説明

電子回路装置の製造方法

【課題】種々の配置の回路基板に対応し得る、少ない樹脂量で実現できる封止方法を新たに見出して、電子回路装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】電子部品13を搭載した回路基板12を収容する筐体11に液状化した樹脂材料30を導入し、導入した樹脂材料30の表面をカバー部材20で覆って押し込み、部分的に樹脂材料30を押し上げた後に硬化させる、電子回路装置の製造方法であって、上記カバー部材20は、電子部品13を搭載した回路基板12を覆うように形成され、回路基板12に搭載した最も背の高い電子部品13に対応する位置に液状化した樹脂材料30が通過し得る孔を有しており、樹脂材料30の表面を当該カバー部材20で押し込むことにより液状化した樹脂材料30が電子部品13を封止するとともに上記孔から余剰の樹脂材料30が流出するよう構成されている、上記の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子回路装置の製造方法に関する。より詳細には、封止のために充填された樹脂とともに、電子部品を搭載した回路基板が筐体内に収容されてなる電子回路装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路装置においては、防塵・防湿・絶縁等の信頼性を向上させるため、各種樹脂を用いて回路基板の封止処理を行うことが多い。そのための樹脂材料はコストが高く、また、軽量化の阻害要因になり得る。そのため、樹脂材料の使用量をなるべく少なくすることが望まれる。
【0003】
電子回路装置における樹脂封止として、一般的には、底面が平坦である筐体に回路基板を組み込み、そこに樹脂を流し込む方法が行われている。しかし、当該方法は、搭載される電子部品の高さにばらつきがある場合に、最も背の高い部品が覆われるまで樹脂を充填する必要があるから、それ以外の部分には不必要に多くの樹脂を導入することになってしまう。
【0004】
回路基板の表裏両面に電子部品を搭載し、ここで背の高い電子部品を回路基板の下側に搭載する方法がある。図3は従来方法による電子回路装置の一例の模式断面図である。この方法では、回路基板12の下側に搭載される電子部品13の凹凸形状に適合するように、筐体11を所定の形状に予め加工しておく。こうすることで、下側に搭載された背の高い電子部品13については、筐体11で囲まれることになるので、当該回路基板12の下側に搭載された電子部品13を封止するための樹脂材料30の量を比較的少なくすることができる。回路基板12の上側には背の低い電子部品13を搭載しているので、必要な樹脂材料30の量を全体的に減らすことが可能である。
【0005】
特許文献1によれば、回路基板に搭載された電子部品の本体部は露出させ、導電部のみを樹脂封止することが開示されている。
特許文献2によれば、筐体の底面部の内周面に沿って全周に回路基板の裏面側の沿面部と密着する浸入防止手段を設けることにより、浸入防止手段の内側には封止のための樹脂を用いないようにして樹脂量を減らすことが開示されている。
特許文献3によれば、筐体内に、樹脂充填領域と非充填領域とに区画する区画壁を設けて、樹脂を充填する領域を制限することにより樹脂量を減らすことが開示されている。
特許文献4によれば、筐体内に貫通孔をもつカバーにより樹脂モールドを行う領域と行わない領域に区画することにより、樹脂量を減らすことが開示されている。
特許文献5によれば、電子部品を搭載した回路基板の両面に樹脂封止部を設け、回路基板の下面側の樹脂封止部には複数の開口を設けることにより、信頼性の確保と放熱性能の向上を図ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−86116号公報
【特許文献2】特開2005−101291号公報
【特許文献3】特開2005−142213号公報
【特許文献4】特開2008−277591号公報
【特許文献5】特開2010−86952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記参照した図3のように、回路基板12の下側に背の高い電子部品13を搭載する方法によると、筐体11を複雑な形状に加工しなければならない。このため、既存の電子回路装置については設計変更を余儀なくされることが多く、コスト高になりやすい。また、複雑な形状の筐体11内部にまで樹脂材料30が充填しきれずに、空気溜りが発生する懸念がある。このような空気溜りを防ぐためには、樹脂材料30の充填速度を遅くしたり、充填工程を数回に分けて行ったり、真空環境下で脱泡しながら樹脂充填を行うなどが考えられる。しかし、いずれも製法として複雑になったり、工程が増えたり、特殊設備の導入を要したり、真空不可部品が使用できないといった使用部品の制限が発生したりするという難点がある。
【0008】
また、例えば、特許文献1の技術のように、一定の高さまで樹脂材料を充填し、背の高い部品の一部は露出させる場合は、部品と樹脂の界面が発生し、界面では剥離などが起こりやすく、耐湿信頼性の低下が懸念される。さらに、例えば、部分的に囲いなどを設けて充填作業を分ける方法も本発明者らは検討したが、作業効率が悪くなる。その上、別途の充填作業の結果として、充填工程の違いに起因して樹脂界面が発生することになり、剥離などが生じやすく耐湿信頼性の低下が懸念される。
【0009】
本発明は、筐体の形状を複雑にすることなく、種々の配置の回路基板に対応が可能であり、少ない樹脂量で実現できる封止方法を新たに見出して、電子回路装置の製造方法を提供することを課題とする。さらに、本発明は、少ない樹脂量で封止されてなる電子回路装置および上記製造方法に適した部材の提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、以下のような本発明を完成した。
[1]電子部品を搭載した回路基板を収容する筐体に液状化した樹脂材料を導入し、導入した樹脂材料の表面をカバー部材で覆って押し込み、部分的に樹脂材料を盛り上げ、その後、樹脂材料を硬化させる電子回路装置の製造方法である。上記のカバー部材は、電子部品を搭載した回路基板を覆うように形成されている。上記の回路基板に搭載した最も背の高い電子部品に対応する位置には、液状化した樹脂材料が通過し得る孔を有している。樹脂材料の表面を当該カバー部材で押し込むことにより液状化した樹脂材料が電子部品を封止することができる。上記孔からは、余剰の樹脂材料が流出することができるよう構成されている。このようなカバー部材を用いた製造方法である。
[2]上記最も背の高い電子部品の高さが筐体の壁部の高さよりも低くした[1]の製造方法である。
[3]樹脂材料が硬化した後にカバー部材を除去する[1]又は[2]の製造方法である。
[4]カバー部材は格子状に配置されたリブを有する[1]〜[3]のいずれかの製造方法である。
[5]本発明の電子回路装置は、背の高さの異なる複数の電子部品を搭載した回路基板と、前記電子部品を覆う樹脂材料からなる封止部材と、を有する。この電子回路装置では、回路基板からの封止部材の標準的な高さは、回路基板に搭載した最も背の高い電子部品より低く、かつ、背の高さがほぼ同等とみなせる複数の電子部品の天端の高さを覆う。封止部材は上記標準的な高さから突き出た電子部品の周囲および天端部分を覆うように延びている。
[6]本発明では電子部品を搭載した回路基板を覆う際に使用するカバー部材も提供する。このカバー部材は平坦部分と、平坦部分から筒状に突出した突出部分とを有する。このカバー部材は、背の高さがほぼ同等とみなせる複数の電子部品のそれぞれの天端の高さを覆う平坦部分を回路基板に対して平行に設置される。このとき、回路基板に搭載した背の高い電子部品の周囲を前記突出部分が覆うことができるように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子部品が搭載されない領域や背の低い電子部品が搭載される領域では、樹脂材料を回路基板に近い位置にまで押し込んで硬化させるため、背の高い電子部品が共存していても、無駄な樹脂材料の使用を抑制することができる。この樹脂材料の抑制により、コスト低減および重量減が達成される。カバー部材で液状化した樹脂材料を押し込むから、硬化後の樹脂材料の形状は基本的にはカバー部材の形状に依存し、硬化後の樹脂材料を所望の形状に容易に成型することができる。
【0012】
本発明の好適態様によれば、筐体の壁部の高さが最も背の高い部品の高さよりも高く構成され、カバー部材で樹脂材料の液面(表面)を押し込む際に、筐体の外部に不所望に樹脂材料が流出することを防ぐことができる。
本発明の別の好適態様によれば、カバー部材にリブが付与されており、カバー部材の強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の製造方法を模式的に表す断面図である。
【図2】本発明の製造方法の一工程における平面図および側面透視図である。
【図3】従来方法による電子回路装置の一例の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では、電子部品を搭載した回路基板を樹脂で封止する際に所定形状のカバー部材が用いられる。図1は本発明の製造方法を模式的に示す断面図である。図1(B)は、筐体11と、筐体11内に収容された回路基板12と、回路基板12に搭載された電子部品13とを示す模式的な断面図である。
【0015】
本発明で用いる回路基板12およびそこに搭載される電子部品13は特に限定されない。回路基板12は一般的には板状の絶縁体であり、その表面及び/又は内部に導電材料で所望の配線が形成されている。電子部品13は回路基板12に所定の回路構造を構成するように搭載されている。電子部品13はその種類に応じて種々の高さを有しており、回路基板12とそこに搭載された電子部品13との断面は所定の凹凸形状を呈する。本発明では、電子部品13の「背の高さ」は、回路基板12の電子部品を搭載する基板面からの高さを意味する。電子部品13の配置は図示された態様に限定されない。
【0016】
従来法では、背の高い電子部品13を全て樹脂で封止しようとすると、当該背の高い電子部品13のみならず、背の低い電子部品13や電子部品13が存在しない領域にも、背の高い電子部品13を覆うに足る量(厚さ)の樹脂材料を充填せねばならず、コスト高および重量増の要因になっていた。
【0017】
本発明によれば、回路基板12は筐体11内に収容される。筐体11は液状化した樹脂材料を留めることにより回路基板12および電子部品13の周囲を樹脂で充填できるようになっていれば、その形状や材質は特に限定はない。例えば、筐体11は、上部のみが開放している直方体状であって、樹脂材料と化学反応を起こさない材料から構成される。
【0018】
本発明では、最も背の高い電子部品13の高さが、筐体11の壁部の高さより低くなることが好ましい。これにより、後述するカバー部材で樹脂材料の液面(表面)を押し込む際に、筐体11の外部に不所望に樹脂材料が流出することを防ぐことができる。すなわち、本発明によれば、樹脂材料を多く充填して余剰の樹脂材料が生じる場合であっても、その余剰の樹脂材料がカバー部材の孔から溢れ出すから、樹脂量の管理ができる。また、本発明によれば、カバー部材で覆われた状態で樹脂材料が硬化するから、硬化中に樹脂表面に汚れなどが付着しにくく、硬化後の樹脂材料の表面が清浄である。
【0019】
好ましくは、筐体11には凹部や凸部が適宜形成されており、それによって、後述するカバー部材の位置決めを容易にしたり、カバー部材を安定して押さえつけたりすることができる。
【0020】
本発明によれば、図1(B)のように筐体11内に電子部品13が搭載された回路基板12が収容された状態で、液状化した樹脂材料が導入される。図1(C)は、液状化した樹脂材料を筐体内に導入する工程を模式的に示す断面図である。樹脂充填ノズル31から、樹脂材料30が筐体11内に導入され、回路基板12および電子部品13の周囲に充填される。ただし、本発明によれば、最も背の高い電子部品13の最高部にまで達する量の樹脂材料30を導入する必要は無く、それより少ない量の樹脂材料30の導入で足りる。
【0021】
本発明では、樹脂材料30の材質等は特に限定はなく、熱・光・水分などで硬化することができる樹脂材料を適宜使用することができる。樹脂材料30が液状化しているということは、樹脂充填ノズル31から筐体11内に樹脂材料30を導入したときに回路基板12の周囲に回り込むに足る流動性を有しているという趣旨であり、粘性、弾性などは特に限定はない。溶剤とともに使用する樹脂材料であっても、溶剤フリーの樹脂材料であっても、いずれも、本発明において使用することができる。
【0022】
本発明によれば、樹脂材料30を導入した後に、導入した樹脂材料30の面をカバー部材20で覆って、所定の深さまで押し込んだ後に樹脂材料30を硬化させる。図1(A)はカバー部材の模式断面図であり、図1(D)および(E)は、カバー部材で樹脂材料を覆って押し込んだ後に、樹脂材料を硬化させる工程を模式的に表す断面図である。図面中の下向き矢印は、この方向にカバー部材20を押し込むことを表現している。このとき、電子部品13が搭載されていない領域や背の低い電子部品13が搭載されている領域において、カバー部材20を所定の深さまで押し込むことにより、前記領域から樹脂材料30が押し出され、背の高い電子部品13の周囲を覆うようになり、樹脂材料30の使用量を減らすことができる。
【0023】
具体的には、製造しようとする電子回路装置における電子部品13の配置に適合するようにカバー部材20が設計される。より詳細には、カバー部材20のうち、電子部品13が存在しない領域や背の低い複数の電子部品13が搭載される領域を覆う部分は、平坦で下方に深く出っ張っている。逆に、背の高い電子部品13が搭載される領域を覆う部分は、背の低い電子部品13部分を覆うカバー部材20の平坦部分を基準にしてみると、背の高い電子部品13の上半部の周囲を覆う筒状のように突出して形成されている。つまり、回路基板12に対する電子部品13の実装状況に追従した形状のカバー部材20を構成する。また、換言すると、カバー部材20は、回路基板12とそこに搭載された電子部品13との凹凸形状を反転したような凹凸形状を備えることが好ましい。すなわち、複数存在する背の低い電子部品13同士でも、高さが異なるので、それらの電子部品13の高さに合わせた平坦部分が設けられた凹凸形状になっている。平端部分の凹凸形状は、背の高さがほぼ同等とみなせる複数の背の低い電子部品13の天端の高さを覆うように、多少の高さの異なる平坦部分がつなぎ合わさって構成されている。このようなことを考慮して、電子回路装置を設計する際に、電子部品13の配置による凹凸形状が決定するので、それを型取ることにより容易に、当該電子回路装置に適合するカバー部材20を製造することができる。カバー部材20を押し込んだ際に電子部品13との間に所定のクリアランスが生じるようにカバー部材20を設計することが好ましく、当該クリアランスは、封止用の樹脂材料30を形成すべき厚さを基準にして設計すればよい。上記のように平坦部と平坦部から筒状に突出した突出部とを有するカバー部材もまた本発明の一つの態様である。
【0024】
カバー部材20を押し込む際には、適当な形状の治具(図示せず)を用いることができる。治具は、押し込み量が調節できるように構成されることが好ましい。筐体11に位置決めのための凹部や凸部を設けた場合に、それに対応する形状の治具を用いることにより、押し込み量を容易に調節することができる。このように構成することにより、種類の異なるカバー部材20に対応して使用することができるようになる。
【0025】
本発明によれば、カバー部材20は、筐体11を覆うに足る大きさを有することが好ましく、それにより、カバー部材20を深く押し込む際に流動する樹脂材料30が筐体11外などに流出することを防ぐことができる。上述のように、筐体11に位置決め用の凹部や凸部などが形成されている場合には、カバー部材20の対応する位置が、上記凹部や凸部に対応する形状に施されていることが好ましい。
また、本発明によれば、筐体の形状を複雑にしなくてもよいので、液状化した樹脂材料が筐体内部で流動しやすく、電子部品の周囲に樹脂材料が満遍なく充填され、樹脂封止がより意義あるものになる。特殊な形状の筐体を新たに製造する必要は無く、既存の電子回路装置について、それに適合したカバー部材さえつくれば、電子回路装置自体の設計変更を要さずに、本発明を導入して樹脂材料の使用量を低減することができる。
【0026】
カバー部材20には、樹脂材料30が通過(貫通)し得る筒状の形成部分による孔が形成されている。カバー部材20を用いる際に最も背の高い電子部品13を覆う領域に前記孔が形成される。図1(D)では、背の高い電子部品13の上にカバー部材20が存在しない領域が表現されており、これらが孔である。樹脂材料30の液面をカバー部材20で押し込む際に、樹脂材料30と電子部品13との間や、樹脂材料30とカバー部材20との間などに空気が不所望に存在することがあり、カバー部材20を押し込むことにより、上記孔から空気を抜くことができる。カバー部材20を押し込むことにより、押し出される余剰の樹脂材料30が上記孔から流出することにより、最も背の高い電子部品13の上部も樹脂材料30で封止することができる。
【0027】
カバー部材20には好ましくはリブが設けられる。リブはカバー部材20に格子状に構成されることが好ましく、これによりカバー部材20の強度向上を図ることができる。後述の実施例においてリブを有するカバー部材20の例が示される。リブをカバー部材20の位置決め用の凸部として活用することもできる。
【0028】
好ましくは、カバー部材20は透明である。カバー部材20が透明であれば、カバー部材20を介して、導入した樹脂材料30の流動状態を目視その他の手段により容易に把握できるから、作業性および製造品質の向上が期待される。
【0029】
上述のようにカバー部材20を押し込んだ状態で樹脂材料30を硬化させる。樹脂材料30の硬化は樹脂材料30の種類などに応じて加熱や光照射など適宜の方法をとることができる。硬化中は、治具(図示せず)を用いることにより、カバー部材20を押し込んだ状態のままで固定しておくことが好ましい。樹脂材料30を硬化させることにより、回路基板12および電子部品13の周囲に硬化した樹脂材料30が充填してなる電子回路を得ることができる。樹脂材料30の硬化後に、カバー部材20を除去してもよいし、カバー部材20を装着したままにしてもよい。硬化した樹脂材料30が電子回路装置における封止部材の役割を担う。図1(F)は、本発明の製造方法により得られる電子回路装置の模式断面図である。この図の態様では、樹脂材料30の硬化後にカバー部材が除去されている。図示されるように、電子部品13が搭載されない領域や背の低い電子部品13が搭載される領域では、樹脂材料30を低い位置にまで押し込んで硬化させるため、背の高い電子部品13が共存していても、無駄な樹脂材料の使用を抑制することができ、コスト低減および重量減が達成される。このような方法などにより得られる電子回路装置もまた本発明の一態様である。この電子回路装置では、最も背の高い電子部品13より低い標準的な高さを想定する。この標準的な高さは、好ましくは、背の高さがほぼ同等とみなせる複数の電子部品13の天端を覆う高さである。硬化した樹脂材料30からなる封止部材は、その標準的な高さで設けられている。さらに、上記標準的な高さから突き出た電子部品13の周囲および天端部分にも封止部材が覆っていて突出部を構成している。
【0030】
樹脂材料30の硬化後にカバー部材20を除去するか否かは、製造対象の電子回路装置の用途などにより任意に決定することができる。樹脂材料30の硬化後にカバー部材20を除去する場合には、使用する樹脂材料30に対して離型性のよい材質でカバー部材20を製造すればよい。例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂等の多くの種類の樹脂材料に対しては、シリコーン系材料でカバー部材20を構成することにより優れた離型性を得ることができる。あるいは、樹脂材料30としてウレタン系樹脂を用いてカバー部材20をポリプロピレン製にすることでも優れた離型性を得ることができる。
【0031】
樹脂材料30の硬化後にカバー部材20を装着したままでもよい。例えば、カバー部材20を金属材料で構成して、そのような金属製のカバー部材20を樹脂材料30の硬化後に残すことで、得られる電子回路装置の強度向上に資することができる。
【0032】
カバー部材20の材質は、上記例示したシリコーン系材料や金属材料に限らず、例えば、セラミックス材料、ポリプロピレンなどといった各種有機樹脂材料、ガラスエポキシ等の複合材料等を特に制限無く用いることができる。
【0033】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に記載された態様に限定されるわけではない。
【実施例1】
【0034】
(カバー部材)
厚さ1.0mmのポリプロピレン製のカバー材料20を真空成型により形成した。寸法は148mm×123mmであり、電子部品13が搭載されない領域に対応する部分は4.5mmの深さの平坦に加工した。背の高い電子部品13が搭載される領域に対応する部分は3.5mmの深さの筒状に加工するとともに、電子部品13よりやや大きい孔をあけた。カバー部材には縦横それぞれ3等分する位置にリブを設けて強度向上を図った。
【0035】
(回路基板及び電子部品)
回路基板12の寸法は130mm×120mm、高さは1.6mmとした。背の高い電子部品13として、電解コンデンサ(高さ10.5mm)、トランス(高さ7.6mm)およびコネクタ(6.6mm)を配置した。その他、背の低い電子部品13を配置した。背の低い電子部品13のうちで最も背の高いものはコイル(高さ3.7mm)であった。
【0036】
(筐体)
内寸が150mm×125mm、高さが18mmの上方が開放した直方体状の筐体11を、厚さ2mmのノリル材で構成した。
【0037】
(樹脂材料の導入)
粘度700〜1500mPa・sのウレタン系樹脂(サンユレック社製、SU−2180AB)を、樹脂充填ノズルを用いて筐体内に導入した。
【0038】
(カバー部材による押し込み、樹脂材料の硬化)
樹脂材料を導入した後に、カバー部材で樹脂材料の液面を覆い、さらに押し治具でカバー部材を押し付けた。図2(A)は実施例における筐体内の電子部品13の配置を表す平面図であり、図2(B)はその断面透視図である。筐体11の壁部の淵にカバー部材20が当たるまで押し治具40で押し付けた。なお、図2(A)では押し治具の描写を省略している。上述のように、カバー部材20は4.5mmまたは3.5mmの深さに加工されており、樹脂材料30が押し付けられることにより、背の高い電子部品13の上にまで樹脂材料30が回りこむに至った。上述のように、カバー部材20は、縦横両方向にリブ21が形成された。樹脂材料30が押し付けられることにより、カバー部材20に形成した孔から余剰の樹脂材料30が流出し、最も背の高い電子部品13(電解コンデンサ)の上方にも樹脂材料30が覆うことになった。この状態で1〜3時間、炉に投入することにより樹脂材料30を硬化させた。
【0039】
(カバー部材の除去)
樹脂材料30が硬化した後に、押し治具40による荷重を開放し、さらに、カバー部材20を除去して、電子回路装置を得た。すべての電子部品30が完全に樹脂材料30で封止された。この実施例における樹脂材料の導入量は190gであった。
【0040】
[比較例1]
実施例1と同様の筐体、回路基板、電子部品および樹脂材料を用いて電子回路装置を製造した。ただし、カバー部材は用いずに、最も背の高い電子部品(電解コンデンサ)が完全に埋没する高さにまで樹脂材料を導入した。すなわち、回路基板において電子部品が存在しない領域や背の低い電子部品が搭載される領域においても、電解コンデンサが完全に埋没するに足る高さ(厚さ)の樹脂材料が導入された。樹脂材料の導入後、樹脂材料を硬化させて電子回路装置を得た。このときの樹脂材料の導入量は、250gであった。
【0041】
以上のように、実施例1では、比較例1の場合と比較して、電子回路装置の製造のために導入した樹脂材料30を24%削減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、既存の電子回路装置においても、その設計を大きく変更することなく、封止樹脂の使用量を容易かつ顕著に低減できる可能性があり、電子回路装置の製造における有用性が大である。
【符号の説明】
【0043】
11:筐体、12:回路基板、13:電子部品、20:シート部材、21:リブ、30:樹脂材料、40:押し治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を搭載した回路基板を収容する筐体に液状化した樹脂材料を導入し、
導入した樹脂材料の表面をカバー部材で覆って押し込み、部分的に樹脂材料を押し上げ、その後樹脂材料を硬化させる電子回路装置の製造方法であって、
上記カバー部材は、電子部品を搭載した回路基板を覆うように形成され、回路基板に搭載した最も背の高い電子部品に対応する位置に液状化した樹脂材料が通過し得る孔を有しており、樹脂材料の表面を当該カバー部材で押し込むことにより液状化した樹脂材料が電子部品を封止するとともに、上記孔から余剰の樹脂材料が流出するよう構成されている、
上記の製造方法。
【請求項2】
上記最も背の高い電子部品の高さが筐体の壁部の高さよりも低い請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
樹脂材料が硬化した後にカバー部材を除去する請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
カバー部材は格子状に配置されたリブを有する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
背の高さの異なる複数の電子部品を搭載した回路基板と、前記電子部品を覆う樹脂材料からなる封止部材と、を有し、
回路基板からの封止部材の標準的な高さは、回路基板に搭載した最も背の高い電子部品より低く、背の高さがほぼ同等とみなせる複数の電子部品の天端の高さを覆うものであり、
封止部材は上記標準的な高さから突き出た電子部品の周囲および天端部分を覆うように延びている、
電子回路装置。
【請求項6】
平坦部分と、平坦部分から筒状に突出した突出部分とを有し、電子部品を搭載した回路基板を封止部材で覆う際に使用するカバー部材であって、
背の高さがほぼ同等とみなせる複数の電子部品のそれぞれの天端の高さを覆う前記平坦部分を回路基板に対して平行に設置したときに、前記回路基板に搭載した背の高い電子部品の周囲を前記突出部分が覆うことができるように構成されてなる、カバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−186371(P2012−186371A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49234(P2011−49234)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】