説明

電子的な用途のために高分子酸コロイドで作られるポリチオフェンポリマーおよびポリピロールポリマーの有機配合物

ポリピロール、ポリチオフェンまたは混合物から選択される少なくとも1種のポリマーと、少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸と、少なくとも1種の有機液体と、を含む、組成物およびこの組成物の製造方法。新規な組成物は、他の用途の中でも特に電子デバイスの導電性層および半導電性層において有用である。また、このような組成物の製造方法も得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロールまたはチオフェンの導電性ポリマーであって、この導電性ポリマーが高分子酸コロイドの存在下で合成され、さらに有機液体中に分散されるピロールまたはチオフェンの導電性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
電気的な伝導性を持つポリマーが、発光ディスプレイに用いられるエレクトロルミネッセント(「EL」)デバイスの開発をはじめとする、さまざまな有機電子デバイスに用いられている。導電性ポリマーを含む有機発光ダイオード(OLED)などのELデバイスに関しては、このようなデバイスは一般に以下のように構成されている。
アノード/バッファ層/EL材料/カソード
アノードは一般に、透明でなおかつEL材料に正孔を注入する機能を持つものであれば、どのような材料であってもよく、たとえばインジウム/酸化スズ(ITO)などがある。アノードは、ガラスまたはプラスチック製の基板に支持されたものであってもよい。EL材料としては、蛍光染料、蛍光およびリン光発光性金属錯体、共役ポリマー、それらの混合物があげられる。カソードは一般に、EL材料に電子を注入する機能を持つものであれば、(たとえばCaまたはBa)など、どのような材料であってもよい。
【0003】
バッファ層は一般に導電性ポリマーであり、アノードからEL材料層への正孔の注入を容易にするものである。バッファ層は、正孔注入層、正孔輸送層とも呼ばれることがあり、二層構造のアノードの一部とされる場合もある。バッファ層として利用される代表的な導電性ポリマーとしては、ポリアニリンやポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)などのポリジオキシチオフェンがあげられる。
【0004】
これらの材料は、たとえば「ポリチオフェン分散液、その製造ならびに利用」という名称の米国特許公報(特許文献1)に記載されているように、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)などの水溶性の高分子酸の存在下で、アニリンまたはジオキシチオフェンモノマーを水溶液中で重合することによって調製可能なものである。周知のPEDT/PSS材料のひとつに、H.C.スタークゲーエムベーハー(Starck,GmbH)(ドイツ、レバークーゼン)から市販されているバイトロン(Baytron)(登録商標)−Pがある。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,300,575号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 026 152 A1号明細書
【特許文献3】米国特許第3,282,875号明細書
【特許文献4】米国特許第4,358,545号明細書
【特許文献5】米国特許第4,940,525号明細書
【特許文献6】米国特許第4,433,082号明細書
【特許文献7】米国特許第6,150,426号明細書
【特許文献8】国際公開第03/006537号パンフレット
【特許文献9】国際公開第02/02714号パンフレット
【特許文献10】US2001/0019782号明細書
【特許文献11】EP 1191612号明細書
【特許文献12】国際公開第02/15645号パンフレット
【特許文献13】EP 1191614号明細書
【特許文献14】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献15】国際公開第00/70655号パンフレット
【特許文献16】国際公開第01/41512号パンフレット
【特許文献17】米国特許出願第10/669577号明細書
【特許文献18】米国特許出願第10/669494号明細書
【非特許文献1】Current Applied Physics No.2、2002、第339〜343ページ
【非特許文献2】Nature、第166から169ページ、vol.426、2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水溶性高分子スルホン酸を用いて合成した水性導電性ポリマー分散液では、pHレベルが望ましくない低さである。この低いpHが原因で、こうしたバッファ層を含むELデバイスのストレス寿命(stress life)が短くなることがあり、デバイス内での腐食の原因にもなり得る。このため、特性が改善された組成物ならびにこの組成物から得られる層には需要がある。
【0007】
低電圧下で高電流を流すことのできる、電気的な伝導性を持つポリマーには、電界効果トランジスタなどの電子デバイス用の電極としての用途もある。このようなトランジスタでは、電子および/または正孔の電荷キャリアの移動度が高い有機半導電性膜が、ソース電極とドレイン電極との間に存在する。半導電性ポリマー層の反対側にはゲート電極がある。電極としての用途に役立つものとするには、導電性ポリマーまたは半導電性ポリマーのいずれかの再溶解を防ぐべく、導電性ポリマーと、この導電性ポリマーを分散または溶解させるための液体とが、半導電性ポリマーおよび半導電性ポリマー用の溶媒と相性のよいものでなければならない。こうした導電性ポリマーを用いて製造した電極の電気伝導度は、10S/cm(Sはオームの逆数である)を上回る値でなければならない。しかしながら、高分子酸から作られる電気的な伝導性を持つポリチオフェンは一般に、導電率が約10−3S/cmまたはこれ未満の範囲である。導電率を上げるには、導電性添加剤をポリマーに加えればよい。しかしながら、このような添加剤を含むようにすると、電気的な伝導性を持つポリチオフェンの加工性に悪影響がおよぶ可能性がある。このため、改良をほどこした導電性ポリチオフェンには需要がある。
【0008】
物性および電気特性が改善された導電性ポリマー組成物には、依然として需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくとも1種のポリピロール、少なくとも1種のポリチオフェンまたはそのようなポリマー2種類の混合物から選択される少なくとも1種のポリマーと、少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸と、少なくとも1種の有機液体と、を含む、新規な組成物が得られる。
【0010】
この新規な発明の組成物は、たとえばさまざまな有機電子デバイスでの有機電子デバイスの電気的活性層において、また有機発光ダイオード(OLED)のバッファ層として有用である。
【0011】
もうひとつの実施形態では、
ピロールモノマーと、チオフェンモノマーと、それらの混合物と、から選択される少なくとも1種のモノマーを、少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸の存在下、水性液媒中で重合させて、水性分散液を形成する工程、
一定量の水性液媒を水性分散液から除去して部分的に乾燥させた固体を形成する工程、および
該部分的に乾燥させた固体を有機液体中に分散させる工程を含む、このような新規な組成物を生成するための方法が得られる。
【0012】
もうひとつの実施形態では、新規な組成物から作られる層を少なくとも一層含む電子デバイスが得られる。
【0013】
上記の概要説明ならびに以下の詳細な説明は一例の説明的なものにすぎず、添付の特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
【0014】
本発明について例をあげて示すが、これは添付の図面に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ポリピロールと、ポリチオフェンと、そのようなポリマー2種類の混合物と、から選択される少なくとも1種のポリマーと、少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸と、少なくとも1種の有機液体とを含む、新規な組成物が得られる。
【0016】
一実施形態において、新規な組成物は、沸点が約100℃を超える有機液体を含む。
【0017】
本発明の一実施形態において、この組成物は、ポリピロール、ポリチオフェン、そのようなポリマーの組み合わせのうちの少なくとも1種から選択されるポリマーと、少なくとも60重量%の有機液体を含む液媒に分散される少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸と、を含む。もうひとつの実施形態では、有機液体は、液媒の80から90重量%である。一実施形態において、新規な組成物は、導電性添加剤と、共分散助剤(co−dispersing agent)と、共酸(co−acid)と、それらの混合物と、から選択される少なくとも1種の材料をさらに含む。
【0018】
本願明細書において使用する場合、「分散」という用語は、微細な粒子の懸濁液を含有する連続液媒のことである。本発明によれば、「連続媒質」は、水、水/有機液体混合物または主に有機液体などの水性液体であり得る。本願明細書において使用する場合、「コロイド」という用語は、連続媒質に懸濁された微細な粒子のことであり、前記粒子は粒度がナノメートル規模のものである。本願明細書において使用する場合、「コロイド形成性」という用語は、水溶液中に分散されたときに微細な粒子を形成する物質のことであり、すなわち、「コロイド形成性」高分子酸は水溶性ではない。
【0019】
本願明細書において使用する場合、「アルキル」という用語は、脂肪族炭化水素由来の基のことであり、未置換であっても置換されていてもよい直鎖状の基、分枝状の基、環状基を含む。「ヘテロアルキル」という用語は、アルキル基の1つまたは複数の炭素原子が、窒素、酸素、硫黄などのもうひとつの原子で置換されたアルキル基を意味することを意図したものである。「アルキレン」という用語は、結合点が2ヶ所あるアルキル基のことである。
【0020】
本願明細書において使用する場合、「アルケニル」という用語は、炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有する脂肪族炭化水素由来の基のことであり、未置換であっても置換されていてもよい直鎖状の基、分枝状の基、環状基を含む。「ヘテロアルケニル」という用語は、アルケニル基の1つまたは複数の炭素原子が、窒素、酸素、硫黄などのもうひとつの原子で置換されたアルケニル基を意味することを意図したものである。「アルケニレン」という用語は、結合点が2ヶ所あるアルケニル基のことである。
【0021】
本願明細書において使用する場合、置換基についての以下の用語は、下記に示す式のことである。
「アルコール」:−R−OH
「アミドスルホネート」:−R−C(O)N(R)R−SO
「ベンジル」:−CH−C
「カルボキシレート」:−R−C(O)O−Z
「エーテル」:−R−O−R
「エーテルカルボキシレート」:−R−O−R−C(O)O−Z
「エーテルスルホネート」:−R−O−R−SO
「スルホネート」:−R−SO
「ウレタン」:−R−O−C(O)−N(R
(式中、「R」基はすべて、各出現で同一であるか異なっており、
は、一重結合またはアルキレン基であり、
は、アルキレン基であり、
は、アルキル基であり、
は、水素またはアルキル基であり、
Zは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、N(RまたはRである。)
上記の基はいずれも、さらに未置換であっても置換されていてもよく、どの基も、パーフルオロ基をはじめとして、1つまたは複数の水素で置換されたFを含むものであってもよい。
【0022】
本願明細書において使用する場合、「含む、有する(comprises)」、「含む、有する(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という表現またはその他のバリエーションはいずれも、非排他的な包含をカバーすることを意図したものである。たとえば、列挙した要素を含む(comprises)プロセス、方法、物品または装置は、必ずしもこれらの要素だけに限定されるものではなく、明示的に列挙されていなかったり、これらの方法、物品または装置に固有のものだったりする他の要素も含み得る。さらに、明示的に反対のことを記載しない限り、「または(or)」は包含的orのことであり、排他的orではない。たとえば、以下のうちいずれか1つによって、条件AまたはBが満たされる:Aが真(または存在する)であってBが偽(または存在しない)である、Aが偽(または存在しない)であってBが真(または存在する)である、AとBの両方が真(または存在する)である。
【0023】
また、「a」または「an」を用いるのも、本発明の要素や構成要素について説明するためである。これは単に便宜上のことであり、かつ本発明の全体像を把握してもらう目的でのことである。本説明は、1(つ、個)または少なくとも1(つ、個)を含むとし、単数には複数も含むとして読むべきものである(それ以外のものを意味することが明らかな場合を除く)。
【0024】
新規な組成物での用途を想定したポリピロールは、以下の式Iを有する。
【0025】
【化1】

【0026】
(式I中、
nは少なくとも約4であり、
は、各出現で同一または異なるように独立に選択され、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;または両方のR基が一緒に、3員環、4員環、5員環、6員環または7員環の芳香族環または脂環式環を完成するアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成してもよく、この環は任意選択的に、1個または複数の二価窒素、硫黄または酸素原子を含んでもよく、
は、各出現で同一または異なるように独立に選択され、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アルカノイル、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート、およびウレタンから選択される。)
【0027】
一実施形態において、Rは、各出現で同一であるか異なっており、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート、ウレタン、エポキシ、シラン、シロキサンならびに、スルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シランまたはシロキサン部分のうちの1つまたは複数で置換されたアルキルから独立に選択される。
【0028】
一実施形態において、Rは、水素、アルキルならびに、スルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シランまたはシロキサン部分のうちの1つまたは複数で置換されたアルキルから選択される。
【0029】
一実施形態では、ポリピロールは未置換であり、RおよびRの両方が水素である。
【0030】
一実施形態では、両方のRが一緒に、6員環または7員環の脂環式環を形成し、これがさらに、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート、およびウレタンから選択される基で置換されている。これらの基は、モノマーならびにそこから得られるポリマーの溶解性を改善し得るものである。一実施形態では、両方のRが一緒に6員環または7員環の脂環式環を形成し、これがさらにアルキル基で置換されている。一実施形態では、両方のRが一緒に6員環または7員環の脂環式環を形成し、これがさらに、炭素原子を少なくとも1個有するアルキル基で置換されている。
【0031】
一実施形態では、両方のRが一緒に−O−(CHY)m−O−を形成(式中、mは2または3であり、Yは、各出現で同一であるか異なっており、水素、アルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート、およびウレタンから選択される)する。一実施形態では、少なくとも1個のY基が水素ではない。一実施形態では、少なくとも1個のY基が、少なくとも1個の水素で置換されたFを有する置換基である。一実施形態では、少なくとも1個のY基が過フッ素化されている。一実施形態において、新規な組成物に用いられるポリピロールは、コロイド性高分子酸アニオンによって正の電荷がバランスする、正に荷電した導電性ポリマーである。
【0032】
新規な組成物での用途を想定したポリチオフェンは、以下の式IIを有する。
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、
は、各出現で同一または異なるように独立に選択され、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;または両方のR基が一緒に、3員環、4員環、5員環、6員環または7員環の芳香族環または脂環式環を完成するアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成してもよく、この環は任意選択的に、1個または複数の二価窒素、硫黄または酸素原子を含んでもよく、
nが少なくとも約4である。)
【0035】
一実施形態では、両方のRが一緒に−O−(CHY)m−O−を形成(式中、mは2または3であり、Yは、各出現で同一であるか異なっており、水素、アルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、およびウレタンから選択される)する。一実施形態では、すべてのYが水素である。一実施形態では、ポリチオフェンがポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。一実施形態では、少なくとも1個のY基が水素ではない。一実施形態では、少なくとも1個のY基が、少なくとも1個の水素で置換されたFを有する置換基である。一実施形態では、少なくとも1個のY基が過フッ素化されている。
【0036】
一実施形態において、ポリチオフェンは、ポリ[(スルホン酸−プロピレン−エーテル−メチレン−3,4−ジオキシエチレン)チオフェン]である。一実施形態において、ポリチオフェンは、ポリ[(プロピル−エーテル−エチレン−3,4−ジオキシエチレン)チオフェン]である。
【0037】
新規な組成物に適したポリマーは、ホモポリマーのこともあるし、2つ以上のそれぞれのモノマーからなるコポリマーのこともある。また、この組成物には、1つまたは複数の異なるポリマー、1つまたは複数のコロイド形成性酸をさらに含み得る。
【0038】
本発明を実施するにあたっての用途を想定したコロイド形成性高分子酸は、水に不溶であり、水性媒質に分散されるとコロイドを形成する。この高分子酸は一般に、分子量が約10,000から約4,000,000の範囲のものである。一実施形態において、高分子酸は、分子量が約100,000から約2,000,000のものである。コロイドの粒度は一般に、2ナノメートル(nm)から約140nmの範囲である。一実施形態において、高分子酸コロイドは、粒度が約2nmから約30nmのものである。水に分散させたときにコロイド形成性のものであれば、どのような高分子酸であっても本発明を実施するにあたっての用途に適している。一実施形態において、コロイド形成性高分子酸は高分子スルホン酸である。他の許容可能な高分子酸としては、高分子リン酸、高分子ホスホン酸、高分子カルボン酸、高分子アクリル酸、それらの混合物(高分子スルホン酸を有する混合物を含む)があげられる。もうひとつの実施形態では、高分子スルホン酸がフッ素化されている。さらにもうひとつの実施形態では、コロイド形成性高分子スルホン酸が過フッ素化されている。さらに別の実施形態では、コロイド形成性高分子スルホン酸は、パーフルオロアルキレンスルホン酸である。
【0039】
さらにもうひとつの実施形態では、コロイド形成性高分子酸は、高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマー(「FSAポリマー」)である。「高度にフッ素化された」とは、ポリマー中のハロゲン原子および水素原子の総数のうち、少なくとも約50%、一実施形態では少なくとも約75%、もうひとつの実施形態では少なくとも約90%がフッ素原子であることを意味する。もうひとつの実施形態では、ポリマーが過フッ素化されている。「スルホネート官能基」という用語は、スルホン酸基またはスルホン酸基の塩のことであり、一実施形態では、アルカリ金属またはアンモニウム塩のことである。官能基は、式−SOX(式中、Xは「対イオン」としても知られるカチオンである)で表される。Xは、H、Li、Na、KまたはN(R)(R)(R)(R)であればよく、R、R、R、Rは、同一であるか異なっており、一実施形態では、H、CHまたはCである。一実施形態において、XはHであり、この場合ポリマーは「酸の形態」であると言われる。Xは、Ca++やAl+++などのイオンで表されるように、多価であってもよい。一般にMn+で表される多価対イオンの場合、対イオン1個あたりのスルホネート官能基の数が価数「n」に等しくなることは、当業者には自明である。
【0040】
一実施形態において、FSAポリマーは、繰り返し側鎖が骨格に結合したポリマー骨格を含み、側鎖にカチオン交換基がある。ポリマーには、ホモポリマーまたは2つ以上のモノマーのコポリマーが含まれる。コポリマーは一般に、非官能性モノマーと、後に加水分解させてスルホネート官能基にすることが可能なスルホニルフルオリド基(−SOF)などのカチオン交換基を持つ第2のモノマーまたはその前駆体から形成される。たとえば、第1のフッ素化ビニルモノマーのコポリマーと、スルホニルフルオリド基(−SOF)を有する第2のフッ素化ビニルモノマーとを併用することが可能である。考え得る第1のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、ビニリデンフルオリド、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、それらの組み合わせがあげられる。好ましい第1のモノマーのひとつにTFEがある。
【0041】
一実施形態において、少なくとも1種のモノマーは、ポリマー中に所望の側鎖を提供し得るスルホネート官能基または前駆体基を有するフッ素化ビニルエーテルを含む。必要であれば、エチレン、プロピレン、R’−CH=CH(式中、R’は炭素原子数1から10の過フッ素化アルキル基である)をはじめとする別のモノマーをこれらのポリマーに導入することも可能である。これらのポリマーを、本願明細書でランダムコポリマーと呼ぶタイプのものすなわち、コモノマーの相対濃度を極力一定に維持する重合によって得られるコポリマーとして、ポリマー鎖に沿ったモノマー単位の分散が、その相対濃度と相対的な反応性に応じたものになるようにしてもよい。重合の過程でモノマーの相対濃度を変えて作られる、これよりも少ない(less)ランダムコポリマーも利用できる。(特許文献2)に開示されているものなどの、ブロックコポリマーと呼ばれるタイプのポリマーも利用できる。
【0042】
一実施形態において、本発明において使用するFSAポリマーは、過フッ素化されたものをはじめとする、以下の式で表される高度にフッ素化された炭素骨格および側鎖を含む。
−(O−CFCFR−O−CFCFR’SO
(式中、RおよびR’は独立に、F、Clまたは1から10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0、1または2であり、Xは、H、Li、Na、KまたはN(R1)(R2)(R3)(R4)であり、R1、R2、R3およびR4は、同一であるか異なっており、一実施形態では、H、CHまたはCである。もうひとつの実施形態では、XはHである。上述したように、Xは多価であってもよい。
【0043】
好ましいFSAポリマーとしては、たとえば、米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献4)ならびに米国特許公報(特許文献5)に開示されているポリマーなどがあげられる。好ましいFSAポリマーの一例は、以下の式で表されるパーフルオロカーボンの骨格と側鎖を有する。
−O−CFCF(CF)−O−CFCFSO
(式中、Xは先に定義したとおりである。)このタイプのFSAポリマーは、米国特許公報(特許文献3)に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)と過フッ素化ビニルエーテルCF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCFSOF、パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF)を共重合させた後、スルホニルフルオリド基を加水分解してスルホン酸基に変換し、必要に応じてイオン交換してこれを所望のイオン形態に変換することで製造可能なものである。米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)に開示されているタイプの好ましいポリマーの一例は、側鎖−O−CFCFSOX(式中、Xは先に定義したとおりである)を有する。このポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)と過フッ素化ビニルエーテルCF=CF−O−CFCFSOF、パーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF)とを共重合させた後、加水分解し、さらに必要に応じてイオン交換することで製造可能なものである。
【0044】
本発明において使用するFSAポリマーは、イオン交換率が約33未満である。本件特許出願において、「イオン交換率」または「IXR」は、カチオン交換基に関連してポリマー骨格中の炭素原子数として定義される。約33未満の範囲内で、特定の用途に合わせて必要に応じてIXRを変えることが可能である。ほとんどのポリマーでは、IXRは約3から約33であり、一実施形態では約8から約23である。
【0045】
ポリマーのカチオン交換能は当量(EW)で表されることが多い。本件特許出願の目的で、当量(EW)とは、1当量の水酸化ナトリウムを中和するのに必要な酸の形態のポリマーの重量と定義する。ポリマーがパーフルオロカーボン骨格を持ち、側鎖が−O−CF−CF(CF)−O−CF−CF−SOH(またはその塩)であるスルホネートポリマーの場合、IXR約8から約23に相当する当量の範囲は約750EWから約1500EWである。このポリマーのIXRについては、50IXR+344=EWという式を用いて当量と関連付けることが可能である。側鎖−O−CFCFSOH(またはその塩)を有するポリマーなど、米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)に開示されているスルホネートポリマーでもこれと同じIXR範囲が用いられているが、カチオン交換基を含有するモノマー単位の分子量がそれよりも小さいため、当量はいくぶん小さくなっている。約8から約23という好ましいIXR範囲では、対応する当量の範囲は約575EWから約1325EWになる。このポリマーのIXRについては、50IXR+178=EWという式を用いて当量と関連付けることが可能である。
【0046】
FSAポリマーの合成については周知である。FSAポリマーは、コロイド状の水性分散液として調製可能なものである。また、他の媒質中での分散液の形にすることもでき、媒質一例として、アルコール、テトラヒドロフランなどの水溶性エーテル、水溶性エーテルの混合物、それらの組み合わせがあげられるが、これに限定されるものではない。分散液を作るにあたり、ポリマーを酸の形で用いることが可能である。米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7)および(特許文献8)には、水性アルコール分散液を生成するための方法が開示されている。分散液の生成後、従来技術において周知の方法で、濃度と分散液組成物とを調節することが可能である。
【0047】
一実施形態において、FSAポリマーをはじめとするコロイド形成性高分子酸の水性分散液は、安定したコロイドが形成されるように、粒度が極力小さく、EWが極力小さいものである。
【0048】
FSAポリマーの水性分散液は、ナフィオン(登録商標)分散液として、本願特許出願人(デラウェア州ウィルミントン)から市販されている。
【0049】
一実施形態において、新規な組成物は、ポリチオフェン、ポリピロール、それらの混合物から選択される少なくとも1種のポリマーと、少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸とを含み、組成物の少なくとも相当量の液体部分が少なくとも1種の有機液体である。2つ以上の有機液体の混合物が存在していることも可能である。一実施形態では、液媒中に存在する、水または重合から得られる水/共分散液(co−dispering liquid)の量が、約1から40重量%である。一実施形態では、液媒中に存在する、水または重合からの水/共分散液の量は、約2から20重量%である。
【0050】
新規な組成物に用いられる有機液体は、水に対して混和性のものである。好適な有機液体の例としては、グリコール、グリコールエーテル、アルコール、アルコールエーテル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、アミド、およびそれらの組み合わせがあげられるが、これに限定されるものではない。一実施形態において、有機液体は、沸点が約100℃を超えるものである。一実施形態において、有機液体は、グリコールと、グリコールエーテルと、環状エーテルと、スルホキシドと、アミドと、それらの組み合わせと、から選択される。一実施形態において、有機液体は、N−メチルピロリドンと、エチレングリコールと、ジメチルアセトアミドと、ジメチルホルムアミドと、ジメチルスルホキシドと、それらの組み合わせと、から選択される。
【0051】
この新規な組成物によるポリマーからなる配合物は、まず、水性のコロイド形成性高分子酸分散液の存在下でチオフェンポリマーまたはピロールポリマーを合成して、導電性ポリマー/高分子酸コロイドの安定した水性分散液を形成し、約60から99重量%の水を除去して、新規な組成物の依然として湿った粒子を形成し、導電性ポリマー/高分子酸コロイド粒子を少なくとも1種の有機液体中に再分散させることで生成される。
【0052】
本発明の方法に用いられる導電性ポリマーは一般に、水性のコロイド形成性高分子酸分散液中で、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの酸化剤と触媒の存在下、さらにはピロールの場合は任意選択的に、塩化第二鉄、硫酸第二鉄などの存在下、ピロールモノマーまたはチオフェンモノマーを酸化的に重合して調製される。この酸化重合の結果、たとえば、スルホネートアニオン、カルボキシレートアニオン、アセチレートアニオン、ホスホネートアニオン、ホスフェートアニオン、それらの組み合わせなど、コロイド中に含有される高分子酸の負に荷電した側鎖と電荷がバランスする、正に荷電した導電性高分子性ピロールまたはチオフェンを含有する安定した水性分散液が得られる。
【0053】
少なくとも1種のポリピロール、ポリチオフェンまたはそれらの混合物と、少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸とからなる水性分散液の製造方法は、「モノマー」および酸化剤のうちの少なくとも一方を加えるときに、コロイド形成性高分子酸の少なくとも一部が存在することを条件に、水と、ピロールおよび/またはチオフェンモノマー(以下、特定の新規な組成物に見合ったものとして、個々にまたは集合的に括弧を付記して「モノマー」と表記する)と、コロイド形成性高分子酸と、酸化剤とを、任意の順序で組み合わせ、反応混合物を形成する工程を含む。
【0054】
ピロールモノマーは一般に、以下の式Iaを有する。
【0055】
【化3】

【0056】
(式中、RおよびRは先に定義したとおりである。)
【0057】
チオフェンモノマーは一般に、以下の式IIaを有する。
【0058】
【化4】

【0059】
(式中、Rは先に定義したとおりである。)
【0060】
一実施形態において、新規な組成物の製造方法は、
(a)コロイド形成性高分子酸の水性分散液を提供する工程、
(b)工程(a)の分散液に酸化剤を添加する工程、および
(c)工程(b)の分散液に少なくとも1種の「モノマー」を添加する工程を含む。
【0061】
もうひとつの実施形態では、酸化剤を添加する前にコロイド形成性高分子酸の水性分散液に「モノマー」を加える。その後、酸化剤を添加する上記の工程(b)を実施する。
【0062】
一実施形態では、ポリピロールとポリチオフェンの両方を含む組成物を形成するが、この実施形態を実現するための方法は、少なくとも1種のピロールモノマーの重合を少なくともチオフェンモノマーとは別に行うことを含む。
【0063】
もうひとつの実施形態では、水と「モノマー」との混合物を、一般に「モノマー」約0.5重量%から約4.0重量%の範囲の濃度で形成する。この「モノマー」混合物をコロイド形成性高分子酸の水性分散液に加え、酸化剤を添加する上記の工程(b)を実施する。
【0064】
もうひとつの実施形態において、水性重合分散液には、硫酸第二鉄、塩化第二鉄などの重合触媒を含み得る。この触媒については工程(b)の前に添加する。もうひとつの実施形態では、触媒を酸化剤と一緒に添加する。
【0065】
一実施形態では、重合時であればいつでも共分散液を添加することが可能である。共分散液は、電気的に伝導性の粒子の凝集を抑える目的で加えるものである。一実施形態において、好適な液体としては、グリコール、グリコールエーテル、エーテル、アルコール、アルコールエーテル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、アミド、およびそれらの組み合わせがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0066】
一実施形態において、反応混合物にはさらに、共分散助剤、共酸またはそれらの混合物を含み得る。
【0067】
一実施形態では、反応混合物を連続混合しつつ、添加速度を制御して「モノマー」をディスペンスすることで、コロイド形成性高分子酸粒子と、酸化剤と、触媒とが分散された水性反応混合物と「モノマー」とを組み合わせ、反応混合物中にモノマー−メニスカスを形成する。
【0068】
一実施形態では、反応混合物を連続混合しつつ、添加速度を制御して酸化剤溶液をディスペンスすることで、水にあらかじめ溶解させておいた酸化剤を、コロイド形成性高分子酸粒子と、「モノマー」と、触媒とを含有する水性反応混合物と組み合わせる。
【0069】
一実施形態では、酸化重合反応の際に率を制御してモノマーを消費できるように、反応混合物に対して酸化剤と「モノマー」とを同一または異なる添加速度に制御して別々および同時に加え、最終的に酸化剤が所望の分量になるようにする。
【0070】
一実施形態では、反応混合物にすみやかに溶解させるべくディスペンス機構からのモノマーの添加速度を制御する目的で、使用する材料の分量を考慮して、チオフェンモノマーの制御添加速度を決める。制御しながらの添加によって、重合および酸化化学が均一かつ均等に行われる。ディスペンス機構の例としては、管材、注射器、ピペット、ノズルガン、噴霧器、ホース、パイプなどを使用することがあげられるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、フリットガラス板などの穴のあいた端、あるいは小径管材を上述した機器に取り付けたものを利用して、反応混合物にモノマー−メニスカスを形成する。
【0071】
添加速度は、反応のサイズ、溶液の攪拌速度、ディスペンス機構のオリフィスのディスペンス端の幾何学的形状と数に左右される。一実施形態では、ディスペンス機構のディスペンス端を、水性のコロイド形成性高分子酸を含有する反応混合物中に沈める。たとえば、チオフェンモノマーの添加速度は、水性のコロイド形成性高分子酸組成物約100〜500グラムの反応混合物サイズで、1時間あたり約1〜1000マイクロリットルである。一実施形態では、添加速度は、水性のコロイド形成性高分子酸約500グラムにつき、1時間あたり約5〜100マイクロリットルである。他のサイズ(これよりも大きいか小さい)の反応混合物での添加速度については、適切な方向に正比例的に増減すればよい。
【0072】
重合触媒としては、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、酸化剤よりも酸化電位の高い他の材料、それらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。
【0073】
酸化剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなど(それらの組み合わせを含む)があげられるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、酸化重合によって、コロイド中に含有される高分子酸の負に荷電した側鎖、たとえば、スルホネートアニオン、カルボキシレートアニオン、アセチレートアニオン、ホスフェートアニオン、ホスホネートアニオン、組み合わせなどとで電荷がバランスする、正に荷電した導電性高分子性チオフェンを含有する安定した水性分散液が得られる。
【0074】
一実施形態では、共酸の存在下で重合を実施する。この酸には、HCl、硫酸などの無機酸あるいは、酢酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸などの有機酸が可能である。あるいは、この酸には、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸などの水溶性の高分子酸、あるいは、上述したような第2のコロイド形成性酸が可能である。酸の組み合わせを利用することもできる。
【0075】
共酸については、酸化剤または「モノマー」のうち、最後に加えるものの添加より前であれば、どの時点で反応混合物に添加してもよい。一実施形態では、「モノマー」とコロイド形成性高分子酸よりも前に共酸を加え、酸化剤を最後に加える。一実施形態では、「モノマー」の添加前に共酸を加えた後、コロイド形成性高分子酸を加え、最後に酸化剤を加える。
【0076】
一実施形態では、ポリチオフェン、ポリピロールまたはそれらの混合物のできあがった状態のままの分散液中で、共分散液を共酸と組み合わせる。
【0077】
少なくとも1種のポリピロールと、ポリチオフェンまたはそれらの混合物と、少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸とからなる新規な組成物の製造方法では、「モノマー」に対する酸化剤のモル比が一般に0.1から2.0の範囲であり、一実施形態では、0.4から1.5である。「モノマー」に対するコロイド形成性高分子酸のモル比は一般に、0.2から5の範囲である。一実施形態では、この比は1から4の範囲内である。総固形分量は一般に、重量パーセントで約1.0%から10%の範囲であり、一実施形態では約2%から4.5%の範囲である。反応温度は一般に約4℃から50℃の範囲内であり、一実施形態では約20℃から35℃である。「モノマー」に対する任意の共酸のモル比は約0.05から4である。反応時間は一般に約1から約30時間の範囲内である。
【0078】
ポリチオフェン、ポリピロールまたはそれらの混合物の分散液中の水または水と共分散液を分散液から除去し、依然として湿った(部分的に乾燥した)導電性ポリマー/高分子酸固体を形成する。これについては、蒸発、遠心処理、沈殿、抽出を含むが限定されるものではない従来の適当な手段で実施すればよい。水または水/共分散液混合物の除去量は、除去前の組成物の重量に対して60から99%の範囲内である。一実施形態では、80から98重量%の水を除去する。一実施形態では、固体が実質的に乾燥する時点までは液体を除去しない。
【0079】
次に、部分的に乾燥した導電性ポリマー/高分子酸固体を有機液体に分散させ、導電性ポリマー/高分子酸の有機配合物を生成する。一実施形態では、この有機液体は高沸点液体である。液媒中の固体の量は一般に、1から10重量%の範囲内である。
【0080】
一実施形態において、有機性の好適な高沸点有機液体としては、グリコール、グリコールエーテル、エーテルアルコール、アルコールエーテル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、アミド、およびそれらの組み合わせがあげられるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、この液体は沸点が約100℃を超える。一実施形態では、ポリマー/高分子酸を有機液体中に分散させることで、そこから得られる残留水分の量を最小限にする。一実施形態において、ポリマー/高分子酸から得られる残留水分の量は、印刷技術などの特定の液相成長(liquid depositon)法に、水性ベースの導電性ポリマーコロイド中に溶解または分散された気体が必要な用途では行われることがあるような分散液の脱気の必要性を減らすか効果的になくすことができるほどに少ない。
【0081】
一実施形態では、重合終了時の導電性ポリマー/高分子酸を、少なくとも1種のイオン交換樹脂と接触させ、重合を抑え、不純物を除去し、pHを調節する。これについては、水性分散液中での重合反応終了後に実施してもよいし、有機配合物を処理することも可能である。分解した種、反応副生成物、イオン性不純物、未反応のモノマーを除去し、かつpHを調節するのに適した条件下で、水性分散液を処理することで、所望のpHの安定した水性分散液を生成することができる。一実施形態では、水性分散液を第1のイオン交換樹脂および第2のイオン交換樹脂と任意の順序で接触させる。この水性分散液は、第1および第2のイオン交換樹脂で同時に処理することが可能なものであり、あるいは、一方で処理した後に他方という具合に、これを連続的に処理することも可能である。
【0082】
イオン交換というのは、流体媒質(水性分散液など)中のイオンが、この流体媒質に対して不溶な不動の固体粒子に結合した、同様に荷電したイオンと交換される可逆的な化学反応である。本願明細書で使用する「イオン交換樹脂」という用語は、このような物質すべてのことである。イオン交換用の基が結合するポリマー担体に架橋性があるがゆえに、この樹脂は不溶性となる。イオン交換樹脂はカチオン交換体またはアニオン交換体として分類される。カチオン交換体には、交換に利用できる正に荷電した可動イオンがあり、このイオンは一般にプロトンまたはナトリウムイオンなどの金属イオンである。アニオン交換体には、負に荷電した交換可能なイオンがあり、このイオンは一般に水酸化物イオンである。
【0083】
一実施形態において、第1のイオン交換樹脂は、プロトンまたは金属イオン、一般にはナトリウムイオンの形態をとり得る、カチオンすなわち酸交換樹脂である。第2のイオン交換樹脂は塩基性のアニオン交換樹脂である。酸性の、プロトンを含むカチオン交換樹脂と塩基性のアニオン交換樹脂はいずれも、本発明を実施するにあたっての用途を想定したものである。
【0084】
一実施形態において、酸性のカチオン交換樹脂は、スルホン酸カチオン交換樹脂などの有機酸カチオン交換樹脂である。本発明を実施するにあたっての用途を想定したスルホン酸カチオン交換樹脂としては、たとえば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノール−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、ベンゼン−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、それらの混合物があげられる。もうひとつの実施形態において、酸性のカチオン交換樹脂は、カルボン酸カチオン交換樹脂、アクリル酸カチオン交換樹脂またはリン酸カチオン交換樹脂などの有機酸カチオン交換樹脂である。また、異なるカチオン交換樹脂の混合物を利用することも可能である。多くの場合、塩基性イオン交換樹脂を利用すればpHを所望のレベルに調節することができる。場合によっては、水酸化ナトリウムや水酸化アンモニウムなどの溶液といった塩基性の水溶液を用いて、pHをさらに調節することが可能である。
【0085】
もうひとつの実施形態では、塩基性のアニオン系交換樹脂は第3級アミンアニオン交換樹脂である。本発明を実施するにあたっての用途を想定した第3級アミンアニオン交換樹脂としては、たとえば、第3級アミノ化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、第3級アミノ化架橋スチレンポリマー、第3級アミノ化フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、第3級アミノ化ベンゼン−ホルムアルデヒド樹脂、それらの混合物があげられる。さらに別の実施形態では、塩基性のアニオン系交換樹脂が、第4級アミンアニオン交換樹脂であるか、これらの交換樹脂と他の交換樹脂との混合物である。
【0086】
第1のイオン交換樹脂と第2のイオン交換樹脂については、水性分散液と同時に接触させてもよいし、連続的に接触させてもよい。たとえば、一実施形態では、両方の樹脂を導電性ポリマーの水性分散液に同時に加え、少なくとも約1時間、たとえば約2時間から約20時間、分散液と接触させたままにする。その後、イオン交換樹脂を濾過により分散液から除去すればよい。このとき、比較的大きなイオン交換樹脂粒子が除去され、小さめの分散粒子は通過するようにフィルタのサイズを選択する。理論への拘泥は望まないが、イオン交換樹脂は重合を抑え、イオン性および非イオン性の不純物ならびに大半の未反応モノマーを水性分散液から効果的に除去するものと思われる。さらに、塩基性のアニオン交換および/または酸性のカチオン交換樹脂が酸性の部位を塩基性寄りにするため、結果として分散液のpHが上昇する。通常、導電性ポリマー/高分子酸コロイド1グラムあたり約1から5グラムのイオン交換樹脂を用いる。
【0087】
導電性ポリマー/高分子酸コロイドの有機配合物の導電率は、液媒中の有機液体の量が増えるにつれて高くなる。3S/cmという高い導電率を実現した。一実施形態では、エレクトロクロミックディスプレイ、薄膜トランジスタ、電界効果抵抗デバイス、記憶装置、電磁遮蔽および静電気防止用のコーティングなどの電子的な用途に、これよりも導電率の高い組成物が有用である。
【0088】
導電性ポリマー/高分子酸コロイドの有機配合物の粘度は、液媒中の有機液体の量が増えるにつれて高くなる。表面に材料を適用するようないくつかの方法では、さらに高い粘度が有用となる可能性がある。たとえば、インクジェット印刷では、十分に定義された範囲の粘度が必要になる。この範囲は通常、ポリピロールまたはポリチオフェンおよび高分子酸コロイドの一般的な水性分散液の粘度よりも高い。有機配合物では必要な粘度を実現することが可能である。さらに、いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子を含むまたは含まない導電性ポリマー/高分子酸コロイドが、冷却液の液体用の添加剤として役立つことがあり、その熱容量を増すとともに、このような流体(たとえばエチレングリコール)の電気伝導度に基づいた電気的な測定によって、このような冷却液のフローを監視する機能を改善できることがある。
【0089】
もうひとつの実施形態では、導電性ポリマーおよびコロイド形成性高分子酸の有機配合物に極めて導電性の高い添加剤を加えることで、さらに導電性の高い分散液を形成する。好適な導電性添加剤の例としては、導電性ポリマー、金属粒子およびナノ粒子、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、炭素ナノ粒子、グラファイト繊維または粒子、炭素粒子、それらの組み合わせがあげられるが、これに限定されるものではない。導電性添加剤の分散を容易にする目的で、分散助剤を含有させるようにしてもよい。
【0090】
一実施形態では、新規な組成物を堆積して導電性層または半導電性層を形成し、これを単独で用いるか、電極、電気活性素子、光活性素子または生物活性素子などの他の電気活性材料と併用する。本願明細書において使用する場合の「電気活性素子」、「光活性素子」、「生物活性素子」という用語は、電磁場、電位、太陽エネルギー放射、生体刺激場(biostimulation field)などの刺激に応答して、指定の活性を呈する素子のことである.
【0091】
一実施形態では、新規な組成物を堆積して電子デバイスにバッファ層を形成する。本願明細書で使用する場合の「バッファ層」という用語は、アノードと活性有機物質との間で利用できる導電性層または半導電性層を意味することを意図したものである。バッファ層は、有機電子デバイスの性能を改善または手助けするための他の態様の中でも、下位層の平坦化、正孔輸送、正孔注入、酸素や金属イオンなどの不純物の除去を含むがこれに限定されるものではない、有機電子デバイスで1つまたは複数の機能を果たすと考えられる。
【0092】
一実施形態では、導電性ポリマー/高分子酸コロイドの有機配合物から堆積されるバッファ層が得られる。一実施形態では、バッファ層は、コロイド形成性高分子スルホン酸を含む有機配合物から堆積される。一実施形態では、バッファ層は、フッ素化高分子酸コロイドを含有する有機配合物から堆積される。もうひとつの実施形態では、フッ素化高分子酸コロイドがフッ素化高分子スルホン酸コロイドである。さらにもうひとつの実施形態では、バッファ層が、式Iまたは式IIを有する導電性ポリマーとパーフルオロエチレンスルホン酸コロイドとを含有する有機配合物から堆積される。
【0093】
もうひとつの実施形態では、式Iまたは式IIを有する導電性ポリマー少なくとも1種とコロイド形成性高分子酸少なくとも1種とが他の水溶性材料または分散性材料とブレンドされた有機配合物から堆積されるバッファ層が得られる。材料の最終用途に応じて、添加可能な別の水溶性材料または分散性材料のタイプの例としては、ポリマー、染料、塗布助剤、カーボンナノチューブ、金属ナノワイヤおよびナノ粒子、有機および無機の導電性インクおよびペースト、電荷輸送材料、圧電性酸化物、焦電性酸化物または強誘電性酸化物のナノ粒子またはポリマー、光導電酸化物のナノ粒子またはポリマー、分散助剤、架橋剤、それらの組み合わせがあげられるが、これに限定されるものではない。これらの材料には、単純な分子またはポリマーが可能である。好適な他の水溶性ポリマーまたは分散性ポリマーの例としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(スチレンスルホン酸、上述したようなコロイド形成性高分子酸ならびに、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアミン、ポリピロール、ポリアセチレンなどの導電性ポリマー、それらの組み合わせがあげられるが、これに限定されるものではない。この別の材料については、重合時、重合後、少なくとも1種の高沸点有機液体での組成変更前、組成変更後に加えることが可能である。
【0094】
もうひとつの実施形態では、新規な組成物から生成した導電性層または半導電性層を少なくとも1層含む電子デバイスが得られる。式I(a)または式I(b)を有するポリチオフェン少なくとも1種とコロイド形成性高分子酸少なくとも1種とからなる組成物を含む層を1層または複数層有すると都合がよい場合がある有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射に変換するデバイス(発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイまたはダイオードレーザーなど)、(2)電子的なプロセスで信号を検出するデバイス(光検出器(光導電素子、フォトレジスタ、光スイッチ、フォトトランジスタ、フォトチューブなど)、IR検出器など)、(3)放射を電気エネルギーに変換するデバイス(光起電力デバイスまたは太陽電池など)、(4)1つまたは複数の有機半導電性層を含む電子コンポーネントを1つまたは複数含むデバイス(トランジスタまたはダイオードなど)があげられるが、これに限定されるものではない。新規な組成物の他の用途として、メモリ記憶装置デバイス、静電気防止フィルム、バイオセンサ、エレクトロクロミックデバイス、固体電解質コンデンサ、充電式電池などのエネルギー蓄積装置、電磁遮蔽用のコーティング材があげられる。
【0095】
一実施形態において、有機電子デバイスは、2つの電気接点層間に配置された電気活性層を含み、このデバイスの層のうちの少なくとも1層が新規なバッファ層を含む。アノード層110と、バッファ層120と、エレクトロルミネッセント層130と、カソード層150とを有するデバイスである、図1に示すような一種のOLEDデバイスとして一実施形態を示す。カソード層150に隣接しているのは任意の電子−注入/輸送層140である。バッファ層120とカソード層150(または任意の電子注入/輸送層140)との間には、エレクトロルミネッセント層130がある。
【0096】
一実施形態において、導電性ポリマー/高分子酸コロイドの新規な有機配合物から作られる乾燥後の層は、水に再分散可能なものではない。一実施形態では、新規な組成物を含む層を少なくとも1層含む有機デバイスを、複数の薄層から形成する。一実施形態では、層の機能または有機電子デバイスの性能に実質的に何らダメージを与えることなく、上記の層に、これとは異なる水溶性材料または水分散性材料の層をオーバーコートすることも可能である。
【0097】
このデバイスは、アノード層110またはカソード層150に隣接可能な支持体または基板(図示せず)を含むものであってもよい。最も多くの場合、支持体はアノード層110に隣接している。支持体は可撓性であっても剛性であってもよく、有機であっても無機であってもよい。通常、ガラスまたは可撓性の有機フィルムが支持体として利用される。アノード層110は、正孔を注入するのにカソード層150よりも効率のよい電極である。アノードは、金属、混合金属、合金、金属酸化物または混合酸化物を含有する材料を含み得る。好適な材料としては、第2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)の混合酸化物、第11族元素、第4族、第5族、第6族の元素ならびに、第8族〜第10族の遷移元素があげられる。アノード層110を光を伝達するものにするのであれば、インジウム−スズ−オキサイドなど、第12族元素、第13族元素、第14族元素の混合酸化物を利用してもよい。本願明細書において使用する場合、「混合酸化物」というフレーズは、第2族元素または第12族元素、第13族元素または第14族元素から選択される2つ以上の異なるカチオンを有する酸化物のことである。アノード層110向けの材料のいくつかの非限定的な具体例として、インジウム−スズ−オキサイド(「ITO」)、アルミニウム−スズ−オキサイド、金、銀、銅、ニッケルがあげられるが、これに限定されるものではない。また、アノードは、ポリアニリン、ポリチオフェンまたはポリピロールなどの有機物質を含むものであってもよい。なお、ここでは周期律表の各族に左から右に1〜18の通し番号を付けたIUPACの付番方式に統一して利用する(CRC化学物理ハンドブック、第81版、2000)。
【0098】
アノード層110については、化学気相成長法または物理気相成長法またはスピンコーティングプロセスで形成すればよい。化学気相成長法は、プラズマ化学気相成長法(「PECVD」)または金属有機化学気相成長法(「MOCVD」)として実施できる。物理気相成長法には、イオンビームスパッタリングならびにe−ビーム蒸着法および抵抗蒸着法をはじめとするあらゆる形態のスパッタリングを含み得る。物理気相成長法の具体的な形態としては、rfマグネトロンスパッタリング、誘導結合プラズマ物理気相成長法(「IMP−PVD」)があげられる。これらの蒸着手法は、半導体製造技術分野では周知のものである。
【0099】
通常、アノード層110には、リソグラフィの際にパターンが形成される。このパターンは必要に応じて変更できる。これらの層は、第1の電気接点層材料を塗布する前に、たとえばパターンを形成したマスクまたはレジストを第1の可撓性複合材料バリア構造の上に配置して、パターン状に形成可能なものである。あるいは、オーバーオール層(包括的堆積(blanket deposit)とも呼ばれる)として層を形成した後、たとえば、パターン付きのレジスト層と湿式化学エッチングまたはドライエッチングの手法を利用して、パターンを形成することも可能である。従来技術において周知の他のパターン形成法を利用することも可能である。電子デバイスがアレイ内に配置されている場合は、アノード層110は一般に、長辺が実質的に同一方向に延在する実質的に平行な帯状に形成される。
【0100】
バッファ層120は通常、当業者間で周知の任意の手法で基板に堆積される。
【0101】
エレクトロルミネッセント(EL)層130は一般に、蛍光染料、蛍光およびリン光発光性の金属錯体、共役ポリマー、それらの混合物を含むがこれに限定されるものではない、どのような有機EL材料であってもよい。蛍光染料の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、それらの誘導体ならびにそれらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;ペトロフ(Petrov)ら、公開されたPCT出願の(特許文献9)に開示されているようなフェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子またはフェニルピリミジン配位子とのイリジウム錯体などのシクロメタレート型イリジウムおよび白金エレクトロルミネッセント化合物ならびに、たとえば公開公報(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)に記載されているような有機金属錯体;それらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。電荷キャリーホスト材料と金属錯体とを含むエレクトロルミネッセント発光性層が、トンプソン(Thompson)ら、米国特許公報(特許文献14)ならびに、ブローズ(Burrows)およびトンプソン(Thompson)、公開されたPCT出願の(特許文献15)および(特許文献16)に記載されている。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、それらのコポリマーならびにそれらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。
【0102】
個々にどのような材料を選択するかは、具体的な用途、作業時の電位または他の要因などに左右されることがある。エレクトロルミネッセント有機物質を含有するEL層130については、蒸着、溶液処理手法または熱転写をはじめとする何種類の手法を用いて形成しても構わない。もうひとつの実施形態では、ELポリマー前駆体を形成した後に、一般には熱または他の外部エネルギー源(可視光またはUV光線など)によってポリマーに変換する。
【0103】
任意の層140は、電子注入/輸送の両方を促進する機能を果たすことができ、また、層と層との界面でのクエンチング反応を防ぐ閉じこめ層として働く。具体的には、層140は、電子の移動を促して、任意の層がない場合に層130と150が直接に接触した場合のクエンチング反応が起こる尤度を減らすこともある。任意の層140用の材料の例としては、金属キレート化オキシノイド化合物(Alqなど);フェナントロリンベースの化合物(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DDPA」)、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(「DPA」)など);アゾール化合物(2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(「PBD」など)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(「TAZ」など);他の同様の化合物;またはそれらの任意の組み合わせ1つまたは複数があげられるが、これに限定されるものではない。あるいは、任意の層140が無機で、BaO、LiF、LiOなどを含むものであってもよい。
【0104】
カソード層150は、電子または負の電荷キャリアを注入する上で特に効率のよい電極である。カソード層150は、第1の電気接点層(この場合、アノード層110)よりも仕事関数が小さいものであれば、どのような金属または非金属であってもよい。本願明細書において使用する場合、「よりも仕事関数が小さい」という表現は、仕事関数が約4.4eV以下の材料を意味することを意図したものである。本願明細書において使用する場合、「よりも仕事関数が大きい」とは、仕事関数が少なくとも約4.4eVの材料を意味することを意図したものである。
【0105】
カソード層の材料については、第1族のアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Csなど)、第2族金属(Mg、Ca、Baなど)、第12族金属、ランタニド(Ce、Sm、Euなど)、アクチニド(Th、Uなど)から選択可能である。アルミニウム、インジウム、イットリウムならびにそれらの組み合わせなどの材料も利用できる。カソード層150の材料の非限定的な具体例としては、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユーロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、それらの合金およびそれらの組み合わせがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0106】
カソード層150は通常、化学気相成長法または物理気相成長法で形成される。通常、アノード層110の例で上述したように、カソード層にはパターンが形成される。デバイスがアレイ内にある場合は、カソード層150は、実質的に平行な帯状パターンで形成できるが、このときカソード層の帯の長辺は実質的に同一方向に延在し、かつ、アノード層の帯の長辺に対して実質的に垂直に延在する。(アレイを平面図または上面図で見たときにアノード層の帯がカソード層の帯と交差する)交点には、画素と呼ばれる電子素子が形成される。
【0107】
他の実施形態では、有機電子デバイス内に別の層(単数または複数)を存在させても構わない。たとえば、バッファ層120とEL層130との間に層(図示せず)を設けると、正の電荷輸送、層と層との間のバンドギャップの整合、保護層としての機能などを促進できることがある。同様に、EL層130とカソード層150との間に別の層(図示せず)を設けると、負の電荷輸送、層と層との間のバンドギャップの整合、保護層としての機能などを促進できることがある。従来技術において周知の層を利用することも可能である。また、上述した層はいずれも2つ以上の層で作ることが可能なものである。あるいは、無機アノード層110、バッファ層120、EL層130、カソード層150のうちのいくつかまたはすべてを表面処理し、電荷キャリア輸送効率を高めるようにしてもよい。各構成層にどの材料を用いるかの選択肢については、デバイス効率の高いデバイスを提供する目的と、製造コスト、製造の複雑さ、あるいは潜在的にある他の要因のバランスをみながら判断すればよい。
【0108】
それぞれの層は、好適な厚さであればどのような厚さであってもよい。一実施形態において、無機アノード層110は通常、約500nm以下、たとえば約10〜200nmであり、バッファ層120は通常、約250nm以下、たとえば約50〜200nmであり、EL層130は通常、約1000nm以下、たとえば約50〜80nmであり、任意の層140は通常、約100nm以下、たとえば約20〜80nmであり、カソード層150は通常、約100nm以下、たとえば約1〜50nmである。アノード層110またはカソード層150で少なくともいくらかの光を透過しなければならないときは、このような層の厚さは約100nmを超えないようにするとよい。
【0109】
電子デバイスの用途に応じて、EL層130を、信号で作動される光放出層(発光ダイオードにあるものなど)あるいは、印加電位があるかない状態で輻射エネルギーに応答して信号を生成する材料の層(検出器またはボルタ電池など)とすることが可能である。輻射エネルギーに応答できる電子デバイスの例は、光導電素子、フォトレジスタ、光スイッチ、バイオセンサ、フォトトランジスタおよびフォトチューブ、光電池から選択される。本件明細書を読了後、当業者であれば、各々の用途に適した材料(単数または複数)を選択できよう。発光材料は、添加剤を使用してまたは使用せずに他の材料のマトリクスに分散させておいてもよいし、単独で層を形成するものであってもよい。EL層130は一般に、厚さが約50〜500nmの範囲にある。一実施形態では、EL層130の厚さは約200nm未満である。
【0110】
有機発光ダイオード(OLED)では、カソード150およびアノード110の層からそれぞれEL層130に注入される電子および正孔によって、ポリマー中に負と正に荷電したポラロンが生成される。これらのポラロンは、印加電界の影響で移動し、反対に荷電した種を持つポラロン励起子を形成した後、放射再結合が起こる。これで、通常は約12ボルト未満、多くの場合は約5ボルト以下である、アノードとカソードとの間の十分な電位差をデバイスに印加できる。実際の電位差は、デバイスよりも大きな電子コンポーネントにおけるデバイスの用途に左右されることがある。多くの実施形態では、電子デバイスの動作時、アノード層110を正の電圧に付勢し、カソード層150は実質的に接地電位または0ボルトである。電子デバイスには、電池や他の電源(単数または複数)が回路の一部として電気的に接続されることがあるが、これについては図1には示されていない。
【0111】
一実施形態において、新規な組成物を含むバッファ層では吸湿量が少なくなるため、デバイスの製造工程に含まれる水も少なくなる。また、このように水分量を抑えられることで、デバイスの動作寿命を長くし、腐食を減らすこともできる。
【0112】
2つ以上の異なる発光材料を用いてフルカラーディスプレイまたはエリアカラーディスプレイを製造する場合、それぞれの発光材料の性能を最適化するのに異なるカソード材料が必要だと、製造が複雑になってしまう。ディスプレイ装置は、光を発する複数の画素で構成される。多色デバイスでは、色の違う光を発する少なくとも2種類の異なるタイプの画素がある(サブ画素と呼ばれることもある)。サブ画素は、異なる発光材料で構成される。カソード材料は、すべての発光体で良好なデバイス性能が得られる1種類であるのが極めて望ましい。このようにすることで、デバイス製造の複雑さが最小限に抑えられる。バッファ層を本発明の有機配合物で生成した多色デバイスでは、各色ごとに良好なデバイス性能を維持しつつ、共通のカソードを使用できることがある。カソードは、上述した材料のうちのどの材料からでも製造可能であるが、これをバリウムにして、アルミニウムなどの一層不活性な金属でオーバーコートしてもよい。
【0113】
新規な組成物を含む層を1層または複数層有すると都合がよい場合がある他の有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射に変換するデバイス(発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイまたはダイオードレーザーなど)、(2)電子的なプロセスで信号を検出するデバイス(光検出器(光導電素子、フォトレジスタ、光スイッチ、フォトトランジスタ、フォトチューブなど)、IR検出器など)、(3)放射を電気エネルギーに変換するデバイス(光起電力デバイスまたは太陽電池など)、(4)1つまたは複数の有機半導電性層を含む電子コンポーネントを1つまたは複数含むデバイス(トランジスタまたはダイオードなど)があげられる。新規な組成物の他の用途として、メモリ記憶装置デバイス、バイオセンサ、エレクトロクロミックデバイス、静電気防止用および電磁遮蔽用のコーティング材があげられる。
【0114】
このようなデバイスでは、バッファ層であってもよい層を、水溶液または溶媒から形成する導電性ポリマーの層でさらにオーバーコートすることが可能である。導電性ポリマーは、電荷輸送を促進するとともに、コーティング性も改善する。好適な導電性ポリマーの例としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリジオキシチオフェン/−ポリスチレンスルホン酸、同時係属中の米国特許公報(特許文献17)に開示されているようなポリアニリン/高分子性−酸−コロイド、同時係属中の米国特許公報(特許文献18)に開示されているようなポリチオフェン/高分子性−酸−コロイド、ポリピロール、ポリアセチレン、それらの組み合わせがあげられるが、これに限定されるものではない。このような層を含む組成物には、導電性ポリマーをさらに含んでもよく、染料、カーボンナノチューブ、炭素ナノ粒子、金属ナノワイヤ、金属ナノ粒子、カーボンファイバおよび粒子、グラファイト繊維および粒子、塗布助剤、有機および無機の導電性インクおよびペースト、電荷輸送材料、半導電性または絶縁性無機酸化物粒子、圧電性酸化物、焦電性酸化物または強誘電性酸化物のナノ粒子またはポリマー、光導電酸化物のナノ粒子またはポリマー、分散助剤、架橋剤、それらの組み合わせを含んでもよい。これらの材料は、モノマー重合の前または後および/または少なくとも1種のイオン交換樹脂での処理の前または後に、新規な組成物に添加可能である。
【0115】
本発明のさらに別の実施形態では、ポリピロール、ポリチオフェンまたはそれらの混合物、ポリマー、少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸、少なくとも1種の有機液体を含む組成物から製造した電極を含む薄膜電界効果トランジスタが得られる。一実施形態において、コロイド形成性高分子酸はコロイド形成性高分子スルホン酸を含む。薄膜電界効果トランジスタの電極として使用するには、トランジスタの他のコンポーネントの再溶解が起こらないように新規な組成物を選択しなければならない。導電性ポリマーから製造する薄膜電界効果トランジスタの電極は、導電率が10S/cmを上回るものとする。このため、一実施形態では、金属ナノワイヤ、金属粒子、金属ナノ粒子、カーボンナノチューブ、グラファイト粒子、グラファイト繊維、それらの混合物などの導電エンハンサーを併用して、導電性ポリマーとコロイド形成性高分子スルホン酸の有機配合物から電極を作成する。本発明の組成物は、ゲート電極、ドレイン電極またはソース電極として薄膜電界効果トランジスタに利用できるものである。
【0116】
薄膜電界効果トランジスタは、図2に示すように、一般に以下のようにして製造される。誘電性ポリマーまたは誘電性酸化物の薄膜210には、片側にゲート電極220、反対側にドレイン電極230とソース電極240がある。ドレイン電極とソース電極との間には、有機半導電性膜250が堆積される。ナノワイヤまたはカーボンナノチューブを含有する本発明の水性分散液は、溶液薄膜堆積時に有機ベースの誘電性ポリマーおよび半導電性ポリマーと相性がよいため、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極の用途に理想的である。ポリピロールまたはポリチオフェンとコロイド性パーフルオロエチレンスルホン酸などの本発明の導電性組成物はコロイド性分散液として存在するため、(水溶性高分子スルホン酸を含有する組成物よりも)高電気伝導度での浸透閾値に達するのに必要な導電性フィラーの重量パーセント量が少なくてすむ。
【0117】
もうひとつの実施形態では、式Iまたは式IIを有する導電性ポリマー少なくとも1種とコロイド形成性高分子スルホン酸少なくとも1種とを含む層を含む電界効果抵抗デバイスが得られる。この電界効果抵抗デバイスでは、(非特許文献1)に説明されているように、ゲート電圧のパルスを印加したときに導電性ポリマーフィルムの抵抗が可逆的に変化する。
【0118】
もうひとつの実施形態では、導電性ポリマー/コロイド形成性高分子酸の有機配合物から作成される層を少なくとも1層含むエレクトロクロミックディスプレイが得られる。エレクトロクロミックディスプレイでは、材料の薄膜に電位が印加されたときの色の変化を利用している。一実施形態では、新規な組成物の導電性ポリマー/高分子酸コロイドは、分散液のpHが高く、吸湿率が低く、この分散液から作成した乾燥後の固体フィルムが水非分散性であることから、本件特許出願向けの優れた材料である。
【0119】
本発明のさらに別の実施形態では、導電性ポリマーとコロイド形成性高分子スルホン酸との有機配合物でトップコートしたシリコンチップを含むメモリ記憶装置デバイスが得られる。情報を記録すると、シリコンチップの回路グリッドの特定の地点で電圧が高くなり、これらの地点で導電性ポリマーが破壊されて「0」ビットのデータが生成される。何も起こらなかった地点の導電性ポリマーは導電性のままであり、「1」ビットのデータになる。本発明の導電性ポリマー/高分子酸コロイドの有機配合物は、吸湿率が低く、この分散液から作成した乾燥後の固体フィルムが水非分散性であることから、本件特許出願向けの優れた材料を形成し得る。
【0120】
たとえば、何度も読み出せるが記録は一度だけの(WORM)メモリが従来技術において周知である(非特許文献2)。
【0121】
本発明のもうひとつの実施形態では、導電性ポリマーと高分子酸コロイドとの有機配合物を利用して、バイオセンサ、エレクトロクロミックまたは電磁遮蔽、静電気防止、固体電解質コンデンサ、腐食防止用のコーティングを形成する。
【0122】
以下の非限定的な実施例を参照して、本発明についてさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0123】
(実施例1)
本実施例は、[ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)]/ナフィオン(登録商標)をエチレングリコールで組成変更して、有機配合物である「PEDT/ナフィオン(登録商標)−EG」を生成することと、これが電気伝導度に対しておよぼす影響とについて説明するためのものである。温度を約270℃にしたこと以外は米国特許公報(特許文献7)の実施例1、パート2に記載の手順と同様の手順で、EWが1050のパーフルオロエチレンスルホン酸の25%(w/w)水性コロイド分散液を生成した。この分散液を水で希釈し、重合用に12.5%(w/w)分散液を生成した。
【0124】
電気的に制御したプロペラ式の攪拌パドルを取り付けた500mL容の反応ケトルに、ナフィオン(登録商標)ポリマー分散液63.75g(ナフィオン(登録商標)モノマー単位7.28ミリモル)と、脱イオン水125gと、硫酸第二鉄(アルドリッチ社、カタログ番号307718)45mg(0.087ミリモル)と、37%(w/w)塩酸水溶液(アッシュランドケミカルズ(Ashland Chemicals)、オハイオ州コロンブス;カタログ番号3471440)0.125mL(1.49ミリモル)とを入れ、反応混合物を200RPMで攪拌した。蒸留したばかりの3,4−エチレンジオキシチオフェン(H.C.スターク(Starck)、ドイツ、レバークーゼン)モノマー0.281mL(2.64mmol)を、自動注射器ポンプ上の1mL容の注射器に入れた。この注射器に、反応容器とつながったチューブを取り付け、チューブの端を反応混合物の表面よりも約1インチ下まで沈めた。小さなチューブで注射器から反応容器までをつなぎ、チューブの端が反応混合物よりも約4インチ上にくるようにして、過硫酸ナトリウム(フルカ社、カタログ番号71889)0.69g(2.9ミリモル)を脱イオン水10mLに入れて生成した酸化用溶液を10mL容の注射器に入れた。この注射器を第2の自動注射器ポンプ上においた。0.833mL/hで攪拌した約15分後に酸化用溶液の注入を開始した。酸化用溶液の注入を開始してから約40分後、20μL/時の速度でモノマーの注入を開始した。モノマーの注入を開始してから約30分後、溶液に色が付き始め、無色から明るい青色へ、そして濃い青色へと変化した。モノマーと酸化剤溶液の両方を加え終わるまでに約10時間かかった。重合ならびにモノマーと酸化剤溶液の両方の添加については、いずれも周囲温度で行った。酸化剤のポンプ注入開始から20時間以内で、アキュサイザー(型番780A、パーティクルサイジングシステム(Particle sizing System)、カリフォルニア州サンタバーバラ)で測定した粒度個数は、粒子が0.75μmよりも大きい分散液1mLあたり420万個の粒子であった。反応混合物をさらに3時間40分放置した後、アンバーリスト−15酸交換樹脂7gと、アンバージェット 4400塩基交換樹脂12gと、n−プロパノール42gとを加えた。どちらの交換樹脂も洗浄してから利用した。アンバージェット 4400は、ロームハースカンパニー(米国ペンシルバニア州フィラデルフィア)製の強塩基性第4級アンモニウムゲル樹脂である。アンバーリスト−15は、ロームハースカンパニー製の強いスルホン酸形のマクロレティキュラー樹脂である。樹脂を含有する反応混合物を3時間半攪拌した後、54番のワットマン濾紙2枚で濾過した。粒度個数は、粒子が0.75μmよりも大きい分散液1mLあたり粒子210万個であった。分散液は、沈殿の徴候がまったく認められず、極めて安定していた。pH計で測定した分散液のpHは2.2である。
【0125】
分散液数滴を顕微鏡のスライドガラスにのせ、周囲条件で放置して乾燥させた後、90℃に設定した真空オーブンに入れた。オーブンには、少量の窒素を定期的にポンプで送り込んだ。焼成後、厚さ約4μmの乾燥膜に、平行な線と線との間に約0.15cmずつ間隔をあけて、約0.4cmの垂直平行線を描いた。テンコールインスツルメンツ(米国カリフォルニア州サンノゼ)製のサーフェスプロファイラ(型番アルファ−ステップ500)を用いて膜厚を測定した。続いて、1〜−1ボルトの電圧を印加して、ケースレー2420ソースメーターで周囲温度にて抵抗値を測定した。5つのサンプルの平均導電率は0.1S/cmであった。なお、抵抗値の測定に利用した膜は水に再分散されない点に留意されたい。
【0126】
上記にて生成した分散液25.94gを、15,500rpmの速度に設定したアレグラ(商標)64R遠心装置で4時間遠心処理した。遠心処理後に一番上にあった透明な液体をデカントしたところ、湿った固体6.50gが残っていた。この湿った固体(乾燥固体約0.225gと、水とn−プロパノールとの混合物1.184gとを含有)1.409gを、エチレングリコール(フルカケミカ)14.7732gと混合した。この混合物を磁気攪拌機で攪拌し、なめらかな分散液をすみやかに生成した。組成変更後の分散液には、約1.4%(w/w)のPEDOT/ナフィオン(登録商標)と、91.3%のエチレングリコールとが含まれている。残りの%は主に水/n−プロパノール混合物である。次に、組成変更後の分散液2滴を顕微鏡のスライドガラスに塗り、これを約50℃に設定したホットプレート上に放置してまず空気乾燥させた後、上述したPEDOT/ナフィオン(登録商標)からの膜形成と同時に真空オーブンで焼成した。厚さ約5μmの焼成後の膜の抵抗値を、上述したようにして抵抗について測定した。平均導電率は3.0S/cmであった。エチレングリコールでの組成変更時の導電率から、導電率が300倍に増したことが分かる。導電率は、ドレイン電極、ゲート電極、ソース電極として薄膜トランジスタを応用することが可能になるレベルまで近づいていた。ここでも、組成変更後の乾燥膜が水に再分散されない点に留意されたい。
【0127】
抵抗試験サンプルを水に浸漬したところ、浸漬数日後になっても水への再分散の徴候はまったく認められなかった。このユニークな特性と高い導電率は、メモリ用として有用なものである。
【0128】
(実施例2)
本実施例は、ポリピロール/ナフィオン(登録商標)をジメチルアセトアミドで組成変更して、有機配合物である「PPy/ナフィオン(登録商標)−DMAC」を生成することと、電気伝導度に対する影響とについて説明するためのものである。ナフィオン(登録商標)には実施例1と同じものを用いた。
【0129】
電気的に制御したプロペラ式の攪拌パドルを取り付けた500mL容の反応ケトルに、ナフィオン(登録商標)ポリマー分散液64.6g(ナフィオン(登録商標)モノマー単位7.38ミリモル)と、脱イオン水125gと、硫酸第二鉄(アルドリッチ社、カタログ番号307718)62mgと、37%(w/w)塩酸水溶液(アッシュランドケミカルズ(Ashland Chemicals)、オハイオ州コロンブス;カタログ番号3471440)0.175mL(2.10ミリモル)とを入れた。反応混合物を200RPMで攪拌した。5分間攪拌した後、蒸留したばかりのピロール(Across Organics、カタログ番号157711000)0.253mL(3.58ミリモル)を加えたところ、反応混合物の色が透明から濃い緑に急激に変化した。さらに5分間攪拌した後、過硫酸ナトリウム(フルカ社、カタログ番号71889)1.01g(4.24ミリモル)を脱イオン水10mLに入れた酸化用溶液を、1.0mL/hの速度でゆっくりと注入しはじめた。これについては、チューブの端が反応混合物よりも約4インチ上にくるようにして、小さなチューブで自動注射器ポンプ上の10mL容の注射器から反応容器までをつないで実施した。反応混合物に酸化剤を加えるにつれて、その色が濃い緑から緑色を帯びた茶色へと変化した。酸化剤溶液を加え終わるまでに約10時間かかった。重合ならびに酸化剤溶液の添加については、いずれも周囲温度で行った。添加を終えるまでには、アキュサイザー(型番780A、パーティクルサイジングシステム(Particle sizing System)、カリフォルニア州サンタバーバラ)で測定した粒度個数は、粒子が0.75μmよりも大きい分散液1mLあたり粒子120万個であった。反応混合物をさらに7時間半放置した後、Lewatit Monoplus S100を15gと、Lewatit MP62WSを15gと、n−プロパノール20gとを加えた。Lewatit Monoplus S100は、架橋ポリスチレンイオン交換樹脂のスルホン酸ナトリウムに対する、ピッツバーグにあるバイエル社の商品名である。Lewatit MP62WSは、架橋ポリスチレンの第3級/第4級アミンの遊離塩基/塩化物に対するバイエル社の商品名である。この2種類の樹脂を、まず使用前に脱イオン水で水に色が付かなくなるまで別々に洗浄した。樹脂を含有する反応混合物を4時間半攪拌した後、54番のワットマン濾紙2枚で濾過した。粒度個数は、粒子が0.75μmよりも大きい分散液1mLあたり粒子75万個であった。分散液は、沈殿の徴候がまったく認められず、極めて安定していた。pH計で測定した分散液のpHは5.4であった。窒素を流しながら少量の分散液を乾燥させ、固体のパーセンテージを求めるために固体膜を形成した。これは4.1%であることが分かった。
【0130】
上記にて生成した分散液数滴を顕微鏡のスライドガラスにのせ、周囲条件で放置して乾燥させた後、85℃に設定した真空オーブンに1時間入れておいた。オーブンには、少量の窒素を定期的にポンプで送り込んだ。焼成後、厚さ約8μmの乾燥膜に、2本の平行線の間に約0.15cmずつ間隔をあけて、約0.4cmの垂直平行線を描いた。続いて、1〜−1ボルトの電圧を印加して、周囲温度にて抵抗値を測定した。5つのサンプルの平均導電率は1.0×10−5S/cmであった。なお、抵抗値の測定に利用した膜は水に再分散されない点に留意されたい。
【0131】
上記にて生成した分散液31.86gを、15,500rpmの速度に設定したアレグラ(商標)64R遠心装置で4時間遠心処理した。分散液の量は、PPy/ナフィオン(登録商標)の乾燥固体1.3063gを含有している。遠心処理後に一番上にあった透明な液体の固体%を求め、この透明な液体中の固体量の計算に利用した。湿った固体の重量は1.91gであったが、乾燥固体は0.45gしか含まれていなかった。この湿った固体の一部を実施例3で利用した。
【0132】
湿った固体(乾燥固体約0.18gと、水とn−プロパノールとの混合物0.584gとを含有)0.7638gを、ジメチルアセトアミド(アルドリッチ社、カタログ番号270555)9.234gと混合した。この混合物を磁気攪拌機で攪拌し、なめらかな分散液をすみやかに生成した。組成変更後の分散液には、約1.8%(w/w)のPPy/ナフィオン(登録商標)と92.34%のジメチルアセトアミドとが含まれている。次に、組成変更後の分散液2滴を顕微鏡のスライドガラスに塗り、これを堆積した膜が乾燥するまで50℃に設定した真空オーブンに入れておいた。オーブンには、少量の窒素を定期的にポンプで送り込んだ。続いて温度を85℃まで上げ、1時間焼成した。厚さ約4μmの焼成後の膜の抵抗値を、上述したようにして抵抗について測定した。平均導電率は2.7×10−2S/cmであった。ジメチルアセトアミドでの組成変更時の導電率から、導電率の大きさが3桁大きくなったことが分かる。抵抗試験サンプルを水に浸漬したところ、浸漬数日後になっても水への再分散の徴候はまったく認められなかった。
【0133】
(実施例3)
本実施例は、ポリピロール/ナフィオン(登録商標)をエチレングリコール(EG)で組成変更して、有機配合物である「PPy/ナフィオン(登録商標)−EG」を生成することと、電気伝導度に対する影響とについて説明するためのものである。
【0134】
実施例2で調製した湿った固体(乾燥固体約0.18gと、水とn−プロパノールとの混合物0.584gとを含有)0.7640gを、エチレングリコール(フルカケミカ)9.234gと混合した。この混合物を磁気攪拌機で攪拌し、なめらかな分散液をすみやかに生成した。組成変更後の分散液には、約1.8%(w/w)のPPy/ナフィオン(登録商標)と92.34%のエチレングリコールとが含まれている。次に、組成変更後の分散液2滴を顕微鏡のスライドガラスに塗り、これを堆積した膜が乾燥するまで50℃に設定した真空オーブンに入れておいた。オーブンには、少量の窒素を定期的にポンプで送り込んだ。続いて温度を85℃まで上げ、1時間焼成した。厚さ約4μmの焼成後の膜の抵抗値を、上述したようにして抵抗について測定した。平均導電率は8.5×10−2S/cmであった。エチレンでの組成変更時の導電率から、導電率の大きさがほぼ4桁大きくなったことが分かる。抵抗試験サンプルを水に浸漬したところ、浸漬数日後になっても水への再分散の徴候はまったく認められなかった。
【0135】
(実施例4)
もうひとつの実施例は、PEDOT/ナフィオン(登録商標)の別の調製物とエチレングリコールでの組成変更について説明するためのものである。
【0136】
本実施例で使用する、特許請求の範囲に記載の表現に合う化学名の水性分散液を以下のようにして調製した。H.C.スタークゲーエムベーハー(Starck GmbH)(ドイツ、レバークーゼン)製のバイトロン−M(3,4エチレンジオキシチオフェンの商品名)0.309ml(2.902ミリモル)を、速度175rpmの攪拌機を取り付けた500ml容のジャケット付き三首丸底フラスコ内で、20℃にて1時間、脱イオン水229.12gにあらかじめ溶解させた。次に、DE1021(本願特許出願人(米国デラウェア州ウィルミントン;EW:999g/モル酸)ナフィオン(登録商標)69.52g(ナフィオン(登録商標)モノマー単位8.0ミリモル)をひとまとめにして混合物にした。ナフィオン(登録商標)を加えてすぐに、脱イオン水10gにあらかじめ溶解させた過硫酸ナトリウム0.84g(3.538ミリモル)を反応容器に加えた。さらに、硫酸第二鉄のストック溶液0.95g(7.1ミリモル)を加えた。硫酸第二鉄のストック溶液は、まず硫酸第二鉄水和物(97%、アルドリッチ社のカタログ番号30,771−8)0.0141gを脱イオン水で溶解させて総重量を3.6363gとして生成したものである。循環流体で制御して約20℃で攪拌しながら重合を続けた。13分以内で重合液が青色に変化しはじめた。架橋ポリスチレンのスルホン酸ナトリウムに対する、ペンシルバニア州ピッツバーグにあるバイエル社の商品名であるLewatit(登録商標) S100を11.03gと、架橋ポリスチレンの第3級/第4級アミンの遊離塩基/塩化物に対する、ペンシルバニア州ピッツバーグにあるバイエル社の商品名であるLewatit (登録商標)MP62WSを11.03gとを加えることで、14時間で反応を終了させた。この2種類の樹脂を、まず使用前に脱イオン水で水に色が付かなくなるまで別々に洗浄した。樹脂の処理を約6時間続けた。次に、このようにして得られたスラリーを54番のワットマン濾紙で吸引濾過した。このスラリーは濾紙を極めて短時間で通り抜けた。収率は268gであった。添加した重合成分を基準にした固体%は約2.8%(w/w)であった。コーニングカンパニー(米国ニューヨーク州コーニング)製の315pH/イオン計を用いて水性PEDT/ナフィオン(登録商標)のpHを求めたところ、4.64であった。
【0137】
上記にて生成した分散液数滴を顕微鏡のスライドガラスにのせ、周囲条件で放置して乾燥させた後、90℃に設定した真空オーブンに30分間入れておいた。オーブンには、少量の窒素を定期的にポンプで送り込んだ。焼成後、厚さ約2μmの乾燥膜に、2本の平行線の間に約0.15cmずつ間隔をあけて、約0.4cmの垂直平行線を描いた。続いて、1〜−1ボルトの電圧を印加して、周囲温度にて抵抗値を測定した。5つのサンプルの平均導電率は1.1×10−5S/cmであった。なお、抵抗値の測定に利用した膜は水に再分散されない点に留意されたい。
【0138】
上記にて生成した分散液30gを、15,500rpmの速度に設定したアレグラ(商標)64R遠心装置で10時間遠心処理した。分散液の量は、PPy/ナフィオン(登録商標)の乾燥固体0.84gに相当する。遠心処理後に一番上にあった透明な液体をデカントしたところ、湿った固体7.34gが残っていた。この湿った固体(乾燥固体約0.4gと、水2.55gとを含有)2.95gを、エチレングリコール(フルカケミカ、カタログ番号0370)10.84gと混合した。この混合物を磁気攪拌機で攪拌し、なめらかな分散液をすみやかに生成した。組成変更後の分散液には、約2.9%(w/w)のPEDOT/ナフィオン(登録商標)と、78.6%のエチレングリコールとが含まれている。残りの%は主に水である。膜の形成と抵抗値とを、5%エチレングリコールについて記載する。焼成後、厚さ約4μmの乾燥膜に、2本の平行線の間に約0.152cmの間隔をあけて、約0.4cmの垂直平行線を描いた。続いて、1〜−1ボルトの電圧を印加して、周囲温度にて抵抗値を測定した。5つのサンプルの平均導電率は1.9×10−3S/cmであった。導電率は、PEDOT/ナフィオン(登録商標)で形成した膜の導電率の約2,000倍である。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】新規な組成物の一用途を示すものであり、この例ではバッファ層である、この新規な組成物を含む層を一層有する電子デバイスの断面図である。
【図2】新規な組成物のもうひとつの用途を示すものであり、この新規な組成物を含む電極を有する薄膜電界効果トランジスタの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリピロール、1種のポリチオフェンまたはそれらの混合物から選択されるポリマーと、少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸と、少なくとも1種の有機液体とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
組成物が、液媒に分散される少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸をさらに含み、液媒が少なくとも60重量%の有機液体を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリピロールが、式I
【化1】

を有し、前記ポリチオフェンが、式II
【化2】

(式Iおよび式IIにおいて、
は、各出現で同一または異なるように独立に選択され、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;または両方のR基が一緒に、3員環、4員環、5員環、6員環または7員環の芳香族環または脂環式環を完成するアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成してもよく、この環は任意選択的に、1個または複数の二価窒素、硫黄または酸素原子を含んでもよく、
nは少なくとも4であり、
式Iにおいて、
は、各出現で同一または異なるように独立に選択され、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アルカノイル、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート、およびウレタンから選択される)
を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
が、各出現で同一であるか異なっており、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート、ウレタン、エポキシ、シラン、シロキサン、ならびに、スルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シランまたはシロキサン部分のうちの1つまたは複数で置換されたアルキルから独立に選択されることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
が、水素、アルキル、ならびに、スルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シランまたはシロキサン部分のうちの1つまたは複数で置換されたアルキルから選択されることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマーが式Iを有するポリピロールであり、RおよびRが水素であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
両方のRが一緒に、6員環または7員環の脂環式環を形成し、それが、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート、およびウレタンから選択される基でさらに置換されていることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
ポリマーが式IIを有するポリチオフェンであり、Rが一緒に、−O−(CHY)m−O−(式中、mは2または3であり、Yは、各出現で同一であるか異なっており、水素、アルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート、およびウレタンから選択される)を形成することを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
すべてのYが水素であり、mが2であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記コロイド形成性高分子酸が、高分子スルホン酸、高分子カルボン酸、高分子アクリル酸、高分子リン酸、高分子ホスホン酸、およびそれらの混合物から選択される酸を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
pHが1から8であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、導電性ポリマー、金属粒子、グラファイト繊維、グラファイト粒子、カーボンナノチューブ、炭素ナノ粒子、金属ナノワイヤ、有機導電性インク、有機導電性ペースト、無機導電性インク、無機導電性ペースト、電荷輸送材料、半導電性無機酸化物ナノ粒子、絶縁性無機酸化物ナノ粒子、圧電性酸化物ナノ粒子、圧電性ポリマー、焦電性酸化物ナノ粒子、焦電性ポリマー、強誘電性酸化物ナノ粒子、強誘電性ポリマー、分散助剤、架橋剤、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記高分子スルホン酸がパーフルオロアルキレンスルホン酸を含むことを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ピロール、チオフェンまたはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種のモノマーを、少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸の存在下、水性液媒中で重合させて、水性分散液を形成する工程、
一定量の水性液媒を水性分散液から除去して部分的に乾燥させた固体を形成する工程、および
該部分的に乾燥させた固体を少なくとも1種の高沸点有機液体中に分散させる工程
を含むことを特徴とする組成物の製造方法。
【請求項15】
モノマーおよび酸化剤、触媒または混合物のうちの少なくとも1つを加えるときに、コロイド形成性高分子酸の少なくとも一部が存在することを条件に、水と、ピロール、チオフェンまたはそれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーと、少なくとも1種のコロイド形成性高分子酸と、少なくとも1種の酸化剤、触媒または混合物とを、任意の順序で組み合わせたものを形成することによって重合を行うことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
コロイド形成性高分子酸が、高分子スルホン酸、高分子カルボン酸、高分子アクリル酸、高分子リン酸、高分子ホスホン酸、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ピロールモノマーが式Iaを有し、前記チオフェンモノマーが式IIaを有する
【化3】

(式Iaおよび式IIaにおいて、
は、各出現で同一または異なるように独立に選択され、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;または両方のR基が一緒に、3員環、4員環、5員環、6員環または7員環の芳香族環または脂環式環を完成するアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成してもよく、この環は任意選択的に、1個または複数の二価窒素、硫黄または酸素原子を含んでもよく、
式Iにおいて、
は、各出現で同一または異なるように独立に選択され、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アルカノイル、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、スルホネート、およびウレタンから選択される)
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記有機液体の沸点が少なくとも100℃であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記有機液体が、グリコール、グリコールエーテル、アルコール、アルコールエーテル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、アミド、およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記有機液体が、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項21】
導電性ポリマー、金属粒子、グラファイト繊維、グラファイト粒子、カーボンナノチューブ、炭素ナノ粒子、金属ナノワイヤ、有機導電性インク、有機導電性ペースト、無機導電性インク、無機導電性ペースト、電荷輸送材料、半導電性無機酸化物ナノ粒子、絶縁性無機酸化物ナノ粒子、圧電性酸化物ナノ粒子、圧電性ポリマー、焦電性酸化物ナノ粒子、焦電性ポリマー、強誘電性酸化物ナノ粒子、強誘電性ポリマー、分散助剤、架橋剤、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種を加える工程をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の組成物を含む層を含むことを特徴とする有機電子デバイス。
【請求項23】
前記デバイスが、光センサ、光スイッチ、フォトトランジスタ、光導電素子、フォトレジスタ、バイオセンサ、フォトチューブ、IR検出器、光起電力デバイス、太陽電池、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、薄膜トランジスタ、電磁遮蔽デバイス、フォトダイオード、固体電解質コンデンサ、電界効果抵抗デバイス、メモリ記憶装置デバイス、およびダイオードレーザーから選択されることを特徴とする請求項2に記載の有機電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−529610(P2007−529610A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504066(P2007−504066)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/008764
【国際公開番号】WO2005/090436
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】