説明

電子機器およびパネル開閉機構

【課題】前面のパネルが開閉する電子機器において、良好な操作性を確保する。
【解決手段】筐体1の前面側を開閉自在に覆うパネル部材2と連結し当該パネル部材2の開閉に伴い揺動するヒンジリンク部材40と、前記パネル部材2と連結し当該パネル部材2の開閉に伴い前記筐体1の前後方向に沿って移動するリンク制御部材30とを備えるパネル開閉機構を、前記ヒンジリンク部材40の一端と前記リンク制御部材30に設けられた案内溝との係合によって前記ヒンジリンク部材40の揺動の際の回転角が制御されるように構成する。そして、前記パネル部材2の開状態時に当該パネル部材2上の配置部品が前記他機器の移動領域に突出しないように、前記回転角を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル開閉機能を有した電子機器および当該電子機器にて用いられるパネル開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビデオデッキ、ビデオサーバ、カーナビゲーション、カーステレオ等といった電子機器は、その構成部品を収める筐体の前面が、操作スイッチ等の各種操作部品が設けられた操作パネルによって覆われている。また、これら電子機器の中には、筐体前面の操作パネルの開閉を、リンク機構を利用したパネル開閉機構を用いて実現し、当該操作パネルを操作し易い姿勢に変更し得るようにして、これにより操作性向上を図ったものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図18は、筐体前面の操作パネルが開閉可能な電子機器の一具体例を示す説明図である。図例では、電子機器の一具体例として、ビデオサーバを示している。
図18(a)に示すビデオサーバは、その前面の操作パネル100上に、各種キースイッチ101やサーチダイヤル102等といった操作部品が設けられている。さらには、操作に必要となる各種情報を表示するための情報表示パネル103が設けられている。
そして、このような各種操作部品が設けられた操作パネル100は、図18(b)に示すように、筐体104の上面に沿った軸線を中心にして開閉可能になっているとともに、予め設定されている複数段階のいずれかの位置(回転角度)にて当該操作パネル100の開状態が支持されるようになっている。これにより、ビデオサーバの操作者は、操作パネル100を所望する位置まで開いて固定し、その状態で操作パネル100を操作できるのである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−291968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、ビデオサーバに代表される電子機器は、上面側または下面側の少なくとも一方に他機器が配される積載構造で用いられることがある。例えば、積載構造を構成するラックに複数の機器が搭載され、各機器が集まって一つのシステムを構築するといった具合である。また、このような積載構造を構成する各機器には、ラックからの引き出しが必要なものも存在する。
【0006】
しかしながら、上述した従来技術による電子機器が積載構造の中に組み込まれると、その電子機器の操作パネル100が開いて例えば水平状態となった場合に、図18(b)に示すように、当該積載構造における上側の機器の引き出し範囲内に操作パネル100上におけるサーチダイヤル102等の操作部品が突出してしまい、その結果として上側の機器のラックからの引き出しを妨げてしまうことが考えられる。その一方で、単に操作部品が突出しないように操作パネル100の位置を下げたのでは、当該操作パネル100が筐体前面の全てを覆えなかったり、開閉し得る部分のパネル面積を小さくする必要があったり、あるいはパネル収納過程で不具合が発生したりするおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、前面のパネルが開閉する場合であっても、複数機器から構成される積載構造にて用いて好適であり、良好な操作性を確保することのできる電子機器およびパネル開閉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために案出された電子機器で、上面側または下面側の少なくとも一方に他機器が配される積載構造に対応した筐体と、前記筐体の上面に沿った軸線を中心にして当該筐体の前面側を開閉自在に覆うパネル部材と、一端が前記パネル部材と連結し当該パネル部材の開閉に伴い前記筐体の側に設けられた支軸を中心にして揺動するように配設されたヒンジリンク部材と、一端が前記パネル部材と連結し当該パネル部材の開閉に伴い前記筐体の前後方向に沿って移動するように配設されたリンク制御部材とを備え、前記リンク制御部材には、前記ヒンジリンク部材における前記パネル部材との連結端と当該ヒンジリンク部材の揺動中心を挟んで対向する他端と係合する案内溝が設けられており、前記ヒンジリンク部材における前記他端と前記リンク制御部材における前記案内溝との係合によって前記ヒンジリンク部材が揺動する際の回転角が制御されるように構成されているとともに、前記パネル部材の開状態時に当該パネル部材および当該パネル部材上の配置部品が前記他機器の移動領域に突出しないように前記ヒンジリンク部材および前記リンク制御部材の形状並びに前記回転角が設定されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成の電子機器では、ヒンジリンク部材およびリンク制御部材がリンク機構として機能することによって、さらに詳しくはヒンジリンク部材が揺動し、かつ、その揺動の際の回転角がヒンジリンク部材とリンク制御部材との係合により制御されることによって、筐体の上面に沿った軸線を中心に回転するようにして、当該筐体の前面側を覆うパネル部材が開閉することになる。そして、ヒンジリンク部材の揺動の際の回転角は、パネル部材の開状態時に当該パネル部材および当該パネル部材上の配置部品が他機器の移動領域に突出しないように設定されている。したがって、筐体の前面側を覆うパネル部材が開閉する場合であっても、開状態となったパネル部材上の配置部品等が他機器の移動領域に突出して当該他機器の引き出しを妨げてしまうといったことが生じない。しかも、これをヒンジリンク部材の回転角設定によって実現することから、パネル部材が筐体前面を覆えなかったりパネル収納過程で不具合が発生したりすることもない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筐体の前面側を覆うパネル部材、すなわち前面パネルが開閉する場合であっても、積載構造からの他機器の引き出し等が開状態となった前面パネルに起因して妨げられてしまうことがないので、複数機器から構成される積載構造にて用いて好適なものとなる。つまり、積載構造にて用いる場合においても、操作者が前面パネルを所望する位置まで開いて操作するといったことが可能となり、結果として操作者にとっての良好な操作性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子機器およびパネル開閉機構について説明する。
【0012】
ここでは、本発明に係る電子機器として、ビデオサーバを例に挙げて説明する。
ビデオサーバは、その構成部品を収める筐体の前面が、各種操作部品が設けられた一枚のパネル部材(具体的には、操作パネル)によって覆われて構成されている(例えば、図18(a)参照)。そして、そのパネル部材は、リンク機構を利用したパネル開閉機構によって、筐体の上面に沿った軸線を中心にして開閉し得るようになっている。
また、ビデオサーバの筐体は、上面側または下面側の少なくとも一方に他機器が配される積載構造に対応するように構成されている。具体的には、他機器の積載への対応が容易な直方体状に構成することが考えられる。ただし、「積載構造に対応」であるから、積載構造にて用いることが可能であればよく、必ずしも積載構造にて用いなければならないわけではない。したがって、ビデオサーバ単体で用いてもよいことは勿論である。
【0013】
ここで、ビデオサーバにおけるパネル部材の開閉を実現するパネル開閉機構、すなわち本発明に係るパネル開閉機構について、具体例を挙げて詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るパネル開閉機構の構成例を示す側面図である。図例のパネル開閉機構は、ビデオサーバを構成する筐体1に対してその前面側を覆うパネル部材2を開閉自在に連結支持するためのもので、当該筐体1の内側の側方二箇所に配設されて用いられるものである。そして、パネル部材2を開閉自在とするために、パネル開閉機構は、ヒンジブラケット部材10と、保持部材20と、リンク制御部材30と、ヒンジリンク部材40と、ヒンジステー部材50と、ヒンジロック解除部材60と、トグルアーム部材71および引っ張りバネ72と、滑り板部材80と、を備えている。
【0015】
図2は、ヒンジブラケット部材10の構成例を示す説明図である。ヒンジブラケット部材10は、パネル部材2の両側部に固定されるものである。このヒンジブラケット部材10は、図例のように、パネル部材2の上方側、すなわち長手方向の上端部近傍に、ヒンジリンク部材40と回転自在に連結されるピン状の支軸11を一体に備える。また、ヒンジブラケット部材10は、長手方向の中間部に、リンク制御部材30と回転自在に連結されるピン状の支軸12を一体に備える。さらに、ヒンジブラケット部材10は、長手方向の下端部に、ヒンジステー部材50と回転自在に連結されるピン状の支軸13を備える。また、ヒンジブラケット部材10は、長手方向の中間部に、ヒンジロック解除部材60と回転自在に連結されるピン状の支軸14を備える。
【0016】
図3は、保持部材20の構成例を示す説明図である。保持部材20は、板状の部材からなり、筐体1に対して固定されるものである。
この保持部材20は、図例のように、板状の部材を切り欠いて形成された案内用溝部21を備える。案内用溝部21は、一端部に部分的に面積が拡大して形成された挿入部21aと、この挿入部21aに連続して直線状に伸びる案内溝21bとを備える。案内溝21bは、リンク制御部材30の一端部が嵌合し、この一端部を当該案内溝21bに沿って移動自在に保持する。挿入部21aは、リンク制御部材30の一端部を案内溝21bに嵌合させる際に、係合部32を挿入するために面積が拡大化されている。
また、保持部材20は、板状の部材を切り欠いて形成された係止案内溝部22を備える。係止案内溝部22は、一端に部分的に面積が拡大して形成された挿入部22aと、この挿入部22aに連続して伸びる係止案内溝23とを備える。係止案内溝23には、挿入部22a側に形成された係止用段部24aと、係止案内溝23に沿って形成された複数の係止用段部24b〜24eとを備える。そして、係止用段部24aと係止用段部24bとの間、および、各係止用段部24b〜24eのそれぞれの間は、パネル部材2側に向かって上る傾斜部となっている。なお、係止用段部24aと係止用段部24bとの間に傾斜部がない構成とすることも可能である。
また、保持部材20は、パネル部材2側に配置される端部に設けられ、ヒンジリンク部材40と回転自在に連結される支軸25を備える。
さらに、保持部材20は、係止案内溝23のパネル部材2側の端部に、パネル部材2を開状態にするときにヒンジステー部材50の端部が係合する引き出し制限溝部26aと、開状態にあるパネル部材2を閉状態にするときにヒンジステー部材50の端部が係合するロック解除用溝部26bとを備える。
また、保持部材20は、滑り板部材80を移動可能に支持するための支軸27a,27bを備える。
【0017】
図4は、リンク制御部材30の構成例を示す説明図である。リンク制御部材30は、板状の部材からなり、その一端にヒンジブラケット部材10の支軸12に回転自在に連結される連結用孔31が形成されているとともに、他端に保持部材20の案内溝21bに嵌合する係合部32が形成されている。連結用孔31には、ヒンジブラケット部材10の支軸12が挿入される。これにより、リンク制御部材30は、ヒンジブラケット部材10の支軸12を中心に回転自在に連結されることになる。一方、係合部32は、リンク制御部材30の表面から突出しており、この突出部の先端に鍔部が形成されており、この係合部32が保持部材20の案内溝21bに挿入部21aを通じて嵌合することにより、係合部32は案内溝21bから鍔部によって抜け止めされる。これにより、リンク制御部材30の係合部32は、保持部材20の案内溝21bによって移動自在に保持されることになる。
また、リンク制御部材30は、板状の部材を切り欠いて形成した案内用溝部33を備える。案内用溝部33は、一端に面積が部分的に拡大した挿入部33aと、この挿入部33aに連続して伸びる案内溝33bを備える。この案内溝33bの形成角度、すなわち傾斜の程度により、パネル部材2の開口角度に対するヒンジブラケット部材10の支軸12の移動量を適切に制御することができるのである。このことから、案内溝33bは、詳細を後述するように、パネル部材2を回転させるためのパネル回転溝部34bと、ヒンジリンク部材40を揺動させるためのリンク回転溝部34aとを備えて構成されている。
【0018】
図5は、ヒンジリンク部材40の構成例を示す説明図である。図例のように、ヒンジリンク部材40は、一端に形成されたヒンジブラケット部材10の支軸11と回転自在に連結される連結用孔41と、長手方向の中途部に形成された保持部材20の支軸25と回転自在に連結される連結用孔42と、リンク制御部材30の案内用溝部33に嵌合する係合部43とを備える。連結用孔41には、ヒンジブラケット部材10の支軸11が挿入される。これにより、ヒンジリンク部材40はヒンジブラケット部材10に回転自在に連結されることになる。連結用孔42には、保持部材20の支軸25が挿入される。これにより、ヒンジリンク部材40は、保持部材20に支軸25を中心に回転自在に連結され、この結果、筐体1に対して揺動自在に支持されることになる。係合部43は、ヒンジリンク部材40の表面から突出しており、この突出部の先端に鍔部が形成されており、この係合部43がリンク制御部材30の案内溝33bに挿入部33aを通じて嵌合する。係合部43は案内溝33bから鍔部によって抜け止めされる。これにより、ヒンジリンク部材40の係合部43は、リンク制御部材30の案内溝33bによって筐体1に対して所定の方向に移動自在に保持されることになる。
【0019】
図6は、ヒンジステー部材50の構成例を示す説明図である。図例のように、ヒンジステー部材50は、板状の部材からなり、この板状部材の長手方向の一端に形成されたヒンジブラケット部材10と回転自在に連結するための連結用孔51と、他端に形成された係合部52と、一端に形成され長手方向に対して異なる方向に屈曲した被押圧部53を備える。連結用孔51には、ヒンジブラケット部材10の支軸13が挿入される。これにより、ヒンジステー部材50は、ヒンジブラケット部材10の支軸13を中心に回転自在に連結されることになる。係合部52は、ヒンジステー部材50の表面からピン状に突出しており、この係合部52は、保持部材20の係止案内溝23にそれぞれ形成された各係止用段部24a〜24eにそれぞれ係合可能となっている。被押圧部53は、ヒンジロック解除部材60によって押圧され、ヒンジステー部材50を連結用孔51に挿入されたヒンジブラケット部材10の支軸13を中心に回転させるようになっている。
【0020】
図7は、ヒンジロック解除部材60の構成例を示す説明図である。図例のように、ヒンジロック解除部材60は、先端部にパネル部材2から出没可能に設けられた操作スイッチ部61と、ヒンジブラケット部材10に回転自在に連結される連結用孔62と、ヒンジステー部材50の被押圧部53を押圧する押圧部63とを備える。操作スイッチ部61は、パネル部材2に対する出入操作に従って、移動可能である。連結用孔62には、ヒンジブラケット部材10の支軸14が挿入される。これにより、姿勢変更用部材41に支軸14を中心に回動自在に連結されることになる。押圧部63は、ヒンジステー部材50の被押圧部53に当接可能となっており、操作スイッチ部61がパネル部材2に対して没入することにより、ヒンジステー部材50の被押圧部53を押圧する。これにより、ヒンジステー部材50は、ヒンジブラケット部材10の支軸13を中心に回転することになる。
【0021】
図8は、トグルアーム部材71および引っ張りバネ72の構成例を示す平面図である。図例のように、トグルアーム部材71は、長手方向の一端に形成された保持部材20の支軸27bと回転自在に連結するための連結用孔71aと、他端に形成された連結用孔71bとを備える。連結用孔71aには、保持部材20の支軸27bが挿入される。これにより、トグルアーム部材71は、連結用孔71aを支点にして、連結用孔71bが設けられた他端側が揺動するようになっている。
また、トグルアーム部材71の揺動端側には、引っ張りバネ72が連結されており、その引っ張りバネ72が付勢力を与えている。この付勢力は、トグルアーム部材71が揺動すると、その揺動支点である連結用孔71aの位置を跨いで作用する。これにより、トグルアーム部材71は、引っ張りバネ72による付勢力を超える力が働かない限り、揺動先に位置する状態(図中AまたはBに位置する状態)が保持されることになる。
【0022】
図9は、滑り板部材80の構成例を示す平面図である。図例のように、滑り板部材80は、板状の部材からなり、この板状部材の長手方向の一端に形成された長穴状のガイド穴81と、他端に形成された支軸82とを備える。ガイド穴81は、保持部材20の支軸27aに挿入されて係合する。また、支軸82は、トグルアーム部材71の連結用孔71bに挿入される。これにより、滑り板部材80は、トグルアーム部材71が揺動すると、これに併せてガイド穴81が延びる方向に沿って移動することになる。
また、滑り板部材80は、その長手方向に沿って形成された案内溝83を備える。この案内溝83は、保持部材20における係止案内溝23に対応するものである。そのために、案内溝83は、係止案内溝23と同様にヒンジステー部材50の係合部52と係合可能に形成されているとともに、その一端に保持部材20の引き出し制限溝部26aおよびロック解除用溝部26bに対応する引き出し制限溝部83aおよびロック解除用溝部83bが設けられ、他端には保持部材20の係止用段部24aに対応する係止用段部83cが設けられている。ただし、他の各係止用段部24b〜24eに対応する箇所の案内溝83の下側部分には、当該各係止用段部24b〜24eに対応する段差は設けられておらず、当該各係止用段部24b〜24eを隠蔽するための直線形状部分84となっている。
また、案内溝83には、保持部材20の係止用段部24a〜24eのいずれにも対応しない位置に、ヒンジステー部材50の係合部52が係止するための係止用段部85が設けられている。この係止用段部85と係合部52とが係止することによって、滑り板部材80は、係止用段部83cの側に向けて移動する際に、ヒンジステー部材50の動作に従動することになる。一方、引き出し制限溝部83aおよびロック解除用溝部83bの側に向けて移動する際には、ヒンジステー部材50の係合部52が当該引き出し制限溝部83aに係合することによって、そのヒンジステー部材50の動作に従動することになる。つまり、滑り板部材80は、ヒンジステー部材50に従動して移動し、これにより保持部材20との間の位置関係の状態が切り替わるのである。
【0023】
次に、以上のように構成されたパネル開閉機構における動作について説明する。
【0024】
先ず、パネル部材2が閉じた状態からの動作について説明する。
図10は、パネル部材2の開閉動作の具体例を示す説明図(その1)である。
【0025】
パネル部材2が閉じた状態の場合(図中C参照)に、パネル開閉機構では、ヒンジステー部材50の係合部52が、保持部材20に形成された係止案内溝23の凹状の係止用段部24aに嵌合している。この状態で、パネル部材2から突出するヒンジロック解除部材60の操作スイッチ部61が当該パネル部材2に向けて押圧されると、そのヒンジロック解除部材60は、ヒンジブラケット部材10の支軸14を中心に回転する。この回転により、ヒンジステー部材50の被押圧部53は、ヒンジロック解除部材60の押圧部63によって押圧される。そして、ヒンジステー部材50は、ヒンジブラケット部材10の支軸13を中心に回転し、係合部52の側の端部が上方に向けて移動する。ヒンジステー部材50の係合部52が上向きに移動すると、保持部材20に形成された係止案内溝23の係止用段部24aと係合部52との嵌合状態が解除される。これにより、パネル部材2を閉じた状態から開けた状態に動作させることが可能となる。
【0026】
その後、例えば、操作者がパネル部材2の下方側を引き出して(図中矢印D参照)、そのパネル部材2をヒンジブラケット部材10の支軸11を中心にして回転させるようにすると、そのパネル部材2の姿勢変化に応じて、ヒンジステー部材50の係合部52は、保持部材20の係止案内溝23に沿って、前面側(矢印D方向)に向けて移動する。これと同時に、パネル部材2に回転自在に連結されたリンク制御部材30の係合部32も、保持部材20に形成された案内溝21bに沿って、前面側(矢印D方向)に向けて移動する。
【0027】
リンク制御部材30の係合部32が移動すると、これに応じてリンク制御部材30自体の姿勢が変化する。そして、この姿勢変化に応じて、リンク制御部材30に形成された案内溝33bに嵌合するヒンジリンク部材40の係合部43も、その案内溝33b内を移動する。これにより、ヒンジリンク部材40は、保持部材20の支軸25を中心として、パネル部材2の側から見てお辞儀をするような方向に揺動する。
【0028】
ヒンジリンク部材40が揺動すると、パネル部材2を保持しているヒンジブラケット部材10の支軸11が、当該パネル部材2が閉じた状態(図中C参照)における位置から移動する。すなわち、ヒンジリンク部材40が揺動すると、支軸11は、パネル部材2が閉姿勢状態のときの支軸11の位置から、保持部材20の支軸25を中心とする円周上を上側パネル3から離隔する向き(図中矢印E参照)に移動する。
この移動量は、リンク制御部材30の姿勢変化の量によって決まる。つまり、リンク制御部材30は、パネル部材2の支軸11を中心とする回転に連動する姿勢変化によって、ヒンジリンク部材40の支軸25を中心とした回転を制御するのである。
【0029】
ここで、ヒンジステー部材50の係合部52が保持部材20の係止案内溝23に沿ってパネル部材2の側に向けて移動し、最初の係止用段部24bを通過したところで、パネル部材2の回転を停止して当該パネル部材2を解放すると、ヒンジステー部材50の係合部52は、その係止用段部24bに係止する。すなわち、係合部52は、パネル部材2の自重によって、係止用段部24bとこれに隣り合う係止用段部55cとの間に形成された傾斜部を下り、係止用段部24bで係止する。これにより、パネル部材2は、係合部52と係止用段部24bとが係止する位置での開姿勢が保持されることになる。
【0030】
このようなパネル部材2の開姿勢の保持は、係合部52が係止用段部24c〜24dに係止することによっても行われる。つまり、パネル部材2は、回転角が異なる複数段階(例えば、20度、40度または60度の各段階)にて、それぞれの開姿勢が保持されることになる。
【0031】
その後、パネル部材2を矢印Dの向きにさらに開き、ヒンジステー部材50の係合部52が保持部材20の係止用段部24eに係止し、パネル部材2が完全に開いた状態になると、その状態において、パネル部材2は、略水平な姿勢となる(図中F参照)。
【0032】
このとき、ヒンジブラケット部材10の支軸11は、保持部材20の支軸25を中心とする円周上を移動する(図中矢印E参照)。したがって、ヒンジブラケット部材10の支軸11は、筐体1から見て、単に前方に移動するだけでなく、下方に向かっても移動する。このため、パネル部材2上に設けられた各種操作部品は、当該パネル部材2の開度に応じて、筐体1から見て前方および下方に向けて移動することになる。
【0033】
その場合におけるヒンジブラケット部材10の支軸11の移動、すなわち保持部材20の支軸25を中心としたヒンジリンク部材40の揺動は、その回転角が、ヒンジリンク部材40の係合部43とリンク制御部材30における案内溝33bとの係合によって制御される。すなわち、パネル開閉機構の構成部品、特にリンク制御部材30およびヒンジリンク部材40の形状(支点作用点間の距離、案内溝33bの形状等を含む)の設定によって、ヒンジリンク部材40が揺動する際の回転角およびヒンジブラケット部材10の支軸11の移動量が決定されるのである。
【0034】
ここで、本実施形態で説明するパネル開閉機構では、リンク制御部材30およびヒンジリンク部材40の形状、並びに、当該形状から特定されるヒンジリンク部材40が揺動する際の回転角が、パネル部材2の開状態時に当該パネル部材2および当該パネル部材2上の配置部品である各種操作部品が積載構造を構成する他機器(筐体1の上面側または下面側の少なくとも一方に配される他機器)の移動領域に突出しないように設定されている。つまり、従来の電子機器におけるパネル開閉機構(図18参照)に比べて、ヒンジリンク部材40が揺動する際の回転角が大きく、当該ヒンジブラケット部材10の支軸11の下方への移動量が大きくなるように設定されている。
【0035】
したがって、本実施形態におけるパネル開閉機構では、筐体1の前面側を覆うパネル部材2が開閉する場合であっても、開状態となったパネル部材2上の配置部品等が他機器の移動領域に突出して当該他機器の引き出しを妨げてしまうといったことが生じない。しかも、これをヒンジリンク部材40の回転角設定によって実現することから、パネル部材2が筐体1前面を覆えなかったりパネル収納過程で不具合が発生したりすることもない。
このように、本実施形態におけるパネル開閉機構によれば、筐体1の前面側を覆うパネル部材2が開閉する場合に、積載構造からの他機器の引き出し等が開状態となった前面パネル2に起因して妨げられてしまうことがないので、複数機器から構成される積載構造にて用いて好適なものとなる。つまり、積載構造にて用いる場合においても、操作者が前面パネル2を所望する位置まで開いて操作するといったことが可能となり、結果として操作者にとっての良好な操作性を確保することができる。
【0036】
続いて、パネル部材2を閉じる場合の動作について説明する。
図11は、パネル部材2の開閉動作の具体例を示す説明図(その2)である。
【0037】
パネル部材2は、ヒンジステー部材50の係合部52を保持部材20に形成された係止案内溝23に形成された複数の係止用段部24b〜24eのいずれかに係合させることにより、複数段階の開姿勢が保持される。したがって、開状態にあるパネル部材2を閉じるためには、係合部52と係止用段部24b〜24eとの係合を解除する必要がある。
【0038】
係合部52と係止用段部24b〜24eとの係合の解除は、ヒンジステー部材50を手動で押し上げ、そのヒンジステー部材50の係合部52を上方に移動させることによって行うことが考えられる。しかしながら、その場合には、ヒンジステー部材50を押し上げるという動作が必要となってしまい、特に側面から触れにくい機器設置状態の場合には、操作者が煩わしさを感じてしまう可能性が高い。
そこで、本実施形態におけるパネル開閉機構では、滑り板部材80の状態切り替えを利用して、パネル部材2の閉動作を行うように構成されている。
【0039】
例えば図11(a)に示すように、パネル部材2が完全に開き略水平な姿勢となっている場合に、パネル部材2は、ヒンジステー部材50の係合部52が保持部材20の係止用段部24eに係止することによって、その姿勢が保持される。このとき、ヒンジステー部材50の係合部52は、保持部材20の係止用段部24eに係止しているとともに、滑り板部材80における案内溝83とも係合しており、その案内溝83におけるロック解除用溝部83bに位置している。また、係合部52と係止用段部24eとの係止状態において、滑り板部材80は、保持部材20との間の位置関係が、パネル部材2の側から見て奥側に位置する状態にある。すなわち、トグルアーム部材71が奥側に揺動して保持された状態にあり(図中矢印A参照)、これに伴って滑り板部材80も奥側に位置する状態に保持されている。このような位置関係が保持されることによって、滑り板部材80は、その案内溝83が、保持部材20の各係止用段部24b〜24eを露出させてヒンジステー部材50の係合部52との係止が可能な状態とするようになっている。
【0040】
このような状態から、例えば図11(b)に示すように、パネル部材2が持ち上げられると、これに応じてヒンジステー部材50も連動し、そのヒンジステー部材50の係合部52が、パネル部材2の側から見て手前側に移動する。そして、係合部52とロック解除用溝部83bとが当接することによって、滑り板部材80は、パネル部材2に伴って移動するヒンジステー部材50に従動して、パネル部材2の側から見て手前側に移動する。これにより、滑り板部材80は、保持部材20との間の位置関係が、パネル部材2の側から見て手前側に位置する状態に切り替わる。すなわち、トグルアーム部材71が手前側に揺動して保持された状態に切り替わり(図中矢印B参照)、これに伴って滑り板部材80も手前側に位置する状態に保持されることになる。このような状態切り替えによって、滑り板部材80は、その案内溝83の直線形状部分84が斜め上方に移動して、保持部材20の各係止用段部24b〜24eを隠蔽する状態となる。
【0041】
つまり、パネル部材2が略水平な姿勢から持ち上げられると、そのパネル部材2に伴って移動するヒンジステー部材50に従動して滑り板部材80が状態切り替えを行い、これにより係合部52と係止用段部24eとの係止状態が解除されるとともに、保持部材20の各係止用段部24b〜24eが隠蔽されることになる。したがって、その後は、パネル部材2の自重によって当該パネル部材2が下方に降りようとするので、これに伴ってヒンジステー部材50の係合部52がパネル部材2の側から見て奥側に移動する。このとき、係合部52を案内する保持部材20係止案内溝23は、滑り板部材80の状態切り替えによって、各係止用段部24b〜24eが隠蔽されている。そのため、係合部52の移動、すなわちパネル部材2の閉じる方向への移動は、係止用段部24b〜24eと係止することなく、滑り板部材80における案内溝83の直線形状部分84に案内されて、円滑に行われることになる。
【0042】
その後、係合部52が滑り板部材80における案内溝83の係止用段部85まで達すると、係合部52は、係止用段部85に係止する。そして、係合部52と係止用段部85との係止によって、滑り板部材80は、ヒンジステー部材50に従動して、パネル部材2の側から見て奥側に移動する。これにより、滑り板部材80は、保持部材20との間の位置関係が、パネル部材2の側から見て奥側に位置する状態に切り替わる。すなわち、トグルアーム部材71が奥側に揺動して保持された状態に切り替わり、これに伴って滑り板部材80も奥側に位置する状態に保持されることになる。このような状態切り替えによって、滑り板部材80は、再び、保持部材20の各係止用段部24b〜24eを露出させて係合部52との係止が可能な状態とする。
【0043】
滑り板部材80の状態が切り替わると、係合部52と係止用段部85との係止状態が解除される。これにより、係合部52は、保持部材20の係止案内溝23をさらに奥側に向けて移動し、その係止案内溝23における係止用段部24aに嵌合する。つまり、パネル部材2が閉じた状態(図10中のC参照)になるのである。
【0044】
このように、本実施形態におけるパネル開閉機構では、滑り板部材80の状態切り替えを利用してパネル部材2の閉動作を行うように構成されているので、パネル部材2を閉じる場合の動作として、パネル部材2の略水平な姿勢からの持ち上げを行えばよい。このことは、パネル部材2を閉じる場合に、操作者が煩わしさを感じてしまう可能性が高いヒンジステー部材50を押し上げ動作等を必要とすることなく、いわゆるワンタッチ操作で、当該パネル部材2の閉動作を行えることを意味する。したがって、例えば側面から触れにくい機器設置状態の場合であっても、操作者が煩わしさを感じてしまうことがなく、結果として操作者にとっての良好な操作性を確保することができる。
【0045】
ところで、上述したワンタッチ操作によるパネル部材2の閉動作を実現した場合には、上述したように、パネル部材2の略水平な姿勢からの持ち上げが、当該パネル部材2の閉動作を行う契機となる。ただし、パネル部材2の略水平な姿勢からの持ち上げは、当該パネル部材2の開動作と動作方向が同じであり、その開動作と連続的に行い得るものである。したがって、パネル部材2の開動作を行っている操作者が、意図せずに、閉動作の契機となる略水平姿勢からの持ち上げを行ってしまうことも起こり得る。このような事態が起こると、パネル部材2を開状態で保持することができず、操作者にとっての良好な操作性という観点からは好ましくない。
【0046】
そこで、本実施形態におけるパネル開閉機構では、保持部材20の係止案内溝23の端部に設けられた引き出し制限溝部26aおよびロック解除用溝部26bと、これらに対応して滑り板部材80の案内溝83の端部に設けられた引き出し制限溝部83aおよびロック解除用溝部83bとを利用して、パネル部材2の閉動作と開動作との区別の明確化、すなわちワンタッチ操作によるパネル部材2の閉動作を実現した場合の誤操作防止を、確実に図るように構成されている。具体的には、引き出し制限溝部26aおよびロック解除用溝部26b、並びに、引き出し制限溝部83aおよびロック解除用溝部83bが、以下に述べるような動作を実現する。
【0047】
図12は、パネル部材2の開閉動作の具体例を示す説明図(その3)である。
図12(a)に示すように、パネル部材2の開動作の際には、保持部材20の係止案内溝23に沿って移動するヒンジステー部材50の係合部52が、その係止案内溝23の端部に設けられた引き出し制限溝部26aに当接する。このとき、滑り板部材80はパネル部材2の側から見て奥側に位置する状態に保持されているので、その滑り板部材80の案内溝83における引き出し制限溝部83aも、保持部材20の係止案内溝23における引き出し制限溝部26aと重なるようにして、当該引き出し制限溝部26aと同一位置に存在している。これら引き出し制限溝部26aおよび引き出し制限溝部83aは、パネル部材2が略水平な姿勢となるか、あるいは略水平を僅かに超える姿勢となるように、ヒンジステー部材50の係合部52との当接位置が設定されている。したがって、操作者が勢いよくパネル部材2の開動作を行っても、当該パネル部材2が略水平な姿勢を大きく超えてしまうことがない。
【0048】
ヒンジステー部材50の係合部52が引き出し制限溝部26aおよび引き出し制限溝部83aに当接し、これによりパネル部材2の開動作が制限された後、操作者が当該パネル部材2に加えていた力を弱めると、ヒンジステー部材50の係合部52は、図12(b)に示すように、自重により下方を移動する。そして、ヒンジステー部材50の係合部52は、保持部材20の係止用段部24eに係止する。これにより、パネル部材2は、完全に開いた状態、すなわち略水平な姿勢の状態で、保持されることになる。
【0049】
その後、パネル部材2の閉動作のために、略水平な姿勢の状態からパネル部材2が持ち上げられると、図12(c)に示すように、ヒンジステー部材50の係合部52は、保持部材20の係止案内溝23におけるロック解除用溝部26bに案内されて移動し、係止用段部24eとの係止が解除される。また、このとき、ヒンジステー部材50の係合部52は、滑り板部材80の案内溝83におけるロック解除用溝部83bに当接する。そして、係合部52の移動に従動するように滑り板部材80が移動して、その滑り板部材80の状態切り替えが行われる。これらの動作を契機にして、上述したようなパネル部材2の閉動作が開始される。
【0050】
このように、本実施形態におけるパネル開閉機構では、保持部材20の引き出し制限溝部26aおよびロック解除用溝部26bと、滑り板部材80の引き出し制限溝部83aおよびロック解除用溝部83bとを利用して、パネル部材2の閉動作と開動作との区別の明確化を図っているので、パネル部材2の開動作を行っている操作者が、意図せずに、閉動作の契機となる略水平姿勢からの持ち上げを行ってしまうのを未然に防止することができる。つまり、ワンタッチ操作によるパネル部材2の閉動作を実現した場合の誤操作を防止して、パネル部材2が開状態で確実に保持されるようにしているので、結果として操作者にとっての良好な操作性を確保することができる。
【0051】
ところで、本実施形態におけるパネル開閉機構では、上述したように、ヒンジリンク部材40が揺動する際の回転角を従来よりも大きく設定し、パネル部材2の開状態時に当該パネル部材2および当該パネル部材2上の各種操作部品が他機器の移動領域に突出しないようにしている。そのため、パネル部材2の閉動作の際には、以下に述べる理由により、当該閉動作が円滑に行われなくなるおそれがある。
【0052】
図13は、パネル部材2の開閉動作の具体例を示す説明図(その4)である。
パネル部材2の閉動作を行う場合には、図13(a)に示すように、操作者の押し下げ等により、先ず、パネル部材2に対して下向き方向の力が作用する(図中矢印G参照)。そして、その力に連動して、ヒンジリンク部材40にも回転力が作用する。この回転力は、パネル部材2を閉じる方向に向けて、ヒンジリンク部材40を回転させるものであることが望ましい(図中矢印H参照)。しかしながら、パネル部材2上の各種操作部品等が他機器の移動領域に突出しないようにすべく、ヒンジリンク部材40の回転角が大きく設定されていると、リンク制御部材30やヒンジリンク部材40等の支点作用点の位置関係によっては、パネル部材2が開くようにヒンジリンク部材40を回転させる方向に向けて回転力が作用してしまうおそれがある(図中矢印I参照)。
【0053】
そこで、本実施形態におけるパネル開閉機構では、リンク制御部材30における案内溝33bが、パネル部材2を回転させるためのパネル回転溝部34bと、ヒンジリンク部材40を揺動させるためのリンク回転溝部34aとを備えて構成されているのである。これらパネル回転溝部34bおよびリンク回転溝部34aは、いずれも、ヒンジリンク部材40の係合部43の移動を案内するものであるが、それぞれの形成角度、すなわちカム溝として機能する場合の作用角が、互いに異なっている(図4参照)。
【0054】
このようなパネル回転溝部34bおよびリンク回転溝部34aを備えて案内溝33bを構成することによって、本実施形態におけるパネル開閉機構では、図13(b)に示すように、パネル部材2に対して鉛直方向下向きの力が作用している間は(図中矢印G参照)、ヒンジリンク部材40の係合部43をパネル回転溝部34bによって案内し、これによりパネル部材2が閉じる方向に動作しても、主にそのパネル部材2にリンク制御部材30のみが連動し、ヒンジリンク部材40については特に連結用孔41の位置が変わらないようにする。つまり、パネル回転溝部34bによってリンク制御部材30およびヒンジリンク部材40の動作を制御することで、ヒンジリンク部材40の連結用孔41の位置を中心にしてパネル部材2のみを回転させるようにする。
そして、パネル部材2が回転し、そのパネル部材2に対して作用する力に、ある一定以上の大きさの水平方向の分力が生じてくると(図中矢印Jおよびj′参照)、その後は、ヒンジリンク部材40の係合部43をリンク回転溝部34aによって案内する。このときに生じる水平方向の分力は、パネル部材2を閉じる方向に向けてヒンジリンク部材40を回転させる回転力として作用することになる(図中矢印H参照)。
【0055】
このように、本実施形態におけるパネル開閉機構では、パネル部材2の閉動作を行う際に操作者が当該パネル部材2に加える力の方向が変化することを利用すべく、互いに作用角が異なるパネル回転溝部34bおよびリンク回転溝部34aを備えて案内溝33bを構成しているので、ヒンジリンク部材40が揺動する際の回転角を従来よりも大きく設定し、パネル部材2の開状態時に当該パネル部材2および当該パネル部材2上の各種操作部品が他機器の移動領域に突出しないようにした場合であっても、パネル開閉機構に過大な負荷をかけることなく、パネル部材2の閉動作を円滑に行うことが可能となり、結果として操作者にとっての良好な操作性を確保することができる。
【0056】
パネル回転溝部34bおよびリンク回転溝部34aを備えて案内溝33bを構成する場合には、互いに異なる作用角を実現したことに伴い、開状態のパネル部材2が所定状態のときに、いわゆる浮きが発生してしまうことおそれがある。これは、従来であれば直線状の案内溝を形成すればよいところ、パネル回転溝部34bおよびリンク回転溝部34aの両方を備えているからである。このことから、リンク制御部材30に設けられている案内溝33bについては、パネル部材2が所定状態のときに、ヒンジリンク部材40の係合部43と嵌合する溝部分を、パネル回転溝部34bまたはリンク回転溝部34aとは異なる作用角で形成することが考えられる。
【0057】
図14〜図17は、案内溝33bの構成例を示す説明図である。
図14に示すように、案内溝33bの一部には、パネル部材2が所定状態のときにヒンジリンク部材40の係合部43と嵌合する部分に、他部とは異なる作用角のパネル状態保持溝部34dが配されている。パネル部材2が「所定状態」のときとしては、図例のように、パネル部材2の開角度が20度のとき、および、40度のときが挙げられる。ただし、これに併せて、または、これとは別に、ヒンジステー部材50の係合部52が保持部材20の各係止用段部24b,24cのいずれかと係止している状態のときを、パネル部材2が「所定状態」のときとすることも考えられる。
パネル回転溝部34bおよびリンク回転溝部34aを備えて案内溝33bを構成する場合には、本来であれば、図15に示すように、ある作用角でパネル回転溝部34bを形成し、これとは別の作用角でリンク回転溝部34aを形成すれば、パネル部材2の閉動作を円滑に行うことが可能となる。
ところが、例えば、図16に示すように、パネル部材2の開角度が20度および40度のときは、当該パネル部材2の自重によりヒンジリンク部材40に対して図中矢印方向の力が作用するため、当該ヒンジリンク部材40の図中矢印方向への回転動作を制止することができない状態になってしまうことが考えられる。その結果、当該パネル部材2は、パネルが開く方向へ動作し易くなり、いわゆるパネル位置の収まりが悪い状態になってしまう。
そこで、図17に示すように、パネル部材2が所定状態のときにヒンジリンク部材40の係合部43と嵌合する部分については、パネル回転溝部34bおよびリンク回転溝部34aの本来の作用角とは異なる作用角のパネル状態保持溝部34dを配するのである。つまり、パネル状態保持溝部34dおよびこれに嵌合する係合部43がカムとして作用する際の圧力角を他の部分とは変更して、これによりその嵌合部分の摩擦力がリンク回転分力と略等しくなるようにする。
【0058】
このように、案内溝33bの一部にパネル状態保持溝部34dを形成すれば、例えばパネル部材2を所定状態で保持する場合であっても、その所定状態のパネル部材2に浮きや遊び等が生じることなく保持されるので、当該開状態におけるパネル部材2の操作性が浮きや遊び等によって阻害されてしまうことがなくパネル所定開位置での収まりを確保し、結果として操作者にとっての良好な操作性を確保することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、本発明の好適な実施具体例について説明したが、本発明はその内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0060】
例えば、本実施形態では、ヒンジステー部材50に係合部52を設け、この係合部52を保持部材20の係止用段部24aおよび係止用段部24b〜24eが形成された係止案内溝23に嵌合させる構成としたが、たとえば、この係止案内溝23をヒンジステー部材50に形成し、代わりに係合部52を保持部材20に一体化する構成としても、上述した実施形態と同様の機構を実現できる。また、係止用段部24aの係合部52の保持力を調整することにより、ヒンジロック解除部材60を廃止し、開閉パネルを直接動作させることも可能である。
【0061】
また、例えば、本実施形態では、本発明に係る電子機器としてビデオサーバを例に挙げて説明したが、ビデオデッキ、カーナビゲーション、カーステレオ等といった他の電子機器についても、全く同様に本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係るパネル開閉機構の構成例を示す側面図である。
【図2】図1のパネル開閉機構におけるヒンジブラケット部材の構成例を示す説明図である。
【図3】図1のパネル開閉機構における保持部材の構成例を示す説明図である。
【図4】図1のパネル開閉機構におけるリンク制御部材の構成例を示す説明図である。
【図5】図1のパネル開閉機構におけるヒンジリンク部材の構成例を示す説明図である。
【図6】図1のパネル開閉機構におけるヒンジステー部材の構成例を示す説明図である。
【図7】図1のパネル開閉機構におけるヒンジロック解除部材の構成例を示す説明図である。
【図8】図1のパネル開閉機構におけるトグルアーム部材および引っ張りバネの構成例を示す平面図である。
【図9】図1のパネル開閉機構における滑り板部材の構成例を示す平面図である。
【図10】図1のパネル開閉機構によるパネル部材の開閉動作の具体例を示す説明図(その1)である。
【図11】図1のパネル開閉機構によるパネル部材の開閉動作の具体例を示す説明図(その2)である。
【図12】図1のパネル開閉機構によるパネル部材の開閉動作の具体例を示す説明図(その3)である。
【図13】図1のパネル開閉機構によるパネル部材の開閉動作の具体例を示す説明図(その4)である。
【図14】図1のパネル開閉機構による案内溝の構成例を示す説明図(その1)である。
【図15】図1のパネル開閉機構による案内溝の構成例を示す説明図(その2)である。
【図16】図1のパネル開閉機構による案内溝の構成例を示す説明図(その3)である。
【図17】図1のパネル開閉機構による案内溝の構成例を示す説明図(その4)である。
【図18】従来における筐体前面の操作パネルが開閉可能な電子機器の一具体例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1…筐体、2…パネル部材、20…保持部材、23…係止案内溝、24a〜24e…係止用段部、26a…引き出し制限溝部、26b…ロック解除用溝部、30…リンク制御部材、33b…案内溝、34a…リンク回転溝部、34b…パネル回転溝部、34d…パネル状態保持溝部、40…ヒンジリンク部材、50…ヒンジステー部材、80…滑り板部材、83…案内溝、83a…引き出し制限溝部、83b…ロック解除用溝部、84…直線形状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側または下面側の少なくとも一方に他機器が配される積載構造に対応した筐体と、
前記筐体の上面に沿った軸線を中心にして当該筐体の前面側を開閉自在に覆うパネル部材と、
一端が前記パネル部材と連結し当該パネル部材の開閉に伴い前記筐体の側に設けられた支軸を中心にして揺動するように配設されたヒンジリンク部材と、
一端が前記パネル部材と連結し当該パネル部材の開閉に伴い前記筐体の前後方向に沿って移動するように配設されたリンク制御部材とを備え、
前記リンク制御部材には、前記ヒンジリンク部材における前記パネル部材との連結端と当該ヒンジリンク部材の揺動中心を挟んで対向する他端と係合する案内溝が設けられており、
前記ヒンジリンク部材における前記他端と前記リンク制御部材における前記案内溝との係合によって前記ヒンジリンク部材が揺動する際の回転角が制御されるように構成されているとともに、前記パネル部材の開状態時に当該パネル部材および当該パネル部材上の配置部品が前記他機器の移動領域に突出しないように前記ヒンジリンク部材および前記リンク制御部材の形状並びに前記回転角が設定されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
係止用段部を有した係止案内溝が設けられた保持部材と、
一端が前記パネル部材と連結するとともに他端が前記係止案内溝と係合し当該他端が前記係止用段部と係止した状態で前記パネル部材の開状態を支持するヒンジステー部材と、
前記保持部材に対して移動可能に配されて当該移動により前記係止用段部を隠蔽する状態と当該係止用段部を露出させて前記他端側との係止が可能な状態とを切り替える滑り板部材とを備え、
前記パネル部材に伴って移動する前記ヒンジステー部材に従動して前記滑り板部材が状態切り替えを行うように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記係止案内溝の端部には、
前記パネル部材を開状態にするときに前記ヒンジステー部材における前記他端が係合する引き出し制限溝部と、
開状態にある前記パネル部材を閉状態にするときに前記ヒンジステー部材における前記他端が係合するロック解除用溝部と
が設けられていることを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記リンク制御部材に設けられている前記案内溝は、
前記パネル部材を回転させるためのパネル回転溝部と、
前記ヒンジリンク部材を揺動させるためのリンク回転溝部と
を備えていることを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項5】
前記リンク制御部材に設けられている前記案内溝には、前記パネル部材が所定状態のときに前記ヒンジリンク部材における前記他端と係合する溝部分に、当該溝部分以外の他部とは異なる作用角のパネル状態保持溝部が形成されていることを特徴とする請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
上面側または下面側の少なくとも一方に他機器が配される積載構造に対応した筐体と、前記筐体の上面に沿った軸線を中心にして当該筐体の前面側を開閉自在に覆うパネル部材と、を備えて構成された電子機器にて用いられるパネル開閉機構であって、
一端が前記パネル部材と連結し当該パネル部材の開閉に伴い前記筐体の側に設けられた支軸を中心にして揺動するように配設されたヒンジリンク部材と、
一端が前記パネル部材と連結し当該パネル部材の開閉に伴い前記筐体の前後方向に沿って移動するように配設されたリンク制御部材とを備え、
前記リンク制御部材には、前記ヒンジリンク部材における前記パネル部材との連結端と当該ヒンジリンク部材の揺動中心を挟んで対向する他端と係合する案内溝が設けられており、
前記ヒンジリンク部材における前記他端と前記リンク制御部材における前記案内溝との係合によって前記ヒンジリンク部材が揺動する際の回転角が制御されるように構成されているとともに、前記パネル部材の開状態時に当該パネル部材および当該パネル部材上の配置部品が前記他機器の移動領域に突出しないように前記ヒンジリンク部材および前記リンク制御部材の形状並びに前記回転角が設定されている
ことを特徴とするパネル開閉機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−15991(P2009−15991A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177993(P2007−177993)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】