説明

電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラム

【課題】機器本体からの電力の供給が遮断した場合におけるデータの消失に対処する仕組みを提供する。
【解決手段】画像形成装置は、ステップS203で強制メモリ受信設定がされている場合に、機器本体からRAMに電力が供給されている状態で、ステップS204でバックアップ用電池の検知電圧が規定値を下回ると判断されたときは、ステップS205でRAMに保持されたデータを印刷部に出力し、ステップS204でバックアップ用電池の検知電圧が規定値を超えると判断されたときは、ステップS208でユーザ操作により前記強制メモリ受信設定が解除されてからRAMに保持されたデータを印刷部に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性メモリを備える画像形成装置等の電子機器、その制御方法、プログラムに関し、特に機器本体からの電力の供給が遮断した場合における揮発性メモリのバックアップ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置等をはじめとする様々な電子機器に内蔵された揮発性メモリは、機器本体からの電力の供給が遮断された際に、バックアップ用電池から電力を供給されることで、データを保持し続けることができる。
【0003】
例えば特許文献1では、機器本体から供給される電力の電圧を検知し、検知電圧が所定値以下の場合は揮発性メモリに対する電力の供給を機器本体からバックアップ用電池に切り換え、揮発性メモリへの書き込みを禁止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−174809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、ファクシミリ機能を備える電子機器では、データ受信後にユーザ操作により印刷出力指示を行うまでは、揮発性メモリに受信データを保持しておくものがある。
【0006】
しかし、上記特許文献1では、揮発性メモリに対する電力の供給が機器本体からバックアップ用電池に切り換えられたときに揮発メモリへの書き込みを禁止するだけである。この場合、既に(機器本体から電力が供給されている状態で)揮発性メモリに保持されたデータを保護することはできない。
【0007】
なぜなら、揮発性メモリに対する電力の供給が機器本体からバックアップ用電池に切り換えられた後、機器本体からの電力の供給が再開されないまま長時間が経過すると、バックアップ用電池からの電力の供給も止まってしまうためである。この場合、揮発性メモリに保持されたデータが消失してしまうことになる。
【0008】
そこで、本発明は、バックアップ用電池の検知電圧が規定値を下回るときに、揮発性メモリに保持されるべきデータを出力することにより、機器本体からの電力の供給が遮断した場合におけるデータの消失に対処する仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の電子機器は、機器本体、又はバックアップ用電池から電力が供給される揮発性メモリと、前記バックアップ用電池の電圧を検知する検知手段と、前記機器本体からの電力の供給が遮断した場合に、前記バックアップ用電池から前記揮発性メモリへ電力が供給されるように切り換える切り換え手段と、外部機器からデータを受信して前記揮発性メモリに保持させる受信手段と、前記機器本体から前記揮発性メモリに電力が供給されている状態で、前記検知手段が検知した前記バックアップ用電池の電圧が規定値を下回るときに、前記揮発性メモリに保持されるべきデータを出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機器本体からの電力の供給が遮断した場合におけるデータの消失に対処する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の電子機器の第1の実施形態である画像形成装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図2】画像形成装置のFAX通信時における動作例について説明するためのフローチャート図である。
【図3】本発明の電子機器の第2の実施形態である画像形成装置のFAX通信時における動作例について説明するためのフローチャート図である。
【図4】操作パネルの表示例を示す図である。
【図5】本発明の電子機器の第3の実施形態である画像形成装置のFAX通信時における動作例について説明するためのフローチャート図である。
【図6】操作パネルの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の電子機器の第1の実施形態である画像形成装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、印刷部107、読取部109、操作パネル110、回線I/F112、及びこれらの制御を司るコントローラ部101を備える。
【0015】
コントローラ部101は、CPU102、RAM103、バックアップ用電池121、ROM104、印刷部I/F106、読取部I/F108、モデム111、及びネットワークI/F118を有し、各ブロックは、システムバス105を介して接続される。
【0016】
CPU102は、画像形成装置100全体の制御を司り、また、ROM104や不図示のHDD等に記憶された制御プログラムをRAM(揮発性メモリ)103にロードして所定の処理を実行する。バックアップ用電池121は、機器本体からRAM103への電力供給が遮断された際に、RAM103へ電力を供給する。
【0017】
CPU102は、機器本体からの電力の供給が遮断した場合に、RAM103への電力供給経路を機器本体の電源からバックアップ用電池121へと切り換える。
【0018】
ネットワークI/F118は、LAN120などを介してPC(パーソナルコンピュータ)と通信処理を行う。モデム111は、回線I/F112を介して公衆回線網114に接続され、不図示の他の画像形成装置やファクシミリ装置、電話機等の外部機器と通信処理を行う。回線I/F112と公衆回線網114とは、一般に電話線113等を介して接続される。
【0019】
印刷部I/F106は、印刷部(プリンタエンジン)107に画像信号を出力するインターフェースである。読取部I/F108は、読取部(スキャナエンジン)109からの読取画像信号を入力するインターフェースである。
【0020】
CPU102は、読取部109から読取部I/F108を介して入力された画像信号に対して所定の処理を施し、記録画像信号として印刷部I/F106を介して印刷部107に出力する。
【0021】
CPU102は、ROM104のフォント領域に記憶されたフォント情報を用いて、操作パネル110の表示領域に文字や記号を表示したり、操作パネル110からのユーザの指示情報を受け付けたりする。
【0022】
ROM104のデータ領域には、画像形成装置100の装置情報やユーザの電話帳情報、部門管理情報などが記憶され、CPU102により必要に応じて読み出され、必要に応じて更新される。
【0023】
次に、画像形成装置100におけるファクシミリ(以下、FAXという。)機能について説明する。
【0024】
FAX送信においては、読取部109で読み取った画像データを一旦RAM103に保持した後、公衆回線網114を介して外部機器に送信し、送信完了後、RAM103に保持した画像データを消去する。
【0025】
FAX受信においては、公衆回線網114を介して受信した画像データをRAM103に保持した後、印刷部107に出力して印刷を行い、印刷完了後、RAM103に保持した画像データを消去する。
【0026】
また、FAX受信には、強制メモリ受信機能が存在する。強制メモリ受信が設定されているときは、公衆回線網114を介して受信した画像データをRAM103に保持し続ける。そして、ユーザが操作パネル110で強制メモリ受信の設定を解除操作すると、画像データを印刷部107に出力して印刷し、印刷完了後、RAM103に保持した画像データを消去する。
【0027】
また、機器本体からRAM103へ電力が供給されている状態で、強制メモリ受信が選択され、かつバックアップ用電池121の検出電圧が規定値を下回るときは、受信した画像データをRAM103に保持した後、印刷部107に出力して印刷を行う。そして、印刷完了後、RAM103に保持した画像データを消去する。つまり、RAM103に対する画像データの格納を制限する。
【0028】
次に、図2を参照して、画像形成装置100のFAX通信時における動作例について説明する。なお、図2の処理では、機器本体からRAM103へ電力が供給されているものとする。
【0029】
ステップS201では、CPU102は、RAM103に保持すべきデータがある否かを判断し、保持すべきデータがある場合は、ステップS202に進む。
【0030】
ステップS202では、CPU102は、RAM103に保持すべきデータがFAX送信データかFAX受信データかを判断し、FAX送信データの場合は、ステップS206に進み、FAX受信データの場合は、ステップS203に進む。
【0031】
ステップS206では、CPU102は、読取部109で読み取った画像データを一時的にRAM103に保持した後、公衆回線網114を介して外部機器に画像データを送信する。そして、CPU102は、送信完了後、RAM103に保持した画像データを消去して、ステップS201に戻る。
【0032】
ステップS203では、CPU102は、ユーザ操作により操作パネル110で強制メモリ受信が選択されているか否かを判断し、選択されていなければ、ステップS207に進み、選択されていれば、ステップS204に進む。
【0033】
ステップS207では、CPU102は、公衆回線網114を介して受信した画像データをRAM103に保持した後、印刷部107に出力して印刷を行い、印刷完了後、RAM103に保持した画像データを消去し、ステップS201に戻る。
【0034】
ステップS204では、CPU102は、バックアップ用電池121の電圧を検知し、検知電圧が規定値を下回るときは、ステップS205に進み、検知電圧が規定値を超えるときは、ステップS208に進む。
【0035】
ステップS208では、CPU102は、公衆回線網114を介して受信した画像データをRAM103に保持し続ける。そして、CPU102は、ユーザが操作パネル110で強制メモリ受信の設定を解除操作すると、RAM103に保持した画像データを印刷部107に出力して印刷し、印刷完了後、RAM103に保持した画像データを消去して、ステップS201に戻る。
【0036】
ステップS205では、CPU102は、公衆回線網114を介して受信した画像データをRAM103に保持した後、印刷部107に出力して印刷を行う。そして、CPU102は、印刷完了後、RAM103に保持した画像データを消去し、ステップS201に戻る。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、強制メモリ受信が選択されている場合に、バックアップ用電池121の検出電圧が規定値を下回るときは、受信した画像データをRAM103に保持した後、印刷部107に出力して印刷を行う。これにより、バックアップ用電池121の電圧が低下した状態で、ユーザが強制メモリ受信の設定を解除操作するまでの間に機器本体からの電力の供給が遮断し、RAM103に保持されるべき画像データが消失してしまうことに対処することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、図3及び図4を参照して、本発明の電子機器の第2の実施形態である画像形成装置について説明する。図3は画像形成装置100のFAX通信時における動作例について説明するためのフローチャート図、図4は操作パネル110の表示例を示す図である。なお、上記第1の実施形態に対して重複する部分については、その説明を省略し、相違する部分についてのみ説明する。
【0039】
図3において、ステップS204では、CPU102は、バックアップ用電池121の電圧を検知し、検知電圧が規定値を下回るときは、ステップS305に進み、検知電圧が規定値を超えるときは、ステップS208に進む。
【0040】
ステップS305では、CPU102は、図4に示すように、操作パネル110に、ユーザ操作により印刷を実行するか否かを選択させるための操作画面を表示する。そして、CPU102は、図4に示す操作画面で「はい(印刷する)」を選択した場合は、ステップS205に進み、「いいえ(印刷しない)」を選択した場合は、ステップS208に進む。
【0041】
ステップS205では、CPU102は、公衆回線網114を介して受信した画像データをRAM103に保持した後、印刷部107に出力して印刷を行う。そして、CPU102は、印刷完了後、RAM103に保持した画像データを消去し、ステップS201に戻る。
【0042】
ステップS208では、CPU102は、公衆回線網114を介して受信した画像データをRAM103に保持し続ける。そして、CPU102は、ユーザが操作パネル110で強制メモリ受信の設定を解除操作すると、RAM103に保持した画像データを印刷部107に出力して印刷し、印刷完了後、RAM103に保持した画像データを消去して、ステップS201に戻る。その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態と同様である。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、図5及び図6を参照して、本発明の電子機器の第3の実施形態である画像形成装置について説明する。図5は画像形成装置100のFAX通信時における動作例について説明するためのフローチャート図、図6は操作パネル110の表示例を示す図である。なお、上記第1の実施形態に対して重複する部分については、その説明を省略し、相違する部分についてのみ説明する。
【0044】
図5において、ステップS204では、CPU102は、バックアップ用電池121の電圧を検知し、検知電圧が規定値を下回るときは、ステップS505に進み、検知電圧が規定値を超えるときは、ステップS208に進む。
【0045】
ステップS505では、CPU102は、図6に示すように、操作パネル110に、ユーザ操作により強制メモリ受信設定を解除するか否かを選択させるための操作画面を表示する。そして、CPU102は、図6に示す操作画面で「はい(解除する)」を選択した場合は、ステップS506に進み、「いいえ(解除しない)」を選択した場合は、ステップS208に進む。
【0046】
ステップS208では、CPU102は、公衆回線網114を介して受信した画像データをRAM103に保持し続ける。そして、CPU102は、ユーザが操作パネル110で強制メモリ受信の設定を解除操作すると、RAM103に保持した画像データを印刷部107に出力して印刷し、印刷完了後、RAM103に保持した画像データを消去して、ステップS201に戻る。
【0047】
ステップS506では、CPU102は、強制メモリ受信設定を解除し、ステップS205に進む。
【0048】
ステップS205では、CPU102は、公衆回線網114を介して受信した画像データをRAM103に保持した後、印刷部107に出力して印刷を行う。そして、CPU102は、印刷完了後、RAM103に保持した画像データを消去し、ステップS201に戻る。その他の構成及び作用効果は、上記第1の実施形態と同様である。
【0049】
なお、本発明の構成は、上記各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
100 画像形成装置
101 コントローラ部
102 CPU
103 RAM
107 印刷部
110 操作パネル
111 モデム
121 バックアップ用電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体、又はバックアップ用電池から電力が供給される揮発性メモリと、
前記バックアップ用電池の電圧を検知する検知手段と、
前記機器本体からの電力の供給が遮断した場合に、前記バックアップ用電池から前記揮発性メモリへ電力が供給されるように切り換える切り換え手段と、
外部機器からデータを受信して前記揮発性メモリに保持させる受信手段と、
前記機器本体から前記揮発性メモリに電力が供給されている状態で、前記検知手段が検知した前記バックアップ用電池の電圧が規定値を下回るときに、前記揮発性メモリに保持されるべきデータを出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記受信手段が受信したデータを、受信に応じて前記出力手段により出力させるか、ユーザからの指示があるまで前記揮発性メモリに保持させるかを選択する選択手段を更に備え、
前記揮発性メモリに保持されるべきデータとは、前記選択手段によりユーザからの指示があるまで前記揮発性メモリに保持させることが選択されている状態で前記受信手段が受信したデータであることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記出力手段がデータを出力した場合に、前記揮発性メモリにより保持されているデータを消去する消去手段を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記揮発性メモリは、前記外部機器に対して送信すべきデータを保持することも可能であって、
前記揮発性メモリに保持されるべきデータが、前記外部機器に対して送信されるデータである場合は、前記検知手段が検知した前記バックアップ用電池の電圧が前記規定値を下回るとしても、前記出力手段による出力を行わないことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記出力手段は、前記揮発性メモリに保持されるべきデータを印刷することを特徴する請求項1から4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記機器本体から前記揮発性メモリに電力が供給されている状態で、前記検知手段が検知した前記バックアップ用電池の電圧が規定値を下回るときに、前記揮発性メモリに保持されるべきデータを出力するか否かをユーザが指示するための操作画面を表示する表示手段を更に備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
機器本体、又はバックアップ用電池から電力が供給される揮発性メモリを備える電子機器の制御方法であって、
前記バックアップ用電池の電圧を検知する検知ステップと、
前記機器本体からの電力の供給が遮断した場合に、前記バックアップ用電池から前記揮発性メモリへ電力が供給されるように切り換える切り換えステップと、
外部機器からデータを受信して前記揮発性メモリに保持させる受信ステップと、
前記機器本体から前記揮発性メモリに電力が供給されている状態で、前記検知ステップで検知した前記バックアップ用電池の電圧が規定値を下回るときに、前記揮発性メモリに保持されるべきデータを出力する出力ステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−256114(P2012−256114A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127480(P2011−127480)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】