説明

電子写真感光体、画像形成装置およびプロセスカートリッジ

【課題】高感度でクラック等の破断傷等を発生せず、高解像の鮮明な電子写真画像が安定して得られる電子写真感光体を提供する。
【解決手段】波長が390〜500nmの書込み光源が使用され、少なくとも導電性支持体上に縮合多環系化合物を含有する電荷発生層と、一般式(1)で表される電荷輸送物質、ベンゾトリアゾール系化合物またはトリアジン系化合物の可塑剤、バインダを含有する電荷輸送層とを有する電子写真感光体。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等に用いられる電子写真方式の画像形成に用いられる電子写真感光体、当該電子写真感光体を搭載した画像形成装置、および、プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル画像形成技術の進展に伴って、近年では、電子写真方式の複写機やプリンタにより高画質のモノクロ画像やカラー画像の作製が可能になり、カラー印刷をはじめとする印刷分野でこれらの機器によるプリント作製が普及する様になってきた。この様な印刷画像レベルの画像形成を行うにあたり、露光光源として短波長レーザ光を用いることで高精細のデジタル画像形成を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、現在ではレーザープリンタ等に代表される様に、露光光源にレーザ光を用いる電子写真装置が登場してきた。レーザ光源としては、780〜800nmまたは680nmの波長光を出力する半導体レーザが主に使用されている。しかしながら、近年では出力画像の高画質化、高解像度化の要望がますます強くなり、これに対応すべく種々の試みがなされる様になってきた。
【0004】
その1つの技術として、書込み光のスポット径を小径化する技術が挙げられる。スポット径の小径化は、理論上、書込み光源の短波長化によりかなり小さくすることが可能であるので、潜像の書込み密度、すなわち、解像度を上げる上で非常に有利である。そのため、390〜500nmの領域の半導体レーザもしくは発光ダイオードを書込み光源に対応することにより、高感度、高安定な電子写真感光体の開発も検討される様になってきた。
【0005】
書込み光源を短波長化すると、有機感光体では書込み光に対する電荷輸送層の光透過性が要求され、かつ、従来の近赤外線領域に対応した有機感光体と同様の電位安定性、および感度が求められる。これまで短波長領域に感度を有する有機感光体が提案されているが、必ずしも上記課題を満足するものではなかった。
【0006】
この短波長光源に対応した電子写真感光体の開発要件の1つとしては、書込み光源の390〜500nmの領域の吸収が少ない電荷輸送物質の開発が挙げられる。現在、電子写真感光体に用いられている電荷輸送物質の多くは短波長側に吸収を有しているので、短波長の光源で露光する電子写真感光体にこのような電荷輸送物質を用いると、感度が低下する。
【0007】
この課題に対して、短波長の光源で露光する電子写真感光体に好適な電荷輸送物質としてトリアリールアミン化合物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この化合物は、通常の溶媒に対する溶解性が低く、バインダーとの相溶性も悪いため、電子写真感光体の感光層形成用塗布液は、保存安定性が悪く、保存中に結晶を析出しやすいので、この化合物を電子写真感光体に十分な濃度で充填することができず感度不良が発生したり、結晶性が高いためクラックが発生しやすく、耐久試験において膜欠陥の発生等による画質不良が発生したりする問題があった。
【0008】
このような課題に対して、電荷輸送物質としてパラ位にメチル置換されたフェニル基を有するポリアリールアルカン化合物が提案されているが、該化合物は構造特性上、通常の溶媒やバインダに対する溶解性が乏しいため、充分な充填濃度を加えることができないことによる感度不良が発生したり、耐久性試験において、膜欠陥の発生等による画質不良や耐光疲労性の低下を招き、高画質、高耐久を目指した感光体処方には向いていなかった。また、トリアリールアミンの溶解性を増す施策として、幾つかの手段が講じられてきたが、電子写真特性面での性能低下が激しく、実用に耐えるものがなかった。
【0009】
この対策として、数種類の化学構造の異なる電荷輸送物質を混合する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法は、溶解性は高められるものの、感度、高速応答性が低下する問題があった。化学構造が異なるため、化合物間の電荷の授受がスムーズでなく、電気特性の悪化を招いたものと考えられる。
【特許文献1】特開2000−250239号公報
【特許文献2】特開2000−105475号公報
【特許文献3】特開2001−350282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、その目的は、高感度、かつ、クラック等の破断傷等の発生を起こさず、高解像性の鮮明な電子写真画像が安定して得られる電子写真感光体を提供することである。また、当該電子写真感光体を用いた画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供することである。具体的には、
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、390〜500nmの領域の半導体レーザもしくは発光ダイオードを書込み光源に用いた画像形成をスムーズに行える電子写真感光体を開発すべく、電子写真感光体を構成する電荷輸送層に着目した。そして、特定のアミン化合物を電荷輸送物質に用い、ベンゾトリアゾール系化合物またはトリアジン系化合物を可塑剤に用いた電荷輸送層を見出すことにより、本発明の課題が解消されることを見出したのである。
【0012】
すなわち、本発明の課題は以下に記載のいずれかの構成により解消されることが見出された。
【0013】
請求項1に記載の発明は、
『発振波長が390〜500nmの半導体レーザまたはピーク波長が390〜500nmの発光ダイオードを書込み光源として使用する電子写真感光体であって、前記電子写真感光体は、少なくとも導電性支持体上に、縮合多環系化合物を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質、バインダ、可塑剤を含有する電荷輸送層を有し、前記電荷輸送物質が、下記一般式(1)で表される化合物であり、かつ、前記可塑剤がベンゾトリアゾール系化合物またはトリアジン系化合物であることを特徴とする電子写真感光体。
【0014】
【化1】

【0015】
〔式中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、それぞれ独立して置換基を有してもよいアリール基を表し、Ar1とAr2、および、Ar3とAr4が、結合して環を形成してもよい。R1とR2は、それぞれ独立してアルキル基またはアリール基を表し、R1とR2が結合して環を形成してもよい。R3とR4は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。なお、nおよびmは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。〕』というものである。
【0016】
請求項2に記載の発明は、『前記電荷輸送層の分光透過率が、390〜500nmのいずれかの波長において70%以上100%未満であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。』というものである。
【0017】
請求項3に記載の発明は、『少なくとも、発振波長が390〜500nmの半導体レーザまたはピーク波長が390〜500nmの発光ダイオードの書込み光源を用いて請求項1または2に記載の電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段を有する画像形成装置であって、前記書込み光源の電子写真感光体表面上における露光スポット径が10〜50μmであることを特徴とする画像形成装置。』というものである。
【0018】
請求項4に記載の発明は、『請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、前記電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段、前記電子写真感光体上に形成された静電潜像を顕像化してトナー像を形成する現像手段、前記現像手段により顕像化されたトナー像を転写材上に転写する転写手段、前記転写手段により転写が行われた後の前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段の少なくとも1つの手段を一体的に搭載し、画像形成装置本体に着脱自在に装着されることを特徴とするプロセスカートリッジ。』というものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、電子写真感光体の塗膜状態が改善され、十分な耐クラック性を有すると共に、短波長の半導体レーザーまたは発光ダイオードの書込みにて画像欠陥(ポチ等)の発生が少なく、鮮鋭性が良好な電子写真画像を形成でき、繰り返し使用時における安定した電位特性を示す電子写真感光体を提供することができる。又、鮮鋭性が良好な電子写真画像を形成できる画像形成装置およびプロセスカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明者は、露光光源に対し、電荷輸送層の光透過性が高く、かつ電荷発生層にて電荷を効率よく発生させる高感度の電子写真感光体を実現させようと考えた。そこで、本発明者は、電荷輸送物質に対しては露光光源に対する吸収がなく、ホール移動度の高いものが好ましく、電荷発生物質に対しては環境変動によらず電荷の発生効率を高く維持できるものが好ましいと考えていた。
【0021】
しかしながら、上記性能を満たす電荷輸送物質や電荷発生物質を用いても、電子写真感光体として機能させた場合、満足な結果が十分に得られなかった。本発明者は、電荷輸送物質と該電荷輸送物質とともに使用するバインダとの相溶性や、そのバインダを溶解させる溶媒の配合をコントロールして課題を解消させようと考えたが、公知の材料の組合せだけでは要求される特性を全て満足できなかった。
【0022】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、縮合多環系化合物を含有させた電荷発生層と、下記一般式(1)で表されるアミン化合物を電荷輸送物質に用いベンゾトリアゾール系化合物もしくはトリアジン系化合物を含有した電荷輸送層とを組合わせた感光体を考えた。そして、この電荷発生層と電荷輸送層からなる電子写真感光体により、本発明の課題が解消されることを見出し、本発明に到ったのである。
【0023】
上記構成の電子写真感光体により課題が解消された理由は以下の様に考えられた。すなわち、電荷輸送層にベンゾトリアゾール系化合物もしくはトリアジン系化合物を添加することで耐光疲労性低下が抑制され、かつ、可塑性が付与されることにより耐クラック性を向上させることができる様になった。そして、この様な化合物が添加されていても電荷輸送物質である前記一般式(1)のアミン化合物を十分な濃度で添加できたので良好な電荷輸送性能が発現されたためと考えられる。さらに、電荷発生層に添加した縮合多環系化合物が電荷発生物質に対し何らかの寄与を行うことにより、電荷発生層では環境変動の影響を受けることなく電荷の発生を効率よく行える様になったものと考えられる。
【0024】
以下、本発明の構成を詳細に示す。
【0025】
本願発明のアミン化合物は下記一般式(1)で表わされる。
【0026】
【化2】

【0027】
〔式中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、それぞれ独立して置換基を有してもよいアリール基を表し、Ar1とAr2、および、Ar3とAr4が、結合して環を形成してもよい。R1とR2は、それぞれ独立してアルキル基またはアリール基を表し、R1とR2が結合して環を形成してもよい。R3とR4は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。なお、nおよびmは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。〕
上記アミン化合物は、波長が390〜500nmの露光光源に対し、吸収が小さく、単位露光量に対する電位減衰値が大きく、繰り返し特性も改善されて、小径のドット潜像をシャープに形成することができる。また、ベンゾトリアゾール系もしくはトリアジン系化合物と併用することにより、溶媒溶解性、ポリカーボネート等とのバインダとの相溶性が改善され、上述の構成で電子写真感光体の電荷輸送を形成した場合、塗布後の電荷輸送層の耐クラック性が改善されている。
【0028】
本発明に使用されるアミン化合物の具体例を下記に例示するが、本発明に使用可能なアミン化合物はこれら具体例には限定されるものではない。
【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
以下に、本発明で電荷輸送物質として使用可能なアミン化合物の合成例を下記に示す。
【0034】
(合成例1):化合物(CTM−16)
200ml三頭フラスコにN,N−ビス(p−ジメチルフェニル)アニリン10質量部,4−メチルシクロヘキサノン6.2質量部,酢酸20ml、メタンスルホン酸0.35質量部を計りとり、窒素気流下、70℃にて攪拌した。6時間後、反応を停止し、トルエン300mlと水200mlを加え、分液ロートにて水層が中性になるまで洗浄した。トルエン層を取り、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、濃縮した。カラムクロマトグラフィーにて目的物となるCTM−16を取りだした。酢酸エチルにて再結晶精製した。得られたCTM−16の収量は4.7質量部であった。
【0035】
(合成例2):化合物(CTM−17)
前記合成例1において、原料の4−メチルシクロヘキサノンに代えて4−エチルシクロヘキサノン6.92質量部とした他は合成例1と同様にして、化合物(CTM−17)を合成した。得られたCTM−17の収量は6.6質量部であった。
【0036】
(合成例3):化合物(CTM−18)
前記合成例1において、原料の4−メチルシクロヘキサノンに代えて3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン7.69質量部とした他は合成例1と同様にして、化合物(CTM−18)を合成した。得られたCTM−18の収量は4.3質量部であった。
【0037】
(合成例4):化合物(CTM−6)
前記合成例1において、原料の4−メチルシクロヘキサノンに代えてシクロヘキサノン5.37質量部とした他は合成例1と同様にして、化合物(CTM−6)を合成した。得られたCTM−6の収量は6.9質量部であった。
【0038】
(合成例5):化合物(CTM−4)
前記合成例1において、原料の4−メチルシクロヘキサノンに代えてメチルイソブチルケトン5.44質量部とした他は合成例1と同様にして、化合物(CTM−4)を合成した。得られたCTM−4の収量は5.3質量部であった。
【0039】
さらに、上記一般式(1)で表されるアミン化合物と、ベンゾトリアゾール系化合物もしくはトリアジン系化合物(以下本発明に使用可能な可塑剤ともいう)を併用することにより画像欠陥(ポチ等)の発生が少なく鮮鋭性が良好な画像が得られる。
【0040】
本発明に使用可能な可塑剤の具体例を下記に例示するが、本願発明に使用可能な可塑剤はこれらに限定されるものではない。
【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
なお、本発明に可塑剤として使用されるベンゾトリアゾール系化合物は、例えば、特公昭44−29620号に記載の方法、またはそれに準じた方法により合成することが可能である。
【0044】
本発明に使用可能な可塑剤の添加量はバインダの全質量に対し、1質量%以上100質量%以下が好ましく、3質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0045】
上記化合物が1質量%未満では耐光疲労性の低下を招き、100質量%より多いと電荷輸送層塗布液の粘度が低下しすぎて塗膜の形成が困難になったり膜強度の低下を招く。
【0046】
本発明に係る電子写真感光体は、電荷輸送物質として前記一般式(1)のアミン化合物を用い、かつ、ベンゾトリアゾール系もしくはトリアジン系化合物を含有するものであるが、その中でも、前記電荷輸送物質を含有する有機感光体として用いるものが好ましい。以下、有機感光体の構成について記載する。
【0047】
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能および電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
【0048】
本発明の有機感光体の構成は、前記一般式(1)のアミン化合物(電荷輸送物質)、および、ベンゾトリアゾール系化合物もしくはトリアジン系化合物を含有する限り特に制限されるものではなく、例えば、以下に示すような構成が挙げられる;
1)導電性支持体上に感光層として電荷発生層および電荷輸送層を順次積層した構成;
2)導電性支持体上に感光層として電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層を順次積層した構成;
3)上記1)、2)の感光体の感光層上にさらに表面保護層を形成した構成。
【0049】
感光体が上記いずれの構成を有する場合であってもよい。なお、本発明に係る電子写真感光体はいずれの構成を有する場合であっても、導電性支持体上に感光層を形成する前に下引層(中間層)を形成するものであってもよい。
【0050】
本発明でいう電荷輸送層とは、光露光により電荷発生層で発生した電荷キャリアを有機感光体の表面に輸送する機能を有する層を意味するもので、電荷輸送機能は電荷発生層と電荷輸送層を導電性支持体上に積層させて光導伝性を検知することで確認できる。
【0051】
次に、有機感光体の層構成を上記1)の構成を中心にして記載する。
【0052】
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0053】
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度および振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0054】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ω・cm以下が好ましい。本発明の導電性支持体としては、アルミニウム支持体が最も好ましい。該アルミニウム支持体は、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウム等の成分が混合したものも用いられる。
【0055】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、中間層を設けることが好ましい。
【0056】
本発明に用いられる中間層にはN型半導性粒子を含有することが好ましい。該N型半導性粒子とは、主たる電荷キャリアが電子である粒子を意味する。すなわち、主たる電荷キャリアが電子であることから、該N型半導性粒子を絶縁性バインダに含有させた中間層は、基体からのホール注入を効率的にブロックし、又、感光層からの電子に対してはブロッキング性が少ない性質を有する。
【0057】
一方、これらの粒子を分散し、中間層の層構造を形成するバインダ樹脂としては、粒子の良好な分散性を得る為にポリアミド樹脂が好ましいが、特に以下に示すポリアミド樹脂が好ましい。
【0058】
中間層のバインダ樹脂に使用するポリアミド樹脂としては、アルコールに可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。
【0059】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は、感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成である。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。
【0060】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
【0061】
電荷発生層
本発明の有機感光体には、縮合多環系化合物を含有することを特徴とするが、電荷発生物質として390nm〜500nmの波長領域に高感度特性を有する電荷発生物質を用いることが好ましい。このような電荷発生物質としてはアゾ顔料、ペリレン顔料、多感キノン顔料等が好ましく用いられる。
【0062】
特に、市販の405mm近辺に発振波長を有する短波長レーザーに対し、高感度を有する、ジブロムアンスアンスロン等の多環キノン系顔料、あるいは、具体例を下記に例示する化合物で表されるアゾ顔料等が好ましく用いられる。
【0063】
【化9】

【0064】
【化10】

【0065】
また、これらの顔料を併用して用いることができる。
【0066】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜800質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.3μm〜2μmが好ましい。
【0067】
電荷輸送層
本発明の電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)、バインダーおよび可塑剤を含有する。その他の物質としては必要によりシリカやアルミナ等の無機微粒子、フッ素樹脂微粒子等の有機微粒子または酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0068】
電荷輸送物質(CTM)としては、前記一般式(1)の電荷輸送物質が用いられるが、これ以外に、公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を併用してもよい。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
【0069】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0070】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
【0071】
電荷輸送層の合計膜厚は、10〜30μmが好ましい。該合計膜厚が10μm未満では、現像時の潜像電位を十分に獲得しにくく、画像濃度の低下が発生しやすく、又、30μmを超えると、電荷キャリアの拡散(電荷発生層で発生した電荷キャリアの拡散)が大きくなり、ドット再現性が悪化しやすい。
【0072】
また、本発明に係る感光体の表面層に酸化防止剤を含有させることが好ましい。表面層は、感光体の帯電時にNOxやオゾン等の活性ガスにより酸化されやすく、画像ボケを発生させ易いが、酸化防止剤を共存させることで画像ボケの発生を防止できる。
【0073】
酸化防止剤の具体例としては、たとえば、以下に示す公知の酸価防止剤が挙げられる。すなわち、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系)、アミン系酸化防止剤(ヒンダードアミン系、ジアリルジアミン系、ジアリルアミン系)、ハイドロキノン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤(チオエーテル類)、燐酸系酸化防止剤(亜燐酸エステル類)等が挙げられる。
【0074】
前記酸化防止剤の中でも、特にヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系酸化防止剤は、高温高湿時のカブリ発生や画像ボケの防止に効果的である。
【0075】
また、中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に使用される溶媒または分散媒としては、例えば以下のものが挙げられる。すなわち、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独あるいは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0076】
本発明に係る電子写真感光体を製造するために使用される塗布方法としては、公知の塗布法法が挙げられ、具体的には、円形スライドホッパ型塗布装置による塗布の他に浸漬塗布法やスプレー塗布法等が挙げられる。
【0077】
次に、本発明に係る電子写真感光体を用いた画像形成装置について説明する。
【0078】
図1に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送手段としての転写紙搬送部Dから構成されている。
【0079】
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
【0080】
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプおよび第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラーおよび第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
【0081】
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルター処理などの処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
【0082】
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26および光除電手段(光徐電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。又、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明に係わる有機感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
【0083】
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、露光手段(露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書込み手段である露光手段30としての露光光学系は図示しない半導体レーザーを書込み光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
【0084】
本発明の画像形成装置においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が390〜500nmの半導体レーザー又はピーク波長が390〜500nmの発光ダイオードを書込み光源として用いる。これらの書込み光源を用いて、書込み光源の電子写真感光体表面上における露光スポット径を10〜50μmに絞り込み、有機感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像をうることができる。
【0085】
前記露光スポット径とは該露光ビームの強度がピーク強度の1/e2以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)を云う。
【0086】
用いられる光ビームとしては半導体レーザーを用いた走査光学系および発光ダイオードの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布およびローレンツ分布等があるがそれぞれのピーク強度の1/e2以上の領域を本発明に係わる露光スポット径とする。
【0087】
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明に係わる有機感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
【0088】
転写紙搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写紙Pが収納された転写紙収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、又側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写紙Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写紙Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写紙Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46および進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24および分離極25によって転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送されながら転写紙Pに転写され、該転写紙Pは感光体21面より分離し、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
【0089】
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写紙Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写紙Pは排紙トレイ64上に排出される。
【0090】
以上は転写紙の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写紙案内部177が開放され、転写紙Pは破線矢印の方向に搬送される。
【0091】
更に、搬送機構178により転写紙Pは下方に搬送され、転写紙反転部179によりスイッチバックさせられ、転写紙Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
【0092】
転写紙Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写紙Pを再給紙し、転写紙Pを搬送路40に案内する。
【0093】
再び、上述したように感光体21方向に転写紙Pを搬送し、転写紙Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
【0094】
本発明の電子写真画像形成装置としては、上述の感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。また、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段の少なくとも1つを本発明の電子写真感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0095】
図2は、本発明の一実施の形態を示すカラー画像形成装置の断面構成図である。
【0096】
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21および定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0097】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、1次転写手段(1次転写工程)としての1次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写手段としての1次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、1次転写手段としての1次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
【0098】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、および、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
【0099】
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0100】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。
【0101】
また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
【0102】
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
【0103】
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列した発光ダイオードと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、半導体レーザー光学系などが用いられる。
【0104】
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
【0105】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、1次転写手段としての1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、2次転写手段としての2次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に2次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
【0106】
一方、2次転写手段としての2次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0107】
画像形成処理中、1次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の1次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
【0108】
2次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して2次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0109】
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0110】
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
【0111】
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、およびクリーニング手段6bとから成る。
【0112】
本発明に係る画像形成装置は、電子写真複写機、レーザープリンタ、LEDプリンタおよび液晶シャッタ式プリンタ等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレイ、記録、軽印刷、製版およびファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。なお、文中の「部」は質量部を表す。
【0114】
(感光体1の作製)
下記手順により感光体1を作製した。
【0115】
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、10点表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体を用意した。
【0116】
(中間層)
ポリアミド樹脂CM8000(東レ社製) 10質量部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製) 30質量部
メタノール 100質量部
上記組成をサンドミルを用いて10時間分散を行った。本分散液を上記組成の分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に日本ポール社製リジメッシュ5μmフィルターを用いてろ過して中間層塗布液を作製した。
【0117】
上記塗布液を前記支持体上に乾燥膜厚2μmとなるよう浸漬塗布法で塗布して中間層を形成した。
【0118】
(電荷発生層)
電荷発生物質(例示化合物(CG5)) 5質量部
ポリビニルブチラール樹脂BH−S(積水化学工業(株)製) 1質量部
酢酸t−ブチル 70質量部
4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 30質量部
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層上に乾燥膜厚0.3μmとなる様に浸漬塗布法で塗布して電荷発生層を形成した。
【0119】
(電荷輸送層)
電荷輸送物質(例示化合物(CTM−19)) 2質量部
バインダ(ポリカーボネート(Z300(三菱エンジニアリング社製)))
2.7質量部
酸化防止剤(Irganox1010(日本チバガイギー社製)) 0.1質量部
可塑剤(例示化合物(A1)) 0.3質量部
ジクロロメタン 20質量部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に乾燥膜厚23μmとなる様に円形スライドホッパー塗布機で塗布して電荷輸送層を形成した。この手順により感光体1を作製した。
【0120】
(感光体2〜5の作製)
感光体1の作製において、電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤をそれぞれ表1に示すものにした他は、感光体1と同様の手順で感光体2〜5を作製した。
【0121】
(比較用感光体1〜4の作製)
感光体1の作製において、電荷輸送物質を下記化合物CTM−AおよびCTM−Bを用い、それぞれ表1に示す電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤を用いた他は感光体1の作製と同様の手順で比較用感光体1〜4を作製した。
【0122】
【化11】

【0123】
【化12】

【0124】
(感光体6の作製)
下記手順で第2電荷輸送層塗布液を調製し、これを用いて第2の電荷輸送層を形成してなる感光体6を作製した。
【0125】
シリカ(平均粒径15nm、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理済み)0.1質量部をテトラヒドロフラン/トルエン(体積比8/2)混合液15質量部とポリカーボネート樹脂「Z300」1質量部の溶解液に添加し、USホモジナイザーにて分散処理した。続いて、電荷輸送物質(CTM−6)0.7質量部、酸化防止剤(Irganox1010)0.035質量部、可塑剤である例示化合物A7を0.1質量部を溶解して、第2電荷輸送層塗布液を調整した。
【0126】
表1に示す様に、電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤を用いた他は感光体1と同じ手順で第1電荷輸送層まで作製し、さらに、第2電荷輸送層として上記第2電荷輸送層塗布液を円形スライドホッパー塗布方法にて塗布した。塗布後、120℃、60分間熱乾燥処理を施すことにより、乾燥膜厚6.0μmの第2電荷輸送層を形成してなる感光体6を作製した。
【0127】
(感光体7〜9の作製)
表1に示す様に、第2電荷輸送層塗布液の調製に用いる可塑剤をA6に変更した他は感光体6の作製で用いた第2電荷輸送層塗布液と同じ手順で第2電荷輸送層塗布液2を調製した。表1に示す様に、電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤を用いた他は感光体1と同じ手順で第1電荷輸送層まで作製し、上記第2電荷輸送層塗布液2を用いた他は感光体6と同じ手順で第2電荷輸送層を形成することにより感光体7を作製した。
【0128】
また、第2電荷輸送層塗布液1のシリカに代えて酸化チタン(アナタース型、平均粒径6nm、アルミナにより5%1次表面処理とイソブチルトリメトキシシランにより30%2次表面処理を実施)に、可塑剤をA2に変更して第2電荷輸送層塗布液3を調製した。表1に示す様に、電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤を用いた他は感光体1と同じ手順で第1電荷輸送層まで作製し、上記第2電荷輸送層塗布液3を用いた他は感光体6と同じ手順で第2電荷輸送層を形成することにより感光体8を作製した。
【0129】
さらに、第2電荷輸送層塗布液3の可塑剤をA1に変更した他は第2電荷輸送層塗布液3と同じ手順で第2電荷輸送層塗布液4を調製した。表1に示す様に、電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤を用いた他は感光体1と同じ手順で第1電荷輸送層まで作製し、上記第2電荷輸送層塗布液4を用いた他は感光体6と同じ手順で第2電荷輸送層を形成することにより感光体9を作製した。
【0130】
(評価実験)
前記「感光体1〜9」及び「比較用感光体1〜4」を、市販のプリンタ「bizhubC350(コニカミノルタ製)」改造機(発振波長405nmの半導体レーザを像露光光源として搭載。アパーチャーによる露光スポット径の調節が可能)に搭載した。「感光体1〜9」を搭載したものを「実施例1〜9」、「比較用感光体1〜4」を搭載したものを「比較例1〜4」として、以下の項目について評価を行った。
【0131】
また、透明な石英ガラス上に、上記「感光体1〜9」及び「比較例1〜4」の電荷発生層より上に設けられた第1電荷輸送層、さらに、第2電荷輸送層を有するものは第2電荷輸送層も塗布して層を形成した。この様に形成した層を分光光度計「U−3500(日立(株)製)」を用いて波長390〜500nmの分光透過率(%)を測定した。表1に405nmにおける分光透過率の測定値を示した。
【0132】
「評価1」(細線再現性の評価)
露光スポット径を10、25、50μmと変化させ、1ドットの直線状の静電潜像を形成し、現像、転写を行った転写材上の出力画像の線の太さをデジタルハイスコープ(キーエンス社製)で測定してトナー像変化率Teを算出して細線再現性を評価した。露光スポット径に対するトナー線の太さの割合であるトナー像変化率Teは下記式より算出した。
【0133】
トナー像変化率Te(%)=トナー線太さ(μm)/露光スポット径(μm)
なお、評価は下記の基準で行い、◎、○、△を合格とした。すなわち、
◎:80%<Te≦120%
○:20%<Te≦167%
△:167%<Te
×:上記以外
「評価2」(露光後電位Viの評価)
23℃、50%RH環境下において、10000枚/A4連続プリント作成前後の露光後電位Viを測定した。
【0134】
「評価3」(感度の評価)
上記「実施例1〜9」及び「比較例1〜4」において、支持体をアルミニウム管からアルミ蒸着シートとした以外は同様に作製し、未露光部電位Voを−600Vとした時の光源405nmにおける感度E1/2(μJ/cm2)を評価した。感度の評価には、「EPA8300A(川口電機社製)」を用いて行った。
【0135】
以上の結果を表1に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
表1の結果より、本発明の構成を有する電子写真感光体である「実施例1〜9」は単位露光量に対する電位減衰値が大きく、繰り返し特性も改善され、小径のドット潜像をシャープに形成できることが確認された。また、本発明の構成を有する電子写真感光体では、電荷輸送層の耐クラック性が改善されていることも確認された。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明に係る電子写真感光体が搭載可能な画像形成装置の概略図である。
【図2】本発明に係る電子写真感光体が搭載可能なカラー画像形成装置の断面構成図である。
【符号の説明】
【0139】
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振波長が390〜500nmの半導体レーザまたはピーク波長が390〜500nmの発光ダイオードを書込み光源として使用する電子写真感光体であって、
前記電子写真感光体は、少なくとも導電性支持体上に、縮合多環系化合物を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質、バインダ、可塑剤を含有する電荷輸送層を有し、
前記電荷輸送物質が、下記一般式(1)で表される化合物であり、かつ、前記可塑剤がベンゾトリアゾール系化合物またはトリアジン系化合物であることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

〔式中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、それぞれ独立して置換基を有してもよいアリール基を表し、Ar1とAr2、および、Ar3とAr4が、結合して環を形成してもよい。R1とR2は、それぞれ独立してアルキル基またはアリール基を表し、R1とR2が結合して環を形成してもよい。R3とR4は、それぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。なお、nおよびmは、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。〕
【請求項2】
前記電荷輸送層の分光透過率が、390〜500nmのいずれかの波長において70%以上100%未満であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
少なくとも、発振波長が390〜500nmの半導体レーザまたはピーク波長が390〜500nmの発光ダイオードの書込み光源を用いて請求項1または2に記載の電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段を有する画像形成装置であって、
前記書込み光源の電子写真感光体表面上における露光スポット径が10〜50μmであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体、
前記電子写真感光体を帯電する帯電手段、
前記電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段、
前記電子写真感光体上に形成された静電潜像を顕像化してトナー像を形成する現像手段、
前記現像手段により顕像化されたトナー像を転写材上に転写する転写手段、
前記転写手段により転写が行われた後の前記電子写真感光体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段
の少なくとも1つの手段を一体的に搭載し、画像形成装置本体に着脱自在に装着されることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−198566(P2009−198566A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37345(P2008−37345)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】