説明

電子回路

【課題】分布定数線路の長さの誤差または製造ばらつき等による特性変動を抑制すること。
【解決手段】制御端子と、第1端子と、第2端子と、を有する第1トランジスタT1と、制御端子に前記第1トランジスタの第2端子が接続し、第2端子に直流電源が接続される第2トランジスタT2と、前記第2トランジスタの第1端子から前記第1トランジスタの第2端子に直流電流を供給する、互いに独立した配線からなる複数の直流経路11、12と、前記複数の直流経路内にそれぞれ直列に設けられた分布定数線路L11、L12と、を具備する電子回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路に関し、例えば、カレントリユース増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
複数段の増幅回路において、後段のDC(直流)電流を前段のDC電流にも用いるカレントリユース増幅回路が知られている(例えば、非特許文献1)。ミリ波帯等での広帯域化のため、スタブとキャパシタとを設けたカレントリユース増幅回路が知られている(例えば、非特許文献2)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】2000 IEEE MTT-S Dig., Vol. 1, pp17-20
【非特許文献2】IEEE MICROWAVE AND WIRELESS COMPONENTS LETTERS VOL. 15, NO. 5, (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献2の増幅回路は、非特許文献1の増幅回路に比べ、広帯域化が可能となる。しかしながら、ミリ波等の高周波数においては、分布定数線路が短くなり、分布定数線路の長さの誤差または製造ばらつき等により、特性変動が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、分布定数線路の長さの誤差または製造ばらつき等による特性変動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、制御端子と、第1端子と、第2端子と、を有する第1トランジスタと、制御端子に前記第1トランジスタの第2端子が接続し、第2端子に直流電源が接続される第2トランジスタと、前記第2トランジスタの第1端子から前記第1トランジスタの第2端子に直流電流を供給する、互いに独立した配線からなる複数の直流経路と、前記複数の直流経路内にそれぞれ直列に設けられた分布定数線路と、を具備することを特徴とする電子回路である。本発明によれれば、分布定数線路の長さの誤差または製造ばらつき等による特性変動を抑制することができる。
【0007】
上記構成において、前記複数の直流経路に、それぞれ前記分布定数線路と直列に設けられた第1抵抗を具備する構成とすることができる。この構成によれば、第2トランジスタの制御端子の電位を定めることができる。
【0008】
上記構成において、前記第2トランジスタは複数並列に設けられ、前記複数の第2トランジスタの第1端子のそれぞれは、前記第1トランジスタの第2端子との間で、前記複数の直流経路のうち1つを介して接続されている構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1トランジスタは複数並列に設けられてなる構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1トランジスタは複数設けられ、前記複数の第1トランジスタの第1端子は、それぞれ、第2抵抗を介し接地されている構成とすることができる。この構成によれば、放熱性を高めることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1抵抗のそれぞれは、前記分布定数線路と前記第2トランジスタの第1端子との間に設けられ、前記第1抵抗と、前記複数の分布定数線路と、の間の複数の接続点は、キャパシタを介し接地されている構成とすることができる。この構成によれば、広帯域な電子回路を提供できる。
【0012】
上記構成において、前記複数の直流経路に設けられた前記分布定数線路のリアクタンス成分は同じである構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記複数の直流経路にそれぞれ設けられた前記第1抵抗の抵抗値は同じである構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分布定数線路の長さの誤差または製造ばらつき等による特性変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、比較例に係る増幅回路の回路図である。
【図2】図2は、実施例1に係る増幅回路の回路図である。
【図3】図3は、実施例2に係る増幅回路の回路図である。
【図4】図4は、実施例3に係る増幅回路の回路図である。
【図5】図5は、実施例3に係る増幅回路を半導体基板上にMMICとして形成した場合の平面模式図である。
【図6】図6(a)は、実施例3に係る増幅回路の周波数に対するS21を示した図、図6(b)は、周波数に対するS11およびS22を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、比較例を用いカレントリユース増幅回路について説明する。図1は、比較例に係る増幅回路の回路図である。図1を参照し、増幅回路102は、第1トランジスタT1および第2トランジスタT2を有する2段増幅回路である。第1トランジスタT1および第2トランジスタT2としてFET(Field Effect Transistor)の場合を例に説明する。
【0017】
増幅回路102の入力端子Tinと第1トランジスタT1のゲートG1(制御端子)との間には、キャパシタC7、分布定数線路L10およびL9が直列に接続されている。分布定数線路L10とL9との間のノードは、分布定数線路L8、キャパシタC6を介し接地されている。キャパシタC6には並列に抵抗R3が接続されている。キャパシタC7はDCカットキャパシタである。分布定数線路L8、L9およびL10、キャパシタC6は、入力端子Tinのインピーダンスと第1トランジスタT1の入力インピーダンスとを整合させる。抵抗R3は、ゲートG1の電位を定めている。
【0018】
第1トランジスタT1のソースS1(第1端子)は、キャパシタC5と抵抗R2とを介し接地されている。キャパシタC5と抵抗R2とは並列に接続されている。キャパシタC5は、ソースS1を高周波的に接地する。抵抗R2は、ソースS1を直流的に接地する。また、ソースS1の電位を定める。これにより、ソースS1が直流的かつ高周波的に接地される。第1トランジスタT1のドレインD1(第2端子)は信号経路20を介し第2トランジスタT2のゲートG2(制御端子)に接続されている。信号経路20は、直列に接続された分布定数線路L2およびL3を含む。
【0019】
第2トランジスタT2のソースS2(第1端子)は、キャパシタC1(第1キャパシタ)を介し接地されている。分布定数線路L2と分布定数線路L3との間のノードN1は、抵抗R1および分布定数線路L1を直列に介し、第2トランジスタT2のソースS2とキャパシタC1との間のノードN2に接続されている。分布定数線路L1、L2およびL3は、第1トランジスタT1と第2トランジスタT2との間のインピーダンスを整合させる。抵抗R1は、ソースS2とゲートG2との間に電位差を設け、ゲートG2に加わる電位を定める。さらに、抵抗R1は、第1トランジスタT1と第2トランジスタT2との間のインピーダンスを整合させる際に、抵抗整合的に機能する。
【0020】
第2トランジスタT2のドレインD2(第2端子)と出力端子Toutとの間には、分布定数線路L7、L6およびキャパシタC4が直列に接続されている。分布定数線路L7とL6との間のノードは、分布定数線路L5、キャパシタC3を介し接地されている。キャパシタC3には並列にDC電源Vdが接続されている。これにより、ドレインD2にDC電源Vdが接続され、DC電圧が印加される。分布定数線路L5、L6およびL7、キャパシタC3は、第2トランジスタT2の出力インピーダンスと出力端子Toutのインピーダンスとを整合させる。キャパシタC3およびC4はDCカットキャパシタである。
【0021】
入力端子Tinから入力した信号(例えば高周波信号)は、第1トランジスタT1のゲートG1に入力する。第1トランジスタT1は、ゲートG1に入力した信号を増幅し、ドレインD1から出力する。出力された信号は信号経路20を通過し第2トランジスタT2のゲートG2に入力する。第2トランジスタT2は、ゲートG2に入力した信号を増幅し、ドレインD2から出力する。増幅された信号は出力端子Toutから出力される。
【0022】
キャパシタC1により、第2トランジスタT2のソースS2はDC的には接地されていない。このため、DC電源Vdから供給された直流電流は、図1の破線矢印のように、分布定数線路L5、L7、第2トランジスタT2、ノードN2、分布定数線路L1、抵抗R1、ノードN1、分布定数線路L2、第1トランジスタT1および抵抗R2を介しグランドに流れる。このときの直流電流が流れる経路を直流経路とする。これにより、DC電源Vdの電圧は第1トランジスタT1と第2トランジスタT2とに直列に印加され、DC電源Vdから供給される直流電流は第1トランジスタT1と第2トランジスタT2とを流れる。これにより、各段のトランジスタに独立に電流を流す増幅回路に比べ、消費電流を削減することができる。なお、抵抗R1は、第2トランジスタT2のソースS2とゲートG2とに電位差を設ける機能を有している。
【0023】
しかしながら、増幅する信号の周波数が高くなった場合、例えばミリ波の場合、直流経路に用いられる分布定数線路が短くなる。よって、比較例のように直流経路が一本の構成の場合には、分布定数線路が短くなり、誤差または製造ばらつき等により分布定数線路の長さがばらつきやすく、分布定数線路の特性がばらつきやすくなる。以下、このような課題を解決する実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
図2は、実施例1に係る増幅回路の回路図である。図2のように、増幅回路100において、直流経路10(図示せず)がノードN1とノードN2との間において直流経路11と12とに並列に分割されている。直流経路11内には、分布定数線路L11と抵抗R11とが直接に設けられている。直流経路12内には、分布定数線路L12と抵抗R12とが直接に設けられている。その他の構成は、比較例の図1と同じであり、説明を省略する。
【0025】
実施例1によれば、第2トランジスタT2のソースS2から第1トランジスタT1のドレインD2に直流電流を供給する複数の直流経路11および12が互いに独立した配線からなる。これにより、直流経路11および12内に設けられている分布定数線路L11およびL12のインダクタンスを大きくできる。よって、分布定数線路L11およびL12のそれぞれの長さを比較例の分布定数線路L1より大きくできる。よって、誤差または製造ばらつきに起因した特性のばらつきを小さくできる。なお、実施例1では、直流経路11および12が2つの例を説明したが、互いに独立した配線からなる並列に接続された直流経路は3以上でもよい。
【0026】
また、複数の抵抗R11およびR12(第1抵抗)が、複数の直流経路11および12に、それぞれ複数の分布定数線路L11およびL12と直列に設けられている。抵抗R11およびR12により、第2トランジスタT2のゲートの電位を定めることができる。実施例1によれば、直流経路を複数設けることで、一本の直流経路で構成するよりも各直流経路のインダクタンスを大きくすることができ、分布定数線路を長く設計することができる。これにより、誤差または製造ばらつき等による分布定数線路の長さやそれに伴う特性のばらつきなどを抑制することができる。
【実施例2】
【0027】
実施例2は、第1トランジスタT1および第2トランジスタT2が複数の例である。図3は、実施例2に係る増幅回路の回路図である。図3のように、増幅回路101においては、第1トランジスタT11およびT12が並列に複数設けられている。第2トランジスタT21およびT22が並列に複数設けられている。第1トランジスタT11およびT12のそれぞれのソースS11およびS12は、ノードN8において共通に接続されている。第1トランジスタT11のソースS11は、キャパシタC51と抵抗R21とを介し接地され、第1トランジスタT12のソースS12は、キャパシタC52と抵抗R22とを介し接地されている。
【0028】
第1トランジスタT11およびT12のゲートG11およびG12は、ノードN6において共通に接続されている。ノードN6は、分布定数線路L9、L10およびキャパシタC7を介し入力端子Tinに接続されている。第1トランジスタT11およびT12のドレインD11およびD12は、ノードN4において共通に接続されている。ノードN4は、信号経路20を介し第2トランジスタT21およびT22のゲートG21およびG22に接続されている。
【0029】
第2トランジスタT21およびT22のそれぞれのソースS21およびS22は、ノードN9において共通に接続されている。第2トランジスタT21のソースS21は、キャパシタC11(第1キャパシタ)を介し接地され、第2トランジスタT22のソースS22は、キャパシタC12(第1キャパシタ)を介し接地されている。
【0030】
第2トランジスタT21およびT22のゲートG21およびG22は、ノードN5において共通に接続されている。ノードN5は、信号経路20に接続されている。第2トランジスタT21およびT22のドレインD21およびD22は、ノードN7において共通に接続されている。ノードN7は、DC電源Vdおよび出力端子Toutに接続されている。
【0031】
信号経路20内の分布定数線路L2とL3との間のノードN1は分布定数線路L11およびキャパシタC21を介し接地されている。抵抗R11の一端が分布定数線路L11とキャパシタC21との間のノードN31に接続され、他端がソースS21とキャパシタC11との間のノードN21に接続されている。ノードN1は分布定数線路L12およびキャパシタC22を介し接地されている。抵抗R12の一端が分布定数線路L12とキャパシタC22との間のノードN32に接続され、他端がソースS22とキャパシタC12との間のノードN22に接続されている。
【0032】
第1トランジスタT11およびT12から第2トランジスタT21およびT22への信号経路20は共通である。一方、直流経路10は、ノードN7からノードN1まで、2つの経路に分割される。一方の直流経路11は、ノードN7、第2トランジスタT21のドレインD21、ソースS21、ノードN9、ノードN21、抵抗R11、ノードN31、分布定数線路L11およびノードN1の経路である。他方の直流経路22は、ノードN7、第2トランジスタT22のドレインD22、ソースS22、ノードN22、抵抗R12、ノードN32、分布定数線路L12およびノードN1の経路である。
【0033】
さらに、直流経路10は、ノードN4からグランドまで、2つの経路に分割される。一方の直流経路13は、ノードN4、第1トランジスタT11のドレインD11、ソースS11、ノードN8、抵抗R21およびグランドの経路である。他方の直流経路14は、ノードN4、第1トランジスタT12のドレインD12、ソースS12、抵抗R22およびグランドの経路である。
【0034】
実施例2によれば、複数の第2トランジスタT21およびT22のソースS21およびS22のそれぞれは、第1トランジスタT11およびT12のドレインとの間で、複数の直流経路11および12のうち1つを介して接続されている。例えば、複数の第2トランジスタT21およびT22のゲートG21およびG22は、ノードN5(第1接続点)において共通に接続されている。複数の直流経路11および12は、それぞれ第2トランジスタT21およびT22のソースS21およびS22のそれぞれと、ノードN1(第2接続点:ノードN5と第1トランジスタT11およびT12のドレインD11およびD12との間のノード)と、の間に接続されている。このように、複数の第2トランジスタT21およびT22を並列に設け、それぞれの第2トランジスタT21およびT22に対応する直流経路11および12を設ける。これにより、実施例1と同様に、特性のばらつきを小さくできる。
【0035】
さらに、複数の第1トランジスタT11およびT12のドレインD11およびD12は、ノードN4(第3接続点)において共通に接続されている。複数の直流経路11および12は、それぞれ第2トランジスタT21およびT22のソースS21およびS22と、ノードN1(第2接続点:ノードN4と第2トランジスタT21およびT22のゲートG21およびG22との間のノード)と、に接続されている。このように、複数の第1トランジスタT11およびT12を並列に設け、それぞれの第1トランジスタT11およびT12に対応する直流経路11および12を設ける。これにより、実施例1と同様に、特性のばらつきを小さくできる。
【0036】
さらに、複数の第1トランジスタT11およびT12のソースS11およびS12は、それぞれ、抵抗R21およびR22(第2抵抗)を介し接地されている。第1トランジスタT11およびT12が発熱した際、キャパシタを介しては放熱しにくい。一方、例えば基板上に形成された薄膜抵抗等は熱伝導性がよい。よって、第1トランジスタT11およびT12が複数の抵抗を介し接地されることにより、放熱性を高めることができる。
【0037】
さらに、複数の抵抗R11およびR12のそれぞれは、それぞれ複数の分布定数線路L11およびL12と第2トランジスタT21およびT22のソースS21およびS22との間に設けられている。複数の抵抗R11およびR12と、複数の分布定数線路L11およびL12と、のそれぞれの間の複数のノードN31およびN32(接続点)は、それぞれキャパシタC21およびC22(第2キャパシタ)を介し接地されている。これにより、分布定数線路L11、L12、L2およびL3並びにキャパシタC21およびC22を用い第1トランジスタT11およびT12と第2トランジスタT21およびT22との間のインピーダンスを整合させることができる。
【0038】
例えば、増幅回路101が広帯域化するように、インピーダンスを整合させることができる。例えば、増幅回路101の帯域の上限の第1周波数でノードN5から第1トランジスタT11およびT12をみたインピーダンスZ1と、第2トランジスタT21およびT22をみたインピーダンスZ2とが最も整合するようにする。周波数が第1周波数から低くなるに従いインピーダンスZ1とZ2との整合が徐々にずれるようにする。この整合のずれを、第1周波数から周波数が低くなるに従い徐々に増加するトランジスタT11、T12、T21およびT22のゲインを補償するように調整する。これにより、広帯域な増幅回路を実現することができる。
【0039】
さらに、増幅回路101の帯域の下限におけるキャパシタC21およびC22のインピーダンスを抵抗R11およびR12のインピーダンスと同程度か大きくする。これにより、この周波数の信号は、キャパシタC21およびC22に加え抵抗R11およびR12を介し接地される。よって、抵抗R11およびR12を介した信号は減衰する。よって、増幅回路101の帯域の下限における発振を抑制することができる。
【実施例3】
【0040】
実施例3はシミュレーションを行った例である。図4は、実施例3に係る増幅回路の回路図である。図4のように、増幅回路101aにおいては、実施例2の図3と比較すると、第1トランジスタT1および第2トランジスタT2が設けられている。抵抗R3が設けられていない。第1トランジスタT1のゲートG1は、2つの経路を介し接地されている。一方の経路では、ゲートG1は、分布定数線路L19を直列に介し、キャパシタC81と抵抗R31との並列回路を直列に介し接地されている。他方の経路では、分布定数線路L20を直列に介し、キャパシタC82と抵抗R32との並列回路を直列に介し接地されている。第1トランジスタT1のソースS1とキャパシタC51および抵抗R21との間に分布定数線路L17が接続されている。また、第1トランジスタT1のソースS1とキャパシタC52および抵抗R22との間に分布定数線路L18が接続されている。ノードN31とキャパシタC21との間に分布定数線路L13が、ノードN32とキャパシタC22との間に分布定数線路L14が接続されている。第2トランジスタT2のソースS2とノードN21との間に分布定数線路L15が、ソースS2とノードN22との間に分布定数線路L16が接続されている。DC電源Vdに内部抵抗R4が接続されている。その他の構成は、実施例2の図3と同じであり説明を省略する。
【0041】
図5は、実施例3に係る増幅回路を半導体基板30上にMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)として形成した場合の平面模式図である。図5におけるキャパシタは、半導体基板30上に形成されたMIM(Metal Insulator Metal)キャパシタにより形成されている。MIMキャパシタは、半導体基板30上または絶縁膜を介し半導体基板上に形成されたAu膜等の金属からなる下部電極と、下部電極上に形成された窒化シリコン膜等の誘電体膜と、誘電体膜上に形成されたAu膜等の金属からなる上部電極と、から構成されている。抵抗は、半導体基板30上または絶縁膜を介し半導体基板上に形成された薄膜抵抗から構成される。分布定数線路は、半導体基板30上または絶縁膜を介し半導体基板上に形成されたAu等の金属膜から構成され、例えばマイクロストリップラインから形成される。
【0042】
第1トランジスタT1および第2トランジスタT2は、それぞれ半導体基板30内に設けられている。第1トランジスタT1は、活性領域31を有している。活性領域31には、ソースS11、ゲートG11、ドレインD1、ゲートG12およびソースS12が順に配置されている。第1トランジスタT1は、マルチフィンガのFETであるとともに、ドレインD1を共通とした2つの第1トランジスタT11およびT12である。第2トランジスタT2は、活性領域32を有している。活性領域32には、ソースS21、ゲートG21、ドレインD2、ゲートG22およびソースS22が順に配置されている。第2トランジスタT2は、マルチフィンガのFETであるとともに、ドレインD2を共通とした2つの第2トランジスタT21およびT22である。
【0043】
表1は、実施例3に係る増幅回路におけるシミュレーションに用いた各値を示す表である。表1において、分布定数線路は、幅が10μm、実効誘電率が1.5、特性インピーダンスが50Ωとし、長さ(単位μm)で示している。キャパシタの単位はpF、抵抗の単位はΩ、電源電圧の単位はVで示している。第1トランジスタT11、T12および第2トランジスタT21、T22としては、GaAs/AlGaAs系のHEMT(High Electron Mobility Transistor)を用いてシミュレーションを行った。第1トランジスタT11およびT12並びに第2トランジスタT21およびT22のゲート幅は、それぞれ80μmであり、40μm×2とした。すなわち、第1トランジスタT11およびT12並びに第2トランジスタT21およびT22は、それぞれ40μmの幅のフィンガが2つにより形成されている。
【表1】

【0044】
図6(a)は、実施例3に係る増幅回路の周波数に対するS21を示した図、図6(b)は、周波数に対するS11およびS22を示した図である。図6(a)のように、約60〜96GHzにおいてほぼゲインが一定となり、約8dBのゲインが得られている。また、この周波数範囲でS11およびS22が−10dB以下に抑制されている。実施例3のように、互いに独立した直流経路11および12を複数設けたことにより、直流経路11および12がより分布定数的な経路となる。これにより、増幅回路の広帯域化がより可能となる。
【0045】
複数の分布定数線路L11とL12とのリアクタンス成分を同じとする。また、複数の抵抗R11とR12と抵抗値を同じとする。これにより、直流経路11および12のバランスがよくなり、広帯域化が可能となる。さらに、直流経路11および12の基板30上の2次元的な配置を、第2トランジスタを中心に対称とすることにより、広帯域化が可能となる。さらに、分布定数線路L13とL14とのリアクタンス成分を同じとし、キャパシタC21とC22とのキャパシタンスを同じとする。分布定数線路L15とL16とのリアクタンス成分を同じとする。キャパシタC11とC12とのキャパシタンスを同じとする。これにより、高周波的にバランスがよくなり、広帯域化がより可能となる。さらに、分布定数線路L13、キャパシタC21、分布定数線路L15およびキャパシタC11と、分布定数線路L14、キャパシタC22、分布定数線路L16およびキャパシタC11と、の2次元的配置を第2トランジスタT2を中心に対称とする。これにより、高周波的にバランスがよくなり、広帯域化がより可能となる。
【0046】
さらに、複数の抵抗R21とR22との抵抗値を同じとする。分布定数線路L17とL18とのリアクタンス成分を同じとする。キャパシタC51とC52とのキャパシタンスを同じとする。これにより、直流経路13、14のバランスがよくなり、広帯域化が可能となる。さらに、分布定数線路L19とL20とのリアクタンス成分を同じとする。キャパシタC81とC82とのキャパシタンスを同じとする。抵抗R31とR32との抵抗値を同じとする。これにより、高周波的にバランスがよくなり、広帯域化がより可能となる。さらに、分布定数線路L17、L19、キャパシタC51、C81、抵抗R21およびR31と、分布定数線路L18、L20、キャパシタC52、C82、抵抗R22およびR32と、の2次元的配置を第1トランジスタT1を中心に対称とする。これにより、高周波的にバランスがよくなり、広帯域化がより可能となる。
【0047】
さらに、図5のように、第1トランジスタT1および第2トランジスタT2を対称に形成することにより、直流経路13、14のバランスがよりよくなり、広帯域化が可能となる。さらに、第1トランジスタT1および第2トランジスタT2の両側をソースとすることにより、直流経路13、14を対称に配置することができ、広帯域化が可能となる。
【0048】
第1トランジスタは、実施例1のように、1個設けられていてもよいし、実施例2のように複数設けられていてもよい。さらに、第2トランジスタは、実施例1のように、1個設けられていてもよいし、実施例2のように複数設けられていてもよい。
【0049】
第1トランジスタおよび第2トランジスタは、それぞれ、ゲートフィンガが1本のFETでもよい。また、第1トランジスタおよび第2トランジスタは、それぞれ、ゲートフィンガを複数有するマルチフィンガFETでもよい。
【0050】
実施例1および実施例2において、第1トランジスタT1および第2トランジスタT2としてFETの例を説明したが、第1トランジスタT1および第2トランジスタT2はバイポーラトランジスタでもよい。この場合、エミッタが第1端子、コレクタが第2端子、ベースが制御端子に対応する。また、分布定数線路は、ショートスタブ等のインダクタタンス素子でもよい。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10〜14 直流経路
20 信号経路
C1〜C82 キャパシタ
L1〜L22 分布定数線路
R1〜R4 抵抗
T1 第1トランジスタ
T2 第2トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御端子と、第1端子と、第2端子と、を有する第1トランジスタと、
制御端子に前記第1トランジスタの第2端子が接続し、第2端子に直流電源が接続される第2トランジスタと、
前記第2トランジスタの第1端子から前記第1トランジスタの第2端子に直流電流を供給する、互いに独立した配線からなる複数の直流経路と、
前記複数の直流経路内にそれぞれ直列に設けられた分布定数線路と、
を具備することを特徴とする電子回路。
【請求項2】
前記複数の直流経路に、それぞれ前記分布定数線路と直列に設けられた第1抵抗を具備することを特徴とする請求項1記載の電子回路。
【請求項3】
前記第2トランジスタは複数並列に設けられ、
前記複数の第2トランジスタの第1端子のそれぞれは、前記第1トランジスタの第2端子との間で、前記複数の直流経路のうち1つを介して接続されていることを特徴とする請求項1または2記載の電子回路。
【請求項4】
前記第1トランジスタは複数並列に設けられてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項5】
前記第1トランジスタは複数設けられ、
前記複数の第1トランジスタの第1端子は、それぞれ、第2抵抗を介し接地されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項6】
前記第1抵抗のそれぞれは、前記分布定数線路と前記第2トランジスタの第1端子との間に設けられ、
前記第1抵抗と、前記複数の分布定数線路と、の間の複数の接続点は、キャパシタを介し接地されていることを特徴とする請求項2記載の電子回路。
【請求項7】
前記複数の直流経路に設けられた前記分布定数線路のリアクタンス成分は同じであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項8】
前記複数の直流経路にそれぞれ設けられた前記第1抵抗の抵抗値は同じであることを特徴とする請求項2記載の電子回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−119794(P2012−119794A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265785(P2010−265785)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】