説明

電子レンジ用容器

【課題】加熱前は生卵のように液体状の食品であって、電子レンジで加熱すると爆発するような食品を、電子レンジで加熱しても爆発することなく、かつ、焼き目を付けることが出来る電子レンジ用容器を提供する。
【解決手段】電子レンジ発熱シートからなり、底部と側壁部を有する容器本体と、中央部に貫通孔と、該貫通孔を取り外し自在に塞ぎ、前記容器本体の内部に至る突刺し棒とを具備した、前記容器本体に被さる蓋からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波で発熱する電子レンジ発熱シートを用いた電子レンジ用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子レンジ発熱シートは、さまざまに用いられている。例えば、カップ形状の包装容器内にポップコーン原料を入れて販売し、消費者が家庭の電子レンジを使用してコーンを膨化させてポップコーンを作ることに用いられている(特許文献1)。また、半調理の焼きおにぎり、お好み焼き、ピザなどの食品を電子レンジで再加熱するときに、表面に焼き目をつけ、クリスピーな食感を得るのに用いられている(特許文献2)。
【0003】
電子レンジ発熱シートは、いろいろな構造からなるものがあるが、そのひとつに、ポリエチレンテレフタレートフィルムにアルミニウムを薄く蒸着し、その蒸着面に接着剤を介し、紙と貼り合わせた電子レンジ発熱シートが知られている。また、この電子レンジ発熱シートを用いた、底面と側壁を備えた容器が知られており、これに蓋をすることも知られている(特許文献3)。
【0004】
一方、卵を電子レンジで加熱すると、破裂してしまうことが広く知られており、ゆで卵を電子レンジで作るには、直接マイクロ波がかからないように、アルミ箔などのマイクロ波の透過しない素材でくるみ、水の中に沈めて、水を加熱して、間接的に卵を加熱する方法が知られている。また、殻を割って出した生卵でも同様に破裂することも知られている。
【0005】
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7−44733号公報
【特許文献2】特開2008−289692号公報
【特許文献2】特公昭60−15548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子レンジに食品をかけると、食品中の水などの分子がマイクロ波によって振動し、結果として、食品を加熱することができる。ところが、生卵を電子レンジにかけ、目玉焼きをつくろうとすると黄身が破裂してしまい、調理することができない。
【0008】
本発明は、加熱前は生卵のように液体状の食品であって、電子レンジで加熱すると破裂するような食品を、電子レンジで加熱しても破裂することなく、かつ、焼き目を付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は係る課題に鑑みなされたものであり、請求項1の発明は、電子レンジ発熱シートからなり、底部と側壁部を有する容器本体と、中央部に貫通孔と、該貫通孔を取り外し
自在に塞ぎ、前記容器本体の内部に至る突刺し棒とを具備した、前記容器本体に被さる蓋からなることを特徴とする電子レンジ用容器である。
【0010】
本発明の電子レンジ用容器にすることによって、容器本体に生卵のような液体状の食品であって、電子レンジで加熱すると破裂するような食品を入れて電子レンジ加熱しても、貫通孔より容器本体の内部に至る突刺し棒により、食品に穴が開き、破裂することがない。また、食品に穴をあけた後、突刺し棒を取り去ることによって、貫通孔が開き、電子レンジ加熱時の蒸気抜き孔となり、電子レンジ用容器内部の圧力が高くなることが防止でき、また、蓋により熱が逃げず蒸らし効果が得られ、効率よく加熱ができる。
【0011】
また、容器本体が電子レンジ発熱シートからできているので、食品の下面と容器の側壁に接している食品の側面に焦げ目をつけることができ、フライパンで焼いたような食品を短時間で調理することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記容器本体の前記底部の中央部に窪みが設けられていることを特徴とする電子レンジ用容器である。
【0013】
前記容器本体の前記底部の中央部に窪みが設けられていることによって、食品が中央部に集まり、突刺し棒により、食品に穴を確実に開けることができる。特に生卵の場合、黄身がこの窪みに入り、突刺し棒が確実に黄身に刺さり穴を開けることができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記蓋は、周縁部が下方に屈曲し、前記周縁部の下端は前記容器本体の前記側壁部の上端より、下に位置するように前記容器本体を覆うように被さっていることを特徴とする電子レンジ用容器である。
【0015】
前記蓋は、周縁部が下方に屈曲し、前記周縁部の下端は前記容器本体の前記側壁部の上端より、下に位置するように前記容器本体を覆うように被さっているので、電子レンジ用容器内の熱や蒸気が外部に逃げにくくなり、更に熱が逃げないので蒸らし効果が得られ、効率よく加熱ができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子レンジ用容器は、以上のように、生卵のように、液体状の食品であって電子レンジで加熱すると破裂するような食品を、電子レンジで加熱しても破裂することなく、かつ、焼き目を付けることができる。
【0017】
さらに、前記容器本体の前記底部の中央部に窪みが設けられていることによって、食品が生卵であれば、目玉が中心にある目玉焼きを作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電子レンジ用容器に用いるマイクロ波によって発熱するシートの一例の層構成を模式的に断面で示した説明図である。
【図2】本発明の電子レンジ用容器の容器本体の一例を模式的に示した斜視図である。
【図3】(a)本発明の電子レンジ用容器の蓋の一例を模式的に示した側面図である。 (b)本発明の電子レンジ用容器の蓋の一部の一例を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明の容器本体に蓋を被せた電子レンジ用容器の一例を模式的に示した側面図である。
【図5】本発明の容器本体に蓋を被せた電子レンジ用容器の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態につき説明する。
【0020】
図1は、本発明の電子レンジ用容器に用いる電子レンジ発熱シートの一例の層構成を模式的に断面で示した説明図である。本例の電子レンジ発熱シート1は、樹脂フィルム2と導電層3と接着層4と紙層5からなる。
【0021】
樹脂フィルム2としては、耐熱性の高い樹脂フィルムが使用される。耐熱性の高い樹脂としては、熱硬化性の樹脂があり、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド、などがある。
【0022】
また、熱可塑性樹脂としては、耐熱性のおおむね250℃以上の融点を有する樹脂が好ましい。ポリエステル系としては、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂があり、ポリアミド系としては、ナイロン66がある。また、ポリカーボネート、ポリサルフォンなどが使用可能である。
【0023】
この中では、ポリエチレンテレフタレートが、汎用性で入手が容易であり、2軸延伸のポリエチレンテレフタレートを用いれば、比較的熱による寸法安定性もよく、表面が平滑であり、特に適している。
【0024】
厚みとしては、入手が容易な6μmから50μmのものが使用しやすい。蒸着工程や貼り合わせ工程での取り扱いやすさ、また、紙層と積層してマイクロ波によって発熱するシートにした後の、容器への成形性や成形後の戻りを考慮し、紙層との兼ね合いで選択することができる。
【0025】
導電層3としては、金属の薄膜が用いられる。薄膜の製造方法は、樹脂フィルムに真空蒸着法によって積層させるのがよい。金属としては、アルミニウムやステンレスが使用できるが、アルミニウムが使い勝手がよい。
【0026】
より具体的には、金属アルミニウム金属を蒸着源として、真空中で、加熱、蒸発させ、2軸延伸のポリエチレンテレフタレート面に凝集させて薄膜を形成させる。厚みは5から15nmが好ましい。厚みによって電子レンジ加熱したとき、特定の温度に達するまでの時間に影響される。蒸着薄膜の厚みの制御は、この程度の厚みでは、アルミニウム層は半透明であるので、光線透過量を測定することによって厚さを制御することができる。
【0027】
このようにして、導電層3の金属薄膜と樹脂フィルム2を積層した積層体の金属薄膜面を、接着層を介して紙層5に積層して、マイクロ波によって発熱するシート1が得られる。紙層5としては、坪量が10から300g/mの紙が使用できる。紙の種類としては、ボール紙、マニラボール、カップ原紙、カード紙が使用できる。また、接着層4としては、2液硬化型のウレタン系接着剤を用いる。この積層はドライラミネート法にて行うことができる。
【0028】
このようにして得られた、電子レンジ発熱シート1は、マイクロ波を照射したときに、マイクロ波の一部が透過し、一部が金属薄膜層で渦電流に変わる。渦電流が流れると、金
属薄膜層の電気抵抗によって、ジュール熱が発生し金属薄膜層が発熱する。
【0029】
この電子レンジ発熱シート1を成形して容器本体を得る。図2は本発明の電子レンジ用容器の容器本体の一例を模式的に示した斜視図である。容器本体6は、底部7と側壁部8からなっている。底部7の形状は、図2では円形であるが、これに限ることはない。楕円形であっても、長円形や、角にRを付けた方形でもかまわない。
【0030】
側壁部8は底部7に連続して設けられ、底部7より立ち上げられている。側壁部8は外側に開くように設けられていることが好ましい。電子レンジ発熱シート1どうしが重なると、その重なり部分が過度に発熱してしまい好ましくないが、外側に開くように設けられていることによって、山折部9と谷折部10によって、側壁部8の電子レンジ発熱シート1どうしが重なる事がない。
【0031】
図2では、側壁部8に山折部9と谷折部10が交互に設けられているが、必ずしも交互でなくても良い。山折部9が2箇所連続して設けられても良いし、それ以上連続して設けられても良い。同様に谷折部10が2箇所連続して設けられても良いし、それ以上連続して設けられていても良い。
【0032】
底部7の中央部には、窪み部11が設けられている。容器本体6の大きさは、側壁部上部の径が160から250mmで、底部7の径が、30から150mmに対し、窪み部11の径は10から120mmで、深さが5から20mmが好ましい。これによって、食品が中央部に入るようになる、食品が生卵であれば、黄身がその窪みに入り、蓋をしたときに蓋の貫通孔に取り付けた突刺し棒で確実に黄身を突き刺すことができる。
【0033】
この容器本体6は、プレスによって成形することができる。上下に雄型と雌型の金型をセットしてその間に電子レンジ発熱シート1を挟みプレスすることによって成形できる。連続した巻き取り状の電子レンジ発熱シート1を間歇的に送って、金型にセットされた抜き型で抜きながら成形することによって、効率よく製造することができる。
【0034】
図3の(a)は、本発明の電子レンジ用容器の蓋の一例を模式的に示した側面図である。図3の(b)は、本発明の電子レンジ用容器の蓋の一部の一例を模式的に示した断面図である。図4は本発明の容器本体に蓋を被せた電子レンジ用容器の一例を模式的に示した側面図である。図5は本発明の容器本体に蓋を被せた電子レンジ用容器の一例を模式的に示した断面図である。
【0035】
蓋12は、略平面状の中央部13と下方に屈曲した周縁部14からなっており、蓋の中心部またはその近傍に貫通孔15が設けられている。貫通孔15には、蓋12の外側から容器本体の内部に至る突刺し棒16が突き刺さっている。突刺し棒16は、貫通孔15の途中で止まるように、段差やテーパーによって貫通孔15より外側では太く、貫通孔15から内側では、貫通孔15より細くなっている。
【0036】
蓋12の周縁部14は、中央部13に連続して設けられ屈曲し下方に延びている。周縁部14の下端は容器本体6の側壁部8の上端より、下に位置し容器本体6を覆うように被さっている。
【0037】
突刺し棒16を除く蓋の材質としては、耐熱性が100℃ないしは120℃以上あればよい。樹脂であれば、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネイトなどの熱可塑性樹脂でもよく、フェノ-ル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化
性樹脂でもよい。
【0038】
また、ボール紙、マニラボール、カップ原紙、カード紙などの紙を用いてもよいし、あるいは、これらの紙に前述した樹脂を貼り合わせた積層体でもよい。
【0039】
突刺し棒16を除く蓋12の製造方法としては、材質が樹脂であればインジェクション成形により作ることができる。また、樹脂の中でも、熱可塑性樹脂であれば、シート状にした熱可塑性樹脂をシート成形で蓋の形状にして、成形後、貫通孔15をパンチングで抜くことによって製造できる。
【0040】
材質が、紙、あるいは、紙と樹脂の積層体であれば、所定の形状に打ち抜き、雄型と雌型の金型の間に挟んでプレスして成形することによって製造できる。このとき、金型を加熱して成形するとよい。
【0041】
突刺し棒16の材質としては、突刺し棒16を除く蓋の材質に用いることができる樹脂を用いて、インジェクション成形で、製造することができる。また、木材を用いて作ることも可能である。
【実施例】
【0042】
以下に具体的実施例について説明する。
【0043】
<容器本体の製造>
12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、蒸着源として金属アルミニウムを用い真空蒸着法により、導電層となるアルミニウムの薄膜を5から15nmの厚さになるように制御して積層した。この積層体の薄膜面に2液硬化型のウレタン系接着剤を用いて、坪量150g/mのカップ原紙を貼り合わせ、電子レンジ発熱シートを得た。
【0044】
この電子レンジ発熱シートをプレス成形機で打ち抜きと同時に、ポリエチレンテレフタレートフィルム面が容器の内側になるように、成形し容器本体を得た。容器本体の形状は、底部が直径135mmの円形で、中央部に同心で直径が、100mmの円形の窪みが深さ10mmで設けられ、側壁部上端の径は210mmで、本体容器の高さは30mmである。
【0045】
<蓋の製造>
厚さ200mmのシート状の透明なポリエチレンを用いて、シート成形法によって成形した。この成形物は、略平面状の中央部と中央部より下方へ屈曲した周縁部からなり、中央部は直径210mmの円形で、周縁部は30mmの幅で下方へ45度傾いている。この成形物の中央部の中心に直径2mmの円形の貫通孔をパンチングによって設けた。
【0046】
突刺し棒は、ポリプロピレンをインジェクション法で成形して製造した。この突刺し棒の形状は、断面が円形であり、上部が4mmの直径で、下部が1mmの直径で、上部と下部の間に、直径20mmの中間部が設けられている。4mmの直径の上部の下端より、直径が1mmの下部の先端までの長さ、つまり、中間部上端から下部先端までの長さは、25mmである。
【0047】
この突刺し棒を先の成形物に開けた貫通孔に上方より、突刺し棒の下部より差し入れて、中間部が貫通孔の位置になり、上部の下端が貫通孔に当たるまで差し込み、蓋とした。
【0048】
<調理テスト>
上記の容器本体に卵を割って落とした。このとき黄身が自然に窪みに入り、周りに白身
のみの部分が出来た。本体容器に蓋をすると突刺し棒の下部の先端が黄身に突き刺さった。
【0049】
蓋から突刺し棒を引き抜き、容器を600ワットの電子レンジの中にいれ、2分間マイクロ波を照射した。途中から、貫通孔が蒸気抜き孔となって、蒸気が抜けるのが観察され、照射中に卵が破裂することはなかった。マイクロ波照射終了後、容器を取り出し、蓋を取ると、黄身の部分が半熟で、下面が薄い褐色の目玉焼きが出来ていた。このように、電子レンジでマイクロ波を照射中に卵が破裂することはなく、また、取り出した後も、破裂することはなく、黄身が半熟で、下面がクリスピー感のある目玉焼きが出来た。
【符号の説明】
【0050】
1・・・発熱シート
2・・・樹脂フィルム
3・・・導電層
4・・・接着層
5・・・紙層
6・・・容器本体
7・・・底部
8・・・側壁部
9・・・山折部
10・・・谷折部
11・・・窪み部
12・・・蓋
13・・・中央部
14・・・周縁部
15・・・貫通孔
16・・・突刺し棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ発熱シートからなり、底部と側壁部を有する容器本体と、
中央部に貫通孔と、該貫通孔を取り外し自在に塞ぎ、前記容器本体の内部に至る突刺し棒とを具備した、前記容器本体に被さる蓋からなることを特徴とする電子レンジ用容器。
【請求項2】
前記容器本体の前記底部の中央部に窪みが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用容器。
【請求項3】
前記蓋は、周縁部が下方に屈曲し、前記周縁部の下端は前記容器本体の前記側壁部の上端より、下に位置するように前記容器本体を覆うように被さっていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子レンジ用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−115259(P2011−115259A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273411(P2009−273411)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】