説明

電子機器、電子機器の電源制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラム

【課題】表示パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器において、ユーザの希望使用時間中、可及的にユーザビリティを落とすことなく、バッテリを持続させることが可能な電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】パネル31の各輝度間での消費電力デルタを登録した輝度間消費電力デルタテーブル42と、バッテリ25の残量を検出するPower Managerドライバ52と、パネル31の輝度を設定するPower Manager51とを備え、Power Manager51は、ユーザのバッテリ25の希望動作時間と、バッテリ残量と、および輝度間消費電力デルタテーブル42のデータとに基づいて、パネル31の輝度を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、電子機器の電源制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムに関し、詳細には、表示パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器、電子機器の電源制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電子機器の分野では装置の小型化に伴いバッテリ駆動型の装置が種々登場しており、バッテリ駆動時間に対するユーザの要求は年々大きくなっている。かかるバッテリ駆動型の装置では、種々のパワーセーブ機能を駆使して駆動時間の長時間化が図られている。例えば、いわゆるノート型パソコン(以下「ノート型PC」と称する)では、一定時間装置への操作がない場合には処理速度を低減したり、あるいは液晶表示装置(LCD)の表示を一時停止する等の方法が採られている。
【0003】
また、ユーザがハードウェアスイッチやセットアップメニューでの設定により通常動作時におけるシステムの動作モードを決定することができ、例えばCPUのクロック速度を低速にする等の設定が可能になっているものもある。また、ユーザは、長時間使用する必要がある場合には、上記したパワーセーブ機能を最大限に利用し、あるいはボリューム調整等により液晶表示パネルのバックライト輝度を低下させて使用することが可能となっている。
【0004】
しかしながら、近時、ノート型PCの多機能化が進んで、搭載されるデバイスが増加すると共に、その設定が複雑になってきているため、パソコンについてあまり詳しくないユーザは、現状どのデバイス設定がバッテリを無駄遣いしているか分からず、無駄に電力を消費している場合がある。設定変更可能なデバイスの中で、特に消費電力範囲が大きいのは液晶表示パネルのバックライトである。
【0005】
例えば、ユーザが会議中や外出時に、あと何分、ノート型PCを使う必要があるという状況がある。従来、ユーザが省電力ボタンを押すことで最低消費電力モードを実行する装置が知られている。しかしながら、バッテリ使用可能時間が最長1時間の場合には、最低消費電力モードでは、バッテリを1時間使用するための電力設定を行うため、ユーザが30分使用したい状況に対して、必要以上に性能やユーザビリティを落とす可能性がある。例えば、最低消費電力モードでは、バックライト輝度を必要以上に低下させて、ユーザが暗いモニタを見て操作しなくてはならない状況が発生する。ここで、ユーザビリティに大きく関係するのは、液晶表示パネルの輝度(明るさ)である。
【0006】
ノート型PCの消費電力制御技術として、例えば、以下のものが公知ある。特許文献1の電力制御システムでは、バッテリ駆動型の電子装置において、ユーザが所望の動作時間を設定すると、マイクロコンピュータはこれを動作時間データとしてメモリに記憶し、また、マイクロコンピュータは、充電電流検出器から得られたデータを基にバッテリの容量を残量データとしてメモリに記憶し、メモリ内には、デバイスの各々について各動作モードと消費電力との対応関係を示す消費電力テーブルを格納し、装置動作開始時において、マイクロコンピュータは、バッテリが上記動作時間の経過時まで持続し、かつ各デバイスがその範囲内で最大限の性能を発揮し得るような各消費電力値を計算して各デバイスの動作モードを決定し、これを設定する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2のバックライト輝度制御方法では、各種のLCDパネルに対応するバックライト輝度、およびコントラストを制御するため制御パラメータを記憶しておき、LCDパネルの種別を検出することにより、検知した種別に対応するLCDパネル用の制御パラメータに基づいて、バックライト輝度、およびコントラストのボリューム制御用のデフォルト値を自動的に設定すると共に、バックライト輝度、コントラストの変更指示がなされた場合は、検知した種別に対応するLCDパネル用の制御パラメータを参照して上記変更指示に応じたバックライト輝度、コントラストの変更処理を行う技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平5−307431号公報
【特許文献2】特開平11−326866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記両特許文献では、ユーザのバッテリ希望時間に応じて、ユーザビリティを落とすことなく、バッテリを持続させるための表示パネルの電力制御方法に関して、具体的に記載されていない。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、表示パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器において、ユーザの希望使用時間中、可及的にユーザビリティを落とすことなく、バッテリを持続させることが可能な電子機器、電子機器の電源制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、表示パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器において、前記表示パネルの各輝度間での消費電力デルタを登録した輝度間消費電力デルタテーブルと、前記表示パネルの輝度を設定する輝度設定手段と、前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出手段と、ユーザ操作に応答して、希望動作時間を設定する希望動作時間設定手段と、を備え、前記輝度設定手段は、前記希望動作時間設定手段で設定された希望動作時間と、前記バッテリ残量検出手段で検出されたバッテリ残量と、および前記輝度間消費電力デルタテーブルのデータと、に基づいて、前記表示パネルの輝度を設定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記輝度設定手段は、前記バッテリの希望動作時間と前記バッテリ残量とに基づいて、目標消費電力を算出し、現在の平均消費電力と前記目標消費電力との差分を目標削減電力として算出し、前記輝度間消費電力デルタテーブルを参照して、現在の輝度から輝度を順次下げてゆき、その輝度間消費電力デルタの合計が前記目標差分電力に達する輝度を、前記パネルに設定することが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記輝度間消費電力デルタテーブルは、前記表示パネルのサイズ毎に、各輝度間での消費電力デルタを登録しており、前記表示パネルのサイズを検出するパネルサイズ検出手段を備え、前記輝度設定手段は、前記バッテリの希望動作時間と、前記バッテリ残量と、および前記輝度間消費電力デルタテーブルの検出されたパネルサイズのデータとに基づいて、前記表示パネルの輝度を設定することが望ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記輝度間消費電力デルタテーブルに登録されている、前記表示パネルのサイズ毎の各輝度間での消費電力デルタは、複数のメーカの表示パネルの平均値であることが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記表示パネルは、液晶表示パネルであることが望ましい。
【0016】
上記した課題を解決して、本発明の目的を達成するために、本発明は、表示パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器の電源制御方法において、前記表示パネルの輝度を設定する輝度設定工程と、前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出工程と、ユーザ操作に応答して、バッテリの希望動作時間を設定する希望動作時間設定工程と、を含み、前記輝度設定工程では、前記設定されたバッテリの希望動作時間と、前記検出されたバッテリ残量と、および前記表示パネルの各輝度間での消費電力デルタを登録した輝度間消費電力デルタテーブルのデータと、に基づいて、前記表示パネルの輝度を設定することを特徴とする。
【0017】
上記した課題を解決して、本発明の目的を達成するために、本発明は、表示パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器に搭載されるプログラムにおいて、前記表示パネルの輝度を設定する輝度設定工程と、前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出工程と、ユーザ操作に応答して、前記バッテリの希望動作時間を設定する希望動作時間設定工程と、をコンピュータに実行させ、前記輝度設定工程では、前記設定されたバッテリ希望動作時間と、前記検出されたバッテリ残量と、および前記表示パネルの各輝度間での消費電力デルタを登録した輝度間消費電力デルタテーブルのデータと、に基づいて、前記表示パネルの輝度を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、表示パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器において、前記表示パネルの各輝度間での消費電力デルタを登録した輝度間消費電力デルタテーブルと、前記表示パネルの輝度を設定する輝度設定手段と、前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出手段と、ユーザ操作に応答して、希望動作時間を設定する希望動作時間設定手段と、を備え、前記輝度設定手段は、前記希望動作時間と、前記バッテリ残量と、および前記輝度間消費電力デルタテーブルのデータとに基づいて、前記表示パネルの輝度を設定することとしたので、表示パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器において、ユーザの希望使用時間中、可及的にユーザビリティを落とすことなく、バッテリを持続させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。以下の実施例では、本発明に係る電子機器の一例として、ノート型PCについて説明する。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明に係る電子機器を適用したノート型PCの外観構成を示す図である。同図において、1はノート型PC、10はパソコン本体部、11はキーボードやスライスパッドを備えた入力部、30は表示部、31液晶表示パネル、27はパソコン本体11に対して、表示部13を回転可能に支持する回転支持部を示している。
【0021】
図2は、図1のノート型PCの概略のハードウェア構成例を示す図である。ノート型PC1は、同図に示すように、CPU12、CPUブリッジ13、メイン・メモリ14、ビデオコントローラ15、液晶表示パネル31、I/Oブリッジ17、無線モジュール18、HDD(ハードディスク)19、ROM20、I/Oコントローラ21、入力部11、エンベデットコントローラ22、パワーコントローラ23、DC−DCコンバータ24、バッテリ25、およびACアダプタ26等を備えている。
【0022】
CPU12は、CPUブリッジ13およびI/Oブリッジ17を介して接続されたHDD19に格納されたOSによりPC全体の制御を行うとともに、HDD19に格納された各種のプログラムに基づいて処理を実行する機能を司る。ROM20は、BIOS41やデータ等を格納している。メイン・メモリ14は、例えば、RAMで構成されており、CPU12による各種プログラムの実行時にワークエリアとして利用されるメモリ機能を有している。
【0023】
表示部30は、液晶表示パネル(以下、「パネル」と称する)31、バックライト(不図示)、バックライトを駆動するインバータ(不図示)、液晶表示パネル30を駆動するドライバ回路等を備えている。液晶表示パネル(以下、「パネル」と称する)31は、CPU12の各種の処理に伴うメニュー、ステータス、表示遷移等を表示する機能を有している。ビデオコントローラ15は、CPU12の制御に従って、インバータを制御してバックライトの輝度を調整したり、また、ビデオ信号をドライバ回路に送出して、液晶表示パネル31の表示を制御する。無線モジュール13は、インターネット等のネットワークに接続したり、赤外線で他の機器との通信を接続する機能を司る。
【0024】
入力部11は、文字、コマンド等を入力する各種キーより構成されるキーボードや画面上のカーソルを移動させたり、各種メニューを選択するスライスパッドを備えている。I/Oコントローラ21は、入力部11の入力操作を検出して、CPU12に出力する。
【0025】
ハードディスク19は、ノート型PC全体の制御を行うためのOS、Power Manager(OS Application)、Power Managerドライバ、Graphicsドライバ、各種アプリケーションプログラム等を記憶する機能を有している。
【0026】
ACアダプタ26は、商用電源に接続して、AC電圧をDC電圧に変換してDC−DCコンバータ24に出力する。DC−DCコンバータ24は、ACアダプタ26から供給されるDC電圧を所定の電圧に変換して各部に電力を供給し、また、バッテリ25の充電を行う。バッテリ25は、DC−DCコンバータ24により充電され、充電した電圧を各部に供給する。バッテリ25は、ACアダプタ26が商用電源に接続されていない場合に使用される。パワーコントローラ23は、DC−DCコンバータ24の動作を制御する。エンベデッドコントローラ22は、バッテリ25の動作を制御する。
【0027】
ハードディスク19に格納されるPower Manager(OS Application)、Power Managerドライバ、Graphicsドライバを読み出してCPU12が実行することにより実現される機能について図2〜図11を参照しながら説明する。
【0028】
図3は、図2のノート型PCの電力制御系のシステム構成(ソフトウエア構成)を示す図である。図3において、BIOS41には、輝度間消費電力デルタテーブル42が格納されている。図4は、輝度間消費電力デルタテーブル42の一例を示す図である。同図に示すように、輝度間消費電力デルタテーブル42は、各パネルサイズ(14″XGA、14″SXGA+、15″WXGA、15″WSXGA+、15″WUXGA+)と、各輝度間(L0−L1,L1−L2、L2−L3,L3−L4、L4−L5,L5−L6、L6−L7,L7−L8、L8−L9,L9−L10、L10−L11,L12−L13、L14−L15)の電力消費デルタを関連づけて登録している。
【0029】
BIOS41は、使用されているパネル31のサイズを検出するパネルサイズ検出手段として機能する。BIOS41は、パネル31からEDIDを読み込んでパネルサイズを検出し、輝度間消費電力デルタテーブル42から使用されているパネルサイズのデータを読み出して、Power Managementドライバ52を介して、Power Manager51に出力する。
【0030】
Power Manager51は、パネル31の輝度を設定する輝度設定手段、およびユーザ操作に応答して、希望動作時間を設定する希望動作時間設定手段として機能する。図5は、Power Manager51がパネル31に表示するバッテリ希望動作時間設定画面の一例を示す図である。図5に示すように、バッテリ希望動作時間設定画面では、使用パネルのサイズ、現在のバッテリ41の使用可能時間、希望動作時間入力欄60が表示されている。ユーザは、入力部11を操作して、希望動作時間入力欄60でバッテリ25の希望動作時間を入力する。
【0031】
Power Manager51は、ユーザから使用希望時間の要求があった場合には、Power Managerドライバ52に、バッテリ情報(バッテリ残容量、平均消費電力(例えば、過去5分間の消費電力の平均値))を要求し、バッテリ情報(バッテリ残容量、平均消費電力)を受け取る。また、Power Manager51は、Graphicsドライバ53から現在の輝度情報を取得するとともに、BIOS41からPower Managerドライバ52を介して、使用されているパネルサイズの輝度間消費電力デルタデータを受け取る。Power Manager51は、バッテリ25の希望動作時間と、バッテリ情報と、および輝度間消費電力デルタテーブル42のデータとに基づいて、パネル31の輝度を算出し、輝度の変更要求をGraphicsドライバ53に出力する。Graphicsドライバ53は、Power Manager51から輝度変更要求があった場合に、輝度変更をビデオコントローラ15に指示する。ビデオコントローラ15は、Graphicsドライバ53の輝度変更指示に従って、パネル31の輝度を変更する。
【0032】
Power Managerドライバ52は、Power Manager51のバッテリ要求に従って、エンベデットコントローラ22を介して、バッテリ情報を取得し、取得したバッテリ情報(バッテリ残容量、平均消費電力)をPower Manager51に出力する。Power Managerドライバ52は、バッテリ25のバッテリ情報(バッテリ残容量、平均消費電力)を検出するバッテリ残量検出手段として機能する。
【0033】
ここで、図6〜図8を参照して、輝度間消費電力デルタテーブル42およびインバータについて説明する。従来では、現在の輝度から輝度を変更する場合、バッテリライフを予想するために、各輝度での消費電力の絶対値を使用していたため、高精度にバッテリライフを予想することができなかった。そこで、本実施例では、輝度間電力デルタテーブル42に格納されている、各輝度間の消費電力デルタを使用して、現在の輝度からどの輝度まで下げればユーザが希望するバッテリライフを達成できるのかを高精度に算出する。
【0034】
パネルやパネルを駆動するインバータは、多数のメーカから提供されている。メーカから提供されるインバータは、複数のメーカのパネルをサポートしている。図6および図7は、14″XGAに関して、各メーカ(A社、B社)のインバータと、各メーカ(X社、Y社、Z社)のパネルと、各輝度(L0〜L15)での消費電力(絶対値)との関係を示す表およびグラフの一例である。
【0035】
図6および図7に示すように、パネルメーカにより各輝度におけるインバータの消費電力(絶対値)に大きなバラツキがある。ここで、パネルメーカ毎に輝度消費電力テーブルを設けた場合、データ量が多くなってしまい、また、上述したように、消費電力の絶対値では、バッテリライフを高精度に予測することできない。さらに、EDIDでは、インバータメーカやパネルメーカの判別ができないため、パネルメーカ毎に輝度消費電力テーブルを格納してもその電力情報を使用することができない。
【0036】
本願発明者は、各メーカのパネルについて、各輝度間の消費電力デルタに注目し、各パネルメーカでほぼ同等の値になることを発見した。図8は、14″XGAに関して、各メーカ(A社、B社)のインバータと、各メーカ(X社、Y社、Z社)のパネルと、各輝度間(L0−L1,L1−L2、L2−L3,L3−L4、L4−L5,L5−L6、L6−L7,L7−L8、L8−L9,L9−L10、L10−L11,L12−L13、L14−L15)での消費電力デルタの関係を示す表である。同図に示すように、14″XGAのパネルでは、各輝度間の消費電力デルタは、インバータメーカ(A社、B社)およびパネルメーカ(X社、Y社、Z社)でほぼ同等の値となり、各輝度間の消費電力デルタの平均値を使用することにより、インバータメーカ(A社、B社)およびパネルメーカ(X社、Y社、Z社)に対応可能である。同様に、図示を省略するが、他のサイズのパネル(14″SXGA+、15″WXGA、15″WSXGA+、15″WUXGA+)についても、それぞれ各インバータメーカおよび各パネルメーカの輝度間の消費電力デルタの平均値を使用することができる。
【0037】
図9および図10を参照して、上記図3のPower Manager51の動作を説明する。図9は、Power Manager51がバッテリ情報を取得する動作を説明するためのフローチャートである。図9において、まず、Power Manager51が、Power Managerドライバ52にバッテリ情報を要求する(ステップS1)。Power Managerドライバ52は、I2C BUS経由でバッテリ25と通信し(ステップS2)、バッテリ25のバッテリ情報(バッテリ残量、平均消費電力)を取得する(ステップS3)。そして、Power Managerドライバ52は、Power Manager51にバッテリ情報(バッテリ残量、平均消費電力)を通知する(ステップS4)。
【0038】
図10は、Power Manager51が、ユーザが設定したバッテリ25の希望動作時間に基づいてパネル31の輝度を制御する動作を説明するためのフローチャートである。同図において、ユーザがバッテリ希望動作時間設定画面(図5参照)で、バッテリ25の希望動作時間を入力する(ステップS11)。Power Manager51は、希望動作時間とバッテリ残量とに基づいて、目標消費電力を算出する(ステップS12)。Power Manager51は、現在の平均消費電力と目標消費電力との差分を目標削減電力として算出する(ステップS13)。輝度間消費電力デルタテーブル42を参照して、現在の輝度から輝度レベルを1つ下げ(ステップS14)、その輝度間消費電力デルタの合計が目標差分電力に達したか否かを判断し(ステップS15)、その輝度間消費電力デルタの合計が目標差分電力に達していない場合には(ステップS15の「No」)、ステップS14に戻る一方、その輝度間消費電力デルタの合計が目標差分電力に達した場合には(ステップS15の「Yes」)、この輝度(目標輝度)に、パネル31の輝度を変更する(ステップS16)。
【0039】
上図10のフローを、具体例を用いて説明する。ここでは、上記図5に示すように、パネルサイズが、14”XGA、現在の輝度がL15、過去5分間の平均消費電力が13W、バッテリ残量が22WH(40% of 6cell)、残りバッテリ時間が1時間44分である場合に、ユーザが希望動作時間「2時間」を入力した場合について説明する。
【0040】
Power Manager51は、希望動作時間2Hと、バッテリ残量22WHとに基づいて、目標消費電力(22WH/2.0H=11.2W)を算出する(上記ステップS12)。現在の平均消費電力13Wと目標消費電力11.2Wとの差分を目標削減電力1.8Wとして算出する(上記ステップS13)。輝度間消費電力デルタテーブル42を参照して、現在の輝度L15からその輝度間消費電力デルタの合計Sが目標差分電力1.8Wとなるまで、輝度レベルを下げていくと(ステップS14,15)、輝度レベルを6まで下げると、輝度間消費電力デルタの合計S=0.27+0.25+0.23+0.22+0.20+0.18+0.17+0.15+0.13=1.8となる。この輝度6にパネル31の輝度を変更する(上記ステップS6)。
【0041】
以上説明したように、本実施例によれば、パネル31の各輝度間での消費電力デルタを登録した輝度間消費電力デルタテーブル42と、バッテリ25の残量を検出するPower Managerドライバ52と、パネル31の輝度を設定するPower Manager51とを備え、Power Manager51は、ユーザのバッテリ25の希望動作時間と、バッテリ残量と、および輝度間消費電力デルタテーブル42のデータとに基づいて、パネル31の輝度を設定することとしたので、パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器において、ユーザの希望使用時間中、可及的にユーザビリティを落とすことなく、バッテリを持続させることが可能となる。
【0042】
また、本実施例によれば、Power Manager51は、希望動作時間とバッテリ残量とに基づいて、目標消費電力を算出し、現在の平均消費電力と目標消費電力との差分を目標削減電力として算出し、輝度間消費電力デルタテーブル42を参照して、現在の輝度から輝度を順次下げてゆき、その輝度間消費電力デルタの合計が目標差分電力に達する輝度を、パネル31に設定することとしたので、ユーザの希望動作時間中、バッテリを持続させることができる最大の輝度に設定することが可能となる。
【0043】
また、本実施例によれば、輝度間消費電力デルタテーブル42は、パネル31のサイズ毎に、各輝度間での消費電力デルタを登録しており、BIOS41でパネル31のサイズをEDIDで検出し、Power Manager51は、希望動作時間と、バッテリ残量と、および輝度間消費電力デルタテーブルの検出されたパネルサイズのデータとに基づいて、パネルの輝度を設定することとしたので、複数のパネルサイズに対応することが可能となる。
【0044】
また、本実施例によれば、輝度間消費電力デルタテーブル42には、パネルのサイズ毎に各輝度間での消費電力デルタとして、複数のメーカのパネルの平均値を登録することとしたので、輝度間消費電力デルタテーブルのデータ量を低減することが可能となる。
【0045】
なお、上記実施例では、ユーザがバッテリ希望動作時間設定画面で入力した希望動作時間を確保するためのパネル31の輝度を、消費電力デルタテーブルを参照して算出して設定することとしたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、Power Manager51が、輝度間消費電力デルタテーブル42を参照して、パネル31の各輝度におけるバッテリ使用可能時間を算出し、図11に示す輝度設定画面に、各輝度におけるバッテリ使用可能時間の一覧を表示し、ユーザが輝度およびバッテリ使用可能時間を考慮して、この画面で輝度を選択することにしてもよい。これにより、ユーザが画面の明るさとバッテリ使用可能時間を選択することが可能となる。
【0046】
また、上記実施例では、表示パネルとして、液晶表示パネルを使用することとしたが本発明はこれに限られるものではなく、例えば、プラズマ、有機EL、LED等を使用した他の表示パネルを使用することにしてもよい。また、上記実施例では、本発明に係る電子機器の一例として、ノート型PCについて説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、表示パネルを、バッテリを電源として駆動する全ての電子機器に適用可能であり、例えば、PDA、携帯端末、デジタルカメラ等の電子機器に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る電子機器、電子機器の電源制御方法、およびコンピュータが実行するためのプログラムは、表示パネルを、バッテリを電源として駆動する各種電子装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施例に係るノート型PCの外観構成を示す図である。
【図2】図1のノート型PCの概略のハードウェア構成例を示す図である。
【図3】ノート型PCがパネルの輝度を制御する場合のシステム構成(ソフトウエア構成)を示す図である。
【図4】輝度間消費電力デルタテーブルの一例を示す図である。
【図5】バッテリ希望動作時間設定画面の一例を示す図である。
【図6】14″XGAに関して、各メーカのインバータと、各メーカのパネルと、各輝度での消費電力(絶対値)との関係を示す表の一例である。
【図7】14″XGAに関して、各メーカのインバータと、各メーカのパネルと、各輝度での消費電力(絶対値)との関係を示すグラフの一例である。
【図8】14″XGAに関して、各メーカのインバータと、各メーカのパネルと、各輝度間での消費電力デルタの関係を示す表である。
【図9】Power Managerがバッテリ情報を取得する動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】Power Managerがパネルの輝度を制御する動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】輝度設定画面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ノート型PC
10 パソコン本体部
11 入力部
12 CPU
13 CPUブリッジ
14 メイン・メモリ
15 ビデオコントローラ
16 インバータ
17 I/Oブリッジ
18 無線モジュール
19 HDD(ハードディスク)
20 ROM
21 I/Oコントローラ
22 エンベデットコントローラ
23 パワーコントローラ
24 DC−DCコンバータ
25 バッテリ
26 ACアダプタ
27 回転支持部
30 表示部
31 液晶表示パネル
41 BIOS
42 輝度間消費電力デルタテーブル
51 Power Manager
52 Power Managerドライバ
53 Graphicsドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器において、
前記表示パネルの各輝度間での消費電力デルタを登録した輝度間消費電力デルタテーブルと、
前記表示パネルの輝度を設定する輝度設定手段と、
前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出手段と、
ユーザ操作に応答して、前記バッテリの希望動作時間を設定する希望動作時間設定手段と、
を備え、
前記輝度設定手段は、前記希望動作時間設定手段で設定されたバッテリの希望動作時間と、前記バッテリ残量検出手段で検出されたバッテリ残量と、および前記輝度間消費電力デルタテーブルのデータとに基づいて、前記表示パネルの輝度を設定することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記輝度設定手段は、
前記バッテリの希望動作時間と前記バッテリ残量とに基づいて、目標消費電力を算出し、
現在の平均消費電力と前記目標消費電力との差分を目標削減電力として算出し、
前記輝度間消費電力デルタテーブルを参照して、現在の輝度から輝度を順次下げてゆき、その輝度間消費電力デルタの合計が前記目標差分電力に達する輝度を、前記パネルに設定することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記輝度間消費電力デルタテーブルは、前記表示パネルのサイズ毎に、各輝度間での消費電力デルタを登録しており、
前記表示パネルのサイズを検出するパネルサイズ検出手段を備え、
前記輝度設定手段は、前記バッテリの希望動作時間と、前記バッテリ残量と、および前記輝度間消費電力デルタテーブルの検出されたパネルサイズのデータとに基づいて、前記表示パネルの輝度を設定することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記輝度間消費電力デルタテーブルに登録されている、前記表示パネルのサイズ毎の各輝度間での消費電力デルタは、複数のメーカの表示パネルの平均値であることを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記表示パネルは、液晶表示パネルであることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
表示パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器の電源制御方法において、
前記表示パネルの輝度を設定する輝度設定工程と、
前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出工程と、
ユーザ操作に応答して、希望動作時間を設定する希望動作時間設定工程と、
を含み、
前記輝度設定工程では、前記設定されたバッテリの希望動作時間と、前記検出されたバッテリ残量と、および前記表示パネルの各輝度間での消費電力デルタを登録した輝度間消費電力デルタテーブルのデータとに基づいて、前記表示パネルの輝度を設定することを特徴とする電子機器の電源制御方法。
【請求項7】
表示パネルを、バッテリを電源として駆動する電子機器に搭載されるプログラムにおいて、
前記表示パネルの輝度を設定する輝度設定工程と、
前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量検出工程と、
ユーザ操作に応答して、希望動作時間を設定する希望動作時間設定工程と、
をコンピュータに実行させ、
前記輝度設定工程では、前記設定されたバッテリの希望動作時間と、前記検出されたバッテリ残量と、および前記表示パネルの各輝度間での消費電力デルタを登録した輝度間消費電力デルタテーブルのデータとに基づいて、前記表示パネルの輝度を設定することを特徴とするコンピュータが実行するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−9183(P2009−9183A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167237(P2007−167237)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
【Fターム(参考)】