説明

電子産業における水分感受性デバイスの取り扱いにおける使用のためのドライキャビネット

圧縮空気の供給源を受け入れ得、キャビネットの中の環境を低い相対湿度に維持するためにキャビネットの内部空間に向けられ得る乾燥空気流または濃縮された乾燥窒素流を形成し得る乾燥装置または窒素発生装置の形態の一体化された乾燥ガス生成手段を含む低い湿度環境中で表面搭載デバイスを貯蔵するためのドライキャビネット。自己収容された乾燥ガス生成供給源を有するキャビネットは、中央集中化窒素供給源を必要とする先行技術のドライキャビネットよりも経済的である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、電子部品のパッケージングおよびアセンブリ並びにプリント回路板上のICまたは受動デバイスのはんだ付けの分野における改善に関する。
【0002】
発明の背景
電子回路のための部品の現在進行中の集積と小型化は、ここ20年間のプリント配線板技術の限界への継続する挑戦となっている。プリント回路板またはより一般的にプリント配線板(PWB)と呼ばれるものは、いくつかの重要な役割を果たすものである。第1に、特別にパッケージされた集積回路、抵抗体などのような電気部品は、平坦な通常硬質のカード状ボードの表面上に、搭載、すなわち担持される。したがって、PWBは、部品のための支持体としての役割を果たす。第2に、ボードの表面上の化学的にエッチングされているかまたはめっきされている導体パターンを用いて、PWBは、部品の間に所望される電気的接続を形成する。加えて、PWBは、ヒートシンクとして機能する金属領域を含み得る。
【0003】
集積回路の使用の増加および表面搭載技術(SMT)は、電子回路の緻密化を促進してきた。表面搭載デバイス(SMD)は、PWBの表面に直接適用され、蒸気相リフロー(VPR)、赤外線(IR)または他の量産はんだ付け技術を用いてはんだ付けされる。SMTは、組み立てコストを約50%減少させることにより、40%を超えるほど部品密度を増加させることにより、および信頼性を高めることにより電子製造産業を革新しつづけている。
【0004】
通常のSMDパッケージにおいて、シリコンダイは、多層有機基板のダイパッド上に搭載される。基板のダイパッド領域全体は、シリコンダイを基板に結合させる接着剤により覆われている。不運にも、プラスチックSMDパッケージ中の水分は、パッケージがVPR、IRはんだ付けの高温に暴露されているとき、またはパッケージが溶けたはんだ、ウエーブはんだ中に浸漬されているならば、水蒸気に変化し、急速に膨張する。ある種の条件の下では、膨張する水分および水蒸気からの圧力は、チップおよび/または基板からのプラスチックの内部剥離、パッケージの外側に延びない内部亀裂、結合の損傷、ワイヤのネッキング、結合の持ち上がり、薄膜亀裂、または結合の下のクレーター形成を引き起こし得る。最も重大な事態には、応力が外部のパッケージの亀裂を作り出し得る。内部応力がパッケージを膨らませ、ついで、聞き取れる「ポップ」音とともに亀裂を作り出すために、これは、一般的に、「ポップコーン」現象と呼ばれる。表面搭載デバイス(SMD)は、リフローはんだ付けの間高温に暴露されるので、スルーホール部品よりもこの問題に対してより過敏である。このための理由は、回路板の表面搭載デバイスと同じ側ではんだ付け操作がなされねばならないということである。スルーホールデバイスについては、はんだ付け操作は回路板の下で起こり、回路板は、加熱されたはんだからスルーホールデバイスを遮蔽する。また、一般的に、SMDは、チップまたは搭載パッドインターフェースからプラスチックパッケージの外側までより小さな最小プラスチック厚さを有する。
【0005】
接着材料の中に作り出される破損物、または接着剤−基板界面の剥離は、SMDパッケージ損傷の最も一般的な原因である。そのような損傷は、「ポップコーン」試験ではきわめて一般的であり、その「ポップコーン」試験とは、水分感受性試験である。従来のSMDパッケージは、電子回路の接続とパッケージングのための協会(IPC)および接合選択装置工学評議会(JEDEC)のレベル3水分感受性試験を合格し得るのみである。一部の進歩したパッケージは、レベル2水分感受性試験を合格し得るが、しかし、レベル1水分感受性試験には鋭意検討中のままである。
【0006】
IPC/JEDEC水分感受性試験(ポップコーン試験)は3つのレベルを有する。レベル3水分感受性は、SMDパッケージが192時間60%相対湿度で30℃に供され、ついで、3回IR/対流加熱サイクルを通過し、これが特定の要求事項に従うことを要求する。レベル2水分感受性は、パッケージが168時間60%相対湿度で85℃に供され、次いで、3回のIR/対流加熱サイクルを経過することを要求する。最高レベルの水分不感受性であるレベル1は、パッケージが168時間85%相対湿度で85℃に供せられ、次いで、IR/対流加熱の3回のサイクルに供されることを要求する(JEDEC刊行物、No.JESD22−A112−Aプラスチック表面搭載デバイスのための水分誘導応力感受性)。
【0007】
さまざまの技術が、SMDパッケージがパッケージの製造とプリント回路カードへのはんだ付けの時間との間に供される湿度の量を制限するために用いられてきた。諸技術はまた、SMDパッケージがより高いレベルのポップコーン試験に合格することを補助するためにも用いられてきた。
【0008】
SMDパッケージがプリント回路板へのはんだ付けの前に与えられる水分の量を制限するために、そのようなパッケージは、環境からの水分の吸収を防止するために気密性バッグの中に包装され、運送される。気密性バッグの中に包装されていないかまたは、ある時間環境にさらされているSMDパッケージについて、表面搭載の前にパッケージをベーキング乾燥することは工業上の標準である。気密性バッグの中にSMDパッケージを配置するか、パッケージをベーキングするかいずれかの付加的な工程は、デバイスまたは製品の製造コストを増加させる。
【0009】
プラスチック製の非気密性の表面搭載デバイスは、リフローはんだ付けされたとき、吸収された水分による過剰圧力に由来する重大な損傷を被り得る。このことが起こることを防止するために、組み立て業者は、さまざまの予防措置および対応措置を採用してきた。一般的な方策には、5%RH未満の雰囲気を維持し得るドライキャビネットの中に表面搭載デバイスを貯蔵することが含まれる。しかしながら、変化のある環境(dynamic environment)の中でそのような低いRH%を可能とするためには、実施者は、大きな流量の乾燥ガス(典型的にはN2 )によりキャビネットを乾燥したままにしておかなければならない。結果として、そのようなキャビネットを取り扱うことは、操作費用の観点で、出費が増えることとなる。多くの場合に、N2 の必要性は、製造プラントの中のプロセスの確立を阻害する阻害要因となることが判明している。
【0010】
インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー,Inc.に譲渡された米国特許第6,560,839号もまた、乾燥剤を有する容器にデバイスを配置し、次いで、容器を密封することによりあらかじめ設定されたしきい値レベルを超える水分への暴露から水分感受性部品を保護する。水分感受性の部品が評価されるべきときには、容器は密封されておらず、部品はその容器から取り出されている。評価後、部品は、容器に再収納され、次いで、容器は再密封される。部品が局部的な試験環境の外側で、運送または輸送のいずれかのためにその容器に配置されるまで、上記工程は反復される。保護容器は、周囲環境に対する水分感受性部品の暴露を最小化するいずれかのタイプの包囲体である。水分の蓄積を抑制する上での有効性のために、ベーキング工程は、運送の直前には必要ではない。明らかに、容器の反復される開放、試験、および再閉鎖は、デバイスの製造コストおよび取り扱いコストを増加させる付加された工程である。
【0011】
セイカ・インストルメンツにより市販される装備は、ドライキャビネットの雰囲気を乾燥させるために自発的乾燥材料(self−desiccant material)を用いる。しかしながら、セイカ・インストルメンツ・キャビネットは、変化のある環境で5%未満のRH%を維持しない。
【0012】
発明の概要
本発明は、低い湿度でSMDを貯蔵し、デバイスの水分により誘発される損傷を防止するために用いられる新規なドライキャビネットに関する。先行技術のドライキャビネットに関連するコストを減らすために、本発明のキャビネットは、N2 または乾燥ガスの発生システムを含むN2 または乾燥ガスの貯蔵キャビネットを構築することからなる。自己収容N2 または乾燥ガス発生システムは、中央集中された窒素または清浄乾燥空気システムについての必要をなくす。これは、N2 インフラに関連する他の設置コストをなくしながら操作コストを減らす。したがって、キャビネットは、その乾燥ガスの必要性を自己生産することにより独立となる。このことは最小限の経費でなされ、N2 インフラのための他の高価な設置費用を無くしてしまう。付加された圧縮空気乾燥機モジュールまたはN2 膜発生システムは、トレー、ボビン、フィーダーカート、片側組み立てPWBまたはSMDを貯蔵するためのキャビネットを含む小さいかきわめて大きいすべてのタイプの乾燥貯蔵キャビネット上に設置され得る。
【0013】
発明の詳細な説明
表面搭載デバイス(SMD)の導入は、電子部品のアセンブリの進歩に顕著に寄与してきた。プラスチックSMDは、特に、広範な通用性(popularity)を進歩させた。というのは、そのようなデバイスは、多用途性を提供し、プラスチックパッケージに固有の低コストを提供する。しかしながら、それらのデバイスは、水分に対する感受性があるという欠点を有する。大気中の湿度由来の水分は、透過性のSMDパッケージ中に拡散し、もしパッケージ中の水分のレベルが臨界点に達するなら、デバイスは、リフローはんだ付けプロセス中の温度に曝されると損傷を受け得る。熱的な不整合と組み合わされた、パッケージ内の蒸気圧の急速な上昇と高さは、部品を圧迫する。典型的な部品の損傷には、ダイ亀裂、内部腐食、結合ワイヤ損傷および最悪の場合には、外部亀裂が含まれる。これもまた、損傷の際に聞き取れるポッピングのためにポップコーン効果と称される。
【0014】
水分により誘発される損傷およびポップコーン現象を回避するために、部品の製造者により推奨されるフロアライフを周到に充足することが必要である。製品の品質が決定される水分感受性(MS)レベル(IPC/JEDEC J−STD−033A)がフロアライフを示す。毎日の実践においては、これは、実際的な理由のためには常には明白ではない(トラッキング)。予防措置のために、そして、フロアライフが満了したとき、J−STD−033A仕様は、周囲湿度への暴露のために進行する水分を除去するために部品を「ベーク」することを推奨する。標準としてのベーキングは、通常、24時間(125℃)から8日(以上、40℃)変化する期間昇温下でなされる。ベーキングは通常、比較的短いフロアライフのために、レベル3から6の部品にのみ当てはまる。
【0015】
ベーキングは、水分で誘発された損傷およびポップコーン現象を防止するけれども、性質上より予防効果のある他のアプローチも存在する。2002年7月のIPC/JEDEC J−STD−033の改訂は、別の解決策について詳述する。典型的な解決策および方策には、しばしば、5%RH未満の雰囲気を維持し得るドライキャビネットの使用が含まれる。しかしながら、現存する貯蔵キャビネットのほとんどが、製造環境におけるレベルに達することも、維持することもできない。そのような低いRH%を可能とする少数のキャビネットは、大きな流量の乾燥ガスをドライキャビネットに吹き込むことによりそのようにする(典型的には、低温供給源由来のN2 であるが、乾燥空気または膜N2 も用いられ得るであろう)。結果として、そのようなキャビネットの操作は、窒素の使用に伴う操作コストの観点で出費が大きくなる。ドライキャビネットは、PCBアセンブリ環境において採用されているので、操作コストの少ないキャビネットについての必要が高まっている。これは、窒素を即座に入手できないプラントでは特に重要である。中央集中化された窒素供給源を設置することは高価となり得る。
【0016】
本発明は、PWBアセンブリ環境における水分感受性デバイスの取り扱いのために用いられる乾燥貯蔵キャビネットの適切な操作と関連するコストを減少させる。本発明のキャビネットユニットは自己発生型乾燥ガス供給源を有し、それは、いくらかの電力および容易に入手可能な圧縮空気のみを必要とする。キャビネットユニットは、きわめて低い限界費用で乾燥ガスを製造する。したがって、乾燥ボックスまたはキャビネットは、PWBアセンブリプラント中のどこにでも位置し得るものであり、中央集中化したN2 システムを必要としない。
【0017】
本発明のドライキャビネットは、自己収容乾燥ガス発生システムを含み、一般的に、図において参照番号10により示される。キャビネット10は、典型的には、ドア12を開閉させるためのハンドル13を有するアクセスドア12を備え、キャビネット10の内部への出入を可能とする。アクセスドア12は、キャビネットの内部が外部から観察されることを可能とする1以上のウインドウまたは可視化部位14を含み得る。キャビネット10は、典型的には、表面搭載デバイスを貯蔵するための複数の棚16を備え得る。長方形またはボックス型のキャビネットが図に示されているけれども、キャビネットの形状は、本発明の重要な要件ではない。示されてはいないけれども、キャビネット10は、SMT製造設備の周りでのキャビネットの動きを容易にするためにその底部にホイールを含み得る。
【0018】
典型的には、キャビネット中の低湿度環境を維持するために、先行技術は、窒素供給または低温タイプ発生システムのような窒素の中央集中化供給源から得られる大流量の乾燥ガス、典型的には窒素をキャビネットに送っていた。本発明のドライキャビネットにおいては、キャビネット構造内に、一体化された乾燥ガス発生システムを設ける。乾燥ガス発生システムは、キャビネットの中に所望の乾燥ガスを提供するために、モジュラー供給源または中央集中化供給源の形態のいずれかで圧縮空気の供給源を受け入れる。中央集中化またはモジュラーの圧縮空気供給源の使用およびキャビネットで所望される乾燥ガスを発生させることは、先行技術の中央集中化窒素供給源または窒素発生供給源を提供するコストと比べて、ドライキャビネット中に所望の環境を提供するコストを非常に少ないものとする。
【0019】
再び、図を参照すると、圧縮空気のモジュラー供給源または中央集中化圧縮空気システムのいずれかの利用可能な供給源からの圧縮空気は、ライン20を介してドライキャビネット10に入る。バルブ22は、キャビネット10の構造内に収容された空気乾燥システム24または窒素発生システム26またはその両方にライン20を介して圧縮空気を送り得る。空気乾燥機24および窒素発生システム26は、キャビネット10の基部18の中に設けられる。ドライキャビネット10内の乾燥ガス形成システムの具体的な位置は本発明にとっては重要ではない。
【0020】
ライン20を通る圧縮空気は、バルブ22を通って空気乾燥機24および窒素発生装置26の一方または両方に向けられる。空気乾燥機に向けられるならば、バルブ22を通る圧縮空気は、ライン28に入り、次いで、フィルター30に入り、そうして微粒子などのような空気が運ぶ汚染物質を除去する。フィルター30から、圧縮空気の流れは、ライン31を介して空気乾燥機24に入る。空気乾燥機24は乾燥装置であり、それは、乾燥剤の塊を含み、乾燥剤の塊は、ライン20を介してキャビネット10に入る圧縮空気の流れから水蒸気の実質的にすべてを除去する。すでに言及されたように、5%未満の相対湿度までキャビネット10の内部の環境を維持することが所望される。
【0021】
適切であり得る乾燥剤の例は、排他的ではないが以下のリストに含まれる。アルミナ、酸化アルミニウム、活性炭、酸化バリウム、過塩素酸バリウム、臭化カルシウム、塩化カルシウム、水化カルシウム、酸化カルシウム、硫酸塩、グリセロール、グリコール、リチウムアルミニウムヒドリド、臭化リチウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、分子ふるい、5酸化リン、水酸化カリウム(溶融型、スティック、など)、炭酸カリウム、樹脂、シリカゲル、水酸化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸、ケイ酸チタン、ゼオライト、臭化亜鉛、塩化亜鉛、およびそのような乾燥剤の組み合わせ。乾燥剤はさまざまの形態で用いられ得る。例えば、乾燥剤は、固体および/または液体で有り得る。乾燥剤はまた、水溶液の一部も含み得る。
【0022】
空気乾燥機24から、最初に含まれる水蒸気の実質的にすべてを除去された圧縮空気流を、キャビネットを洗浄し、5%未満の相対湿度を含む内部環境を維持するためにキャビネットの内部に向ける。したがって、空気乾燥機24から、乾燥空気は、ライン36を介してキャビネットの内部に向けられる乾燥空気の体積を調節し得る流量コントローラー34にライン32を介して送られる。流量コントローラーは、所望されるならば、ガスの流れを開始または停止させるためにオン/オフスイッチも含むべきである。流量コントローラー34およびライン36から、乾燥空気が直列の乾燥ガスインジェクター38に向けられる。インジェクター38は、乾燥空気または以下で説明されるように窒素発生装置26由来の窒素である乾燥ガスをキャビネットの内部に向ける。キャビネット10の内部に乾燥ガスを向けるガスインジェクターの正確な数およびタイプは、本発明にとって重要なことではなく、当業者は、個別のキャビネット内部空間について要求されるはずの乾燥ガスインジェクターの数、大きさおよびタイプを決定し得る。
【0023】
図において、空気乾燥機24由来の乾燥空気が、ライン32に、最終的にキャビネットの内部に向けられる前に貯蔵タンク40に向けられ得る。貯蔵タンク40は、任意であり、キャビネット10の内部への乾燥ガスの流れをより正確に制御するために用いられ得る。したがって、適切に、キャビネット10の中の環境は、付加的なガスがキャビネットの中を清浄するために用いられる必要がないようにし得る。そのようなときには、乾燥空気または窒素は、任意の貯蔵タンク40の中に貯蔵され得る。1つの貯蔵タンクが示されているけれども、空気乾燥装置24または窒素発生装置26のそれぞれのための別々の貯蔵タンクが用いられ得る。さらに、乾燥空気および窒素のそれぞれのための別々の密封された分室を有する単一の貯蔵タンクも利用され得る。
【0024】
圧縮空気流からの水蒸気を除去する代わりに、キャビネットの内部に注入される乾燥ガスは、キャビネット10内に収容された窒素発生装置により生成される窒素であり得る。すなわち、本発明以前には、窒素は、一時的な運送のためのキャビネット中のSMDの貯蔵のための低い相対湿度の環境を維持するためにドライキャビネットを洗浄するために用いられてきた。しかしながら、そのようなキャビネットは、中央集中化窒素発生源に結合し、その発生源は、建設し、維持するのに非常にコストがかかり得る。したがって、本発明では、モジュラー窒素発生装置が本発明のドライキャビネット10に組み込まれている。窒素発生装置は参照番号26として示され、圧縮空気流20から窒素を分離し、濃縮された乾燥窒素ガス流を製造するために用いられる1以上の膜モジュールを一般的に備える。例えば、ポリイミド、ポリカーボネート、ナイロン6,6、ポリスチレンまたは酢酸セルロース膜のような1以上の膜が用いられ得る。本発明において、ライン20を通る圧縮空気は、少なくとも一部がバルブ22によりライン42に向けられ、次いで、圧縮空気流から粒子を除去するためにフィルター44を通る。フィルター44およびライン46から、ろ過された圧縮空気流は、膜モジュール27および29として示される窒素発生装置26に向けられ、そこでは、空気は、空気流中の窒素から酸素を分離するように処理され、きわめて濃縮されたN2 流を作り出す。
【0025】
本発明の実施において用いられ得る透過膜は、膜システムの基本要素を含む膜モジュールを形成するために典型的には囲いの中に位置する膜アセンブリにおいて共通して用いられ得る。本発明を参照して理解されたように、膜システムは、並列(図示されている)または直列操作のいずれかのために配置される膜モジュールまたは複数のそのようなモジュールを含む。膜モジュールは、簡単な中空繊維形態、またはらせん状に巻かれたひだ付平坦シート膜アセンブリ、またはいずれか他の所望の形態で構築され得る。膜モジュールは、供給空気表面側および反対側の透過ガス出口側を有するように構築される。中空繊維膜については、供給空気は、中空繊維の内側、または外部表面側のいずれかに加えられ得る。
【0026】
空気分離膜のために用いられる膜材料は、供給ガス、すなわち空気のより容易に透過性の成分を選択的に透過することが可能ないずれか適切な材料であり得ることも理解されるであろう。酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレートなどのようなセルロース誘導体、アリールポリアミドおよびアリールポリイミドを含むポリアミドおよびポリイミド、ポリスルホン、ポリスチレンなどがそのような材料の代表である。
【0027】
上記の通り、本発明のキャビネット10内に位置する膜システムを構成する透過膜は、いずれの所望の形態もとり得るが、中空繊維膜が一般的に好ましい。いずれか特定のガス分離用途で用いられる膜材料は、あまり容易に透過しない成分を含む流体混合物のガスより容易に透過性の成分を選択的に透過することが可能ないずれか適切な材料でありうる。上記ポリマーは、そのような材料の代表例である。多数の他の透過性の膜材料は、当該技術において既知であり、空気分離における使用のために適切であることが理解されるであろう。上記のように、本発明の実施において用いられる膜は、システムを用いて実施される空気分離および本発明の方法にとって有用かつ有効であるいずれのそのような形態でも存在し得る。
【0028】
1つは、活性層が構造上支持体となっている通常多孔性の基材に隣接して同じ広がりをもって位置するいわゆる「複合膜」である。複合膜において、活性層および基材は、単一のモノリシックな層の部分的要素ではない。それらは通常、2つの別々の層を積層することによるような1つの層を別の層に重ねることにより作られる。基材は、ガス選択透過性の材料であり得るが、しかし典型的にはそうではない。上記のように、多孔性のために、基材は、無視し得るガス分離特性を有し、膜透過フラックスに対してほとんど抵抗を示さない。基材は、基本的には、自己支持性フィルムを形成するかまたは日常操作の間課される膜を通しての圧力勾配に耐えるためにはそれ自体通常薄すぎる活性層のために構造的一体性を提供する。
【0029】
好ましいタイプの膜は、非対称膜として知られる。この膜は、透過物の流れの方向に対して直角な断面で非等方性構造をもつことを特徴とする。典型的には、非対称性膜は、1表面において連続的で緻密な薄いスキンにより構成される活性層およびそのスキンに同じ広さで隣接し、スキンからの距離とともにますます多孔性となっていく傾向がある多孔性の通常より厚い支持層を有する。非対称的な膜の活性層および支持層は、通常、同じガス選択透過性基材で構成される。スキンは通常、非対称性膜の厚さの10分の1未満である。典型的には、スキンの厚さは、約50〜3000Å、好ましくは約50〜1500Åおよびより好ましくは約50〜1000Åである。非対称性膜は、モノリシックであるか、複合かのいずれかであり得る。すなわち、モノリシックな非対称膜において、活性層および支持層は、一体化されたモノリシック構造の一部である。複合非対称膜において、非対称膜は、非対称膜層に隣接する基材を含む。例えば、典型的な中空繊維複合膜は、非対称膜の共軸の環状のシースにより取り囲まれる多孔性基材の環状のコアにより形成され得る。複合非対称膜において、非対称膜の非活性層および基材層は、ときどき、まとめて「支持層」と称される。非対称膜層および基材は、典型的には、異なる構成を有する。
【0030】
ガス分離膜のために用いられる材料は、しばしばポリマーである。さまざまの種類のポリマーは、複合膜の支持基材のために用いられ得る。代表的な基材のポリマーには、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、コポリカーボネートエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリビニリデンフルオリド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、セルロース誘導体、ポリアゾ芳香族物質、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)、ポリアリーレンオキシド、ポリウレア、ポリウレタン、ポリヒドラジド、ポリアゾメチン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース、臭素酸化ポリ(キシリレンオキシド)、スルホン酸化ポリ(キシリレンオキシド)、ポリキノキサリン、ポリアミドイミド、ポリアミドエステル、それらの混合物、それらのコポリマー、それらの置換された材料などが含まれる。これは限定として解釈されるべきではない。というのは、非等方性基材膜に製造され得るいずれの材料も、本発明の基材層として有用性を見出し得るからである。基材層のための好ましい材料には、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド組成物およびそれらのコポリマーおよび混合物が含まれる。
【0031】
広範なポリマー材料が望ましいガス選択透過特性を有し、活性層に用いられ得る。代表的な材料には、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、コポリカーボネートエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリビニリデンフルオリド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリアクリロニトリル、セルロース誘導体、ポリアゾ芳香族物質、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)、ポリフェニレンオキシド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリヒドラジド、ポリアゾメチン、ポリアセタール、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、臭素化ポリ(キシレンオキシド)、スルホン酸化ポリ(キシレンオキシド)、四ハロゲン置換されたポリカーボネート、四ハロゲン置換されたポリエステル、四ハロゲン置換されたポリカーボネートエステル、ポリキノキサリン、ポリアミドイミド、ポリアミドエステル、それらの混合物、それらのコポリマー、それらの置換された材料、などが含まれる。加えて、適切なガス分離層膜材料には、複合ガス分離膜の緻密な分離層として有用であることが見出されているものが含まれ得る。それらの材料には、ポリシロキサン、ポリアセチレン、ポリホスファゼン、ポリエチレン、ポリ(4−メチルペンテン)、ポリ(トリメチルシリルプロピン)、ポリ(トリアルキルシリルアセチレン)、ポリ尿素、ポリウレタン、それらの混合物、それらのコポリマー、それらの置換された材料などが含まれる。緻密なガス分離層のための好ましい材料には、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド組成物、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンおよびそれらの混合物が含まれる。
【0032】
緻密な領域を有する中空繊維膜がガス分離のためには好ましい。非対称中空繊維膜は、中空繊維の外側に、中空繊維の内側(内表面)で、または中空繊維膜表面の外側と内側の両方に対していくらか内側に位置するかのいずれかで別の領域を有しうる。中空繊維膜の別の領域が中空繊維膜表面の両方に対して内側である態様において、中空繊維膜の内表面(内側)および外表面は多孔性であり、膜は、なお、ガスを分離する能力を示す。ガスが分離される態様において、膜のための好ましいポリマー材料には、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、およびポリカーボネートが含まれる。ガス分離膜のためのより好ましいポリマー材料には、ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートが含まれる。ガス分離のために好ましいポリカーボネートおよびポリエステルカーボネート膜には、米国特許第4,874,401号、第4,851,014号、第4,840,646号、および第4,818,254号において記載されるものが含まれる。それぞれの特許の関連する部分は、機能をもたらされるすべての法律的目的のために参照により本明細書に組み込まれる。1つの好ましい態様において、そのような膜は、米国特許第4,772,392号に記載される方法により調製され、関連する部分は、機能をもたらされ得るすべての法律的目的のために参照により本明細書に組み込まれる。空気分離および濃縮された乾燥N2 ガス流の発生のために特に有用な膜は、商品名MEDALの下で本出願の譲受人エア・リキードにより製造される中空繊維ポリマー膜である。
【0033】
濃縮窒素ガス流は圧縮空気から分離され、実質的に乾燥している。というのは、水蒸気もまた、膜により窒素成分流から分離されるからである。ライン48を介して発生装置26を離れる乾燥窒素ガス流は、任意に、ライン32、流量コントローラー34およびライン36を介して乾燥ガスインジェクター38に向けられる前に貯蔵タンク40の中に貯蔵され得る。やはり、分離タンク40が、空気乾燥機24由来の乾燥空気の貯蔵よりも窒素発生装置26由来のN2 ガス流を貯蔵するために用いられ得る。バルク貯蔵および流れ制御を伴う窒素発生システムは、当該技術において公知であり、米国特許第5,266,101号、第5,284,506号、第5,302,189号、第5,363,656号、第5,439,507号および第5,496,388号において特定して記載されており、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0034】
窒素発生システム26は、1以上の膜構造または膜モジュールを含むものとして記載されてきたけれども、公知の圧力スウィング吸着(PSA)システムの中で粒状吸着剤を利用して、圧縮空気から濃縮窒素ガス流を生成させることもまた可能である。したがって、活性炭、シリカゲル、ゼオライトおよび珪酸チタニアすなわちCTS−1のような分子ふるいのような粒状吸着剤が、濃縮窒素ガス流の生成を含む空気をその個別の成分に分離することについて公知である。したがって、キャビネット10に含まれる窒素発生システム26は、選択的な圧力条件の下で酸素または窒素を吸収し、濃縮された乾燥窒素ガス流を製造し得る1以上の吸着剤の床を含み得る。加圧(吸着)、減圧(再発生)、および圧力の平衡化のサイクルが混合物から気体成分を吸着させ、吸着剤床から吸着された成分を再生させるために用いられるPSAシステムの操作は、当該技術において公知である。米国特許第4,933,314号は、空気から窒素または酸素を分離するために用いられる特別の分子ふるい炭素を記載する。空気を粉砕されたゼオライトの床を通して通過させることにより窒素富化生成物を製造することに関する米国特許第5,288,888号および結晶性チタン分子ふるい、CTS−1を開示する米国特許第6,068,682号は、空気から濃縮窒素流を生成させるために用いられ得る公知の吸着剤の例である。それらの列挙された米国特許のそれぞれは、その全体について、参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
膜分離システムと同様に、PASモジュールを出て行く濃縮窒素ガス流は、任意に、貯蔵タンク40の中に貯蔵され得るものであり、次いで、ライン32、流量コントローラー34およびライン36を介して乾燥ガスインジェクター38に向けられる。
【0036】
ドライキャビネット10は、組み立ての間または後に表面搭載デバイスを貯蔵するために特に有用であるけれども、本発明のドライキャビネットは、利用される前の貯蔵または輸送の間にいずれかのタイプのデバイスが湿度を含む空気により悪影響を受けることを防ぐための更なる用途を有することが理解されるであろう。特に、いずれかのタイプの半導体、電子部品、光学部品または磁気部品などがキャビネット10の中に貯蔵され得る。環境には水蒸気が存在せず、水蒸気はデバイス構造の中のいずれかのパッケージまたはいずれかの細孔を透過し得るものであり、貯蔵で、または設置および使用の間に恒久的な損傷を引き起こし得る。
【0037】
キャビネットの内部のきわめて低い相対湿度を維持するためにキャビネット10の内部を洗浄する乾燥ガスは、ライン50を介してキャビネットから放出される。やはり、ライン20、バルブ22またはいずれか任意の貯蔵タンク40および流れコントロール34を通る圧縮空気を制御すると、キャビネット10の内部で所望の圧力および低湿度条件を維持し得る。したがって、ライン50を介してキャビネット10の内部から出て行くガスは、連続状態か間歇状態かにあるかもしれない。
【0038】
本発明のいくつかの好ましい態様が記載され、例示されてきたけれども、特許請求の範囲によってのみ限定され得る本発明の広範な範囲から逸脱することなく変更および修正が可能であることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】自発的にガスを発生させる乾燥ガス源を含む本発明のドライキャビネットの部分的に切欠された前方および側方立面図である。
【符号の説明】
【0040】
10…ドライキャビネット、12…アクセスドア、13…ハンドル、14…ウインドウ、16…棚、24…空気乾燥システム、26…窒素発生システム、30…フィルター、34…流量コントローラー、38…インジェクター、40…貯蔵タンク、44…フィルター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低い相対湿度の環境中に表面搭載デバイスを貯蔵するための囲われた内部空間を有するキャビネットであって、前記キャビネットと関連し、それとともに持ち運び可能な乾燥装置、窒素発生装置またはその両方と、前記乾燥装置、前記窒素発生装置またはその両方と連通する、圧縮空気の供給を受容するための手段と、内部空間内に低い湿度環境を維持するために前記乾燥装置または前記窒素発生装置から前記キャビネットの内部に乾燥ガス流を向けるための手段とを備えるキャビネット。
【請求項2】
前記窒素発生装置を含む請求項1記載のキャビネット。
【請求項3】
前記窒素発生装置が、濃縮窒素ガス流を生成させるために空気を分離することが可能な膜を含む請求項2記載のキャビネット。
【請求項4】
前記膜がポリマー膜を含む請求項3記載のキャビネット。
【請求項5】
前記膜が中空繊維ポリマー膜である請求項4記載のキャビネット。
【請求項6】
複数の前記膜を含む請求項3記載のキャビネット。
【請求項7】
前記窒素発生装置が空気の成分の1以上を吸着することが可能な粒状吸着剤を含み、濃縮窒素ガス流を生成する請求項2記載のキャビネット。
【請求項8】
前記濃縮窒素ガス流が圧力スウィング吸着システムにより生成される請求項7記載のキャビネット。
【請求項9】
前記乾燥装置を含む請求項1記載のキャビネット。
【請求項10】
前記乾燥装置および前記窒素発生装置の両方を含む請求項1記載のキャビネット。
【請求項11】
前記乾燥装置および/または窒素発生装置が前記キャビネットの一体的部分である請求項1記載のキャビネット。
【請求項12】
前記キャビネットの内部に向けられる前記乾燥ガス流の体積を変化させるために流量コントローラーを含む請求項11記載のキャビネット。
【請求項13】
前記乾燥装置、前記窒素発生装置または両方からの前記乾燥ガス流を貯蔵するための貯蔵手段をさらに含む請求項1記載のキャビネット。
【請求項14】
前記供給源から受け入れられた前記圧縮空気から粒子を除去するためにフィルターをさらに含む請求項1記載のキャビネット。
【請求項15】
キャビネットの内部に表面搭載デバイスを貯蔵し、前記キャビネットの内部で低い相対湿度を維持する方法であって、前記キャビネットと関連し、それとともに持ち運び可能な乾燥装置または窒素発生装置の形態の乾燥ガス形成手段に圧縮空気の供給を向けること、前記乾燥ガス形成手段から乾燥空気ガス流または乾燥窒素ガス流を生成させること、および前記表面搭載デバイスを貯蔵しながら前記キャビネットの内部空間中に低い相対湿度を維持するように前記キャビネットの内部に前記乾燥空気または乾燥窒素流を向けることを含む方法。
【請求項16】
前記窒素発生装置に前記圧縮空気流を向けることにより乾燥窒素ガス流を生成することを含む請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記乾燥窒素ガス流が前記圧縮空気流の膜分離により生成する請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記キャビネットの内部の相対湿度が5%以下に維持される請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記乾燥ガス流が前記乾燥装置に前記圧縮空気流を向けることにより生成される乾燥空気流である請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記乾燥ガス生成手段が前記キャビネットの一体的部分である請求項15記載の方法。

【公表番号】特表2007−502397(P2007−502397A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530622(P2006−530622)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000996
【国際公開番号】WO2004/103050
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・ア・ディレクトワール・エ・コンセイユ・ドゥ・スールベイランス・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】