)、この電子マネーの種別の判定処理(ステップ110)へ戻る。
【0061】
また、ステップ110の判定の際、制御部41は、その判定の時点で判定された電子マネーの種別が、決済する電子マネーとして選択されたと判断し、その選択された電子マネーに対応する1つの電子マネー発光表示部53、52又は54と、選択要求発光部56(図9(b)参照)とかざし発光部59とが発光し、選択されなかった電子マネーに対応する各電子マネー発光表示部は発光しない。また、「書き込み」発光部57は発光しない。
たとえば、図9(d)で示すように、電子マネー記憶媒体81が、正面1aからみて、電子マネーAに対応する中央の位置にかざされて、携帯電話機がアンテナ3aと通信し、その結果ステップ110において選択され決済すべき電子マネーが電子マネーAであると判断し、その電子マネーAに対応する電子マネー発光表示部52、選択要求発光部56およびかざし発光部59が発光する。また、選択されなかった電子マネーB及びCに対応する各電子マネー発光表示部53、54は発光しない。また、「書き込み」発光部57は発光しない。
また、制御部41がこの判定を行っている選択機能時間内では、制御部41は、利用者による電子マネーの種別選択の変更を受け付けている。
たとえば、電子マネー記憶媒体81のかざし位置が、正面1aからみて、図9(d)で示すように電子マネーAが選択された中央の位置から3つのアンテナを並べた方向に沿って一側方(たとえば左位置)へ動くと、携帯電話機が通信するアンテナが中央アンテナ3aから側方アンテナ3bに変更され、その結果、ステップ110において決済する電子マネーの選択が、電子マネーAから電子マネーBに変更される。この変更に基づき、図9(e)で示すように、選択前の電子マネーAに対応する電子マネー発光表示部52の発光が停止するとともに、選択後の電子マネーBに対応する電子マネー発光表示部53が発光する。また、かざし発光部59および選択要求発光部56は発光を維持し、「書き込み」発光部57は発光しない。
【0062】
また、選択機能タイマー発光部58の各発光部58aは、選択機能時間終了までの間、図9(f)で示すようにその時間の経過とともに、その一端側の各発光部58aから1つずつ追加的に発光する。
【0063】
そして、ステップ111において、この選択機能時間が終了した場合には(ステップ111でYES)、選択機能時間の終了時点で通信しているアンテナの位置から決済する電子マネーを判断し、この電子マネーの種別に対応する決済アプリケーションを実行し、決済状況によって、データ記憶媒体81に対し決済情報の書き込み処理を行う(ステップ112)。
なお、選択機能時間経過後の電子マネーの選択変更は受け付けない。
たとえば選択機能時間が終了した時点で、図9(g)で示すように、携帯電話機がアンテナ3bと通信していた場合、決済する電子マネーとして電子マネーBが選択されたと判断し、この電子マネーBに対応する決済アプリケーションを実行し、決済状況によって、電子マネー記憶媒体81に対し決済情報の書き込み処理を行う。
【0064】
また、ステップ112の決済処理の際、電子マネー発光表示部51の発光部53、52および54のうち、選択機能時間が終了した時点の判定により、決済する電子マネーとして選択された電子マネーの種別に対応する1つの発光部53、52又は54が発光し、選択されなかった電子マネーの種別に対応する発光部は発光しない。
たとえば、図9(g)で示すように、選択機能時間が終了した時点の判定により、決済する電子マネーの種別として選択された電子マネーが電子マネーBであるときは、その時点で選択された電子マネーの種別Bに対応する発光部53が発光し、選択されなかった電子マネーの種別AおよびCに対応する発光部52及び54(図9(b)参照)は、発光しない。
また、かざし発光部59および選択要求発光部56は各発光を維持する。
また、選択機能時間終了によって、図9(g)で示すように、選択機能タイマー発光部58を構成するすべての発光部58aが発光し、その後、ステップ112の決済処理の際、「書き込み」発光部57が発光して書き込み処理が行われている旨を表示する。
なお、選択されなかった電子マネーA及びCに対応する各電子マネー発光表示部52、54は、各発光の停止を維持する。
このステップ112の実行による決済情報の書き込み処理の終了後は、その処理結果である書き込みが終了した旨の信号を自動販売機の制御部へ送信し(ステップ106)その後、スタンバイモードに復帰する(ステップ101)。
なお、自動販売機の制御部は、ステップ106でのこの処理結果の信号を受信して商品排出口から商品を排出させる。
【0065】
この電子マネー決済装置1では、3つのアンテナのそれぞれに対応した電子マネーの種類A、B、Cが視覚可能な電子マネー発光表示部51と、電子マネー発光表示部51が表示する電子マネーを決済対象の電子マネーとして選択完了するまで案内する発光インジケータ部55と、電子マネー発光表示部51の点灯を制御し、かつ発光インジケータ55の発光を制御する制御部41とを具えているから、これを設けない従来のものに比べ、利用者が電子マネー記憶媒体81をかざした際に、どの電子マネーの種別を選択した状態にあるのかを容易に確認でき、電子マネー選択の操作を誤るおそれを可及的に少なくすることができる。
【0066】
さらに、この電子マネー決済装置1では、選択機能タイマー発光部58を設けているので、利用者が選択機能時間を把握することができ、これを設けない従来のものに比べ、利用者が電子マネー選択の操作を誤るおそれを可及的に少なくすることができる。
【0067】
なお、実施例1の電子マネー決済装置1では、電子マネー表示部51の発光部53、52、54、発光インジケータ部55の選択要求発光部56、「書き込み」発光部57、選択機能タイマー発光部58の各発光部58aおよびかざし発光部59は、それぞれ無機ELによって発光する発光部であることとしたが、これに限定されず、これら各発光部は、インターフェースシール16上から発光を視覚的に確認できる発光体で構成されていればよく、有機ELによって発光する発光部で構成してもよい。
【0068】
なお、実施例1の電子マネー決済装置1では、シールド4とフィルター7とを分離可能な別個独立の部品としたが、この発明の電子マネー決済処理装置に用いるシールド4とフィルター7は、これに限定されない。
【実施例2】
【0069】
図10は本願実施例2の電子マネー決済装置が自動販売機に取り付けられた様子を示す概念水平断面図であり、図10では図1乃至図9と同一部分を同一符号で示している。
実施例2の電子マネー決済装置61は、第1実施例の電子マネー決済装置1(図5)のシールド4とそのシールド4の正面に配置されるフィルター7に代え、このシールド4とフィルター7とが一体的に形成されたシールド64を具えている。なお、シールド64はケース13内に配置され、かつベース14に取り付けられる。なお、このシールド64は、シールド4と同様に中央アンテナ3aの正面および背面を覆わない。
【0070】
この実施例2の電子マネー決済装置61によると、実施例1の電子マネー決済装置1で述べたように、限られた範囲内に複数のアンテナを設置して電子マネー記憶媒体との通信を行う電子マネー決済装置において、利用者が使用する領域が望ましいものとなり、利用し易くすることができる。
また、実施例2の電子マネー決済装置61によると、実施例1の電子マネー決済装置1で述べたように、利用者が電子マネー記憶媒体81をかざした際に、どの電子マネーの種別を選択した状態にあるのかを容易に確認でき、電子マネー選択の操作を誤るおそれを可及的に少なくすることができ、また、利用者が選択機能時間を把握することができるので、利用者が電子マネー選択の操作を誤るおそれを可及的に少なくすることができる。
【0071】
さらに、実施例2の電子マネー決済装置61は、シールド4とフィルター7が一体的に形成されたシールド64を、ベース14に取り付けるようにしたので、第1実施例の電子マネー決済装置1に比べ、ベース14への部品の取り付けが簡単となる。また、実施例2の電子マネー決済装置61では、実施例1の電子マネー決済装置1に比べて、部品点数が1つ減るので、製造コストを低下させることができる。
【0072】
上記実施例1及び実施例2では、電子マネー決済装置1、61は自動販売機101に取り付けられるものとして説明したが、この発明の電子マネー決済装置は、電子データ記憶媒体と非接触で通信を行うリーダライタ装置であって複数種の種別に対応する3つのアンテナ3b、3a、3cを具えたものであればよく、自動販売機に取り付けられるものに限らない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
自動販売機の電子マネー決済装置に限らず、限られた範囲内に複数のアンテナを設置して記憶媒体との通信を行う装置として、利用者が電子マネーの種別選択に使用する領域が望ましく、利用し易いリーダライタ装置を提供できる。
【符号の説明】
【0074】
1、61…電子マネー決済装置
3b、3a、3c…3つのアンテナ
3a…中央アンテナ
3b、3c…側方アンテナ
4、64…シールド
7…フィルター
8…スリット
10a…側方アンテナの、中央アンテナが配置されている側の端
41…制御部
51…電子マネー発光表示部
55…発光インジケータ部
81…電子マネー記憶媒体
B、A、C…アンテナのそれぞれに対応した電子マネーの種別

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカード、携帯電話機その他の電子マネー記憶媒体と非接触で通信する電子マネー決済装置であって、
前記電子マネー記憶媒体との通信用として同一面に並列配置された3つのアンテナと、
前記3つのアンテナの互いに隣り合うアンテナ間にそれぞれ設けられ、前記3つのアンテナのうちの各側方アンテナの一側面と、その側方アンテナの正面の一部を覆うシールドと、
前記各側方アンテナの正面側にそれぞれ設けたフィルターと、
前記3つのアンテナのそれぞれに対応した電子マネーの種類が視覚可能な電子マネー発光表示部と、
前記電子マネー発光表示部が表示する電子マネーを決済対象の電子マネーとして選択完了するまで案内する発光インジケータ部と、
前記電子マネー発光表示部の点灯を制御し、かつ前記発光インジケータの発光を制御する制御部と
を具えたことを特徴とする電子マネー決済装置。
【請求項2】
前記シールドは、側方アンテナの正面の一部を覆う第一の片と、その側方アンテナの一側面を覆う第二の片と、その側方アンテナの背面の一部を覆う第三の片とを有する断面L字状の板金を具えたことを特徴とする請求項1に記載の電子マネー決済装置。
【請求項3】
前記フィルターは、前記3つのアンテナを並べた方向に沿って形成された複数の長孔からなるスリットを設けた板金であることを特徴とする請求項1に記載の電子マネー決済装置。
【請求項4】
前記シールドと前記フィルターとが、一体的に形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電子マネー決済装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−197930(P2011−197930A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63017(P2010−63017)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】