説明

電子地図表示装置、電子地図表示方法およびナビゲーション装置

【課題】俯瞰図形式の地図上における地点の中心位置からの距離を容易に把握できるようにする。
【解決手段】ディスプレイ18に表示した俯瞰図形式の地図40上に、中心位置41から等距離の地点を結ぶ複数の同心状の楕円線42、43、44でなる距離表示円を描画すると共に、当該同心状の楕円線42、43、44でなる距離表示円の近傍に、地図40上の縮尺に応じて地図40上の地点の表示間隔が狭くなって行くことに対応して、中心位置表示41から離れるに従って等比級数的に大きくなって行く数値をもつ距離数値表示200〔m〕、400〔m〕、800〔m〕を表示するようにしたことにより、俯瞰図形式の地図40から把握し難い距離を距離数値表示200〔m〕、400〔m〕、800〔m〕を参考にして直感的にかつ迅速に、容易に把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子地図表示装置、電子地図表示方法およびナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のナビゲーション装置においては、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などから読み出した地図データにしたがってディスプレイ上に地図が表示されるが、例えば図5Aに示すように、緯線および経線に沿ったラインを、地図に重ねて所定の間隔で碁盤状に描画する機能が用意されている。
【0003】
したがって、この描画機能を利用すれば、例えば、自車位置から走行の目標となる地点や建物までのおおよその距離を知ることができる。
【0004】
また、パーソナルコンピュータなどにおいて実行される電子地図ビューワーアプリケーションソフトウェアにおいては、表示された地図の外枠部分に距離を示す目盛りを表示する機能が用意されている。したがって、この距離目盛りにより、やはり距離を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
なお、先行技術文献として例えば以下のものがある。
【特許文献1】特開平6−109828号公報
【特許文献2】特開平7−27844号公報
【特許文献3】特開平9−145390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のような距離の表現方法の場合、車の運転中に、目標となる地点や建物までのおおよその距離を知ろうとしても、その距離を瞬時に知ることは困難である。特に、緯線および経線に対して斜め方向の距離の場合は、なおさら困難である。
【0007】
また、図5Aは、地図を平面図形式に表示している場合であるが、車載用のナビゲーション装置には、一般に、もとの地図データを変換することにより例えば図5Bに示すように、地図を俯瞰図(鳥瞰図)形式に表示する機能も用意されている。
【0008】
すると、この俯瞰図形式では、地図上の単位長あたりの距離が、地図上の位置や方向によって異なるので、実際の距離を直感的に、かつ、迅速に把握することは、さらに困難になってしまう。
【0009】
この発明は、このような問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明においては、地図表示手段によって、自分の位置を表す中心位置表示を中心としてこれから移動しようとする範囲の地図データを記録媒体から読み出して、俯瞰図形式の地図としてディスプレイに表示し、距離表示手段によって、当該表示された俯瞰図形式の地図上において、中心位置から等距離の地点を結ぶ複数の同心状の楕円線でなる距離表示円を地図に重畳するように描画すると共に、距離表示手段は、ディスプレイに表示した同心状の楕円線でなる距離表示円の近傍に、当該距離表示円の地点が表示されている地図上の縮尺に応じて地図上の地点の表示間隔が狭くなって行くことに対応して、中心位置表示から離れるに従って等比級数的に大きくなって行く数値によって表わす距離数値表示を表示するようにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ディスプレイに表示した俯瞰図形式の地図上に、中心位置から等距離の地点を結ぶ複数の同心状の楕円線でなる距離表示円を描画すると共に、当該同心状の楕円線でなる距離表示円の近傍に、地図上の縮尺に応じて地図上の地点の表示間隔が狭くなって行くことに対応して、中心位置表示から離れるに従って等比級数的に大きくなって行く数値をもつ距離数値表示を表示するようにしたことにより、俯瞰図形式の地図から把握し難い距離を距離数値表示を参考にして直感的にかつ迅速に、容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一形態を示す系統図である。
【図2】この発明による表示例を示す俯瞰図である。
【図3】この発明による表示例を示す俯瞰図である。
【図4】この発明による表示例を示す俯瞰図である。
【図5】この発明による表示例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ところで、車載用のナビゲーション装置においては、通常、ディスプレイに表示された電子地図上に、自車の位置を表示する機能が用意されている。
【0014】
また、車載用のナビゲーション装置や電子地図ビューワーアプリケーションソフトにおいては、ユーザが、カーソルキーやマウスなどを使用してディスプレイに表示された電子地図をスクロールさせる場合、スクロール後の操作対象となる地点を明示するため、通常、アプリケーションソフトは、地図の中心付近に「+字カーソル」や「指マーク」などのスクロール中心マークを表示している。
【0015】
この発明は、これらの点に着目して電子地図上の距離を、迅速に、かつ、直感的に知ることができるようにしたものである。
【0016】
以下、この発明を車載用のナビゲーション装置に適用した場合の一形態について、図1により説明する。
【0017】
図1において、このナビゲーション装置には、これを制御するための制御回路としてマイクロコンピュータ10が設けられている。このマイクロコンピュータ10は、各種のプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)11と、それらのプログラムの書き込まれたROM(Read Only Memory)12と、ワークエリア用のRAM(Random Access Memory)13と、各種のデータを保存しておくための不揮発性のメモリ14とを有し、これらがシステムバス19を通じて互いに接続されている。
【0018】
さらに、システムバス19には、各種の操作キー15がキーインターフェイス回路16を通じて接続されるとともに、表示デバイス、例えばカラーLCD(Liquid Crystal Display)18がLCDコントローラ回路17を通じて接続されている。
【0019】
そして、図1のナビゲーション装置は、地図データを有する大容量のメディアとしてDVD−ROM(DVD Read Only Memory)30を使用する場合であり、すなわち、DVD−ROM30には、ナビゲーションに必要な各種の地図データ、例えば、地図を表示するためのデータやマップマッチングのための道路のデータなどが収容されている。そして、このDVD−ROM30からのデータを読み出すためのDVD−ROMドライブ装置21が設けられ、このドライブ装置21がシステムバス19に接続されている。
【0020】
さらに、このナビゲーション装置には、自律航法ユニット、例えばジャイロ22が設けられ、このジャイロ22からは、自分の移動する速度などのデータが取り出され、このデータがマイクロコンピュータ10に供給される。また、車の走行速度を検出する車速センサ23が設けられ、その出力信号がマイクロコンピュータ10に供給される。
【0021】
さらに、航法衛星、例えばGPS衛星からの電波が、GPSアンテナ24により受信され、その受信信号がGPSユニット(受信回路)25に供給され、GPSユニット25からは、自分の位置などのデータが取り出され、このデータがマイクロコンピュータ10に供給される。
【0022】
このような構成において、ジャイロ22、車速センサ23およびGPSユニット25の出力信号がCPU11により処理されて自車位置が判別され、DVD−ROM30からは自車位置を含む地図の地図データが読み出される。そして、この読み出された地図データにしたがって、例えば図2Aに示すように、LCD18には、自車位置付近を中心とする電子地図40が表示されるとともに、その自車位置に自車を示す例えば逆V字型のマーク41が表示される。なお、図2Aは、地図40を俯瞰図形式に表示させた場合である。
【0023】
そして、キー15のうちの所定のキーを操作すると、図2Bに示すように、地図40には、自車マーク(すなわち、自車位置)41を中心とした距離表示円42、43、44が同心状に表示される。この距離表示円42〜44は、自車マーク41を中心とし、この中心から距離が等しい地図40上の点をそれぞれ結ぶ等距離線であり、図2Bの場合には、地図40が俯瞰図形式に表示されているので、距離表示円42〜44は、ほぼ楕円形に表示されている。
【0024】
また、図2Bにおいては、距離表示円42〜44は、自車マーク41から等比級数的に、200m、400m、800mの点をそれぞれ結んだ場合であり、この円42〜44の近傍には、自車マーク41からの距離を示す数値45が表示される。
【0025】
なお、距離表示円42〜44の対応する距離およびその数は、表示される地図40の縮尺に対応して、例えば、50m、100m、200m、400mなどのように変更されるものである。また、距離表示円42〜44は、CPU11が円42〜44を描画するプログラムを実行することにより表示されるものであり、そのプログラムはROM12に用意される。さらに、図2Bにおいては、円44は、その一部だけが地図40内に表示された弧状の等距離線である。
【0026】
こうして、このナビゲーション装置においては、LCD18に電子地図40を表示するとともに、自車マーク41を中心とし、この中心から距離が等しい地図上の点をそれぞれ結ぶ距離表示円42〜44を表示するようにしているので、目標となる地点や建物などまでのおおよその距離を、直感的に、かつ、迅速に把握することができる。
【0027】
しかも、その場合、電子地図40を俯瞰図形式で表示している場合であっても、あるいはさらに、目標が斜め方向にあっても、問題なく距離を把握することができる。
【0028】
また、自車位置から目標地点までのおおよその距離を電子地図上で視覚的に迅速に把握できるので、ドライブ計画の参考にしやすい。さらに、電子地図40を俯瞰図形式に表示する場合には、距離表示円42〜44により立体感が向上する。そして、距離表示円42〜44を表示するためのプログラムを描画ドライバ(描画プログラム)に追加するだけで、以上の効果を得ることができる。
【0029】
図3は、俯瞰図形式の電子地図40の中心付近に、スクーロール中心を示す+字カーソル46が表示され、さらに、この+字カーソル46を中心とし、この中心から200m、400m、800mの点を結んだ距離表示円42、43、44が表示された場合である。
【0030】
また、図4は、俯瞰図形式に表示した地図40において、自車マーク41が地図40の中央よりも下(進行後方)に位置するように地図40を表示して進行前方についての地図情報をより多く表示するようにした場合である。そして、このような場合には、図4にも示すように、距離表示円42〜44(およびその外側の距離表示円)の一部あるいは全部を、弧状の等距離線とすることができる。
【0031】
なお、上述において、距離表示円42〜44に、シャドウあるいはハイライトをつけることにより、あるいは、円42〜44をその描画される部分の地色の例えば補色とすることにより、距離表示円42〜44をより明瞭に見えるようにすることができる。
【0032】
また、電子地図40を俯瞰図形式に表示する場合には、自車マーク41を中心にした円周上に、方位を示す文字や記号などを表示させれば、俯瞰図形式の場合には把握しにくい自車の進行方位を容易に、かつ、瞬時に知ることができる。
【0033】
さらに、自車位置あるいは電子地図の中心から、放射状にラインを表示するとともに、各ラインに、自車位置あるいは電子地図の中心からの距離を示す目盛りを表示することもできる。
【0034】
また、距離表示円42〜44の代わりに、円42〜44を境界として色分けして電子地図40を表示することもできる。例えば、表示処理のハードウェアが2層以上のレイヤ構成であれば、下位レイヤに電子地図40を描画し、上位レイヤを半透明レイヤとするとともに、これを円42〜44を境界とした色で塗りつぶせばよい。
【0035】
さらに、上述においては、この発明を車載用ナビゲーション装置に適用した場合であるが、PDA(Personal Digital Assistant)やパーソナルコンピュータなどにおいて、地図データにしたがって地図を表示する場合にも、この発明を適用することができる。また、DVD−ROM30の代わりに、CD−ROMなどの大容量メディアであってもよい。さらに、電子地図40を表示するための地図データの形式は問わない。
【符号の説明】
【0036】
10…マイクロコンピュータ、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…メモリ、15…キー、16…キーインターフェイス回路、17…LCDコントローラ回路、18…カラーLCD、19…システムバス、21…DVD−ROMドライブ装置、22…ジャイロ、23…車速センサ、24…GPSアンテナ、25…GPSユニット、30…DVD−ROM、40…電子地図、41…自車マーク、42〜44…距離表示円(等距離線)、45…距離表示数値、46…+字カーソル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自分の位置を表す中心位置表示を中心としてこれから移動しようとする範囲の地図データを記録媒体から読み出して、俯瞰図形式の地図としてディスプレイに表示する地図表示手段と、
当該表示された俯瞰図形式の上記地図上において、上記中心位置から等距離の地点を結ぶ複数の同心状の楕円線でなる距離表示円を上記地図に重畳するように描画する距離表示手段と
を具備し、
上記距離表示手段は、上記ディスプレイに表示した上記同心状の楕円線でなる上記距離表示円の近傍に、当該距離表示円の地点が表示されている上記地図上の縮尺に応じて地図上の地点の表示間隔が狭くなって行くことに対応して、上記中心位置表示から離れるに従って等比級数的に大きくなって行く数値によって表わす距離数値表示を表示する
ことを特徴とする電子地図表示装置。
【請求項2】
上記距離表示手段は、上記自分の位置を表す中心位置表示を、上記ディスプレイの中央より下方位置に表示することにより、上記中央位置表示から上方の地図表示部分に、自分がこれから移動しようとする上記範囲の地図データをできるだけ多く表示するようにする
ことを特徴とする請求項1に記載の電子地図表示装置。
【請求項3】
上記距離表示手段は、上記ディスプレイに表示した上記俯瞰図形式の地図上に、上記中心位置表示から放射状にラインを表示すると共に、当該各ラインに、上記中心位置表示からの地図上の距離を示す目盛を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子地図表示装置。
【請求項4】
上記距離表示手段は、上記ディスプレイに表示した上記俯瞰図形式の地図上に、上記中心位置表示から放射状にラインを表示すると共に、当該放射状ラインと上記同心状の楕円線でなる上記距離表示円との交差位置に、上記放射状ラインの上記俯瞰図形式の地図上の方位を示す文字又は記号を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子地図表示装置。
【請求項5】
地図表示手段によって、自分の位置を表す中心位置表示を中心としてこれから移動しようとする範囲の地図データを記録媒体から読み出して、俯瞰図形式の地図としてディスプレイに表示する第1のステップと、
距離表示手段によって、当該表示された俯瞰図形式の上記地図上において、上記中心位置から等距離の地点を結ぶ複数の同心状の楕円線でなる距離表示円を上記地図に重畳するように描画する第2のステップと
を具備し、
上記距離表示手段は、上記第2のステップにおいて、上記ディスプレイに表示した上記同心状の楕円線でなる上記距離表示円の近傍に、当該距離表示円の地点が表示されている上記地図上の縮尺に応じて地図上の地点の表示間隔が狭くなって行くことに対応して、上記中心位置表示から離れるに従って等比級数的に大きくなって行く数値によって表わす距離数値表示を表示する
ことを特徴とする電子地図表示方法。
【請求項6】
自車位置を表す中心位置表示を中心としてこれから移動しようとする範囲の地図データを記録媒体から読み出して、俯瞰図形式の地図としてディスプレイに表示する地図表示手段と、
当該表示された俯瞰図形式の上記地図上において、上記中心位置から等距離の地点を結ぶ複数の同心状の楕円線でなる距離表示円を上記地図に重畳するように描画する距離表示手段と
を具備し、
上記距離表示手段は、上記ディスプレイに表示した上記同心状の楕円線でなる上記距離表示円の近傍に、当該距離表示円の地点が表示されている上記地図上の縮尺に応じて地図上の地点の表示間隔が狭くなって行くことに対応して、上記中心位置表示から離れるに従って等比級数的に大きくなって行く数値によって表わす距離数値表示を表示する
ことを特徴とするナビゲーション装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−154405(P2011−154405A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103096(P2011−103096)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2006−178063(P2006−178063)の分割
【原出願日】平成11年4月21日(1999.4.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】