説明

電子写真用ローラの製造方法および電子写真用ローラ

【課題】 被覆層に塗膜ムラのない均一な画像特性を有する電子写真用ローラの製造方法およびこの方法で製造した電子写真用ローラを提供する。
【解決手段】 導電性軸芯体上に少なくとも導電性弾性および被覆層を順次積層する電子写真用ローラの製造方法において、該被覆層の積層工程が、平均粒径3μm以上30μm以下の絶縁性粒子を含有する塗工液へ被塗工物を浸漬しその後引き上げるディップ塗工により塗工層を形成する塗工工程を含み、該塗工工程が、該塗工物の浸漬および引上のいずれの工程も塗工層上部より該塗工液が常にオーバーフローする条件のもとで、且つ以下の関係式を満たす条件のもとで行われることを特徴とする電子写真用ローラの製造方法。
0.5≦s≦2.5 (1)
B/s≧3 (2)
(式中、Bは、塗工槽の塗工液流路の断面積[cm2]を表し、sは被塗工物の浸漬断面積[cm2]を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置、複写機などの画像形成装置における現像、帯電等に用いる電子写真用ローラの製造方法およびこの製造方法により製造される電子写真用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、現像部材或いは帯電部材として用いられる電子写真用ローラは、多くの場合感光体に対して均一に圧接または当接させ、感光体との間に電圧を印加してトナーを感光体上に現像したり、感光体上に所望の電位を付与する目的で使用される。
【0003】
かかる目的のため、通常の電子写真用ローラは、導電性軸芯体(芯金と表すことがある)の外周面上に、電子導電剤やイオン導電剤等の導電剤を添加して所望の抵抗値に調整した弾性層を設け、その外周面上に被覆層を設けた構成となっている。被覆層は、トナー帯電性や搬送性を確保するため、或いは感光体への均一な電位付与を達成するために、ナイロン、ウレタンなどの樹脂材料、所望の導電性を付与するための導電剤や、所望の表面粗さを確保するための粗し粒子を含む被覆材料から形成する場合が多い。また電子写真用ローラの抵抗安定化や弾性層からのブリード成分の染み出しによる感光体の汚染を防止するため、弾性層と被覆層との間に抵抗調整層(中間層)を設ける場合もある。
【0004】
被覆層を、塗工液を用いて形成する場合、塗工方法として、均一な被覆層を得ることに優れているディップ塗工法が用いられることが多い。しかしながら、塗工液が粗し粒子を含む場合には、静置した塗工液中へ被塗工物をディップして塗工すると塗工層の表面に縞状のムラ等が発生し易く、均一な塗工層を得ることが難しい。また塗工液に含まれる粗し粒子や導電剤の種類によっては塗工槽で粗し粒子および導電剤が沈降し、長時間塗工を行う場合に安定した品質を得ることが困難となる。
【0005】
この欠点を解消する方法として、ポンプを用いて塗工液を攪拌タンクから塗工槽に供給し、塗工液を塗工槽から溢れさせ、この溢れた(オーバーフローした)塗工液を攪拌タンクに戻し、異物等を濾過により除去し、溶剤等を追加して粘度を調整した後、再び塗工槽に供給するオーバーフロー方式の塗工方法が提案されている(特許文献1)。オーバーフロー方式は、塗工液が循環しているため、粗し粒子や導電剤の沈降を防止する効果があり、さらに流量・流速を適正な値に調整することで表面が均一な塗工層が得られるようになる。
【0006】
例えば先行技術においては、円筒形の被塗工物の外径をd、円筒状塗工槽もしくは角柱状塗工槽の横断面の面積と等価の面積を有する円の直径をDとしたとき、D/dの値が
1/2 ≦ D/d ≦ 2 (i)
のとき、例えば電子写真感光体用基体のようなものの外周表面に薄く且つ均一な塗膜を形成するとある(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、平均粒径3μm以上30μm以下の絶縁性粒子を含有する塗工液中へ、0.5cm2≦s≦2.5cm2(sは、塗工液の流動する方向に直交する面における被塗工物の断面積であり、被塗工物の浸漬断面積と表すことがある)の円筒型基材をディップ塗工する場合においては、特許文献2に開示された上記式(i)を満たす、D/d=2.641/2として塗工を行ったとき、被塗工物の下端に光沢ムラが発生し、膜厚も不均一になった。
【0007】
また、被塗工物の外径d(mm)、長さL(mm)、塗工槽の内径D(mm)の関係が、下記式(ii)
0.02L≦D−d≦0.05L (ii)
で表される条件を満たす場合、可及的少量の塗布液量で浸漬塗布法により基体外周面に画像ムラの生じない塗膜形成が出来るとある(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、被塗工物の長さLが短い場合には、塗工槽の外径と被塗工物の外径の差D−dも小さい値が規定されることになる。そしてこのような長さLの短い被塗工物を、平均粒径3μm以上30μm以下の絶縁性粒子を含有する塗工液を用いて浸漬塗工を行った場合、具体的には、例えば、L=240mmのローラを特許文献2に開示された範囲であるD−d=10mmの条件で塗工を行ったとき、塗工ムラが発生し、膜厚も不均一になった。
【0008】
前述のように、平均粒径3μm以上30μm以下の絶縁性粒子を含有する塗工液の場合においては、先行技術では均一な塗膜が得られないケースが発生する。
【0009】
ところで塗工槽中を流れる塗工液の流速は本来、相対的に塗工槽の中心ほど速く、塗工槽の壁付近では遅い。塗工槽中を流れる塗工液の流速は塗料の粘度やチクソトロピック性にも影響されるため、「単位時間当たりの流量(体積)/流路の断面積」の値を平均流速(線速)とみなすこととする。この場合、オーバーフロー方式の塗工機では、塗工液の平均流速(線速)は循環ポンプの出力(単位時間当たりの流量(体積))と塗工液が通過する塗工液流路の断面積により計算される。そして塗工槽中に被塗工物が浸漬されているとき、被塗工物が存在する部位における塗工槽の塗工液流路の断面積は被塗工物浸漬断面積(s)、および塗工槽の塗工液流路の断面積(B)により決定される。
【0010】
ここでローラの浸漬断面積(s)と塗工槽の塗工液流路の断面積(B)の関係についで述べる。(s)と(B)の差が小さいということは、ローラ浸漬時にはこのローラ下端の位置で液の塗工液流路が急激に狭くなるということであるから、ここでは塗工液が乱流を起こしやすくなっている。また断面積の差が小さいとローラ表面と塗工槽内壁との間隙も狭いということになる。この間隙が狭いということはローラと塗工槽の中心軸が少しでもずれていると、ローラ表面と塗工槽内壁との間隙の周ムラが塗工液の流量(流速)の不均一化に繋がり、相対的に流量(流速)が小さい部分ではローラに流れ模様が発生しやすく、さらに流量(流速)が極端に小さい場合には塗工槽上端の周の一部分が塗工液の乾燥等により流れなくなり、スジ状の塗膜ムラが発生する原因となる。
【0011】
逆に(s)と(B)の差が大きいということは、ローラに対して塗工槽が過剰に大きいということである。この場合には塗工するために必要となる塗工液の量が大きくなり無駄が発生する。また、同じ流速を得るためには循環ポンプの能力を大きくしなければならない。流速が遅くなった場合には、絶縁性粒子や導電剤の沈降や塗工液の安定性低下等の悪影響が出る可能性がある。さらには塗工槽が大きいほうが塗工槽上端の水平精度を出すのが困難である。水平精度が出ていない場合には、塗工液のオーバーフローが周方向で均一ではなくなるため、スジ状のムラが発生し易い。
【0012】
以上のように、従来の技術においては、被覆層の積層工程が、平均粒径3μm以上30μm以下の絶縁性粒子を含有する塗工液へ被塗工物を浸漬しその後引き上げるディップ塗工により塗工層を形成する塗工工程を含む場合、積層した被覆層に塗膜ムラが発生し易く、均一な画像特性を有する電子写真用ローラを得ることは難しかった。
【0013】
【特許文献1】特開昭57−5047号公報
【特許文献2】特開昭61−149268号公報
【特許文献3】特開平1−75063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、平均粒径3μm以上30μm以下の絶縁性粒子を含有する塗工液へ被塗工物を浸漬しその後引き上げるディップ塗工により塗工層を形成する塗工工程を含む被覆層の積層工程を有する電子写真用ローラの製造方法おいて、簡単な方法で塗工層のムラの発生を防止し、均一な画像特性を有する電子写真用ローラの製造を可能とした、製造方法を提供することおよびこの方法により製造された電子写真用ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決した本発明の電子写真用ローラの製造方法は、導電性軸芯体上に少なくとも導電性弾性層および被覆層を順次積層する電子写真用ローラの製造方法において、該被覆層の積層工程が、平均粒径3μm以上30μm以下の絶縁性粒子を含有する塗工液へ被塗工物を浸漬しその後引き上げるディップ塗工により塗工層を形成する塗工工程を含み、該塗工工程が、該被塗工物の浸漬および引上のいずれの工程も塗工槽上部より該塗工液が常にオーバーフローする条件のもとで、且つ以下の関係式を満たす条件のもとで行われることを特徴とする。
0.5≦s≦2.5 (1)
B/s≧3 (2)
(上記関係式において、Bは、塗工槽の塗工液流路の断面積[cm2]を表し、sは、被塗工物の浸漬断面積[cm2]を表す。)
【0016】
さらに、本発明の電子写真用ローラの製造方法は、前記塗工工程において、塗工槽のオーバーフロー面における塗工液の平均流速(線速)を550mm/min以下とすることが好ましい。
さらに、本発明の電子写真用ローラの製造方法は、前記被覆層の膜厚を、8μm以上30μm以下とすることが好ましい。
さらに、本発明の電子写真用ローラの製造方法は、前記塗工工程が、以下の関係式を満たす条件のもとで行われることが好ましい。
1.5≦s≦2.5 (3)
3.5≦B/s≦6 (4)
(上記関係式において、Bは、塗工槽の塗工液流路の断面積[cm2]を表し、sは、被塗工物の浸漬断面積[cm2]を表す。)
【0017】
また、上記課題を解決した本発明は、本発明の電子写真用ローラの製造方法により製造された電子写真用ローラである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被覆層の積層工程が、平均粒径3μm以上30μm以下の絶縁性粒子を含有する塗工液へ被塗工物を浸漬しその後引き上げるディップ塗工により塗工層を形成する塗工工程を含み、この塗工工程が、被塗工物の浸漬および引上のいずれの工程も塗工槽上部より塗工液が常にオーバーフローする条件のもとで、且つ上記関係式(1)、(2)を満たす条件のもとで行われることにより、塗工層のムラの発生を防止し、均一な画像特性を有する電子写真用ローラを製造し提供することを可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1および図2は本発明の電子写真用ローラの実施形態の一例の概略を示すものであり、図1は、電子写真用ローラを導電性軸芯体の軸方向からみた概略断面図を、図2は、電子写真用ローラの導電性軸芯体の軸方向に平行な面における概略断面図を示す。これらの図に示すように、電子写真用ローラは、導電性軸芯体(a)上に、少なくとも導電性弾性層(b)および被覆層(c)を順次積層した構成となっている。導電性弾性層(b)または被覆層(c)は1層の単層構造であっても良いし、2層以上の多層構造であっても良い。
【0020】
(導電性軸芯体)
本発明に用いられる導電性軸芯体(a)としては、鉄、銅、ステンレス等の金属材料の丸棒を用いることができる。さらにこれらの表面に防錆や耐傷性付与を目的としてメッキ処理を施しても構わない。
【0021】
(導電性弾性層、導電性弾性層の積層方法)
導電性弾性層(b)は、例えば天然ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、またはクロロプレンゴム(CR)等のゴム材料に導電剤を添加したものや、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂およびシリコーン樹脂等に導電剤を添加したものや、予め上記ゴム材料や樹脂に導電剤を添加した導電性ゴム材料または樹脂材料を用いて導電性軸芯体上に積層し、所望の場合にはこれを加熱硬化して形成することができる。
【0022】
導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤またはアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤を添加し、所望の抵抗に調整するのが一般的である。導電剤はゴム材料100質量部に対し、通常、2〜50質量部添加するのが好ましい。導電剤の添加量を2質量部以上とすると、導電性弾性層(b)に導電性を付与することができ、50質量部まで必要量の導電剤を加えることにより、導電性をコントロールすることが可能となる。導電剤はゴム材料100質量部に対し、通常5〜20質量部を添加するのがより好ましい。
【0023】
このような導電性弾性層(b)は、公知の方法、例えば、液状ゴム材料(例えば、付加反応架橋型液状シリコーンゴム等の液状ゴム材料)を成形型に注入して加硫硬化する方法、ゴム材料または樹脂材料を押出成形して軸芯体上に積層し、所望の場合には積層後に加硫硬化する方法、ゴム材料または樹脂材料を射出成形して軸芯体上に積層し、所望の場合には積層後に加硫硬化する方法等で形成すればよい。なお、加硫硬化は公知の方法にしたがって行えばよく、加硫硬化条件は、用いるゴム材料等に応じ、適宜定めればよい。このようにして、導電性軸芯体の外周面上に導電性弾性層を積層したローラを調製することができる。導電性弾性層(b)を2層以上の多層構造とする場合には、第1の導電性弾性層(b)と同様の材質を用いることが出来、また第1の導電性弾性層と同様にして形成することができる。導電性弾性層を多層とすると、電子写真用ローラの硬度調整や抵抗調整をし易くなるなどのメリットが挙げられる。但し、付加反応型導電性シリコーンゴムを用いる場合には、その反応阻害とならない様な材質を選択する必要がある。導電性弾性層(b)の厚みは、通常1〜6mmとするのが好ましい。導電性弾性層(b)を2層以上の多層構造とする場合には、各導電性弾性層の厚みの合計が前記厚みの範囲となるようにすればよい。
【0024】
(被覆層)
被覆層(c)は、導電性軸芯体の外周面上に導電性弾性層(b)を積層して得られる上記ローラの導電性弾性層(b)の外周面に接して形成され、導電性弾性層(b)中に含有される成分が電子写真用ローラの表面へブリードアウトし、感光体を汚染するのを防止する目的で、または、電子写真用ローラ全体の電気抵抗を調整する目的で設けられる。
【0025】
被覆層(c)の厚みは、ブリードアウトを防止するため、通常、8μm以上とするのが好ましく、また導電性弾性層(b)の柔軟性を損なうことなく、また耐摩耗性を考慮すると、30μm以下とするのが好ましい。また、被覆層(c)を2層以上の多層構造とする場合には、各層の合計厚みが上記範囲となるようにすればよい。
【0026】
(被覆材料)
被覆層(c)を形成する被覆材料は、樹脂材料および3μmから30μmの平均粒径を有する絶縁性粒子、および所望の場合には導電剤等の添加剤を含む。
【0027】
(樹脂材料)
樹脂材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(SEBC)およびオレフィン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合体(CEBC)等が用いられる。
【0028】
(絶縁性粒子)
絶縁性粒子は、被覆層の耐磨耗性やトナー搬送性を向上させるために加えられる。絶縁性粒子は、3μmから30μmの平均粒径を有するものが用いられる。絶縁性粒子の平均粒径は、粒子径Diを有する粒子数をniとしたとき、下記式
Dv=(Σnii3/Σni1/3
で求められる体積平均粒径である。
絶縁性粒子としては、例えば、ポリスチレン粒子、ウレタン粒子、ナイロン粒子、アクリル粒子、シリコーン粒子等を用いることが出来る。形状としては球形が好ましい。この絶縁粒子は、塗工液を調製する際等に使用する溶剤により膨潤や溶解が起こらないことが要求される。
【0029】
絶縁性粒子の添加量は、被覆層を形成する被覆材料中の樹脂材料を100質量部としたとき、絶縁性粒子は、通常、2〜50質量部とするのが好ましい。絶縁性粒子の添加量をこの範囲とすると、電子写真用ローラとして適度の耐磨耗性やトナー搬送性を持つ被覆層表面が得られる。
【0030】
また、絶縁性粒子の平均粒径(体積平均粒径)を3μm以上とすると、(最外層)被覆層の表面凹凸が大きくなり、電子写真用ローラとしたとき、十分なトナー搬送性が得られ、また平均粒径(体積平均粒径)を30μm以下とすると、(最外層)被覆層の表面凹凸の平均間隔が適切な大きさとなり、トナー搬送量を適切な量とすることが容易となり、結果として画像が良好となる。また、絶縁性粒子の平均粒径(体積平均粒径)は、5〜15μmとするのがより好ましい。
【0031】
(導電剤)
被覆層に導電性を持たせるために、所望の場合には被覆材料に導電剤を添加する。導電剤としては、電子伝導機構を有する導電剤(カーーンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄粉等)或いはイオン伝導機構を有する導電剤(アルカリ金属塩およびアンモニウム塩等)の微粒子を用いることができる。上記導電剤は2種以上を併用してもよい。また導電剤は、樹脂材料100質量部に対し、通常、5〜200質量部添加するのが好ましい。導電剤の添加量を5質量部以上とすると、被覆層は導電性を付与することができ、200質量部まで必要量の導電剤を加えることにより、導電性をコントロールすることが可能となる。導電剤を樹脂材料100質量部に対し、5〜50質量部を添加するのがより好ましい。使用する導電剤は、感光体を汚染するものであってはならない。
【0032】
(その他の添加剤)
被覆層の静摩擦係数を小さくする目的で被覆材料にグラファイト、雲母、二硫化モリブデンおよびフッ素樹脂粉末等の固体潤滑材、或いはフッ素系界面活性剤、ワックスまたはシリコーンオイル等を添加することができる。
【0033】
(溶剤)
被覆層(c)の形成に用いる被覆材料は、溶剤に溶解または分散して塗工液とする。塗工液の調製に使用することのできる溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、キシレン、トルエン等の芳香族類、n−酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、テトラヒドロピラン等のエーテル類が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。また樹脂材料等が溶解または分散する場合は、水等も溶剤として用いることが出来る。
【0034】
(塗工液の調製)
塗工液の調製は、公知の塗工液の調製方法によって行うことができる。例えば、上述した被覆材料を溶剤中に添加し、攪拌して、各成分を均一に混合し、これを適宣希釈して塗工液を調製する。塗工液の調製において粉砕工程を加える場合は、ボールミル、サンドミルまたは振動ミル等を用いることができる。ディップ塗工により塗工層を形成する場合、塗工液の粘度は塗工層の膜厚に大きく影響するため、塗工液の粘度は1〜250mPa・sの範囲にすることが好ましく、5〜50mPa・sとするのがより好ましい。
【0035】
(被覆層の形成)
上記塗工液を、導電性軸芯体の外周面上に導電性弾性層を積層して得られたローラ(被塗工物と表すことがある)の導電性弾性層の外周面上に、被塗工物の浸漬および引上のいずれの工程も塗工槽上部より塗工液が常にオーバーフローする条件のもとで、且つ以下の関係式を満たす条件
0.5≦s≦2.5 (1)
B/s≧3 (2)
(上記関係式において、Bは、塗工槽の塗工液流路の断面積[cm2]を表し、sは、被塗工物の浸漬断面積[cm2]を表す。)
のもとでディップ塗工して、塗工液を塗布して塗工層を形成し、この塗工層を乾燥し、または硬化して被覆層(表面層)を形成し導電性弾性層の上に積層して電子写真用ローラを得る。
【0036】
塗工工程において使用する塗工機としては、オーバーフロー方式の塗工機が好ましい。図3に使用することのできるオーバーフロー方式循環塗工機の一例の概略図を示す。
図3に示したオーバーフロー方式循環塗工機においては、ポンプ16によって攪拌タンク14から塗工液を送り出し、エアーチャンバー17により脈動を消し、フィルタ18によって塗工液中の異物を除去して、塗工槽11の底部に送り、塗工槽11上部よりオーバーフローした塗工液は攪拌タンク14に還流される。塗工槽11は、底部を除き円筒状の形状を有しており、上端部より常に塗工液をオーバーフローする構造となっている。被塗工物10を昇降機12に取り付け、塗工液中に浸漬した後に引き上げて、被塗工物10の外周面上に塗工層を形成する。なお、循環している塗工液の粘度や比重を測定装置(不図示)で測定し、溶剤の蒸発等により塗工液の粘度や比重が上昇していることを検出したときは、希釈用溶剤タンク13より溶剤を添加し、循環している塗工液の粘度や比重を一定に保つことができる。
【0037】
図3に示すオーバーフロー方式循環塗工機においては、塗工槽の塗工液流路の断面積Bは、塗工液が循環する方向に直交する断面における塗工槽11内部の塗工液流路の断面積をいい、被塗工物の浸漬断面積sは、塗工液の循環する方向に直交する断面における浸漬した被塗工物の断面積をいう。
【0038】
上記条件を満たす方法で塗工することで塗膜ムラの発生のない均一な塗工層を形成することができ、これによりムラのない均一な被覆層を得ることができる。上記条件が満されていない場合には、被覆層の光沢ムラや、上下方向のスジが発生してしまう。さらに好ましくは、下記関係式
1.5≦s≦2.5 (3)
3.5≦B/s≦6 (4)
を満たす条件で塗工することでさらに安定した品質が得られ、また無駄のないコンパクトな塗工機とすることができる。
【0039】
B/sの値が大きい場合、得られる導電性ローラの品質には影響はないものの、塗工槽の塗工液流路の断面積Bの値が大きくなり、塗工に必要となる塗工液の総量が多くなるばかりでなく、好ましい塗工液の平均流速(線速)を得るためにはB/sの値が比較的小さい場合に比べ、塗工液の循環量を多くしなければならない。そのためには循環ポンプの出力を上げなければならず、このときポンプの能力が限界に近い場合には塗工液の流れに脈動が発生する。この場合、循環ポンプの能力を大きくし、出力に余裕を持たせることで脈動は解決するが、塗工装置が大掛かりになるため余分なコストが発生してしまう。このような問題が発生するところから、通常、B/sは6以下とするのが好ましい。
【0040】
オーバーフロー方式の循環塗工機において、塗工槽11では、被塗工物の浸漬および引上工程のいずれにおいても常に塗工槽11の上端部より塗工液がオーバーフローしていることが必要である。被塗工物を浸漬中に塗工液がオーバーフローしていない時間が存在すると、塗工液の流れが不安定になり、縞状のムラが発生する。塗工槽11の上端面である塗工液のオーバーフローする面(オーバーフロー面と表すことがある)における被塗工物が浸漬され塗工されているときの塗工液の平均流速(線速)は、550mm/min以下にすることが好ましく、100〜550mm/minの範囲とするのがさらに好ましい。オーバーフロー面における塗工液の平均流速(線速)を550mm/min以下とすると、均一な塗工層を得ることができる。なお、塗工液の平均流速が550mm/minを超えると、塗工液の流れが乱れやすくなり、被覆層に光沢ムラが発生しやすくなる傾向がみられる。
【0041】
(乾燥、硬化)
次に、上記のようにして形成した塗工層を乾燥または硬化する。乾燥または硬化する方法としては、必要に応じて熱を加えずに風乾して溶剤を除去または低減した後に、被覆層の樹脂材料が熱可塑性樹脂である場合は加熱乾燥して、熱硬化性樹脂の場合は、反応温度までの加熱をして硬化等を行い被覆層を形成する。
【0042】
加熱乾燥または加熱硬化時の温度は、被覆材料によって異なるが、残留溶剤は十分除去されている必要があり、残留溶剤による被覆層の欠陥生成を避けるため、加熱開始時は主溶剤の沸点以下の温度で加熱を開始し段階的に昇温するのが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本実施例において「部」は質量部を意味する。
【0044】
なお、本実施例において、被覆層外観および光沢差は、蛍光灯の下で目視外観を行い、下記に示すような欠陥が発見できるかどうかを判断基準とした。
良 :下記欠陥の無いもの、もしくは検出困難なもの
軸方向のスジ:ローラの長手方向と平行に10mm以上、幅2mm以下のスジがみられるもの(このスジの部分は蛍光灯の下で見ると通常部分に比べ明るさが異なって見える(白く見えるものと、黒く見えるものの両方がある))
縞模様 :スジ同様に通常部とは異なる色あいを持つ部分が存在し、これが曲線的にねじれた模様をなしているもの
下端くもり :ローラを浸漬したときに下側であった方の端部が、それ以外の部分と光沢が異なっているもの(具体的には下側端部約20mmにわたって白く曇っている、または、より細かく観察すると、下端側ががさついていて粗さが大きくなっている)
【0045】
(実施例1)
下記の要領で電子写真用現像ローラを作製した。
(導電性弾性部材の作製)
外径φ8mmの鉄製の軸芯体(導電性軸芯体)を内径φ16mmの円筒状金型内に同心となるように設置し、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製、体積固有抵抗1×107Ωcm品)を注型後、130℃のオーブンに入れ20分加熱成型し、脱型後、200℃のオーブンで4時間二次加硫を行い、厚み4mm、導電性弾性層部の長さ240mmのローラを得た。
【0046】
(被覆層用塗工液の作製)
ウレタン塗料(ニッポランN5033;商品名、日本ポリウレタン社製)を固形分濃度10%となるように、メチルエチルケトンで希釈し、導電剤としてカーボンブラック(#7360SB;商品名、東海カーボン製、平均粒子径28nm)をウレタン塗料固形分100部に対し50部、絶縁性粒子として平均粒径14μmのウレタン粒子(アートパールC400;商品名、根上工業製)をウレタン塗料固形分100部に対し6部添加した後、十分に分散したものに硬化剤(コロネートL;商品名、日本ポリウレタン社製)をウレタン塗料固形分100部に対し10部添加し、さらに攪拌し塗工液を得た。
【0047】
(塗工設備、塗工条件概要)
図3に概略を示したオーバーフロー方式循環塗工機を用いて上記塗工液を上記ローラに塗布した。この塗工機の塗工槽の内径は、φ28mm(塗工液流路の断面積B=6.15[cm2])であり、塗工液を200ml/minの流量(循環流量と表すことがある)で循環した。上記ローラの外径は、φ16mmで浸漬断面積sの値は2.01[cm2])であり、B/sの値は3.06であった。また、塗工槽のオーバーフロー面における塗工液の平均流速(線速)は482.3 [mm/min]であった。
【0048】
(被覆層の形成(塗工))
ローラをその中心線が塗工槽のオーバーフロー面に対して垂直になるように保持して液面に向かって降下し、浸漬させ、5秒間停止させた後引き上げて塗工層を形成した。浸漬時の速度は20mm/min、引き上げ時の速度は、引き上げ開始直後で500mm/min、ローラの導電性弾性層の下端が液面から出た直後で200mm/minとなるよう一次関数のプログラムを組んで調速した。また、ローラの引上工程の開始時においても塗工液のオーバーフローが確認できた。塗工液を塗布したローラは30分間室温にて風乾し、150℃のオーブンにて1時間加熱硬化して現像ローラを得た。
【0049】
(実施例2)
塗工液を50ml/minの循環流量で循環した以外は実施例1と同様にして、現像ローラを得た。浸漬断面積sの値は、2.01[cm2]であり、B/sの値は3.06であり、また、塗工槽のオーバーフロー面における塗工液の平均流速(線速)は120.6[mm/min]であった。また、ローラの引上工程の開始時においても塗工液のオーバーフローが確認できた。なお本実施例において、理論上、引き上げ時に常に塗工液がオーバーフローされるための条件は、塗工液の循環流量を100.5[ml/min]以上とすることである。
【0050】
(実施例3)
塗工槽の内径をφ32mm(塗工液流路の断面積を8.04[cm2])とした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。被塗工物の浸漬断面積sの値は、2.01[cm2]であり、B/sの値は4.00であり、塗工槽のオーバーフロー面における塗工液の平均流速(線速)は、331.6[mm/min]であった。また、ローラの引上工程の開始時においても塗工液のオーバーフローが確認できた。
【0051】
(実施例4)
外径φ6mmの鉄製の軸芯体を用い、内径φ12mmの円筒状金型を用いた以外は実施例1と同様にして導電性弾性体層の厚みが3mm、導電性弾性層部の長さが240mm、外径φ12mmのローラを得た。また、このローラを用い、塗工槽の内径をφ32mm(塗工液流路の断面積を8.04[cm2])とした以外は実施例1と同様にして、現像ローラを得た。被塗工物の浸漬断面積sの値は、1.13[cm2]であり、B/sの値は7.11であり、また、塗工槽のオーバーフロー面における塗工液の平均流速(線速)は、289.4[mm/min]であった。また、ローラの引上工程の開始時においても塗工液のオーバーフローが確認できた。
【0052】
(実施例5)
下記の要領で帯電ローラを作製した。
(導電性弾性部材の作製)
エピクロルヒドリンゴム100部、四級アンモニウム塩2部、炭酸カルシウム30部、酸化亜鉛5部、脂肪酸5部を60℃に調節した密閉型ミキサーにて10分間混練した後、エピクロルヒドリンゴム100部に対してエーテルエステル系可塑剤15部を加え、20℃に冷却した密閉型ミキサーでさらに20分間混練して原料コンパウンドを調製した。このコンパウンドに原料ゴムのエピクロルヒドリンゴム100部に対し加硫剤としての硫黄1部、加硫促進剤としてのノクセラーDM1部およびノクセラーTS0.5部(大内新興化学製)を加え、20℃に冷却した2本ロール機にて10分間混練した。得られたコンパウンドを外径φ4mmステンレス製導電性軸芯体の外周面上にローラ状になるように押し出し機のクロスヘッドダイに連続的に通過させて、ローラ形状に成型し、170℃のオーブンで1時間加熱加硫成型した後、外径φ8mmになるように研磨してローラを得た。
【0053】
(被覆層用塗工液の作製)
アクリルポリオール溶液(ダイセル化学工業(株)社製PLACCEL DC2016;商品名 / 有効成分70質量%、希釈溶剤としてキシレン30質量%を含有)100部、イソシアネートA(ヒュルスジャパン(株)社製VESTANAT B 1370;商品名/有効成分(イソホロンジイソシアネート(IPDIと表すことがある))60質量%、希釈溶剤としてn−酢酸ブチルを15質量%、キシレン25質量%を含有)40部、イソシアネートB(旭化成ケミカルズ(株)社製TPA−B80E;商品名/有効成分(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDIと表すことがある))80質量%、希釈溶剤として酢酸エチル20質量%を含有)30部、表面処理した導電性酸化錫90部(処理剤:フルオロアルキルアルコキシシラン)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂粒子(積水化成品工業(株)社製テクポリマー MBX−5;商品名/平均粒径6μm)35部、メチルイソブチルケトン340部をミキサーを用いて混合し、塗工液を得た。
【0054】
(塗工設備、条件概要)
実施例1と同一の塗工機を用い、塗工液を300ml/minの循環流量で循環して塗工した。このときの浸漬断面積sは0.50 [cm2]であり、B/sは12.25であった。また、塗工槽のオーバーフロー面における平均流速(線速)は530.5[mm/min]であった。
【0055】
(被覆層の形成(塗工))
前記ローラをその中心線が塗工槽のオーバーフロー面に対して垂直になるように保持して液面に向かって降下し、浸漬させ、9秒間停止後引き上げて塗工層を形成した。浸漬時の速度は10mm/min、引き上げ時の速度は、引き上げ開始直後で300mm/min、導電性弾性層の下端が液面から出た直後で100mm/minとなるよう一次関数のプログラムを組んで調速した。また、ローラの引上工程の開始時においても塗工液のオーバーフローが確認できた。塗工液を塗布したローラを30分間室温にて風乾し、160℃のオーブンで1時間加熱硬化して帯電ローラを得た。
【0056】
(実施例6)
塗工液を50ml/minの循環流量で循環した以外は実施例5と同様にして、帯電ローラを得た。浸漬断面積sは0.50 [cm2]であり、B/sは12.25であった。また、塗工槽のオーバーフロー面における塗工液の平均流速(線速)は88.4[mm/min]であった。また、塗工液からの引上工程の開始時においても塗工液のオーバーフローが確認できた。なお本実施例において、理論上、引き上げ時に常に塗工液がオーバーフローされるための条件は、塗工液の循環量を15.1[ml/min]以上とすることである。
【0057】
(比較例1)
塗工槽の内径をφ26mm(塗工液流路の断面積Bを5.31[cm2])とし、塗工液を100ml/minの循環流量で循環した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。浸漬断面積sの値は、2.01 [cm2]であり、またB/sの値は2.64であり、塗工槽のオーバーフロー面における塗工液の平均流速(線速)は303.2[mm/min]であった。また、ローラの塗工液からの引上工程の開始時においても塗工液のオーバーフローが確認できた。
【0058】
(比較例2)
塗工液を20ml/minの循環流量で循環した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。浸漬断面積sの値は、2.01 [cm2]であり、またB/sの値は3.06であり、塗工槽のオーバーフロー面における塗工液の平均流速(線速)は48.2[mm/min]であった。しかし、ローラの引上工程の開始時においては、塗工液のオーバーフローが見られなかった。
【0059】
上記実施例と比較例の結果を纏め表1に示す。また表2に比較例の現像ローラ被覆層の外観および光沢差の評価結果の詳細を示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表1に示した通り、実施例1〜6においては、被塗工物の浸漬断面積sの値を0.5以上2.5以下とし、塗工槽の塗工液流路の断面積Bと被塗工物の浸漬断面積sの比B/sを3以上とし、且つ塗工時において塗工槽から塗工液が常にオーバーフローする状態で塗工することにより、被覆層に塗膜ムラ等の発生が無い均一な塗膜外観を有する電子写真用ローラを得ることができた。さらに、ローラ浸漬時の塗工槽のオーバーフロー面における塗工液の平均流速(線速)を550mm/min以下という条件とすることにより、被覆層に塗膜ムラ等の発生が無い、より均一な塗膜外観の電子写真用ローラを得ることができた。
【0063】
これに対し比較例1では、塗工槽の断面積Bと被塗工物の浸漬断面積sの比B/sが3未満であり、ローラを浸漬中の塗工槽においては、ローラの存在する領域と存在しない領域との境界において塗工液流路が急激に狭くなるために塗工液の流れが乱れ、これによりローラの下端と下端以外の部分で被覆層の光沢具合に差が発生し、且つ膜厚も不均一になったと考えられる。また、ローラ外周と塗工槽内壁との間隙が狭くなったことから、塗工槽とローラの中心軸のズレによる周方向での流速ムラが理由と思われる、軸方向のスジが被覆層に若干発生した。
【0064】
比較例2では、塗工液の循環量が少なく、ローラ引上工程における塗工液の液面の下降に対して追いつかず、ローラ引き上げ開始から数秒間は塗工槽から塗工液がオーバーフローしていなかった。この条件ではローラ上部で塗工液の流れが不均一になり、得られた現像ローラの被覆層に縞模様がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の製造方法により電子写真装置、複写機などの画像形成装置における現像、帯電ローラ等として用いることのできる、被覆層に光沢ムラや膜厚ムラのない、均一な画像特性を有する電子写真用ローラを製造し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の電子写真用ローラの導電性軸芯体の軸方向からみた概略断面図である。
【図2】本発明の電子写真用ローラの導電性軸芯体の軸方向に平行な面における概略断面図である。
【図3】本発明に使用することのできるオーバーフロー方式循環塗工機の一例の概略図である。
【符号の説明】
【0067】
a :導電性軸芯体
b :導電性弾性層
c :被覆層
10:被塗工物
11:塗工槽
12:昇降機
13:希釈用溶剤タンク
14:攪拌タンク
15:攪拌羽根
16:循環ポンプ
17:エアーチャンバー
18:フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸芯体上に少なくとも導電性弾性層および被覆層を順次積層する電子写真用ローラの製造方法において、該被覆層の積層工程が、平均粒径3μm以上30μm以下の絶縁性粒子を含有する塗工液へ被塗工物を浸漬しその後引き上げるディップ塗工により塗工層を形成する塗工工程を含み、該塗工工程が、該被塗工物の浸漬および引上のいずれの工程も塗工槽上部より該塗工液が常にオーバーフローする条件のもとで、且つ以下の関係式を満たす条件のもとで行われることを特徴とする電子写真用ローラの製造方法。
0.5≦s≦2.5 (1)
B/s≧3 (2)
(上記関係式において、Bは、塗工槽の塗工液流路の断面積[cm2]を表し、sは、被塗工物の浸漬断面積[cm2]を表す。)
【請求項2】
前記塗工工程において、塗工槽のオーバーフロー面における塗工液の平均流速(線速)を550mm/min以下とすることを特徴とする請求項1記載の電子写真用ローラの製造方法。
【請求項3】
前記被覆層の膜厚を、8μm以上30μm以下とすることを特徴とする請求項1または2記載の電子写真用ローラの製造方法。
【請求項4】
前記塗工工程が、以下の関係式を満たす条件のもとで行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用ローラの製造方法。
1.5≦s≦2.5 (3)
3.5≦B/s≦6 (4)
(上記関係式において、Bは、塗工槽の塗工液流路の断面積[cm2]を表し、sは、被塗工物の浸漬断面積[cm2]を表す。)
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の電子写真用ローラの製造方法により製造された電子写真用ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−84862(P2006−84862A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270336(P2004−270336)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】