説明

電子用途用の重水素化合物

本発明は、電子用途に有用な重水素化インドロカルバゾール化合物に関する。また、活性層がそのような重水素化合物を含む電子デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本出願は、35 U.S.C.§119(e)に基づき、2009年10月29日に出願された米国仮出願第61/256,012号明細書の優先権を主張するものであり、その全体を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、少なくとも部分的に重水素化されているインドロカルバゾール(indolocarbazole)誘導体化合物に関する。また、少なくとも1つの活性層がそのような化合物を含む電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
光を発する有機電子デバイス(ディスプレイを構成する発光ダイオードなど)は、多くの種類の電子機器の中に存在する。そのようなデバイスすべてにおいて、有機活性層が2つの電気接触層の間に挟まれている。電気接触層の少なくとも1つは、光が電気接触層を通過できるように光透過性である。電気接触層から電気接触層にかけて電気を流すと、有機活性層は光透過性の電気接触層を通して光を発する。
【0004】
発光ダイオードの活性成分として有機エレクトロルミネセンス化合物を使用することはよく知られている。アントラセン、チアジアゾール誘導体、およびクマリン誘導体などの単純な有機分子は、エレクトロルミネセンスを示すことで知られている。半導体共役ポリマー(semiconductive conjugated polymers)もエレクトロルミネセンス成分として使用されてきたが、そのことは、例えば、米国特許第5,247,190号明細書、米国特許第5,408,109号明細書、および欧州特許出願公開第443861号明細書に開示されている。多くの場合、エレクトロルミネセンス化合物はホスト物質中にドーパントとして存在する。多くのデバイスでは、有機電荷注入層及び/または電荷輸送層が、発光層と陽極及び/または陰極との間に存在する。多くの場合、エレクトロルミネセンス化合物はホスト物質中にドーパントとして存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新規の電子デバイス用の物質が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも1個の重水素置換基を有するインドロカルバゾール誘導体が提供される。
【0007】
また、上記の化合物を含んでいる活性層を含む電子デバイスも提供される。
【0008】
さらに、(a)少なくとも1個の重水素置換基を有するインドロカルバゾール誘導体と(b)380から750nmの間に発光極大を有するエレクトロルミネセンス可能な電気的活性ドーパントとを含む、電気的活性組成物が提供される。
【0009】
本明細書で提示する概念がいっそう理解されるように添付図で実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】有機電界効果トランジスター(OTFT)の概略図を含み、底部接触方式(bottom contact mode)のそのようなデバイスの活性層の相対位置を示す。
【図1B】OTFTの概略図を含み、上部接触方式(top contact mode)のそのようなデバイスの活性層の相対位置を示す。
【図1C】有機電界効果トランジスター(OTFT)の概略図を含み、ゲートが上部にある底部接触方式のそのようなデバイスの活性層の相対位置を示す。
【図1D】有機電界効果トランジスター(OTFT)の概略図を含み、ゲートが上部にある底部接触方式のそのようなデバイスの活性層の相対位置を示す。
【図2】有機電子デバイスの別の例の概略図を含む。
【図3】有機電子デバイスの別の例の概略図を含む。
【0011】
図中の物体は、簡単にするためまた明快にするために例示されているのであり、必ずしも縮尺通り描かれてはいないことは、当業者なら理解することである。例えば、図中の一部の物体の大きさは、実施形態をいっそう理解するのを助けるために、他の物体との関係で誇張されていることがある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
多くの態様および実施形態が本明細書に開示されているが、それらは例示的なものであり、限定するものではない。本明細書を読むならば、本発明の範囲の中で他の態様および実施形態が可能であることは、当業者なら理解することである。
【0013】
実施形態のいずれか1つまたはそれ以上における他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項から明らかであろう。詳細な説明では、最初に用語の定義と説明を扱い、その後、重水素化合物、電子デバイス、そして最後に実施例を扱う。
【0014】
1.用語の定義と説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義し説明する。
【0015】
本明細書で使用される「脂肪族環(aliphatic ring)」という用語は、非局在パイ電子を持たない環状基(cyclic group)を意味することを意図する。実施形態によっては、脂肪族環に不飽和はない。実施形態によっては、その環は1個の二重結合または三重結合を有する。
【0016】
「アルコキシ」という用語は、RO−基[ここで、Rはアルキルである]を表す。
【0017】
「アルキル」という用語は、結合点が1つある脂肪族炭化水素に由来する基を意味することを意図しており、直鎖状基、分枝状基、または環状基(cyclic group)を含む。この用語はヘテロアルキルを含むことを意図する。「炭化水素アルキル」という用語は、ヘテロ原子を持たないアルキル基を表す。「重水素化アルキル」という用語は、少なくとも1個の利用可能なHがDと置換されている炭化水素アルキルである。実施形態によっては、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0018】
「分枝状アルキル」という用語は、少なくとも1個の第二級または第三級炭素を有するアルキル基を表す。「第二級アルキル」という用語は、第二級炭素原子を有する分枝状アルキル基を表す。「第三級アルキル」という用語は、第三級炭素原子を有する分枝状アルキル基を表す。実施形態によっては、分枝状アルキル基は第二級または第三級炭素を介して結合する。
【0019】
「アリール」という用語は、結合点が1つある芳香族炭化水素に由来する基を意味することを意図する。「芳香族化合物」という用語は、非局在パイ電子を有する少なくとも1個の不飽和環状基を含む有機化合物を意味することを意図する。この用語は、ヘテロアリールを含むことを意図する。「炭化水素アリール」という用語は、環の中にヘテロ原子を持たない芳香族化合物を意味することを意図する。アリールという用語は、1つの環を有する基、および縮合できるかまたは単結合で結合できる複数の環を有する基を含む。「重水素化アリール」という用語は、アリールに直接結合している少なくとも1個の利用可能なHがDと置換しているアリール基を表す。「アリーレン」という用語は、結合点が2つある芳香族炭化水素に由来する基を意味することを意図する。実施形態によっては、アリール基は3〜60個の炭素原子を有する。
【0020】
「アリールオキシ」という用語は、RO−基[ここで、Rはアリールである]を表す。
【0021】
「化合物」という用語は、分子で構成される帯電していない物質(分子は、原子からさらに構成され、物理的手段では原子を分離できない)を意味することを意図する。「隣接した」という語句は、デバイス中の層を表すのに用いられる場合、1つの層が別の層のすぐ隣にあることを必ずしも意味しない。その一方で、「隣接したR基」という語句は、化学式において隣同士のR基(すなわち、1つの結合でつながれた原子にあるR基)を表すのに用いられる。
【0022】
「重水素化(されている)」という用語は、少なくとも1個のHがDと置換されていることを意味することを意図する。重水素は、天然存在レベルの少なくとも100倍存在する。化合物Xの「重水素化誘導体」は、化合物Xと同じ構造を有するが、Hと置き換わっている少なくとも1個のDを含む。
【0023】
「ドーパント」という用語は、ホスト物質を含む層の中の物質であって、その層の電子的特性あるいはその層の放射線の放出、受容、またはフィルタリングの目的波長が、そうした物質の存在しない層の電子的特性あるいは放射線の放出、受容、またはフィルタリングの波長と比べて変わるようにする、層の中の物質を意味することを意図する。
【0024】
「電気的活性」という用語は、層または物質に言及している場合、電子放射性または電気的放射性(electronic or electro−radiative properties)を示す層または物質を意味することを意図する。電子デバイスでは、電気的活性物質によりデバイスの動作が電子的に促進される。電気的活性物質の例としては、電荷の伝導、注入、輸送または遮断を行う物質(電荷は電子または正孔のいずれかでありうる)、および放射線を発するかまたは電子−正孔ペアの濃度の変化を示す(放射線を受けたとき)物質があるが、これらに限定されない。不活性物質の例としては、平坦化物質、絶縁物質、および環境障壁物質(environmental barrier materials)があるが、これらに限定されない。
【0025】
接頭語の「ヘテロ」は、1つまたは複数個の炭素原子が異なる原子で置換されていることを示す。実施形態によっては、異なる原子は、N、O、またはSである。
【0026】
「ホスト物質」という用語は、ドーパントを加える物質を意味することを意図する。ホスト物質は、放射線の放出、受容、またはフィルタリングを行う能力または電子的特性があってもなくても構わない。実施態様によっては、ホスト物質は高い濃度で存在する。
【0027】
「インドロカルバゾール」という用語は、
【0028】
【化1】

【0029】
[式中、Qは窒素含有環が任意の向きに縮合しているフェニル環を表し、RはHまたは置換基を表す]
の部分を指す。
【0030】
「層」という用語は、「膜」という用語と同義語的に使用され、目的の領域を覆うコーティングを表す。この用語は大きさによって限定されるものではない。この領域は、デバイス全体と同じくらい大きくても、あるいは実際の表示装置など特定の機能領域と同じくらい小さくても、あるいは単一のサブピクセルと同じくらい小さくても構わない。層および膜は、蒸着、液体付着(連続技法および不連続技法)、および熱転写を含め、従来の任意の付着技法で形成できる。連続付着技法としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬被覆、スロットダイコーティング(slot−die coating)、吹付け塗り、および連続ノズルコーティングがあるが、これらに限定されない。不連続付着技法としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷があるが、これらに限定されない。
【0031】
「有機電子デバイス」またはときにはただの「電子デバイス」という用語は、1種または複数種の有機半導体層または有機半導体物質を含むデバイスを意味することを意図する。 すべての基は、特に記載のない限り、置換されていても非置換であってよい。実施形態によっては、置換基は、D、ハロゲン化物、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シアノ、およびNR2[ここで、Rはアルキルまたはアリールである]からなる群から選択される。
【0032】
特に定義されていない限り、本明細書に用いられている技術用語および科学用語はすべて、本発明が関係する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載する方法および物質と同様または同等の方法および物質を本発明の実施または試験に使用できるが、好適な方法および物質を以下に記載しておく。本明細書で挙げる刊行物、特許出願、特許、および他の文献はすべて、その全体を援用する。矛盾がある場合には、定義を含んでいる本明細書で調整されるであろう。さらに、そうした物質、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0033】
全体を通してIUPAC番号付け方式(IUPAC numbering system)が使用されており、その方式では、周期律表の族は左から右に1〜18の番号が付けられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition,2000)。
【0034】
2.重水素化合物
新規の重水素化合物は、少なくとも1個のDを有するインドロカルバゾール誘導体化合物である。実施形態によっては、化合物は少なくとも10%が重水素化されている。これは、Hの少なくとも10%がDに置換されていることを意味する。実施形態によっては、化合物は少なくとも20%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されている。実施形態によっては、化合物は100%が重水素化されている。
【0035】
1つの実施形態では、重水素化合物は式Iまたは式IIを有する:
【0036】
【化2】

【0037】
[式中、
Ar1は、芳香族電子輸送基であり;
Ar2は、アリール基および芳香族電子輸送基からなる群から選択され;ならびに
1およびR2はそれぞれの出現において同一または異なっていて、H、Dおよびアリールからなる群から選択され;
また、化合物は少なくとも1個のDを有する]
【0038】
式Iおよび式IIの実施形態によっては、重水素が、インドロカルバゾール核、アリール環、アリール環上の置換基、およびそれらの組合せからなる群から選択される部分に存在する。
【0039】
実施形態によっては、インドロカルバゾール核は少なくとも10%が重水素化されている。この場合、R1およびR2の少なくとも1つがDである。実施形態によっては、インドロカルバゾール核は少なくとも20%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されており;実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されており;実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されており、実施形態によっては、100%が重水素化されている。
【0040】
Ar1は、芳香族電子輸送基である。実施形態によっては、芳香族電子輸送基は窒素含有ヘテロ芳香族基である。電子輸送を行う窒素含有ヘテロ芳香族基の例の中には、以下に示すものがあるが、これらに限定されない。
【0041】
【化3】

【0042】
【化4】

【0043】
上式において、
Ar3はアリール基であり;
3は、それぞれの出現において同一または異なっていて、D、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択され;
aは、0〜4の整数であり;
bは、0〜3の整数であり;
cは、0〜2の整数であり;
dは、0〜5の整数であり;
eは、0または1であり;および
fは、0〜6の整数である。
基は、波線で示した位置のいずれでも核上の窒素と結合できる。
【0044】
実施形態によっては、同一または異なっている電子求引性置換基の2つ以上が結合してオリゴマー置換基を形成する。実施形態によっては、R3は、Dおよびアリールからなる群から選択される。実施形態によっては、R3は窒素含有ヘテロ芳香族の電子輸送基である。
【0045】
実施形態によっては、Ar1は少なくとも10%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも20%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されており、実施形態によっては、100%が重水素化されている。
【0046】
実施形態によっては、Ar2は、上述の芳香族電子輸送基である。実施形態によっては、Ar2は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、フェニルナフチレン、ナフチルフェニレン、これらの重水素化誘導体、および式III:
【0047】
【化5】

【0048】
[式中、
4は、それぞれの出現において同一または異なっていて、H、D、アルキル、アルコキシ、シロキサンおよびシリルからなる群から選択されるか、または隣接したR4基が結合して芳香環を形成していてよく;および
mは、それぞれの出現において同一または異なっていて、1〜6の整数である]
を有する基からなる群から選択される。
【0049】
実施形態によっては、Ar2は少なくとも10%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも20%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも30%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも40%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも50%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも60%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも70%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも80%が重水素化されており、実施形態によっては、少なくとも90%が重水素化されており、実施形態によっては、100%が重水素化されている。
【0050】
実施形態によっては、R1およびR2はアリールである。実施形態によっては、アリール基は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、フェニルナフチレン、ナフチルフェニレン、これらの重水素化誘導体、および上に示した式IIIを有する基からなる群から選択される。実施形態によっては、アリール基は、D、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、シリル、これらの重水素化誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の置換基を有する。
【0051】
実施形態によっては、R1およびR2はHまたはDである。
【0052】
式Iまたは式IIを有する化合物の一部の非限定例として、以下の化合物H1〜H14がある。
【0053】
【化6】

【0054】
【化7】

【0055】
【化8】

【0056】
【化9】

【0057】
【化10】

【0058】
新規化合物の非重水素化類似体は、周知のカップリングおよび置換反応で調製できる。そのような反応はよく知られており、多くの文献に記載されている。例示的な参考文献として次のようなものがある:Yamamoto,Progress in Polymer Science,Vol.17,p 1153(1992);Colon et al.,Journal of Polymer Science,Part A,Polymer chemistry Edition,Vol.28,p.367(1990);米国特許第5,962,631号明細書,および公開されたPCT出願の国際公開第00/53565号パンフレット;T.Ishiyama et al.,J.Org.Chem.1995 60,7508−7510;M.Murata et al.,J.Org.Chem.1997 62,6458−6459;M.Murata et al.,J.Org.Chem.2000 65,164−168;L.Zhu,et al.,J.Org.Chem.2003 68,3729−3732;Stille,J.K.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1986,25,508;Kumada,M.Pure.Appl.Chem.1980,52,669;Negishi,E.Acc.Chem.Res.1982,15,340。
【0059】
新規の重水素化合物は、重水素化前駆体物質を用いるか、あるいは、より一般的には、ルイス酸H/D交換触媒(例えば、三塩化アルミニウムまたはエチルアルミニウムクロライド(ethyl aluminum chloride)、またはCF3COOD、DCIなどの酸等)の存在下で、非重水素化合物を重水素化溶媒(d6−ベンゼンなど)で処理することにより、同じような仕方で調製できる。例示的な調製物を実施例に示す。重水素化のレベルは、NMR分析および質量分析法(大気圧固体分析プローブ質量分析法(ASAP−MS)など)によって求めることができる。過重水素化(perdeuterated)または部分重水素化された芳香族化合物またはアルキル化合物の出発物質は、市販品供給元(commercial source)から購入できるか、または周知の方法を用いて得ることができる。そのような方法の幾つかの例は、a)“Efficient H/D Exchange Reactions of Alkyl−Substituted Benzene Derivatives by Means of the Pd/C−H2−D2O System” Hiroyoshi Esaki,Fumiyo Aoki,Miho Umemura,Masatsugu Kato,Tomohiro Maegawa,Yasunari Monguchi,and Hironao Sajiki Chem.Eur.J.2007,13,4052−4063. b)“Aromatic H/D Exchange Reaction Catalyzed by Groups 5 and 6 Metal Chlorides” GUO,Qiao−Xia,SHEN,Bao−Jian;GUO,Hai−Qing TAKAHASHI,Tamotsu Chinese Journal of Chemistry,2005,23,341−344; c)“A novel deuterium effect on dual charge−transfer and ligand−field emission of the cis−dichlorobis(2,2’−bipyridine)iridium(III)ion” Richard J.Watts,Shlomo Efrima,and Horia Metiu J.Am.Chem.Soc.,1979,101(10),2742−2743; d)“Efficient H−D Exchange of Aromatic Compounds in Near−Critical D20 Catalysed by a Polymer−Supported Sulphonic Acid”Carmen Boix and Martyn Poliakoff Tetrahedron Letters 40(1999)4433−4436; e)米国特許第3849458号明細書; f)“Efficient C−H/C−D Exchange Reaction on the Alkyl Side Chain of Aromatic Compounds Using Heterogeneous Pd/C in D2O”Hironao Sajiki,Fumiyo Aoki,Hiroyoshi Esaki,Tomohiro Maegawa,and Kosaku Hirota Org.Lett.,2004,6(9),1485−1487の中に見出すことができる。
【0060】
本明細書に記載の化合物は、液体付着技法を用いて膜にすることができる。驚くべきことに、こうした化合物は、予想外にも類似の非重水素化合物と比べて非常に特性が向上している。本明細書に記載の化合物を持つ活性層を含んだ電子デバイスは、大幅に向上した寿命を持つ。さらに、他のデバイス特性に有害な影響を及ぼすことなく、寿命の増加が実現される。さらに、本明細書に記載の重水素化合物は、非重水素化類似体よりも空気露出耐性(air tolerance)が大きい。そのため、物質の調製および精製の両方における処理耐性(processing tolerance)が増大しうるし、またその物質を用いた電子デバイスが形成されうる。
【0061】
3.有機電子デバイス
本明細書に記載の重水素化物質を含んでいる1つまたは複数の層を有することが役立ちうる有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、発光照明器具、またはダイオードレーザー)、(2)エレクトロニクス処理によって信号を検出するデバイス(例えば、光検出器、光伝導セル、フォトレジスター、光電スイッチ、フォトトランジスター、光電管、IR検出器)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば、光電変換装置または太陽電池)、および(4)1つまたは複数の有機半導体層を含んでいる1つまたは複数の電子部品を含むデバイス(例えば、薄膜トランジスターまたはダイオード)があるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、多くの場合、酸素感受性指示薬(oxygen sensitive indicators)およびバイオアッセイにおけるルミネッセンス指示薬(luminescent indicators)などの用途に有用でありうる。
【0062】
1つの実施形態では、有機電子デバイスは、少なくとも1個の重水素置換基を有するインドロカルバゾール誘導体を含んでいる少なくとも1つの層を含む。実施形態によっては、インドロカルバゾール誘導体は上述の式Iまたは式IIを有する。
【0063】
a.第1の例示的デバイス
特に有用なタイプのトランジスターである薄膜トランジスター(TFT)は一般に、ゲート電極、ゲート電極上のゲート誘電体、ゲート誘電体に隣接したソース電極およびドレイン電極、ならびにゲート誘電体に隣接しかつソースおよびドレイン電極に隣接した半導体層を含む(例えば、S.M.Sze,Physics of Semiconductor Devices,2nd edition,John Wiley and Sons,page 492を参照)。こうした部品はさまざまな構成で組み立てることができる。有機薄膜トランジスター(OTFT)は、有機半導体層を有しているという特徴がある。
【0064】
1つの実施形態では、OTFTは、
基板と、
絶縁層と、
ゲート電極と、
ソース電極と、
ドレイン電極と、
有機半導体層であって、少なくとも1個の重水素置換基を有するインドロカルバゾール化合物を含んでいる有機半導体層と
を含み、絶縁層、ゲート電極、半導体層、ソース電極およびドレイン電極は、任意の順序で配置できるが、但し、ゲート電極と半導体層の両方が絶縁層と接触し、ソース電極とドレイン電極の両方が半導体層と接触し、および電極が互いに接触していないことを条件とする。実施形態によっては、インドロカルバゾール誘導体は式Iまたは式IIを有する。
【0065】
図1Aには、有機電界効果トランジスター(OTFT)であって、「底部接触方式」のそのようなデバイスの活性層の相対位置を示すものが略図で示してある。(OTFTの「底部接触方式」では、ドレインおよびソース電極をゲート誘電体層に付着させ、その後、活性有機半導体層をソース電極、ドレイン電極および残りの露出したゲート誘電体層すべてに付着させる。)基板112はゲート電極102および絶縁層104と接触しており、その上部にソース電極106およびドレイン電極108が付着している。ソース電極とドレイン電極の上およびそれらの間に、式2の化合物を含む有機半導体層110がある。
【0066】
図1Bは、OTFTの概略図であり、上部接触方式のそのようなデバイスの活性層の相対位置を示す。(「上部接触方式」では、OTFTのドレイン電極およびソース電極が活性有機半導体層の上部に付着している。)
【0067】
図1Cは、OTFTの概略図であり、ゲートが上部にある底部接触方式のそのようなデバイスの活性層の相対位置を示す。
【0068】
図1Dは、OTFTの概略図であり、ゲートが上部にある上部接触方式のそのようなデバイスの活性層の相対位置を示す。
【0069】
基板は、無機ガラス、セラミック箔、高分子材料(例えば、ポリアクリレート、エポキシ化合物、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリケトン、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンオキシ−1,4−フェニレンカルボニル−1,4−フェニレン)(場合によってポリ(エーテルエーテルケトン)またはPEEKと呼ばれることもある)、ポリノルボルネン、ポリフェニレンオキシド、ポリ(エチレンナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS))、充填高分子材料(例えば、繊維強化プラスチック(FRP))、及び/または被覆金属箔を含むことができる。基板の厚さは、約10マイクロメートルから10ミリメートルより上でよく、例えば、軟質プラスチック基板の場合は約50〜約100マイクロメートル、ガラスまたはケイ素などの硬質基板の場合は約1〜約10ミリメートルであってよい。典型的には、基板は、製造時、試験時、及び/または使用時にOTFTを支える。必要に応じて、基板は、ソース、ドレイン、および電極への母線接続およびOTFT用の回路などの電気的機能を果たすことができる。
【0070】
ゲート電極は、金属薄膜、導電性ポリマー膜、導電性膜(導電性インキまたはペーストから作られたもの)または基板自体(例えば、高濃度にドープされたケイ素)であってよい。好適なゲート電極物質の例としては、アルミニウム、金、クロム、インジウム・スズ・酸化物、導電性ポリマー(スルホン酸ポリスチレンをドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)など)、高分子バインダー中にカーボンブラック/グラファイトまたはコロイド状銀を含む分散系からなる導電性インク/ペーストなどがある。OTFTによっては、同じ物質が、ゲート電極の機能を果たし、かつ基板の支持機能も果たすことができる。例えば、ドープしたケイ素は、ゲート電極として機能しかつOTFTを支えることができる。
【0071】
ゲート電極は、真空蒸着、金属または導電金属酸化物のスパッタリング、スピンコーティングまたは注入成形または印刷による導電性ポリマー溶液または導電性インキの塗布によって、作製できる。ゲート電極の厚さは、例えば、金属膜では約10〜約200ナノメートル、ポリマー導体(polymer conductors)では約1〜約10マイクロメートルでありうる。
【0072】
半導体層とソースおよびドレイン電極との間の接触抵抗が半導体層の抵抗より小さくなるように、ソース電極とドレイン電極は、半導体層に対して低抵抗のオーム性接触となるような物質から製作できる。チャネル抵抗は、半導体層の導電率である。典型的には、抵抗はチャネル抵抗より小さくすべきである。ソースおよびドレイン電極として用いるのに適した典型的な物質としては、アルミニウム、バリウム、カルシウム、クロム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、およびそれらの合金;カーボンナノチューブ;ポリアニリンおよびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)などの導電性ポリマー;導電性ポリマー中にカーボンナノチューブを含む分散系;導電性ポリマー中に金属を含む分散系;およびそれらの多層がある。こうした物質の中には、当業者に知られているように、n型半導体物質で用いるのに適したものもあれば、p型半導体物質で用いるのに適したものもある。ソースおよびドレイン電極の典型的な厚さは、およそ、例えば、約40ナノメートル〜約1マイクロメートルである。実施形態によっては、厚さは約100〜約400ナノメートルである。
【0073】
絶縁層は、無機材料膜または有機ポリマー膜を含む。絶縁層として適した無機材料の例示的な例として、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムストロンチウム(barium strontium titanate)、チタン酸ジルコニウム酸バリウム、セレン化亜鉛、および硫化亜鉛がある。さらに、前述の物質の合金、組合せ、および多層を絶縁層に使用できる。絶縁層用の有機ポリマーの例示的な例として、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート)、エポキシ樹脂およびこれらのブレンドならびに多層がある。絶縁層の厚さは、使用する誘電物質の誘電率に応じて、例えば、約10ナノメートル〜約500ナノメートルである。例えば、絶縁層の厚さは、約100ナノメートル〜約500ナノメートルでありうる。絶縁層は、例えば、約10-12S/cm(ここで、S=ジーメンス=1/オーム)未満である導電率を有しうる。
【0074】
絶縁層、ゲート電極、半導体層、ソース電極、およびドレイン電極は、ゲート電極と半導体層の両方が絶縁層と接触し、およびソース電極とドレイン電極の両方が半導体層と接触する限り、任意の順序で形成される。「任意の順序で」という語句は、順次形成および同時形成を含む。例えば、ソース電極およびドレイン電極は、同時または順次に形成させることができる。ゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極は、物理蒸着(例えば、熱蒸発またはスパッタリング)またはインクジェット式印刷などの既知の方法で設けることができる。電極のパターン形成は、シャドウマスキング(shadow masking)、加法フォトリソグラフィ(additive photolithography)、減法フォトリソグラフィ(subtractive photolithography)、印刷、マイクロコンタクトプリンティング、およびパターンコーティング(pattern coating)など既知の方法で遂行できる。
【0075】
底部接触方式のOTFT(図1A)の場合、電極106および108(それぞれ、ソースおよびドレイン用のチャネルを形成する)は、フォトリソグラフィ法を用いて二酸化ケイ素層上に作ることができる。次いで、半導体層110を、電極106および108ならびに層104の表面に付着させる。
【0076】
1つの実施形態では、半導体層110は式2で表される1種または複数種の化合物を含む。半導体層110は、当該技術分野において知られている様々な技法で付着させることができる。そうした技法として、熱蒸発、化学蒸着、熱転写、インクジェット印刷およびスクリーン印刷がある。付着させるための分散液薄膜コーティング(dispersion thin film coating)技法としては、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング(doctor blade coating)、ドロップキャスティング(drop casting)および他の既知の技法がある。上部接触方式のOTFT(図1B)の場合、電極106および108を製作する前に、層110を層104に付着させる。
【0077】
b.第2の例示的デバイス
本発明はまた、2つの電気接触層の間に配置された少なくとも1つの活性層を含む電子デバイスであって、デバイスの少なくとも1つの活性層が少なくとも1個の重水素置換基を有するインドロカルバゾール化合物を含む、電子デバイスに関する。
【0078】
有機電子デバイス構造の別の例を図2に示す。デバイス200は、第1電気接触層である陽極層210と、第2電気接触層である陰極層260と、それらの間にある電気的活性層240とを有する。陽極の隣には、正孔注入層220があってよい。正孔注入層の隣には、正孔輸送物質を含む正孔輸送層230があってよい。陰極の隣には、電子輸送物質を含む電子輸送層250があってよい。デバイスでは、陽極210の隣の1つまたは複数の更なる正孔注入層または正孔輸送層(図示せず)及び/または陰極260の隣の1つまたは複数の更なる電子注入層または電子輸送層(図示せず)を使用してよい。
【0079】
層220〜250は、個々の場合もまとまった場合も活性層と呼ばれる。
【0080】
実施形態によっては、電気的活性層240は図3に示すようにピクセル化される。層240は、ピクセルまたはサブピクセル単位241、242、および243に分割され、それらはその層の全面で繰り返される。ピクセルまたはサブピクセル単位のそれぞれは異なる色を表す。実施形態によっては、サブピクセル単位は、赤色、緑色、および青色用である。3つのサブピクセル単位を図に示してあるが、2つまたは4つ以上を使用してもよい。
【0081】
1つの実施形態では、種々の層の厚さの範囲は以下の通りである:陽極210は500〜5000Åで、1つの実施形態では1000〜2000Åであり;正孔注入層220は50〜2000Åで、1つの実施形態では200〜1000Åであり;正孔輸送層230は50〜2000Åで、1つの実施形態では200〜1000Åであり;電気活性層240は10〜2000Åで、1つの実施形態では100〜1000Åであり;層250は50〜2000Åで、1つの実施形態では100〜1000Åであり;陰極260は200〜10000Åで、1つの実施形態では300〜5000Åである。デバイス中の電子−正孔再結合域の場所(したがってデバイスの発光スペクトル)は、各層の相対的厚さによって影響されうる。層の厚さの所望の比率は、使用する物質のまさにその性質によって異なるであろう。
【0082】
デバイス200の用途に応じて、電気的活性層240は、印加電圧によって活性化される発光層でありうるか(発光ダイオードまたは発光電気化学セルの場合など)、あるいは印加バイアス電圧の有無にかかわりなく放射エネルギーに反応して信号を発生する物質の層(光検出器の場合など)でありうる。光検出器の例としては、光伝導セル、フォトレジスター、光電スイッチ、フォトトランジスター、および光電管、および光起電力セルがあり、これらの用語は、Markus,John,Electronics and Nucleonics Dictionary,470 and 476(McGraw−Hill,Inc.1966)に記載されている通りである。発光層を有するデバイスは、ディスプレイを作るため、あるいは白色光照明器具などの照明用途に使用することができる。
【0083】
本明細書に記載した1種または複数種の新規の重水素化物質が、デバイスの1つまたは複数の活性層中に存在してよい。重水素化物質は、単独で、あるいは非重水素化物質または他の重水素化物質と組み合わせて使用してよい。
【0084】
実施形態によっては、新規の重水素化合物は層230中の正孔輸送物質として有用である。実施形態によっては、少なくとも1つの更なる層が新規の重水素化物質を含む。実施形態によっては、更なる層は正孔注入層220である。実施形態によっては、更なる層は電気活性層240である。実施形態によっては、更なる層は電子輸送層250である。
【0085】
実施形態によっては、新規の重水素化合物は、電気活性層240中の電気活性物質のホスト物質として有用である。実施形態によっては、発光(emissive)物質も重水素化されている。実施形態によっては、少なくとも1つの更なる層は重水素化物質を含む。実施形態によっては、更なる層は正孔注入層220である。実施形態によっては、更なる層は正孔輸送層230である。実施形態によっては、更なる層は電子輸送層250である。
【0086】
実施形態によっては、新規の重水素化合物は層250中の電子輸送物質として有用である。実施形態によっては、少なくとも1つの更なる層は重水素化物質を含む。実施形態によっては、更なる層は正孔注入層220である。実施形態によっては、更なる層は正孔輸送層230である。実施形態によっては、更なる層は電気活性層240である。
【0087】
実施形態によっては、電子デバイスは、正孔注入層、正孔輸送層、電気活性層、および電子輸送層からなる群から選択される層の任意の組合せにおいて重水素化物質を有する。
【0088】
実施形態によっては、デバイスは、処理に役立つようにまたは機能を向上させるために、更なる層を有する。そうした層の一部または全部が重水素化物質を含むことができる。実施形態によっては、有機デバイスの層すべてが重水素化物質を含む。実施形態によっては、有機デバイスの層すべてが重水素化物質から本質的になる。
【0089】
電気的活性層
実施形態によっては、新規の重水素化合物はホスト物質として有用である。電気的活性層は、(a)少なくとも1個の重水素置換基を有するインドロカルバゾール化合物および(b)380から750nmの間に発光極大を有するエレクトロルミネセンス可能な電気的活性ドーパントを含む。重水素化インドロカルバゾール化合物は、単独で、または第2ホスト物質と組み合わせて使用できる。新規の重水素化合物は、任意の色を発するドーパント用のホストとして使用できる。実施形態によっては、新規の重水素化合物は、緑色を発する物質または赤色を発する物質用のホストとして使用する。実施形態によっては、新規の重水素化合物は、有機金属エレクトロルミネセンス物質用のホストとして使用する。
【0090】
実施形態によっては、電気的活性層は、重水素化インドロカルバゾール化合物のホスト物質および1種または複数種の電気的活性ドーパントから本質的になる。実施形態によっては、電気的活性層は、式Iまたは式IIを有するホスト物質および有機金属エレクトロルミネセンス物質から本質的になる。実施形態によっては、電気的活性層は、式Iを有する第1ホスト物質、第2ホスト物質、および電気的活性ドーパントから本質的になる。第2ホスト物質の例としては、クリセン類、フェナントレン類、トリフェニレン類、フェナントロリン類、ナフタレン類、アントラセン類、キノリン類、イソキノリン類、キノキサリン類、フェニルピリジン類、ベンゾジフラン類、および金属キノリナート錯体(metal quinolinate complexes)があるが、これらに限定されない。
【0091】
電気的活性組成物中に存在するドーパントの量は一般に、組成物の全重量を基準にして3〜20重量%の範囲であり、実施態様によっては、5〜15重量%である。第2ホストが存在する場合、式Iまたは式IIを有する第1ホストと第2ホストとの比率は一般に、1:20〜20:1の範囲であり、実施態様によっては、5:15〜15:5である。実施態様によっては、式Iを有する第1ホスト物質は、全ホスト物質の少なくとも50重量%であり、実施態様によっては、少なくとも70重量%である。
【0092】
電気的活性層中のドーパントとして使用できるエレクトロルミネセンス(「EL」)物質としては、小分子の有機ルミネセンス化合物、ルミネセンス金属錯体、共役ポリマー、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。小分子の有機ルミネセンス化合物の例としては、クリセン類、ピレン類、ペリレン類、ルブレン類、クマリン類、アントラセン類、チアジアゾール類、それらの誘導体、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。金属錯体の例としては、金属(イリジウムおよび白金など)の金属キレート化オキシノイド化合物および環状メタル化(cyclometallated)錯体があるが、これらに限定されない。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)類、ポリフルオレン類、ポリ(スピロビフルオレン)類、ポリチオフェン類、ポリ(p−フェニレン)類、それらのコポリマー、およびそれらの混合物があるが、これらに限定されない。
【0093】
赤色発光物質の例としては、フェニルキノリンまたはフェニルイソキノリン配位子を有するIrの環状メタル化(cyclometalated)錯体、ペリフラテン類(periflanthenes)、フルオランテン類、およびペリレン類があるが、これらに限定されない。赤色発光物質は、例えば、米国特許第6,875,524号明細書および米国特許出願公開第2005−0158577号明細書に開示されている。
【0094】
緑色発光物質の例としては、フェニルピリジン配位子を有するIrの環状メタル化錯体、ビス(ジアリールアミノ)アントラセン類、およびポリフェニレンビニレンポリマーがあるが、これらに限定されない。緑色発光物質は、例えば、公開されたPCT出願の国際公開第2007/021117号パンフレットに開示されている。
【0095】
青色発光物質の例としては、ジアリールアントラセン類、ジアミノクリセン類、ジアミノピレン類、およびポリフルオレンポリマーがあるが、これらに限定されない。青色発光物質は、例えば、米国特許第6,875,524号明細書、ならびに米国特許出願公開第2007−0292713号明細書および第2007−0063638号明細書に開示されている。
【0096】
実施形態によっては、ドーパントは有機金属錯体である。実施形態によっては、ドーパントはイリジウムまたは白金の環状メタル化錯体である。そのような物質は、例えば、米国特許第6,670,645号明細書および公開されたPCT出願の国際公開第03/063555号パンフレット、国際公開第2004/016710号パンフレット、および国際公開第03/040257号パンフレットに開示されている。
【0097】
実施形態によっては、ドーパントは、式 Ir(L1)a(L2)b(L3)cを有する錯体であり、式中、
L1は、炭素および窒素を介して配位しているモノアニオン性の環状メタル化二座配位子であり、
L2は、炭素を介して配位していないモノアニオン性の二座配位子であり、
L3は、単座配位子であり、
aは、1〜3であり、
bおよびcは、独立に0〜2であり、さらに
a、b、およびcは、イリジウムが六配位であり、錯体が電気的に中性となるように選択される。
式の例の中には、Ir(L1)3;Ir(L1)2(L2);およびIr(L1)2(L3)(L3’)[ここで、L3はアニオンであり、L3’は非イオンである]があるが、これらに限定されない。
【0098】
L1配位子の例としては、フェニルピリジン類、フェニルキノリン類、フェニルピリミジン類、フェニルピラゾール類、チエニルピリジン類、チエニルキノリン類、およびチエニルピリミジン類があるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「キノリン類」という用語は、特に明記されていない限り、「イソキノリン類」を含む。フッ素化誘導体は、1個または複数個のフッ素置換基を有していてよい。実施形態によっては、1〜3個のフッ素置換基が配位子の非窒素環(non−nitrogen ring)上にある。
【0099】
モノアニオン性の二座配位子であるL2は、金属配位化学の技術分野において周知である。一般にこうした配位子は、配位原子としてN、O、P、またはSを有し、イリジウムに配位結合するとき5員環または6員環を形成する。好適な配位基としては、アミノ、イミノ、アミド、アルコキシド、カルボキシレート、ホスフィノ、チオレートなどがある。こうした配位子の好適な親化合物の例として、β−ジカルボニル類(β−エノラート配位子)、およびそれらのNおよびS類似体;アミノカルボン酸類(アミノカルボキシレート配位子);ピリジンカルボン酸(イミノカルボキシレート配位子);サリチル酸誘導体(サリチレート配位子);ヒドロキシキノリン類(ヒドロキシキノリナート配位子)およびそれらのS類似体;およびホスフィノアルカノール類(ホスフィノアルコキシド配位子)がある。
【0100】
単座配位子であるL3は、アニオンまたは非イオン性であってよい。アニオン配位子としては、H-(「水素化物」)ならびに配位原子としてC、OまたはSを有する配位子があるが、これらに限定されない。配位基としては、アルコキシド、カルボキシレート、チオカルボキシレート、ジチオカルボキシレート、スルホネート、チオレート、カルバメート、ジチオカルバメート、チオカルバゾンアニオン、スルホンアミドアニオンなどがあるが、これらに限定されない。場合によっては、L2として上に挙げた配位子(β−エノラート類およびホスフィノアルコキシド類など)は、単座配位子として働くことができる。単座配位子は、ハロゲン化物、シアン化物、イソシアン化物、硝酸塩、サルフェート、ヘキサハロアンチモネート(hexahaloantimonate)などの配位アニオンであってもよい。これらの配位子は一般に市販されている。
【0101】
L3単座配位子は、非イオン性配位子(COまたは単座ホスフィン配位子など)であってもよい。
【0102】
実施形態によっては、1つまたは複数の配位子は、Fおよびフッ素化アルキルからなる群から選択される少なくとも1個の置換基を有する。
【0103】
イリジウム錯体ドーパントは、例えば、米国特許第6,670,645明細書に記載されている標準合成法(standard synthetic techniques)で作ることができる。
【0104】
赤色を発する有機金属イリジウム錯体の例として、以下の化合物D1〜D10があるが、これらに限定されない。
【0105】
【化11】

【0106】
【化12】

【0107】
【化13】

【0108】
緑色を発する有機金属Ir錯体の例として、以下のD11〜D33があるが、これらに限定されない。
【0109】
【化14】

【0110】
【化15】

【0111】
【化16】

【0112】
【化17】

【0113】
実施形態によっては、ドーパントは小さな有機ルミネッセンス化合物である。実施形態によっては、ドーパントは、高分子ではないスピロビフルオレン化合物およびフルオランテン化合物からなる群から選択される。
【0114】
実施態様によっては、ドーパントは、アリールアミン基を有する化合物である。実施態様によっては、電気的活性ドーパントは以下の式から選択される。
【0115】
【化18】

【0116】
[式中、
Aは、それぞれの出現において同一または異なっていて、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
Q’は、単結合であるか、または3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
pおよびqは独立に1〜6の整数である]
【0117】
上記の式の実施態様によっては、各式中のAおよびQ’の少なくとも1つが、少なくとも3個の縮合環を有する。実施態様によっては、pおよびqは1に等しい。
【0118】
実施態様によっては、Q’はスチリル基またはスチリルフェニル基である。
【0119】
実施態様によっては、Q’は、少なくとも2個の縮合環を有する芳香族基である。実施態様によっては、Q’は、ナフタレン、アントラセン、クリセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、およびルブレンからなる群から選択される。
【0120】
実施態様によっては、Aは、フェニル、ビフェニル、トリル、ナフチル、ナフチルフェニル、およびアントラセニル基からなる群から選択される。
【0121】
実施態様によっては、ドーパントは以下の式を有する。
【0122】
【化19】

【0123】
[式中、
Yは、それぞれの出現において同一または異なっていて、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
Q’’は、芳香族基、二価のトリフェニルアミン残基、または単結合である]
【0124】
実施態様によっては、ドーパントはアリールアセンである。実施態様によっては、ドーパントは非対称アリールアセンである。
【0125】
小分子の有機緑色ドーパントの例の中には、以下に示す化合物D34〜D41があるが、これらに限定されない。
【0126】
【化20】

【0127】
【化21】

【0128】
【化22】

【0129】
【化23】

【0130】
小分子の有機青色ドーパントの例として、以下に示す化合物D42〜D49があるが、これらに限定されない。
【0131】
【化24】

【0132】
【化25】

【0133】
【化26】

【0134】
【化27】

【0135】
実施形態によっては、電気活性ドーパントは、アミノ置換クリセン類およびアミノ置換アントラセン類からなる群から選択される。
【0136】
実施態様によっては、本明細書に記載した新規の重水素化合物は、エレクトロルミネセンス物質であり、電気的活性物質として存在する。
【0137】
デバイスの他の層
デバイス中の他の層は、そのような層に有用であることが知られている任意の物質で作ることができる。
【0138】
陽極210は、正の電荷担体を注入するのに特に効率的な電極である。それは、例えば、金属を含む物質、混合金属、合金、金属酸化物または混合金属酸化物で作ることができるか、またはそれは導電性ポリマーにすることができるか、あるいはそれらの混合物にすることもできる。好適な金属としては、11族の金属、4〜6族の金属、および8〜10族の遷移金属がある。陽極を光透過性にする場合、12族、13族および14族の金属の混合金属酸化物(インジウム−スズ−酸化物など)が一般的に使用される。陽極210は、“Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer,”Nature vol.357,pp 477−479(11 June 1992)に記載されているようにポリアニリンなどの有機物質を含むこともできる。生じた光を見ることができるように、陽極および陰極のうちの少なくとも1つが、望ましくは少なくとも部分的に透明である。
【0139】
正孔注入層220は正孔注入物質を含み、有機電子デバイスにおいて1つまたは複数の機能を有しうる。その機能としては、下にある層の平坦化、電荷輸送特性及び/または電荷注入特性、不純物(酸素または金属イオンなど)の除去、および有機電子デバイスの性能を促進または向上させる他の側面があるが、それらに限定されない。正孔注入物質は、ポリマー、オリゴマー、または小分子でありうる。それらは、溶液、分散液、懸濁液、エマルジョン、コロイド状混合物、または他の組成物の形であり得る液体から付着させるか、あるいは蒸着させることができる。
【0140】
正孔注入層は、ポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などの高分子材料(プロトニック酸がドープされることが多い)によって形成させることができる。プロトニック酸は、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであってよい。
【0141】
正孔注入層は、銅フタロシアニンおよびテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷移動化合物などを含むことができる。
【0142】
実施形態によっては、正孔注入層は、少なくとも1種の導電性ポリマーおよび少なくとも1種のフッ素化酸ポリマー(fluorinated acid polymer)を含む。そのような物質については、例えば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書、米国特許出願公開第2004−0127637号明細書、および米国特許出願公開第2005/205860号明細書に記載されている。
【0143】
実施形態によっては、正孔輸送層230は新規の重水素インドロカルバゾール化合物を含む。層230の他の正孔輸送物質の例は、例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Vol.18,p.837−860,1996,by Y.Wangに要約されている。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用できる。通常用いられる正孔輸送分子は以下のものである:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、a−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(□−NPB)、およびポルフィリン化合物(porphyrinic compounds)(銅フタロシアニンなど)。通常用いられる正孔輸送ポリマーには、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)−ポリシラン、およびポリアニリンがある。正孔輸送分子(上述したものなど)をポリマー(ポリスチレンおよびポリカーボネートなど)にドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることも可能である。場合によっては、トリアリールアミンポリマー、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマーが使用される。場合によっては、ポリマーおよびコポリマーは架橋性である。架橋性の正孔輸送ポリマーの例は、例えば、米国特許出願公開第2005−0184287号明細書および公開されたPCT出願の国際公開第2005/052027号パンフレット中に見出すことができる。実施形態によっては、正孔輸送層は、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンおよびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物などのp−ドーパントがドープされる。
【0144】
実施形態によっては、電子輸送層250は新規の重水素インドロカルバゾール化合物を含む。層250に使用できる他の電子輸送物質の例としては、金属キレートオキシノイド化合物(トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)など);ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニル−フェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ);およびアゾール化合物(2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)および3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)など);キノキサリン誘導体(2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなど);フェナントロリン誘導体(9,10−ジフェニルフェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)など);およびそれらの混合物がある。電子輸送層は、n−ドーパント(Csまたは他のアルカリ金属など)がドープされていてもよい。層250は、電子輸送を促進するために機能することも、層界面での励起子の失活を防止するための正孔注入層または閉じ込め(confinement)層として働くこともできる。好ましくは、この層は電子移動性を促進し、励起子の失活を低減する。
【0145】
陰極260は、電子または負の電荷担体を注入するのに特に効率的な電極である。陰極は、陽極よりも仕事関数の小さい任意の金属または非金属であってよい。陰極用の物質は、1族のアルカリ金属(例えば、Li、Cs)、2族の(アルカリ土類)金属、12族の金属(希土類元素およびランタニドを含む)、およびアクチニドから選択できる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウムおよびマグネシウムなどの物質、ならびにそれらの組合せを使用できる。動作電圧を下げるために、有機層と陰極層との間にLi含有またはCs含有の有機金属化合物、LiF、CsF、およびLi2Oを付着させることもできる。
【0146】
有機電子デバイス中に別の層を設けることが知られている。例えば、注入される正電荷の量を制御するため、および/または層のバンドギャップを一致させるため、あるいは保護層として機能するための、陽極210と正孔注入層220との間の層(図示せず)があってよい。当該技術分野において知られている層を使用でき、それには、銅フタロシアニン、酸窒化ケイ素、フルオロカーボン類、シラン類、または金属(Ptなど)の極薄層がある。あるいはまた、陽極層210、活性層220、230、240、および250、または陰極層260の一部または全部を表面処理して、電荷担体輸送効率を増大させることができる。各成分層の物質の選択は、好ましくは、デバイスが高いエレクトロルミネセンス効率となるように正電荷と負電荷を釣り合わせることにより決定する。
【0147】
各機能層は、複数の層で構成できることが理解される。
【0148】
好適な基板上に個々の層を順次蒸着させることを含め、さまざまな技法でデバイスを作製できる。ガラス、プラスチック、および金属などの基板を使用できる。熱蒸発、化学蒸着などの従来の蒸着手法を使用できる。あるいはまた、スピンコーティング、浸漬塗装、ロール間技法(roll−to−roll techniques)、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などの従来のコーティング技法または印刷技法(但し、それらに限定されない)を用いて、適切な溶媒の分散液または溶液から有機層を施すことができる。
【0149】
効率の高いLEDを実現するために、正孔輸送物質のHOMO(最高被占軌道)は、陽極の仕事関数と一致するのが望ましく、また電子輸送物質のLUMO(最低空軌道)が陰極の仕事関数と一致するのが望ましい。物質の化学的適合性および昇華温度も、電子輸送物質および正孔輸送物質を選択する際の重要な考慮事項である。
【0150】
本明細書に記載のインドロカルバゾール化合物で作られたデバイスの効率は、デバイス中の他の層を最適化することによってさらに改善できると考えられる。例えば、Ca、BaまたはLiFなどのさらに効率的な陰極を使用できる。動作電圧の低減または量子効率の増大をもたらす形状化基板および新規の正孔輸送物質も、使用できる。種々の層のエネルギー準位を調整するため、またエレクトロルミネセンスを促進するため、更なる層を加えることもできる。
【実施例】
【0151】
以下の実施例は、本発明のある特定の特徴および利点を示す。それらは、本発明を例示することを意図したものであり、限定するものではない。百分率はすべて、特に記載がない限り、重量百分率である。
【0152】
合成の実施例1
この実施例は、重水素化インドロカルバゾール化合物の製法を例示するものである。
【0153】
化合物H1は、以下に示す非重水素化類似体(比較化合物A)から作った。
【0154】
【化28】

【0155】
比較化合物Aは、欧州特許出願公開第2080762号明細書の実施例1に記載されているようにして作った。
【0156】
比較化合物A(1g、1.8mmol)を100mLの丸底フラスコ中で19.6mLのC66に溶かし、重水素化トリフル酸(1.34g、8.9mmol)をそれに加えた。得られた暗赤色溶液を50℃で5時間攪拌した。反応をNa2CO3のD2O溶液で急冷した。層を分離し、有機層を30mLずつの水で2回洗った。一緒にした水層を30mLの塩化メチレンで抽出し、その後Na2SO4で乾燥させ、濾過してから濃縮乾燥させた。シリカゲルによるカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン−ヘキサン)でさらに精製して、0.62g(62%、純度99.99%)の鮮やかな黄色の固体を得た。
【0157】
【化29】

【0158】
デバイスの実施例1およびデバイスの比較例A
これらの例は、緑色ドーパントとして有機金属イリジウム錯体(D21)を有するデバイスの製作および性能を示すものである。ドーパントは、米国特許第6,670,645号明細書に記載のものと同様の手順で作った。
【0159】
デバイスは、ガラス基板上に以下の構造を有していた。
【0160】
陽極=インジウム・スズ・酸化物(ITO):50nm
正孔注入層=HIJ1(50nm)(導電性ポリマーと高分子フッ素化スルホン酸との水性分散液である)。そのような物質は、例えば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、米国特許出願公開第2005/0205860号明細書、および公開されたPCT出願の国際公開第2009/018009号パンフレットに記載されている。
【0161】
正孔輸送層=ポリマーP1(これは非架橋のアリールアミンポリマーである)(20nm)
電気的活性層=13:1のホスト:ドーパント(表1に示す)
電子輸送層=ET1(これは、金属キノレート(metal quinolate)誘導体である)(10nm)
陰極=CsF/Al(1.0/100nm)
【0162】
【表1】

【0163】
OLEDデバイスは、溶液処理と熱蒸発技法とを併用することによって作製した。パターン化インジウム・スズ・酸化物(ITO)で被覆されたガラス基板(Thin Film Devices,Incからのもの)を使用した。こうしたITO基板は、シート抵抗が30オーム/平方であり光透過率が80%であるITOで被覆されたCorning 1737ガラスをベースにしている。パターン化ITO基板を、洗浄剤水溶液中で超音波を使って清浄にし、蒸留水ですすいだ。その後、パターン化ITOをアセトン中で超音波を使って清浄にし、イソプロパノールですすぎ、窒素流で乾燥させた。
【0164】
デバイスの作製の直前に、清浄にしたパターン化ITO基板を紫外オゾンで10分間処理した。冷却直後に、HIJ1の水性分散液を、ITO表面を覆うようにスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後、次いで基板を正孔輸送物質の溶液でスピンコーティングし、次いで加熱して溶媒を除去した。冷却後、基板を電子放出層溶液でスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。基板をマスキングし、真空チャンバーに入れた。電子輸送層を熱蒸発によって付着させ、その後、CsF層を付着させた。次いで真空中でマスクを変え、Al層を熱蒸発で付着させた。チャンバーのガス抜きを行い、ガラスの蓋、乾燥剤、および紫外線硬化性エポキシを用いてデバイスをカプセル化した。
【0165】
OLED試料は、(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネセンスの輝度 対 電圧、および(3)エレクトロルミネセンススペクトル 対 電圧を測定して特徴を決定した。3種類の測定はすべて同時にコンピュータで実行し制御した。ある一定電圧でのデバイスの電流効率は、LEDのエレクトロルミネセンス輝度を、デバイスを作動させるのに必要な電流で割ることによって求める。単位はcd/Aである。電力効率は、電流効率にpiを乗じ、動作電圧で割ったものである。単位はlm/Wである。デバイスのデータを、表2に示す。
【0166】
【表2】

【0167】
本発明の重水素化インドロカルバゾールホストでは、デバイスの寿命が大幅に増大しているが、他のデバイス特性は保たれていることが分かる。非重水素化ホストを有する比較デバイスは、平均計画T50が24,867時間であった。本発明の重水素化ホスト(H1)では、デバイスの平均計画T50は48,600時間であった。
【0168】
概要および実施例において上で述べた作業のすべてが必要であるわけではないこと、特定作業の一部は必要ではないことがあること、また説明したものに加えて1つまたは複数の更なる作業が実行されうることに留意されたい。またさらに、列挙されている作業の順序は、必ずしもそれらが実行される順序ではない。
【0169】
上記の明細書により、各概念が特定の実施形態に関連して説明された。しかし、以下の請求項に記載した本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正および変更を行うことができることは、当業者により理解される。したがって、明細書および図は、制限的な意味ではなく例示的なものと見なすべきであり、そのような修正はすべて本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0170】
上記において、便益、他の利点、および問題の解決法は、特定の実施形態に関連して説明されている。しかし、便益、利点、問題の解決法、ならびにいずれかの便益、利点、または解決法をもたらしうるかまたはより顕著なものにしうるどの特徴も、いずれかまたはすべての請求項の重要な特徴、必須の特徴、または基本的特徴と解釈すべきではない。
【0171】
明快にするために別々の実施形態の文脈において本明細書で説明されている特定の複数の特徴を、1つの実施形態で兼ね備えさせることもできることを理解すべきである。その逆に、簡潔にするために1つの実施形態の文脈で説明されている様々な特徴を、別個に、あるいは任意の副次的な組合せで備えさせることもできる。さらに、範囲内に示されている値に言及する場合、それはその範囲内の各値およびすべての値を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iまたは式II:
II:
【化1】

[式中、
Ar1は、芳香族電子輸送基であり;
Ar2は、アリール基および芳香族電子輸送基からなる群から選択され;ならびに
1およびR2はそれぞれの出現において同一または異なっていて、H、Dおよびアリールからなる群から選択される]
を有するインドロカルバゾール化合物であって、
前記化合物が少なくとも1個のDを有する、インドロカルバゾール化合物。
【請求項2】
少なくとも10%が重水素化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
少なくとも50%が重水素化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
100%が重水素化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Ar1が窒素含有ヘテロ芳香族基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記窒素含有ヘテロ芳香族基が、
【化2】

【化3】

[式中、
Ar3はアリール基であり;
3は、それぞれの出現において同一または異なっていて、D、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択され;
aは、0〜4の整数であり;
bは、0〜3の整数であり;
cは、0〜2の整数であり;
dは、0〜5の整数であり;および
eは0または1である]
からなる群から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
3がDおよびアリールから選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Ar2の少なくとも1つが、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、フェニルナフチレン、ナフチルフェニレン、これらの重水素化誘導体、および式III:
【化4】

[式中、
4は、それぞれの出現において同一または異なっていて、H、D、アルキル、アルコキシ、シロキサンおよびシリルからなる群から選択されるか、または隣接したR4基が結合して芳香環を形成していてよく;および
mは、それぞれの出現において同一または異なっていて、1〜6の整数である]
を有する基からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
1およびR2がアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
1およびR2がHまたはDである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
化合物H1〜H14から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
基板と、
絶縁層と、
ゲート電極と、
ソース電極と、
ドレイン電極と、
有機半導体層であって、少なくとも1個の重水素置換基を有するインドロカルバゾール化合物を含んでいる有機半導体層と
を含み、
前記絶縁層、前記ゲート電極、前記半導体層、前記ソース電極および前記ドレイン電極は、任意の順序で配置できるが、但し、前記ゲート電極と前記半導体層の両方が前記絶縁層と接触し、前記ソース電極と前記ドレイン電極の両方が前記半導体層と接触し、かつ前記電極が互いに接触していないことを条件とする、有機薄膜トランジスター。
【請求項13】
前記インドロカルバゾール化合物が、式Iまたは式II:
II:
【化5】

[式中、
Ar1は、芳香族電子輸送基であり;
Ar2は、アリール基および芳香族電子輸送基からなる群から選択され;ならびに
1およびR2は、それぞれの出現において同一または異なっていて、H、Dおよびアリールからなる群から選択され;
前記化合物が少なくとも1個のDを有する]を有する、請求項12に記載の有機薄膜トランジスター。
【請求項14】
第1電気接触層と第2電気接触層とそれらの間の少なくとも1つの活性層とを含む有機電子デバイスであって、前記活性層が請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物を含む、有機電子デバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−509406(P2013−509406A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536780(P2012−536780)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068976
【国際公開番号】WO2011/059463
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】