説明

電子写真用ローラーの製造方法

【課題】 リング塗工によるローラー基体成形機の狭いワーク搬送エリアでも、振れ精度に問題なくワークを把持搬送する方法を考案する。
【解決手段】 本発明の部品把持機構は、6軸ロボットの6軸フランジに装着される、電磁石を用いた上把持冶具と、2対のエアシリンダーを用いた下把持冶具により構成することで、全自動で更にロボットアームが高速移動・搬送してもローラーの外形振れを極小にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラーの製造方法において、該ローラー把持搬送手段が該ローラー軸芯体の両端を把持し、且つ少なくとも片方の把持に磁力を用いたことを特徴とする電子写真用ローラーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低価格で高品質の工業部品を大量生産する場合、個々の部品専用の自動加工機で無人生産するのが一般的である。この一貫加工ラインで異なる部品(品種)を加工する場合、多くのラインは全装置を停止して品種替え段取りを行なっている。また上記専用加工機の部品把持、位置決め、部品加工などは、主に直交座標系のオートハンドを用いた部品搬送方法を用いている。
【0003】
一方、有人組立作業現場では従来の一貫したベルトコンベア生産方式に代わって、分散したセル生産方式が導入され、多品種小ロット生産にすばやく対応でき、更にコンベアを廃したことで省スペースを達成できる等、着実な成果を挙げている。また21世紀を迎え、この有人組立作業現場における人間の作業を多軸ロボットに置き換え、組立作業から開放された人間が生産性向上検討やロボットの教示に知恵を出し、更なる生産性向上を図るようになっている。このロボットセル生産方式は、部品組立製造部門では現在一般的になりつつある。いっぽう本発明でこれから説明する電子写真用ローラーの製造分野では、多軸ロボットによるセル生産方式は未だ一般的でなく、金型を用いた直交座標系自動無人の一貫生産加工ラインが主流である。
【0004】
また、特許文献1にはこれらの生産現場で用いられる、作業空間を効率よく利用可能なロボット装置に関する開示がなされている。
【特許文献1】特公平7−73781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザープリンター等に代表される電子写真関連の事務機は、そのパーソナル機等において更なる小型化が求められている。そのため、電子写真用事務機の構成部品、例えば現像ローラー、帯電用ーラー、給紙ローラー等は電子写真機器本体の小型化に合わせ益々ローラー長さを短くする要求がされている。例えば事務機本体が幅で20mm小型化されると、現像ローラー基体の芯金軸方向長さは、従来全長270mmであったものを250mmに短くすることが望まれる。しかし、電子写真用事務機を使うユーザー側の立場ではA4、A3などの用紙サイズは変わらない。このように画像形成用に係る部材の軸方向長さは変えようが無く、その結果芯金の露出部分が左右合計で20mm短縮した設計にせねばならない(図9参照)。
【0006】
背景技術で述べたようなロボットセル生産方式で、電子写真用ローラーを成形する場合は、今後は金型製造装置を使わずに、環状スリットを有するリング塗工機を使用しローラーを成形する方法が有利になるであろうと考えられる。理由としては、従来の金型成形に対して大幅に製造装置を簡素に構成でき、さらにリング塗工機のノズル部分を簡単に交換できるので、少量多品種生産に柔軟に対応できるからである。この優位性は結果的に製品別の専用金型製造装置を構築せずに済み、投資回収性の向上と製造ライン据付面積の大幅な縮小をもたらす。
【0007】
電子写真用ローラーを前述のリング塗工機を使用して成形する方法では、型内で硬化する金型製造方法に比べオープン系で(大気に開放で)未硬化のローラーを取り扱う理由で、用いる材料としては、できるだけ垂れにくい材料が適している。具体的には、材料降伏応力が50〜600Paの未硬化の液状材料が適している。
【0008】
降伏応力(しばしば降伏点と呼ばれる)とは、それ以下では試料が固体として振舞う限界応力のことである。応力により試料はバネのように弾性的に変形するが、この応力が取り除かれると変形は消失する。降伏応力以下では、加えられる応力と変形は比例関係を保つ。降伏応力を超えると、凝集フィラーによって形成されていた3次元網目構造の構造破壊が生じ、試料は流動を開始する。加えられた応力によって際限なく変形し続け、応力を除いてももとの形状に戻ることはない。
【0009】
つまり、塗膜の厚みが大きくなるにつれて材料にかかる重力は大きくなり、重力方向に材料が流れやすくなる。流れを生じさせないためには、重力に対して充分な降伏応力を持つことが必要である。塗膜の厚みに対して充分な降伏応力を持つことにより、形状が安定し寸法精度の良い成形物を得ることが出来る。例えば降伏応力が50Pa以下では材料が垂れ易く、一方600Pa以上にすると垂れ性は良くなるが塗工時にレべリングが悪くローラー表面にスジが出易くなる。しかし、子のような材料を用いても従来の搬送方法では、振れが悪化することがあるので本発明では把持搬送方法に着目し、考察した。
【0010】
以下、図10に基づき説明する。上記のような材料を用いても、未硬化の液状材料が塗布されたローラーを、該塗工機から一次加硫機へロボットハンドで搬送する際に搬送の衝撃(応力)を与えると、ローラー真円度や振れ精度が悪化してしまう。そのため、従来のリング塗工機で上記降伏応力の液状材料を用いて電子写真用ローラーを製造する場合で本発明の把持搬送方法に依らない場合は、人間が直接手指をもちいて、未硬化のローラーを搬送の衝撃を与えず安定して搬送する必要がある。またリング塗工方式によるローラー成形では、成形条件によっては現像用部材の軸端に成形後の切代(きりしろ)が必要である。この切代を考慮すると、芯金の露出部分長さは5〜6mm程度に短くなってしまう。実際の生産時、成形後のローラー搬送は、この数ミリの芯金露出部をオートハンドで把持する必要がある。従ってこれらの課題を克服しないと、電子写真用ローラーの成形で環状スリットを有するリング塗工機を使用し、ロボットセルで連続無人生産、しかも多品種「大量」生産する方法は実現できず、引き続き人手に頼らざるを得ない。しかし昨今の少子高齢化傾向や若者の理工系離れなど、将来の熟練技能者確保は厳しい。このため、多品種「少量」生産ならびに多品種「大量」生産を低コストで両立させる、手作業加工の柔軟性と無人専用加工機の高効率性を両立した全自動多品種対応のロボットセル方式によるローラー成形装置を実現する必要に迫られている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、電子写真用ローラーを前述のリング塗工機を使用して材料降伏応力が50〜600Paの未硬化の液状材料をローラー状に成形し、未加硫のローラーを搬送する際に、搬送衝撃が無い優れた把持方法と多軸ロボットとを組み合わせることにより、偏肉が極小で且つローラー真円度や振れ精度の優秀な、電子写真用ローラーの製造方法を提供することができる。また、環状スリットを有するリングを用いた塗布装置はその構造上、可動式の芯金上下クランプ軸の可動ストロークを短くしたほうが芯金位置決め精度は高精度になる。さらに塗布リングや材料供給配管等が存在し、ローラー塗工付近は複雑に狭くなっている。このことが部品搬送の自動化を困難なものとしている。
【0012】
そこで電磁石の吸着力を利用すると共に、その電磁石の置く場所を工夫することで、芯金左右の露出部分が数mmの状況においても、ローラー塗工付近が複雑に狭くなっていても、生産性に何ら影響することなく把持ハンドリングが可能となる。これより本発明に用いた現像用ローラーの把持方法の例を掲げ、その電磁石の置く場所の工夫について、図1、図2、図4、図5、図6、図7に基づいて説明する。
【0013】
図7は、現像用ローラー芯金の上端に直接電磁石を配置し、ローラーを吸着把持し、重力方向下向きに吊り下げた状態である。構造的にもっとも単純で安易な方法であるが、電磁石(本発明ではフジタFSGP-40)の高さ方向40mmの確保が必須である。図5、図6は電磁石を現像ローラーの脇に平行して配置し、電磁石の磁力を磁力伝達用軟鉄材、本発明では板厚4mmのSS400材、を用いてローラーを吸着把持し、重力方向下向きに吊り下げた状態である。磁力伝達用軟鉄材には芯金上端が当接する位置に、位置決め用孔が加工してある。
【0014】
図で明らかなように、ローラーを把持吊り下げするのに必要な軸芯体上方の空間は、図7では40mm、図5、図6では4mmである。即ち、本発明のようない電磁石の置く場所を工夫すれば、(40−4)=36mmの空間の節約が可能になる。電磁石とローラー芯金上端の、磁力伝達用軟鉄材にとりつける位置については後述する実施例を参照にされたい。
【0015】
次に本発明の部品把持機構をわかり易く説明する。
【0016】
上記最初の課題:電子写真装置の小型化による部品把持部分(芯金露出部分)の短軸化に対応するために部品把持に電磁石を用いることにした。
【0017】
ローラー塗工場所付近が複雑に狭くなっている問題を解決するため、多軸ロボットに装着される部品把持用電磁石の位置を工夫し、直接電磁石を芯金上または下方向にレイアウトせず、ローラー軸方向脇に置き、電磁石の磁力を磁力伝達用軟鉄材料(いわゆるマグネットヨーク)を介することによりローラー芯金を吸着できるようにした。この工夫で、画像形成用に係る部材の軸方向長さの端部から、同じく軸方向長さで10mm以内の空間があればローラーを吸着する冶具をリング塗工装置に挿入可能にした。
【0018】
先に述べてきたように、製造装置をより簡素に構成でき、塗工用リングの交換が簡単なことで少量多品種生産に対応するために、金型によるローラー基体製造方法にかわってリング塗工機によるローラー基体製造方法を導入する際には、用いる液状材料がその降伏応力値が50〜600Paのたれ難い性質を持ち、かつ部品把持機構に独自の工夫をし、部品把持による衝撃や振動が振れ精度に影響を与えないように工夫した。
【0019】
以下、本発明の部品把持機構の詳細を説明する(図1、図2参照)。
【0020】
電子写真用ローラー基体が該塗工リングにて芯金上に画像形成用に係る部材を塗工された後、最初にその芯金上端を前述の方法で磁力吸着把持した後、前述の複雑に狭くなっているローラー塗工場所付近から抜き取る。次に他方端(即ち軸方向の下端)を二対の空気圧シリンダー機構を組み合わせた把持冶具によって概ローラーの両端を把持する。あるいは小型の電動スライダーの組み合わせ等を用いても良い。これにより、次の搬送工程において該ローラーの下端が振れ回るようなことは防止できる。空気圧シリンダーの把持クランプ時に、二対の空気圧シリンダー機構の駆動はスピードコントローラー(いわゆるスピコン)で緩やかにローラーに振動を与えずにクランプ把持させることは言うまでもない。この把持機構の構造ならびに組み立て方法を図4に基づいて説明する。
【0021】
多軸ロボット腕21の6軸フランジ29には、把持冶具連結ハンド25が取付けられている。連結ハンド25の重力軸上方には電磁石28を取り付けるための電磁石ホルダー22、上把持冶具磁力伝達用軟鉄材(SS400)27、上把持冶具ホルダー(アルミ材)26がボルト・ナット類で連結されている。連結ハンド25の重力軸下方には、エアシリンダー把持冶具その一23、エアシリンダー把持冶具その二および芯金下端押さえ板24、がボルト・ナット類で連結されている。エアシリンダー冶具23と24は、図中矢印方向に圧空駆動される。
【0022】
次にローラーを下把持する際の、二対の空気圧駆動シリンダーの動きを、図1と図2を参照に説明する。図1で示すように、ローラー下端把持動作前は、この芯金下押さえ板はエアシリンダー23および24により格納されている。芯金下端を把持動作する時、まず芯金上端を磁力吸着把持しローラー塗工場所付近から抜き取った後、図2のようにエアシリンダー把持冶具その一(23)のシリンダーロッドが重力方向下方向へ動作するように、空気圧をシリンダーに入力する。次にエアシリンダー及び芯金下押さえ板24が芯金方向水平にせり出す(押さえ板には芯金真下に位置決め用テーパー状の「すり鉢」孔が加工してある)。次に、エアシリンダー把持冶具その一(23)がエアシリンダー把持冶具その二および芯金下押さえ板(24)を上方に駆動し、該ローラーを確実にクランプ・把持する。
【0023】
このようにして該塗工済ローラーの両端を確実に把持した後、ロボットハンドにより適切な搬送速度によって、次の一次加硫工程まで搬送する。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、偏肉が極小で且つローラー真円度や振れ精度の優秀で、従来よりも長さが短い電子写真用ローラーの部品把持方法を提供できる。また本発明を更に応用することで、被加工部品の種々の変更に自在に対応できる方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、電子写真用ローラを被加工部品とした例を用いて説明する。
【0026】
図1に、本発明に用いた、搬送用多軸ロボット・デンソーVS6353EMの腕部分が未加硫の該ローラー片端を電磁石を用いた冶具によって吸着把持し、該リング塗工機から抜き取った後の様子を示す。磁力を用いた把持冶具は、6軸の多軸ロボット21のフランジ29に装着される。把持冶具連結ハンド25は、図6に示すように多軸ロボット21に装着されることでX、Y、Z方向に自在に移動もしくは回転可能となる。
【0027】
図10に芯金投入機、液状材料供給装置、リング塗工機、搬送ロボット、一次加硫の配置状況を示した。一次加硫炉の後工程は、従来からある金型加工製造装置と同様なので説明は省く。
【0028】
図2は図1の次の動作を示している。前記搬送用多軸ロボットが空気圧シリンダー二個を組み合わせた冶具により、該ローラーの他方端を把持している様子を示す。
【0029】
図3は図2の次の動作を示していて、該ローラーを一次加硫機へ搬送している様子を示している。
【0030】
図4は電磁石を用いて吸着把持する部分の装置構成図である。電磁石本体はフジタFSGP-40、それに電磁石コントローラーFSDC−2403を組み合わせ、クランプ時は励磁させ、アンクランプ時は消磁できるようにコントロールに電気回路を工夫してある。
【0031】
図4は電磁石を用いた把持冶具によって該ローラーを把持した状態を示す。
【実施例1】
【0032】
本発明の実施例を電子写真用機能部品の一つである現像ローラーについて、その基層をリング塗工機と基層塗工後の一次加硫(最初の加熱硬化)工程を例に掲げ説明する。なお本実施例は発明の対象とする被加工部品等を限定するものではない。
【0033】
〔塗工装置・部品搬送冶具類〕
現像ローラーの塗工および塗工後の一次加硫炉までの搬送については「発明を実施するための最良の形態」で説明した塗工装置および部品搬送治具類を準備した。リング塗工ノズルおよび塗布条件は、二次加硫後の現像ローラーの外径(=弾性体層の外径)がφ12mmとなるように設定した。
【0034】
なお、電磁石(フジタFSGP-40)とローラー芯金上端の磁力伝達用軟鉄材間の取付け位置は、図5で示すように軸芯体の軸中心線からの距離を25mmに配置し、即ち図6では電磁石の外面と該ローラー表面からの距離を19mmに設定した。なお参考までに言うと、図6においてローラー表面からの距離は1mm以上あれば電磁石28と弾性体層102が接触することはない。
【0035】
〔降伏応力測定法〕
粘弾性測定装置による液状ゴム材料の降伏応力測定法を以下に記す。
【0036】
粘弾性測定装置にはHaake社製RheoStress600を用いた。材料約1gを採取し試料台の上にのせ、コーンプレートを徐々に近づけて、試料台から約50μmの位置で測定ギャップを設定した(コーンプレートにはφ35mm、傾斜角度1°のモノを用いた)。そのとき、まわりに押し出された材料を奇麗に除去し測定に影響の出ないようにした。材料温度が25℃になるようにプレート台の温度は設定され、試料をセットしてから10分間放置後、測定を開始した。試料にかける応力は0.00Paからスタートし50000Paまでの範囲(周波数は1Hz)を、180秒かけて変動させ、そのときのG'貯蔵弾性率、G"損失弾性率、位相差tanδの変化を32ポイント測定した。G'ははじめ線形粘弾性領域で一定の値となり、その後G'貯蔵弾性率とG"損失弾性率が交差する点の応力値を読み取り、降伏応力とした。
【0037】
次に実験用の部品作成手順を説明する。
【0038】
〔弾性層ゴム材料〕
弾性層の形成には液状のシリコーンゴムを用いた。液状シリコーンゴムは、オルガノポリシロキサンに充填剤としてシリカ粉末、石英粉末、カーボンブラック等を配合しベース材料とした。さらに硬化触媒として白金化合物を微量配合したものを混合物Aとし、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを配合したものを混合物Bとし、それぞれリングコート機に付随の原料タンク1、原料タンク2にセットし、圧送ポンプを使用してスタチックミキサーに送り出し混合物Aと混合物Bを1:1の比率で混合した。
【0039】
(シリコーンゴム組成物の調製)
分子鎖量末端ビニル基封鎖ジメチルポリシロキサン 80質量%
カーボンブラック 2質量%
(電気化学工業製デンカブラック(登録商標)粉状)
シリカ 13質量%
(日本アエロジル製:商品名:AEROSIL(登録商標)50)
上記の配合物をプラネタリーミキサーを用いて30分間混合脱泡した。さらにこのベース材料100部に対して、塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金含有量3質量%)0.02部を加えて混合し混合物Aとし、粘度10cpsのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(SiH含有量1質量%)1.5部を加えて混合し混合物Bとした。混合物Aと混合物Bをそれぞれ、原料タンク1、原料タンク2にセットし、圧送ポンプを使用してスタチックミキサーに送り出し混合物Aと混合物Bを1:1の比率で混合した。このようにして降伏応力50〔Pa〕の現像ローラー用液状材料を得た。
【0040】
軸芯体(芯金)として、直径6mm、長さ275mmの丸棒状鋼材製芯金で、表面に化学ニッケルメッキを施したものを100本用意した。
【0041】
<塗工工程>
まず、図11の環状スリットを有するリング塗工装置を使って、前述の弾性体形成用材料を前述の鋼材製芯金の外周面に塗布し、加硫前の現像ローラー用基層(硬化前の液状樹脂層)を得た。この装置の塗工ヘッド8は、図12に示す構成を有する。加硫前液状樹脂層の厚さは約3mmとなるように塗工ヘッドを設計製作した。
【0042】
軸芯体101を塗工ヘッド8の上方から下方に鉛直方向に移動させ(図11)、塗工ヘッドを通過させ、一旦成形ヘッドの下方に位置させた。次に、軸芯体を鉛直上方に移動させながら、塗工ヘッドにより軸芯体外周面に液状樹脂層を形成した。この動作を自動で繰り返し100本の未加硫ローラーを得た。
【0043】
<塗工後の一次加硫炉までの搬送>
図8に現像用ローラーの断面説明図を示す。
【0044】
図1に、本発明に用いた、搬送用多軸ロボット・デンソーVS6353EMの腕21および29が、未加硫の該ローラー片端を、電磁石を用いた冶具によって吸着把持し、該リング塗工機から抜き取った後の様子を示す。把持搬送の最初、ローラーは図1に示す電磁石22と磁力伝達用軟鉄冶具により、ローラー上端部のみ把持吸着されている。また仮に図1の用にローラー上端を把持したままの状態で、ロボットが高速搬送移動すると(毎秒0.5メートル程度)、ローラー上端をピポットとし、ローラー下端は振り子状態で大きく振られ、未加硫のゴム材料は偏芯してしまう。それを防止するため、次に図2に示す動作に入る。なお、ロボットの搬送速度は毎秒0.5メートルで実施している。
【0045】
図2は前記搬送用多軸ロボットが空気圧シリンダー二個を組み合わせた冶具により、該ローラーの他方端(下端)を把持している様子を示す。本発明では、CKD製のSTR−M−6−40−KOH3−D型空気圧シリンダーを二個用いた。
【0046】
図3は、該ローラーを一次加硫機へ搬送している様子を示している。図3は一次加硫機の取り起き部分へ向けて、ロボットが把持装置をもちいて、リング塗工機により成形された直後のローラーを、ロボットがローラーをチャック搬送している状態である。
【0047】
なお、本実施例に用いたロボットセル装置一連の動作には、ロボットコントローラRC5(デンソー)、PLC(三菱電機)を用いた。また、動作と制御は、ロボットプログラムとシーケンスラダープログラムを本実施例専用に設計製作し、無人・全自動で一連の搬送動作を行なった。本実施例の塗布タクトタイムは30秒/本の条件で、連続動作した。塗工〜一次加硫の間の動作は、無人で円滑に実施された。
【0048】
<ローラーの外径精度振れ測定・評価>
得られた一次加硫済のローラーの外形振れ精度を以下の方法にて測定した。
【0049】
得られた一次加硫後のローラーをエスペック製の熱風循環式高温槽に100本まとめて投入し、加熱温度200℃で2時間二次加硫した後、以下の測定を行った。
【0050】
レーザー測長機(東京精密株式会社製)によってローラー両端部からおよそ52mm毎に合計5点の外径測定し、これを360°回転させながら行い、その平均を各点での外径とした。さらに、測定した5点における外径を比較し、最大値と最小値の差をとって、その値を測定し、外形振れ精度とした。測定結果、実施例1で試作した100本のローラーは、すべて30μm未満で、電子写真用ローラー用基体として全て満足の行く結果を得た。
【実施例2】
【0051】
実施例2は実施例1と同様の装置により、以下の材料を用いて試作をした。
【0052】
〔弾性層ゴム材料〕
実施例2で用いた材料は実施例1のジメチルポリシロキサンの分子量を上げ、下記の配合にし、降伏応力を大きくする調整を行った。
【0053】
(シリコーンゴム組成物の調製)
分子鎖量末端ビニル基封鎖ジメチルポリシロキサン 80質量%
カーボンブラック 5質量%
(電気化学工業製デンカブラック(登録商標)粉状)
シリカ 13質量%
(日本アエロジル製:商品名:AEROSIL(登録商標)50)
上記の配合物をプラネタリーミキサーを用いて30分間混合脱泡した。その他は実施例1と同様の操作をし、降伏応力600〔Pa〕弾性層ゴム材料用混合物を得た。
【0054】
軸芯体(芯金)は実施例1と同じものを100本用意した。
【0055】
<塗工工程>
実施例1と同様の塗工ヘッドを用い、実施例1と同様の方法により軸芯体外周面に液状樹脂層を形成し、100本の未加硫のローラーを得た。
【0056】
<塗工後の一次加硫炉までの搬送>
実施例1と同様のタクトタイムで、実施例1と同様の多軸ロボットと搬送冶具を用い、塗工〜一次加硫を無人で実施した。
【0057】
<ローラーの外径精度振れ測定・評価>
得られた一次加硫済のローラーの外形振れ精度を以下の実施例1と同様の方法にて二次加硫し、測定・評価した。
【0058】
実施例2で試作した100本のローラーは、すべて30μm未満で、電子写真用ローラー用基体として全て満足の行く結果を得た。
【0059】
(比較例1)
比較例1として、実施例1と同様の装置を用意した。
【0060】
〔弾性層ゴム材料〕
弾性層ゴム材料は実施例1と同様のものを用い、同様の操作をし、実施例1と同様の弾性層ゴム材料用混合物を得た。軸芯体(芯金)は実施例1と同じものを100本用意した。
【0061】
<塗工工程>
実施例1と同様の塗工ヘッドを用い、実施例1と同様の方法により軸芯体外周面に液状樹脂層を形成し、100本の未加硫のローラーを得た。
【0062】
<塗工後の一次加硫炉までの搬送>
実施例1と同様のタクトタイムで、実施例1と同様の多軸ロボットと搬送冶具を用い、ただし、図2の空気圧シリンダー二個を組み合わせた冶具による該ローラーの他方端(下端)把持をしない状態でローラー塗工後の把持搬送〜一次加硫を無人で実施した。
【0063】
<ローラーの外径精度振れ測定・評価>
得られた一次加硫済のローラーの外形振れ精度を以下の実施例1と同様の方法にて二次加硫し、測定・評価した。
【0064】
比較例1で試作した100本のローラーは、全てが外形振れが100μmを超えていた。
【0065】
(比較例2)
比較例2は実施例1と同様の装置により、以下の材料を用いて試作をした。
【0066】
〔弾性層ゴム材料〕
比較例2で用いた材料は実施例1のジメチルポリシロキサンの分子量を下げ、
下記の配合にし、降伏応力を下げる調整を行った。
【0067】
(シリコーンゴム組成物の調製)
分子鎖量末端ビニル基封鎖ジメチルポリシロキサン 80質量%
カーボンブラック 2質量%
(電気化学工業製デンカブラック(登録商標)粉状)
シリカ 13質量%
(日本アエロジル製:商品名:AEROSIL(登録商標)50)
上記の配合物をプラネタリーミキサーを用いて30分間混合脱泡した。比較例2では降伏応力がより下がるよう、ジメチルポリシロキサンの分子量を調整した。
【0068】
その他は実施例1と同様の操作をし、降伏応力20〔Pa〕弾性層ゴム材料用混合物を得た。
【0069】
軸芯体(芯金)は実施例1と同じものを100本用意した。
【0070】
<塗工工程>
実施例1と同様の塗工ヘッドを用い、実施例1と同様の方法により軸芯体外周面に液状樹脂層を形成し、100本の未加硫のローラーを得た。
【0071】
<塗工後の一次加硫炉までの搬送>
実施例1と同様のタクトタイムで、実施例1と同様の多軸ロボットと搬送冶具を用い、塗工〜一次加硫を無人で実施した。
【0072】
<ローラーの外径精度振れ測定・評価>
得られた一次加硫済のローラーの外形振れ精度を以下の実施例1と同様の方法にて二次加硫し、測定・評価した。
【0073】
比較例2で試作した100本のローラーは、80本が30μm未満で、20本が30μm以上40μm以下だった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】ローラー片端を電磁石把持し、リング塗工機から抜いた様子
【図2】もう一方のローラー片端を空気圧シリンダー冶具で把持した状態
【図3】デパレタイズしているところ。
【図4】把持ハンド組み立て説明図
【図5】電磁石、磁力伝達用軟鉄材が現像ローラーを把持した状態の説明図で、電磁石の外面と、軸芯体の軸中心線からの距離を25mmに設定した図
【図6】電磁石、磁力伝達用軟鉄材が現像ローラーを把持した状態の説明図で、電磁石の外面と、ローラー表面からの距離を20mmに設定した図
【図7】電磁石を現像ローラー真上に配置し把持した状態の説明図
【図8】現像用ローラーの断面説明図
【図9】A4サイズ現像用ローラーの長さ説明図
【図10】本発明で説明する製造装置の全貌(概略説明図)
【図11】リング塗工機概略説明図
【図12】塗工ヘッド断面概略説明図
【符号の説明】
【0075】
1 架台
2 コラム
3 ボールねじ
4 LMガイド
5 サーボモータ
6 プーリ
7 ブラケット
8 リング形状の塗工ヘッド
9 ワーク下保持軸
10 ワーク上保持軸
11 供給口
12 配管
13 材料供給弁
14 リニアガイド
21 多軸ロボットの腕部分
22 電磁石用ホルダー
23 エアシリンダー把持冶具その一
24 エアシリンダー把持冶具その二および芯金下端押さえ板
25 把持冶具連結ハンド
26 上把持冶具・ホルダー(アルミ材)
27 上把持冶具・磁力伝達用(軟鉄材)
28 電磁石
29 多軸ロボットの6軸フランジ
101 軸心体
102 弾性体層(硬化前または硬化後)
103 表面層
201 リングヘッド上部
202 リングヘッド下部
203 材料注入口
204 材料流路
205 材料吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸を重力方向に配置した軸芯体上に降伏応力が50Pa以上600Pa以下の未硬化の液状材料を塗布しローラー形状を成形する工程と、該未硬化の液状材料が塗布されたローラーを把持搬送する工程とを有するローラーの製造方法において、該把持搬送手段が該軸芯体の両端を把持し、且つ少なくとも片方の把持に磁力を用いたことを特徴とする電子写真用ローラーの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、未硬化の液状材料を塗布する工程が、環状スリットを有するリング塗工機を使用する手段であり、該未硬化の液状材料が塗布されたローラーを、該塗工機から搬送する際に、該ローラーの片端を電磁石を用いて磁力による吸着把持した後、他方端をさらに把持することを特徴とする電子写真用ローラーの製造方法。
【請求項3】
請求項2において電磁石の外面と、軸芯体の軸中心線からの距離を6mm以上25mm以内の位置に配置し、更に該電磁石の外面と該ローラー表面からの距離を1mm以上20mm以内の位置に配置し、且つ該電磁石と該軸芯体を磁性材で接続し、該電磁石の磁力を該磁性材で伝えることにより、軸芯体の端部を該磁性材で吸着する方法を用いた電子写真用現像ローラーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−152127(P2008−152127A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341575(P2006−341575)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】