説明

電子制御装置

【課題】放熱シートからの押圧力を低減させてプリント基板の変形や半導体スイッチ素子への応力負荷を抑制する。
【解決手段】プリント基板12の下面12bに、半導体スイッチ素子23〜26が実装する一方、上面12aの各半導体スイッチ素子が位置する箇所に放熱シート21を接着し、該放熱シートの上面をカバー部材4で押圧して伝熱させる。前記カバー部材の上壁4aに、下面27aが放熱シートの上面に密着する角錐形状の凸状部位27を形成すると共に、この凸状部位のほぼ中央位置に、放熱シート部材の方向に向かって突出する突出部27bを形成すると共に、該突出部を半導体スイッチ素子24,25の間の隙間Sの位置となるように設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のアンチロックブレーキ装置を制御するための電子制御装置(ECU)に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の例えばアンチロックブレーキ装置や電動パワーステアリング装置などに用いられるECUとしては、例えば、以下の特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この従来のECUは、アルミ合金材からなるケーシングの下部カバー及び上部カバーを有すると共に、該両カバー部の間に収容配置されて、制御回路を構成する電子部品がプリント基板の上面に実装されている。前記電子部品は、電動モータやソレノイドなどのアクチュエータを駆動するための発熱素子である半導体スイッチやパワーICなどがある。
【0004】
そして、前記上部カバー部の逆凸形状に折曲形成された凸部には、前記プリント基板の発熱素子で発生した熱を上部カバー部に伝達する放熱シートが固定されている。この放熱シートは、前記発熱素子の発熱を効率良く吸収するために、プリント基板の発熱素子に対応する前記凸部の下面に設けられている。また、前記上部カバー部を下部カバー部に組み付けた際に、前記凸部の平坦な下面が放熱シートの上面に圧着状態に当接して、放熱シートから上部カバー部への良好な伝熱性を得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−193108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の電子制御装置にあっては、前記放熱シートから上部カバー部への良好な伝熱性を得るために、前記凸部下面で放熱シートの上面を押圧して密着させるようになっているため、上下カバー部材などの各構成部品の寸法のばらつきが大きくなると、放熱シートの潰し代が大きくなって、この大きな反発力により前記プリント基板が部分的に撓み変形して、耐久性が低下するおそれがあると共に、前記発熱素子に対する応力負荷が大きくなって、端子の半田寿命が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、前記従来の電子制御装置の技術的課題に鑑みて案出されたもので、ケーシングから放熱部材に対する押圧力を分散させて、プリント基板や発熱素子への悪影響を抑制し得る電子制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ケーシング内に収容固定された回路基板に、発熱素子が実装されていると共に、前記ケーシングと発熱素子との間に、前記発熱素子の発熱を前記ケーシングに伝達する放熱部材を設けてなる電子制御装置において、前記ケーシング内面の前記放熱部材に密着する密着部位の一部に、前記放熱部材の方向に向かって突出する突出部を形成すると共に、該突出部を、前記回路基板に対する発熱素子の配設箇所を避けた位置に設定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーシングから放熱部材への押圧力を分散させて、回路基板の変形や発熱素子への応力負荷などの悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る電子制御装置の第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】本実施形態の電子制御装置の要部拡大断面図である。
【図3】同電子制御装置の平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態における電子制御装置の平面図である。
【図6】図5のB−B線断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態を示し、Aはカバー部材を液圧制御ブロックに組み付ける前の状態を示す要部断面図、Bはカバー部材を液圧制御ブロックに組み付けた状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子制御装置を自動車のアンチロックブレーキ装置(ABS)に適用した実施形態を図面に基づいて詳述する。
〔第1実施形態〕
まず、前記ABSは、具体的に図示しないが、ブレーキペダルの踏み込み量に応じたブレーキ圧を発生させるマスターシリンダと、該マスターシリンダと前輪左右(FR、FL)側及び後輪左右(RL、RR)側の各ホイールシリンダとを連通させるメイン通路と、該メイン通路に設けられて、マスターシリンダから各ホイールシリンダへのブレーキ液圧を制御する液圧制御機構を構成する電磁開閉弁である後述する常開ソレノイド型の増圧弁及び常閉ソレノイド型の減圧弁と、前記メイン通路に設けられて、各ホイールシリンダにブレーキ液圧を吐出する図2に示すプランジャポンプ30と、前記各ホイールシリンダ内から排出されたブレーキ液を、前記減圧弁を介して貯留すると共に、プランジャポンプ30の作動によりブレーキ液をメイン通路に供給するリザーバタンクと、を備えている。
【0012】
なお、前記プランジャポンプ30に代えて他のポンプ、例えばギアポンプとすることも可能である。
【0013】
前記増圧弁は、通常ブレーキ操作時においてマスターシリンダからのブレーキ液圧を各ホイールシリンダに供給可能に制御する一方、減圧弁は、各ホイールシリンダの内圧が所定以上になって、車輪にスリップが発生した際に開弁して、該ブレーキ液をリザーバタンクに戻すようになっている。
【0014】
かかる増減圧を、電子制御装置によって開閉作動させることによって、各ホイールシリンダ内のブレーキ液圧を増圧、減圧、保持制御するようになっている。
【0015】
また、前記各増圧弁と減圧弁は、前記電子制御装置からの制御信号に基づいて通電、非通電されることによって開閉作動させられるようになっている。
【0016】
前記電子制御装置は、図1及び図2に示すように、ケーシング1と、該ケーシング1に保持された複数の電子制御部品2と、を備えている。
【0017】
前記ケーシング1は、下側の液圧制御ブロック3と、該液圧制御ブロック3の上部に組み付けられた前記電子制御部品2を上方から被嵌するカバー部材4と、を備えている。
【0018】
前記液圧制御ブロック3は、アルミニウム合金材によってほぼ立方体状に一体に形成され、上面側には、前記複数の増圧弁5及び減圧弁6の下部を挿通保持させる複数の保持穴7が上下方向に沿って形成されていると共に、前記各増圧弁5及び減圧弁6の上端部に結合されるコイルユニット8が保持されている。
【0019】
また、液圧制御ブロック3には、前記増圧弁5や減圧弁6に連通する前記メイン通路やサブ通路、さらにメイン通路にブレーキ油圧を供給するプランジャポンプ30及び該プランジャポンプ30を駆動させる電動モータ31などの油圧ユニットが設けられている。さらに、液圧制御ブロック3の上部四隅には、図外の固定ボルトが螺着される雌ねじ孔9が形成されている。
【0020】
前記カバー部材4は、放熱材(ヒートシンク)として機能するアルミニウム合金材によって、液圧制御ブロック3の外形に沿った薄皿状に形成され、平坦状の上壁4aと、該上壁4aの外周縁に一体に形成された環状の側壁4bと、該側壁4bの下端外周部に連続一体に設けられた矩形枠状のフランジ部4cと、から構成されている。該フランジ部4cには、このカバー部材4が後述するプリント基板12を被嵌した状態でバスバー構成体11の上端部外周に係止する係止片10が下方へ突設されている。この各係止片10は、前記フランジ4cの各辺の長手方向ほぼ中央位置に設けられて、先端外側に係止爪10aがそれぞれ形成されている。
【0021】
前記液圧制御ブロック3とカバー部材4との間に配置された前記電子制御部品2は、前述のように、各増圧、減圧弁5、6に開閉作動の切換信号を出力し、また前記電動モータ31のステータに電力を供給するためのパワー電子回路や、ラジオノイズ(電磁ノイズ)を低減させる電磁フィルタ回路などを一体に形成したバスバー構成体11と、該バスバー構成体11上部に配置されて、前記電動モータ31などの駆動を制御するための回路基板であるプリント基板12と、を備えている。
【0022】
前記バスバー構成体11は、合成樹脂材によるモールディングによってブロック板状に形成され、図1に示すように、外形が前記液圧制御ブロック3やカバー部材4の外形状に沿ってほぼ矩形状に形成されている。また、前記バスバー構成体11の上端外周部には、前記カバー部材4の係止片10の係止爪10aが内側の貫通孔にそれぞれ係入して弾性的に係止する4つの係合部13が一体に設けられている。さらに、バスバー構成体11の外周部の隅部には、複数の固定ボルト14が挿通されるボルト挿通孔11aがそれぞれ上下方向に貫通形成されている。
【0023】
一方、バスバー構成体11の下端外周部には、図2に示すように、前記液圧制御ブロック3の上面外周側に弾接してシールする環状シール15が嵌着溝を介して固定されている。
【0024】
前記バスバー構成体11の前端部には、バッテリーと接続される電源コネクタや、前記電動モータ31に電力を供給するモータコネクタ、レゾルバやCAN通信、I/Oなどの各種信号の伝達経路となる信号コネクタとからなるコネクタ構成体16が一体に設けられている。
【0025】
さらに、前記バスバー構成体11の表面や内部には、前記電源コネクタに接続された電源負極側バスバー及び電源正極側バスバーなどの配電パターンや、モータへの出力用バスバーや電源正極側バスバーなどの多くの配電パターンが形成されている。
【0026】
また、前記電源コネクタやモータコネクタ及び信号コネクタに接続された複数の端子群17や、モータリレーや後述する半導体スイッチ素子(FET)を駆動するための制御信号用の端子群18などがバスバー構成体11の上面11bから突出している。
【0027】
また、バスバー構成体11の下面11cには、前記パワー電子回路の電子部品や、フィルタ電子回路の構成部品である複数のアルミ電解コンデンサ及びノーマルコイル、コモンコイル、複数のセラミックコンデンサなどが実装されている。
【0028】
さらに、前記バスバー構成体11の上面11bの所定位置には、前記プリント基板12をビス19によって固定支持する一つの筒状部20が一体に立設されている。この筒状部20は、その形成位置がプリント基板12の上面12aに接着される後述する放熱シート21の近傍に設定されている。
この筒状部20の内周面には、金属製の円筒部20aが一体的に固定されており、この円筒部20aの内周面に前記ビス19が螺着する雌ねじ部が形成されている。
【0029】
前記プリント基板12は、合成樹脂材によってほぼ正方形状の薄板状に形成され、中央寄りの前記バスバー構成体11の筒状部20に対応した所定位置にビス挿通孔22が貫通形成されている。また、このプリント基板12を、前記バスバー構成体11の上方から載置した際に、前記筒状部20の上面に前記ビス挿通孔22の下面側孔縁が当接して、該筒状部20の高さ分だけ上下に離間して配置されるようになっており、この上下の隙間Cによってそれぞれの電子部品が干渉しないようになっている。
【0030】
このプリント基板12は、マイクロコンピュータを含む複数の電子部品が実装されていると共に、内部に制御回路の一部である配電パターンが形成されている。そして、前記電動モータ31の駆動回路であるインバータの駆動を制御するための制御信号がこのプリント基板12で作られるようになっている。
【0031】
前記プリント基板12の下面12bには、図2〜図4に示すように、発熱素子である4つの半導体スイッチ素子(MOS−FET)23、24、25、26が配置固定されている。
【0032】
この各半導体スイッチ素子23〜26は、図3及び図4に示すように、横方向に一列に並んで配置され、上面が前記プリント基板12の下面12bに密着状態に固定されていると共に、図3の横方向中央の隣接する2つ半導体スイッチ素子24と25の間に隙間Sが形成されて、該隙間Sを介して左右一対に分かれている。
【0033】
また、プリント基板12の上面11bの前記各半導体スイッチ素子23〜26に対応した位置には、放熱部材である前記放熱シート21が接着されている。この放熱シート21は、前記4つの半導体スイッチ素子23〜26の列方向に沿ってほぼ長方形状に形成されていると共に、弾力性のある絶縁材によって形成されている。
【0034】
さらに、このプリント基板12の一側部や他側部にそれぞれ形成された複数の端子孔12cには、バスバー構成体11の前記各端子群17,18のピン17a、18aが挿通されつつ半田付けによって接続されている。
【0035】
そして、前記カバー部材4の上壁4aにおける前記プリント基板12上の放熱シート21に対応した位置には、下方へ突出した密着部位である断面凸状の凸状部位27が形成されている。
【0036】
この凸状部位27は、カバー部材4をプリント基板12に被嵌させてバスバー構成体11に組み付け固定した際に、下面27aが放熱シート21の上面全体を僅かに押圧して密着状態にするようになっている。また、この凸状部位27は、四角錐状に形成されて、それぞれ三角形状に形成された下面27aが外周側から中央側に向かって下り傾斜状のテーパ面状に形成されて全体が断面ほぼV字形状に形成されていると共に、その中央位置に突出部27bが形成されている。この突出部27bは、前記放熱シート21のほぼ中央位置を押圧するようになっている。つまり、前記各半導体スイッチ素子23、24と25,26の間の隙間S(好ましくは隙間Sの中央部)を押圧するように設定されている。
【0037】
〔組付手順〕
以下、電子制御装置の組付手順について説明する。まず、予め液圧制御ブロック3に、前記各増圧、減圧弁5、6やプランジャポンプ30、電動モータ31、リザーバなどを組み付けて油圧ユニットを構成する。また、前記パワー電子回路とフィルタ電子回路の配電パターンをモジュール化して前記バスバー構成体11を一体的に形成すると共に、該バスバー構成体11に前記電解コンデンサなどの複数の電子部品を実装しておく。さらに、前記プリント基板12の配電パターンや前記各半導体スイッチ素子23〜26などの各種の電子部品を実装しておく。
【0038】
次に、前記バスバー構成体11の筒状部20の上面に、前記プリント基板12をビス挿通孔22の下面孔縁を当接させて載置するが、このとき、前記各端子孔12cに対応する前各記端子ピン17a、18aを挿通する。
【0039】
その後、前記ビス19を、前記ビス挿通孔22から円筒部20aの雌ねじ部にねじ込んでプリント基板12をバスバー構成体11の上方位置に固定する。その後、前記各端子孔12cに挿通された状態で各端子ピン17a、18aをプリント基板12に半田付ける。これによって、互いに電気的に接続される。
【0040】
次に、図2に示すように、前記カバー部材4の外周に接着剤を塗布した後、プリント基板12とバスバー構成体11の上方から被嵌しつつ各係止片10の各係止爪10aをバスバー構成体11の各係止部13の係止孔に弾性変形を利用して係入すると、各係止爪10aが係止孔の下部孔縁に係止することによって、バスバー構成体11に簡単に組み付けることができる。
【0041】
その後、前記バスバー構成体11を、前記環状シール15を介して液圧制御ブロック3の上面に位置決めしながら仮止め状態に載置し、続いて、前記各固定ボルト14によって液圧制御ブロック3に締め付け固定する。これによって、各構成部品の組み付け作業が完了する。
【0042】
このとき、前記カバー部材4の凸状部位27の突出部27bが、放熱シート21のほぼ中央を押圧すると、図2及び図4に示すように、その放熱シート21に対する圧縮力が矢印方向、つまり突出部27b周囲のテーパ状下面27aによって該突出部27bを中心として外側へ変形する力となり、前記押圧力が外方へ分散された形になる。
【0043】
このため、放熱シート21は、凸状部位27との適度な押圧力による密着性を確保しつつ前記プリント基板12に対する押圧力が十分に低減される。換言すれば、前記押圧力は放熱シート21が逃げる量に支配されることもあり、前記押圧力が、隙間S、すなわち、突出部27bに対応する放熱シート21側で最も大きく(当該突出部27b近傍においては圧縮状態にある放熱シート21の逃げる余地が殆どないので押圧力は高い)、テーパ状の下面27aの半導体スイッチ素子23、26側方向へいくにしたがって押圧力が減少する(凸状部位27の周縁部(外周付近)では、圧縮状態にある放熱シート21が開放されているため、つまり放熱シート21が逃げられるため、比較的押圧力は低い)。これは、凸状部位27がテーパ状下面27aを有しているから、押し潰された放熱シート21がテーパ状下面27aに逃げる(拡散)することによって、押圧分が分散して半導体スイッチ素子23〜26及びプリント基板12の変形が抑制されるのである。つまり、テーパー状下面27aは、押し潰された放熱シート21の逃がし部として機能し、プリント基板12の変形を抑制している。
【0044】
このため、プリント基板12の部分的な変形が抑制されると共に、各半導体スイッチ素子23〜26に対する応力負荷も抑制することができる。この結果、前記プリント基板12と各半導体スイッチ素子23〜26への押圧力による悪影響を抑制できると共に、耐久性の向上が図れる。
【0045】
特に、前記突出部27bは、その押圧力が半導体スイッチ素子23〜26に直接的に作用するのではなく、左右一対の各半導体スイッチ素子223,24と25,26との間の隙間Sに作用することから、各半導体スイッチ素子23〜26への応力負荷をさらに軽減できる。
【0046】
また、前記プリント基板12は、前記放熱シート21の近傍で前記ビス19と筒状部20によって固定支持されていることから、かかる部位付近の強度が高くなって、前記凸状部位27による放熱シート21への押圧力に起因した撓み変形や、半導体スイッチ素子23〜26に対する応力負荷を抑制することが可能になる。とりわけ、前記押圧力は前述の作用によって分散されて全体的に低減化されていることから、撓み変形を十分に抑制できる。
【0047】
本実施形態では、放熱シート21を、半導体スイッチ素子23〜26の実装面とは反対側のプリント基板12に設けている。したがって、前記半導体スイッチ素子23〜26で発生した熱は、ヒートシンク、プリント基板12に設けられた放熱用ビアを介して半導体スイッチ素子23〜26の実装面とは反対側(裏面)のプリント基板12へ伝達される。
【0048】
よって、放熱の観点では、放熱シート21を半導体スイッチ素子23〜26の実装面とは反対側(裏面)のプリント基板12に設けることが有利である。また、実装面に放熱シート21を設けた場合に比較して、半導体スイッチ素子23〜26と放熱シート21との間が平面であるがゆえに隙間が形成されにくいため、空気層が存在せず放熱性に有利になる。
【0049】
さらに、押圧力による半導体スイッチ素子23〜26の変形の観点では、放熱シート21を、半導体スイッチ素子23〜26の半田付け部とは反対側(裏面)のプリント基板12に設けることによって、半田付け部を凸状部位27の押圧力から比較的離すことができるので、半導体スイッチ素子23〜26の電気的な接続の悪影響(例えば断線など)を有効に解決できる。ここで説明した半田付け部とは、半導体スイッチ素子とプリント基板との接続部における半田付け部だけでなく、半導体スイッチ素子がヒートシンクを介在させてプリント基板と電気的に接続される場合の、半導体スイッチ素子とヒートシンクとの接続部における半田付け部も含んでいる。
【0050】
さらに、前記放熱シート21を、前記プランジャポンプ30や電動モータ31の位置に対向して配置しているので、前記プランジャポンプ30の駆動などによって液圧制御ブロック3やカバー部材4で発生した振動を、前記放熱シート21によって吸収することができる。これによって、前記プリント基板12への振動による悪影響も抑制できる。
【0051】
また、本実施形態では、パワー電子回路とフィルタ電子回路の配電パターンなどを一体的にモジュール化して薄型のバスバー構成体11として構成したため、電子制御装置の上下方向の高さを十分に小さくすることが可能になり、装置全体の小型化(薄型化)が図れると共に、軽量化も図れる。
【0052】
前述のように、前記放熱シート21と凸状部位27との適度な圧力による密着性を確保できるので、各半導体スイッチ素子23〜26〜の発熱をカバー部材4に効率良く伝達することができる。
【0053】
また、本実施形態では、前記カバー部材4を、単に各係止片10と各係止部13を利用してバスバー構成体11にワンタッチで結合させることができるので、このカバー部材4の組付作業が良好になる。
【0054】
さらに、前記凸状部位27は、カバー部材4を絞り加工などによって成形する際に、同時に成形できるので、これの成形作業も容易である。
〔第2実施形態〕
図5及び図6は第2実施形態を示し、前記4つの半導体スイッチ素子23〜26が、プリント基板12の下面12bにほぼ一定の間隔幅で一列に配置されている。一方、カバー部材4には、左右2つの凸状部位27、27が形成されて、これらはそれぞれ角錐状に形成されて、縦断面視では波形状(W形状)に形成されている。したがって、それぞれの下面27a、27aが傾斜テーパ面に形成されていると共に、中央に2つの突出部27b、27bが設けられている。この各突出部27b、27bは、前記左右各一対の半導体スイッチ素子23、24、25、26のそれぞれの間の隙間S、Sに位置(好ましくは隙間Sの中央部に位置)するように設定されている。他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0055】
したがって、この実施形態によれば、第1実施形態と同様な作用効果が得られるが、特に、突出部27b、27bが2つとなることによって、放熱シート21に対する押圧点が2箇所になることから、かかるそれぞれの押圧力が僅かに大きくなるが、各凸状部位27、27の下面27a、27aの傾斜状テーパ面によってそれぞれの押圧力に分散作用が働くので、プリント基板12に対する押圧力は全体に小さくなる。
【0056】
よって、この実施形態もプリント基板12の部分的な撓み変形が抑制されると共に、各半導体スイッチ素子23〜26に対する応力負荷も回避できる。また、特に、各突出部27b、27bは、各半導体スイッチ素子23〜26の間の隙間S、Sに配置されるので、前記応力負荷を十分に抑制できる。
【0057】
また、第1、第2実施形態では、前記凸状部位27,27の前記カバー部材4との結合箇所にリブ27c、27cが設けられていることから、カバー部材4の補強に寄与させることができる。
〔第3実施形態〕
図7A、Bは第3実施形態を示し、プリント基板12の下面12bの各半導体スイッチ素子23〜26の配置構成は第1実施形態と同様であるが、密着部位としてカバー部材4とは別体の弾性変形可能なばね部材28によって構成したものである。
【0058】
すなわち、前記ばね部材28は、伝熱性を有する金属製の薄板材をプレス成形によって形成されていると共に、放熱シート21の長手方向に沿って長方形状に形成され、平坦状の上端片28aと、該上端片28aの両端縁から下方へ湾曲状に延出した一対の脚片28b、28bと、前記上端片28aと脚部28b、28bとの間に形成されて、放熱シート21の上面に密着して伝熱性を確保する当接部28c、28cと、から構成されている。この両脚片28b、28bは、放熱シート21の放熱シート21の長手方向の前後端部21a、21bの上面に係止して、半導体スイッチ素子23〜26の配設箇所から離間した位置に当接している。
【0059】
したがって、前記カバー部材4をバスバー構成体11に組み付ける際に、図7Aに示すように、予め前記ばね部材28の両脚片28b、28bを放熱シート21の長手方向の前後端部21a、21bに当接させると共に、各当接部28c、28cを放熱シート21の上面に当接状態に載せておく。その後、図7Bに示すように、カバー部材4を押し下げて各係止片10と各係止部13を介してバスバー構成体11に組み付けると、同時に、カバー部材4の上壁4a下面によって前記上端片28aの上面を下方に押圧すると、両脚片28b、28bが潰れ変形しながら放熱シート21の上面に係止しつつ該放熱シート21の前後端部21a、21bを引き離すように押圧する。このとき、各当接部28c、28cが放熱シート21の上面に密着するが、上端片28aは、両脚片28b、28bに押圧力を伝達するだけで、放熱シート21には何ら接触していない。
【0060】
したがって、この実施形態では、ばね部材28によって放熱シート21に対して弾性的な押圧力が作用するが、この押圧力は両脚片28b、28bから放熱シート21の前後端部21a、21bのみに作用するだけであり、その押圧力は十分に小さいことから、プリント基板12の撓み変形を十分に抑制できる。また、各脚片28b、28bからは半導体スイッチ素子23〜26へ直接的に押圧力が作用しないので、該各半導体スイッチ素子23〜26への応力負荷も低減できる。
【0061】
なお、半導体スイッチ素子23〜26からプリント基板12を介して放熱シート21に伝達された熱は、ばね部材28を介してカバー部材4に伝達されることから、効果的な放熱作用が得られる。
【0062】
前記ばね部材28は、単に金属薄板片をプレス成形によって形成しただけであるから、この製造作業が容易であると共に、コストの低減化が図れる。
【0063】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば凸状部位27を円錐状に形成することも可能であり、また発熱素子としては、前記半導体スイッチ素子23〜26の他に、例えばパワーICなどの電子部品であってもよい。ま、前記半導体スイッチ素子23〜26は、4つに限定されるものではなく、1〜3つまたは4つ以上であってもよい。
【0064】
また、放熱シート21の肉厚を適宜変更して、カバー部材4からの押圧力を微調整することも可能である。
【0065】
さらに、例えば、ケーシング1やバスバー構成体11の形状や構造を任意に変更することも可能である。また、電子制御装置の適用対象装置としては、ABSの他に電動パワーステアリング装置などに適用することも可能である。
【0066】
また、前記液圧制御ブロック3を合成樹脂材によって形成することも可能である。
【0067】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕
前記突出部を、前記放熱部材に向かって円弧状あるいは円錐状に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。
〔請求項b〕
前記回路基板に前記発熱素子を複数設ける一方、前記ケーシングの突出部を前記各発熱素子の間の位置に複数設けたことを特徴とする請求項1〜bのいずれか一項に記載の電子制御装置。
〔請求項c〕
前記密着部位を、前記突出部を中心として外方向に向かって前記放熱部材から離間するようにテーパ状に形成したことを特徴とする請求項1〜bのいずれ一項に記載の電子制御装置。
【0068】
この発明によれば、ケーシングなどの組み付け時に、前記突出部が放熱部材に対する押圧点となって放熱部材の一部を押圧すると、この押圧点からテーパ面を介して放熱部材の外周側へ向かって前記押圧力が分散して減少する。このため、前記放熱部材に対する押圧力突出部か外周部に渡って全体の押圧力が低下して適度な押圧力となる。
【0069】
この結果、前記突出部の押圧力によって密着部位の放熱部材に対する密着性が良好になって、発熱素子の発熱を効果的にケーシングに伝達することができると共に、前記押圧力が分散されることから回路基板の変形や発熱素子に対する応力負荷を抑制できる。
【符号の説明】
【0070】
1…ケーシング
2…電子制御部品
3…液圧制御ブロック
4…カバー部材
5・6…増圧、減圧弁
8…コイルユニット
11…バスバー構成体
12…プリント基板(回路基板)
19…ビス
20…筒状部
21…放熱シート(放熱部材)
23〜26…半導体スイッチ素子(発熱素子)
27…凸状部位(密着部位)
27a…下面
27b…突出部
27c…テーパ面
28…弾性ばね(密着部位)
28a…上端片
28b…両脚片(突出部)
S…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に収容固定された回路基板に、発熱素子が実装されていると共に、前記ケーシングと発熱素子との間に、前記発熱素子の発熱を前記ケーシングに伝達する放熱部材を設けてなる電子制御装置において、
前記ケーシング内面の前記放熱部材に密着する密着部位の一部に、前記放熱部材の方向に向かって突出する突出部を形成すると共に、該突出部を、前記回路基板に対する発熱素子の配置箇所を避けた位置に設定したことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記発熱素子を回路基板の下面に実装すると共に、前記放熱部材を前記回路基板の前記発熱素子に対応した上面に固定し、該放熱部材の上面に前記ケーシングの密着部位を密着させたことを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記突出部を、前記放熱部材に向かって断面ほぼV字形状あるいは角錐状に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−38146(P2013−38146A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171461(P2011−171461)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】