説明

電子機器、通信装置

【課題】電界結合による近距離無線通信を行う際、カプラ周囲に金属が設けられるような条件に関わらず、安定した良好な通信品質が得られるようにする。
【解決手段】電界結合のためのアンテナとなるカプラの近傍に対して略コの字状の金属板による電界補強部材160を設ける。この電界補強部材160は、例えば略コの字状の外形に沿ったループ形状を有する。また、そのコの字状を形成する内側の辺が1/2波長となるようにしてサイズが設定されているために、例えばループ長としては1波長にほぼ対応する。また、コの字状を形成する2つの脚部の連結部分から折り曲げた形状として所定角度を成す2つの面が形成されるようにする。これにより、電界補強部材160は、カプラからの電界を受け、これを通信相手のカプラ側に再放射するという機能が与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器および通信装置に関し、特に、電界結合による近距離無線通信に用いられる電子機器および通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、TransferJet(登録商標)といわれる近距離無線通信規格が実用化段階にきている(例えば、非特許文献1参照。)。この近距離無線通信規格では、3〜5cm程度という非常に短い通信可能距離を規定している。
【0003】
そして、TransferJetにおいては、上記の近距離の範囲に限定した通信を実現するために、電界結合による誘導現象を利用することとしており、アンテナに相当するものとして、カプラといわれる電界結合器を用いる。すなわち、一方の通信機器が備えるカプラと、他方の通信機器が備えるカプラとが通信可能距離以内にまで近づくことで相互のカプラとの間に電界結合を生じさせる。この電界結合によって双方の機器間で信号を宗純可能なように接続するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「TransferJet ホワイトペーパー」、TransferJetコンソーシアム(http://www.transferjet.org/tj/transferjet_whitepaper_J.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、現実にカプラを電子機器内に収納した状態で電子機器間での通信を行ってみたところ、次のようなことが問題になった。例えば、カプラを内蔵する電子機器の外筐が金属であったり、また、外筐内部にてカプラが配置されるべき位置の近傍に金属部品が配置されたりする場合がある。すなわち、カプラ間で発生する電界場またはその電界場の近傍に、金属が存在する状態となる場合である。金属は導電体であり、したがってその反射や遮蔽効果によって電界を弱めることになる。このような電界のパワー低下は、例えばエラーレートの増加や通信速度の低下など、通信品質の劣化につながり、実際には、安定したデータの送受信を阻害する要因となり得る。
【0006】
上記のような通信品質の劣化を避けるには、例えば、外筐に金属を用いない、または外筐内のカプラ近傍に金属部品を配置しない、などの対策を採ればよい。しかし、このような対策を採ることは、例えば機器のデザインが損なわれたり、強度の確保が困難になるなどの問題を生じるために現実的ではない。
【0007】
そこで本発明は、カプラの近傍に金属が配置されているとしても、十分な通信品質が維持できるようにすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その第1の側面は、所定の通信可能距離内にある通信先結合器との間で電界結合を生じさせるための結合器の外筐内部での規定位置に応じて設定された上記外筐内部の所定位置に設けられ、互いに離間した位置関係の2つの脚部とこれらの脚部の各一端を連結する連結部とが一体に形成された外形形状を有し、当該外形形状の内側を形成する辺部の長さが上記電界結合により生じる電界周波数に応じた波長の1/2に基づいて設定された板状の金属である電界補強部材を具備する電子機器である。これにより、電界補強部材が、結合器からの電界を受けて通信先結合器側に再放射させるという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記電界補強部材は、上記外筐内部において誘電体と接触または近接した状態で設けられるとともに、上記外形形状の内側を形成する辺部の長さは、上記誘電体の誘電率に応じて短縮される上記波長の1/2に基づいて設定されるようにしてもよい。これにより、電界補強部材の上記外形形状の内側を形成する辺部の長を短縮させるという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記電界補強部材は、上記板状の平面方向において上記外形形状を有し、上記連結部に相当する部位における上記2つの脚部に沿った方向を折り曲げ位置として、一方の脚部が形成する面部と他方の脚部が形成する面部とが所定角度を形成されるようにしてもよい。これにより、例えば電界補強部材において電界を放射する方向を設定させるという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記電界補強部材において上記一方の脚部が形成する面部は上記外筐内部での結合器の規定位置近傍に配置され、上記電界補強部材において上記他方の脚部が形成する面部は上記外筐内部での結合器の規定位置よりも上記通信先結合器側に近い側に配置されるようにしてもよい。これにより、電界補強部材において電界を受ける動作と電界を放射する動作とを有効に機能させるという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、上記電界補強部材は、上記外形形状に沿ったループ状に形成されてもよい。これにより、約1波長のループを形成させるという作用をもたらす。
【0013】
また、この第1の側面において、上記電界補強部材は、板状の金属の厚み部分が上記外形形状を有するようにして形成されてもよい。これにより、板状の金属を折り曲げるようにした電界補強部材を形成させるという作用をもたらす。
【0014】
また、この第1の側面において、上記電界補強部材は、上記外筐内部での結合器の規定位置と上記通信先結合器との間の位置に設けられるようにしてもよい。これにより、電界補強部材が、通信相手同士の結合器の間、すなわち、電界のなかに配置させるという作用をもたらす。
【0015】
また、この第1の側面において、上記電界補強部材は、上記2つの脚部が互いに異なる長さとされてもよい。これにより、2つの脚部が異なる長さを有した形状の電界補強部材を配置させるという作用をもたらす。
【0016】
また、この第1の側面において、上記結合器を備える通信装置が装脱される部位であって、上記通信装置が適正に装着されることで上記結合器が上記外筐内部での規定位置となるように形成される通信装置装脱部をさらに具備することとしてもよい。これにより、通信装置装脱部に装着された通信装置に対して共通に電界補強部材を有効に機能させるという作用をもたらす。
【0017】
また、本発明の第2の側面は、所定の通信可能距離内にある通信先結合器との間で電界結合を生じさせるためのもので、外筐内部の所定位置に設けられる結合器と、互いに離間した位置関係の2つの脚部とこれらの脚部の各一端を連結する連結部とが一体に形成された外形形状を有し、当該外形形状の内側を形成する辺部の長さが前記電界結合により生じる電界周波数に応じた波長の1/2に基づいて設定された板状の金属である電界補強部材とを具備する通信装置である。これにより、通信装置に電界結合により生じる電界を補強する機能を有させるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電界結合を利用した近距離無線通信方式に対応する電子機器として、カプラの近傍に金属が配置されるような上記電子機器の構造であっても、十分な通信品質を簡単な構成によって維持できるという効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態における送信装置100と受信装置200の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における、送信装置100のカプラ150と受信装置100のカプラ250との間での電界結合を説明するための図である。
【図3】送信装置100の外筐110におけるカプラ150の配置状態例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における電界補強部材160の例を示す正面図、および側面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における電界補強部材160を抜き出して正面より示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における電界補強部材160とカプラ150とについての他の位置関係例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における電界補強部材160とカプラ150とについての他の位置関係例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における電界補強部材160の、外筐110内における具体的な配置例を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における電界補強部材160の、外筐110内における具体的な配置例として、カード型通信装置170Aが装脱可能とされている場合を示す図である。
【図10】送信装置100と受信装置200とに、それぞれ電界補強部材160または260を設けた場合の、外筐内での配置態様を模式的に示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態の第1の変形例における電界補強部材160Aの構成例を示す正面図および側面図である。
【図12】第1の変形例における電界補強部材160Aを抜き出して示す図である。
【図13】本発明の実施の形態の第1の変形例における電界補強部材160Aの折り曲げ形状例と、その配置例を示す正面図および側面図である。
【図14】本発明の実施の形態の第2の変形例における電界補強部材160Bの構成例を示す斜視図および側面図である。
【図15】本発明の実施の形態の第3の変形例における電界補強部材160C、160Dの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(電界補強部材にスリットを形成した例)
2.変形例(電界補強部の態様の変形例)
【0021】
<1.第1の実施の形態>
[近距離無線通信方式の概要]
まず、本発明の実施の形態が対応する近距離無線通信規格の概要について説明する。本発明の実施の形態が対応する近距離無線通信規格は、TransferJet(登録商標)といわれる。その通信可能距離としては3cm〜5cm程度のごく近距離を設定しており、この通信可能距離の範囲であれば最大で560Mbps(実効速度:375Mbps)という相当に高速なデータ転送速度が得られるとしている。また、ネットワークトポロジ(通信形態)は、常に1対1(Point−to−Point)である。
【0022】
このTransferJetの規格では、上記のように通信距離を数センチ程度に限定したPoint−to−Point通信としていることで、例えば暗号化などを行わなくとも有線接続に匹敵するレベルのセキュリティが得られる。また、通信周波数は4.48GHzを中心として560MHzの帯域幅を占有し、通信プロトコルにおいては、エラー検出、訂正やパケットの認識、再送が規定されている。また、近距離通信であるために、通信電力は−70dBm/MHz以下と非常に小さい。これにより、例えば本国およびそれ以外の主立った国でも認可が不要になる。
【0023】
そして、このようなTransferJetの規格に対応する通信機器としては、例えば、ストレージ機器の上に対して撮像装置を置いただけで、撮像装置に記憶されている画像データをストレージ機器に転送させる、などといった便利な使用形態を提案できる。
【0024】
ここで、TransferJetで規定される3cm程度の通信可能距離は、例えば、通常の電波を用いるのではなく、電界結合による誘導現象を利用することにより実現される。この電界結合による無線接続のためのアンテナとして機能する電界結合器を、TransferJetの規格では「カプラ」という。本願明細書においても、以降においては、この電界結合器についてはカプラと称する。
【0025】
[通信装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態が対応する通信装置として、送信装置100と受信装置100とが示されている。なお、送信装置100と受信装置200は、実際には同型の機種とされて、それぞれが、そのときの設定や操作に応じてデータ送信側、データ受信側として機能するものとされてもよい。あるいは、送信装置100と受信装置200は、それぞれが異なる装置とされていてもよい。
【0026】
図1において送信装置100は、通信装置としてデータ送信機能を実行するものである。この送信装置100は、その外筐110の内部に、制御部120、メモリ130、通信処理部140、およびカプラ150を備える。
【0027】
外筐110は、樹脂や金属などにより形成される外装のための部位であり、内部において送信装置100を構成する実際の回路、部品等が収納されている。
【0028】
制御部120は、例えば実際にはCPU(Central Processing Unit)などとされて、送信装置100における各種制御を実行するものである。具体的には、メモリ130に対するデータの書込み/読出し、また、近距離無線通信に対応した通信処理部140の動作を制御する。メモリ130は、制御部120が利用すべきデータを保持するものである。具体的には、例えば近距離無線通信により送信すべきデータを保持する。通信処理部140は、制御部120の制御に応じて、近距離無線通信によるデータ送信のための所要の処理を実行するものである。
【0029】
また、カプラ150は、通信先の機器側に設けられるカプラとの間で電界結合を生じさせるためのものである。例えばデータ送信に際しては、通信処理部140から出力される送信信号に応じて電界を発生させる。カプラ150においては、例えば通信処理部140からの送信信号を放射器151に印加する。これにより、放射器151から、送信信号に応じて変化する電界を発生させることができる。
【0030】
同じく図1において受信装置200は、通信装置としてデータ受信機能を実行するものであり、その外筐210の内部に、制御部220、メモリ230、通信処理部240およびカプラ250を備える。
【0031】
これら受信装置200側の外筐210、制御部220、メモリ230、通信処理部240、およびカプラ250の構成は、それぞれ、送信装置100側の外筐110、制御部120、メモリ130、通信処理部140、およびカプラ150と同じでよい。ただし、受信装置200がデータ受信機能を実行することに対応して、制御部220は、データ受信に対応した制御を実行する。また、メモリ230には、受信したデータが保持されることになる。また、通信処理部240は、カプラ250経由で受信した信号から、データを復調して取得する処理を実行する。カプラ250は、動作として、誘起された電界に応じて放射器251にて検波した信号を通信処理部240に対して受信信号として渡す。
【0032】
[通信装置間の通信処理、および電界結合による通信動作の例]
上記構成による送信装置100と受信装置200との間で行われるデータ送受信のための動作例について説明する。例えばユーザが送信装置100と受信装置200との間でデータ送受信を行わせようとする際には、送信装置100側のカプラ150と受信装置200のカプラ250とが通信可能距離の範囲内となる位置関係により配置させておくようにする。この状態において送信装置100がデータ送信を実行するときには、例えば制御部120は送信すべきデータをメモリ130から読み出して通信処理部140に渡す。通信処理部140は、渡されたデータに対して、エラー訂正符号の付加、パケット化などの処理を行い、さらに電界結合方式に対応して伝送可能なキャリア周波数で変調した送信信号に変換する変調処理を行い、この送信信号をカプラ150に出力する。カプラ150においては、入力された送信信号が放射器151に印加され、これにより、放射器151からは、印加された送信信号に応じた電界を発生させる。
【0033】
このとき、受信装置200側のカプラ250は、上記カプラ150と通信可能な距離範囲内にあるため、カプラ250の放射器251には、放射器151にて発生している電界に応じた誘導現象により電界が発生する。すなわち、図2に示すようにして、送信装置100側のカプラ150の放射器151と、受信装置200側のカプラ250の放射器251と間で電界結合した状態が得られる。なお、以降においては、ここでは説明を簡単でわかりやすくするための便宜上、電界が発生する部位がカプラ自体であると広義に捉えて、電界結合がカプラ150とカプラ250との間で発生しているものとして記載する場合がある。
【0034】
そして、放射器251からは、上記の電界結合の下で発生している電界に応じた信号が通信処理部240に対して受信信号として取り込まれる。通信処理部240においては、入力した受信信号から、キャリア成分除去、パケット解除、エラー訂正処理などの所要の復調処理を実行してデータを復号し、制御部220に渡す。制御部220は、例えば渡されたデータをメモリ230に書き込んで保持させる。
【0035】
[通信品質を劣化させる要因]
次に、上記のようにして電界結合を利用する近距離無線通信において、その通信品質を劣化させる要因について、図3を参照して説明する。図3は、送信装置100を例に挙げて、その外筐110とカプラ150とを抜き出して示している。まず、図3(a)は、外筐110内にカプラ150が位置している状態を正面方向から見た正面図であるとする。図3(b)は、図3(a)に対応する側面図となる。
【0036】
一般的に、電子機器の外筐は樹脂により形成されることが多い。しかし、例えば製品としての性能、機能、デザインなどの都合で、外筐の少なくとも一部が金属により形成されることもしばしばある。
【0037】
ここで、例えば図3(a)および図3(b)に示す送信装置100の外筐110における少なくとも一部が金属で形成されており、かつ、その金属部分が、カプラ150にて発生する電界に影響を及ぼし得る位置に設けられているとする。金属は導体であるために、例えばカプラ150から外筐110を通過しようとする電波を反射または遮蔽するように働き、結果として、電界を弱めることになる。このようにして電界が弱められれば、それだけ伝送信号の損失が大きくなり、通信品質を劣化させることになる。通信品質の劣化は、例えば、エラーレートの増加、伝送エラーなどに起因するデータ転送速度の低下などとして現れる。
【0038】
また、たとえ外筐110に金属が使用されていなくとも、外筐110内部に部品などとして金属を納めなければならない場合もある。例として、図3(c)の側面図には、外筐110内においてカプラ150の近傍に、金属フレーム181およびバッテリ182が配置されている状態を示している。金属フレーム181は、金属により形成されており、例えば内部の剛性の維持などの所定の目的のために外筐110内のしかるべき位置に配置される。また、バッテリ182は、例えば充電池であり、一般的に金属を含む構成である。このようにして、外筐110内において金属部品が設けられている場合にも、その位置によっては、通信品質を劣化させることになる。
【0039】
このように、電界結合により通信を行う本発明の実施の形態の通信装置では、外筐または外筐内部の金属部分の存在により通信品質が劣化するという問題を抱える。なお、図3には送信装置100が示されているが、このような金属部分の存在が通信品質を劣化させるという点については、受信装置200側においても同様である。
【0040】
このような通信品質の劣化は、例えば電界結合に影響を及ぼすような箇所に金属を設けないようにすればよい。しかし、金属を設けないことで、例えば外筐のデザインに制限がでてきてしまう。また、外筐または外筐内部において十分な強度を維持できなくなる場合も出てくる。このようにして、外筐またはその内部において金属を用いないようにすることは、現実においては有効な対策とはいえない。
【0041】
[電界補強部材の構成例]
そこで、本発明の実施の形態では、電界結合に影響を及ぼし得る位置に金属が使用されているような機器であっても、充分な通信品質が得られるようにするために、以降説明するようにして電界補強部材を備える構成を提案する。なお、以降の説明においては、送信装置100側の構成を示すが、受信装置200にも同じ構成を適用できる。
【0042】
まず、図4(a)の正面図および図4(b)の側面図は、本発明の第1の実施の形態としての構成例を示している。この図においては、図3(a)および図3(b)と同様に、送信装置100について、外筐110とカプラ150とを抜き出して示している。ただし、本発明の実施の形態としての構成を分かりやすく見せるための便宜上、カプラ150については外筐110のサイズに対して大きく拡大して示している。実際には、カプラ150は外筐110における一部を占有するにすぎない程度のサイズである。なお、カプラ150自体については、先に図1および図2により説明した構成と変るところは特にない。
【0043】
そして、本発明の第1の実施の形態としては、図4(a)、図4(b)に示すようにして、外筐110内部において、カプラ150の近傍に対して電界補強部材160を設けることとしている。なお、ここでは図示していないが、電界補強部材160は外筐110内部において固定して設けられる。
【0044】
電界補強部材160は、図4(a)においては面形状となっているのに対して、図4(b)においては厚さとしての幅しか有していないことからわかるように、電界補強部材160は、全体としては板状としてみることのできる形状である。電界補強部材160は所定の厚さの金属板から例えば図4に示す形状を形成する。
【0045】
図5は、図4(a)から電界補強部材160を抜き出して示している。電界補強部材160の全体の外形形状としては、同じサイズによる長方形の第1脚部161と第2脚部162とを、その長手方向に沿って略平行に離間して配置し、これら第1脚部161と第2脚部162の各一方の端部(短辺)を連結部163により連結して得られるものとみることができる。つまり、いわいるコの字形状として形成される。なお、ここでは形状説明の便宜上、電界補強部材160が、第1脚部161、第2脚部162、および、連結部163の3つの部位から成るものとして説明しているが、実際には、これらの部位から成るコの字状の外形形状が一体に形成されているものである。例えば実際には、金属板から、図5に示すコの字状の外形形状を抜き出せば、次に説明するスリット165が未だ形成されていない段階の電界補強部材160の外形形状を得ることができる。
【0046】
そのうえで、図5に示す電界補強部材160は、コの字状の外形形状において、その内側を同じコの字状でくり抜いたようにしてスリット165を形成している。このスリット165が形成された形状は、別の見方をすれば、所定幅の金属によりコの字状に沿ってループ状に形成されているものとみることができる。つまり、電界補強部材160は、ループ形状を有している。
【0047】
また、図5に示される電界補強部材160の外形を形成する辺のうちで、第1脚部161において第2脚部162側と対向する位置にある辺の長さをL1とする。また、同様に、第2脚部162において第1脚部161側と対向する位置にある辺の長さをL2とする。また、これら長さをL1、L2で表される2つ辺を連結する辺の長さをL3とする。また、本発明の実施の形態が対応する近距離無線通信方式にて規定される通信のための電界周波数に対応する1波長をλとする。そして、下記の(式1)がほぼ成り立つものとしてみることのできる上記の長さL1、L2およびL3を設定する。
L1+L2+L3=λ/2・・・(式1)
なお、この電界補強部材160のサイズ設定に関して、上記(式1)は、必ずしも厳密に成立させる必要はなく、例えば目安として、長さL1、L2およびL3の合計が、λ/2とみてよい長さの範囲内にあればよい。
【0048】
このように、本発明の第1の実施の形態においては、電界補強部材160の外形形状を形成する辺のうち、内側において連結される3つの辺から成る長さが約1/2波長となるように設定される。本発明の実施の形態が対応する近距離無線通信方式の電界周波数は4.48GHzであるから、1波長は約6.7cmとなる。したがって、電界補強部材160の実際としては、L1+L2+L3=3.35cm程度となるようにして形成することになる。なお、これにより、電界補強部材160において形成されるループの長さとしては、ほぼ1波長であるとしてみることができる。
【0049】
また、電界補強部材160は、図5の一点鎖線Fとして示す連結部163のほぼ中央部分を折り曲げ位置として折り曲げるようにすることで、図4(b)に示すようにして、その側面からみた形状が「く」の字状となるようにする。つまり、180度より小さな所定角度aが与えられるようにする。
【0050】
このようにして「く」の字状に折り曲げられた電界補強部材160は、図5の一点鎖線Fで示される折り曲げ位置を境界として、2つの平面部に分かれることになる。これらの平面部は、図4(a)に示すように、それぞれ電界受面部166、放射面部167となる。そのうえで、図4(b)に示すように、電界受面部166は、カプラ150の放射器151の面とほぼ平行な状態で対向するようにして設けられる。放射面部167は、図においては放射器151よりも下側に位置する。これは、放射面部167を、ここでは図示していない受信装置200側のカプラ250(放射器251)側に位置させていることを意味する。また、電界受面部166と放射面部167の間に角度aを与えていることで、放射面部167を、ここでは図示していない受信装置200のカプラ250の方向にほぼ向けた状態とすることができる。これは次に説明する、再放射する電界の放射方向を設定していることに対応する。
【0051】
上記の形状および配置の態様を採る電界補強部材160は、送信装置100側の放射器151と受信装置200側の放射器251との間で電界結合が生じているときに、次のようにして機能する。すなわち、まず、電界補強部材160においては、まず、放射器151から発生された電界を電界受面部166にて受ける。そして、この受けた電界を、放射面部167により再放射する。この結果、受信装置200側の放射器251に対しては、放射器151から直接に放射される成分と、電界補強部材160から再放射された成分とが合成されて放射される。したがって、電界補強部材160が設けられることによっては、より強化された電界が与えられる結果となる。
【0052】
これにより、例えば、カプラの周囲に金属が存在することで、その反射や遮蔽の作用によって電界が弱められたとしても、電界補強部材160により、その弱められた分を補強することが可能となる。すなわち、通信装置としてカプラの周囲に金属が存在する構造を有しているとしても、実用に充分足るだけの通信品質を維持できる。
【0053】
[電界補強部材とカプラとの他の位置関係例]
図6は、電界補強部材160とカプラ150(放射器151)との位置関係についての他の例を示している。図6(a)は正面図、図6(b)は側面図である。
【0054】
図6の電界補強部材160は、図4の場合と比較して、カプラ150に対してより上側となるようにしてその位置が変更されている。具体的には、先の図4(a)では、例えば電界補強部材160は、その電界受面部166側のスリット165の部分が、ほぼ放射器151と対向している。これに対して、図6(a)では、電界補強部材160における電界受面部166と放射面部167の間の空間部分が、ほぼ放射器151と対向している状態が示されている。
【0055】
また、図7は、本発明の第1の実施の形態における、電界補強部材160とカプラ150(放射器151)との位置関係についてのさらに他の例を示している。図7(a)は正面図であり、図7(b)は側面図である。図7は、電界補強部材160自体が、放射器151よりも下側にあるようにしてその位置が設定されている。
【0056】
本発明の第1の実施の形態では、上記図4、図6および図7に例示したようにして、電界補強部材160の位置を変更できるが、いずれの位置に関しても次のことが共通にいえる。つまり、電界受面部166側が同じ送信装置100内のカプラ150(放射器151)に近く、放射面部167側が、図示しない受信装置200側のカプラ250(放射器251)に近いという位置関係となっている。これにより、電界補強部材160により放射器151からの電界を受けてこれを再放射するという動作が、図4の場合だけではなく、図6または図7の位置関係の場合にも得られることになる。なお、受信装置200側のカプラ250(放射器251)は、特許請求の範囲に記載の通信先結合器の一例となる。
【0057】
[外筐内における電界補強部材の固定状態例]
次に、図8により、外筐内における電界補強部材160の具体的な固定状態例を示す。図8は、外筐の具体形状とともに、その内部を示す断面図である。この図において外筐は、外筐本体111およびバッテリ蓋部112の部位から成るものとして示されている。外筐本体111は、例えば送信装置100の外筐が形成する本体部の一部である。また、バッテリ蓋部112は、ここでは図示していない開閉機構によって開閉が可能に支持されている。これにより、例えばバッテリ蓋部112により開口部184を開いて、本体内部に対してバッテリ182を装脱することができる。図では、バッテリ蓋部112により開口部が閉じられた状態が示されている。例えば送信装置100のユーザがバッテリ182を交換するときには、このバッテリ蓋部112を開けて開口部からバッテリ182を抜き出すようにする。また、抜き出してあったバッテリ182を開口部から差し込んで装着する。
【0058】
図8においては、上記のようにして外筐110内に装填されるバッテリ182の左側において、基板170が配置されている。そして、この基板170上にカプラ150が形成されている。この基板170は、外筐110の内部において固定的に設けられるものである。従って、基板170上に形成されるカプラ150は、送信装置100内に固定して設けられていることになる。そのうえで、このカプラ150が形成されている左側近傍には、筐体内樹脂部183が設けられている。この筐体内樹脂部183は、外筐内部において所定の目的で樹脂により形成されている部位である。
【0059】
そこで、この例では、図示するようにして、筐体内樹脂部183において、放射器151と最適な位置関係が得られる位置に対して電界補強部材160を貼り付けるようにして設けることとしている。この筐体内樹脂部183に取り付けられた電界補強部材160とカプラ150との位置関係を抜き出してみれば、例えば、図4(a)とほぼ同じであることがわかる。
【0060】
ここで、上記のようにして電界補強部材160が取り付けられる筐体内樹脂部183は樹脂であるために、誘電体として相応に高い誘電率を有する。この筐体内樹脂部183の誘電動作によって、電界補強部材160において有効となる電界の波長が実際よりも短縮される。例えば本願発明者によっては、10〜20%ほどにまで短縮されることがわかった。そこで、図8に示す電界補強部材160では、図5により説明したL1+L2+L3による長さを、λ/2の80〜90%程度に設定して形成できることになる。これにより、電界補強部材160をさらに小さいサイズとすることができる。
【0061】
[通信機能がリムーバブルの構成例]
また、これまでにおいては、例えば送信装置100として通信機能が組込み済とされている構成を前提として説明してきた。しかし、例えば、送信装置100自体は、本来は通信機能を持たずに、通信機能を有するリムーバブル形式の装置を装填することで、送信装置100としての通信機能が得られるようにした構成を採ることも考えられる。
【0062】
このような構成の具体例を図9に示す。この図に示すように、送信装置100としては、図8において示した基板170に代えて、カード型通信装置170Aが取り付けられている。このカード型通信装置170Aは、リムーバブル形式であって、例えば図1との対応では、少なくとも通信処理部140とカプラ150の構成を有する。したがって、カード型通信装置170Aが装填されていない場合、送信装置100は、通信処理部140とカプラ150を備えておらず、すなわち通信機能は有していない状態である。
【0063】
ユーザは、送信装置100に通信機能を与えるためには、バッテリ蓋部112を開いて、開口部184から所定の挿入口などに対してカード型通信装置170Aを差し込むようにして装填する。なお、送信装置100において、このカード型通信装置170Aが装脱される部位が、本願発明の特許請求の範囲に記載の通信装置装脱部の一例と成る。そして、通信装置装脱部カード型通信装置170Aが適正に装填された状態でバッテリ蓋部112が閉じられれば、送信装置100側の制御部120と、カード型通信装置170Aの通信処理部140とが電気的に接続されて、送信装置100としては、通信処理部140とカプラ150を制御して通信を制御可能になる。つまり、本発明の実施の形態の通信機能が与えられる。また、カード型通信装置170Aが適正に装填された状態では、図示するようにして送信装置100の外筐内における規定の位置にカプラ150が位置する。この場合、電界補強部材160は、この規定の位置にくるカプラ150と最適な位置関係が得られるようにして筐体内樹脂部183に対して貼り付けられるべきものとなる。
【0064】
このようにして、電界補強部材160は、カプラ150を実際に有する装置とは別の装置に設けられてよい。例えば、図9のようにしてカード型通信装置170Aがリムーバブル形式の場合には、送信装置100に装填されるカード型通信装置170Aが特定のものではなく、その都度異なる可能性がある。そこで、電界補強部材160については、送信装置100側に設けることとすれば、装填されたカード型通信装置170Aのいずれにも対応して共通に電界を補強することができる。この場合、カード型通信装置170A側については、電界補強のための構成を与える必要がなくなる。
【0065】
[送信装置と受信装置とでともに電界補強部材を設けた場合]
これまでの説明では、送信装置100を例に挙げて電界補強部材160を設けた構成について説明してきた。しかし、電界補強部材を設ける構成は、通信相手である、受信装置側にも設けてよい。図10の斜視図は、送信装置100と受信装置200とで、それぞれ電界補強部材160または電界補強部材260を設けた場合の、外筐内での配置態様を模式的に示している。
【0066】
送信装置100側では外筐110において、例えば図8に示した構造に倣って、基板170にカプラ150を形成している。そして、このカプラ150の放射器151の位置に対応して、電界補強部材160を設けている。そして、受信装置200においても、外筐210内にて、基板270にカプラ250を設けたうえで、放射器251の位置に対応させて電界補強部材160を設けている。
【0067】
なお、受信装置200が送信装置100と同型の機器である場合には、受信装置200は、送信装置100と同じ外形を有したうえで、外筐210内において同じ配置位置、態様によってカプラ250、および電界補強部材260が設けられる。なお、この場合の受信装置200におけるカプラ250、および電界補強部材260は、送信装置100側のカプラ150および電界補強部材160と同一のものとされてよい。そして、送信装置100側と受信装置200側とで通信を行わせようとするときには、例えば図示するようにして、互いの内部におけるカプラ150および250が通信可能な距離範囲に収まるようにする。この際には、例えば送信装置100と受信装置200同士を近づけるか、接触させるようにする。これにより、カプラ150とカプラ250との間で電界結合が生じて通信が行われる。
【0068】
上記のようにして、受信装置200側に電界補強部材260が設けられる場合、受信装置200側の電界補強部材260は、例えば次のようにして機能する。つまり、電界補強部材260は、送信装置100のカプラ150から放射されて受信装置200に対して伝搬してきた電界を、まず、送信装置100(カプラ150)側に近い方の面で受ける。さらに、この受けた電界を、電界補強部材260の放射器251と対向する面から放射器251に対して放射する。このように、例えば受信装置200において、例えば図4に示した送信装置100と同じようにして電界補強部材260を設けた場合には、電界受面部166と放射面部167とが入れ替わることになる。そして、上記の説明から理解されるように、受信装置200側において電界補強部材260が設けられることによっても、受信側において放射器251にて受ける電界を強化させることが可能になる。したがって、本発明の実施の形態の電界補強部材を設ける構成を、送信装置側と受信装置側とで併用すれば、その電界補強の効果をより高めることができる。
【0069】
<2.変形例>
[第1の変形例]
図11は、本発明の実施の形態において第1の変形例となる電界補強部材160の構成例を示している。なお、この図において、図4と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。こ場合の電界補強部材160Aは、図10(a)の正面図からわかるように、例えば図4に示した電界補強部材160に形成していたスリット165が省略され、コの字状による平板として形成されている。つまり、この場合の電界補強部材160Aは、ループ状ではなく、外形がコの字状の平板として形成されている。
【0070】
ただし、電界補強部材160Aのサイズに関しては、本発明の第1の実施の形態の電界補強部材160Aと同様にして規定すればよい。すなわち、図12に示すようにして、第1脚部161の内側の辺の長さL1、第2脚部162の内側の辺の長さL2、これら辺を連結する辺の長さL3について、先の(式1)が成立するようにして設定すべきものとなる。これにより、電界補強部材160Aの電界補強の性能を最も高くすることができる。そのうえで、例えば、図8などに例示したように、電界補強部材160Aを樹脂などの誘電体に接触または近接させた設けた場合には、この誘電体の誘電率に応じた波長λの短縮率に応じて、上記各辺の長さL1、L2およびL3を設定すればよい。なお、ここでの誘電体としては、先に筐体内樹脂部183として挙げた樹脂だけではなく、例えばセラミックやガラスなどとされてもよい。
【0071】
なお、図11(b)の側面図に示されるように、この場合の電界補強部材160Aは、図4の電界補強部材160のようにして折り曲げられることなく平面になっている。このような平面的な形状であっても、例えば電界補強部材160とカプラ150側との位置関係関の設定により、電界補強部材160Aは、カプラ150からの電界を受けて再放射する機能を発揮できる。また、図11においては、電界補強部材160Aとカプラ150との位置関係について、ほぼ図4と同じに設定した例を示している。しかし、電界補強部材160Aを採用することとした場合にも、先に図6および図7などに例示した位置関係を設定してよい。
【0072】
また、電界補強部材160Aは、図13(a)の斜視図に示すようにして、例えば図12の一点鎖線Fを折り目として、第1脚部161と第2脚部162の各平面が、略90度の角度を成すようにして折り曲げた形状とすることもできる。この場合には、例えば図13(b)の側面図に示すように、電界補強部材160Aは、例えば通信方向と直交する側の面が、放射器151とは反対となる側に向くようにして配置する。
【0073】
なお、このように電界補強部材を略90度に折り曲げて配置する態様は、例えば、先に本発明の第1の実施の形態として示した、スリット165を有する電界補強部材160にも適用できる。
【0074】
[第2の変形例]
図14は、本発明の実施の形態において第2の変形例となる電界補強部材160Bの構成例を示している。これまでに、図4および図11などに示してきた電界補強部材160および160Aは、板の平面形状としてコの字状を形成していた。これに対して、第2の変形例の電界補強部材160Bついては、例えば図14(a)の斜視図からわかるように、長方形の板を折り曲げることによって、コの字状を形成している。つまり、その厚み部分により形成される全体の形状がコの字状となるようにされている。
【0075】
なお、この場合においても、コの字状を形成する内側の3辺の長さL1、L2およびL3について(式1)を満たすようにしてサイズを設定する点については、先の本発明の第1の実施の形態および第1の変形例の場合と同様である。また、電界補強部材160Bが誘電体に接触又は近接して設けられる場合には、その誘電率に応じて短縮された波長に応じて、長さL1、L2およびL3を設定する点も、先の本発明の第1の実施の形態および第1の変形例の場合と同様である。ただし、電界補強部材160Bの場合には、コの字状が形成され側からみた脚部の幅は、電界補強部材160Bを形成する金属板の厚さに相当する。したがって、電界補強部材160Bは、例えば長さL1、L2およびL3のそれぞれが、そのまま第1脚部161、第2脚部162および連結部163の長さであるとして捉えてよい。すなわち、この第2の変形例としての電界補強部材160Bは、λ/2に相当するものとしてみてよいL1+L2+L3の長さを有する長方形の金属板を折り曲げるようにして形成することができる。
【0076】
また、第2の変形例では、外筐110における電界補強部材160Bとカプラ150(放射器151)との位置関係として、図14(b)と図14(c)の2例を挙げている。まず、図14(b)においては、電界補強部材160Bを、外筐110において、放射器151の下側手前に配置した例を示している。つまり、電界補強部材160Bにおける上側の脚部の面を放射器151に近接させ、下側の脚部の面を、ここでは図示していない受信装置200側のカプラ250に近くなるようにした配置である。
【0077】
次の図14(c)においては、外筐110において電界補強部材160Bを放射器151のほぼ真下に配置している。この状態では、電界補強部材160Bは、放射器151と、ここでは図示しない受信装置200側のカプラ250(放射器251)との間に対して配置されることになる。例えば本願発明者が確認したところ、図14(b)と図14(c)とでは、図14(c)の方が、より高い通信品質が得られた。
【0078】
[第3の変形例]
図15により、本発明の実施の形態の第3の変形例について説明する。図15(a)に示す電界補強部材160Cは、図4(a)に示した電界補強部材160を基として第3の変形例を適用したものとなる。また、図15(b)の電界補強部材160Dは、図11に示した第1の変形例としての電界補強部材160Aを基として第3の変形例を適用したものとなる。
【0079】
先の第1の実施の形態、および第1、第2の変形例においては、電界補強部材としてのコの字状を形成する2つの第1脚部161と第2脚部162とについて同じ長さを設定していた。これに対して、第3の変形例では、例えば図15(a)、図15(b)に示すようにして、第1脚部161および第2脚部162を互いに異なる長さに設定した形状とする。
【0080】
なお、この場合においても、第1脚部161と第2脚部162とが対向する側の2つの辺と、これら2つの辺を連結する1つの辺の各長さの合計であるL1+L2+L3については、1/2波長に対応するようにして設定されるべきものとなる。また、図15(a)、図15(b)に示す電界補強部材160、160Aも、図4および図13などに示したように、例えば一点鎖線Fを折り目として90度以下または略90度に折り曲げた形状として形成されてよい。
【0081】
また、この第2の変形例にあっては、長い方の脚部側を放射器151に近い側に位置させ、短い方の脚部を、受信装置200のカプラ250に近い方向位置させるという配置と、その逆の配置を考えることができる。逆の配置の場合には、短い方の脚部側を放射器151に近い側に位置させ、長い方の脚部を、受信装置200のカプラ250に近い方向に位置させることになる。これについては、実際に想定される諸条件を考慮して選べばよい。例えば通信品質を重視する場合には、実際に試験などを行って、より良好な通信品質が得られる方を選ぶこととすればよい。また、外筐110内での実際の電界補強部材の取り付け部位などの形状などに応じて適切な方を選ぶということも考えられる。
【0082】
なお、これまでの実施の形態および変形例における電界補強部材は、金属加工した板金により形成することができるが、ほかにも、例えばテープ状の銅やアルミニウムなどを利用して形成することもできる。
【0083】
また、例えば本発明の第1の実施の形態の電界補強部材160のようにしてループを形成するものについては、例えば線状の金属によってループを形成した構造とすることも考えられる。
【0084】
また、これまでの説明では、電界補強部材は略コの字状を形成するものとして直線的な辺から成る形状としている。しかし、例えば連結部が曲線状の辺を形成するなどして、全体としてU字状を形成するような外形形状とすることも考えられる。
【0085】
また、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、本発明の実施の形態において明示したように、本発明の実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本発明の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【符号の説明】
【0086】
100 送信装置
110 外筐
111 外筐本体
112 バッテリ蓋部
120 制御部
130 メモリ
140 通信処理部
150、250 カプラ
151、251 放射器
160、160A〜160D 電界補強部材
161 第1脚部
162 第2脚部
163 連結部
165 スリット
166 電界受面部
167 放射面部
170 基板
170A カード型通信装置
181 金属フレーム
182 バッテリ
183 筐体内樹脂部
200 受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の通信可能距離内にある通信先結合器との間で電界結合を生じさせるための結合器の外筐内部での規定位置に応じて設定された前記外筐内部の所定位置に設けられ、互いに離間した位置関係の2つの脚部とこれらの脚部の各一端を連結する連結部とが一体に形成された外形形状を有し、当該外形形状の内側を形成する辺部の長さが前記電界結合により生じる電界周波数に応じた波長の1/2に基づいて設定された板状の金属である電界補強部材を
を具備する電子機器。
【請求項2】
前記電界補強部材は、前記外筐内部において誘電体と接触または近接した状態で設けられるとともに、前記外形形状の内側を形成する辺部の長さは、前記誘電体の誘電率に応じて短縮される前記波長の1/2に基づいて設定される
請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記電界補強部材は、前記板状の平面方向において前記外形形状を有し、前記連結部に相当する部位における前記2つの脚部に沿った方向を折り曲げ位置として、一方の脚部が形成する面部と他方の脚部が形成する面部とが所定角度を形成する
請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
前記電界補強部材において前記一方の脚部が形成する面部は前記外筐内部での結合器の規定位置近傍に配置され、前記電界補強部材において前記他方の脚部が形成する面部は前記外筐内部での結合器の規定位置よりも前記通信先結合器側に近い側に配置される
請求項3記載の電子機器。
【請求項5】
前記電界補強部材は、前記外形形状に沿ったループ状に形成される
請求項3記載の電子機器。
【請求項6】
前記電界補強部材は、板状の金属の厚み部分が前記外形形状を有するようにして形成される、
請求項1記載の電子機器。
【請求項7】
前記電界補強部材は、前記外筐内部での結合器の規定位置と前記通信先結合器との間の位置に設けられる
請求項6記載の電子機器。
【請求項8】
前記電界補強部材は、前記2つの脚部が互いに異なる長さである
請求項1記載の電子機器。
【請求項9】
前記結合器を備える通信装置が装脱される部位であって、前記通信装置が適正に装着されることで前記結合器が前記外筐内部での規定位置となるように形成される通信装置装脱部をさらに具備する
請求項1記載の電子機器。
【請求項10】
所定の通信可能距離内にある通信先結合器との間で電界結合を生じさせるためのもので、外筐内部の所定位置に設けられる結合器と、
互いに離間した位置関係の2つの脚部とこれらの脚部の各一端を連結する連結部とが一体に形成された外形形状を有し、当該外形形状の内側を形成する辺部の長さが前記電界結合により生じる電界周波数に応じた波長の1/2に基づいて設定された板状の金属である電界補強部材と
を具備する通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−139283(P2011−139283A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297767(P2009−297767)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】