説明

電子機器用の入力装置、入力制御方法、及び電子機器

【課題】平坦な入力操作面を備える、電子機器用の入力装置において、誤入力のおそれを無くす。
【解決手段】平坦な入力操作面、及び入力操作面に対する入力操作の発生位置を検知する静電容量方式のタッチパネルを備える操作部と、タッチパネルからの入力操作の発生位置の座標情報が入力され、入力操作の真偽を判別して真と判別した場合にのみ、座標情報に対応する出力情報を電子機器に対して出力する入力制御部とを備え、入力制御部は、予め定義された特殊位置A1に相当する座標情報が入力された場合、その座標情報が入力されている間、入力操作面6内に特殊位置A1に応じた無効エリアA100を設け、無効エリアA100に含まれる位置A3に対する入力操作を偽と判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のための入力装置、その入力装置の入力制御方法、及びその入力装置を用いた電子機器に関し、特に、平坦な入力操作面を備えた入力装置及びその入力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LCD(液晶表示装置)やCRT等の表示装置を備えた電子機器のための入力装置として、その表示装置の画面上に配置され、画面に表示される文字、数字及びその他の記号(図形、像等からなるアイコンと称される絵記号等を含む。複数の記号で1つの記号をなすものも含む。)を、その表面側から透かして見ながら所望の文字、数字及びその他の記号(以下、記号と総称する。)の位置を指等でタッチし、その記号位置に応じた情報を生成して出力する装置(以下、このような入力装置をタッチパネルともいう)が広く普及している(例えば、特許文献1参照)。
例えば、銀行等の現金自動預け払い機やカーナビゲータ等の電子機器においては、タッチパネル式ディスプレーが以前から普及しており、また携帯情報端末、電子辞書等の小型の電子機器でも盛んに使われるようになっている。
【0003】
一方、タッチパネルを用いて、必ずしもLCDやCRT等の表示装置が併設されていない入力装置を実現する提案も種々なされており、例えば、本出願人は、先に、表示装置としての機能が要求されないキーボード装置であって、かつ、タッチパネル式ディスプレーと同様に、最上面に位置する入力操作面が平坦面とされたキーボード装置を提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−317041号公報
【特許文献2】特願2009−253938号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、特許文献2記載のキーボード装置のような入力装置は、最上面に位置する入力操作面が平坦面とされたことから、清掃がし易くなって汚れが固着し難くなり、見栄えが向上する上に、清潔な状態を保つことができ、機能性と美観とを高度に兼ね備えたものである。そして、平坦な入力操作面を実現するにあたり、静電容量方式のタッチパネルが採用されていることで、透光性に優れたタッチパネルを簡単に構成することができ、かつ、高感度の入力検知が可能となっている。
ところが、その感度の高さが、従来の複数のキースイッチを備える形式の入力装置には無い、特有の課題を抱える一因ともなっている。すなわち、このような入力装置では、ユーザーが意図的に入力操作を実行する場合以外にも、ユーザーの指等がタッチパネルに近接または接触しさえすれば、それが入力操作として誤認されるおそれがある。
【0006】
このことは、特に、パーソナルコンピュータ用キーボード装置等の、比較的広い入力操作面上に多数の記号位置が分布配置された入力装置の場合に問題となる。パーソナルコンピュータ用キーボード装置では、(例えば親指等の)特定の1本の指で操作されることが多い携帯型電子機器等の入力装置とは異なり、入力操作面上に、その時点の入力操作には直接用いられていない指等が存在することがむしろ常態であり、さらに、人間工学的には、入力操作を実行していない間でも、通常、指を入力操作面上に軽く触れさせた状態がデフォルト状態であるからである。静電容量方式タッチパネルでは、例えばこのようなデフォルト状態と、ユーザーが意図的に入力を行なった状態とを適切に判別することが困難な場合がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、平坦な入力操作面を備える、電子機器用の入力装置において、誤入力のおそれを無くし、その操作性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、または、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0009】
ここで、以下の記載において、「真」の入力操作とは、入力装置のユーザーが意図的に実行した入力操作のことをいい、「偽」の入力操作とは、ユーザーが入力操作面上の特定の位置に対して「真」の入力操作を実行していないにも関わらず、タッチパネルから入力制御部に上記特定の位置の座標情報が入力された場合に、その座標情報に対応する入力操作をいう。
尚、「偽」の入力操作が発生する主な要因としては、ユーザーの指等がユーザーの入力意図とは関わりなくタッチパネルに近接または接触し、その近接または接触がタッチパネルによって検知されること等が考えられるが、本発明は、「偽」の入力操作の発生要因によって限定されるものではない。
また、以下の記載において、「上」、「下」の方向は、本発明に係る入力装置を平置きして、入力操作面が水平に位置する状態での、上下方向を意味する。
【0010】
(1)電子機器用の入力装置であって、平坦な入力操作面、及び該入力操作面に対する入力操作の発生位置を検知する静電容量方式のタッチパネルを備える操作部と、前記タッチパネルからの前記入力操作の発生位置の座標情報が入力され、前記入力操作の真偽を判別して真と判別した場合にのみ、前記座標情報に対応する出力情報を前記電子機器に対して出力する入力制御部とを備え、
前記入力制御部は、予め定義された特殊位置のうちの1つまたは複数の組合せに相当する座標情報が入力された場合、その座標情報が入力されている間、前記入力操作面内に前記特殊位置のうちの1つまたは複数の組合せのそれぞれに応じた無効エリアを設け、該無効エリアに含まれる位置に対する入力操作を偽と判別することを特徴とする入力装置(請求項1)。
【0011】
本項に係る入力装置は、入力制御部に入力された座標情報が、予め定義された特殊位置のうちの1つまたは複数の組合せ(以下、1つの特殊位置または複数の特殊位置の組合せのいずれか一方を排他的にいう場合には、その旨明記し、単に「特殊位置」という場合には、これらの両方を含むものとする)に相当する場合、その座標情報が入力されている間(すなわち、通常、ユーザーの指等が入力操作面上の特殊位置に触れ続けている間)、入力操作面内に、その特殊位置に応じて無効エリアを設け、その間に入力された座標情報に対応する位置が無効エリアに含まれる場合、その位置に対する入力操作を偽と判別し、座標情報に対応する出力情報の出力を停止するものである。
【0012】
一般に、入力装置と電子機器との間で、入力操作面内の第1位置に対する入力操作を、第2位置に対する入力操作と組合せて実行した場合に、第1位置に対する入力操作を単独で実行した場合とは異なる意味を割り当てる機能(所謂バインド機能)が定義されている場合がある。さらに、このようなバインド機能を設定する(一般には複数の)第2位置には、その第2位置との組合せによるバインド機能が定義された第1位置として、入力操作面内の特定の位置のみが対応するものが存在する場合がある。
したがって、このような第2位置を本項の入力装置における特殊位置として定義し、その特殊位置との組合せによるバインド機能が定義されていない位置のみが含まれるように、その特殊位置に対応する無効エリアを設けることによって、電子機器に対する入力操作に支障を生じさせることなく、無効エリアに発生する偽入力操作を確実に防止することができ、バインド機能に関連する電子機器の誤動作を防止することができる。
【0013】
(2)上記(1)項に記載の入力装置において、前記操作部に加わる荷重を検知し、前記入力制御部に対して荷重情報を出力する荷重センサをさらに備え、前記入力制御部は、前記荷重情報の時間変動パターンに少なくとも部分的に基づいて前記入力操作の真偽を判別することを特徴とする入力装置(請求項2)。
【0014】
本項に記載の入力装置によれば、タッチパネルによって検知される入力操作のうち、ユーザーが意図的に実行した真の入力操作と、ユーザーの入力意図とは関わりなく検知された偽入力操作とを、荷重情報(操作部に加わる荷重の応答として、荷重センサによって検出される荷重値)の時間変動パターン(荷重応答曲線ともいう)の相違に基づいて判別することが可能となり、静電容量方式のタッチパネルの高感度の入力検知を活用しつつ、偽入力操作を効果的に排除することができる。これによって、電子機器に対する誤入力のおそれを解消し、入力装置の操作性を改善することが可能となる。
【0015】
(3)上記(2)項に記載の入力装置において、前記荷重情報の時間変動パターンに基づいて前記入力操作を真と判別するための基準には、前記荷重情報の時間変動パターンに第1閾値を越える時点が存在すること、及び、前記第1閾値を超えた時点から第2閾値を下回る時点までの時間が所定の基準時間以下であることが含まれることを特徴とする入力装置(請求項3)。
【0016】
本項に記載の入力装置によれば、鋭いピークを有する荷重応答曲線を確実に判別することができる。一般的に、例えばデフォルト状態のような偽入力操作における荷重応答曲線には、このような鋭いピークは現れないと考えられるため、これによって、偽入力操作を確実に排除することができる。
尚、本項に記載の入力装置において、十分に大きなピーク値を有し、かつ、十分に急峻な立下りを有する鋭いピークを有する荷重応答曲線を判別するために、第1の閾値は、真の入力操作の場合に想定される荷重応答曲線のピーク値に近い値とし、第2の閾値は、第1の閾値よりも小さい値とすることが好ましい。
また、第1の閾値、第2閾値、及び基準時間の具体的な設定値は、入力装置の仕様等に応じて、適切に設定されるものである。
【0017】
(4)上記(2)項また(3)項の入力装置において、前記荷重センサは、前記操作部に加わる荷重を少なくとも三点で検知し、前記入力制御部は、前記少なくとも三点からの荷重情報に基づいて、前記入力操作面内の、前記操作部に加わる荷重の荷重中心が含まれる荷重エリアを特定し、前記タッチパネルから入力される座標情報によって示される位置が前記荷重エリアに含まれるか否かに少なくとも部分的に基づいて、前記入力操作の真偽を判別することを特徴とする入力装置(請求項4)。
【0018】
本項に記載の入力装置は、荷重センサにより荷重が検知される少なくとも三点の位置と、各点の荷重情報(検出荷重値)とから、操作部に加わる荷重が、入力操作面内のどの位置を荷重中心とするものかを、少なくとも概略的なエリア毎に特定することができる。ここで、操作部に加わる荷重が集中荷重である場合、荷重中心は、その集中荷重の作用点であり、真の入力操作の場合には、荷重中心の位置が、入力操作におけるユーザーの指等の接触位置に略一致するものと考えられる。したがって、入力操作の真偽を判別する際に、タッチパネルから入力される座標情報によって示される位置が、上記特定された荷重エリアに含まれるか否かについても考慮することによって、偽入力操作を、さらに確実かつ効果的に排除することができる。
【0019】
尚、入力操作の真偽を判別する際に、荷重情報の時間変動パターンと、座標情報と荷重エリアとの整合性とをどのように組み合わせて用いるかは、入力装置の仕様等に応じて適宜設定することができる。例えば、タッチパネルから入力される座標情報によって示される位置が特定された荷重エリアに含まれない場合には、入力操作を偽と判別し、この判別によって偽と判別されなかった入力操作について、荷重情報の時間変動パターンに基づいて、さらに真偽を判別するものであってもよい。
また、操作部にかかる荷重の荷重中心を含む荷重エリアを特定する上で、少なくとも三点で荷重を測定する必要があるが、測定点の数については、入力操作面の広さ等を考慮して適宜選択されるものであり、四点以上の測定点を有するものであってもよい。
【0020】
(5)上記(2)から(4)のいずか1項の入力装置において、前記操作部とは別体の下ケースと、前記操作部及び前記下ケースを、少なくとも三点で連結するフローティング機構とを備えており、前記フローティング機構は、前記操作部と前記下ケースとに上下方向の間隙を確保した状態で両者を連結する板ばね部材と、前記荷重センサを構成するための、前記板ばね部材に固定されるストレインゲージを含むことを特徴とする入力装置(請求項5)。
【0021】
本項に記載の入力装置は、操作部が、下ケースに対してフローティング機構により三点以上でフローティング支持されることで、下ケースに対して所定の自由度をもちつつ(すなわち変位が許容された状態で)、下ケースによって安定保持される。そして、下ケースに対する操作部の変位が許容されていることで、操作部に加わる荷重が、下ケースに対する操作部の変位と共に荷重センサへと伝えられ、操作部に加わる荷重の検知が可能となる。尚、下ケースに対する操作部の姿勢を安定保持する上で、フローティング機構により、少なくとも三点で両者を連結する必要があるが、連結点数については、入力装置の大きさ等を考慮して、適宜選択されるものである。
そして、板バネ部材に固定されるストレインゲージを含む荷重センサによって、下ケースに対しフローティング支持される操作部に加わる荷重を、板バネ部材の変形により検知するものである。なお、板ばね部材は、ストレインゲージが固定可能であって、かつ、その変形をストレインゲージに伝えることが可能な部材であれば、他の弾性部材であっても良い。
【0022】
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1項の入力装置において、パーソナルコンピュータ用キーボード装置であることを特徴とする入力装置(請求項6)。
【0023】
本項の入力装置において、好ましくは、パーソナルコンピュータ用キーボード装置が備える(例えばCtrlキーまたはFnキー等)の所謂特殊キーに相当する入力操作面内の位置が、特殊位置として定義されるものである。
一般に、パーソナルコンピュータ用キーボード装置とパーソナルコンピュータとの間における仕様では、このような特殊キーとの組合せによるバインド機能において誤動作が生じた場合、例えば、ファイルの削除やパーソナルコンピュータのシャットダウン等の、ユーザーの作業にとって致命的な現象を引き起こす場合があるため、本項に記載の入力装置において、このようなバインド機能の誤動作を防止可能であることは、ユーザーのパーソナルコンピュータ上での作業性を大幅に向上させるものである。
【0024】
さらに、本発明に係る入力装置が荷重センサを備えるものである場合、パーソナルコンピュータ用キーボード装置のような、入力操作面の比較的広い入力装置に対して本発明に係る入力装置を適用することによって、ユーザーの入力意図とは関わりなく、または、入力操作のための準備等により、ユーザーの指等がタッチパネルに近接または接触している場合でも、そのような近接または接触による偽の入力操作を、真の入力操作と区別することができ、ユーザーの入力意図とは関わりのない情報が、パーソナルコンピュータに対して出力されることを防止することができる。ひいては、静電容量方式のタッチパネルを用い、かつ、平坦な入力操作面を備えたキーボード装置において、所定のストロークと押下反力を有するキースイッチを用いて構成される通常のキーボード装置と同等の確実な入力が可能となる。
【0025】
さらに、本発明に係る入力装置は、例えば、AV機器のリモコン等の電子機器用コントローラ、または、卓上電子計算機のような電子機器の入力部分を構成するものであってもよい。
【0026】
(7)そして、本発明は、上記(1)〜(6)のいずれか1項の入力装置を用いたことを特徴とする電子機器(請求項7)も提供するものである。
【0027】
(8)また、本発明は、その一態様において、平坦な入力操作面及び静電容量方式のタッチパネルを備える操作部を備える、電子機器用の入力装置の入力制御方法であって、前記静電容量方式のタッチパネルにより、前記入力操作面に対する入力操作の発生位置を検知するステップと、前記入力操作の発生位置が、予め定義された特殊位置のうちの1つまたは複数の組合せに相当するか否かを判別するステップと、前記入力操作の発生位置が、予め定義された特殊位置のうちの1つまたは複数の組合せに相当する場合、前記入力操作面内に、前記特殊位置のうちの1つまたは複数の組合せのそれぞれに応じた無効エリアを設けるステップと、前記無効エリアに含まれる位置に対応する入力操作を偽と判別するステップと、を含むことを特徴とする入力制御方法(請求項8)を提供するものであり、これによって、上記(1)項の入力装置と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0028】
本発明はこのように構成したので、平坦な入力操作面を備える、電子機器用の入力装置において、誤入力のおそれを無くし、操作性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る入力装置の要部を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る入力装置の一部を模式的に示す上面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る入力装置において、真の入力操作に対応する荷重情報の時間変動パターンの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る入力装置の入力制御方法において、荷重情報の時間変動パターンに基づく部分を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る入力装置において、入力操作面の通常状態と特殊キーを検出した時の状態とを模式的に示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る入力装置の入力制御方法において、荷重エリアの判別及び無効エリアの設定に基づく部分を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る入力装置の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図8】図7に示す入力装置の構成要素を模式的に示した分解図である。
【図9】図7に示す入力装置の、フローティング機構を模式的に示した斜視図である。
【図10】図7に示す入力装置の、タッチパネルの静電遮断手段を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態における入力装置は、パーソナルコンピュータ28用のキーボード装置を構成するものであり、静電容量パネル2と、荷重センサ22と、入力制御部12とを含み、入力制御部12は、キーコード変換部12Aと、荷重応答監視部12Bとを含んでいる。
【0031】
静電容量パネル2は、透光性の静電容量方式タッチパネルであり、入力装置の操作部の構成要素をなす。また、本実施形態において、静電容量パネル2は、同時に発生している複数の入力操作の発生位置を検知可能なものとする。この操作部は、図6〜図8を参照して後述するように、静電容量パネル2の上面側に設けられる平坦な入力操作面を含み、ユーザーは、各キーに対応する入力操作面上の特定の位置を指等により触れることにより、入力操作を実行する。この際、静電容量パネル2は、入力操作によって生じる静電容量の変化に基づいて入力操作の発生位置を検知し、その座標情報は、入力制御部12のキーコード変換部12Aに入力される。
【0032】
尚、本発明は、静電容量パネル2における複数位置の検知方式の具体的態様に限定されるものではなく、入力操作によって生じる静電容量の変化に基づいて、同時に発生している複数の入力操作の発生位置を検知し、それらの座標情報をキーコード変換部12Aに出力可能である限り、任意の適切な静電容量方式タッチパネルを使用することができる。さらに、入力制御部12は、静電容量パネル2の態様に応じた適切な静電容量パネル駆動部(図示は省略する)を含むものであり、このためのハードウェア及び、必要な場合、ソフトウェアは、周知技術を適用して構成することができる。
【0033】
本実施形態において、荷重センサ22は、図2に模式的に示すように、静電容量パネル2の下側の、四隅に相当する位置にそれぞれ設けられており、この四点で荷重を検知するものである。そして、操作部に加わる荷重の応答として、各荷重センサ22A、22B、22C、22Dが検知したそれぞれの荷重値が、荷重情報として入力制御部12の荷重応答監視部12Bに入力される。この荷重値は、入力装置の作動の間(または、少なくとも静電容量パネル2で入力操作が検知されている間)、連続的または断続的に入力されており、荷重応答監視部12Bは、各荷重センサ22A〜22D毎の荷重値F〜F及びその時間変動パターン(荷重応答曲線)を監視するものである。
【0034】
本実施形態において、入力制御部12は、マイクロコンピュータ、そのソフトウェアや各種データを記憶するROM、作業用に用いられるRAM、及び必要な周辺回路等により、一般的なマイクロコンピュータシステムとして構成されている。そして、キーコード変換部12A及び荷重応答監視部12Bの少なくとも主要部分は、マイクロコンピュータのソフトウェアルーチンとして実装されており、必要な場合、入出力インタフェース用回路等のハードウェアを含むものである。但し、本発明に係る入力制御部12は、その実装態様によって限定されるものでなく、後述する入力制御動作を実行する限り、任意の適切なハードウェアまたはソフトウェア、またはそれらの組合せによって構成されるものであってもよい。
【0035】
次に、図1の機能ブロック図を参照して、本実施形態における入力装置における基本的な入力制御動作について説明する。上述したように、荷重応答監視部12Bは、荷重センサ22から得られる荷重応答曲線を監視しており、その曲線の形状が、ユーザーが意図的に実行した真の入力操作を判別するための所定の基準を満たした場合、キーコード変換部12Aに打鍵有効信号を送出する。そして、キーコード変換部12Aは、荷重応答監視部12Bから打鍵有効信号を受け取った場合にのみ、静電容量パネル2から入力された座標情報に対応するキーに対して定義されるキーコード(出力情報)を生成して、パーソナルコンピュータ28に出力するものである。
【0036】
ここで、図3及び図4を参照して、荷重応答曲線に基づいた入力操作の真偽の判別について説明する。本実施形態では、図3に示すように、荷重応答曲線の荷重値に対して、第1閾値Aと第2閾値Bの二つの閾値が設けられおり、第1閾値Aは、ピーク値Cの近傍に設定され、第2閾値Bは、第1閾値Aよりも小さい値に設定されている(荷重値が第1閾値Aを超えた時点から、第2閾値Bを下回る時点までの時間を打鍵巾Wという)。そして、本実施形態において、入力操作は、その荷重応答曲線に第1閾値Aを越える時点が存在し、かつ、その時点から計測された打鍵巾Wが所定の基準時間以内である場合に、真の入力操作と判別されるものである。
【0037】
この入力制御動作の好適な例を説明すれば、次の通りである。荷重応答監視部12Bは、図4に示すように、荷重値が第1閾値Aを越えるかどうか監視し(S200)、第1閾値Aを越えたならば(Yes)、その時点から打鍵巾Wの計測を開始し(S210)、荷重値が第1閾値を超えない(No)間は、この監視を続行する。そして、打鍵巾Wの計測の間、荷重応答監視部12Bは、荷重値が第2閾値Bを下回るかどうか監視し、第2閾値Bを下回ったならば、その時点で打鍵巾Wの計測を終了し(S220)、次のステップ230に移行する(Yes)。荷重値が第2閾値Bを下回らない(No)間は、この計測及び監視を続行する。そして、荷重応答監視部12Bは、ステップS230において、計測された打鍵巾Wが所定の真打鍵巾(所定の基準時間)以下であるか否かを判別し、真打鍵巾以下であった場合(Yes)、入力操作を真として、次のステップS240に移行する。打鍵巾が真打鍵巾を越えていた場合(No)には、ステップS200に戻り、監視を続行する。そして、荷重応答監視部12Bは、ステップ240において、打鍵を有効として、キーコード変換部12Aに打鍵有効信号を送出する。
これによって、静電容量方式のタッチパネルの高感度の入力検知を活用しつつ、偽入力操作を効果的に排除することができ、パーソナルコンピュータ28に対する誤入力のおそれを解消し、入力装置の操作性を改善することが可能となる。
【0038】
尚、本実施形態において、第1閾値A、第2閾値Bの具体的な値は、入力装置の仕様等に応じて、または、実験等を通じて適切に設定可能である。また、真打鍵巾は、通常は5msec程度が適当ではあるものの、同様に、入力装置の仕様等に応じて、または、実験等を通じて、適切に設定されるものである。
また、図3に示すように、真の入力操作に対応する荷重応答曲線は、初期的にピーク値Cを有する比較的急峻なピークが現れ、その曲線の立下り後、再び緩やかに上昇する曲線が現れる場合が多く、その境目における荷重値(バレー値)Dを、第2閾値Bとして用いるものであってもよい。
【0039】
また、図1、図3、図4を参照して上述した入力制御動作は、本発明に係る入力装置において、少なくとも1つの荷重センサ22を備えていれば実施可能である。但し、本実施形態における荷重センサ22は、図2に示すように、4点で荷重を検知する個別の荷重センサ22A〜22Dを含み、荷重応答監視部12Bには、それぞれの荷重値F〜Fが入力されているため、入力操作の真偽を判別するために、複数の荷重値F〜Fの荷重応答曲線を個別にまたは組合わせて使用することができる。この場合、図3に示す荷重応答曲線は、複数の荷重値F〜Fの使用方法に応じて、例えば、選択された1つの荷重曲線、または、平均等の操作により複数の荷重曲線を組合わせた後の荷重曲線等のように、操作部に加わる荷重を代表する、典型的な荷重曲線を示すものである。
【0040】
さらに、本実施形態における入力装置では、各荷重センサ22A〜22Dで検知される荷重値F〜Fを用いて、操作部に加わる荷重の荷重中心の位置が含まれる荷重エリアを特定することができる。本発明は、荷重エリアの特定(または算出)の方法によって限定されるものではないが、例えば、簡便に概略的な荷重エリアを特定するための方法として、2つの荷重センサで検知される荷重値を比較した場合、荷重中心の位置に近い側の荷重センサの方が、遠い側の荷重センサよりも大きい荷重値を検知することを利用することができる。具体的には、本実施形態のように、入力操作面の四隅に各荷重センサ22A〜22Dを配置した場合、入力操作面を各辺の垂直二等分線で区切る四つの荷重エリア(A)〜(D)について、荷重中心の位置が、少なくともこれらのエリア(A)〜(D)のうちのいずれに含まれるかを判別することができ、例えば、図2において、F>F、かつ、F>Fが成立していれば、荷重中心の位置は、荷重エリア(A)に含まれることが分かる。
尚、荷重エリアを特定するために使用する荷重値としては、各荷重値F〜Fの荷重応答曲線における、所定の時点の荷重値を用いるものであっても、所定の時間幅にわたる平均値等を用いるものであってもよい。
【0041】
そして、ユーザーが意図的に実行する真の入力操作の場合には、この荷重中心の位置が、入力操作におけるユーザーの指等の接触位置に略一致するものと考えられるため、静電パネル2から入力制御部12に入力される座標情報によって示される位置が、各荷重センサ22A〜22Dからの荷重値F〜Fによって特定される荷重エリアに含まれるか否かを、入力操作の真偽を判別するための基準の1つとして用いることができる。
【0042】
さらに、本実施形態における入力装置では、バインド機能を設定する特殊位置(例えば、Ctrlキー及びFnキーに相当する位置)が、一般的には複数箇所定義されており、例えば、入力制御部12が備えるROM等の記憶手段に、特殊位置を定義するデータが記憶されている。そして、例えば、図5に示すように、それらのうちの1つの特殊位置A1(例えば、Ctrlキーに相当する位置)に相当する座標情報が入力制御部12に入力された場合、その座標情報が入力されている間、入力操作面6内に、特殊位置A1に応じた無効エリアA100(図中の網掛け部)を設けて、この無効エリアA100に含まれる位置に対応する入力操作を偽と判別するものである。図5には、説明を簡明にするため、特殊位置A1との組合せによるバインド機能が、位置A2に相当するキーのみに定義されている(以下、このようなキーを候補キーという)場合が例示されており、この場合、無効エリアA100は、入力操作面6から、位置A2からなる有効エリアを除いた全エリアに相当する。
これによって、例えば、位置A3のような、無効エリアA100に含まれる位置に相当する座標情報が入力制御部12に入力された場合でも、この位置A3に対応する入力操作は偽と判別され、その出力情報のパーソナルコンピュータ28に対する出力は停止されるものである。
尚、図5には、1つの特殊位置A1に対する入力操作によりバインド機能が設定される場合を例示したが、本発明に係る入力装置は、2つ以上の特殊位置の組合せ(例えば、Ctrlキー+Altキー)によって、その組合せに応じた無効エリアを有するバインド機能が設定される場合も含むものである。
【0043】
ここで、図6を参照して、荷重エリアの特定と特殊位置に応じた無効エリアの設定に関連して、本実施形態における入力装置の入力制御部12による入力制御動作の好ましい一例を説明すれば、次の通りである。
まず、各荷重センサ22A〜22Dの荷重応答曲線を監視する間に、各荷重値F〜Fに基づいて荷重エリアを特定し(S100)、次いで、静電パネル2からの座標情報に対応するキーを特定し(S110)、次いで、ステップS120では、ステップS110において特定されたキーのキー数が判別されて、1以上のキーがあった場合(Yes)、ステップS130に制御が移行する(複数のキーがあった場合には、ステップS130の判定が複数回繰り返される)。また、ステップS120において、キーが全くなかった場合(No)には、ステップS160に制御が移行し、この時点で設定されている(具体的には、入力制御部12が備えるRAM等の記憶手段に記憶されている)無効エリアを全て有効エリアとして設定する(S160)。
ステップS130において、キーが特殊位置に相当するキー(特殊キー)であるか否かを判別し、特殊キーであると判別された場合(Yes)には、ステップS100において特定された荷重エリアに含まれるか否かを判別し(S140)、含まれていると判別された場合(Yes)には、その特殊キーの候補キー以外を無効とする無効エリアを上記記憶手段に記憶することにより、設定する(S145)。
ここで、ステップS140において、特殊キーが荷重エリアに含まれないと判別された場合(No)には、その入力操作は偽と見なされて無効エリアの設定は行われない。
また、ステップS130において、特殊キーでないと判別された場合(No)、そのキーが、現在設定されている無効エリアに含まれないかどうか(すなわち、そのキーに相当する位置が有効エリア内かどうか)を判別し、有効エリア内と判別された場合(Yes)には、(必要な場合、このキーが荷重エリアに含まれることを判別した後)、図1、図3、図4を参照して上述した基本的な入力動作を実施する(S155)。ステップS130において、出力情報(キーコード)の変更等、特殊キーとの組合せに伴うコンビネーション動作を実施する必要がある場合、そのコンビネーション動作を実施する。
尚、ステップS130以後の各ステップからなるルーチンにおいて、1キー(または、複数キーのうちの最後の1キー)の処理を終了後、この制御は、ステップS100に戻るものであり、ステップS160の処理後も同様である。
【0044】
これによって、特殊位置に対する入力操作との組合せてバインド機能を実行する入力操作の誤認、ひいてはその結果として生じる可能性のあるパーソナルコンピュータ28の誤動作を確実に防止するものである。また、荷重エリアを特定することにより、偽入力操作を、さらに確実かつ効果的に排除することができ、ひいては、静電容量方式のタッチパネルを用い、かつ、平坦な入力操作面を備えたキーボード装置において、所定のストロークと押下反力を有するキースイッチを用いて構成される通常のキーボード装置と同等の確実な入力が可能となる。
【0045】
尚、本発明は、入力制御部12における入力制御動作の実装態様に限定されるものではないが、図1に示す機能ブロックに即して言えば、例えば、座標情報に対応するキーの特定(S110)をキーコード変換部12Aで実行し、荷重エリアの特定(S100)を荷重応答監視部12Bで実行し、そして、特定のキーが荷重エリアに含まれるか否の判別(S140)は、荷重応答監視部12Bが、例えば、キーコード変換部12Bから特定されたキーの情報を受け取って実行するものであってもよく、また、その他のステップは、例えば、キーコード変換部12Aで実行されるものであってもよい。
【0046】
次に、本発明の一実施形態に係る入力装置の好ましい構成例について、図7〜図10を参照して詳述する。図7に示す入力装置は、パーソナルコンピュータ用キーボード装置であり、平面視が横長の長方形で縦断面がほぼ逆台形の浅い角皿状の下ケース1を備える。下ケース1は、合成樹脂成型、例えばABS樹脂成型によって作製され、底面に脚部1aを備える。この下ケース1内には、後述するタッチによって情報、具体的には記号の入力操作を行なうキーボード装置の主要部が収納されている。
具体的には、このキーボード装置は、図8に示すように、下ケース1とキーボード操作部10とが別体に形成され、かつ、両者がフローティング機構14によって連結されることで、図7に示される外観を呈するものである。
【0047】
キーボード操作部(操作部)10には、透光性の静電容量パネル2と、任意の記号3a(図7参照)が印刷された記号印刷フィルム3と、この記号印刷フィルム3を照明する面発光層であるバックライトデバイス4との積層体5が収納されている。この場合、タッチパネル2は記号印刷フィルム3の上面側、図示例では上面に配置され、バックライトデバイス4は記号印刷フィルム3の下面側、図示例では下面に配置されている。また、本実施形態に係るキーボード装置においては、装置最上面に位置する入力操作面6は凹凸のない平坦面とされている。
【0048】
さらに、静電容量パネル2の上面側、本実施形態では静電容量パネル2上面には、透光性を有するカバーパネル7が積層配置されている。
このカバーパネル7は、トレー16と共にキーボード操作部10の外殻を形成するものであり、完成状態で装置最上部に位置する。つまり、カバーパネル7の上面は入力操作面6をなすもので、凹凸のない平坦面とされている。なお、トレー16は、下ケース1同様に、合成樹脂成型、例えばABS樹脂成型によって作製され、後述するキーボード操作部10内部の積層構造物を収容可能な深さで、かつ、下ケース1と重なることで、図7に示されるようなパソコン用キーボード装置の形態を奏するものであれば良い。また、カバーパネル7とトレー16とは、接着、嵌合等、適切な方法によって固定される。
【0049】
カバーパネル7は、ハーフミラー若しくはスモークパネル、または透光性のプレートやシート等(透光性パネルと総称する)とハーフミラーとを積層してなる。本実施形態では、図8に示されるように、透光性パネル8とハーフミラー9とを積層してなり、ハーフミラー9を静電容量パネル2側に向けて配置した。
本実施形態において、透光性パネル8は透明アクリル板または透明ポリカーボネート板からなる。またハーフミラー9は、例えば膜状やフィルム状のハーフミラーからなり、透光性パネル8に被着してカバーパネル7を構成する。
【0050】
ハーフミラー9をタッチパネル2側に向けて配置、つまり透光性パネル8を装置上面側に向けて配置するのは次の理由による。
すなわち、透光性パネル8を装置上面側に向けて配置した場合、装置最上面、つまり入力操作面6は透光性パネル8の上面となる。そして、透光性パネル8を形成するアクリル板やポリカーボネート板は、いずれも耐久性、耐衝撃性、絶縁性等に優れ、その下面側に配置されたキーボード装置構成部材、つまりハーフミラー9、タッチパネル2、記号印刷フィルム3及びバックライトデバイス4等を、特に入力操作面6近くに位置するハーフミラー9及びタッチパネル2を機械的、電気的に保護できるからである。
また、アクリル板やポリカーボネート板は、上記の耐久性、耐衝撃性、絶縁性等の他、透光性にも優れ、その下面側のハーフミラー9及びタッチパネル2を通した、記号印刷フィルム3上の印刷記号3aの視認性に優れ、また凹凸のない平坦面が容易に得られる。更に、表面に付着した塵埃や人体油脂分等の汚れを容易に除去できる材質であって、キーボード装置最上面の入力操作面6を形成する透光性パネル8(カバーパネル7の上面形成部材)として最適となるからである。
【0051】
上記のようにカバーパネル7及びタッチパネル2は透光性を有するので、装置最上面(入力操作面6)において静電容量パネル2下面の記号印刷フィルム3に印刷された記号3aを透視可能である。カバーパネル7が透光性パネル8とハーフミラー9とで構成されている場合は、バックライトデバイス4の点灯時には記号印刷フィルム3に印刷された記号3aを、装置最上面をなす入力操作面6から明瞭に透視できる。なお、バックライトデバイス4の消灯時には入力操作面6をなす装置最上面は鏡面状態になり、鏡としての効果が発揮される。
【0052】
静電容量パネル2は、記号印刷フィルム3に印刷された記号群11を、その表面側から透かして見ながら所望の記号3aの位置を指等でタッチし、その記号3aの位置に応じた情報(記号情報)を生成して出力するための装置である。このタッチパネル2は、後述するタッチパネル駆動回路と協働してキーボード装置としての機能(タッチにより指示された記号3aに応じた情報を出力する機能)を実現する。
尚、静電容量パネル2は、例えば抵抗膜方式のタッチパネルに比べて、透光性に優れたタッチパネルを簡単に構成できるという利点を有する。
【0053】
さらに、本実施形態において、ハーフミラー9は誘電体多層膜によるハーフミラー(誘電体ハーフミラー)からなる。これは、静電容量パネル2において、膜状ハーフミラーの使用を可能にするためである。また、誘電体ハーフミラー9によれば、本実施形態に係るキーボード装置を記号入力装置として動作させず(静電容量パネル2を非動作状態として)、バックライトデバイス4のみを動作状態とした場合に、入力操作面6をなす装置最上面にて誘電体多層膜の特性に応じて色づけされた鏡面が得られるからである。
【0054】
記号印刷フィルム3とは、透光性の基材フィルムの面に予め決められた多数の記号3a(記号群11)を予め決められた位置にポジ状態(陽画)またはネガ状態(陰画)にて印刷されたフィルム、つまりポジ記号印刷フィルムまたはネガ記号印刷フィルムを指す。
本実施形態では、記号3a部分には光が透過して記号3aのみが高輝度で現われるパターンで印刷を行い、例えば記号3aの輪郭のみの印刷を行い、地(背景)の部分には黒色等の暗色にて一様な印刷を行なうネガ記号印刷フィルムを記号印刷フィルム3として用いている。これは、記号3a(記号群11)及び、ネガ記号印刷上、記号印刷フィルム面に表われる記号群11の印刷領域の外枠部分のみが浮かび上がり、視認性や見栄えがよくなることが主な理由である。
【0055】
記号3aの印刷方法としてはシルク印刷法が好適である。静電容量パネル2の誤動作を防止するため、金属性物質が含まれていないインクを用いて記号3aの印刷を行なう。
記号印刷フィルム3への印刷は、基材フィルムの表面(静電容量パネル2側)若しくは裏面(バックライトデバイス4側)、または表,裏両面のいずれに行なってもよいが、表面に行なったほうが入力操作面6から文字が浮かび上がって見える効果をより高めることができる。また、表,裏いずれか一方の面に行なったほうが低コスト化が図れる。
なお記号とは、文字、数字及びその他の記号を指すことは既に述べたが、パソコン用キーボード装置においては、英数字、ファンクションキー記号、その他の特殊記号等、所定のキー配列に係る各種の記号を指す。この記号は、予め定められたキー配列に従って配列されている。
【0056】
バックライトデバイス4としては、本実施形態ではLEDと導光板からなるサイドライト方式のバックライトデバイスが用いられている。この場合、記号位置の明るさを確保し、かつLEDの数を減らせるように、実際に照明する記号3aに対応する位置のみで発光するように、バックライトデバイス4の導光板形状(パターン)が形成されている。LEDと導光板からなるサイドライト方式のバックライトデバイスに代えて、無機EL発光素子からなるバックライトデバイスを使用してもよく、これによればキーボード装置をより薄型にすることができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、バックライトデバイス4の下面を覆うように、反射板18が設けられている。反射板18は、白色樹脂、銀メッキ版などの反射性材料からなり、バックライトデバイス4の下面から外部に放出する光を反射してバックライトデバイス4の内部に再入光させるものである。したがって、反射板18を独立して設けることなく、トレー16の底面に上記反射機能を持たせることとしても良い。
さらに、トレー16の下面には、キーボード装置の入力制御動作を実施する入力制御部12が、回路基板として配置されている。入力制御部12には、静電容量パネル駆動回路、バックライトデバイス点消灯回路等の他の必要な回路も含まれている。トレー16に対するこの回路基板の固定は、タッピンねじ等適切な固定手段を用いて行われる。
【0058】
また、タッチパネル2とハーフミラー9との間には、図10に示されるタッチパネルの静電遮断手段26が設けられている。この静電防止手段26は、例えば、キー配列領域26Aと、静電遮断領域26Bとに区分けした静電遮蔽シートをタッチパネル2の上面に配置したものである。そして、特に、ユーザーがパソコン用キーボード装置を操作する際に、手前側に位置する範囲の静電遮断領域26Bの幅が、広くなるように構成される。なお、静電遮断領域26Bは手前側に配置されることが必須であり、その他のエリアについては、適宜設けることとする。図7には、上記2つの領域の境界線26Cが点線で示されている。
また、静電防止手段26は、透明な樹脂シートに、静電遮断素材を塗布したものであっても良く、タッチパネル2またはハーフミラー9に静電遮蔽素材を直接塗布しても良い。
【0059】
ここで、図9を参照して、フローティング機構14周辺部の具体的な構造例を説明する。図9に示されるように、フローティング機構14は、ステンレス等の弾性変形可能な金属材料で構成された板ばね部材20を備えており、キーボード操作部10は、この板ばね部材20が、その一端部を下ケース1に、他端部をキーボード操作部10に固定するようにして、各四点で連結されることで、下ケース1によって安定保持される。例えば、板ばね部材20は、その一端部及び他端部に開口20が形成され、この開口20にねじ等を挿通して、下ケース1及びキーボード操作部10のトレー16に形成されたボスに対しねじ止めされる。また、荷重センサ22は、板ばね部材20の一面に固定されたストレインゲージ(同様に、符号22を付す)により構成され、シリコンコーティングが施されている。
そして、キーボード操作部10に荷重が加わると、板ばね部材20の撓みが誘発され、板ばね部材20の撓みをこのストレインゲージ22で検出することで、各四点のフローティング機構14が受ける荷重が検知を把握することができる。また、板ばね部材20の弾性によって、常時、キーボード操作部10と下ケース1とに上下方向の間隙が確保される。
なお、キーボード操作部10のトレー16に、下ケース1の周囲を囲むように縁壁(図示省略)を形成し、下ケース1に対するキーボード操作部10の上下方向の変位が円滑に行われるよう、縁壁と下ケース1の周端部との間に、適切なクリアランスを与えるものであってもよい。
【0060】
以上、本発明の実施の形態として、パーソナルコンピュータ用キーボード装置への適用例を用いて説明したが、本発明は、他の電子機器用のキーボード装置、例えば、AV機器用リモコン等の電子機器コントローラや、電子卓上計算機にも、同様に適用可能であることは、理解されるであろう。
また、上述した実施形態では、入力装置が荷重センサを備えるものとし、その場合に好適な構成及び制御方法を説明したが、本発明に係る入力装置及び入力制御方法において、特殊位置に応じて無効エリアを設け、その無効エリアに含まれる位置に対する入力操作を偽と判別する特徴は、荷重センサの有無にかかわらず実装可能なものである。
【符号の説明】
【0061】
1:下ケース、2:静電容量パネル、3:記号印刷フィルム、3a:記号、4:バックライトデバイス、5:積層体、6:入力操作面(装置最上面)、7:カバーパネル、8:透光性パネル、9:ハーフミラー、10:キーボード操作部、11:記号群、12:入力制御部、12A:キーコード変換部、12B:荷重応答監視部、14:フローティング機構、16:トレー、18:反射板、20:板ばね部材、22(22A〜22D):荷重センサ(ストレインゲージ)、26:タッチパネルの静電遮断手段、28:パーソナルコンピュータ、A:第1閾値、B:第2閾値、C:ピーク値、D:バレー値、W:打鍵巾、A1:特殊位置、A2:候補位置、A3:(偽入力と判別される)位置、A100:無効エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器用の入力装置であって、平坦な入力操作面、及び該入力操作面に対する入力操作の発生位置を検知する静電容量方式のタッチパネルを備える操作部と、前記タッチパネルからの前記入力操作の発生位置の座標情報が入力され、前記入力操作の真偽を判別して真と判別した場合にのみ、前記座標情報に対応する出力情報を前記電子機器に対して出力する入力制御部とを備え、
前記入力制御部は、予め定義された特殊位置のうちの1つまたは複数の組合せに相当する座標情報が入力された場合、その座標情報が入力されている間、前記入力操作面内に前記特殊位置のうちの1つまたは複数の組合せのそれぞれに応じた無効エリアを設け、該無効エリアに含まれる位置に対する入力操作を偽と判別することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記操作部に加わる荷重を検知し、前記入力制御部に対して荷重情報を出力する荷重センサをさらに備え、前記入力制御部は、前記荷重情報の時間変動パターンに少なくとも部分的に基づいて前記入力操作の真偽を判別することを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記荷重情報の時間変動パターンに基づいて前記入力操作を真と判別するための基準には、前記荷重情報の時間変動パターンに第1閾値を越える時点が存在すること、及び、前記第1閾値を超えた時点から第2閾値を下回る時点までの時間が所定の基準時間以下であることが含まれることを特徴とする請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記荷重センサは、前記操作部に加わる荷重を少なくとも三点で検知し、前記入力制御部は、前記少なくとも三点からの荷重情報に基づいて、前記入力操作面内の、前記操作部に加わる荷重の荷重中心が含まれる荷重エリアを特定し、前記タッチパネルから入力される座標情報によって示される位置が前記荷重エリアに含まれるか否かに少なくとも部分的に基づいて、前記入力操作の真偽を判別することを特徴とする請求項2または3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記操作部とは別体の下ケースと、前記操作部及び前記下ケースを、少なくとも三点で連結するフローティング機構とを備えており、前記フローティング機構は、前記操作部と前記下ケースとに上下方向の間隙を確保した状態で両者を連結する板ばね部材と、前記荷重センサを構成するための、前記板ばね部材に固定されるストレインゲージを含むことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の入力装置
【請求項6】
パーソナルコンピュータ用キーボード装置であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の入力装置を用いたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
平坦な入力操作面及び静電容量方式のタッチパネルを備える操作部を備える、電子機器用の入力装置の入力制御方法であって、
前記静電容量方式のタッチパネルにより、前記入力操作面に対する入力操作の発生位置を検知するステップと、
前記入力操作の発生位置が、予め定義された特殊位置のうちの1つまたは複数の組合せに相当するか否かを判別するステップと、
前記入力操作の発生位置が、予め定義された特殊位置のうちの1つまたは複数の組合せに相当する場合、前記入力操作面内に、前記特殊位置のうちの1つまたは複数の組合せのそれぞれに応じた無効エリアを設けるステップと、
前記無効エリアに含まれる位置に対応する入力操作を偽と判別するステップと、
を含むことを特徴とする入力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−159067(P2011−159067A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19518(P2010−19518)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】