電子機器の放熱構造、電子機器及び電子機器の放熱方法
【課題】 プリント基板が実装される電子機器において、小型の(ミクロな)電子部品を冷却する際、ヒートシンク取り付け時に電子部品を破壊する懸念や、ヒートシンクと電子部品の密着性が確認できないことを防止する。
【解決手段】 ケース11に設けられているに穴11aにヒートシンク10の支柱10aを差し込んだ後、応力緩和部品20をスナップリング21を用いて支柱部10aに取り付ける。次に、電子部品30を覆ってプリント基板31にケース11を取り付け、その時、ヒートシンク支柱10a先端が、フレキシブルな動きを持って電子部品30に接触することで、電子部品30を冷却する。
【解決手段】 ケース11に設けられているに穴11aにヒートシンク10の支柱10aを差し込んだ後、応力緩和部品20をスナップリング21を用いて支柱部10aに取り付ける。次に、電子部品30を覆ってプリント基板31にケース11を取り付け、その時、ヒートシンク支柱10a先端が、フレキシブルな動きを持って電子部品30に接触することで、電子部品30を冷却する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の放熱構造、電子機器及び電子機器の放熱方法に係る。本発明は、特に、発熱の著しい電子部品を実装するプリント基板を有する電子機器において、電子部品の大きさに左右することなく、プリント基板に電子部品を実装する際の製造誤差や、環境温度の変化等により発生するプリント基板の反りに対応して、プリント基板を有する電子機器において効率良く冷却を行うこと又は電子部品に対し安定した冷却を行うことを可能とするための電子機器の放熱構造、放熱構造を備えた電子機器及び電子機器の放熱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化・高密度化に伴い、局部的に発熱温度が高くなる部品が多くなってきており、その熱の処理が大きな課題となっている。また、電子部品を使用するにあたり、部品の仕様である許容温度を満たさない電子部品に対しては、何らかの対策を講ずる必要がある。その為、基板に搭載されたICやLSIなどの電子部品に対し放熱部品を接触させて冷却する際、製造誤差や環境温度の変化による基板の反り等で、電子部品位置が上下左右に移動することを考慮した冷却方法が、特許文献1(特開平5−243439号公報、図1参照)に開示されている。
当該方法は、電子部品からの発熱を放熱させるヒートシンクの取付け構造として、ネジをヒートシンク取付け穴に挿入し、その上からコイルバネをネジに挿入する。最後にナットにて固定を行うことで、ネジとナット間に挟まれたバネが応力緩和材としての役割を果たす。ヒートシンクの角部4点にて固定することで、環境に応じて角部4点それぞれにおけるバネはたわむことになるため、電子部品に対し、ヒートシンクを安定して密着させることが可能となる。これにより、接触熱抵抗値を低減させ、電子部品を効率良く冷却するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−243439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷却方法による第1の課題は、ヒートシンクのサイズはそれを取り付ける電子部品より大きくならざるを得ず、他の部品の実装位置にもよるが、取り付けが困難になる場合があるばかりか、強度の弱い小型部品にシートシンクを取り付ける際には、ヒートシンクより受ける力により電子部品が破壊される場合が生じ得る。
【0005】
以下に、具体的な例を、図を用いて説明する。
図3に、従来技術による大型の電子部品を冷却している時の概念図を示す。
図4に、従来技術による小型の電子部品を冷却している時の概念図を示す。
図3と図4に、プリント基板31に実装される大型の電子部品3と小型部品(ミクロな電子部品)30に対し、上述の構造でヒートシンク2を取り付けた図を示す。この時、例えば、ヒートシンク2の大きさ、電子部品の高さ、バネネジ5の締め付けトルク、電子部品に対するヒートシンク2の取付け平行度は、図3と図4で同じとする。ヒートシンク2の取付けの平行度がわずかに狂った際、ヒートシンク2と大型の電子部品3の接触面aと、ヒートシンク2とミクロな電子部品30の接触面bの面積はa>bが成り立ち、ヒートシンク2から各電子部品に掛かる力Fは同じため、接触面aの単位面積に掛かる力F(a)と、接触面bの単位面積に掛かる力F(b)の大きさは、F(a)<F(b)の関係となる。よって、この構造では、電子部品が小さくなる程、ヒートシンク2の取付け時にかかる応力が分散せず、ミクロな電子部品30を破壊しうる力がかかる場合がある。この場合、ヒートシンクを電子部品のサイズに応じて小さめにすることも考えられるが、ヒートシンクのサイズを電子部品以上の大きさにせざるを得ないことに変わりはない。そのため、仮に電子部品と同程度若しくは小さめのヒートシンクで十分な放熱効果が得られる場合であっても、バネネジ5で取り付ける構造上ヒートシンクのサイズは電子部品より大きくする必要があるので、電子部品3又は30がヒートシンクより受ける力は大きいものとなってしまう。また、小型部品であっても高熱を発するものには、大きなヒートシンクを付けざるを得ないため、上述の通り、電子部品破壊につながる場合がある。
【0006】
また、従来の冷却方法による第2の課題は、プリント基板31に電子部品を実装する際の製造誤差や、環境温度の変化によりプリント基板31に反りが発生した際、バネネジ5のバネがたわむことで電子部品に対しヒートシンク2を安定して密着させることが出来るが、ヒートシンク2はバネネジ5の締め付け力によりある程度動きを制限されるため、電子部品の位置変動に追従して動くことの出来る範囲は少ない。その範囲を超え電子部品の位置が変動した際、ヒートシンク2と電子部品の密着性が確保出来ず、冷却機能が低下してしまう場合がある。
図10及び図11に、プリント基板が反った場合の密着性についての説明図を示す。
具体的に説明すると、図10に示すようにプリント基板31がヒートシンク2に近づく方向である上向き方向に反った場合には、バネが伸び電子部品3がヒートシンク2より受ける力をある程度発散させて、密着性が保たれるが、バネの伸びが限界に達するまでの許容となっている。また、図11に示すようにプリント基板31がヒートシンク2に離れる方向である下向き方向に反った場合には、電子部品3とヒートシンク2との接触がなされない方向に力が働き、ヒートシンク2はバネが縮むことでプリント基板31の反りに追従して動くため、密着性が保たれるが、バネの縮みが限界を超えた際、非密着状態に陥るという課題が生じる。
本発明は、以上に鑑みてなされたものであり、発熱の著しい電子部品を実装するプリント基板を有する電子機器において、電子部品の大きさに左右することなく、プリント基板に電子部品を実装する際の製造誤差や、環境温度の変化等により発生するプリント基板の反りに対応して、効率良く冷却を行うこと又は電子部品に対し安定した冷却を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、特に、プリント基板に小型電子部品を実装する電子機器において、電子部品に対しヒートシンクが常に平行に取り付けられるため電子部品を破壊することがない冷却構造と、プリント基板の反りに対応して電子部品に対する冷却を効率良く行うことが出来る構造とを備える。
また、本発明は、電子機器において、ケースの一部に設けられた穴より冷却部材を挿入し、バネ固定を行い、冷却部材の先端が電子部品に接触していることを特徴とすることができる。
例えば、本発明に係る電子機器は、電子部品を覆いプリント基板に取り付けるケースと、支柱部をもつヒートシンクを備え、ヒートシンクを前記ケースより斗出させ、支柱部を電子部品に接触させるようにし、ヒートシンクをフレキシブルに可動出来る様に取付け、電子部品の熱量を外部へ移送させる特徴を持つ。
具体的には、電子部品を含めたプリント基板を覆う用途のケースに穴を設け、ヒートシンクをその穴より差し込み、フレキシブルな動きを持たせつつケースに取り付ける。その後、ケースをプリント基板に実装することで、ヒートシンク支柱先端が発熱部品に接触するように構成することができる。
【0008】
本発明の第1の解決手段によると、
電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備え、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする電子機器の放熱構造が提供される。
【0009】
本発明の第2の解決手段によると、
基板と、
前記基板に搭載された電子部品と、
前記電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備え、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする放熱構造を備えた電子機器が提供される。
【0010】
本発明の第3の解決手段によると、
電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備えた電子機器の放熱方法であって、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする電子機器の放熱方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ヒートシンクをフレキシブルな動きを持たせることのできる応力緩和部品で取り付けることで、電子部品面に対し平行になる方向へヒートシンクに力が働く。これにより、ヒートシンクの取付け平行度が狂うことが無くなるため、単位面積当たりに掛かる力を緩和することが出来、ミクロな電子部品に本ヒートシンクを取り付けた際、ミクロな電子部品を破壊してしまうことを防止出来る。
本発明によると、応力緩和部品がたわむことで、ヒートシンクから電子部品に掛かる力はほぼ一定となり、プリント基板に電子部品を実装する際の製造誤差や、環境温度の変化による基板の反りに対応して、ヒートシンクと電子部品は常に密着性を保ち、安定した電子部品の冷却を行うことが出来る。
本発明によると、応力緩和部品のたわみ量で、ヒートシンクから電子部品へ掛かる力の大きさを確認出来るため、ヒートシンク取付け時に力の掛け過ぎを防止出来る。
本発明によると、ミクロな電子部品のサイズに合わせ、ヒートシンクを小さく製作することが可能であるため、ヒートシンクの自重で電子部品へ掛かる力を小さく出来る。
本発明によると、応力緩和部品とヒートシンクでケースを挟み込む構造により、ヒートシンクを簡易に取り付けることが出来る。
本発明によると、部品のサイズによらず、ヒートシンクの大きさを自由に設計できるようになるため、仮に部品サイズより大きなヒートシンクを取り付けた場合であっても、ヒートシンクより受ける力を抑制でき電子部品の破壊につながるようなことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器の取り付け方法を説明するために示した放熱構造の分解斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係る電子機器取付け時の放熱構造の斜視図。
【図3】本発明の課題を説明するための大型の電子部品を冷却している時の放熱構造の概念図。
【図4】本発明の課題を説明するためのミクロな電子部品を冷却している時の概念図。
【図5】本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造を示した正面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図(1)。
【図7】本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図(2)。
【図8】本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図(3)。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る電子機器の放熱構造の分解斜視図。
【図10】プリント基板が反った場合の密着性についての説明図(1)。
【図11】プリント基板が反った場合の密着性についての説明図(2)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
1.第1の実施の形態(板バネを用いた例)
図1に、本実施の形態の放熱構造の分解斜視図を示す。また、図2に、上述によって取り付けられたヒートシンクを搭載した放熱構造の構成図を示す。
本実施の形態に係る装置は、ヒートシンク(冷却部材)10、ケース11、応力緩和部品20、スナップリング(取り付け部材)21、電子部品30、プリント基板31を備える。
ケース11は電子部品30を含めたプリント基板31を覆う様に取り付けられる構造とする。このケース11は、状況によってシールドの役割を持たせても良く、またケース11自体がヒートシンクの役割を持つものでも良い。このケース11には、発熱電子部品30に対応した箇所にケース穴11aを設けている。ヒートシンク10は、ケース穴11aより若干小さな寸法の支柱10aを有しており、ケース穴11a上部より支柱10aを挿入する。支柱10aの寸法は、フレキシブルな動きを持たせるため、ケース穴11aより所定径(例、0.1mm〜1mm程度)小さめの寸法を目安とする。なお、ヒートシンク10は電子部品の熱を効率よく輸送するため、銅やアルミニウムなどの高熱伝導金属とする。その後、応力緩和部品20に設けられているヒートシンク支柱10aより若干大きな寸法の応力緩和部品穴20aからヒートシンク支柱10aを挿入し、ヒートシンク支柱10aに設けられているヒートシンク溝(固定部)10cに応力緩和部品20をたわませた状態でスナップリング21を取り付ける。これにより、ヒートシンクフィン側(放熱部)10bと応力緩和部品20により、ケース11が挟み込まれる。応力緩和部品20として、バネ材の他にピストンやダンパー等を用いてもよい。次に、ケース11をプリント基板31に取り付け、取り付け後、ヒートシンク支柱11a先端が電子部品30に接触することで、電子部品30の熱量がヒートシンク11を通して放熱される。ケース11を取り付けた際のヒートシンク10は、プリント基板31がヒートシンク支柱10aに対し離れる方向に反った場合にも、ヒートシンク支柱10aが電子部品30に接触出来る様、その分考慮した位置で取り付けることとする。なお、熱伝導効率や接触状態をよくするために、支柱10aと電子部品30との間に緩衝部材をさらに備えるようにしてもよい。
【0014】
図5に、ヒートシンク10を搭載した際の放熱構造の正面図を示す。プリント基板31が上下方向に反った際、応力緩和部品20がケース11と接触してたわむことでヒートシンクからの応力は緩和される。
以下、プリント基板31に反りが生じた際の、電子部品30に掛かる応力の変動と、バネの選定について説明する。
図6に、本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図を示す。
図6に示す様に、ヒートシンク10が板バネを用いた応力緩和部品20で取り付けられており、プリント基板31がヒートシンク支柱10aを持ち上げる方向に反った場合を想定する。板バネに掛かる荷重と変位の関係は、例えばJIS規格H3130より数1で表される。
【0015】
【数1】
【0016】
数1より、板バネ定数値はバネ形状と材質の選択によって微小な値をとることが出来る。
板バネはプリント基板31の変位量分の力をケースより受け、その力はそのまま電子部品を押さえつける方向へ働く事になる。しかしながら、P=kδより、バネ定数値を小さくすれば、バネ変位によって増加する応力も微小なものとすることが出来、プリント基板31に反りが発生した際も、電子部品30に対しほぼ一定の圧力でヒートシンク10を接触させることが出来る。
例えば、プリント基板31の反り(バネ変位)δ(mm)が±1mm時に電子部品に係る力である荷重(N)を1.3N(約100g)を想定して所定のバネ定数を算出する。この際、バネの種類、形状より、板の枚数n:4枚、バネの縦弾性係数E:186000MPa(材質:SUS304)、板幅b:2mm、板厚t0.15mm、有効スパンL:10mmの板バネ使用を条件とすると、バネ定数は、1.3となる。すなわち、バネ定数1.3になるよう、該条件の板バネを用いれば、プリント基板の反りδ(mm)が±1mm時に電子部品に係る力である荷重(N)を1.3Nに抑えることが可能となる。
【0017】
図7に、本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図(2)を示す。図7に示す様に、ヒートシンク10が板バネ20で取り付けられており、プリント基板31がヒートシンク支柱10aに対し離れる方向に反った場合を想定する。その際、数1で求められるプリント基板31の反り量に対する応力分が、取付け初期時に掛かる応力より軽減される。
この場合も、図6と同様に、バネ定数値を小さくすれば、バネ変位によって増加する応力も微小なものとすることが出来、プリント基板31に反りが発生した際も、電子部品30に対しほぼ一定の圧力でヒートシンク10を接触させることが出来る。
図8に、本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図(3)を示す。図8に示す様に基板31が傾いて取付けられた際も、応力緩和部品20の各はねがそれぞれ適切にたわむことによって電子部品30に対し平行に接触することが出来る。
【0018】
2.第2の実施の形態(コイルバネを用いた例)
図9に、本発明の第2の実施形態に係る電子機器の放熱構造の分解斜視図を示す。本実施の形態に係る装置は、ヒートシンク10、ケース11、応力緩和部品20’、スナップリング21、電子部品30、プリント基板31を備える。第2の実施の形態は、第1の実施の形態の応力緩和部品20’としてコイルバネを用いたものであり、他の構成は同様である。
図9に示す様に、ヒートシンク10がコイルバネを用いた応力緩和部品20’で取り付けられており、プリント基板31がヒートシンク支柱10aを持ち上げる方向に反った場合を想定する。コイルバネに掛かる荷重と変位の関係は、例えばJIS規格B2704より数2で表される。
【0019】
【数2】
数2より、コイルバネ定数値はバネ形状と材質の選択によって微小な値をとることが出来る。コイルバネ20はプリント基板31の変位量分の力をケースより受け、その力はそのまま電子部品を押さえつける方向へ働く事になる。しかしながら、P=kδより、バネ定数値を小さくすれば、バネ変位によって増加する応力も微小なものとすることが出来、プリント基板31に反りが発生した際も、電子部品30に対しほぼ一定の圧力でヒートシンク10を接触させることが出来る。
例えば、プリント基板31の反り(バネ変位)δ(mm)が±1mm時に電子部品に係る力である荷重(N)を0.5N(約50g)を想定して所定のバネ定数を算出する。この際、バネの種類、形状より、コイル巻数:10、コイル径:5mm、バネの線径:0.5mm、バネの横弾性係数:68500MPa(材質:SUS304)のコイルバネ使用を条件とすると、バネ定数は、0.5となる。すなわち、バネ定数0.5になるよう、該条件のコイルバネを用いれば、プリント基板の反りδ(mm)が±1mm時に電子部品に係る力である荷重(N)を0.5Nに抑えることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上の実施の形態では、支柱の断面形状は円形であったが、ひし形・四角形等の多角形、楕円等の他の形状としてもよい。この場合、ケース穴も、その断面形状と対応する形状とすることができる。また、応力緩和部材をスナップリングでとめる例を示したが、これに限らず、適宜の取り付け部材を用いることができる。さらに、ケース、ヒートシンク等の形状・構造も上述に限らず、適宜の形状・構造を採用することができる。また、ケースは、フィン等の放熱部をさらに備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
2、10…ヒートシンク 3、30…電子部品 5…バネネジ 10a…支柱
10b…ヒートシンクフィン側 10c…ヒートシンク溝 11…ケース
11a…ケース穴 20…応力緩和部品 20a…応力緩和部品穴
21…スナップリング 31…プリント基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の放熱構造、電子機器及び電子機器の放熱方法に係る。本発明は、特に、発熱の著しい電子部品を実装するプリント基板を有する電子機器において、電子部品の大きさに左右することなく、プリント基板に電子部品を実装する際の製造誤差や、環境温度の変化等により発生するプリント基板の反りに対応して、プリント基板を有する電子機器において効率良く冷却を行うこと又は電子部品に対し安定した冷却を行うことを可能とするための電子機器の放熱構造、放熱構造を備えた電子機器及び電子機器の放熱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化・高密度化に伴い、局部的に発熱温度が高くなる部品が多くなってきており、その熱の処理が大きな課題となっている。また、電子部品を使用するにあたり、部品の仕様である許容温度を満たさない電子部品に対しては、何らかの対策を講ずる必要がある。その為、基板に搭載されたICやLSIなどの電子部品に対し放熱部品を接触させて冷却する際、製造誤差や環境温度の変化による基板の反り等で、電子部品位置が上下左右に移動することを考慮した冷却方法が、特許文献1(特開平5−243439号公報、図1参照)に開示されている。
当該方法は、電子部品からの発熱を放熱させるヒートシンクの取付け構造として、ネジをヒートシンク取付け穴に挿入し、その上からコイルバネをネジに挿入する。最後にナットにて固定を行うことで、ネジとナット間に挟まれたバネが応力緩和材としての役割を果たす。ヒートシンクの角部4点にて固定することで、環境に応じて角部4点それぞれにおけるバネはたわむことになるため、電子部品に対し、ヒートシンクを安定して密着させることが可能となる。これにより、接触熱抵抗値を低減させ、電子部品を効率良く冷却するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−243439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冷却方法による第1の課題は、ヒートシンクのサイズはそれを取り付ける電子部品より大きくならざるを得ず、他の部品の実装位置にもよるが、取り付けが困難になる場合があるばかりか、強度の弱い小型部品にシートシンクを取り付ける際には、ヒートシンクより受ける力により電子部品が破壊される場合が生じ得る。
【0005】
以下に、具体的な例を、図を用いて説明する。
図3に、従来技術による大型の電子部品を冷却している時の概念図を示す。
図4に、従来技術による小型の電子部品を冷却している時の概念図を示す。
図3と図4に、プリント基板31に実装される大型の電子部品3と小型部品(ミクロな電子部品)30に対し、上述の構造でヒートシンク2を取り付けた図を示す。この時、例えば、ヒートシンク2の大きさ、電子部品の高さ、バネネジ5の締め付けトルク、電子部品に対するヒートシンク2の取付け平行度は、図3と図4で同じとする。ヒートシンク2の取付けの平行度がわずかに狂った際、ヒートシンク2と大型の電子部品3の接触面aと、ヒートシンク2とミクロな電子部品30の接触面bの面積はa>bが成り立ち、ヒートシンク2から各電子部品に掛かる力Fは同じため、接触面aの単位面積に掛かる力F(a)と、接触面bの単位面積に掛かる力F(b)の大きさは、F(a)<F(b)の関係となる。よって、この構造では、電子部品が小さくなる程、ヒートシンク2の取付け時にかかる応力が分散せず、ミクロな電子部品30を破壊しうる力がかかる場合がある。この場合、ヒートシンクを電子部品のサイズに応じて小さめにすることも考えられるが、ヒートシンクのサイズを電子部品以上の大きさにせざるを得ないことに変わりはない。そのため、仮に電子部品と同程度若しくは小さめのヒートシンクで十分な放熱効果が得られる場合であっても、バネネジ5で取り付ける構造上ヒートシンクのサイズは電子部品より大きくする必要があるので、電子部品3又は30がヒートシンクより受ける力は大きいものとなってしまう。また、小型部品であっても高熱を発するものには、大きなヒートシンクを付けざるを得ないため、上述の通り、電子部品破壊につながる場合がある。
【0006】
また、従来の冷却方法による第2の課題は、プリント基板31に電子部品を実装する際の製造誤差や、環境温度の変化によりプリント基板31に反りが発生した際、バネネジ5のバネがたわむことで電子部品に対しヒートシンク2を安定して密着させることが出来るが、ヒートシンク2はバネネジ5の締め付け力によりある程度動きを制限されるため、電子部品の位置変動に追従して動くことの出来る範囲は少ない。その範囲を超え電子部品の位置が変動した際、ヒートシンク2と電子部品の密着性が確保出来ず、冷却機能が低下してしまう場合がある。
図10及び図11に、プリント基板が反った場合の密着性についての説明図を示す。
具体的に説明すると、図10に示すようにプリント基板31がヒートシンク2に近づく方向である上向き方向に反った場合には、バネが伸び電子部品3がヒートシンク2より受ける力をある程度発散させて、密着性が保たれるが、バネの伸びが限界に達するまでの許容となっている。また、図11に示すようにプリント基板31がヒートシンク2に離れる方向である下向き方向に反った場合には、電子部品3とヒートシンク2との接触がなされない方向に力が働き、ヒートシンク2はバネが縮むことでプリント基板31の反りに追従して動くため、密着性が保たれるが、バネの縮みが限界を超えた際、非密着状態に陥るという課題が生じる。
本発明は、以上に鑑みてなされたものであり、発熱の著しい電子部品を実装するプリント基板を有する電子機器において、電子部品の大きさに左右することなく、プリント基板に電子部品を実装する際の製造誤差や、環境温度の変化等により発生するプリント基板の反りに対応して、効率良く冷却を行うこと又は電子部品に対し安定した冷却を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、特に、プリント基板に小型電子部品を実装する電子機器において、電子部品に対しヒートシンクが常に平行に取り付けられるため電子部品を破壊することがない冷却構造と、プリント基板の反りに対応して電子部品に対する冷却を効率良く行うことが出来る構造とを備える。
また、本発明は、電子機器において、ケースの一部に設けられた穴より冷却部材を挿入し、バネ固定を行い、冷却部材の先端が電子部品に接触していることを特徴とすることができる。
例えば、本発明に係る電子機器は、電子部品を覆いプリント基板に取り付けるケースと、支柱部をもつヒートシンクを備え、ヒートシンクを前記ケースより斗出させ、支柱部を電子部品に接触させるようにし、ヒートシンクをフレキシブルに可動出来る様に取付け、電子部品の熱量を外部へ移送させる特徴を持つ。
具体的には、電子部品を含めたプリント基板を覆う用途のケースに穴を設け、ヒートシンクをその穴より差し込み、フレキシブルな動きを持たせつつケースに取り付ける。その後、ケースをプリント基板に実装することで、ヒートシンク支柱先端が発熱部品に接触するように構成することができる。
【0008】
本発明の第1の解決手段によると、
電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備え、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする電子機器の放熱構造が提供される。
【0009】
本発明の第2の解決手段によると、
基板と、
前記基板に搭載された電子部品と、
前記電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備え、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする放熱構造を備えた電子機器が提供される。
【0010】
本発明の第3の解決手段によると、
電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備えた電子機器の放熱方法であって、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする電子機器の放熱方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ヒートシンクをフレキシブルな動きを持たせることのできる応力緩和部品で取り付けることで、電子部品面に対し平行になる方向へヒートシンクに力が働く。これにより、ヒートシンクの取付け平行度が狂うことが無くなるため、単位面積当たりに掛かる力を緩和することが出来、ミクロな電子部品に本ヒートシンクを取り付けた際、ミクロな電子部品を破壊してしまうことを防止出来る。
本発明によると、応力緩和部品がたわむことで、ヒートシンクから電子部品に掛かる力はほぼ一定となり、プリント基板に電子部品を実装する際の製造誤差や、環境温度の変化による基板の反りに対応して、ヒートシンクと電子部品は常に密着性を保ち、安定した電子部品の冷却を行うことが出来る。
本発明によると、応力緩和部品のたわみ量で、ヒートシンクから電子部品へ掛かる力の大きさを確認出来るため、ヒートシンク取付け時に力の掛け過ぎを防止出来る。
本発明によると、ミクロな電子部品のサイズに合わせ、ヒートシンクを小さく製作することが可能であるため、ヒートシンクの自重で電子部品へ掛かる力を小さく出来る。
本発明によると、応力緩和部品とヒートシンクでケースを挟み込む構造により、ヒートシンクを簡易に取り付けることが出来る。
本発明によると、部品のサイズによらず、ヒートシンクの大きさを自由に設計できるようになるため、仮に部品サイズより大きなヒートシンクを取り付けた場合であっても、ヒートシンクより受ける力を抑制でき電子部品の破壊につながるようなことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器の取り付け方法を説明するために示した放熱構造の分解斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係る電子機器取付け時の放熱構造の斜視図。
【図3】本発明の課題を説明するための大型の電子部品を冷却している時の放熱構造の概念図。
【図4】本発明の課題を説明するためのミクロな電子部品を冷却している時の概念図。
【図5】本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造を示した正面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図(1)。
【図7】本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図(2)。
【図8】本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図(3)。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る電子機器の放熱構造の分解斜視図。
【図10】プリント基板が反った場合の密着性についての説明図(1)。
【図11】プリント基板が反った場合の密着性についての説明図(2)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
1.第1の実施の形態(板バネを用いた例)
図1に、本実施の形態の放熱構造の分解斜視図を示す。また、図2に、上述によって取り付けられたヒートシンクを搭載した放熱構造の構成図を示す。
本実施の形態に係る装置は、ヒートシンク(冷却部材)10、ケース11、応力緩和部品20、スナップリング(取り付け部材)21、電子部品30、プリント基板31を備える。
ケース11は電子部品30を含めたプリント基板31を覆う様に取り付けられる構造とする。このケース11は、状況によってシールドの役割を持たせても良く、またケース11自体がヒートシンクの役割を持つものでも良い。このケース11には、発熱電子部品30に対応した箇所にケース穴11aを設けている。ヒートシンク10は、ケース穴11aより若干小さな寸法の支柱10aを有しており、ケース穴11a上部より支柱10aを挿入する。支柱10aの寸法は、フレキシブルな動きを持たせるため、ケース穴11aより所定径(例、0.1mm〜1mm程度)小さめの寸法を目安とする。なお、ヒートシンク10は電子部品の熱を効率よく輸送するため、銅やアルミニウムなどの高熱伝導金属とする。その後、応力緩和部品20に設けられているヒートシンク支柱10aより若干大きな寸法の応力緩和部品穴20aからヒートシンク支柱10aを挿入し、ヒートシンク支柱10aに設けられているヒートシンク溝(固定部)10cに応力緩和部品20をたわませた状態でスナップリング21を取り付ける。これにより、ヒートシンクフィン側(放熱部)10bと応力緩和部品20により、ケース11が挟み込まれる。応力緩和部品20として、バネ材の他にピストンやダンパー等を用いてもよい。次に、ケース11をプリント基板31に取り付け、取り付け後、ヒートシンク支柱11a先端が電子部品30に接触することで、電子部品30の熱量がヒートシンク11を通して放熱される。ケース11を取り付けた際のヒートシンク10は、プリント基板31がヒートシンク支柱10aに対し離れる方向に反った場合にも、ヒートシンク支柱10aが電子部品30に接触出来る様、その分考慮した位置で取り付けることとする。なお、熱伝導効率や接触状態をよくするために、支柱10aと電子部品30との間に緩衝部材をさらに備えるようにしてもよい。
【0014】
図5に、ヒートシンク10を搭載した際の放熱構造の正面図を示す。プリント基板31が上下方向に反った際、応力緩和部品20がケース11と接触してたわむことでヒートシンクからの応力は緩和される。
以下、プリント基板31に反りが生じた際の、電子部品30に掛かる応力の変動と、バネの選定について説明する。
図6に、本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図を示す。
図6に示す様に、ヒートシンク10が板バネを用いた応力緩和部品20で取り付けられており、プリント基板31がヒートシンク支柱10aを持ち上げる方向に反った場合を想定する。板バネに掛かる荷重と変位の関係は、例えばJIS規格H3130より数1で表される。
【0015】
【数1】
【0016】
数1より、板バネ定数値はバネ形状と材質の選択によって微小な値をとることが出来る。
板バネはプリント基板31の変位量分の力をケースより受け、その力はそのまま電子部品を押さえつける方向へ働く事になる。しかしながら、P=kδより、バネ定数値を小さくすれば、バネ変位によって増加する応力も微小なものとすることが出来、プリント基板31に反りが発生した際も、電子部品30に対しほぼ一定の圧力でヒートシンク10を接触させることが出来る。
例えば、プリント基板31の反り(バネ変位)δ(mm)が±1mm時に電子部品に係る力である荷重(N)を1.3N(約100g)を想定して所定のバネ定数を算出する。この際、バネの種類、形状より、板の枚数n:4枚、バネの縦弾性係数E:186000MPa(材質:SUS304)、板幅b:2mm、板厚t0.15mm、有効スパンL:10mmの板バネ使用を条件とすると、バネ定数は、1.3となる。すなわち、バネ定数1.3になるよう、該条件の板バネを用いれば、プリント基板の反りδ(mm)が±1mm時に電子部品に係る力である荷重(N)を1.3Nに抑えることが可能となる。
【0017】
図7に、本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図(2)を示す。図7に示す様に、ヒートシンク10が板バネ20で取り付けられており、プリント基板31がヒートシンク支柱10aに対し離れる方向に反った場合を想定する。その際、数1で求められるプリント基板31の反り量に対する応力分が、取付け初期時に掛かる応力より軽減される。
この場合も、図6と同様に、バネ定数値を小さくすれば、バネ変位によって増加する応力も微小なものとすることが出来、プリント基板31に反りが発生した際も、電子部品30に対しほぼ一定の圧力でヒートシンク10を接触させることが出来る。
図8に、本発明の一実施形態に係る電子機器の放熱構造の基板反り時の挙動を示した概念図(3)を示す。図8に示す様に基板31が傾いて取付けられた際も、応力緩和部品20の各はねがそれぞれ適切にたわむことによって電子部品30に対し平行に接触することが出来る。
【0018】
2.第2の実施の形態(コイルバネを用いた例)
図9に、本発明の第2の実施形態に係る電子機器の放熱構造の分解斜視図を示す。本実施の形態に係る装置は、ヒートシンク10、ケース11、応力緩和部品20’、スナップリング21、電子部品30、プリント基板31を備える。第2の実施の形態は、第1の実施の形態の応力緩和部品20’としてコイルバネを用いたものであり、他の構成は同様である。
図9に示す様に、ヒートシンク10がコイルバネを用いた応力緩和部品20’で取り付けられており、プリント基板31がヒートシンク支柱10aを持ち上げる方向に反った場合を想定する。コイルバネに掛かる荷重と変位の関係は、例えばJIS規格B2704より数2で表される。
【0019】
【数2】
数2より、コイルバネ定数値はバネ形状と材質の選択によって微小な値をとることが出来る。コイルバネ20はプリント基板31の変位量分の力をケースより受け、その力はそのまま電子部品を押さえつける方向へ働く事になる。しかしながら、P=kδより、バネ定数値を小さくすれば、バネ変位によって増加する応力も微小なものとすることが出来、プリント基板31に反りが発生した際も、電子部品30に対しほぼ一定の圧力でヒートシンク10を接触させることが出来る。
例えば、プリント基板31の反り(バネ変位)δ(mm)が±1mm時に電子部品に係る力である荷重(N)を0.5N(約50g)を想定して所定のバネ定数を算出する。この際、バネの種類、形状より、コイル巻数:10、コイル径:5mm、バネの線径:0.5mm、バネの横弾性係数:68500MPa(材質:SUS304)のコイルバネ使用を条件とすると、バネ定数は、0.5となる。すなわち、バネ定数0.5になるよう、該条件のコイルバネを用いれば、プリント基板の反りδ(mm)が±1mm時に電子部品に係る力である荷重(N)を0.5Nに抑えることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上の実施の形態では、支柱の断面形状は円形であったが、ひし形・四角形等の多角形、楕円等の他の形状としてもよい。この場合、ケース穴も、その断面形状と対応する形状とすることができる。また、応力緩和部材をスナップリングでとめる例を示したが、これに限らず、適宜の取り付け部材を用いることができる。さらに、ケース、ヒートシンク等の形状・構造も上述に限らず、適宜の形状・構造を採用することができる。また、ケースは、フィン等の放熱部をさらに備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
2、10…ヒートシンク 3、30…電子部品 5…バネネジ 10a…支柱
10b…ヒートシンクフィン側 10c…ヒートシンク溝 11…ケース
11a…ケース穴 20…応力緩和部品 20a…応力緩和部品穴
21…スナップリング 31…プリント基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備え、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器の放熱構造において、
さらに、前記応力緩和部材を前記冷却部材の支柱部に取り付けるための取り付け部材を備え、
前記応力緩和部材は、前記支柱部より若干大きな寸法の応力緩和部材穴を有し、
前記支柱部は、固定部を有し、
前記応力緩和部材穴から前記支柱部が挿入され、前記支柱部の前記固定部に前記応力緩和部材をたわませた状態で前記取り付け部材が取り付けられたことを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器の放熱構造において、
前記応力緩和部材として、板バネ、スプリング、ピストン、又は、ダンパーのいずれかを用いることを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子機器の放熱構造において、
前記ケースは、放熱部をさらに備えたことを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電子機器の放熱構造において、
前記冷却部材の支柱部と前記電子部品との間に緩衝部材をさらに備えたことを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子機器の放熱構造において、
前記冷却部材の支柱部の断面及び前記ケースのケース穴及び前記応力緩和部材の応力緩和部材穴の形状は、円形、楕円形、多角形のいずれかであることを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項7】
基板と、
前記基板に搭載された電子部品と、
前記電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備え、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする放熱構造を備えた電子機器。
【請求項8】
電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備えた電子機器の放熱方法であって、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする電子機器の放熱方法。
【請求項1】
電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備え、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器の放熱構造において、
さらに、前記応力緩和部材を前記冷却部材の支柱部に取り付けるための取り付け部材を備え、
前記応力緩和部材は、前記支柱部より若干大きな寸法の応力緩和部材穴を有し、
前記支柱部は、固定部を有し、
前記応力緩和部材穴から前記支柱部が挿入され、前記支柱部の前記固定部に前記応力緩和部材をたわませた状態で前記取り付け部材が取り付けられたことを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器の放熱構造において、
前記応力緩和部材として、板バネ、スプリング、ピストン、又は、ダンパーのいずれかを用いることを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子機器の放熱構造において、
前記ケースは、放熱部をさらに備えたことを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電子機器の放熱構造において、
前記冷却部材の支柱部と前記電子部品との間に緩衝部材をさらに備えたことを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子機器の放熱構造において、
前記冷却部材の支柱部の断面及び前記ケースのケース穴及び前記応力緩和部材の応力緩和部材穴の形状は、円形、楕円形、多角形のいずれかであることを特徴とする電子機器の放熱構造。
【請求項7】
基板と、
前記基板に搭載された電子部品と、
前記電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備え、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする放熱構造を備えた電子機器。
【請求項8】
電子部品を搭載した基板に該電子部品を覆って取り付けられ、該電子部品の搭載位置に対応した箇所にケース穴を有するケースと、
放熱部と支柱部を有する冷却部材と、
前記冷却部材の前記支柱部に取り付けられる応力緩和部材と
を備えた電子機器の放熱方法であって、
前記ケース穴より前記冷却部材の支柱部が挿入され、前記応力緩和部材が前記支柱部に取り付けられ、前記冷却部材の放熱部が前記ケースより突出させられ、前記冷却部材の放熱部と前記応力緩和部材により、前記ケースが挟み込まれ、前記応力緩和部材による応力を加えた状態で前記支柱部を前記電子部品に接触させるようにしたことを特徴とする電子機器の放熱方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−119503(P2011−119503A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276272(P2009−276272)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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