説明

電子レンジ用のコーヒー等の濾過器

【目的】電子レンジで湯を沸かすと同時に、沸かした湯で被抽出物から成分を抽出し濾過して抽出液を得る電子レンジ用の濾過器を提供する。
【構成】容器本体2と、容器本体の開口部6を気密に閉塞する開閉自由な蓋体3から構成される濾過器1であって、容器本体の底部9に形成する貫通孔状の装着部10に被抽出物5を封入するフィルター付きカートリッジ4を着脱自由に嵌合装着する。このカートリッジの装着によって前記装着部10を塞いだ容器本体2の内部に電子レンジによる加熱を受けて沸騰すると共に、カートリッジ内に浸透して前記被抽出物5を湿潤する所要量の水25を注入し、この状態で容器本体の開口部6を前記蓋体3で密閉して電子レンジに収納し、加熱することによって前記水25を沸騰させると共に、この沸騰水を内部で発生する蒸気圧で前記カートリッジ4に通し被抽出物から抽出液を抽出し、カップ等の容器26に直接受けるようする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジを使用してコーヒーや茶等の被抽出物からその成分を抽出し濾過する簡易型の濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコーヒー液を抽出する濾過器にはサイホン式やパーコレータ式,或はドリップ式等各種の抽出法があり、またこれ等について多種多様な濾過器が提案され、実用化されている。
これらの濾過器は、コーヒー液の抽出に限って使用されるものではなく、その構造に合せて緑茶や紅茶、その他の被抽出物にも利用されるが、コーヒーに限って言えば最近手近なものとしてドリップ式の簡易型濾過器が各種改善を加えて多数提案されるている。
【0003】
中でも使い捨てに係るドリップ式の簡易型濾過器には、フィルタを換えることによって、或はコーヒー粉末等を封入するフィルタ製のカートリッジを取り替えることで、簡単に利用できることから、簡易型濾過器として広く普及しており、家庭において日常的に利用されるようになっている。
言うまでもなく、この種ドリップ式に係る濾過器は、使用する際、例えばフィルタに蓄えたコーヒー粉末等に対して、或は粉末を収容したカートリッジに向けて熱湯を注ぎ込み、この熱湯により抽出された液を上記フィルタで濾過しながらカップ等の容器に受けることで簡単に濾過抽出液として回収するものであり、その容易さから広く便利に使用されている。
【0004】
しかし、この熱湯を注ぐことで成分を抽出する濾過器は、使用に当って先ず熱湯を必要とすること、従って、その準備がない場合には水を沸さなければならず、直ぐにと言った場合にそれに対応できないことがある。
この様なことから近時電子レンジによる湯沸しに着目して、電子レンジを利用して水を加熱し、熱湯を得ると同時に、この熱湯をフィルタに受けたコーヒー粉末に直接注いで成分を抽出し、直ちにこの抽出液、つまりコーヒー液をコーヒーカップ等の抽出液回収用容器に受けるようにした、つまり湯沸しの作業と、成分の抽出作業とを同時にする電子レンジを使った濾過方法乃至その濾過器が提案されるに至っている。例えば、この様な電子レンジを使った濾過方法乃至濾過器の例として以下の特許文献1〜7が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】特開平01−148212号公報。
【特許文献2】特開平01−254123号公報。
【特許文献3】特開昭64− 49514号公報。
【特許文献4】特開2005− 46165号公報。
【特許文献5】特開2001−137117号公報。
【特許文献6】特開2000−316726号公報。
【特許文献7】特開2002− 58598号公報。
【0006】
特許文献1に記載の発明は、電子レンジA内に収容した水の容器12の水を電子レンジの高周波(マイクロ波)によって加熱し、この加熱水、つまり湯をサイホンの作用で濾過器18に導いてフィルタに受けた被抽出物に注ぎ、その抽出液を受器20に受けるようにしたものである。
つまり、この特許文献1の抽出器具は、電子レンジを使って水を加熱し、この加熱水を直接電子レンジ内に収容する濾過器に注ぎ、抽出するとした提案であり、水の加熱とこの加熱した湯を直接濾過器に注ぐようにした点に特徴がある。
【0007】
この点、特許文献2に記載される発明も略同様のもので、電子レンジ内で水を加熱して得た湯によって被抽出物を濾過し、抽出液を得るようにしたものである。
【0008】
次に、特許文献3に記載の発明は、水を収容する容器1にコーヒー粉を収容する抽出部5を収めて電子レンジによる加熱によって上記抽出部5の切欠部3を開いてコーヒー粉7に湯を注ぎ、フィルターを通して抽出液を得るとしたものである。
【0009】
また、特許文献4に記載の発明は、電子レンジを利用して水47を加熱し、得られる湯を抽出材45に注ぐ一方、所定の温度に上記水47が上昇するのに併せて機能性フィルタ43の抽出液47の通過を可能にして水の状態での濾過を防止する構造にした飲料用抽出装置に係るものである。
【0010】
また、特許文献5,6に記載の発明は、電子レンジ内で濾過する点で、上記各濾過装置と共通するが、ここでは抽出容器の中に抽出液8、つまり水と抽出飲料材、つまり被抽出物とを予め一緒に収めて電子レンジで加熱し、水を沸かすと共に、電子レンジの加熱力を使って膨張袋を膨らませ、この膨張を利用して弁を開き抽出液の滴下を開始するようにしたものである。
【0011】
更に、特許文献7の抽出装置は、フィルタに特殊フィルタの機能性フィルタ6を使って電子レンジによって抽出液5を加熱し、抽出材4からの成分の抽出を進める一方、この抽出液5が所定の温度に上昇したとき、この温度を使って上記機能性フィルタ6の濾過を開始させ、抽出液5が水の状態でフィルタを通過しないようにしたものである。
【0012】
この様に、従来から電子レンジを利用したコーヒー等の濾過装置、濾過方法の提案が各種あるが、これらは濾過に要する湯を電子レンジによって水の状態から加熱することにより得、同時に得られた湯を同じく電子レンジ内に収めるフィルタ及び抽出液の受け容器を中心とした濾過器に直接注ぐようにして湯沸しと、抽出液の濾過とを1つの電子レンジ内で処理するとしたものである。つまり、湯沸し作業と濾過作業を同時にする点でそれぞれ共通しており、特徴ともなっている。
【0013】
しかし、上記濾過作業の部分、過程につきみると、サイホン式にしろ、ドリップ式にしろ従来一般に行われて来た濾過方式、濾過装置と基本的に変わることがなく、唯一特徴とする点は電子レンジによる湯の加熱と、得られた湯をそのまゝ電子レンジ内で濾過器に通して抽出液を得るようにしたことに過ぎない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述の様に電子レンジを使って濾過のために使用する水を加熱し、湯を得ることに併せてこの湯をそのまゝ電子レンジ内で濾過器,濾過装置に供給し、コーヒー粉末等の被抽出物に注いで抽出液を濾過抽出し、これを同じく電子レンジ内で容器に受けることで全ての作業、つまり湯沸しと、濾過作業を1つの電子レンジで行うようにしたことについて、更に検討改善を加えて研究開発したものである。
【0015】
更に言えば、本発明は電子レンジの特性的な機能を更に別の面から利用し、効率的に且つ簡便に、しかも高濃度で、できるだけ風味を損なうことのない抽出液が得られる電子レンジを利用して濾過するコーヒーや茶等の抽出濾過に適した濾過器を提供しようとするものである。
【0016】
従来の電子レンジを利用した濾過装置は、既に述べたところで明らかなように、いずれの場合も電子レンジは被抽出物に注ぐための湯を沸す湯沸し器として専ら使われている。そして、ここで沸された湯を直ちに濾過器に供給するため、同じ電子レンジ内にこの濾過器を格納し、湯沸し作業と濾過作業を同時一連に行うようにしている。
しかし、この方法,装置は電子レンジを使用していながら単に湯沸し器として利用しているに過ぎず、電子レンジのもつ本来的な機能,特性を充分に利用したものとはなっていない。むしろ一部のものにおいては電子レンジによって被抽出物が焦げて風味を損なうと言った問題を生じさせている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明は電子レンジの利用に当ってこの電子レンジの機能を最大限有効に活用してコーヒー、茶等の抽出,濾過に利用できるようにした電子レンジ用のコーヒー等の濾過器を提供しようとするものである。
電子レンジの利用は、水を加熱することで効率的に湯を沸すことができるが、従来の電子レンジを利用した濾過器は、この湯沸し機能を利用して直接的に湯を沸すことまでであり、更なる機能の活用はされていない。
【0018】
本発明は、電子レンジのマイクロ波によって成分の抽出に使用する湯を沸すと同時に、この湯の沸騰に併せて発生する蒸気を濾過器の内部に貯えてこの蒸気圧を沸騰する湯に作用させて内圧を高め、この圧力の掛った湯を濾過器の内部に収容する被抽出物、例えばコーヒー粉末や茶等に浸透力として作用させて積極的に透過させ、これにより成分を抽出した抽出液(コーヒー液等)を濾過器の出口に備えるフィルタに通し、濾過しながらコーヒーカップ等の抽出液回収用容器に滴下回収するものとしたのである。
つまり、本発明はコーヒー等の濾過抽出に当って電子レンジによって水を加熱し、沸騰させると同時に、この加熱沸騰によって発生する蒸気圧を濾過器の内部に貯え、この蒸気圧を逆にその基となった沸騰した湯に作用させてコーヒー等の被抽出物に対して強制的に浸透透過させ、効率的に濾過するようにしたことにある。
【0019】
この電子レンジによる湯沸しに伴って発生する蒸気圧を利用して濾過する本発明濾過器について更に詳述すると、第1の発明は、カップ状の容器本体と、該容器本体の開口部を気密に閉塞する開閉自由な蓋体とから構成され、前記容器本体はその底部に貫通孔状の装着部を有し、使用時には該装着部に被抽出物を封入するフィルター付きカートリッジを着脱自由に嵌合装着すると共に、該カートリッジの装着によって前記装着部が塞がれる容器本体の内部に電子レンジによる加熱を受けて沸騰され、且つ前記カートリッジ内に浸透して被抽出物を湿潤し成分を抽出する所要量の水を注入せしめ、この状態にして該容器本体の開口部を前記蓋体で密閉し、電子レンジに収納して加熱することにより前記カートリッジの被抽出物から抽出液を抽出濾過することを特徴とした電子レンジ用のコーヒー等の濾過器を提供することにある(請求項1に係る発明)。
【0020】
この発明の濾過器は、前記容器本体の底部に形成する貫通孔状の装着部に被抽出物を封入したカートリッジを嵌合し装着することによってこの装着部を塞ぐことになり、そうした状態においてこの容器本体の中に所要量の水を注ぎ込むことになる。その後、この容器本体の開口部を蓋体で気密に閉じ、この状態において抽出液を受ける抽出液回収容器、つまりカップ上に載置してセットし、次にこのセットした状態で濾過器を電子レンジに収納して所要時間加熱することになる。
【0021】
前記容器本体に水が注入されると、この水の一部が装着部に装着されたカートリッジ内に浸透し、内部の被抽出物を湿潤することになる。次に、この状態において上記容器本体に蓋体を被せ密閉すると内部が気密状態となることから上記カートリッジ内に浸透した水は流れを止め、被抽出物を湿潤した状態を保持して自然流出を止めることになる。
【0022】
前記濾過器は、抽出液回収容器上にセットされて電子レンジ内に持ち込まれ、加熱操作されると、マイクロ波を受けて注入した水が加熱され、時間の経過と共に沸騰することになり、同時に前記被抽出物に浸透した水にもマイクロ波が達することからカートリッジの内部において加熱されることになる。従って、この加熱に際して被抽出物には水が浸透しているため焦げることがなく、そのまゝ加熱された湯によって抽出液を出すことになる。その一方、上記沸騰した水から発生する水蒸気が容器本体の上部空間に溜まり、蒸気圧を高めることになる。
【0023】
この様にして加熱が継続され、次第に蒸気圧が蓄積されると、一定の段階に達した時点で濾過器内で沸騰する湯を押圧することになり、底部の装着部側に押し出すことになる。そのため、押圧された湯は前記カートリッジへと向かって浸透を進め、更に被抽出物を透過して抽出液を作りながらこのカートリッジを通過し、濾過器の容器本体の下にセットした回収容器へと押し出し、滴下させ回収することになる。
【0024】
ところで、本発明の濾過器は、前記セットした状態では内部が密閉されることから、注入された水が装着部に装着されたカートリッジを通して流れ落ちると、濾過器の内部に負圧が発生することになる。
上記負圧は微弱なものであるが、水はカートリッジに詰まった被抽出物の中を通って流れるため、その透過力は小さく、従ってこの負圧の発生によって自由に流下するのを阻止されることになり、これにより水漏れ状態が未然に防止されることになる。その一方、この状態において加熱によって容器内部の水が沸騰し、水蒸気が蓄積すると、これが加圧力となって上記負圧状態を解消し、逆に沸騰水、つまり湯を積極的にカートリッジに向けて押し出すことから被抽出物からの抽出液の排出を促すことになるのである。
【0025】
尚、注入する水の量、電子レンジの加熱時間は、濾過器の素材、そして大きさや厚み等によっても異なることになるが、主として被抽出物の種類や量、求める濃度やその風味等によって定められることになる。従って、実質的には被抽出物によって任意選択されることになり、設定されることになる。
【0026】
次に、第2の発明は、前記容器本体と蓋体とはヒンジ具によって開閉自由に連結すると共に、蓋体の開閉自由端を容器本体に設けるクランプによって係止し、気密に閉塞することを特徴とした電子レンジ用のコーヒー等の濾過器を提供することにある(請求項2に係る発明)。
【0027】
この第2の発明は、容器本体に対して前記ヒンジ具を介することによって蓋体を迅速、且つ確実に装着し、密閉状態に閉塞できることになる。
【0028】
また、第3の発明は、前記容器本体の開口部と蓋体の下面周縁部には捻回操作によって係脱自由に係合し気密に閉塞する雄,雌の関係にあるねじ部を形成してなることを特徴とした電子レンジ用のコーヒー等の濾過器を提供することにある(請求項3に係る発明)。
【0029】
この発明は、前記第2の発明のクランプに代えて容器本体と蓋体との閉塞関係を雌,雄ねじの捻回操作によって開閉できるようにしたもので、開閉を容易にし、且つ確実に行えるものとなる。
【0030】
また、第4の発明は、前記容器本体の開口部と蓋体の下面の双方又はいずれか一方に密閉用のシール部材を一体に設けてなることを特徴とした電子レンジ用コーヒー等の濾過器を提供することにある(請求項4に係る発明)。
【0031】
この発明は、容器本体の開口部に蓋体を被せたとき両者の間にシール部材を介入させることによって確実な密閉状態が形成できるようにしたことになる。
【0032】
また第5の発明は、前記容器本体の底部に形成する装着部は、下方に向けて徐々に縮径するテーパー状の貫通孔であることを特徴とした電子レンジ用のコーヒー等の濾過器を提供することにある(請求項5に係る発明)。
【0033】
この発明は、容器本体の底部に形成する装着部をテーパー状の貫通孔にすることによってカートリッジとの収まりを良くして水漏れを効果的に解消し、カートリッジ内を透過しない水若しくは湯によって抽出液が薄められるのを防止することになる。
【0034】
また第6の発明は、前記容器本体の底部に形成する装着部は、上端開口部を囲んで底部上面を削って環状の鍔受け用凹部を備えることを特徴とした電子レンジ用のコーヒー等の濾過器を提供することにある(請求項6に係る発明)。
【0035】
この発明は、容器本体の装着部に装着するカートリッジに対して鍔を形成するのに併せてこの鍔を受ける凹部を上記装着部の開口部を囲む容器本体の底部に形成して装着時に嵌め合わせ、これによって水密性を確保するようにしたことにある。
【0036】
また第7の発明は、前記容器本体及び蓋体は電子レンジのマイクロ波を透過すると共に、所要の耐圧性,耐熱性及び耐水性を有する陶器,プラスチック等の素材で形成されることを特徴とした電子レンジ用のコーヒー等の濾過器を提供することにある(請求項7に係る発明)。
【0037】
この発明は、電子レンジのマイクロ波を直接利用して濾過器の水を加熱沸騰させることからその素材としてマイクロ波を透過する陶製、プラスチック乃至ガラス製等の素材であることとしたもので、更には水の沸騰によって蓄積される蒸気圧に耐えられるようにその強度と耐熱性、耐水性を備えるものとしたのである。
【発明の効果】
【0038】
以上説明のように、本発明濾過器によれば、容器本体と蓋体からなる濾過器であって極めてシンプルな構造に係るものであり、実施が容易であると共に極めて取扱いが容易な濾過器になっている。
ことに、本発明濾過器は、直接電子レンジを利用することができ、しかもカートリッジを装着して水を注入し、電子レンジに収納して所定時間加熱するだけで抽出液を濾過した状態で得られる便利さがあり、極めて実用性が高いものとなっている。
【0039】
更に言えば、本発明濾過器は、電子レンジの加熱による水の沸騰に伴って発生する水蒸気圧を使って湯をカートリッジ内の被抽出物に通し、更には成分を抽出した抽出液を押し出して濾過器から強制的にカップ等の抽出液回収用容器に取り出すようにしたことから、充分な濃度の抽出液を手際よく、しかも簡単,確実に得られる利点がある。
【0040】
また、本発明濾過器は、湯沸しに併せて電子レンジ内に収められるカートリッジ、更に言えばその内部に封入される被抽出物が、マイクロ波を受けるとき、水によって湿潤した状態におかれることから焦げ付くことがなく、従って被抽出物本来の風味をもって抽出できる利点がある。
【0041】
また、本発明濾過器は、カートリッジを交換することによって再使用ができることから極めて経済的であり、しかも濾過器を構成する容器本体及び蓋体はシンプルな構造に係り、量産することも容易なものであることから廉価に提供できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
添付する図面は、本発明に係る電子レンジを使用して被抽出物から抽出液を濾過する濾過器の実施形態を示した実施例である。以下、図示する実施例に基づき本発明の特徴とするところを詳述する。
【実施例1】
【0043】
図1は、本発明に係る濾過器の正面図であり、図2は蓋体を開放した状態の中央縦断正面図である。図面において、符号1は濾過器を示し、2は容器本体、3は蓋体、4は本発明濾過器に組込み使用される被抽出物、ここではコーヒー粉末5を封入するカートリッジを示す。
【0044】
濾過器1を構成する容器本体2及び蓋体3は、電子レンジのマイクロ波を透過するプラスチック、ガラス、陶磁器等の素材から選択されるが、ここでは陶器が選択されている。
容器本体2は、カップ形に形成して開口部6の外周面に環状の凹部7を形成し、これに蓋体3を開閉自由に連結する連結金具8の固定枠8aを止め付けられるようにしてある。そして、底部9の中央部には前記カートリッジ4を装着するための貫通孔状の装着部10を形成する。
【0045】
上記装着部10は、図示するように下方に向かって徐々に縮径するテーパー形に形成し、上部開口部11の周縁には前記底部9の上面を削って2段の環状をなす凹部12を形成する。
【0046】
一方、上記容器本体2の開口部6を閉ざす蓋体3は、全体の形状を倒皿形に形成し、筒状をなす縁部13の端面に容器本体2の開口部6に当接してこれに密着するシリコン製のOリング14を一体に止着している。そして、上記縁部13の外周面には前記連結金具8の一方を構成する揺動枠8bを止め付ける環状の凹部15を形成する。
【0047】
前記連結金具8は、容器本体2に蓋体3を開閉自由に連結するもので、固定枠8aは半円弧状に曲成した2本の帯板片を向かい合せとなるようにして前記凹部7に前後方向から嵌め入れ、その各両端を連結することによって環状に組合うようにしてある。更に説明すると、ここでは2本の帯板片の一方の端部同士を連結環16で結束し、他方の端部同士を両者の間に渡す連結軸17で連結し、これら両端部の連結を通して全体として環状に組み合わせ容器本体2の外周面を取り巻くようにして固定している。
【0048】
一方、前記揺動枠8bは、金属製の線材を材料に成形したもので、1本の線材を長さの途中でUの字形に折り曲げ、更に折り曲げた2本の線材をそれぞれ半円弧状に曲成し、更にこれらの端部を直角に折り曲げると共に、その先端を向き合わせ方向に直角に折り曲げて枢着軸部18,18を設けている。この揺動枠8bは、上記半円弧状の部分を前記蓋体の凹部15に嵌め入れて外周面に巻き付け、これに固定し、更に前記それぞれの先端に設けた枢着軸部18,18を前記固定枠8aの一方の端部に形成する軸受穴19,19に挿入してこの固定枠8aに回動自由に軸着してあり、この組付けによって連結金具8を構成するようにしてある。
【0049】
この揺動枠8bは、前記枢着軸部18,18を支点にして回動し、蓋体3を容器本体2の開口部6に被せ、また開放することができる。そして、被せて閉塞したとき前記線材をU字形に折り曲げて形成した先端の係止部19を前記固定枠8aの一方の端部に備えるクランプ20に臨ませ、これを掛け止めることによって蓋体3閉塞した状態に維持できるようにしてある。
【0050】
クランプ20は、金属板をコの字形に折り曲げ一端に摘み21を設けた操作片22と、この操作片の長さの途中に一端を回動自由に枢着する係止環23から構成され、操作片22を固定枠8aの端部に渡す支軸24に枢着することで連結金具8に回動自由に組み付けられる。
このクランプ20は、支軸24を支点に操作片22を跳ね上げ、更に係止環23を跳ね上げて前記係止部19に掛け止めた後、前記操作片22を支軸24を支点に回動して摘み21を引き下ろすことによってこの係止部19をロックし、蓋体3を閉塞状態に拘束することができるようになっている。
【0051】
カートリッジ4は、この実施例では下方に向かって縮径する倒円錐台形状の筒形の胴部4aをプラスチック素材によって形成し、この胴部の上面と下面のそれぞれに不織布製のフィルター4b,4cを張設してあり、内部に所要量のコーヒー粉末5を封入して構成してある。
このカートリッジの胴部4aの上半部分の形状及び外径は、前記装着部10の内周形状及びその内径と一致するものにしてあり、またこの胴部4aの上部外周面には環状の鍔4dを形成してある。
【0052】
上記の如く構成される本発明の濾過器1について、その使用を次に説明すると、先ず蓋体3を開放した状態にして容器本体2の内部に前記カートリッジ4を落し、底部9に開設する装着部10に嵌め付ける。このとき、カートリッジ4をしっかり押付け、装着部10の内周に胴部4aの外周面を密着させると共に、鍔4dを底部9の上面に形成する凹部12に押入れ、これに密着させて両者間を水密にする。
【0053】
そうした後、装着部10をカートリッジ4で塞いだ容器本体2の内部に成分抽出に使用する所要量の水25を注ぎ込み、速やかに蓋体3を被せて開口部6を密閉する。
蓋体3は、前述したように枢着軸部18を支点に回動して被せ、次に係止部19にクランプ20の係止環23を掛け止めて拘束する。このとき、操作片22の摘み21の引き下ろしによって蓋体3を容器本体2側に引き付け、この引き付けを利用して蓋体3の縁部13に設けたOリング14を圧縮し、蓋体3を気密の状態で閉塞する。
【0054】
ところで、容器本体2に注がれた水25は、本体2の内部に溜められると同時に、装着部10に装着されたカートリッジ4にフィルター4bを通して浸入し、内部に封入したコーヒー粉末5を湿潤することになる。そして、この水25が浸透する間に蓋体3が開口部6を密閉し、容器本体2の内部を気密に閉塞することから、水25のカートリッジ4内への浸透が抑えられることになり、またこの状態で徐々にコーヒー粉末5の全体に浸透して湿潤することになることから、下方のフィルター4cからの流下が自動的に抑制されることになり、水の状態のまゝ通過するのを有効に阻止される。
【0055】
この様にして蓋体3の閉塞によって内部を密閉した濾過器1は、図3に示した様に抽出液を回収する容器、つまりコーヒーカップ26上に載置してセット状態を作り、このセット状態で電子レンジ(図示せず)内に持ち込み、所要時間加熱してコーヒー液の濾過を行うことになる。
【0056】
電子レンジのマイクロ波による加熱を受けると、濾過器内の水25は次第に沸騰し、この沸騰によって水蒸気を発生させることになる。そして、この水蒸気を水面25a上の濾過器の上部空間27に溜めることになる。
従って、一定時間加熱され沸騰状態が継続すると、濾過器内部に蒸気圧が蓄積し、内圧が溜まって沸騰した水25、即ち沸騰した湯に対してこの蒸気圧が作用し、押し付けが開始されることになる。
この結果、沸騰した湯25はカートリッジ4に向けて誘導され、フィルター4bを通して内部に浸透し、コーヒー粉末5を湿潤しながら成分を抽出し、コーヒー液となって下方のフィルター4cを通して濾過され、下のコーヒーカップ26へと滴下し回収されることになる。
【0057】
この間において、加熱前の濾過器の内部は、気密な状態にあってカートリッジ4内への水の浸透によってやゝ負圧の状態にあり、水の流出が抑制された状態にあるが、次に、電子レンジによる加熱が開始されると、水蒸気の発生によって次第に加圧される状態へと変化し、更に水の沸騰により蒸気圧が発生して内圧が高まると、水面を押圧して沸騰した湯のカートリッジ4への透過が積極的になり、コーヒー液の抽出が促進されることになる。
【0058】
つまり、本発明濾過器においては、電子レンジによる加熱前においては内部の気密状態によって負圧が発生する状態にあり、加熱が開始され水が沸騰する状態になると蒸気の発生と共に蒸気圧が発生し、沸騰する水に圧力を掛けることになり、この沸騰する水を押し出すことになり、カートリッジ4への透過を促すことになるのである。
【0059】
尚、この様に電子レンジの加熱力を使って濾過器の内部圧を制御し、カートリッジ4に対する湯の透過をコントロールすることから、例えば濾過器1に注入される水25の量、電子レンジの加熱量、コーヒー粉末の量や粒子の状態、更にはカートリッジ4のフィルター4b,4cのメッシュの大小等を調整し、その取り合わせを一定に設定すれば、一定時間の加熱によって一定濃度の一定量のコーヒー液を抽出することが可能となる。
また、このことからコーヒー粉末等被抽出物を一定に調整した一定のカートリッジを用意する一方、容器本体の内周に水の量を測る目盛りを表示し、これを目標に水を注入するようにすると、一定濃度の抽出液を簡単に得ることができる。
【0060】
ところで、本発明濾過器では、電子レンジによる加熱に当って濾過器内部に注入した水を加熱沸騰すると同時に、装着部10に装着したカートリッジ4に対してもマイクロ波を照射するため封入したコーヒー粉末5を加熱することになるが、前述したようにコーヒー粉末5には注入した水25が予め浸透し、湿潤した状態に置かれることから、この湿潤した水がマイクロ波による加熱からコーヒー粉末5を護り、焦げ付くのを防止することになる。従って、焦げ付きによる苦味等の発生を未然に防ぎ、常に安定した風味を保障することができることになる。 勿論、上記コーヒー粉末5を湿潤する水は、加熱され湯になることによって直接成分を抽出することから、そのまゝ抽出液となってカップに回収されることになる。
【実施例2】
【0061】
図4は、他の実施例における本発明濾過器の容器本体2と蓋体3の部分の中央縦断正面図である。
ここに示す実施例は、容器本体2と蓋体3の他の閉め合せを示したものである。前記連結金具8に代えて容器本体2の開口部6の外周面に雄形のねじ部30を形成し、また蓋体3の筒状の縁部13の内周面に雌形のねじ部31を形成して、蓋体3の閉塞時には双方を捻回して螺合し、気密に緊締するようにした場合である。尚、図示していないが、気密性を図るため蓋体3の下面周縁に沿って、つまり容器本体の開口部6の縁部が当接する部分に前記したOリング14と同様のパッキンを止着するとよい。
【0062】
この実施例は、濾過器の容器本体と蓋体の閉塞は前記第1の実施例に限られるものではないことを示したもので、蓋体が開閉できる構造であり、且つ密閉して容器本体の内部を気密にすることができる構造であれば特定の構造でなくとも良いことを示している。
【実施例3】
【0063】
図5は、本発明濾過器に使用する他のカートリッジ40につき示したものである。
このカートリッジ40は、全体の構造を前記カートリッジ4と同一形状にするが、ここで相違する点は、胴部40aと共に上下の面40b,40cをプラスチック素材にして使用時に矢印aで示した位置に小穴を開け、水の透過穴を多数穿つようにしたことである。
【0064】
つまり、この実施例は、カートリッジを不織布などの素材を使用することなく透過穴を穿つことによってフィルターを形成しても良いことを示している。勿論、この場合、透過穴の径は被抽出物の大きさによって決定されるが、被抽出物が例えば茶葉のように比較的大きい場合に適している。そして、このフィルターの場合は透過穴を開ける前はカートリッジ40の内部を完全に密封できることから、保管に当って保存性に優れ、取扱いが有利になる利点がある。
【0065】
尚、図示しないが、カートリッジ全体を不織布などのフィルター素材によって形成してもよく、前記実施例の如くプラスチック素材を利用しなければならない制約はない。ただ、全体をフィルター素材にすると、装着したとき水密性に欠け、水漏れの問題がでることから、この様な場合には例えば胴部に非透水性のフィルムを貼るなどしてこれに対処すればよい。
【0066】
以上、本発明の濾過器について、実施例に基づき説明したが、本発明濾過器は、容器本体2の装着部10にカートリッジ4を装着し、所要量の水を注入して蓋体3で密閉し、後はコーヒーカップ等の適宜の容器26の上に載置して電子レンジに持ち込み、所要の時間加熱すれば、自動的にコーヒー等の抽出液がカップに滴下回収されるので、極めて便利に使用することができる。
【0067】
また、本発明濾過器は電子レンジ内に収納してスイッチを入れ、加熱することで抽出液を抽出する湯を沸かし、更にこの湯を強制的にカートリッジ4内を通して成分を抽出する構造とすることから、一々湯を沸かしたり、沸かした湯を濾過器に注ぐと言った手間を省くことができ、極めて便利に使用することができる。
ことに、カートリッジ内を強制的に沸騰した湯を通すことができることから、濃度の高い例えばエスプレッソの様な濃いコーヒーを淹れるのに適している。
【0068】
また、本発明濾過器は、抽出作業の全てを電子レンジ内で行われることから安全に使用できる利点がある。
【0069】
更に、本発明濾過器は、カートリッジ4に封入する被抽出物の種類や容量を予め定めて一定のものにしておけば、後は注入する水の量と加熱時間を設定すれば、一定の濃度の抽出液を得ることができる等品質を一定にできるので、極めて有利であり、また、この様にすることによってその風味を揃えることができるので、コーヒーや茶類の濾過器として最適である。
【0070】
勿論、本発明濾過器は、容器本体の容量を替え、或はカートリッジの容量を替えることによって水の注入量を変え、これにより抽出液の液量を変えることができるので一人用、二人用と簡単に使い分けすることができる。また、本発明濾過器は、カートリッジを交換することによって何度でも再使用できるので経済的に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る濾過器の閉塞状態の正面図。
【図2】蓋体を開放し、容器本体の装着部に向けてカートリッジを臨ませた状態の中央縦断正面図。
【図3】抽出液回収用の容器上に濾過器をセットした状態の要部の中央縦断正面図。
【図4】他の実施例における容器本体と蓋体の閉塞構造を説明する部分の中央縦断正面図。
【図5】カートリッジの他の実施例を示す中央縦断正面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 濾過器
2 容器本体
3 蓋体
4,40 カートリッジ
4a カートリッジの胴部
4b カートリッジの上面
4c カートリッジの下面
4c カートリッジの鍔
5 被抽出物たるコーヒー粉末
6 容器本体の開口部
8 連結金具
9 容器本体の底部
10 装着部
12 底部の上面に形成した凹部
13 蓋体の縁部
14 シール材としてのOリング
19 係止部
20 クランプ
25 濾過器に注入される水
25a 水面
27 容器本体内部の上部に形成される空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状の容器本体と、該容器本体の開口部を気密に閉塞する開閉自由な蓋体とから構成され、前記容器本体はその底部に貫通孔状の装着部を有し、使用時には該装着部に被抽出物を封入するフィルター付きカートリッジを着脱自由に嵌合装着すると共に、該カートリッジの装着によって前記装着部が塞がれる容器本体の内部に電子レンジによる加熱を受けて沸騰され、且つ前記カートリッジ内に浸透し被抽出物を湿潤して成分を抽出する所要量の水を注入せしめ、この状態にして該容器本体の開口部を前記蓋体で密閉して電子レンジに収納し、加熱することにより前記カートリッジの被抽出物から抽出液を抽出濾過することを特徴とした電子レンジ用のコーヒー等の濾過器。
【請求項2】
容器本体と蓋体とはヒンジ具によって開閉自由に連結すると共に、蓋体の開閉自由端を容器本体に設けるクランプによって係止し、気密に閉塞することを特徴とした請求項1に記載の電子レンジ用のコーヒー等の濾過器。
【請求項3】
容器本体の開口部と蓋体の下面周縁部には捻回操作によって係脱自由に係合し気密に閉塞する雄,雌の関係にあるねじ部を形成してなることを特徴とした請求項1に記載の電子レンジ用のコーヒー等の濾過器。
【請求項4】
容器本体の開口部と蓋体の下面の双方又はいずれか一方に密閉用パッキンを一体に設けてなることを特徴とした請求項1乃至3に記載の電子レンジ用コーヒー等の濾過器。
【請求項5】
容器本体の底部に形成する装着部は、下方に向けて徐々に縮径するテーパー状の貫通孔であることを特徴とした請求項1乃至4に記載の電子レンジ用のコーヒー等の濾過器。
【請求項6】
容器本体の底部に形成する装着部は、上端開口部を囲んで底部上面を削って環状の鍔受け用凹部を備えることを特徴とした請求項1乃至5に記載の電子レンジ用のコーヒー等の濾過器。
【請求項7】
容器本体及び蓋体は電子レンジのマイクロ波を透過すると共に、所要の耐圧性,耐熱性及び耐水性を有する陶器,プラスチック等の素材で形成されることを特徴とした請求項1乃至6に記載の電子レンジ用のコーヒー等の濾過器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−148704(P2010−148704A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331015(P2008−331015)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(591253401)片岡物産株式会社 (18)
【Fターム(参考)】