説明

電子回路装置、その電子回路基板

【課題】従来のワイヤレスTSVなどに比較して、電子回路チップと電子回路基板とが簡単な構造で良好に無線通信することができる電子回路装置を提供する。
【解決手段】軸心方向が略平行に位置している電子回路基板100の無線アンテナ配線110と電子回路チップ200の無線アンテナ配線210とが電磁結合するので、この電磁結合により電子回路基板100と電子回路チップ200とが無線通信することができる。このため、従来のワイヤレスTSVなどに比較して、電子回路基板100と電子回路チップ200とが簡単な構造で良好に無線通信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路チップが電子回路基板に搭載されている電子回路装置に関し、特に、電子回路チップと電子回路基板とが無線通信する電子回路装置、その電子回路基板、に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子回路の実装密度を向上させるため、電子回路基板の上面に複数の電子回路チップを積層した構造の電子回路装置がある。このような電子回路装置の一従来例を図7および図8を参照して以下に説明する。
【0003】
ここで例示する電子回路装置300は、図7に示すように、電子回路基板310の上面に複数の電子回路チップ320を積層した構造に形成されている。電子回路基板310は、プリント配線などにより上面と下面とに各種の配線312,311が形成されている。電子回路チップ320は、内部に各種の電子回路が形成されている(図示せず)。
【0004】
そして、電子回路基板310および電子回路チップ320の外周部には、図8に示すように、接続端子312,322が銅箔などの導体で形成されている。これらの接続端子312,322に、上述の配線312や電子回路が適宜接続されている。
【0005】
そして、この電子回路基板310および電子回路チップ320の接続端子312,322がボンディングワイヤ323でワイヤボンディングされている。なお、電子回路基板310および複数の電子回路チップ320は、絶縁性の接着層324で接合されている。
【0006】
上述のような構成において、上述のような構造の電子回路装置300では、電子回路基板310および電子回路チップ320の信号通信は、外周部の接続端子312,322に接続されているボンディングワイヤ323で実行される。
【0007】
なお、このような電子回路装置300では、電子回路基板310および電子回路チップ320の電源とアースとの接続も、外周部の接続端子312,322に接続されているボンディングワイヤ323で実行されている。
【0008】
しかし、上述のような構造の電子回路装置300では、接続端子312,322を外周部にしか形成できない。このため、接続端子312,322の個数が制限されている。従って、電子回路基板310と複数の電子回路チップ320との通信チャネルの個数も制限されている。
【0009】
このような課題を解決するため、電子回路基板と積層された複数の電子回路チップとが無線通信端子で無線通信するワイヤレスTSV(Through-Silicon via)が提案されている。
【0010】
ワイヤレスTSVでは、電子回路基板に積層された複数の電子回路チップが、上下方向で重複する位置に形成された無線通信端子で磁界結合により無線通信する。このため、外周部以外にも無線通信端子を形成することにより、通信チャネルを増加することができる。
【0011】
さらに、複数の電子回路チップの無線通信のクロストークを防止する提案もある。その電子回路装置では、送信コイルを下のチップに、受信コイルを上のチップに設けて、チップ間の距離をX、通信チャネル間の距離(すなわち、コイル中心間の水平距離)をYとしたとき、所定のYoにおいて、送信コイルに起因する受信コイル内の磁束密度が0になる位置が存在する。
【0012】
すなわち、Yが小さいと大きなクロストークが発生し、Yが大きいと逆符号の小さなクロストークが発生するため、その途中で磁束密度Bを受信コイル内で積分した値が0になる位置が必ず存在することになる。
【0013】
この位置においては原理的にクロストークが発生しない。従って、基板間通信を誘導性結合によって実現する場合に、複数の通信チャネルを近接して並列に並べてもクロストークの発生を実際上無視できる程度に小さくすることができる電子回路を提供することができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−66454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上述したワイヤレスTSVは、実際には電子回路基板と電子回路チップとが簡単な構造で良好に無線通信することが困難である。特許文献1の技術では、クロストークの防止を目的としているが、制限が多々あり実用的でない。しかも、特許文献1には、電子回路チップに送信コイルと受信コイルとを如何にして形成するかが具体的に開示されておらず、当業者でも実現することが困難である。
【0016】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、従来のワイヤレスTSVなどに比較して電子回路チップと電子回路基板とが簡単な構造で良好に無線通信することができる電子回路装置、その電子回路基板、を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の電子回路装置は、上面および下面が前後方向および左右方向と平行な電子回路基板に少なくとも一個の電子回路チップが積載されている電子回路装置であって、電子回路基板に形成されている軸心方向が左右方向と略平行なコイル状の基板アンテナ配線と、電子回路チップに形成されていて基板アンテナ配線と軸心方向が略平行なコイル状のチップアンテナ配線と、を有する。
【0018】
従って、本発明の電子回路装置では、軸心方向が略平行に位置している電子回路基板の無線アンテナ配線と電子回路チップの無線アンテナ配線とが電磁結合するので、この電磁結合により電子回路基板と電子回路チップとが無線通信することができる。
【0019】
また、上述のような電子回路装置において、電子回路基板は、上面および下面が前後方向および左右方向と平行な回路基板本体と、回路基板本体の上面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の上部アンテナ配線と、回路基板本体の下面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の下部アンテナ配線と、回路基板本体を上面から下面まで貫通していて複数の上部アンテナ配線の前端と複数の下部アンテナ配線の前端とを個々に結線している複数の前部アンテナヴィアと、回路基板本体を上面から下面まで貫通していて複数の上部アンテナ配線の後端と複数の隣接する下部アンテナ配線の後端とを個々に結線している複数の後部アンテナヴィアと、を有し、連続的に結線されている複数の上部アンテナ配線と複数の前部アンテナヴィアと複数の下部アンテナ配線と複数の後部アンテナヴィアとで一重コイル状の基板アンテナ配線が形成されていてもよい。
【0020】
また、上述のような電子回路装置において、電子回路チップは、上面および下面が前後方向および左右方向と平行な平板状の回路絶縁基体と、回路絶縁基体の上面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の上部アンテナ配線と、回路絶縁基体の下面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の下部アンテナ配線と、回路絶縁基体を上面から下面まで貫通していて複数の上部アンテナ配線の前端と複数の下部アンテナ配線の前端とを個々に結線している複数の前部アンテナヴィアと、回路絶縁基体を上面から下面まで貫通していて複数の上部アンテナ配線の後端と複数の隣接する下部アンテナ配線の後端とを個々に結線している複数の後部アンテナヴィアと、を有し、連続的に結線されている複数の上部アンテナ配線と複数の前部アンテナヴィアと複数の下部アンテナ配線と複数の後部アンテナヴィアとで一重コイル状のチップアンテナ配線が形成されていてもよい。
【0021】
また、上述のような電子回路装置において、基板アンテナ配線とチップアンテナ配線とが上下方向で隣接していてもよい。
【0022】
また、上述のような電子回路装置において、電子回路基板に複数の電子回路チップが積層されており、複数の電子回路チップのチップアンテナ配線が上下方向で隣接していてもよい。
【0023】
また、上述のような電子回路装置において、基板アンテナ配線の内部にコイルコアが形成されていてもよい。
【0024】
また、上述のような電子回路装置において、チップアンテナ配線の内部にコイルコアが形成されていてもよい。
【0025】
また、上述のような電子回路装置において、電子回路基板は、上面および下面が前後方向および左右方向と平行な回路基板本体と、回路基板本体を一部として積層されている複数の回路絶縁基体と、複数の回路絶縁基体の間隙に形成されている複数のアンテナ配線と、複数の回路絶縁基体を貫通している複数のアンテナヴィアと、を有し、複数のアンテナ配線と複数のアンテナヴィアとが連続的に結線されて平面コイル状の基板アンテナ配線が形成されていてもよい。
【0026】
また、上述のような電子回路装置において、通電の回転方向が同一の複数の基板アンテナ配線が左右方向に並列に形成されていて順番に結線されていてもよい。
【0027】
また、上述のような電子回路基板において、電子回路チップは、積層されている複数の回路絶縁基体と、複数の回路絶縁基体の間隙に形成されている複数のアンテナ配線と、複数の回路絶縁基体を貫通している複数のアンテナヴィアと、を有し、複数のアンテナ配線と複数のアンテナヴィアとが連続的に結線されて平面コイル状のチップアンテナ配線が形成されていてもよい。
【0028】
また、上述のような電子回路装置において、通電の回転方向が同一の複数のチップアンテナ配線が左右方向に並列に形成されていて順番に結線されていてもよい。
【0029】
また、上述のような電子回路装置において、基板アンテナ配線とチップアンテナ配線とが上下方向で隣接していてもよい。
【0030】
また、上述のような電子回路装置において、電子回路基板に複数の電子回路チップが積層されており、複数の電子回路チップのチップアンテナ配線が上下方向で隣接していてもよい。
【0031】
また、上述のような電子回路装置において、基板アンテナ配線の内部にコイルコアが形成されていてもよい。
【0032】
また、上述のような電子回路装置において、チップアンテナ配線の内部にコイルコアが形成されていてもよい。
【0033】
また、上述のような電子回路チップにおいて、複数の電子回路基板を有し、複数の電子回路基板の各々に基板アンテナ配線が形成されており、複数の電子回路基板の基板アンテナ配線の軸心方向が略平行でもよい。
【0034】
本発明の電子回路基板は、上面および下面が前後方向および左右方向と平行な電子回路基板に少なくとも一個の電子回路チップが積載されている電子回路装置の電子回路基板であって、軸心方向が左右方向と平行で電子回路チップの軸心方向が略平行なコイル状のチップアンテナ配線と無線通信するコイル状の基板アンテナ配線を有する。
【0035】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0036】
さらに、本発明では前後左右上下の方向を規定しているが、これは本発明の構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定したものであり、本発明を実施する場合の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【発明の効果】
【0037】
本発明の電子回路装置では、軸心方向が略平行に位置している電子回路基板の無線アンテナ配線と電子回路チップの無線アンテナ配線とが電磁結合するので、この電磁結合により電子回路基板と電子回路チップとが無線通信することができる。このため、従来のワイヤレスTSVなどに比較して、電子回路基板と電子回路チップとが簡単な構造で良好に無線通信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態の電子回路装置の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図2】電子回路基板に形成された基板アンテナ配線の構造を示す模式的な斜視図である。
【図3】(a)は上部アンテナ配線の構造を示す模式的な平面図、(b)は前部アンテナヴィアと後部アンテナヴィアとの構造を示す模式的な平面図、(c)は下部アンテナ配線の構造を示す模式的な平面図、である。
【図4】一の変形例の電子回路装置の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図5】他の変形例の電子回路装置の内部構造を示す模式的な分解斜視図である。
【図6】電子回路装置の製造工程の一部を示す模式的な縦断側面図である。
【図7】一従来例の電子回路装置の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図8】電子回路基板の外観を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施の一形態を図1ないし図3を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0040】
本実施の形態の電子回路装置1000は、一従来例の電子回路装置300と同様に、図1に示すように、電子回路基板100の上面に少なくとも一個の電子回路チップ200が積載されている。
【0041】
ただし、本実施の形態の電子回路装置1000は、電子回路基板100に形成されている軸心方向が左右方向と略平行なコイル状の基板アンテナ配線110と、電子回路チップ200に形成されていて基板アンテナ配線110と軸心方向が略平行なコイル状のチップアンテナ配線210と、を有する。
【0042】
より具体的には、本実施の形態の電子回路基板100は、図1ないし図3に示すように、上面および下面が前後方向および左右方向と平行(面内方向)な回路基板本体101と、回路基板本体101の上面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の上部アンテナ配線111と、回路基板本体101の下面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の下部アンテナ配線112と、回路基板本体101を上面から下面まで貫通していて複数の上部アンテナ配線111の前端と複数の下部アンテナ配線112の前端とを個々に結線している複数の前部アンテナヴィア113と、回路基板本体101を上面から下面まで貫通していて複数の上部アンテナ配線111の後端と複数の隣接する下部アンテナ配線112の後端とを個々に結線している複数の後部アンテナヴィア114と、を有する。
【0043】
そして、上述のように連続的に結線されている複数の上部アンテナ配線111と複数の前部アンテナヴィア113と複数の下部アンテナ配線112と複数の後部アンテナヴィア114とで軸心方向が左右方向と略平行な一重コイル状の基板アンテナ配線110が形成されている。
【0044】
また、本実施の形態の電子回路チップ200は、上面および下面が前後方向および左右方向と平行な平板状の回路絶縁基体201と、回路絶縁基体201の上面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の上部アンテナ配線211と、回路絶縁基体201の下面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の下部アンテナ配線212と、回路絶縁基体201を上面から下面まで貫通していて複数の上部アンテナ配線211の前端と複数の下部アンテナ配線212の前端とを個々に結線している複数の前部アンテナヴィア213と、回路絶縁基体201を上面から下面まで貫通していて複数の上部アンテナ配線211の後端と複数の隣接する下部アンテナ配線212の後端とを個々に結線している複数の後部アンテナヴィア214と、を有する。
【0045】
そして、上述のように連続的に結線されている複数の上部アンテナ配線211と複数の前部アンテナヴィア213と複数の下部アンテナ配線212と複数の後部アンテナヴィア214とで軸心方向が左右方向と略平行な一重コイル状のチップアンテナ配線210が形成されている。
【0046】
そして、本実施の形態の電子回路装置1000では、電子回路基板100の基板アンテナ配線110と電子回路チップ200のチップアンテナ配線210との軸心方向が略平行に位置している。
【0047】
また、基板アンテナ配線110とチップアンテナ配線210とが上下方向で隣接するとともに、電子回路基板100に積層されている複数の電子回路チップ200のチップアンテナ配線210も上下方向で隣接している。
【0048】
より具体的には、本実施の形態の電子回路装置1000でも、電子回路基板100は、プリント配線などにより上面と下面とに各種の配線121が形成されている。電子回路チップ200は、内部に各種の電子回路が形成されている(図示せず)。
【0049】
そして、電子回路基板100および電子回路チップ200の外周部には、接続端子220,120が銅箔などの導体で形成されている。これらの接続端子220,120に、上述の配線121や電子回路が適宜接続されている。
【0050】
さらに、この電子回路基板100および電子回路チップ200の接続端子220,120がボンディングワイヤ122でワイヤボンディングされている。なお、電子回路基板100および複数の電子回路チップ200は、層間絶縁膜230で接合されている。
【0051】
上述のような構成において、本実施の形態の電子回路装置1000では、電子回路基板100の連続的に結線されている複数の上部アンテナ配線111と複数の前部アンテナヴィア113と複数の下部アンテナ配線112と複数の後部アンテナヴィア114とで軸心方向が左右方向と略平行な一重コイル状の基板アンテナ配線110が形成されている。
【0052】
同様に、電子回路チップ200の連続的に結線されている複数の上部アンテナ配線211と複数の前部アンテナヴィア213と複数の下部アンテナ配線212と複数の後部アンテナヴィア214とで軸心方向が左右方向と略平行な一重コイル状のチップアンテナ配線210が形成されている。
【0053】
そして、本実施の形態の電子回路装置1000では、上述のような電子回路基板100の基板アンテナ配線110と電子回路チップ200のチップアンテナ配線210とが略平行に位置している。
【0054】
このため、電子回路基板100の基板アンテナ配線110と電子回路チップ200のチップアンテナ配線210とが電磁結合するので、この電磁結合により電子回路基板100と電子回路チップ200とが、従来のワイヤレスTSVなどに比較して良好に無線通信することができる。
【0055】
なお、この電磁結合は積層されている複数の電子回路チップ200のチップアンテナ配線210でも実現される。このため、複数の電子回路チップ200と電子回路基板100とが簡単な構造で良好に無線通信することができる。
【0056】
また、本実施の形態の電子回路装置1000では、電子回路基板100および電子回路チップ200の電源とアースとは、外周部の接続端子220,120によりボンディングワイヤ122で接続されている。
【0057】
このため、大出力の通電が必要な電源とアースは、従来と同様に外周部の接続端子220,120によりボンディングワイヤ122で通電され、小出力で充分な信号通信は、電子回路基板100の基板アンテナ配線110と電子回路チップ200のチップアンテナ配線210で実行される。
【0058】
なお、本実施の形態の電子回路装置1000では、上述のように電子回路基板100と電子回路チップ200とが無線通信するため、基板アンテナ配線110とチップアンテナ配線210とが電磁界を発生する。
【0059】
このため、このような電磁界が電子回路チップ200の各種回路や電子回路基板100の配線121にノイズを発生させる可能性もある。そこで、これが問題となる場合には、必要な箇所に磁気シールド層を形成してもよい(図示せず)。
【0060】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では電子回路基板100の基板アンテナ配線110と電子回路チップ200のチップアンテナ配線210とが、いわゆる空芯コイルとして形成されていることを例示した。
【0061】
しかし、上述のような基板アンテナ配線110やチップアンテナ配線210の内部に金属の層膜などでコイルコアが形成されていてもよい(図示せず)。この場合、基板アンテナ配線110とチップアンテナ配線210との電磁結合を強化することができるので、より良好な無線通信を可能とすることができる。
【0062】
また、上記形態では電子回路装置1000が電子回路基板100と電子回路チップ200とを有し、その電子回路基板100の基板アンテナ配線110と電子回路チップ200のチップアンテナ配線210とが電磁結合により無線通信することを例示した。
【0063】
しかし、図4に示すように、電子回路装置2000が複数の電子回路基板100を有し、その電子回路基板100の基板アンテナ配線110が略平行に位置することにより、複数の電子回路基板100が基板アンテナ配線110の電磁結合により無線通信してもよい。
【0064】
この場合、複数の電子回路基板100が、従来のワイヤレスTSVなどに比較して良好に無線通信することができる。なお、当然ながら、このような電子回路装置2000の電子回路基板100にも電子回路チップ200が積載されている(図示せず)。
【0065】
さらに、上記形態では電子回路基板100の基板アンテナ配線110と電子回路チップ200のチップアンテナ配線210とが、一重のコイル構造に形成されていることを例示した。
【0066】
しかし、図5に例示する電子回路基板400のように、上面および下面が前後方向および左右方向と平行な回路基板本体を一部として層間絶縁膜からなる複数の回路絶縁基体102が積層されており、複数の回路絶縁基体102の間隙に形成されている複数のアンテナ配線411と貫通している複数のアンテナヴィア412とが連続的に結線されて軸心方向が左右方向と略平行な平面コイル状の基板アンテナ配線410が形成されていてもよい。
【0067】
このような多層構造を利用して平面コイル状に形成された基板アンテナ配線410でも、軸心方向が略平行な無線アンテナ配線(図示せず)と電磁結合により無線通信することができる。
【0068】
さらに、上述のような電子回路基板400において、図示するように、通電の回転方向が同一の複数の基板アンテナ配線410が左右方向に並列に形成されていて順番に結線されていてもよい。
【0069】
この場合、基板アンテナ配線410は、極めて良好に外部の平行な無線アンテナ配線(図示せず)と電磁結合することができるので、より良好に無線通信することができる。なお、当然ながら、このような基板アンテナ配線410を、電子回路チップ(図示せず)の内部に形成してもよい。
【0070】
ここで、上述のような多層構造の電子回路基板400の製造方法を、図6を参照して以下に簡単に説明する。まず、図6(a)に示すように、回路基板本体101の下面に配線121を形成し、これに結線されるアンテナヴィア412を形成する。
【0071】
つぎに、図6(b)に示すように、回路基板本体101の上面にアンテナ配線411をプリント配線で形成する。図6(c)に示すように、このアンテナ配線411と回路基板本体101との上面に層間絶縁膜からなる回路絶縁基体102を成膜し、この回路絶縁基体102に、前述の回路基板本体101のアンテナヴィア412に連通するアンテナヴィア412と、アンテナ配線411の両端に結線されるアンテナヴィア412とを形成する。
【0072】
以下同様に、図6(d)に示すように、アンテナ配線411を形成して回路絶縁基体102を成膜し、アンテナヴィア412を形成することにより、図5に示すように、複数の回路絶縁基体102の間隙に形成されている複数のアンテナ配線411と貫通している複数のアンテナヴィア412とが連続的に結線されて軸心方向が左右方向と略平行な平面コイル状の基板アンテナ配線410を形成することができる。
【0073】
なお、当然ながら、上述のような多重コイル状の基板アンテナ配線410やチップアンテナ配線の内部に、金属の層膜などでコイルコアが形成されていてもよい(図示せず)。
【0074】
また、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0075】
100 電子回路基板
101 回路基板本体
102 回路絶縁基体
110 基板アンテナ配線
111 上部アンテナ配線
112 下部アンテナ配線
113 前部アンテナヴィア
114 後部アンテナヴィア
121 配線
122 ボンディングワイヤ
200 電子回路チップ
201 回路絶縁基体
210 チップアンテナ配線
211 上部アンテナ配線
212 下部アンテナ配線
213 前部アンテナヴィア
214 後部アンテナヴィア
220,120 接続端子
230 層間絶縁膜
300 電子回路装置
310 電子回路基板
311 配線
312,322 接続端子
320 電子回路チップ
323 ボンディングワイヤ
324 接着層
400 電子回路基板
410 基板アンテナ配線
411 アンテナ配線
412 アンテナヴィア
1000 電子回路装置
2000 電子回路装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面が前後方向および左右方向と平行な電子回路基板に少なくとも一個の電子回路チップが積載されている電子回路装置であって、
前記電子回路基板に形成されている軸心方向が左右方向と略平行なコイル状の基板アンテナ配線と、
前記電子回路チップに形成されていて前記基板アンテナ配線と軸心方向が略平行なコイル状のチップアンテナ配線と、
を有する電子回路装置。
【請求項2】
前記電子回路基板は、
上面および下面が前後方向および左右方向と平行な回路基板本体と、
前記回路基板本体の上面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の上部アンテナ配線と、
前記回路基板本体の下面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の下部アンテナ配線と、
前記回路基板本体を上面から下面まで貫通していて複数の前記上部アンテナ配線の前端と複数の前記下部アンテナ配線の前端とを個々に結線している複数の前部アンテナヴィアと、
前記回路基板本体を上面から下面まで貫通していて複数の前記上部アンテナ配線の後端と複数の隣接する前記下部アンテナ配線の後端とを個々に結線している複数の後部アンテナヴィアと、を有し、
連続的に結線されている複数の前記上部アンテナ配線と複数の前記前部アンテナヴィアと複数の前記下部アンテナ配線と複数の前記後部アンテナヴィアとで一重コイル状の前記基板アンテナ配線が形成されている請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項3】
前記電子回路チップは、
上面および下面が前後方向および左右方向と平行な平板状の回路絶縁基体と、
前記回路絶縁基体の上面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の上部アンテナ配線と、
前記回路絶縁基体の下面に左右方向と長手方向が交差する細長形状に各々形成されていて左右方向に並列に形成されている複数の下部アンテナ配線と、
前記回路絶縁基体を上面から下面まで貫通していて複数の前記上部アンテナ配線の前端と複数の前記下部アンテナ配線の前端とを個々に結線している複数の前部アンテナヴィアと、
前記回路絶縁基体を上面から下面まで貫通していて複数の前記上部アンテナ配線の後端と複数の隣接する前記下部アンテナ配線の後端とを個々に結線している複数の後部アンテナヴィアと、を有し、
連続的に結線されている複数の前記上部アンテナ配線と複数の前記前部アンテナヴィアと複数の前記下部アンテナ配線と複数の前記後部アンテナヴィアとで一重コイル状の前記チップアンテナ配線が形成されている請求項1または2に記載の電子回路装置。
【請求項4】
前記基板アンテナ配線と前記チップアンテナ配線とが上下方向で隣接している請求項1ないし3の何れか一項に記載の電子回路装置。
【請求項5】
前記電子回路基板に複数の前記電子回路チップが積層されており、
複数の前記電子回路チップの前記チップアンテナ配線が上下方向で隣接している請求項1ないし4の何れか一項に記載の電子回路装置。
【請求項6】
前記基板アンテナ配線の内部にコイルコアが形成されている請求項1ないし5の何れか一項に記載の電子回路装置。
【請求項7】
前記チップアンテナ配線の内部にコイルコアが形成されている請求項1ないし6の何れか一項に記載の電子回路装置。
【請求項8】
前記電子回路基板は、
上面および下面が前後方向および左右方向と平行な回路基板本体と、
前記回路基板本体を一部として積層されている複数の回路絶縁基体と、
複数の前記回路絶縁基体の間隙に形成されている複数のアンテナ配線と、
複数の前記回路絶縁基体を貫通している複数のアンテナヴィアと、を有し、
複数の前記アンテナ配線と複数の前記アンテナヴィアとが連続的に結線されて平面コイル状の前記基板アンテナ配線が形成されている請求項1に記載の電子回路装置。
【請求項9】
通電の回転方向が同一の複数の前記基板アンテナ配線が左右方向に並列に形成されていて順番に結線されている請求項8に記載の電子回路基板。
【請求項10】
前記電子回路チップは、
積層されている複数の回路絶縁基体と、
複数の前記回路絶縁基体の間隙に形成されている複数のアンテナ配線と、
複数の前記回路絶縁基体を貫通している複数のアンテナヴィアと、を有し、
複数の前記アンテナ配線と複数の前記アンテナヴィアとが連続的に結線されて平面コイル状の前記チップアンテナ配線が形成されている請求項1,2,8,9の何れか一項に記載の電子回路装置。
【請求項11】
通電の回転方向が同一の複数の前記チップアンテナ配線が左右方向に並列に形成されていて順番に結線されている請求項10に記載の電子回路チップ。
【請求項12】
前記基板アンテナ配線と前記チップアンテナ配線とが上下方向で隣接している請求項8ないし11の何れか一項に記載の電子回路装置。
【請求項13】
前記電子回路基板に複数の前記電子回路チップが積層されており、
複数の前記電子回路チップの前記チップアンテナ配線が上下方向で隣接している請求項8ないし12の何れか一項に記載の電子回路装置。
【請求項14】
前記基板アンテナ配線の内部にコイルコアが形成されている請求項8ないし13の何れか一項に記載の電子回路装置。
【請求項15】
前記チップアンテナ配線の内部にコイルコアが形成されている請求項8ないし14の何れか一項に記載の電子回路装置。
【請求項16】
複数の前記電子回路基板を有し、
複数の前記電子回路基板の各々に前記基板アンテナ配線が形成されており、
複数の前記電子回路基板の前記基板アンテナ配線の軸心方向が略平行な請求項1ないし15の何れか一項に記載の電子回路装置。
【請求項17】
上面および下面が前後方向および左右方向と平行な電子回路基板に少なくとも一個の電子回路チップが積載されている電子回路装置の前記電子回路基板であって、
軸心方向が左右方向と平行で前記電子回路チップの軸心方向が略平行なコイル状のチップアンテナ配線と無線通信するコイル状の基板アンテナ配線を有する電子回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−146615(P2011−146615A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7820(P2010−7820)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】