説明

電子回路、電子回路の製造方法、及び、実装部材

【課題】回路の大規模化を抑制しつつ、品質の良いデータ伝送を行う。
【解決手段】半導体チップである、例えば、ミリ波伝送チップには、シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられている。一方、例えば、インターポーザやプリント基板等の半導体チップが実装される実装部には、差動信号を伝送する、例えば、コプレーナストリップ線路等の差動伝送路が形成されている。ミリ波伝送チップは、差動伝送路を構成する導体に、シングルエンドI/Fのパッドが、電気的に直接接続されるように、実装部に実装されている。本技術は、例えば、IC等の電子回路に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電子回路、電子回路の製造方法、及び、実装部材に関し、特に、例えば、回路の大規模化を抑制しつつ、品質の良いデータ伝送を行うことができるようにする電子回路、電子回路の製造方法、及び、実装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、テレビジョン受像機や、ビデオカメラ、レコーダ等の各種の電子機器においては、その筐体内に、各種の信号処理を行う電子回路であるIC(Integrated Circuit)(LSI(Large-Scale Integration)を含む)が配置された基板が収容されている。
【0003】
そして、同一の基板に配置されたICどうしや、異なる基板に配置されたICどうしの間で、データ(画像や音声等の実データ、及び、制御データを含む)のやりとりをするために、ICどうしの間、及び、基板どうしの間には、有線による配線が施されている。
【0004】
ところで、最近、ICでは、3D(dimension)画像や、高精細な画像等の大容量のデータを対象として信号処理が行われ、そのような大容量のデータが、ICどうしの間で、高速でやりとりされることがある。
【0005】
そして、大容量のデータを高速でやりとりするために、ICどうしの間、及び、基板どうしの間の配線の配線数が増加し、さらに、配線の高周波対策が困難になることがある。
【0006】
そこで、ICどうしの間のデータのやりとりを、無線で行うことが提案されている。
【0007】
すなわち、例えば、非特許文献1や2には、データを、ミリ波帯の信号(ミリ波)に変調して伝送することにより、高速で、データをやりとりするCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路(IC)が記載されている。
【0008】
ところで、非特許文献1や2等に記載されている、データを、ミリ波等のRF(Radio Frequency)信号に変調して伝送するCMOS回路では、RF信号を処理するRF部のインターフェースは、シングルエンド(single-ended)信号がやりとりされるシングルエンドI/F(Interface)になっている。
【0009】
すなわち、RF部では、例えば、RF部が出力するRF信号が測定しやすい(ミリ波を測定する測定器のプローブがシングルエンド信号に対応している)、CMOS回路の回路構成がシンプルになる、低消費電力化を図ることができるといった理由から、シングルエンドI/Fが採用されている。
【0010】
一方、シングルエンド信号によるデータ伝送は、差動信号によるデータ伝送に比較して、品質が良くないことがある。
【0011】
すなわち、RF部が実装されるCMOS回路内や、インターポーザ、プリント基板(PCB(Printed Circuit Board))等において、シングルエンド信号を伝送する、例えば、マイクロストリップ線路を形成する場合には、理想的には、無限の接地導体が必要となるが、無限の接地導体を設けることは困難であり、その結果、データ伝送の品質が劣化する。
【0012】
また、シングルエンド信号によるデータ伝送では、差動信号によるデータ伝送に比較して、不要輻射が多く、さらに、外部(シングルエンド信号が伝送される伝送路外)からのノイズに対する耐性が弱いため、データ伝送の品質が劣化する。
【0013】
そこで、シングルエンド信号を差動信号に変換して、差動信号によるデータ伝送を行うことで、品質の良いデータ伝送を行う方法がある。
【0014】
シングルエンド信号と差動信号との変換は、平衡−不平衡(非平衡)変換と呼ばれ、平衡−不平衡変換を行う回路は、バラン(Balun)と呼ばれる。
【0015】
例えば、特許文献1には、コプレーナ線路上のシングルエンド信号(不平衡入力)を、コプレーナストリップ線路から、差動信号(平衡出力)に変換して出力するバランが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004-104651号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Kenichi, Kawasaki et. al. “A Millimeter-Wave Intra-Connect Solution”, IEEE J. Solid-State Circuits, vol. 45, no. 12, pp. 2655-2666, Dec. 2010
【非特許文献2】Eric Juntunen et. al. “A 60-GHz 38-pJ/bit 3.5-Gb/s 90-nm CMOS OOK Digital Radio”, IEEE Trans. Microwave Theory Tech., vol. 58, no. 2, Feb. 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
RF部のシングルエンド信号を、バランによって差動信号に変換することにより、品質の良いデータ伝送を行うことができる。
【0019】
しかしながら、RF部のシングルエンド信号を、バランによって差動信号に変換するのでは、CMOS回路等に、バランを設ける必要があり、回路が大規模になる。
【0020】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、回路の大規模化を抑制しつつ、品質の良いデータ伝送を行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本技術の第1の側面の電子回路は、シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられた半導体チップと、差動信号を伝送する差動伝送路が形成されており、前記差動伝送路を構成する導体に、前記シングルエンドI/Fのパッドが、電気的に直接接続されるように、前記半導体チップが実装された実装部とを備える電子回路である。
【0022】
本技術の第1の側面の電子回路の製造方法は、シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられた半導体チップを、差動信号を伝送する差動伝送路が形成された、前記半導体チップが実装される実装部に実装するときに、前記差動伝送路を構成する導体に、前記シングルエンドI/Fのパッドを、電気的に直接接続させる電子回路の製造方法である。
【0023】
本技術の第1の側面においては、半導体チップには、シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられており、実装部には、差動信号を伝送する差動伝送路が形成されている。そして、半導体チップは、前記差動伝送路を構成する導体に、前記シングルエンドI/Fのパッドが、電気的に直接接続されるように、実装部に実装される。
【0024】
本技術の第2の側面の実装部材は、差動信号を伝送する差動伝送路が形成され、前記差動伝送路上に誘電体が配置され、シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられた半導体チップが実装される実装部材である。
【0025】
本技術の第2の側面においては、シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられた半導体チップが実装される実装部材に、差動信号を伝送する差動伝送路が形成されている。さらに、前記差動伝送路上には、誘電体が配置されている。
【発明の効果】
【0026】
本技術によれば、回路の大規模化を抑制しつつ、品質の良いデータ伝送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】シングルエンド信号のミリ波をやりとりするミリ波伝送システムの構成例を示す図である。
【図2】シングルエンド信号のミリ波をやりとりするミリ波伝送システムの他の構成例を示す図である。
【図3】実装部11がインターポーザである場合の、そのインターポーザの構成例を示す平面図である。
【図4】本技術を適用した電子回路の第1実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【図5】本技術を適用した電子回路の第1実施の形態の構成例を示す断面図である。
【図6】本技術を適用した電子回路の第2実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【図7】本技術を適用した電子回路の第2実施の形態の構成例を示す断面図である。
【図8】差動伝送路を示す断面図である。
【図9】差動伝送路としてのコプレーナストリップ線路103を示す斜視図と断面図である。
【図10】本技術を適用した電子回路の第3実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【図11】誘電体130を、コプレーナストリップ線路103上に配置する配置パターンの例を説明する図である。
【図12】コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを小さくする調整を行う他の方法を説明する図である。
【図13】コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを小さくする調整を行うさらに他の方法を説明する図である。
【図14】本技術を適用した電子回路の第4実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【図15】本技術を適用した電子回路の第4実施の形態の構成例を示す断面図である。
【図16】本技術を適用した電子回路の第5実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【図17】シミュレーションの結果を示す図である。
【図18】本技術を適用した電子回路の第6実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【図19】本技術を適用した電子回路の第6実施の形態の構成例を示す断面図である。
【図20】本技術を適用した電子回路の第7実施の形態の構成例を示す上面図と断面図である。
【図21】シミュレーションの結果を示す図である。
【図22】本技術を適用した電子回路の第8実施の形態の構成例を示す上面図と断面図である。
【図23】シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本技術の実施の形態について説明するが、その前に、前段階の準備として、シングルエンド信号のミリ波をやりとりするミリ波伝送システムについて説明する。
【0029】
[シングルエンド信号のミリ波をやりとりするミリ波伝送システム]
【0030】
図1は、シングルエンド信号のミリ波をやりとりするミリ波伝送システムの構成例を示す図である。
【0031】
図1において、ミリ波伝送システムは、例えば、ICである電子回路10及び40を有する。
【0032】
電子回路10は、データを、ミリ波によって送信する機能を有しており、電子回路40は、データを、ミリ波によって受信する機能を有している。
【0033】
電子回路10は、実装部11とミリ波伝送チップ20とを有する。
【0034】
実装部11は、半導体チップが実装される、例えば、インターポーザやプリント基板等の部材(実装部材)であり、平板形状をしている。
【0035】
平板形状の実装部11の一面である表面には、半導体チップであるミリ波伝送チップ20が実装されており、平板形状の実装部11の他の一面である裏面には、例えば、その全領域や全領域に近い領域に亘って、グランドとなる金属である薄膜状のグランドメタル12が設けられている。
【0036】
さらに、実装部11の表面には、ビア13及び13、マイクロストリップ線路14、及び、アンテナ15が形成されている。
【0037】
ビア13及び13は、実装部11の裏面のグランドメタル12に接続している。
【0038】
マイクロストリップ線路14は、不平衡の伝送路であり、実装部11に、帯状に形成されている。帯状のマイクロストリップ線路14の一端は、アンテナ15に接続されている。
【0039】
アンテナ15は、例えば、1mm程度のボンディングワイヤで構成される。
【0040】
ミリ波伝送チップ20は、例えば、CMOS等で構成され、シングルエンドI/F21と送信部22等を有する。
【0041】
シングルエンドI/F21は、シングルエンド信号(不平衡の信号)をやりとりするための端子である3つのパッド21,21、及び、21を有する。
【0042】
3つのパッド21ないし21のうちの、2つのパッド21及び21は、送信部22のグランド(GND)端子(グランドパッド)であり、ボンディングワイヤによって、ビア13及び13に、それぞれ接続されている。したがって、パッド21は、ビア13を介して、パッド21は、ビア13を介して、それぞれ、実装部11の裏面のグランドメタル12に接続されている。
【0043】
3つのパッド21ないし21のうちの、残りのパッド21は、信号がやりとりされる信号端子(信号パッド)であり、バッド21には、送信部22(のアンプ34)の出力が供給される。パッド21は、ボンディングワイヤによって、マイクロストリップ線路14の他端(アンテナ15に接続されていない方の端部)に接続されている。
【0044】
送信部22は、ミリ波帯の信号(ミリ波)の送信を行う。
【0045】
ここで、ミリ波とは、周波数が30ないし300GHz程度、つまり、波長が、1ないし10mm程度の信号である。ミリ波帯の信号によれば、周波数が高いことから、高速のデータレートでのデータ伝送が可能であり、有線通信は勿論、小さなアンテナで、無線通信(ワイヤレス伝送)を行うことができる。
【0046】
送信部22は、アンプ31、発振器32、ミキサ33、及び、アンプ34を有する。
【0047】
アンプ31には、図示せぬ信号処理回路から、送信対象の送信データが供給される。アンプ31は、そこに供給される送信データのレベルを調整し、ミキサ33に供給する。
【0048】
ここで、送信データとしては、例えば、最大で、11Gbpsのデータレートのデータを採用することができる。
【0049】
発振器32は、発振によって、例えば、56GHz等のミリ波帯のキャリアを発生し、ミキサ33に供給する。
【0050】
ミキサ33は、アンプ31からの送信データと、発振器32からのキャリアとをミキシング(乗算)することにより、発振器32からのキャリアを、送信データに従って変調し、その結果得られる変調信号を、アンプ34に供給する。
【0051】
ここで、送信データに従ってキャリアを変調する変調方式は、特に限定されるものではないが、ここでは、説明を簡単にするために、例えば、振幅変調(ASK(Amplitude Shift Keying))を採用することとする。
【0052】
アンプ34は、ミキサ33からの変調信号を増幅し、その増幅後の変調信号を、シングルエンド信号として出力する。アンプ34が出力するシングルエンド信号である変調信号は、パッド21に供給される。
【0053】
上述したように、パッド21は、ボンディングワイヤによって、マイクロストリップ線路14に接続されており、したがって、アンプ34が出力する変調信号は、シングルエンド信号のまま、マイクロストリップ線路14を伝わり、アンテナ15から、電波として送信される。
【0054】
電子回路40は、実装部41とミリ波伝送チップ50とを有する。
【0055】
実装部41は、実装部11と同様に、平板形状のインターポーザやプリント基板等の部材(実装部材)であり、その一面である表面には、半導体チップであるミリ波伝送チップ50が実装されている。
【0056】
また、実装部41の他の一面である裏面には、実装部11と同様に、その全領域や全領域に近い領域に亘って、グランドとなる金属である薄膜状のグランドメタル42が設けられている。
【0057】
さらに、実装部41の表面には、ビア43及び43、マイクロストリップ線路44、及び、アンテナ45が形成されている。
【0058】
ビア43及び43は、実装部41の裏面のグランドメタル42に接続している。
【0059】
マイクロストリップ線路44は、不平衡の伝送路であり、実装部41に、帯状に形成されている。帯状のマイクロストリップ線路44の一端は、アンテナ45に接続されている。
【0060】
アンテナ45は、例えば、アンテナ15と同様に、1mm程度のボンディングワイヤで構成される。
【0061】
ミリ波伝送チップ50は、例えば、ミリ波伝送チップ20と同様に、CMOS等で構成され、シングルエンドI/F51と受信部52等を有する。
【0062】
シングルエンドI/F51は、シングルI/F21と同様に、シングルエンド信号をやりとりするための端子である3つのパッド51,51、及び、51を有する。
【0063】
3つのパッド51ないし51のうちの、2つのパッド51及び51は、受信部52のグランド(GND)端子であり、ボンディングワイヤによって、ビア43及び43に、それぞれ接続されている。したがって、パッド51は、ビア43を介して、パッド51は、ビア43を介して、それぞれ、実装部41の裏面のグランドメタル42に接続されている。
【0064】
3つのパッド51ないし51のうちの、残りのパッド51は、信号がやりとりされる信号端子であり、バッド51は、受信部52(のアンプ61)の入力と接続されている。さらに、パッド51は、ボンディングワイヤによって、マイクロストリップ線路44の他端(アンテナ45に接続されていない方の端部)に接続されている。
【0065】
受信部52は、ミリ波帯の信号(ミリ波)の受信を行う。
【0066】
受信部52は、アンプ61、発振器62、ミキサ63、及び、アンプ64を有する。
【0067】
アンプ61には、マイクロストリップ線路44からパッド52に伝わる変調信号が、シングルエンド信号として供給される。
【0068】
アンプ61は、パッド52からの変調信号を増幅し、発振器62、及び、ミキサ63に供給する。
【0069】
発振器62は、発振によって、アンプ61からの変調信号に同期したキャリアを発生し、ミキサ63に供給する。
【0070】
ミキサ63は、アンプ61からの変調信号と、発振器62からのキャリアとをミキシング(乗算)することにより、アンプ61からの変調信号を、ベースバンド信号に変換し、アンプ64に供給する。
【0071】
アンプ64は、ミキサ63からのベースバンド信号を増幅して出力する。
【0072】
アンプ64が出力するベースバンド信号は、図示せぬLPF(Low Pass Filter)でフィルタリングされ、これにより、送信データ(に対応する周波数成分)が抽出(取得)される。送信データは、図示せぬ信号処理回路に供給されて処理される。
【0073】
以上のように構成されるミリ波伝送システムでは、電子回路10において、送信部22が、ミリ波の変調信号を、シングルエンドI/F21のパッド21から、シングルエンド信号として出力する。
【0074】
パッド21は、ボンディングワイヤによって、マイクロストリップ線路14に接続されており、パッド21から出力される変調信号は、シングルエンド信号のまま、マイクロストリップ線路14を伝わり、アンテナ15から、無線で送信される。
【0075】
アンテナ15から送信された変調信号は、アンテナ45で受信され、シングルエンド信号として、マイクロストリップ線路44を伝わり、ボンディングワイヤを経由して、シングルエンドI/F51のパッド51に到達する。
【0076】
シングルエンドI/F51のパッド51に到達した変調信号は、受信部52で受信され、ベースバンドの信号に復調される。
【0077】
なお、ミリ波伝送チップ20には、ミリ波を送信する送信部22を設け、ミリ波を送信する受信部を設けていないが、ミリ波伝送チップ20には、送信部22と、受信部52と同様に構成される受信部との両方を設けることが可能である。ミリ波伝送チップ20に、送信部22と、受信部52と同様に構成される受信部との両方を設けることにより、ミリ波伝送チップ20では、ミリ波の送信の他、受信も行うことが可能となる。
【0078】
同様に、ミリ波伝送チップ50には、受信部52と、送信部22と同様に構成される送信部との両方を設けることが可能である。
【0079】
図2は、シングルエンド信号のミリ波をやりとりするミリ波伝送システムの他の構成例を示す図である。
【0080】
なお、図中、図1の場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【0081】
図2では、実装部11に、ミリ波伝送チップ20の他、ミリ波伝送チップ50も実装されている。
【0082】
そして、マイクロストリップ線路14の一端は、アンテナ15ではなく、ボンディングワイヤによって、シングルエンドI/F51のパッド51に接続されている。
【0083】
なお、図2では、実装部11の表面には、ビア43及び43が形成されており、ビア43及び43は、実装部11の裏面のグランドメタル12に接続している。そして、シングルエンドI/F51のパッド51及び51が、ボンディングワイヤによって、ビア43及び43に、それぞれ接続されている。
【0084】
以上のように構成されるミリ波伝送システムでは、送信部22が、ミリ波の変調信号を、シングルエンドI/F21のパッド21から、シングルエンド信号として出力する。
【0085】
パッド21は、ボンディングワイヤによって、マイクロストリップ線路14に接続されており、パッド21から出力される変調信号は、シングルエンド信号のまま、マイクロストリップ線路14を伝わり、ボンディングワイヤを経由して、シングルエンドI/F51のパッド51に到達する。
【0086】
シングルエンドI/F51のパッド51に到達した変調信号は、受信部52で受信され、ベースバンドの信号に復調される。
【0087】
ミリ波を送信する送信部22や、ミリ波を受信する受信部52において、ミリ波をやりとりするI/Fは、変調信号等のRF信号が測定しやすい(ミリ波を測定する測定器のプローブがシングルエンド信号に対応している)、CMOS回路の回路構成がシンプルになる、低消費電力化を図ることができるといった理由から、シングルエンドI/F(シングルエンドI/F21や51)が採用される。
【0088】
しかしながら、シングルエンド信号によるデータ伝送は、差動信号によるデータ伝送に比較して、品質が良くないことがある。
【0089】
すなわち、図1や図2に示したように、インターポーザやプリント基板等の実装部11に、シングルエンド信号を伝送するマイクロストリップ線路14を形成する場合には、理想的には、無限の接地導体が必要となるが、無限の接地導体を設けることは困難であり、その結果、データ伝送の品質が劣化することがある。この点、図1に示したように、実装部41に、マイクロストリップ線路44を形成する場合も、同様である。
【0090】
また、シングルエンド信号によるデータ伝送では、差動信号によるデータ伝送に比較して、不要輻射が多く、さらに、外部(シングルエンド信号が伝送されるマイクロストリップ線路14や44の外部)からのノイズに対する耐性が弱いため、データ伝送の品質が劣化することがある。
【0091】
ここで、図3は、図1の実装部11がインターポーザである場合の、そのインターポーザの構成例を示す平面図である。
【0092】
図3において、インターポーザは、2つの層である第1層70と、第2層(GND層)80とを有する。第1層70及び第2層80は、平板形状をしており、例えば、第2層80は、第1層70の下側に位置する。
【0093】
第1層70には、図1で説明したビア13及び13、マイクロストリップ線路14、及び、アンテナ15が形成されている。
【0094】
さらに、第1層70には、ミリ波伝送チップ20の図示せぬパッドと、ボンディングワイヤによって接続されるランド71が形成されている。
【0095】
第2層80には、グランドメタル12が形成されており、第1層に形成されたビア13及び13は、グランドメタル12に接続している。
【0096】
図3に示すように、インターポーザにおいて、第1層70に、シングルエンド信号を伝送するマイクロストリップ線路14を形成する場合には、グランドメタル12を、広い範囲に亘って形成する必要がある。図3では、第2層80の右側の2/3程度の範囲に、グランドメタル12が形成されており、このような広い範囲に亘って形成されるグランドメタル12は、インターポーザ上の配線を圧迫する。
【0097】
品質の良いデータ伝送を行う方法としては、シングルエンド信号を差動信号に変換して、差動信号によるデータ伝送を行う方法がある。
【0098】
しかしながら、シングルエンド信号と差動信号との変換には、バランが必要であり、ミリ波という短い波長の信号を扱うとはいえ、送信部22や受信部52との比較で、バランを構成するには、大きな素子が必要となる。したがって、バランを実装するのでは、回路が大規模化する。
【0099】
そこで、本技術では、回路の大規模化を抑制しつつ、品質の良いデータ伝送を行うことを可能とする。
【0100】
[第1実施の形態]
【0101】
図4は、本技術を適用した電子回路の第1実施の形態の構成例を示す斜視図であり、図5は、図4の電子回路の、シングルエンドI/F111の部分の断面図である。
【0102】
図4及び図5において、電子回路は、実装部101とミリ波伝送チップ110とを有する。
【0103】
実装部101は、例えば、図1の実装部11と同様に、平板形状のインターポーザやプリント基板等の部材(実装部材)であり、半導体チップが実装される。
【0104】
平板形状の実装部101の一面である表面には、半導体チップであるミリ波伝送チップ110が実装されている。
【0105】
なお、平板形状の実装部101の他の一面である裏面には、グランドとなる金属である薄膜状のグランドメタルが設けられているが、その図示は省略してある。
【0106】
実装部101の表面には、ランド102及び102、及び、コプレーナストリップ線路103が形成されている。
【0107】
ランド102及び102は、コプレーナストリップ線路103に接続されている。
【0108】
コプレーナストリップ線路103は、差動信号がやりとりされる平衡の伝送路(差動伝送路)であり、実装部101に、平行に形成された2つの帯状の導体103及び103を含んで構成される。
【0109】
導体103の一端は、ランド102に接続され、導体103の一端は、ランド102に接続されている。
【0110】
ミリ波伝送チップ110は、例えば、CMOS等で構成され、シングルエンドI/F111等を有する。
【0111】
なお、ミリ波伝送チップ110は、図1の送信部22や受信部52と同様に構成されるRF部を有するが、その図示は、省略してある。
【0112】
シングルエンドI/F111は、RF部がシングルエンド信号(不平衡の信号)をやりとりするための端子である3つのパッド111,111、及び、111を有する。
【0113】
ここで、図4において、ランド102及び102、パッド111ないし111、並びに、バンプは、実際には、ミリ波伝送チップ110に隠れて見えないが、図4では、ミリ波伝送チップ110が無色透明であると仮定して、ランド102及び102、パッド111ないし111、並びに、バンプを図示してある。
【0114】
3つのパッド111ないし111のうちの、2つのパッド111及び111は、RF部のグランド(GND)端子であり、残りのパッド111は、信号(信号成分)がやりとりされる信号端子である。したがって、RF部では、バッド111から、シングルエンド信号の変調信号が出力され、また、パッド111に供給される信号が、シングルエンド信号として扱われる。
【0115】
図4及び図5では、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103に、シングルエンドI/F111のパッド111及び111が、それぞれ、(平衡/不平衡変換を行うバランを介さずに)電気的に直接接続されるように、ミリ波伝送チップ110が、実装部101に実装(例えば、フリップチップ実装)されている。
【0116】
なお、図5に示すように、ミリ波伝送チップ110は、シリコン121上に、シリコン酸化膜122を形成することにより構成されている。パッド111ないし111は、シリコン121上、又は、シリコン酸化膜122上に形成されている。
【0117】
図4及び図5では、導体103とパッド111とが、ランド102及びバンプを介して電気的に直接接続され、導体103とパッド111が、ランド102及びバンプを介して電気的に直接接続されている。
【0118】
なお、図4及び図5において、シングルエンドI/F111のグランド端子であるパッド111は、いずれにも接続されていないが、ミリ波伝送チップ110(のRF部)のその他のグランド端子(パッド111や111に接続されている図示せぬグランド端子)は、実装部101に設けられている図示せぬグランドメタルに接続されている。
【0119】
ここで、図4及び図5において、シングルエンドI/F111のグランド端子であるパッド111は、実装部101に設けられている図示せぬグランドメタルに接続することができる。
【0120】
また、図4及び図5において、シングルエンドI/F111の3つのパッド111ないし111のうちの、パッド111及び111は、いずれもグランド端子であり、パッド111に代えて、パッド111を、導体103に電気的に直接接続することができる。
【0121】
図4及び図5の電子回路は、シングルエンドI/F111が設けられたミリ波伝送チップ110を、コプレーナストリップ線路103が形成された実装部101に実装するときに、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103に、シングルエンドI/F111のパッド111及び111を、電気的に直接接続させること、すなわち、導体103とパッド111とを、ランド102及びバンプを介して電気的に直接接続するとともに、導体103とパッド111を、ランド102及びバンプを介して電気的に直接接続することで、製造することができる。
【0122】
以上のように構成される電子回路では、シングルエンドI/F111から出力される信号については、コプレーナストリップ線路103において、導体103に接続されているパッド111に現れる信号(理想的には、グランドレベル)と、導体103に接続されているパッド111に現れる信号(シングルエンド信号)が、差動信号のコールド側とホット側(ネガティブとポジティブ)の信号として伝送される。
【0123】
また、コプレーナストリップ線路103からミリ波伝送チップ110に伝送されてくる差動信号については、ミリ波伝送チップ110において、導体103に接続されているパッド111に現れる信号が、シングルエンド信号として扱われる。
【0124】
以上のように、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103に、シングルエンドI/F111のパッド111及び111が、それぞれ、電気的に直接接続されるように、ミリ波伝送チップ110が、実装部101に実装されているので、回路の大規模化を抑制しつつ、品質の良いデータ伝送を行うことができる。
【0125】
すなわち、図4及び図5の電子回路は、バランが設けられていないので、バランを設ける場合に比較して、回路の大規模化を抑制し、消費電力を低減することができる。
【0126】
また、ミリ波伝送チップ110が扱うシングルエンド信号は、コプレーナストリップ線路103において、差動信号として伝送されるので、品質の良いデータ伝送を行うことができる。
【0127】
さらに、コプレーナストリップ線路103では、差動信号が伝送されるため、電子回路で発生するコモンモードノイズ(コモンモードの信号)を打ち消すことができる。
【0128】
なお、ミリ波伝送チップ110からは、信号端子であるパッド111と、グランド端子である2つのパッド111及び111を有するシングルエンドI/F111から、シングルエンド信号が出力されるので、そのシングルエンド信号であるRF信号(変調信号)が測定しやすい(ミリ波を測定する測定器のプローブがシングルエンド信号に対応している)、CMOS回路の回路構成がシンプルになる、低消費電力化を図ることができるといったシングルエンドI/Fを採用することの利点をも享受することができる。
【0129】
[第2実施の形態]
【0130】
図6は、本技術を適用した電子回路の第2実施の形態の構成例を示す斜視図であり、図7は、図6の電子回路の、シングルエンドI/F111の部分の断面図である。
【0131】
なお、図中、図4及び図5の第1実施の形態の場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【0132】
図6及び図7の第2実施の形態では、シングルエンドI/F111が、RF部がシングルエンド信号をやりとりするための端子として、3つのパッド111,111、及び、111ではなく、2つのパッド111及び111だけを有する点で、図4及び図5の第1実施の形態の場合と相違する。
【0133】
シングルエンドI/F111が、2つのパッド111及び111を有する場合も、3つのパッド111ないし111を有する場合と同様に、ミリ波伝送チップ110が扱うシングルエンド信号は、コプレーナストリップ線路103において、差動信号として伝送される。
【0134】
したがって、回路の大規模化を抑制しつつ、品質の良いデータ伝送を行うことができる。
【0135】
以上のように、コプレーナストリップ線路103(を構成する導体103及び103)に、シングルエンドI/F111(のパッド111及び111)が、電気的に直接接続されるように、ミリ波伝送チップ110を、実装部101に実装することで、回路の大規模化を抑制しつつ、品質の良いデータ伝送を行うことができるが、差動伝送路であるコプレーナストリップ線路103と、シングルエンド信号のI/FであるシングルエンドI/F111とを直接接続する場合には、差動伝送路であるコプレーナストリップ線路103と、シングルエンド信号のI/FであるシングルエンドI/F111とのインピーダンス整合(コプレーナストリップ線路103のインピーダンスと、シングルエンドI/F111のインピーダンスとの一致性)が問題となることがある。
【0136】
すなわち、一般に、差動伝送路のインピーダンスは、シングルエンド信号のI/Fのインピーダンスより高く、差動伝送路のインピーダンスと、シングルエンド信号のI/Fのインピーダンスとが大きく異なる場合には、インピーダンスの不整合に起因する反射によって、品質の良いデータ伝送が妨げられることがある。
【0137】
そこで、差動伝送路のインピーダンス(特性インピーダンス)について説明する。
【0138】
ここで、一般に、差動伝送路のインピーダンスは、例えば、120Ω程度であり、シングルエンド信号のI/Fのインピーダンスは、例えば、50Ω程度である。
【0139】
[差動伝送路の特性インピーダンス]
【0140】
図8は、差動伝送路を示す断面図である。
【0141】
図8において、差動伝送路は、平行に配置された2本の棒状の導体が誘電体に囲まれて構成されている。
【0142】
なお、図8において、差動伝送路を構成する棒状の導体の断面は、円形をしている。
【0143】
いま、導体の断面の円形の直径をdと表し、円形の中心どうしの距離(中心距離)をsと表すこととする。さらに、2本の導体の間の、その2本の導体を含まない距離(間隔距離)をs'(=s-d)と表し、差動伝送路を構成する誘電体の誘電率をεと表すとともに、透磁率をμと表すこととする。
【0144】
図8の差動伝送路の単位長あたりのインダクタンスLとキャパシタンスCは、式(1)と式(2)で、それぞれ表される。
【0145】
【数1】

・・・(1)
【0146】
【数2】

・・・(2)
【0147】
いま、説明を簡単にするために、差動伝送路が無損失であると仮定すると、図8の差動伝送路のインピーダンス(特性インピーダンス)Zcは、式(1)のインダクタンスLと、式(2)のキャパシタンスCとを用いて、式(3)で表される。
【0148】
【数3】

・・・(3)
【0149】
例えば、いま、シングルエンドI/F111のインピーダンスが50Ωであるとすると、そのようなシングルエンドI/F111とのインピーダンス整合を図るためには、式(3)で表される図8の差動伝送路のインピーダンスを50Ω程度とする必要がある。
【0150】
いま、誘電体の比誘電率εr(=ε/ε0(ε0は真空の誘電率))が、例えば、2.5であるとすると、図8の差動伝送路の式(3)で表されるインピーダンスZcを50Ω程度にするには、s/dを約1.23とする必要がある。
【0151】
s/dを約1.23とするには、導体の断面の円形の直径が、例えば、50μmであるとすると、その円形の中心どうしの距離(中心距離)sを、61.5μmとする必要があり、その円形どうしの、導体を含まない距離(間隔距離)s'(=s-d)は、11.5μmとなる。
【0152】
図9は、差動伝送路としてのコプレーナストリップ線路103を示す斜視図と断面図である。
【0153】
コプレーナストリップ線路103を構成する棒状の導体103及び103の断面は、略長方形をしている。
【0154】
いま、導体103及び103の断面の長手方向の長さ(幅)を、wと表し、導体103と103との(断面の)間の、その導体103及び103を含まない距離(間隔距離)をsと表すこととする。
【0155】
また、導体103及び103が形成されている、誘電体としての実装部101の比誘電率をεrと表し、その実装部101の厚み(表面と裏面との距離)を、hと表すこととする。
【0156】
コプレーナストリップ線路103のインピーダンス(特性インピーダンス)Zcは、式(4)で表される。
【0157】
【数4】

・・・(4)
【0158】
ここで、式(4)において、εeは、式(5)で表される。
【0159】
【数5】

・・・(5)
【0160】
また、式(4)及び式(5)のkは、式(6)で表され、式(5)のk1は、式(7)で表される。
【0161】
【数6】

・・・(6)
【0162】
【数7】

・・・(7)
【0163】
さらに、式(4)及び式(5)のK(k)/K'(k)は、式(8)で表される。
【0164】
【数8】

・・・(8)
【0165】
また、関数K(k')とK'(k)、及び、値kとk'は、式(9)で示される関係を有する。
【0166】
【数9】

・・・(9)
【0167】
なお、値k1とk'1も、値kとk'と同様の関係を有する。
【0168】
いま、実装部101が、例えば、一般的なFR-4基板(ガラスエポキシ基板)であるとすると、実装部101の比誘電率εrは、4.0程度であり、実装部101の厚みhは、1.6mm程度である。
【0169】
そして、導体103及び103の幅wが、例えば、50μmであるとすると、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスを50Ω程度にするには、導体103と103との間の間隔距離sを、0.23μm程度にする必要がある。
【0170】
ところで、将来的には、技術の進歩により、導体103と103との間の間隔距離sを、0.23μm程度とすることが、容易に可能になると予想されるが、現在の高密度配線の技術では、導体103及び103の幅w及び間隔距離sは、50μm程度を大きく下回る0.23μm程度の値とすることは、困難である。
【0171】
このため、例えば、導体103及び103の幅w及び間隔距離sとして、50μm程が採用された場合、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスは、シングルエンドI/F111のインピーダンスである50Ωよりも数10Ω程度大になり、この場合、コプレーナストリップ線路103とシングルエンドI/F111とのインピーダンスの不整合が問題になることがある。
【0172】
[第3実施の形態]
【0173】
そこで、図10は、本技術を適用した電子回路の第3実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【0174】
なお、図中、図4の第1実施の形態の場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【0175】
図10の第3実施の形態では、誘電体130が、コプレーナストリップ線路103上に配置されている点で、図4の場合と相違する。
【0176】
誘電体130は、実装部101の誘電率よりも大きな誘電率の誘電体(例えば、比誘電率が10程度の誘電体)であり、そのような誘電率の大きな誘電体130が、コプレーナストリップ線路103上に配置されていることにより、式(4)で表されるコプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを、誘電体130が配置されていない場合よりも小さくすることができる。
【0177】
したがって、誘電体130として、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを小さくして、コプレーナストリップ線路103とシングルエンドI/F111とのインピーダンスを整合させるような誘電率の誘電体を採用することにより、コプレーナストリップ線路103とシングルエンドI/F111とのインピーダンスを整合させ、インピーダンスの不整合に起因する反射によって、品質の良いデータ伝送が妨げられることを防止することができる。
【0178】
なお、図10では、誘電体130が、無色透明であると仮定して、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103が、誘電体130を透けて見えるように、導体103及び103を図示してある。
【0179】
図11は、誘電体130を、コプレーナストリップ線路103上に配置する配置パターンの例を説明する図である。
【0180】
なお、図11は、誘電体130がコプレーナストリップ線路103上に配置された電子回路の断面を示している。
【0181】
図11Aは、第1の配置パターンを、図11Bは、第2の配置パターンを、図11Cは、第3の配置パターンを、それぞれ示している。
【0182】
第1の配置パターン(図11A)では、誘電体130は、コプレーナストリップ線路103の2本の導体103及び103に沿って配置されており、その2本の導体103及び103の一方の導体103から他方の導体103までの全体を覆うことができる幅の誘電体になっている。
【0183】
第2の配置パターン(図11B)では、誘電体130は、コプレーナストリップ線路103の2本の導体103及び103に沿って配置されており、その2本の導体103及び103の間の、2本の導体103及び103を含む距離と同一の幅を有する誘電体になっている。
【0184】
第3の配置パターン(図11C)では、誘電体130は、コプレーナストリップ線路103の2本の導体103及び103に沿って、その2本の導体103及び103の間に配置されており、2本の導体103及び103の間の、2本の導体103及び103を含まない距離(間隔距離)と同一の幅を有する誘電体になっている。
【0185】
なお、図10の電子回路では、誘電体130を、コプレーナストリップ線路103上に配置することにより、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを小さくするように調整して、コプレーナストリップ線路103とシングルエンドI/F111とのインピーダンスの整合を図ることとしたが、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを小さくする調整は、その他、誘電体130を、コプレーナストリップ線路103上に配置すること以外の方法によって行うことが可能である。
【0186】
図12は、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを小さくする調整を行う他の方法を説明する図である。
【0187】
すなわち、図12は、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103が形成された実装部101の構成例を示す断面図である。
【0188】
図12では、導体103及び103の厚みを厚くすることで、コプレーナストリップ線路103のキャパシタンスが大になり、その結果、導体103及び103の厚みを厚くしない場合よりも、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcが小さくなるように調整されている。
【0189】
すなわち、導体103及び103の厚みを厚く調整することで、誘電体130を、コプレーナストリップ線路103上に配置しなくても、コプレーナストリップ線路103とシングルエンドI/F111とのインピーダンスの整合を図ることができる。
【0190】
図13は、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを小さくする調整を行うさらに他の方法を説明する図である。
【0191】
すなわち、図13は、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103が形成された実装部101の構成例を示す断面図と上面図である。
【0192】
図13では、実装部101は、第1層101と第2層101との2層構成になっており、第1層101の表面(上面)に、コプレーナストリップ線路103を構成する、平行に配置された2本の導体103及び103が形成されている。
【0193】
また、第2層101の表面(上面)にも、コプレーナストリップ線路103を構成する、平行に配置された2本の導体131及び131が、2本の導体103及び103とそれぞれ平行に形成されている。
【0194】
そして、平行に配置された第1層101の導体103、及び、第2層101の導体131上には、導体103と導体131とを電気的に接続するビア132が設けられている。
【0195】
同様に、平行に配置された第1層101の導体103と、第2層101の導体131上には、導体103と導体131とを電気的に接続するビア132が設けられている。
【0196】
以上のように、コプレーナストリップ線路103を構成する導体を、いわば多層に構成することによっても、図12の場合と同様に、コプレーナストリップ線路103のキャパシタンスが大になり、その結果、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを小さくするように調整することができる。
【0197】
なお、図13では、2層に構成された実装部101の第1層101に、コプレーナストリップ線路103を構成する2本の導体103及び103を形成するとともに、第2層101に、コプレーナストリップ線路103を構成する2本の導体131及び131を形成することとしたが、実装部101は、3層以上の構成とし、その3層以上の各層に、コプレーナストリップ線路103を構成する2本の導体を層状に形成し、ビアで、電気的に接続することによって、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを小さくすることが可能である。
【0198】
また、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを小さくする調整は、誘電体130を、コプレーナストリップ線路103上に配置する方法と、図12又は図13で説明した方法とを併用して行うことが可能である。
【0199】
さらに、コプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを小さくする調整は、図9で説明したように、導体103及び103の間隔距離sを狭くすることによって行うことができる。
【0200】
[第4実施の形態]
【0201】
図14は、本技術を適用した電子回路の第4実施の形態の構成例を示す斜視図であり、図15は、図14の電子回路の、シングルエンドI/F111の部分の断面図である。
【0202】
なお、図中、図4及び図5の第1実施の形態の場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【0203】
図14及び図15の第4実施の形態では、実装部101に、ランド102及び102の他、ランド102が設けられている点、及び、スタブ201が設けられている点で、図4及び図5の場合と相違する。
【0204】
ここで、図14では、ランド102及び102、パッド111ないし111、並びに、バンプの他、ランド102は、図4の場合と同様に、実際には、ミリ波伝送チップ110に隠れて見えないが、図14では、ミリ波伝送チップ110が無色透明であると仮定して、ランド102ないし102、パッド111ないし111、並びに、バンプを見えるように図示してある。
【0205】
図4及び図5では、シングルエンドI/F111のグランド端子であるパッド111が、いずれにも接続されていなかったが、図14及び図15では、パッド111とスタブ201とが、ランド102及びバンプを介して接続されている。
【0206】
スタブ201は、L字型をした導体になっており、実装部101上に形成されている。
【0207】
L字型のスタブ201の一端は、コプレーナストリップ線路103を構成する、ランド102及びバンプを介して信号端子としてのパッド111に接続されている導体103に接続されている。
【0208】
また、L字型のスタブ201の他端は、ランド103に接続されている。
【0209】
ここで、ランド103には、バンプを介して、シングルエンドI/F111の2つのグランド端子であるパッド111及び111のうちの、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103に接続されていない方のパッド111に接続されている。
【0210】
したがって、スタブ201の他端は、グランドに接続されるので、スタブ201は、ショートスタブである。
【0211】
また、L字型のスタブ201の長さは、そのスタブ201が接続された導体103で構成されるコプレーナストリップ線路103を介して伝送されるRF信号(ミリ波)の波長λの1/4の長さであるλ/4になっている。
【0212】
長さがλ/4のショートスタブであるスタブ201は、BPF(Band Pass Filter)として機能し、その結果、低周波のノイズを除去することができ、さらに、コプレーナストリップ線路103におけるコモンモードノイズを低減して、差動モード(ノーマルモード)の通過特性を向上させることができる。
【0213】
また、例えば、電気的なサージが、導体103上に生じた場合に、そのサージを、スタブ201を介して、グランドに逃がすことができるので、ESD(Electro-Static Discharge)耐性を向上させることができる。
【0214】
なお、図14及び図15の電子回路は、シングルエンドI/F111が設けられたミリ波伝送チップ110を、コプレーナストリップ線路103及びスタブ201が形成された実装部101に実装するときに、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103に、シングルエンドI/F111のパッド111及び111を、それぞれ、電気的に直接接続させるとともに、スタブ201の、導体103と接続されていない方の端部(他端)に、シングルエンドI/F111のパッド111を電気的に直接接続することで、製造することができる。
【0215】
また、ミリ波伝送チップのシングルエンドI/F111において隣り合うパッド111と111との距離は、ミリ波のλ/4にとって無視することができる程度の距離であるため、図14において、L字型のスタブ201については、スタブ201全体の長さを、λ/4とする他、L字型のスタブ201の、パッド111と111と結ぶ直線に平行な部分を除いた長さを、λ/4とすることができる。
【0216】
[第5実施の形態]
【0217】
図16は、本技術を適用した電子回路の第5実施の形態の構成例を示す斜視図である。
【0218】
なお、図中、図10の第3実施の形態の場合、及び、図14及び図15の第4実施の形態の場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【0219】
図16の第5実施の形態では、図10で説明した誘電体130が、コプレーナストリップ線路103上に配置されている点で、図14及び図15の場合と相違する。
【0220】
図10で説明したように、誘電体130は、実装部101の誘電率よりも大きな誘電率の誘電体であり、そのような誘電率の大きな誘電体130が、コプレーナストリップ線路103上に配置されていることにより、式(4)で表されるコプレーナストリップ線路103のインピーダンスZcを、誘電体130が配置されていない場合よりも小さくすることができる。
【0221】
その結果、コプレーナストリップ線路103とシングルエンドI/F111とのインピーダンスを整合させ、インピーダンスの不整合に起因する反射によって、品質の良いデータ伝送が妨げられることを防止することができる。
【0222】
なお、コプレーナストリップ線路103とシングルエンドI/F111とのインピーダンスの整合は、誘電体130を配置する方法の他、例えば、図12や図13で説明した方法等によってとることが可能である。
【0223】
図17は、図16の電子回路について行ったシミュレーションの結果を示す図である。
【0224】
すなわち、図17は、図16の電子回路(以下、スタブ有り回路ともいう)のSパラメータS21と、図16の電子回路からスタブ201を除去した回路(以下、スタブなし回路ともいう)のSパラメータS21とを示している。
【0225】
なお、図17において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、SパラメータS21を表す。
【0226】
また、図17において、実線は、コプレーナストリップ線路103についての差動モード(Diff. Mode)のSパラメータS21を表し、点線は、コモンモード(Comm. Mode)のSパラメータS21を表す。
【0227】
さらに、図17において、三角形が、スタブ有り回路のSパラメータS21を表し、四角形が、スタブなし回路のSパラメータS21を表す。
【0228】
図17によれば、スタブ有り回路の、差動モードのSパラメータS21(三角形と実線で示す)が、60GHzを中心とする周波数帯域において、90GHz以上の周波数帯域や30GHz以下の周波数帯域に比較して、大きくなっており、したがって、スタブ201がある場合には、差動モードにおいて、60GHzを中心とする周波数帯域、すなわち、ミリ波帯の通過特性(伝達特性)を向上させることができる。
【0229】
[第6実施の形態]
【0230】
図18は、本技術を適用した電子回路の第6実施の形態の構成例を示す斜視図であり、図19は、図18の電子回路の、シングルエンドI/F111の部分の断面図である。
【0231】
なお、図中、図6及び図7の第2実施の形態、図14及び図15の第4実施の形態の場合、図16の第5実施の形態と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【0232】
図18及び図19の第6実施の形態では、図6及び図7の場合と同様に、シングルエンドI/F111が、ミリ波伝送チップ110が内蔵する図示せぬRF部がシングルエンド信号をやりとりするための端子として、3つのパッド111,111、及び、111ではなく、2つのパッド111及び111だけを有する点で、図16の第5実施の形態の場合と相違する。
【0233】
以上のように、図18及び図19の第6実施の形態では、シングルエンドI/F111が、2つのパッド111及び111を有するが、グランド端子であるパッド111を有していないため、スタブ201の他端は、ミリ波伝送チップ110の他のグランド端子であるパッソ211に接続されている。
【0234】
すなわち、図18及び図19では、ミリ波伝送チップ110に設けられている、シングルエンドI/F111を構成するグランド端子であるパッド111とは別のグランド端子であるパッド211を図示してある。
【0235】
さらに、図18及び図19では、ミリ波伝送チップ110を、実装部101に実装したときに、ミリ波伝送チップ110のパッド211に対応する実装部101上の位置であって、シングルエンドI/F111から比較的離れた位置に形成されているランド212を図示してある。
【0236】
図18及び図19の第6実施の形態では、実装部101において、一端が導体103に接続されているL字型のスタブ201の他端が、ランド212に接続されている。
【0237】
さらに、図18及び図19の第6実施の形態では、ミリ波伝送チップのパッド211と、実装部101のランド212とは、バンプを介して接続されており、したがって、一端が導体103に接続されているL字型のスタブ201の他端は、ランド212、バンプ、及び、パッド211を介して、グランドに接続される。
【0238】
以上のように、一端が導体103に接続されているL字型のスタブ201の他端を、ミリ波伝送チップ110のシングルエンドI/F111を構成しないグランド端子であるパッド211に接続する場合も、一端が導体103に接続されているL字型のスタブ201の他端を、ミリ波伝送チップ110のシングルエンドI/F111を構成するグランド端子であるパッド111に接続する場合(図14、図15、図16)と同様に、コプレーナストリップ線路103上の低周波のノイズを除去し、コモンモードノイズを低減し、差動モードの通過特性を向上させ、ESD耐性を向上させることができる。
【0239】
ここで、L字型のスタブ201の長さは、図14及び図15で説明したように、λ/4になっている。
【0240】
ミリ波伝送チップ110のシングルエンドI/F111のパッド111と、シングルエンドI/F111を構成しないグランド端子であるパッド211との距離は、シングルエンドI/F111の隣り合うパッド111とパッド111との距離のような、ミリ波のλ/4にとって無視することができる程度の距離ではないため、図18において、L字型のスタブ201については、スタブ201全体の長さを、λ/4とする必要がある。
【0241】
以上のように、長さがλ/4のスタブ201を設けることにより、コモンモードノイズを低減することができるが、コモンモードノイズを他の方法により低減する実施の形態について説明する。
【0242】
[第7実施の形態]
【0243】
図20は、本技術を適用した電子回路の第7実施の形態の構成例を示す上面図(平面図)と断面図である。
【0244】
なお、図中、図16の第5実施の形態と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【0245】
また、図20では(後述する図22でも同様)、上述の第1実施の形態ないし第6実施の形態において図示を省略していた、実装部101の裏面に設けられているグランドメタルを、グランドメタル251として図示してある。
【0246】
第7実施の形態では、グランドメタル251としての薄膜の金属は、実装部101の裏面側のうちの、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103と、シングルエンドI/F111のパッド111及び111とが接続されている部分に対応する領域を少なくとも除く領域に設けられている。
【0247】
したがって、第7実施の形態では、実装部101の裏面側のうちの、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103と、シングルエンドI/F111のパッド111及び111とが接続されている部分に対応する領域には、グランドメタル251としての薄膜の金属が存在しない。
【0248】
なお、図20のようなグランドメタル251は、例えば、実装部101の裏面側の全体に薄膜の金属を設け、その後、シングルエンドI/F111のパッド111ないし111に対応する領域を含む矩形状の領域の金属を取り除くことで構成することができる。
【0249】
以上のように、実装部101の裏面側のうちの、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103と、シングルエンドI/F111のパッド111及び111とが接続されている部分に対応する領域を少なくとも除く領域に、グランドメタル251としての金属を設けることで、すなわち、実装部101の裏面側のうちの、少なくとも、導体103及び103とパッド111及び111とが接続されている部分に対応する領域に、グランドを設けないことで、コプレーナストリップ線路103のコモンモードノイズを抑制することができる。
【0250】
すなわち、図21は、図20の電子回路について行ったシミュレーションの結果を示す図である。
【0251】
ここで、図21は、図20の電子回路(以下、グランドなし回路ともいう)のSパラメータS21と、図20の電子回路において、実装部101の裏面側の、グランドメタル251が存在しない領域に、グランドとなる金属を設けた回路(以下、グランド有り回路ともいう)のSパラメータS21とを示している。
【0252】
なお、図21において、実線は、コプレーナストリップ線路103についての差動モードのSパラメータS21を表し、点線は、コモンモードのSパラメータS21を表す。
【0253】
さらに、図21において、三角形が、グランド有り回路のSパラメータS21を表し、四角形が、グランドなし回路のSパラメータS21を表す。
【0254】
図21によれば、グランドなし回路の、コモンモードのSパラメータS21(四角形と点線で示す)が、50GHzないし100GHz程度のミリ波帯で、グランド有り回路の場合(三角形と点線で示す)よりも小さくなっており、ミリ波帯のコモンモードノイズを抑制することができることを確認することができる。
【0255】
[第8実施の形態]
【0256】
図22は、本技術を適用した電子回路の第8実施の形態の構成例を示す上面図(平面図)と断面図である。
【0257】
なお、図中、図16の第5実施の形態、及び、図20の第7実施の形態と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【0258】
図20の第7実施の形態では、グランドメタル251としての薄膜の金属は、実装部101の裏面側のうちの、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103と、シングルエンドI/F111のパッド111及び111とが接続されている部分に対応する領域を少なくとも除く領域に設けられていたが、第8実施の形態では、グランドメタル251としての薄膜の金属は、実装部101の裏面側のうちの、例えば、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103と、シングルエンドI/F111のパッド111及び111とが接続されている部分に対応する領域を含む全体に設けられている。
【0259】
但し、第8実施の形態では、コプレーナストリップ線路103を構成する導体103及び103と、シングルエンドI/F111のパッド111及び111とが接続されている部分を含む、コプレーナストリップ線路103上の一部の領域に、誘電体130よりも誘電率が大の誘電体261が配置されている。
【0260】
すなわち、第8実施の形態では、導体103及び103とパッド111及び111とが接続されている部分を含む、コプレーナストリップ線路103上の一部の領域に、コプレーナストリップ線路103上の他の領域に配置されている誘電体130よりも誘電率が大の誘電体261が配置されている。
【0261】
ここで、誘電体130としては、例えば、比誘電率が10程度の誘電体を採用し、誘電体261としては、例えば、比誘電率が24程度の誘電体(誘電体セラミクス等)を採用することができる。
【0262】
以上のように、コプレーナストリップ線路103とシングルエンドI/F111との接続部分を含む、コプレーナストリップ線路103上の一部の領域に、コプレーナストリップ線路103上の他の領域に配置されている誘電体130よりも誘電率が大の誘電体261を配置することで、コプレーナストリップ線路103のコモンモードノイズを抑制することができる。
【0263】
すなわち、図23は、図22の電子回路について行ったシミュレーションの結果を示す図である。
【0264】
ここで、図23は、図22の電子回路(以下、大誘電体あり回路ともいう)のSパラメータS21と、図22の電子回路において、誘電体261の代わりに、誘電体130と同様の誘電体が配置されている回路(以下、大誘電体なし回路ともいう)のSパラメータS21とを示している。
【0265】
なお、図23において、実線は、コプレーナストリップ線路103についての差動モードのSパラメータS21を表し、点線は、コモンモードのSパラメータS21を表す。
【0266】
さらに、図23において、三角形が、大誘電体なし回路のSパラメータS21を表し、四角形が、大誘電体有り回路のSパラメータS21を表す。
【0267】
図23によれば、大誘電体有り回路の、コモンモードのSパラメータS21(四角形と点線で示す)が、25GHzないし80GHz程度のミリ波帯で、大誘電体なし回路の場合(三角形と点線で示す)よりも小さくなっており、ミリ波帯のコモンモードノイズを抑制することができることを確認することができる。
【0268】
なお、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0269】
すなわち、本実施の形態では、データを、ミリ波によって伝送することとしたが、データの伝送に使用する周波数帯域は、ミリ波に限定されるものではない。
【0270】
また、本実施の形態では、差動信号を伝送する差動伝送路として、コプレーナストリップ線路を採用したが、差動伝送路としては、コプレーナストリップ線路以外の伝送路を採用することができる。
【0271】
さらに、ミリ波のやりとりは、無線、及び、有線のいずれによって行うことも可能である。
【0272】
なお、本技術は、以下のような構成をとることができる。
【0273】
[1]
シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられた半導体チップと、
差動信号を伝送する差動伝送路が形成されており、前記差動伝送路を構成する導体に、前記シングルエンドI/Fのパッドが、電気的に直接接続されるように、前記半導体チップが実装された実装部と
を備える電子回路。
[2]
前記シングルエンドI/Fは、信号がやりとりされる信号パッドと、グランドに接続されるグランドパットとを有し、
前記差動伝送路は、平行に配置された2本の導体を有し、
前記信号パッドと、前記2本の導体のうちの一方の導体とが接続され、かつ、前記グランドパットと、前記2本の導体のうちの他方の導体とが接続されるように、前記半導体チップが、前記実装部に実装されている
[1]に記載の電子回路。
[3]
誘電体が、前記差動伝送路上に配置されている
[2]に記載の電子回路。
[4]
前記誘電体は、前記シングルエンドI/Fのインピーダンスと、前記差動伝送路のインピーダンスとを整合させる誘電率の誘電体である
[3]に記載の電子回路。
[5]
前記誘電体は、前記実装部の誘電率より大きい誘電率の誘電体である
[3]又は[4]に記載の電子回路。
[6]
前記誘電体は、前記差動伝送路の前記2本の導体に沿って配置されており、前記2本の導体の一方の導体から他方の導体までの全体を覆うことができる幅の誘電体である
[3]ないし[5]のいずれかに記載の電子回路。
[7]
前記誘電体は、前記差動伝送路の前記2本の導体に沿って配置されており、前記2本の導体の間の、前記2本の導体を含む距離と同一の幅を有する誘電体である
[3]ないし[5]のいずれかに記載の電子回路。
[8]
前記誘電体は、前記差動伝送路の前記2本の導体に沿って、前記2本の導体の間に配置されており、前記2本の導体の間の、前記2本の導体を含まない距離と同一の幅を有する誘電体である
[3]ないし[5]のいずれかに記載の電子回路。
[9]
前記差動伝送路の2本の導体は、前記シングルエンドI/Fのインピーダンスと、前記差動伝送路のインピーダンスとを整合させるように、厚みが調整されている
[2]に記載の電子回路。
[10]
前記2本の導体が、層状に形成されている
[2]に記載の電子回路。
[11]
前記差動伝送路は、コプレーナストリップ線路である
[1]ないし[10]のいずれかに記載の電子回路。
[12]
前記シングルエンド信号は、ミリ波帯の信号である
[1]ないし[11]のいずれかに記載の電子回路。
[13]
シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられた半導体チップを、差動信号を伝送する差動伝送路が形成された、前記半導体チップが実装される実装部に実装するときに、前記差動伝送路を構成する導体に、前記シングルエンドI/Fのパッドを、電気的に直接接続させる
電子回路の製造方法。
[14]
差動信号を伝送する差動伝送路が形成され、
前記差動伝送路上に誘電体が配置され、
シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられた半導体チップが実装される
実装部材。
[15]
前記シングルエンドI/Fは、信号がやりとりされる信号パッドと、グランドに接続されるグランドパットとを有し、
前記差動伝送路は、平行に配置された2本の導体を有し、
前記信号パッドと、前記2本の導体のうちの一方の導体とが接続され、かつ、前記グランドパットと、前記2本の導体のうちの他方の導体とが接続されるように、前記半導体チップが実装される
[14]に実装部材。
[16]
前記誘電体は、前記シングルエンドI/Fのインピーダンスと、前記差動伝送路のインピーダンスとを整合させる誘電率の誘電体である
[14]又は[15]に記載の実装部材。
[17]
前記誘電体は、前記実装部の誘電率より大きい誘電率の誘電体である
[14]又は[15]に記載の実装部材。
[18]
前記差動伝送路は、コプレーナストリップ線路である
[14]ないし[17]のいずれかに記載の実装部材。
[19]
前記シングルエンド信号は、ミリ波帯の信号である
[14]ないし[18]のいずれかに記載の実装部材。
【符号の説明】
【0274】
10 電子回路, 11 実装部, 12 グランドメタル, 13,13 ビア, 14 マイクロストリップ線路, 15 アンテナ, 20 ミリ波伝送チップ, 21 シングルエンドI/F, 21ないし21 パッド, 22 送信部, 31 アンプ, 32 発振器, 33 ミキサ, 34 アンプ, 40 電子回路, 41 実装部, 42 グランドメタル, 43,43 ビア, 44 マイクロストリップ線路, 45 アンテナ, 50 ミリ波伝送チップ, 51 シングルエンドI/F, 51ないし51 パッド, 52 受信部, 61 アンプ, 62 発振器, 63 ミキサ, 64 アンプ, 70 第1層, 80 第2層, 101 実装部, 101 第1層, 101 第2層, 102ないし102 ランド, 103 コプレーナストリップ線路, 103,103 導体, 110 ミリ波伝送チップ, 111 シングルエンドI/F, 111ないし111 パッド, 121 シリコン, 122 シリコン酸化膜, 130 誘電体, 131,131 導体, 132,132 ビア, 201 スタブ, 211 パッド, 212 ランド, 251 グランドメタル, 261 誘電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられた半導体チップと、
差動信号を伝送する差動伝送路が形成されており、前記差動伝送路を構成する導体に、前記シングルエンドI/Fのパッドが、電気的に直接接続されるように、前記半導体チップが実装された実装部と
を備える電子回路。
【請求項2】
前記シングルエンドI/Fは、信号がやりとりされる信号パッドと、グランドに接続されるグランドパットとを有し、
前記差動伝送路は、平行に配置された2本の導体を有し、
前記信号パッドと、前記2本の導体のうちの一方の導体とが接続され、かつ、前記グランドパットと、前記2本の導体のうちの他方の導体とが接続されるように、前記半導体チップが、前記実装部に実装されている
請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
誘電体が、前記差動伝送路上に配置されている
請求項2に記載の電子回路。
【請求項4】
前記誘電体は、前記シングルエンドI/Fのインピーダンスと、前記差動伝送路のインピーダンスとを整合させる誘電率の誘電体である
請求項3に記載の電子回路。
【請求項5】
前記誘電体は、前記実装部の誘電率より大きい誘電率の誘電体である
請求項3に記載の電子回路。
【請求項6】
前記誘電体は、前記差動伝送路の前記2本の導体に沿って配置されており、前記2本の導体の一方の導体から他方の導体までの全体を覆うことができる幅の誘電体である
請求項3に記載の電子回路。
【請求項7】
前記誘電体は、前記差動伝送路の前記2本の導体に沿って配置されており、前記2本の導体の間の、前記2本の導体を含む距離と同一の幅を有する誘電体である
請求項3に記載の電子回路。
【請求項8】
前記誘電体は、前記差動伝送路の前記2本の導体に沿って、前記2本の導体の間に配置されており、前記2本の導体の間の、前記2本の導体を含まない距離と同一の幅を有する誘電体である
請求項3に記載の電子回路。
【請求項9】
前記差動伝送路の2本の導体は、前記シングルエンドI/Fのインピーダンスと、前記差動伝送路のインピーダンスとを整合させるように、厚みが調整されている
請求項2に記載の電子回路。
【請求項10】
前記2本の導体が、層状に形成されている
請求項2に記載の電子回路。
【請求項11】
前記差動伝送路は、コプレーナストリップ線路である
請求項1に記載の電子回路。
【請求項12】
前記シングルエンド信号は、ミリ波帯の信号である
請求項1に記載の電子回路。
【請求項13】
シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられた半導体チップを、差動信号を伝送する差動伝送路が形成された、前記半導体チップが実装される実装部に実装するときに、前記差動伝送路を構成する導体に、前記シングルエンドI/Fのパッドを、電気的に直接接続させる
電子回路の製造方法。
【請求項14】
差動信号を伝送する差動伝送路が形成され、
前記差動伝送路上に誘電体が配置され、
シングルエンド信号がやりとりされるパッドを有するシングルエンドI/Fが設けられた半導体チップが実装される
実装部材。
【請求項15】
前記シングルエンドI/Fは、信号がやりとりされる信号パッドと、グランドに接続されるグランドパットとを有し、
前記差動伝送路は、平行に配置された2本の導体を有し、
前記信号パッドと、前記2本の導体のうちの一方の導体とが接続され、かつ、前記グランドパットと、前記2本の導体のうちの他方の導体とが接続されるように、前記半導体チップが実装される
請求項14に実装部材。
【請求項16】
前記誘電体は、前記シングルエンドI/Fのインピーダンスと、前記差動伝送路のインピーダンスとを整合させる誘電率の誘電体である
請求項15に記載の実装部材。
【請求項17】
前記誘電体は、前記実装部の誘電率より大きい誘電率の誘電体である
請求項15に記載の実装部材。
【請求項18】
前記差動伝送路は、コプレーナストリップ線路である
請求項14に記載の実装部材。
【請求項19】
前記シングルエンド信号は、ミリ波帯の信号である
請求項14に記載の実装部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−98888(P2013−98888A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241943(P2011−241943)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】