説明

電子制御装置

【課題】電磁ノイズを放射して他の電子制御装置の誤作動を招いたり、外部からの電磁ノイズの影響を受けて半導体装置が誤作動することを抑制することができる電子制御装置を提供する。
【解決手段】放熱部材21を第1基板10のグランド13と電気的に接続する。このような電子制御装置では、放熱部材21は、電位が安定するためアンテナとして機能してしまうことを抑制することができる。したがって、半導体装置22にて発生する電磁ノイズを放射することを抑制することができ、近接する他の電子制御装置(半導体装置)の誤作動を招くことを抑制することができる。また、外部からの電磁ノイズの影響を受け難くすることができ、半導体装置22が誤作動することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、基板に電子部品が実装されてなる電子制御装置に関し、特に、車両に搭載されて使用されると好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置と放熱部材とがモールド樹脂に一体に封止されてなる電子部品がプリント基板に実装された電子制御装置が知られている。具体的には、このような電子制御装置では、電子部品は、放熱部材上に半導体装置が搭載されると共に半導体装置を搭載するプリント基板側の放熱部材がモールド樹脂より露出している。そして、電子部品は、放熱部材がプリント基板のグランドと接触するようにプリント基板に実装されており、プリント基板のうち放熱部材の直下には、厚み方向に貫通し、壁面に銅めっき等を施してなるサーマルビアが形成されている。このような電子制御装置では、半導体装置にて発生した熱を放熱部材およびサーマルビアを介して、プリント基板の裏面側から放熱することができる。
【0003】
しかしながら、近年では、さらに放熱効率を向上させることや、プリント基板の実装面積を有効に利用することが望まれており、次のような電子制御装置が開示されている。例えば、特許文献1には、電子部品を挟んでプリント基板と反対側にプリント基板より熱伝導率(放熱性)の高い金属基板(例えば、電子制御装置の筐体)等を配置し、放熱部材を金属基板に接触または近接させた状態で、電子部品がプリント基板に実装されてなる電子制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−86536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような電子制御装置では、放熱部材はプリント基板のグランドと接続されていないために電位が安定しない。このため、放熱部材はアンテナとして機能してしまうことがあり、電子部品の内部での半導体のスイッチング動作等による電磁ノイズを放射することで近接する他の電子制御装置(半導体装置)の誤作動を招いたり、携帯電話等の外部からの電磁ノイズの影響を受けやすくなって半導体装置が誤作動してしまうことがあるという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点を解決することができる電子制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、回路が形成された第1基板(10)と、放熱部材(21)と、放熱部材(21)に搭載される半導体装置(22)と、放熱部材(21)のうち半導体装置(22)側と反対側を露出させた状態で、放熱部材(21)および半導体装置(22)を封止するモールド樹脂(24)と、を有し、半導体装置(22)側が第1基板(10)と対向する状態で第1基板(10)に搭載される電子部品(20)と、第1基板(10)より熱伝導率が高く、電子部品(20)を挟んで第1基板(10)と反対側に配置され、放熱部材(21)と熱的に接続される第2基板(30)と、を備え、放熱部材(21)は、第1基板(10)のグランド(13)と電気的に接続されていることを特徴としている。
【0008】
このような電子制御装置では、放熱部材(21)は、第1基板(10)のグランド(13)と電気的に接続されており、電位が安定するためアンテナとして機能してしまうことを抑制することができる。したがって、半導体装置(22)にて発生する電磁ノイズを放射することを抑制することができ、近接する他の電子制御装置(半導体装置)の誤作動を招くことを抑制することができる。また、外部からの電磁ノイズの影響を受け難くすることができ、半導体装置(22)が誤作動することを抑制することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明のように、放熱部材(21)を第1基板(10)のグランド(13)とコンデンサ(14)を介して電気的に接続することができる。
【0010】
これによれば、第2基板(30)と放熱部材(21)との間に金属屑等の異物が挟まってしまったとしても、放熱部材(21)とグランド(13)との間にコンデンサ(14)が配置されているため、第2基板(30)と放熱部材(21)とがショートして半導体装置(22)が破壊されたたり誤作動してしまうことを抑制することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明のように、コンデンサ(14)を半導体装置(22)に形成することができる。これによれば、コンデンサ(14)を電子部品(20)と別々に第1基板(10)に実装する場合と比較して、第1基板(10)の実装面積を有効に利用することができる。
【0012】
そして、請求項4に記載の発明のように、コンデンサ(14)を電子部品(20)とは別に第1基板(10)上に配置することができる。これによれば、半導体装置(22)にコンデンサ(14)を形成する場合と比較して、電子部品(20)の製造具合に応じた静電容量を有するコンデンサ(14)を適宜選択することができ、電子部品(20)とコンデンサ(14)との適応性を向上させることができる。
【0013】
さらに、請求項5に記載の発明のように、放熱部材(21)を、半導体装置(22)を搭載する平板状の第1放熱板(21a)と、第1放熱板(21a)と対向して配置される平板状の第2放熱板(21b)と、第1、第2放熱板(21a、21b)との間に配置される熱伝導材(21c)と、を有すると共に第1、第2放熱板(21a、21b)のうちの一方をグランド(13)と電気的に接続したものとし、第1、第2放熱板(21a、21b)および熱伝導材(21c)によりコンデンサ(14)を構成するものとすることができる。
【0014】
これによれば、放熱部材(21)によりコンデンサ(14)を構成しているため、コンデンサ(14)を電子部品(20)と別々に第1基板(10)に実装する場合と比較して、第1基板(10)の実装面積を有効に利用することができる。
【0015】
また、請求項6に記載の発明のように、放熱部材(21)を、第2放熱板(21b)のうち第2基板(30)と対向する一面が露出した状態で、第1放熱板(21a)、熱伝導材(21c)および第2放熱板(21b)のうち第1基板(10)と対向する一面および側面をモールド樹脂(24)により封止したものとすることができる。
【0016】
そして、請求項7に記載の発明のように、第1基板(10)にADコンバータ(40)を備えると共にグランド(13)として第1、第2グランド(13a、13b)を備え、放熱部材(21)を第1基板(10)の第1グランド(13a)と電気的に接続し、ADコンバータ(40)を第1基板(10)の第2グランド(13b)と電気的に接続し、第1、第2グランド(13a、13b)を、例えば、ワイヤハーネス等のようにインダクタンス成分を有する接続部材(70)を介して電気的に接続することができる。
【0017】
これによれば、放熱部材(21)から第1グランド(13a)に電磁ノイズが流れて第1グランド(13a)の電位が変動したとしても、この電位の変動は接続部材(70)のインダクタンス成分により減衰されるため、第2グランド(13a)の電位が変動することが抑制される。したがって、ADコンバータ(40)の精度が低下することを抑制することができる。
【0018】
また、請求項8に記載の発明のように、放熱部材(21)を静電容量の異なる複数のコンデンサ(14)と並列接続することができる。これによれば、静電容量の異なるコンデンサ(14)を並列に配置しているため、グランド(13)に流すことのできる電磁ノイズの周波数領域を拡大することができる。
【0019】
そして、請求項9に記載の発明のように、コンデンサ(14)に直列接続となる抵抗を備えることができる。これによれば、抵抗により電磁ノイズの一部が熱に変換されるため、抵抗を配置しない場合と比較して、グランド(13)の面積を小さくすることができ、第1基板(10)の実装面積を有効に利用することができる。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態における電子制御装置の断面構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態における電子制御装置の断面構成を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態における電子制御装置の断面構成を示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態における電子制御装置の断面構成を示す図である。
【図5】本発明の第5実施形態における電子制御装置の概略ブロック図である。
【図6】電子部品およびADコンバータを共通のグランドに接続してなる電子制御装置の概略ブロック図である。
【図7】他の実施形態における電子制御装置の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態の電子制御装置の断面構成を示す図である。なお、本実施形態の電子制御装置は、車両に搭載されて使用されると好適である。
【0023】
図1に示されるように、電子制御装置100は、本発明の第1基板に相当する多層プリント基板10と、当該多層プリント基板10に実装される電子部品20と、当該電子部品20を挟んで多層プリント基板10と反対側に配置される本発明の第2基板に相当する金属基板30とを有する構成とされている。
【0024】
多層プリント基板10は、例えば、電子部品20を搭載する一面10aと、この一面10aと反対側の他面10bと、内部とに銅箔等で構成される配線パターン11が形成され、図1とは別断面において、各配線パターン11がビア等により電気的に接続されているものが用いられる。また、電子部品20を搭載する一面10aには、配線パターン11と電気的に接続される複数のランド12とグランド13とが形成されている。
【0025】
電子部品20は、放熱部材21と、放熱部材21の一面側に搭載される半導体装置22と、半導体装置22の外側に配置される接続端子23a、23bと、を有し、モールド樹脂24により封止されて構成されている。電子部品20の具体的な構成について以下に説明する。
【0026】
放熱部材21は、例えば、アルミニウム等の熱伝導率の高い材料を用いて構成され、矩形板状とされている。そして、一面側に図示しない熱伝導材を介して半導体装置22が搭載されている。
【0027】
半導体装置22は、例えば、パワーMOSFETやIGBT等のパワー半導体素子が形成されたものであり、内部にグランド22aを有するものである。そして、放熱部材21側と反対側の表面にはパッド25a、25bが形成されている。
【0028】
パッド25aは放熱部材21とアルミニウムや金等で構成されるボンディングワイヤ26を介して電気的に接続されている。パッド25bは、図1中では1つしか記載していないが実際には複数形成されており、それぞれ半導体装置22における各種素子と内部配線22b等を介して電気的に接続されている。なお、放熱部材21と電気的に接続されるパッド25aは、半導体装置22における各種素子とは電気的に接続されていない。
【0029】
接続端子23a、23bは、銅等で構成されている。そして、接続端子23aはボンディングワイヤ27を介してパッド25aと電気的に接続されており、接続端子23bはボンディングワイヤ27を介してパッド25bと電気的に接続されている。すなわち、放熱部材21は、パッド25aを介して接続端子23aと電気的に接続されている。なお、図1中では、接続端子23aは1つしか記載していないが、実際にはパッド25bに対応する本数だけ備えられている。
【0030】
また、これら放熱部材21、半導体装置22、接続端子23a、23bにおける半導体装置22との接続部位は、エポキシ樹脂等で構成されるモールド樹脂24により、放熱部材21における半導体装置22を搭載する一面と反対側の他面が露出する状態で包み込まれて封止されている。本実施形態の電子部品20は、以上説明したようにして構成されている。
【0031】
そして、上記構成の電子部品20は、半導体装置22側が多層プリント基板10と対向する状態で、接続端子23a、23bがそれぞれ多層プリント基板10に形成されているランド12とはんだ等を介して接続されることにより、多層プリント基板10に搭載されている。また、放熱部材21と電気的に接続されている接続端子23aが実装されるランド12は、グランド13とコンデンサ14を介して接続されている。すなわち、放熱部材21は、パッド25a、接続端子23a、ランド12、コンデンサ14を介して、多層プリント基板10のグランド13と電気的に接続されており、電位がグランドに固定(維持)されるようになっている。
【0032】
金属基板30は、例えば、アルミニウム等の多層プリント基板10より熱伝導率の高い材料を用いて構成されており、電子部品20を挟んで多層プリント基板10と反対側に配置されている。そして、シリコン等の絶縁性を有する熱伝導材31を介して放熱部材21のうちモールド樹脂24から露出している他面と熱的、機械的に接続されている。
【0033】
また、特に図示しないが、本実施形態の電子制御装置100は、例えば、車両に搭載されて用いられる場合には、樹脂等で構成された中空部を有する箱形状のケースが金属基板30の外縁部にネジ止めすること等により接続され、多層プリント基板10および電子部品20がケースの中空部内に収容された状態で用いられる。すなわち、金属基板30は、半導体装置22から発生した熱を放熱する機能と共に、ケースの中空部を閉塞する蓋としても使用される。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の電子制御装置100では、放熱部材21は、多層プリント基板10のグランド13と電気的に接続されているため電位が安定する。このため、放熱部材21がアンテナとして機能してしまうことを抑制することができる。したがって、半導体装置22にて発生する電磁ノイズを放射することを抑制することができ、近接する他の電子制御装置(半導体装置)の誤作動を招くことを抑制することができる。また、外部からの電磁ノイズの影響を受け難くすることができ、半導体装置22が誤作動することを抑制することができる。
【0035】
さらに、放熱部材21がコンデンサ14を介してグランド13と接続されている。このため、金属基板30と放熱部材21との間に金属屑等の異物が挟まってしまった場合等、金属基板30と放熱部材21とがショートして半導体装置22が破壊されたり誤作動してしまうことを抑制することができる。
【0036】
すなわち、放熱部材21がコンデンサ14を介してグランド13と接続されていない場合には、金属基板30と放熱部材21とがショートした場合、直流電流が放熱部材21、ボンディングワイヤ26、パッド25a、ボンディングワイヤ27、ランド12、グランド13の順に流れる。この場合、放熱部材21と電気的に接続されているパッド25aは、半導体装置22の各種素子と電気的に接続されていないものの、上記経路で直流電流が流れることで半導体装置22のグランド22aの電位が変動してしまい、半導体装置22が誤作動してしまう可能性がある。
【0037】
しかしながら、本実施形態では、放熱部材21がコンデンサ14を介してグランド13と電気的に接続されており、金属基板30と放熱部材21との間に異物が挟まってしまった場合でも、放熱部材21とグランド13との間に直流電流が流れることはない。したがって、半導体装置22のグランド22aの電位が変動することを抑制することができ、半導体装置22が誤作動してしまうことを抑制することができる。なお、放熱部材21に電磁ノイズが導入(蓄積)された場合には、電磁ノイズは交流成分であるためコンデンサ14を介してグランド13に流れる。
【0038】
また、放熱部材21の電位を安定させるために、放熱部材21を半導体装置22のグランド22aにコンデンサを介して電気的に接続することも考えられる。しかしながら、放熱部材21を半導体装置22のグランド22aと電気的に接続した場合には、電磁ノイズがグランド22aに流れた際にグランド22aの電位が変動して半導体装置22が誤作動してしまう可能性がある。
【0039】
これに対し、本実施形態の電子制御装置100では、放熱部材21が多層プリント基板10のグランド13と電気的に接続されている。このため、放熱部材21が半導体装置22のグランド22aと電気的に接続されている場合と比較して、電磁ノイズがグランド13に流れた際に半導体装置22におけるグランド22aの電位が変動することを抑制することができ、半導体装置22が誤作動することを抑制することができる。
【0040】
さらに、電子部品20とは別にコンデンサ14を多層プリント基板10に搭載するため、電子部品20の製造具合に応じた静電容量を有するコンデンサ14を適宜選択することができ、電子部品20とコンデンサ14との適応性を向上させることができる。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の電子制御装置100は、第1実施形態に対して、コンデンサ14を備える場所を変更したものであり、その他に関しては上記第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図2は、本実施形態における電子制御装置100の断面構成を示す図である。
【0042】
図2に示されるように、本実施形態の電子制御装置100では、半導体装置22にコンデンサ14が形成されている。特に限定されるものではないが、例えば、半導体装置22に形成されるコンデンサ14としては、半導体基板の一面に酸化膜を形成すると共にこの酸化膜上に導電膜を形成してなるものを採用することができる。このコンデンサ14では、半導体基板の表層部が一方の電極となると共に導電膜が他方の電極となり、酸化膜が誘電体となる。また、コンデンサ14としては、例えば、半導体装置22の寄生容量を利用するものであってもよい。
【0043】
そして、パッド25aは放熱部材21とボンディングワイヤ26を介して接続されていると共に半導体装置22に形成されているコンデンサ14および内部配線22bを介してパッド25cと電気的に接続されている。そして、パッド25cが接続端子23aとボンディングワイヤ27を介して接続されている。
【0044】
なお、パッド25cは、パッド25aと同様に、半導体装置22に形成されている各種素子とは電気的に接続されていない。また、本実施形態では、ランド12のうち放熱部材21と電気的に接続されるもの、つまり、接続端子23aが実装されるランド12は、グランドとされている。
【0045】
このような電子制御装置100では、コンデンサ14が半導体装置22に形成されているため、上記第1実施形態のように多層プリント基板10上にコンデンサ14を配置する場合と比較して、多層プリント基板10の実装面積を有効に利用することができる。
【0046】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の電子制御装置100は、第1実施形態に対して、放熱部材21の構成を変更したものであり、その他に関しては上記第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図3は、本実施形態における電子制御装置100の断面構成を示す図である。
【0047】
図3に示されるように、本実施形態の電子制御装置100では、放熱部材21は、半導体装置22を搭載する平板状の第1放熱板21aと、第1放熱板21aと対向して配置される平板状の第2放熱板21bと、これら第1、第2放熱板21a、21bの間に配置される熱伝導材21cと、を有する構成とされている。そして、第1放熱板21aは、パッド25aにボンディングワイヤ26を介して電気的に接続されている。
【0048】
すなわち、本実施形態の放熱部材21は、半導体装置22から発生する熱を金属基板30に伝達すると共に、第1放熱板21aを一方の電極とすると共に第2放熱板21bを他方の電極とし、熱伝導材21cを誘電体とするコンデンサ14としての機能を果すものである。なお、熱伝導材21cとしては、例えば、シリコン等が用いられる。
【0049】
このような電子制御装置100では、放熱部材21にコンデンサ14としての機能を持たせているため、上記第1実施形態のように多層プリント基板10上にコンデンサ14を配置する場合と比較して、多層プリント基板10の実装面積を有効に利用することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、第1放熱板21aが多層プリント基板10のグランド13と電気的に接続されている例について説明したが、例えば、第2放熱板21bがグランド13と電気的に接続されていてもよい。すなわち、第1、第2放熱板21a、21bは、コンデンサ14を構成する電極であるため、いずれか一方の放熱板がグランド13と電気的に接続されていればよい。
【0051】
そして、第1、第2放熱板21a、21bのうちグランド13と電気的に接続される一方の放熱板は、使用環境に応じて適宜選択されるのが好ましい。例えば、外部(金属基板30)から放熱部材21に電磁ノイズが導入(蓄積)されることが多い使用環境では第1放熱板21aをグランド13と電気的に接続することが好ましく、半導体装置22側から放熱部材21に電磁ノイズが導入(蓄積)されることが多い使用環境では第2放熱板21bをグランド13と電気的に接続することが好ましい。放熱部材21に導入された電磁ノイズをグランド13に効率良く流すことができるためである。
【0052】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の電子制御装置100は、第3実施形態に対して、モールド樹脂24の封止構造を変更したものであり、その他に関しては上記第3実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図4は、本実施形態における電子制御装置100の断面構成を示す図である。
【0053】
図4に示されるように、本実施形態の電子制御装置100では、第2放熱板21bは、第1放熱板21aと対向する一面と反対側の他面のみならず、側面もモールド樹脂24から露出している。このような電子制御装置100では、上記第3実施形態と比較して、モールド樹脂24から露出する第2放熱板21bの表面積が増加するため、放熱性を高くすることができる。
【0054】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態の電子制御装置100は、第1実施形態に対して、多層プリント基板10にADコンバータを搭載したものであり、その他に関しては上記第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図5は、本実施形態における電子制御装置100の概略ブロック図である。なお、本実施形態における電子制御装置100は、車両に搭載されて使用されるものである。
【0055】
図5に示されるように、本実施形態の電子制御装置100は、多層プリント基板10に、電子部品20およびADコンバータ40が搭載されており、多層プリント基板10は電子制御装置100の外部に配置されたセンサ50やバッテリ60等と電気的に接続されている。
【0056】
ADコンバータ40は、多層プリント基板10を介してセンサ50やバッテリ等と電気的に接続され、センサ50から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。また、ADコンバータ40は、多層プリント基板10に形成され、放熱部材21(電子部品20)が電気的に接続される第1グランド13aと異なる第2グランド13bと電気的に接続されている。なお、センサ50は、特に限定されるものではないが、例えば、吸気温度やラジエータ等の温度を検出する温度センサである。
【0057】
そして、放熱部材21が電気的に接続される第1グランド13aと、ADコンバータ40が電気的に接続される第2グランド13bとは、本発明のインダクタンス成分を有する接続部材に相当するワイヤハーネス70を介して電気的に接続されている。
【0058】
このような電子制御装置100では、ADコンバータ40および放熱部材21が共通のグランドに接続されている場合と比較して、ADコンバータ40の精度が悪化することを抑制することができる。図6は、電子部品20およびADコンバータ40を共通のグランドに接続してなる電子制御装置の概略ブロック図である。なお、図5および図6中の矢印は、電磁ノイズの流れを模式的に示したものである。
【0059】
図6に示されるように、放熱部材21およびADコンバータ40を共通のグランド13に接続した場合には、放熱部材21からコンデンサ14を介してグランド13に電磁ノイズが流れこむ。この場合、電磁ノイズによりグランド13の電位が変動してしまうため、ADコンバータ40の精度が悪化することになる。
【0060】
これに対し、図5に示されるように、本実施形態では、放熱部材21を第1グランド13aと電気的に接続すると共にADコンバータ40を第2グランド13bと電気的に接続し、これら第1、第2グランド13a、13bをワイヤハーネス70で接続している。このため、放熱部材21から第1グランド13aに電磁ノイズが流れて第1グランド13aの電位が変動したとしても、この電位の変動はワイヤハーネス70のインダクタンス成分により減衰されるため、第2グランド13aの電位が変動することが抑制される。したがって、ADコンバータ40の精度が低下することを抑制することができる。
【0061】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、ランド12とグランド13との間にコンデンサ14を一つ配置した例について説明したが、ランド12とグランド13との間に静電容量の異なる複数のコンデンサ14を並列に配置してもよい。このような電子制御装置100では、静電容量の異なる複数のコンデンサ14を並列に配置しているため、グランド13に流すことのできる電磁ノイズの周波数領域を拡大することができる。
【0062】
同様に、上記第2〜第4実施形態においても、静電容量の異なる複数のコンデンサ14を並列に配置することができる。例えば、上記第3実施形態において、静電容量の異なる複数のコンデンサ14を並列に配置する場合には、図7に示す電子制御装置100とすることができる。図7は、他の実施形態における電子制御装置100の断面構成を示す図である。
【0063】
図7に示されるように、放熱部材21は平板状の第1〜第4放熱板21a、21b、21d、21eと、熱伝導材21c、21fを有して構成されている。そして、第1、第3放熱板21a、21d上に電子部品20が搭載され、第1放熱板21aと対向する状態で第2放熱板21bが配置されていると共に第3放熱板21dと対向する状態で第4放熱板21eが配置されている。また、第1、第2放熱板21a、21bの間には熱伝導材21cが配置され、第3、第4放熱板21d、21eの間には熱伝導材21fが配置されている。すなわち、第1、第2放熱板21a、21bおよび熱伝導材21cにより第1コンデンサ14aが構成されており、第3、第4放熱板21d、21eおよび熱伝導材21fにより第2コンデンサ14bが構成されている。そして、図7では、第1放熱板21aと第2放熱板21bとの対向面積が第3放熱板21dと第4放熱板21eとの対向面積より大きくされており、これにより第1コンデンサ14aの静電容量が第2コンデンサ14bの静電容量より大きくされている。
【0064】
また、第1放熱板21aがパッド25aを介して多層プリント基板10のグランド13と電気的に接続されていると共に、図7とは別断面において、第3放熱板21dがパッド25aを介して多層プリント基板10のグランド13と電気的に接続されている。以上説明したように、放熱部材21にコンデンサ14としての機能を持たせる場合においても、コンデンサ14を並列に配置してなる電子制御装置100とすることができる。
【0065】
なお、図7では、第1放熱板21aと第2放熱板21bとの対向面積を第3放熱板21dと第4放熱板21eとの対向面積より大きくすることにより、第1、第2コンデンサ14a、14bの静電容量を異ならせたものを説明したが、熱伝導材21c、21fを異なるものとすることにより、第1、第2コンデンサ14a、14bの静電容量を異ならせることもできる。そして、上記第4実施形態においても、例えば、放熱部材21を第1〜第4放熱板21a、21b、21d、21eと熱伝導材21c、21fを有する構成とすることにより、コンデンサ14が並列に配置されてなる電子制御装置100とすることができる。
【0066】
さらに、上記各実施形態において、コンデンサ14と直列接続される抵抗を配置し、コンデンサ14および抵抗を介して放熱部材21とグランド13とが電気的に接続されるようにしてもよい。このような電子制御装置100では、抵抗により電磁ノイズの一部が熱に変換されるため、抵抗を配置しない場合と比較して、グランド13の面積を小さくすることができ、多層プリント基板10の実装面積を有効に利用することができる。
【0067】
また、上記各実施形態では、放熱部材21と多層プリント基板10のグランド13とをコンデンサ14を介して電気的に接続した電子制御装置100について説明したが、例えば、コンデンサ14を有しない電子制御装置100とすることもできる。このような電子制御装置100としても、放熱部材21がグランド13と電気的に接続されているため、放熱部材21がアンテナとして機能してしまうことを抑制することができ、半導体装置22が誤作動することを抑制することができる。
【0068】
そして、上記各実施形態では、放熱部材21をパッド25aにボンディングワイヤ26を介して電気的に接続し、パッド25aを接続端子23aにボンディングワイヤ27を介して電気的に接続する例について説明したが、例えば、放熱部材21と接続端子23aとを直接ボンディングワイヤ26を介して電気的に接続することもできる。すなわち、パッド25aおよびこのパッド25aと接続端子23aとを電気的に接続するボンディングワイヤ27がない構成とすることもできる。
【0069】
また、上記各実施形態では、第1基板として多層プリント基板10を例に挙げて説明したが、例えば、第1基板として次のものを用いることもできる。すなわち、第1基板として、一面10aのみに配線パターン11等が形成されたプリント基板を用いることもできる。
【符号の説明】
【0070】
10 多層プリント基板
11 配線パターン
12 ランド
13 グランド
20 電子部品
21 放熱部材
22 半導体装置
23 接続端子
30 金属基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路が形成された第1基板(10)と、
放熱部材(21)と、前記放熱部材(21)に搭載される半導体装置(22)と、前記放熱部材(21)のうち前記半導体装置(22)側と反対側を露出させた状態で、前記放熱部材(21)および前記半導体装置(22)を封止するモールド樹脂(24)と、を有し、前記半導体装置(22)側が前記第1基板(10)と対向する状態で前記第1基板(10)に搭載される電子部品(20)と、
前記第1基板(10)より熱伝導率が高く、前記電子部品(20)を挟んで前記第1基板(10)と反対側に配置され、前記放熱部材(21)と熱的に接続される第2基板(30)と、を備え、
前記放熱部材(21)は、前記第1基板(10)のグランド(13)と電気的に接続されていることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記放熱部材(21)は、前記第1基板(10)のグランド(13)とコンデンサ(14)を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記コンデンサ(14)は、前記半導体装置(22)に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記コンデンサ(14)は、前記電子部品(20)とは別に前記第1基板(10)上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記放熱部材(21)は、前記半導体装置(22)を搭載する平板状の第1放熱板(21a)と、前記第1放熱板(21a)と対向して配置される平板状の第2放熱板(21b)と、前記第1、第2放熱板(21a、21b)との間に配置される熱伝導材(21c)と、を有すると共に、前記第1、第2放熱板(21a、21b)のうちの一方が前記グランド(13)と電気的に接続されており、前記第1、第2放熱板(21a、21b)および前記熱伝導材(21c)により前記コンデンサ(14)を構成していることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記放熱部材(21)は、前記第2放熱板(21b)のうち前記第2基板(30)と対向する一面が露出した状態で、前記第1放熱板(21a)、前記熱伝導材(21c)および前記第2放熱板(21b)のうち前記第1基板(10)と対向する一面および側面が前記モールド樹脂(24)により封止されていることを特徴とする請求項5に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記第1基板(10)には、ADコンバータ(40)が備えられると共に、前記グランド(13)として第1、第2グランド(13a、13b)が備えられており、
前記放熱部材(21)は前記第1基板(10)の第1グランド(13a)と電気的に接続され、前記ADコンバータ(40)は前記第1基板(10)の第2グランド(13b)と電気的に接続されており、
前記第1、第2グランド(13a、13b)は、インダクタンス成分を有する接続部材(70)を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1つに記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記放熱部材(21)は、静電容量の異なる複数の前記コンデンサ(14)と並列接続されていることを特徴とする請求項2ないし7のいずれか1つに記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記コンデンサ(14)には、抵抗が直列接続されていることを特徴とする請求項2ないし8のいずれか1つに記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−146778(P2012−146778A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3163(P2011−3163)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】