説明

電子制御装置

【課題】放熱対象である電子部品を良好に放熱できると共に、基板アートワークの制約を軽減できるようにする。
【解決手段】電気絶縁材製の仕切り部材21を、基板13の前記コネクタピン接続用スルーホール18部分における下面13bと筐体2の内面との間に位置させ、この仕切り部材21には、基板13の下面13b側に突出する各コネクタピン16を個別に収容し且つ各コネクタピン16間を仕切る仕切り筒部21aを設け、この仕切り部材21の各仕切り筒部21a内に、放熱材22を当該コネクタピン16と筐体2とに接触するように放熱材22を充填している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品の放熱を図った電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子制御装置における発熱体の熱を放熱する技術としては、夫々特許文献1に記載されている技術(a)や、技術(b)がある。技術(a)は、発熱体(例えばCPU)が実装された基板の裏面と筐体との間に半流動性の放熱材を塗布する技術であり、又、技術(b)は発熱体の表面に直接放熱材を塗布し筐体と接触させることで、発熱体の熱を筐体へ放熱する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−55459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記技術(a)では、放熱性を考慮し基板における発熱体の実装面積よりは広い範囲で放熱材を塗布するため、この放熱材塗布範囲には、他の部品の実装やパターン配線(外層パターン)ができず、この結果、実装密度が低下し、基板の小型化ひいては電子制御装置全体の小型化ができない。
【0005】
一方、技術(b)では、発熱体に直接放熱材を塗布して筐体と接触させるため、上述の問題は改善できるが、これら技術(a)、(b)とも、半流動性の放熱材がずれやすく、これを防止するには、放熱材塗布部における筐体に多数の凹凸を形成して半流動性の放熱材が発熱体からずれないようにするための構造が必要であり、コストがかかる。しかも、特定の電子制御装置の筐体を他の電子制御装置の筐体に共通使用する場合、特定の電子制御装置の発熱体(電子部品)の位置によって筐体の放熱材塗布箇所(接着箇所)が決められてしまうため、他の電子制御装置での基板設計時における基板アートワークが制約を受け、素子配置の自由度が低くなる問題がある。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、放熱対象である電子部品を良好に放熱できると共に、基板アートワークの制約を軽減でき、しかも筐体に放熱材位置ずれ防止のための多数の凹凸構造を不要にできてコストの低廉化に寄与できる電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は次の点に着目してなされている。すなわち、電子制御装置では、外部からの電源あるいは外部信号、又は外部データを送受するためにコネクタを基板の一面側に備えている。このコネクタのコネクタピンは、この基板のスルーホールを一面から他面にかけて貫通して接続される。このコネクタピン部分はもともと基板における電子部品の実装領域とはならない。このコネクタピン部分で電子部品の放熱を図るようにすれば、基板アートワークに制約を受けないと考えられる。
【0008】
この点を考慮した請求項1の電子制御装置においては、放熱対象である電子部品を導体パターン、コネクタピン接続用スルーホール、コネクタピン、放熱材及び筐体の経路で放熱できる。この場合、基板における放熱部位は、コネクタピン接続用スルーホール対応部分となり、このコネクタピン接続用スルーホール対応部分は、もともと電子部品の実装領域ではないから、電子部品の配置に制約を受けず、この結果、基板アートワークの制約を軽減でき、しかも電子部品と筐体との間に放熱材を塗布せず仕切り部材に放熱材を充填するから、筐体には放熱材位置ずれ防止のための多数の凹凸構造を形成せずに済み、コストの低廉化に寄与できる。さらに、電気絶縁材製の仕切り部材で各コネクタピンごとに放熱材自体も仕切るからノイズ発生も抑制できる。
【0009】
又、請求項2の電子制御装置においては、放熱に使用しない仕切り筒部には放熱材充填阻止のための蓋部材を設けたところに特徴を有する。これによれば、放熱に使用しない仕切り筒部部分には放熱材の充填を防止できて、放熱材を必要最小限とすることができる。
請求項3の電子制御装置においては、前記仕切り部材の各仕切り筒部における前記筐体内面側の端部が当該筐体内面で閉塞された形態であるところに特徴を有する。これによれば、放熱材の筐体への漏れを防止できる。
【0010】
請求項4の電子制御装置においては、各仕切り筒部における前記基板の前記他面側の端部に前記コネクタピンと略隙間無く嵌合する嵌合部を有するところに特徴を有する。これによれば、放熱材の基板他面への漏れを防止できてコネクタピン間における当該放熱材による浮遊容量の発生を防止でき、ノイズ発生を抑制できる。さらに前記嵌合によりコネクタピンと仕切り部材とを結合保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態の電子制御装置における仕切り部材部分の縦断側面図
【図2】電子制御装置の斜視図
【図3】電子制御装置の分解斜視図
【図4】電子制御装置の縦断側面図
【図5】図4のV−V矢視による断面図
【図6】基板及びコネクタ並びに仕切り部材の斜視図
【図7】仕切り部材の部分的平面図
【図8】仕切り部材の部分的斜視図
【図9】分離状態における仕切り部材の嵌合部とコネクタピンの縦断側面図
【図10】第2実施形態を示す図5相当図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図9を参照して説明する。まず、図2ないし図4において、電子制御装置1は、筐体2を備えており、この筐体2はいずれも金属製の下ケース2Aと上ケース2Bとを有して構成されている。下ケース2Aは、上部が開放する浅底容器状をなし、底板部3に仕切り部材用凹部3aを有すると共に、側板部4、4に受け段部4a、4aを有し、さらに上端部にはフランジ5を有する。さらにこのフランジ5の左右辺部の前部には突片部5a、5aが形成されている。
前記受け段部4a、4aにおいて前記仕切り部材用凹部3aの左右に対応する部位にはねじ孔6、6が形成されており、又、前記突片部5a、5a及びフランジ5の後側の左右2か所には、ねじ孔7がそれぞれ形成されている。
【0013】
一方、前記上ケース2Bは、コネクタカバー部8と基板カバー部9とを有すると共に、これらコネクタカバー部8と基板カバー部9の前縁部を除く左右縁部及び後縁部にフランジ10を有する。このフランジ部10の左右辺部の前部には突片部10a、10aが形成されている。このフランジ部10及び突片部10a、10aには、前記ねじ孔6、7に対応する部位にねじ挿通孔11、12が形成されている。
【0014】
そして、ねじ2n(図2参照)を各ねじ挿通孔12を通してねじ孔7に螺合することにより、下ケース2Aと上ケース2Bとを接合して筐体2を構成する。
前記筐体2内には、基板13が収容されており、この基板13の一面である上面13aには、複数の電子部品14A、14Bが実装されている。この場合、複数の電子部品のうち、放熱対象となる二つの電子部品14A、14Bを示しているが、二つ以上である場合もある。
【0015】
又、前記基板13の上面の前部にはコネクタ15が装着されている。このコネクタ15はコネクタケース15aに多数のコネクタピン16を備えている。このコネクタピン16は、コネクタケース15aを前後に仕切る板部15bを水平(基板13と平行)に貫通している。このコネクタピン16において前記板部15bから前側の部分を外部接続部16aとし、後側の部分を基板接続部16bとしている。この基板接続部16bは、先端部がほぼ直角に基板13方向に折曲されており、この立ち下がり部16bsはタインプレート17を貫通し、さらに基板13に形成されたコネクタピン接続用スルーホール18を貫通して基板13の他面である下面13b側へ突出している。さらにこの立ち下がり部16bsは、前記コネクタピン接続用スルーホール18と例えばフロー半田により半田付けされて電気的に接続している。
【0016】
前記タインプレート17は前記基板接続部16bの立ち下がり部16bsに嵌合する孔部を有し、各孔部がこの立ち下がり部16bsに先端から嵌合されることで、各コネクタピン16の相互間隔が適正に保持されている。なお、このタインプレート17は前記コネクタ15に固定されている。
【0017】
又、前記電子部品14A、14Bは、基板13の上面13aに形成された導体パターン19、20により前記多数のコネクタピン16のうちそれぞれ接続対象のコネクタピン16が接続されるコネクタピン接続用スルーホール18と電気的に接続されている。
この導体パターン19、20は図面の煩雑さを招来しないように2本のみを図示したが、実際には、多数の導体パターンが各電子部品14A、14Bの各端子から延びて各コネクタピン接続用スルーホール18に電気的に接続されている。
【0018】
さらに、前記基板13の前記コネクタピン接続用スルーホール18部分における上面13aの下方には、電気絶縁材製の仕切り部材21が設けられている。この仕切り部材21は、図7ないし図9に示すように、前記基板13の前記下面13b側に突出する各コネクタピン16(立ち下がり部16bsの下部16bs´)を個別に収容し且つ各コネクタピン16間を仕切る矩形筒状をなす仕切り筒部21aを有し、さらに、この各仕切り筒部21aにおける前記基板13の前記下面13b側の端部(上端部)に前記コネクタピン16と略隙間無く嵌合する嵌合部21bを有する。
【0019】
この嵌合部21bは、下方へ向かうに従って順次幅狭となるテーパー状をなし、その下端部に筒状のピン嵌合孔21cを有している。このピン嵌合孔21cの内幅寸法は、コネクタピン16の幅寸法より若干小さめに形成されている。さらに、この仕切り部材21の左右部にはフランジ21d、21dが形成されており、このフランジ21d、21dにはねじ挿通孔21e、21eが形成されている。
【0020】
前記嵌合部21bの前記ピン嵌合孔21cを前記各コネクタピン16の下部16bs´に嵌合させることにより、前記コネクタピン16が嵌合部21bに隙間無く嵌合し且つ仕切り部材21とコネクタピン16とが固定されている。これにより基板13、コネクタピン16及び仕切り部材21が一体化されている(図6参照)。この場合、仕切り部材21は嵌合部21bにより各仕切り筒部21a上部が閉塞されている。
【0021】
又、仕切り部材21の仕切り筒部21aのうち、後述する放熱材22の充填を必要としない仕切り筒部21aの下端開口部には放熱材22充填阻止のための蓋部材23が、この開口部を閉塞する形態で装着されている。
【0022】
そして、上記蓋部材23の無い仕切り筒部21aには半流動性で電気絶縁材製例えば熱伝導グリースや熱伝導シリコーンなどからなる放熱材22が充填されている。この場合、基板13、コネクタピン16及び仕切り部材21の一体物を筐体2に組み込む前の状態で、上下逆の状態とし(仕切り部材21の開口部が上向き)、この状態で仕切り部材21の各仕切り筒部21aにその開口端から半流動性で且つ電気絶縁性の放熱材22を充填する。
【0023】
このとき、作業性を考慮して、放熱材22を仕切り部材21の全仕切り筒部21aにべた塗りして押し込んでゆく作業形態をとるが、放熱に使用しない仕切り筒部21aには蓋部材23が存在する仕切り筒部21aには放熱材22は充填されない。又、仕切り筒部21aに充填された放熱材22は、嵌合部21bに隙間が無いから、この嵌合部21bから外部に漏れることはない。又、この放熱材22の充填量は仕切り筒部21a内容積とほぼ同じが好ましいが、若干少なめでも良い。
【0024】
このように放熱材22を充填した仕切り部材21及び基板13並びにコネクタピン16は、仕切り部材21が下となる状態で前記仕切り部材用凹部3a内に位置するように、接合前の下ケース2Aに収められ、その後、この下ケース2Aに前述したように上ケース2Bを接合する。
この場合仕切り部材21のフランジ21d、21dが前記受け段部4a、4aに載置され、そして、ねじ挿通孔21e、21eが下ケース2Aのねじ孔6、6及び上ケース2Bのねじ挿通孔11、11に対向し、ねじ21n(図2参照)をねじ挿通孔11、21eに通してねじ孔6に螺合し、当該仕切り部材21を筐体2に固定する。
【0025】
組み立て完成状態を示す図1及び図4において、前記仕切り部材21は前記基板13の前記コネクタピン接続用スルーホール18部分における前記下面13bと前記筐体2の下ケース2Aの内面(仕切り部材用凹部3a内面)との間に位置し、前記仕切り部材21の各仕切り筒部21aにおける前記筐体2内面側の端部が当該筐体2の下ケース2Aの内面で閉塞された形態である。又、前記放熱材22がコネクタピン16に接触すると共に、筐体2の下ケース2Aにも接触する。
【0026】
上記実施形態において、電子部品14A、14Bが発熱した場合、その熱は、導体パターン19、20、コネクタピン接続用スルーホール18、コネクタピン16、放熱材22及び筐体2の下ケース2Aの経路で効果的に放熱できる。この場合、基板13における放熱部位は、コネクタピン接続用スルーホール18対応部分となり、このコネクタピン接続用スルーホール18対応部分は、電子部品14A、14Bの実装領域ではないから、電子部品14A、14Bの配置に制約を受けず、この結果、基板アートワークの制約を軽減でき、しかも電子部品14A、14Bと筐体2との間に放熱材を塗布せず仕切り部材21に放熱材22を充填するから、筐体2には、放熱材位置ずれ防止のための多数の凹凸構造を形成せずにすみ、コストの低廉化に寄与できる。さらに、電気絶縁材製の仕切り部材21で各コネクタピン16ごとに放熱材22も仕切るからノイズ発生も抑制できる。
【0027】
又、上述のように良好な放熱効果を得ることができるから、導体パターン19、20を細くできる。
又、本実施形態においては、放熱に使用しない仕切り筒部21aには放熱材22充填阻止のための蓋部材23を設けたから、放熱に使用しない仕切り筒部21a部分には放熱材22の充填を防止できて、放熱材22を必要最小限とすることができる。さらに、放熱材22を仕切り筒部21aに充填する場合に、前述したように作業性の良い放熱材22のべた塗りによる充填作業を採用しても、放熱に使用しない仕切り筒部21aには放熱材22を充填せずに、放熱の必要がある仕切り筒部21aのみに放熱材22を容易に充填できる。
【0028】
又、上記実施形態においては、前記仕切り部材21の各仕切り筒部21aにおける前記筐体2内面側の端部が当該筐体2内面で閉塞された形態であるから、放熱材22の筐体2への漏れを防止できる。
さらに、上記実施形態においては、各仕切り筒部21aにおける前記基板13の下面13b側の端部にコネクタピン16と略隙間無く嵌合する嵌合部21bを設けたから、放熱材22の基板13の下面13bへの漏れを防止できてコネクタピン16間における当該放熱材22による浮遊容量の発生を防止でき、ノイズ発生を抑制できる。さらに前記嵌合によりコネクタピン16と仕切り部材21とを結合保持できる。
【0029】
又、上記実施形態においては、仕切り部材21を仕切り部材用凹部3aに配置したから、放熱材22が何らかの原因で僅かに仕切り部材21下部から漏出したとしても、他の部位への拡散を防止できると共に、仕切り部材21の動き止めも図ることができる。
なお、上記実施形態では、仕切り部材21の左右両端のフランジ21dをねじ21nにより筐体2に固定するようにしたが、図10に示すようにしても良い。この図10に示す仕切り部材21´は、フランジが無い構成であり、従って、筐体2には受け段部4aがない。そして、仕切り部材21´はねじ固定せず、基板13と筐体2とで挟み込むようにしている。
又、コネクタは複数で有っても良く、例えば電子部品ごとに設けるようにしても良い。
その他、本発明の実施形態は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適宜変更して適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
図面中、1は電子制御装置、2は筐体、2Aは下ケース、2Bは上ケース、3は底板部、3aは仕切り部材用凹部、13は基板、13aは上面(一面)、13bは下面(他面)、14A、14Bは電子部品、15はコネクタ、16はコネクタピン、18はコネクタピン接続用スルーホール、19、20は導体パターン、21は仕切り部材、21aは仕切り筒部、21bは嵌合部、22は放熱材、23は蓋部材を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
この筐体の内部に設けられ放熱対象となる電子部品が実装された基板と、
この基板の一面から他面に貫通するように形成されたコネクタピン接続用スルーホールと、
前記基板の前記一面側に装着され、コネクタピンが前記コネクタピン接続用スルーホールに前記一面から他面へと貫通して当該コネクタピン接続用スルーホールと電気的に接続されたコネクタと、
前記基板において前記コネクタピン接続用スルーホールと前記電子部品とを接続するように形成された導体パターンと、
前記基板の前記コネクタピン接続用スルーホール部分における前記他面と前記筐体の内面との間に位置し、前記基板の前記他面側に突出する各コネクタピンを個別に収容し且つ各コネクタピン間を仕切る仕切り筒部を有した電気絶縁材製の仕切り部材と、
前記仕切り部材の各仕切り筒部内に、前記コネクタピンと前記筐体とに接触するように充填された放熱材と、
を備えてなる電子制御装置。
【請求項2】
放熱に使用しない仕切り筒部には放熱材充填阻止のための蓋部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記仕切り部材の各仕切り筒部における前記筐体内面側の端部が当該筐体内面で閉塞された形態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記仕切り部材は、各仕切り筒部における前記基板の前記他面側の端部に前記コネクタピンと略隙間無く嵌合する嵌合部を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−191118(P2012−191118A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55417(P2011−55417)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】