電子線応用装置
【課題】回路パターンを有する半導体装置等の検査において、陰影コントラストの強調された像を取得することを可能にし、浅い凹凸の微細な異物等を高感度に検出することを可能にする荷電粒子ビーム検査技術を提供する。
【解決手段】高分解能観察の為に電子光学系の対物レンズに電磁重畳型対物レンズ103を用い、その対物レンズを用いて電子ビームを細く絞り、対物レンズ内にアシスト電極106と左・右検出器110、111を設け、その電子ビームを試料104に照射することで発生する二次電子の速度成分を選別し、さらに方位角成分を選別して検出する。
【解決手段】高分解能観察の為に電子光学系の対物レンズに電磁重畳型対物レンズ103を用い、その対物レンズを用いて電子ビームを細く絞り、対物レンズ内にアシスト電極106と左・右検出器110、111を設け、その電子ビームを試料104に照射することで発生する二次電子の速度成分を選別し、さらに方位角成分を選別して検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や液晶等、微細な回路パターンを有する基板製造技術に係り、特に、荷電粒子ビームにより微細な回路パターンを検査する荷電粒子ビーム検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、ウエハ上にフォトマスクで形成されたパターンをリソグラフィー処理およびエッチング処理により転写する工程を繰り返すことにより製造される。このような製造プロセスにおいて、歩留まりの早期立ち上げ、及び製造プロセスの安定稼働を実現するためには、インラインウエハ検査によって発見した欠陥を迅速に解析し、対策に活用することが必須である。検査結果を迅速に不良対策に結び付けるためには、多数の検出欠陥を高速にレビューし、発生原因別に分類する技術を必要とする。
【0003】
しかし、製造プロセスの微細化に伴い、半導体の製造歩留まりに影響を及ぼす欠陥サイズも微細化している。従来の光学式のレビュー装置では、分解能の不足のために微小な欠陥のレビューと分類が困難となっている。このため、高分解能でレビューが可能なSEM(Scanning Electron Microscope)式のレビュー装置が利用されている。この装置では、微小異物や、スクラッチ等の凹凸を検出するために、横から光を当てたときに生ずる陰影と等価なSEM像による陰影像の取得が重要となっている。
【0004】
このような陰影像を取得する為の一般的原理を、図1を用いて説明する。膜中の異物により生じた凹凸1を電子ビーム2で走査すると、試料上の各照射点で二次粒子3を放出する。ここで、発生する二次粒子3のエネルギーは分布を有しており、比較的エネルギーの低い成分(低速成分)が二次電子(SE)と呼ばれ、比較的エネルギーの高い成分(高速成分)が後方散乱電子(BSE)と呼ばれている。図1の6に矢印で示したように、発生箇所における二次粒子は種々の方向の仰角成分を有している。ここで、発生箇所における二次粒子の仰角とは、照射された一次電子線光軸が法線となるような平面に対して二次粒子の各仰角成分がなす角度を意味する。発生箇所における二次粒子のある仰角成分6に着目すると、右側に放出される二次粒子は検出器4に到達するが、左側に放出される二次粒子は検出器に到達しない。そのため、二次粒子の発生箇所での試料表面の傾斜角度5により検出器4での二次電子検出量が異なる。その結果、検出器で得られる陰影像7には、試料表面の凹凸に応じた陰影コントラストが現れる。
【0005】
特開平8−273569号公報には、電磁重畳型対物レンズを用いた二次荷電粒子の検出光学系において、二次粒子の低速成分(SE)と高速成分(BSE)とを分離検出することにより、試料の測定精度を向上させた荷電粒子ビームカラムに関する発明が開示されている。当該公報に開示された発明においては、二次粒子の低速成分と高速成分の軌道が異なることを利用して、電子源と対物レンズとの間に設けた環状検出器で、内側環状帯でBSEを、外側環状帯でSEを検出することにより分離検出を行っている。外側環状帯は扇形に四分割しており、放出位置における二次電子の方位角の選別が行える為、陰影像の取得が可能となっている。
【0006】
一方、再公表特許WO00/19482号公報には、二次粒子の低角成分と高角成分とを分離検出するための構成が開示されている。当該公報に開示された発明においては、対物レンズ上方に低角成分検出用の二次粒子検出器を設け、当該低角成分用検出器と対物レンズとの間に、発生した二次粒子の低角成分を衝突させるための反射板を配置し、更に、低角成分粒子の衝突により発生した副次粒子をE×B偏向器により低角成分検出用二次粒子検出器に導き、これにより、反射電子の低角成分と二次電子を検出している。反射電子の高角成分については、E×B偏向器の上段(電子源側)に別の高角成分検出用の二次粒子検出器と第2のE×B偏向器を設け、高角成分のみを高角成分用検出器で検出する。
【0007】
また、特開2006−228999号公報には、電子源と対物レンズの間に環状検出器を設け、発生する二次電子の仰角の低角成分と高角成分、さらに方位角成分とを選別して検出する電子顕微鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−273569号公報
【特許文献2】再公表特許WO00/19482号公報
【特許文献3】特開2006−228999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電子線照射により発生する二次粒子は、発生箇所における仰角(低角成分と高角成分)とエネルギー(低速成分と高速成分)とによって、4通り(低角成分かつ低速成分、低角成分かつ高速成分、高角成分かつ低速成分、高角成分かつ高速成分)に種別できることができる。二次粒子のうち、高速成分には、二次粒子の発生箇所の形状に関する情報が多く含まれ、一方、低速成分には、一次ビームの侵入深さに相当する範囲の試料内部の情報(例えば、試料の材質、組成など)が多く含まれている。従って、一次ビーム照射により発生する二次粒子を、低速成分、高速成分に弁別検出して画像を形成できれば、試料の観察上有利である。高速成分により形成される画像は、陰影像と呼ばれることもある。
【0010】
特許文献1から3に記載された従来技術では、いずれも、二次粒子を低角成分と高角成分に分けて分離検出できる構成となっているが、二次粒子に含まれる高速成分のうち、発生箇所における仰角の高角成分が、低速成分とうまく分離できないという課題がある。その結果、高速成分の高仰角成分が陰影像から欠落してしまい、陰影像のコントラスト強度が、本来得られるべき値よりも弱くなってしまうという問題があった。この問題は、凹凸の程度が小さい(浅い)ような形状が陰影像には現れないという問題を引き起こす。
【0011】
更に、弱いコントラストの陰影像しか得ることができないので、画像のS/N比を稼ぐために画像データを何回も積算しなければならず、従って、試料検査ないし計測に必要な画質の画像を、短時間に取得できないという問題もあった。一次ビームの電流値を大きくすればS/Nの大きな画像信号を得ることができるが、電流値を増やせばビーム径が増え、得られる画像の分解能が劣化する。
【0012】
そこで、本発明は、半導体装置や磁気ディスク等、種々の試料検査において、従来よりも陰影コントラストの強調された像を、従来よりも短い時間で取得可能な荷電粒子ビーム検査技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明においては、一次電子線照射により発生する二次粒子の低速成分と高速成分の軌道分離手段を備えることにより、前記の目的を達成する。以下、軌道分離のための基本的原理について説明する。
【0014】
図2は、一次ビーム照射により試料から放出される二次粒子の放出密度のエネルギー分布を示す図である。図中、縦軸は二次粒子の放出密度、横軸は二次粒子の持つエネルギーを示す。二次粒子のエネルギーは、0から一次ビームの照射エネルギー(Vp)までの範囲に分布をもつ。上記放出密度は、低エネルギー側と高エネルギー側にピークを有し、低エネルギー(低速)側のピーク10が二次電子に、高エネルギー(高速)側のピーク11が後方散乱電子にそれぞれ対応する。以後、上記SEのピーク10と上記BSEのピーク11を、それぞれ二次電子の発生箇所における低速成分と高速成分の代表値とする。ここで、図2から分かるように、二次電子の分布も後方散乱電子の分布も、互いに高エネルギー側と低エネルギー側に裾を引くため、二次電子と後方散乱電子とを厳密に分別することは不可能である。よって、以下の説明で「高速成分・低速成分」と言った場合は、図2におけるピーク10または11を主成分として分布する二次粒子を意味するものとする。なお、必要がある場合には「二次電子」あるいは「後方散乱電子」の表現を用いる。
【0015】
図3は、二次電子(SE)と後方散乱電子(BSE)が対物レンズを通過する際に受ける磁場の影響を表すシミュレーション結果であって、磁場によるSE20及びBSE21の回転角と二次粒子の発生箇所における仰角との関係を示す図である。図中、縦軸は回転角、横軸は二次粒子の発生箇所における仰角に対応する。SE20及びBSE2120は特定の方向を向いて試料から放出されるため、発生位置においては、個々のSE20及びBSE2120とはそれぞれ固有の速度ベクトルを有している。この速度ベクトルは、各SE20及びBSE2120の方位各と仰角と及びエネルギーで表現することができる。対物レンズが磁界を利用するレンズである場合、SE20及びBSE2120は対物レンズの磁場内をらせん状に回転しながら通過するが、磁場による回転角は二次粒子のエネルギーに依存して変わる。従って、回転の度合いが大きければ、二次粒子が発生位置で持っている方位角の情報は失われ、各二次粒子毎の方位角成分の分別ができなくなる。図3から、発生位置での仰角が同じ場合、BSE2120よりもSE20の方が回転角は大きいことが分かる。従って、SE像ではBSE像よりも陰影コントラストを強調することが困難である。
【0016】
一方、BSE21は、SEに比べて上記仰角に依存して回転角が変化しないために陰影コントラストを強調することが可能となる。ここで、浅い凹凸、微細異物の観察像のコントラストは一般に小さい。陰影がつくように観察すると浅い凹凸に新たにコントラストが発生し強調することができる。この新たに発生したコントラストが陰影コントラストである。2次粒子の回転角が小さければ、方位各成分に選別することが可能となり陰影コントラストは増大する。したがって、発生箇所における仰角成分の広い範囲の高速成分を方位角成分に選別することにより、陰影コントラストの強調が可能となる。その結果、浅い凹凸、微細異物等を高感度で検出することができる。
【0017】
次に、図4と図5を用いて、二次粒子に含まれる高速成分と低速成分を分離し、かつその分離比率を制御する手法について説明する。
【0018】
図4は、二次粒子の高速成分と低速成分の分離が十分でない電子光学系における二次粒子の軌道を示す図である。簡単のため、電子ビームの光軸33は試料32に対して垂直であるものとする。試料32に対向して電磁重畳型対物レンズ31が設置される。電磁重畳型対物レンズ31は、コイル34と電極35で構成される。試料32と電極35との電位差は、+1kVから+50kVに保たれる。電磁重畳型対物レンズ31を挟んで試料32と反対側に、左反射板36と右反射板37とが設置される。左反射板36と右反射板37の両側には、BSE用の左側検出器42と右側検出器43とが配置されている。図示されていないが、左反射板36と右反射板37の上方には、SE検出用の検出器とが配置されている。左反射板36と右反射板37には負電位が印加され、電極35に対する左反射板36および右反射板37の電位差は、0Vから−50kVである。
【0019】
一次ビーム照射により発生した二次粒子は、電磁重畳型対物レンズ31を通過する際に、電極35の電界により加速される。この際、二次粒子に含まれるSEは、高角・低角成分の両方とも、反射板に設けられた開口を通過する。一方、BSEの低角成分については、光軸からそれた軌道39を通過する。BSEの高角成分については、BSEがもともと持っているエネルギーが大きい(つまり速度が大きい)ため、XY面内方向へ十分移動する前に(つまり横方向へは軌道が広がらずに)反射板の開口を通過してしまう。すなわち、BSEの高角成分が、本来検出されるべきBSE検出器42ないし43では検出されないことになる。SEの低角成分の軌道38が、BSEの高角成分の軌道40と重なってしまうとSEとBSEの分離が不可能となる。
【0020】
一方、左反射板36と右反射板37に衝突したBSEは、左反射板36ないし右反射板37に衝突して再放出二次電子41を発生する。再放出二次電子41は左検出器42と右検出器43で検出されるが、一部の再放出二次電子41は、電極35に引き込まれるため検出されないことがある。
【0021】
以上、従来の電子光学系においては、BSEの仰角の高角成分40と再放出二次電子41の一部が失われた二次粒子が、最終的に各検出器に到達することになる。その結果、左検出器42と右検出器43の信号により形成する画像において、陰影コントラストを強調することができなくなる。
【0022】
図5は、二次粒子の高速成分と低速成分との分離手段、より具体的には、SEとBSEの軌道分離手段を備えた電子光学系内における二次粒子軌道を示す図である。図4と機能が同じ構成要素については説明を省略するが、図5に示される電子光学系においては、SEとBSEの軌道分離手段として、電磁重畳型対物レンズ51と2対の左反射板52と右反射板53との間に一次電子ビームの光軸59を環状に囲むアシスト電極50が設置されている。アシスト電極には、左反射板52と右反射板53とほぼ同電位の電圧が印加される。好ましくは、左反射板52と右反射板53とアシスト電極50間の電圧差ないし電圧変動は±100V以内に保たれる。アシスト電極50は、一次ビームの通過する開口を備えた導体板により構成される。また、BSEの発生箇所における仰角のうち検出が可能な範囲の上限は、上記左反射板52と上記右反射板53との間の光軸上の穴により制限される。ここで、開口の淵にテーパーを設けると、アシスト電極50による電子ビームへの影響(開口部の静電レンズ効果)が抑制され、対物レンズによる集束効率を高めることができる。
【0023】
一次ビーム照射により発生する二次粒子は、対物レンズ底面の電極により上方(一次電子ビームの入射方向と逆の方向)へ加速されるが、図5の電子光学系においては、対物レンズを通過した二次粒子に対して、アシスト電極によりZ方向への減速電界が印加される。この際、BSEのXY面内方向の速度成分は減速されない。その結果、BSEの高角成分56は、反射板の開口部に達する前に十分に横方向へ広がり、よってBSEとSEの低角成分・高角成分の軌道とが分離される。同様に、BSEの低角成分もZ方向の減速電界を受け、XY面内方向に軌道が広がる。従って、反射板へは、BSEの高角成分とは分離された状態で到達する。一方、SEのXY面内方向の速度成分は非常に小さいために、反射板の開口部に達する前に横方向へ広がりにくい。
【0024】
なお、BSEの横方向への広がりは、二次粒子に印加するZ方向の減速電界の大小により制御できる。従って、反射板の開口を通過するBSEの数は、アシスト電極50への供給電圧により制御でき、よって、アシスト電極50を設けることにより、SEとBSEの分離比率まで制御可能となる。以上、図5の電子光学系においては、BSEを左検出器57と右検出器58により検出されるBSEが、図4ではSEと重なるために取りこぼしていた分だけ増加すし、よって陰影コントラストを強調することができる。
【0025】
なお、本例では、一対の左反射板52および右反射板53を、光軸に対して左右対称に配置したが、これに限らず、2種類以上の方位角成分に分離して検出するよう構成してもよい。また、以上の説明では、対物レンズが電磁重畳型である場合を例にして説明したが、それ以外の電磁レンズを用いても原理は同じである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、回路パターンを有する半導体装置等の検査において、陰影コントラストの強調された像を取得することが可能となり、浅い凹凸の微細な異物等を高感度に検出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】陰影像が発生する原理について説明する基本原理図。
【図2】二次粒子の放出密度の二次粒子エネルギー依存性を示す図。
【図3】回転角の二次粒子の発生箇所における仰角依存性を示す図。
【図4】電磁重畳型対物レンズを備えた電子光学カラム内での二次粒子軌道を示す図。
【図5】アシスト電極を搭載した電子光学カラム内での二次粒子軌道を示す図。
【図6】実施例1の電子線応用装置の内部構成を示す図。
【図7】アシスト電極電源と対物レンズ下部電極制御電源の電源制御テーブルの構成図。
【図8】アシスト電極の効果を示す図。
【図9】実施例2の電子線応用装置の内部構成を示す図。
【図10】実施例3の電子線応用装置の内部構成を示す図。
【図11】一次ビーム走査範囲と対物下部電極の印加電圧と試料の帯電量との相関図。
【図12】陰影コントラスト/ノイズ比の試料表面の傾斜角度依存性を示す図。
【図13】実施例4の欠陥レビュー装置に搭載される走査電子顕微鏡の内部構成図。
【図14】実施例4の欠陥レビュー装置の全体構成図。
【図15】実施例4の電源制御テーブルとレンズ制御テーブルの構成図。
【図16】実施例5の電子線応用装置の内部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施例1)
本実施例では、走査電子顕微鏡への実施例について説明する。
【0029】
図6には、第1の実施例である荷電粒子ビーム装置の基本構成を示す。本実施例の荷電粒子ビーム装置は、真空筺体125内に形成された電子光学系、その周囲に配置された電子光学系制御装置124、制御電源124に含まれる個々の制御ユニットを制御し、装置全体を統括制御するホストコンピュータ121、制御装置に接続された操作卓122、取得画像を表示されるモニタを備える表示手段123などにより構成される。電子光学系制御装置124は、電子光学系の各構成要素に電流、電圧を供給するための電源ユニットや、各構成要素に対して制御信号を伝送するための信号制御線などにより構成される。
【0030】
電子光学系は、電子ビーム(一次荷電粒子ビーム)100を生成する電子銃101、電子ビーム100を偏向する偏向器102、電子ビーム100を集束する電磁重畳型対物レンズ103、ステージ105上に保持された試料104から放出される二次粒子(二次粒子)を集束発散するアシスト電極106、二次粒子が衝突するための反射部材、当該衝突により再放出される副次粒子(三次粒子)を検出する左検出器110と右検出器111と中央検出器112などにより構成される。アシスト電極106は、電磁重畳型対物レンズ103の上面とほぼ一致する位置に配置されている。また、上記の反射部材は、対物レンズ103と走査偏向器102の間に配置される下段側反射部材と、電子銃101と走査偏向器102との間に配置される上段側反射部材とに分かれており、下段側反射部材は、円錐形状の金属部材により構成され、その円錐面には、二次粒子が衝突するための左衝突面107と右衝突面108とが形成されている。上段側反射部材は、一次ビームの通過開口が形成された円盤状の金属部材により構成され、その底面が二次粒子反射面109を形成している。
【0031】
電子銃101から放出された電子ビーム100は、引き出し電極と加速電極(いずれも図示しないが、電子銃の構成要素)との間に形成される電位差により加速され、電磁重畳型対物レンズ103に達する。電磁重畳型対物レンズ103の下部電極には、電極電源113によって、上記加速電極の電位に対する電位差が正になるような電位が供給されており、電子ビーム100は、加速電極と下部電極との間の電位差によって加速された状態で、下部電極を通過する。一方、ステージ105には、ステージ電源114によって、下部電極との電位差が負になるような電位が印加されており、下部電極を通過した電子ビーム100は、急激に減速され、一次ビームとして試料表面に達する。一次ビーム照射により発生した二次粒子は、極性が負であるため、試料表面と下部電極との間の電位差によって加速され、電磁重畳型対物レンズ103の上面に達する。
【0032】
アシスト電極106の近傍には、アシスト電極電源115から印加される電位により、二次粒子のZ方向への減速電界が形成されている。これにより、アシスト電極106を通過する二次粒子に含まれる高速成分(BSE)は、低速成分とは軌道分離され、反射部材の左衝突面107ないし右衝突面108とに衝突する。左衝突面107ないし右衝突面108には、二次粒子の高速成分の衝突により発生する三次粒子を、左検出器110ないし右検出器111に誘導するための電界形成用の電位が、左電源116と右電源117から電位がそれぞれ供給される。更に、上記左検出器110と上記右検出器111とには、誘導されたBSEを検出器に取り込むための電界形成用電位が、左取り込み電源118と右取り込み電源119がそれぞれ供給される。
【0033】
BSE(厳密には、二次粒子の高速成分)が分離された二次粒子は、上段側反射部材に到達し、二次粒子衝突面109と衝突して三次粒子を発生する。上段側反射部材の側方に配置された中央検出器112の本体には、中央取り込み電源120により引き込み電界が形成されており、上記再放出された三次粒子を強力な電界で検出器内に取り込む。
【0034】
以上説明した基本構成により、二次粒子の高速成分について、高仰角成分と低仰角成分とを弁別検出し、コントラストを強調させた陰影像の取得を上記左検出器と上記右検出器で可能にする。
【0035】
次に、アシスト電極106に供給する電位の制御方法について説明する。本実施例の走査電子顕微鏡は、試料表面の凹凸強調像を表示する動作モード(観察モード)と試料表面の材料の相違に起因するコントラストを強調した画像を表示する動作モード(検査モード)の2つの動作モードで動作できるようになっている。
【0036】
表示手段123の表示画面には、常に、「検査モード」/「観察モード」の2つの切り替えボタンと「帯電除去」というボタンが表示されており、装置ユーザは、操作卓122を介していずれかのボタンを選択できるようになっている。ホストコンピュータ121には、各動作モードに応じた、アシスト電極106及び対物レンズ下部電極に印加されるべき電圧の情報が格納されている。図7には、動作モードに対応する供給電圧を格納したデータテーブルを用いて、各動作モードの制御を行った構成例について示す。図7に示されたデータテーブルには、各動作モードに対応する引数の情報が格納されたビームモード切替条件フィールドと、アシスト電極106および対物レンズ下部電極への印加電圧を格納した電圧設定値フィールドにより構成される。ビームモード切替条件フィールドは、更に大分類フィールドと小分類フィールドに別れ、それぞれ「検査モード」、「観察モード」、「通常モード」、「帯電モード」に対応する引数の情報が格納されている。「電圧設定値フィールド」には、大分類フィールドと小分類フィールドに格納された引数情報の組合せにより構成される各条件に対応するアシスト電極106および対物レンズ下部電極への印加電圧値が格納されている。
【0037】
装置ユーザが、「検査モード」のボタンを選択すると、ホストコンピュータ121が、電子光学系制御装置124内の信号接続を制御して、中央検出器112の検出信号を読み出す。ホストコンピュータ121は、画像演算ユニットを備えており、中央検出器112の検出信号をもとに、二次粒子の低速成分像を形成する。形成された画像は、表示手段123に表示される。装置ユーザが、「観測モード」を選択した場合には、ホストコンピュータ121は、左検出器110または右検出器111の検出信号を読み出して画像形成処理を実行し、二次粒子の高速成分像を表示する。また、試料が帯電している場合、表示画像に輝度斑(シェーディング)が現れることがある。シェーディングは、環状検出器の配置が二次粒子の軌道に対して軸対称からずれることにより発生する。一方、本実施例の装置構成では、二次粒子の方位角選別のために、二次粒子検出器を一次電子ビーム光軸に対して軸対称に配置している。試料の帯電により、二次粒子軌道の光軸が、検出器の中心軸から、相対的にずれる場合があり、そのような場合にシェーディングが発生する。
【0038】
シェーディング発生時には、装置動作を帯電除去モードに切り替えることにより、シェーディングを除去することができる。装置ユーザが「帯電除去」ボタンを押すと、アシスト電極106および対物レンズ下部電極への印加電圧が、図7に従って再設定される。これにより、試料の帯電状態に応じた二次粒子検出条件が実現され、シェーディングの除去された画像を得ることができる。
【0039】
以上説明した構成は、本実施例を実現する荷電粒子ビーム装置の最小構成である。例えば、電子ビームの集束を助けるコンデンサレンズやビーム電流を測定するファラデーカップなどを設けても本実施例の機能を達成することができる。また、上記偏向器は、一般に静電型と電磁型のタイプがある。二次粒子放出の発生箇所における方位角を複数に選別して検出するために、左反射板と右反射板を複数に分割し、それぞれの反射板に対して新規の検出器を設けることも可能である。
【0040】
電子銃101と二次粒子反射面109の間にコンデンサレンズを設けることにより、電子ビームの集束を助けることができる。さらにコンデンサレンズを2段として、その間に電流制限絞りを設けると、ビーム電流と対物レンズでのビームの開きを独立に制御できるようになり電子ビームの集束を助けることができる。
【0041】
図8には、本実施例の効果を示すため、左検出器110で検出される二次粒子の仰角成分のエネルギー分布を、アシスト電極がある場合とない場合とで対比して示した。図の縦軸は、左反射板に衝突する二次粒子の仰角成分であり、0度から90度まである。横軸は二次電子のエネルギーであり、0から一次電子ビームの照射エネルギー(Vp)まである。図中、打点によるハッチングを付した部分が、左反射板にあたる二次粒子に相当する。また、横線によるハッチングを付した部分が本実施例で言う「二次粒子の低速成分」に相当するエネルギーの範囲、VCFが、「二次粒子の高速成分」の低エネルギー側の裾にそれぞれ相当する。
【0042】
アシスト電極が無い場合(図8(a))、VCFが、低速成分領域内に存在しており、本来上段側検出器で検出されるべき低エネルギーの二次粒子が、下段側検出器で検出されていることが分かる。一方、アシスト電極がある場合(図8(b))では、VCFが、低速成分領域とは離れた場所に存在しており、下段側検出器で検出された二次粒子には、低速成分の混入が無いことが分かる。
【0043】
以上、本実施例で説明した構成により、二次粒子の高速成分と低速成分との分離の程度が従来よりも高い電子光学系が実現され、その効果は、走査電子顕微鏡を応用した欠陥検査装置や測長装置に適用した場合に特に大きい。
【0044】
(実施例2)
図9は、第2の実施例である荷電粒子ビーム装置の基本構成を示す。本実施例の荷電粒子ビーム装置は、反射部材を持たない構成であって、実施例1で説明した装置構成に比べて、単純な構成で同じ機能を実現することを目的としたものである。以下、図9に従って装置の各構成を説明するが、動作・機能あるいは配置などが同じ構成要素については説明を省略する。
【0045】
本実施例の荷電粒子ビーム装置は、真空筺体170内に形成された電子光学系、電子光学系制御装置169、装置全体を統括制御するホストコンピュータ166、制御装置に接続された操作卓167、取得画像を表示されるモニタを備える表示手段168、ステージ155などにより構成される。電子光学系制御装置169は、電子光学系の各構成要素に電流、電圧を供給するための電源ユニットや、各構成要素に対して制御信号を伝送するための信号制御線などを含む。電子光学系は、電子ビーム150を生成する電子銃151、試料154上に電子ビームを走査する走査偏向器152、電磁重畳型対物レンズ153、試料154から放出される二次粒子を集束発散するアシスト電極156、二次粒子が衝突する左検出器157と右検出器158と中央検出器159とにより構成される。
【0046】
電磁重畳型対物レンズ153は、一次ビーム光軸に磁界を漏洩させる為の磁極と、磁極に磁界を発生させるための励磁コイル、対物レンズ底面に配置された下部電極とを備える。電極電源160から下部電極に電位が供給され、その結果発生する電界により電子ビーム150と二次粒子が加速される。ステージ155には、ステージ電源161からリターディング電位が供給され、当該電位により二次粒子が加速される。アシスト電極電源162は、アシスト電極156にBSE減速電界形成用の電位を供給する。左検出器157と右検出器158と中央検出器159では、左取り込み電源163と右取り込み電源164と中央取り込み電源165により、二次粒子をそれぞれの検出器内に取り込む。本実施例の装置は、反射部材を持たないため、実施例1の装置における左衝突面107と右衝突面108がない。よって実施例1の装置と比較して、左検出器157と右検出器158の電位が相対的に高くなりやすいため、実施例1の装置よりもアシスト電極156の電位の絶対値を高くする必要がある。
【0047】
かかる基本構成により、二次粒子放出の発生箇所における速度成分と方位角を選別して検出し、コントラストを強調させた陰影像の取得を上記左検出器と上記右検出器で可能にする。
【0048】
上記基本構成は、本実施例を実現する荷電粒子ビーム装置の最小構成である。例えば、電子ビームの集束を助けるコンデンサレンズやビーム電流を測定するファラデーカップなどを設けても、本実施例の機能を達成することができる。また、上記偏向器は電磁型よりも静電型のタイプの方が使いやすい。これは、静電型は小型であることと二次粒子の軌道への影響が少ないために検出器をスペースのある電子銃側に配置しやすい。二次粒子放出の発生箇所における方位角を複数に選別して検出するために、左検出器と右検出器を複数の検出器に分割しなおすことも可能である。
【0049】
(実施例3)
図10に、本実施例の第3の実施例である荷電粒子ビーム装置の基本構成を示す。本実施例の荷電粒子ビーム装置は、反射部材に加えてE×B偏向器を供え、かつSEとBSEとの軌道分離手段として、アシスト電極に換えて磁極を用いた装置構成である。以下、図10に従って装置の各構成を説明するが、動作・機能あるいは配置などが実施例1と同じ構成要素については説明を省略する。
【0050】
本実施例の荷電粒子ビーム装置は、真空筺体225内に形成された電子光学系、電子光学系制御装置224、装置全体を統括制御するホストコンピュータ221、制御装置に接続された操作卓222、取得画像を表示されるモニタを備える表示手段223、ステージ205などにより構成される。電子光学系制御装置224は、電子光学系の各構成要素に電流、電圧を供給するための電源ユニットや、各構成要素に対して制御信号を伝送するための信号制御線などを含む。電子光学系は、一次電子ビーム200を生成する電子銃201、一次ビーム照射により発生する二次粒子を一次ビーム光軸から分離するE×B偏向器(ウィーンフィルタ)202、電磁重畳型対物レンズ203、電磁重畳型対物レンズ203の下部電極とE×B偏向器202の間に配置されたアシスト磁場印加装置206、二次粒子が衝突する左衝突面207と右衝突面208を備えた一段目反射部材、当該反射部材に衝突する二次粒子によって発生する三次粒子を検出する左検出器210と右検出器211を備えた下段側検出器、一段目反射部材と電子銃との間に配置される二段目反射部材209、上段側検出器212とにより構成される。なお、図示されてはいないが、図10の電子光学系は、一次ビーム200を走査するための走査偏向器も備えている。
【0051】
一段目反射部材の左衝突面207と右衝突面208には、左電源216及び右電源217から、三次粒子の誘導電界形成用の電力が供給される。上段側検出器、下段側検出器には、左取り込み電源218、右取り込み電源219および中央取り込み電源220から、三次粒子取り込み用の電界形成用の電力が供給される。
【0052】
電磁重畳型対物レンズ203の下部電極には、電極電源213により電子ビーム200と二次粒子の加速電界形成用電力が供給される。ステージ205には、ステージ電源214によりリターディング電界形成用電力が供給される。アシスト磁場印加装置206は、軟磁性材料の磁極とコイルにより構成されており、コイルの励磁電流がアシスト磁場電源215から供給されている。左右の磁極から発生する磁界によりBSEを曲げて、SEとの軌道分離を実現する。磁界を用いることにより、直接XY面内方向の速度成分を加速することが可能となり、SEとの軌道分離が効率的になる。
【0053】
かかる基本構成により、二次粒子放出の発生箇所における速度成分と方位角を選別して検出し、コントラストを強調させた陰影像の取得を左検出器210と右検出器211で可能にする。
【0054】
(実施例4)
本実施例は、欠陥レビュー用の検査装置の構成例について説明する。欠陥レビュー装置においては、試料の帯電により発生するシェーディングが問題となる場合が多い。そこで本実施例では、初めにシェーディングの発生原因について説明する。
【0055】
まず、図11を用いて、試料の帯電とシェーディングの関係について説明する。図11は、電流量を一定にした電子ビームを絶縁物試料に対して照射した場合の、試料の帯電量を示す図である。縦軸は電磁重畳型対物レンズ内の下部電極の電圧Vb(kV)、横軸は電子ビームの走査範囲の長さFOV(μm)である。帯電量は等高線93の高さで示す。電磁重畳型対物レンズにおいては、電極の電圧が高いほど分解能が向上するが、帯電量は増大する。帯電量が増大すると、試料の破壊、二次電子の軌道ずれに起因するシェーディングなどの問題が発生する。このような問題を回避するためには、電磁重畳型対物レンズ内の電極電圧を適宜制御する必要がある。対物レンズ内の電極電圧が変化すると二次電子の軌道も変化するので、陰影像のコントラストを落とさないためには、対物レンズ内の電極電圧制御と同時に、軌道分離手段の制御も行う必要がある。
【0056】
次に、図12を用いて、陰影像のコントラストを落とさないために必要な仰角成分について、定性的に説明する。図12は、陰影コントラストの傾斜角度依存性を示す図である。縦軸は、規格化した陰影コントラストであり、試料表面の傾斜角度5(図1)により平坦な試料表面との間に生じる陰影コントラストを電子ビームの観察像中に含まれるノイズで規格化したものである。横軸は、異物などの凹凸により生じた二次電子の発生箇所における試料表面の傾斜角度5である。凡例70は、BSEの発生箇所における仰角のうち検出が可能な上限値を示す。上記上限値が70度の曲線71は、70度未満の曲線に比べて相対的に陰影コントラストが強い。一方、上記上限値が70度以上の曲線は、図中全域でほぼ重なっている。したがって、BSEの仰角成分のうち90度から70度の成分がSEの軌道と重なり、残りの70度から0度の成分を検出することにより、すべてのBSEを左右分別検出する場合の陰影コントラストとほぼ同等の強度を得ることができる。
【0057】
次に、図13及び図14を用いて、本実施例の欠陥レビュー検査装置の電子光学形の名部構成と全体構成について説明する。本実施例の荷電粒子ビーム装置は、真空筺体328内に形成された電子光学系、その周囲に配置された電子光学系制御装置327、電子光学系制御装置327に含まれる個々の制御ユニットや電源ユニットを制御し、装置全体を統括制御する情報処理装置324、制御装置に接続された操作卓325、取得画像を表示されるモニタを備える表示手段326、試料304を保持するステージ305などにより構成される。電子光学系制御装置327は、電子光学系の各構成要素に電流、電圧を供給するための電源ユニットや、各構成要素に対して制御信号を伝送するための信号制御線などにより構成される。
【0058】
電子光学系は、一次電子ビーム300を生成する電子銃301、一次ビーム照射により発生する二次粒子を一次ビーム光軸から分離するE×B偏向器(ウィーンフィルタ)302、電子ビーム300を集束する電磁重畳型対物レンズ303、電磁重畳型対物レンズ303の上面とほぼ一致する位置に配置されたアシスト電極306、二次粒子が衝突するための第一反射部材、当該衝突により再放出される副次粒子(三次粒子)を検出する左検出器110と左検出器310と右検出器311、第一反射部材の上段側(電子源側)に設けられた第二反射部材309、当該第二反射部材に衝突した二次粒子により生成される副次粒子(三次粒子)を検出する中央検出器312、第1コンデンサレンズ313と第2コンデンサレンズ314とビーム制限絞り315とスティグマ329とアライナ330、電磁重畳型対物レンズ303の下部電極への電圧供給用電源316、試料台にリターディング電位を供給するリターディング電源317、アシスト電極電源318、各検出器に二次粒子の誘導電界を形成する電力を供給する左電源319及び右電源320、左取り込み電源321と右取り込み電源322と中央取り込み電源323などにより構成される。電子銃としては、拡散補給型電子源、冷電界放出型電子源あるいは熱電子放出型電子源などを用いることができる。上記の第一反射部材は円錐形状の金属部材により構成され、その円錐面には、二次粒子が衝突するための左衝突面307と右衝突面308とが形成されている。また、第二反射部材は、一次ビームの通過開口が形成された円盤状の金属部材により構成され、その底面が二次粒子反射面309を形成する。反射部材を複数に分割し、分割された複数の反射部材に応じて検出器を設けることも可能である。これにより、二次粒子の方位角をより細かく弁別することができる。また、第1コンデンサレンズ313と第2コンデンサレンズ314とビーム制限絞り315により、ビーム電流を切り替えることができる。本実施例ではE×B偏向器(ウィーンフィルタ)302を搭載することにより、二次粒子を効率的に収集することがきる。さらに、第1コンデンサレンズ313と第2コンデンサレンズ314の間にビーム制限絞り315を設けることにより、ビーム電流の制御と電磁重畳型対物レンズ303での一次電子ビーム300の広がりの制御を独立に制御することができる。その結果、本実施例の装置は、他実施例の装置と比較して、各ビーム電流で最も効率よく一次電子ビーム300を集束することできる。
【0059】
図14には、本実施例の欠陥レビューシステムの全体構成を示した。本実施例の欠陥レビューシステムは、情報処理装置324、表示手段326の他、被検査試料である試料基板に対して荷電粒子ビーム装置を照射して二次粒子信号あるいは二次粒子信号に起因する二次元強度分布データを検出する電子光学カラム351、試料基板を格納する試料室、当該試料室内に試料基板を搬送・搬出するための予備室352、格納する試料基板ケース、試料基板ケースから予備室に試料基板を搬送するためのロボット353、などを備え、試料室内の試料基板を自動的に交換することができる。
【0060】
制御装置500は、表示制御部501、電子顕微鏡の各構成ユニットの制御を実行する電子顕微鏡制御部502、表示制御部501で処理される各種表示用データの演算処理を行なう表示データ演算部503などの機能ブロックにより構成される。
【0061】
電子顕微鏡制御部502は、更にビーム走査制御部、カラム制御部、ステージ制御部、真空ポンプ制御部、ロボット制御部などの複数の機能ブロックにより構成されている。ビーム走査制御部は、電子光学カラムのビーム走査を制御し信号を取得する。また、ビーム走査制御部とカラム制御部とステージ制御部とは、同期を取りながら並行して制御を検査完了まで実行する。表示データ演算部503は、レシピ画面のGUI処理などを実行するレシピ制御部、欠陥部の高解像度観察像形成処理、欠陥・異物の抽出、欠陥分類あるいはその他の検査処理を、画像比較や画像解析などの演算処理により実行する画像処理部、画像処理部での欠陥座標抽出処理あるいは他の検査装置から得られた欠陥位置情報を基に一次電子ビームの照射位置を決定し、ステージ制御部に伝送する欠陥座標制御部などにより構成される。以上の機能ブロックは、制御装置500内に設けられた演算手段と、当該演算手段で実行されるソフトウェアと、当該ソフトウェアを格納する記憶手段と、制御命令を発信する手段、および信号を受信する手段により実現される。
【0062】
装置オペレータは、表示制御部を通してレシピ制御部に検査システムの検査レシピを登録する。レシピ制御部は検査レシピに基づき、表示制御部、画像処理部、欠陥座標制御部、ビーム走査制御部、カラム制御部、ステージ制御部、真空ポンプ制御部、ロボット制御部と高速に通信をおこなう。ビーム走査制御部、カラム制御部、ステージ制御部、真空ポンプ制御部、ロボット制御部は、荷電粒子ビーム制御装置との間で制御や信号の通信を行う。表示手段326に設けられた表示画面には、形成画像、観察倍率の切り替えボタン、ビームモードの切り替えボタン、検査レシピ、欠陥の分類結果等の情報が表示される。これにより、オペレータは観察倍率とビームモードとを選択できる。ここで、ビームモードとは、検査モードおよび観測モード(後述)、これらに付随する通常モード及び帯電除去モードにおける一次電子ビーム照射の設定条件のことである。また、上記検査レシピは、検査の目的に合わせて適切に選別・構成される。図14には、検査レシピの設定項目として、欠陥マップ表示ボタン、検出モード/観察モードの切り替えボタン、分類マップ表示ボタンが表示画面上に表示された例を示した。ここで、検出モード/観察モードとは、欠陥・異物の検出に用いる観察像を取得する際の電子光学カラムの動作モードと、欠陥・異物の詳細な観察像を取得する際の電子光学カラムの動作モードのことである。これにより、オペレータは簡便に検査レシピを選択し、レシピ制御部に設定を登録することができる。更にまた、上記表示画面には、欠陥の分類結果が表示され、表示された欠陥画像と分類結果とを対比してオペレータが目視確認できるようになっている。
【0063】
検査レシピに基づき検査が終了すると、試料基板は予備室に搬送され、更に、ロボットにより予備室からケースに搬送する。必要な場合は、次の試料基板の搬送が開始される。上記検査レシピ、取得された観察画像データ及び上記分類結果は、情報処理装置324内の記憶手段に格納され、必要に応じて、検査データとして出力される。
【0064】
図15(A)には、各ビームモードでの電子光学系の各構成要素に対する電源制御値を示す電源制御テーブルである。ここで、電源設定値のVst、Vb、Vc、Vre、Vscは、それぞれ、リターディング電源317(Vst)、下部電極電源316(Vb)、アシスト電極電源318(Vc)、左右の反射部材用電源319,320(Vre)と左右の取り込み電源321,322(Vsc)及び中央取り込み電源323(Vsc)から供給される制御電圧値である。上記電源制御テーブルは情報処理装置324内に格納される。装置オペレータが、画面上に表示されたビームモード切替ボタンないしは操作卓325を介してビームモードを選択すると、情報処理装置324内の演算手段が上記電源制御テーブルを参照し、対応する電源制御値を読み出す。読み出された制御電圧値は、電子光学系制御装置327に伝送され、それに従って各電源ユニットが制御される。帯電が顕著な場合は、帯電モードが選択される。特に、検査モードでの低倍観察(走査範囲が約10μm以上になるような倍率)では、観察モードに比べて帯電電位が高くなりやすいため、帯電モードが使用される場合が多い。
【0065】
図15(B)は、各ビームモードに対応した電子光学系のレンズ設定値が格納されたレンズ設定テーブルである。電源制御テーブルと同様、情報処理装置324内の記憶手段に格納されており、ビームモード切り替え時に、演算手段によって参照され、対物レンズ、スティグマ、アライナの各制御電流値が読み出される。シェーディング発生時の除電モードでは、VstとVb間の電位差を小さくし、VcとVre間の電位差も小さく設定すると良い。読み出された制御電流値は、電子光学系制御装置327に伝送され、それに従って光学系の各構成要素が制御される。
【0066】
以上詳述したように、本実施例の欠陥レビュー装置によれば、回路パターンを有する半導体装置等の検査において、陰影コントラストの強調された像を取得することが可能となり、浅い凹凸の微細な異物等を高感度に検出することが可能となる。それにより、画質確保のための画像積算回数が減り、よって、欠陥検出精度を落とさずに高速な欠陥検出、欠陥レビューが実現される。更には、欠陥分類の精度も向上し、欠陥の原因特定も容易となる。また、本実施例では、電子ビームを用いた欠陥レビュー装置を例にとって説明してきたが、イオンビーム等の荷電粒子ビーム一般を用いた荷電粒子ビーム応用装置に適用しても有効である。
【0067】
(実施例5)
本実施例では、図13に示した電子光学系の変形例について説明する。図16に、本実施例の第5の実施例である荷電粒子ビーム装置の基本構成を示す。なお、以下の説明において、図13の構成と共通する機能・動作については説明を省略する。
【0068】
本実施例の荷電粒子ビーム装置は、電子ビーム400を生成する電子銃401、電子ビーム400を偏向する偏向器402、電子ビーム400を集束する第1コンデンサレンズ421と第2コンデンサレンズ422と電磁重畳型対物レンズ403、試料404を移動させるステージ405、試料404から放出される二次電子を集束発散するアシスト電極406、二次電子が衝突する左反射板407と右反射板408と中央反射板409、上記衝突により再放出される二次電子を検出する左検出器410と右検出器411と中央検出器412、第1コンデンサレンズ421と第2コンデンサレンズ422とにより構成される。
【0069】
電磁重畳型対物レンズ403では、電極電源413により電子ビーム400と二次電子を加速する。ステージ405では、ステージ電源414により電子ビーム400を減速し二次電子を加速する。アシスト電極406では、アシスト電極電源415により上記二次電子を集束発散する。左反射板407では、左電源416により上記再放出される2次電子を左検出器410に誘導し、右反射板408では、右電源417により上記右検出器411に誘導する。左検出器410と右検出器411と中央検出器412では、左取り込み電源418と右取り込み電源419と中央取り込み電源420により上記再放出される二次電子を強力な電界でそれぞれの検出器内に取り込む。
【0070】
かかる基本構成により、二次電子放出の発生箇所における速度成分と方位角を選別して検出し、コントラストを強調させた陰影像の取得を上記左検出器と上記右検出器で可能にする。本実施例では第1コンデンサレンズ421と第2コンデンサレンズ422の間に中央反射板409を設けることにより、ビーム電流の制御のためのビーム制限絞りを兼ねることができる。その結果、電子ビーム400が通過する微細穴を1つ削減でき、各ビーム電流で最も効率よく一次電子ビーム300を集束することできる。
【符号の説明】
【0071】
1…凹凸、2…電子ビーム2、3…二次電子、4…検出器、5…傾斜角度、6…仰角成分、7…陰影像、31…電磁重畳型対物レンズ、32…試料、33…光軸、34…コイル、35…電極、36…左反射板、37…右反射板、38…SEの発生箇所における仰角の低角成分の軌道、39…BSEの低角成分の軌道、40…BSEの仰角の高角成分の軌道、41…再放出二次電子、42…左検出器、43…右検出器、50…アシスト電極、51…電磁重畳型対物レンズ、52…左反射板、53…右反射板、54…SEの発生箇所における仰角の低角成分の軌道、55…BSEの低角成分の軌道、56…BSEの高角成分の軌道、57…左検出器、58…右検出器、59…電子ビームの光軸、80…陰影像検出器、81…SE像検出器、82…電磁重畳型対物レンズ、83…左反射板、84…左反射板、85…BSE、86…SE、87…電子ビームの光軸、88…SE反射板、89…再放出二次電子、100、150、200、300、400…電子ビーム、101、151、201、301、401…電子銃、102、152、202、302、402…走査偏向器、103、153、203、303、403…電磁重畳型対物レンズ、104、154、204、304、404…試料、105、155、205、305、405…ステージ、106、156、206、306、406…アシスト電極、107、207、307、407…左反射板、108、208、308、408…右反射板、109、209、309、409…中央反射板、110、157、210、310、410…左検出器、111、158、211、311、411…右検出器、112、159、212、312、412…中央検出器、113、160、213、316、413…電極電源、114、161、214、317、414…ステージ電源、115、162、215、318、415…アシスト電極電源、116、216、319、416…左電源、117、217、320、417…右電源、118、163、218、321、418…左取り込み電源、119、164、219、322、419…右取り込み電源、120、165、220、323、420…中央取り込み電源、121、166、221、324、423、500…制御装置、122、167、222、325,424…表示画面、123、168、223、326、425…入力システム、313、421…第1コンデンサレンズ、314、422…第2コンデンサレンズ、315…ビーム制限絞り。329…スティグマ、330…アライナ、351…電子光学カラム、352…予備室、353…ロボット、501…表示制御部、502…電子顕微鏡制御部、503…表示データ演算部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や液晶等、微細な回路パターンを有する基板製造技術に係り、特に、荷電粒子ビームにより微細な回路パターンを検査する荷電粒子ビーム検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、ウエハ上にフォトマスクで形成されたパターンをリソグラフィー処理およびエッチング処理により転写する工程を繰り返すことにより製造される。このような製造プロセスにおいて、歩留まりの早期立ち上げ、及び製造プロセスの安定稼働を実現するためには、インラインウエハ検査によって発見した欠陥を迅速に解析し、対策に活用することが必須である。検査結果を迅速に不良対策に結び付けるためには、多数の検出欠陥を高速にレビューし、発生原因別に分類する技術を必要とする。
【0003】
しかし、製造プロセスの微細化に伴い、半導体の製造歩留まりに影響を及ぼす欠陥サイズも微細化している。従来の光学式のレビュー装置では、分解能の不足のために微小な欠陥のレビューと分類が困難となっている。このため、高分解能でレビューが可能なSEM(Scanning Electron Microscope)式のレビュー装置が利用されている。この装置では、微小異物や、スクラッチ等の凹凸を検出するために、横から光を当てたときに生ずる陰影と等価なSEM像による陰影像の取得が重要となっている。
【0004】
このような陰影像を取得する為の一般的原理を、図1を用いて説明する。膜中の異物により生じた凹凸1を電子ビーム2で走査すると、試料上の各照射点で二次粒子3を放出する。ここで、発生する二次粒子3のエネルギーは分布を有しており、比較的エネルギーの低い成分(低速成分)が二次電子(SE)と呼ばれ、比較的エネルギーの高い成分(高速成分)が後方散乱電子(BSE)と呼ばれている。図1の6に矢印で示したように、発生箇所における二次粒子は種々の方向の仰角成分を有している。ここで、発生箇所における二次粒子の仰角とは、照射された一次電子線光軸が法線となるような平面に対して二次粒子の各仰角成分がなす角度を意味する。発生箇所における二次粒子のある仰角成分6に着目すると、右側に放出される二次粒子は検出器4に到達するが、左側に放出される二次粒子は検出器に到達しない。そのため、二次粒子の発生箇所での試料表面の傾斜角度5により検出器4での二次電子検出量が異なる。その結果、検出器で得られる陰影像7には、試料表面の凹凸に応じた陰影コントラストが現れる。
【0005】
特開平8−273569号公報には、電磁重畳型対物レンズを用いた二次荷電粒子の検出光学系において、二次粒子の低速成分(SE)と高速成分(BSE)とを分離検出することにより、試料の測定精度を向上させた荷電粒子ビームカラムに関する発明が開示されている。当該公報に開示された発明においては、二次粒子の低速成分と高速成分の軌道が異なることを利用して、電子源と対物レンズとの間に設けた環状検出器で、内側環状帯でBSEを、外側環状帯でSEを検出することにより分離検出を行っている。外側環状帯は扇形に四分割しており、放出位置における二次電子の方位角の選別が行える為、陰影像の取得が可能となっている。
【0006】
一方、再公表特許WO00/19482号公報には、二次粒子の低角成分と高角成分とを分離検出するための構成が開示されている。当該公報に開示された発明においては、対物レンズ上方に低角成分検出用の二次粒子検出器を設け、当該低角成分用検出器と対物レンズとの間に、発生した二次粒子の低角成分を衝突させるための反射板を配置し、更に、低角成分粒子の衝突により発生した副次粒子をE×B偏向器により低角成分検出用二次粒子検出器に導き、これにより、反射電子の低角成分と二次電子を検出している。反射電子の高角成分については、E×B偏向器の上段(電子源側)に別の高角成分検出用の二次粒子検出器と第2のE×B偏向器を設け、高角成分のみを高角成分用検出器で検出する。
【0007】
また、特開2006−228999号公報には、電子源と対物レンズの間に環状検出器を設け、発生する二次電子の仰角の低角成分と高角成分、さらに方位角成分とを選別して検出する電子顕微鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−273569号公報
【特許文献2】再公表特許WO00/19482号公報
【特許文献3】特開2006−228999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電子線照射により発生する二次粒子は、発生箇所における仰角(低角成分と高角成分)とエネルギー(低速成分と高速成分)とによって、4通り(低角成分かつ低速成分、低角成分かつ高速成分、高角成分かつ低速成分、高角成分かつ高速成分)に種別できることができる。二次粒子のうち、高速成分には、二次粒子の発生箇所の形状に関する情報が多く含まれ、一方、低速成分には、一次ビームの侵入深さに相当する範囲の試料内部の情報(例えば、試料の材質、組成など)が多く含まれている。従って、一次ビーム照射により発生する二次粒子を、低速成分、高速成分に弁別検出して画像を形成できれば、試料の観察上有利である。高速成分により形成される画像は、陰影像と呼ばれることもある。
【0010】
特許文献1から3に記載された従来技術では、いずれも、二次粒子を低角成分と高角成分に分けて分離検出できる構成となっているが、二次粒子に含まれる高速成分のうち、発生箇所における仰角の高角成分が、低速成分とうまく分離できないという課題がある。その結果、高速成分の高仰角成分が陰影像から欠落してしまい、陰影像のコントラスト強度が、本来得られるべき値よりも弱くなってしまうという問題があった。この問題は、凹凸の程度が小さい(浅い)ような形状が陰影像には現れないという問題を引き起こす。
【0011】
更に、弱いコントラストの陰影像しか得ることができないので、画像のS/N比を稼ぐために画像データを何回も積算しなければならず、従って、試料検査ないし計測に必要な画質の画像を、短時間に取得できないという問題もあった。一次ビームの電流値を大きくすればS/Nの大きな画像信号を得ることができるが、電流値を増やせばビーム径が増え、得られる画像の分解能が劣化する。
【0012】
そこで、本発明は、半導体装置や磁気ディスク等、種々の試料検査において、従来よりも陰影コントラストの強調された像を、従来よりも短い時間で取得可能な荷電粒子ビーム検査技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明においては、一次電子線照射により発生する二次粒子の低速成分と高速成分の軌道分離手段を備えることにより、前記の目的を達成する。以下、軌道分離のための基本的原理について説明する。
【0014】
図2は、一次ビーム照射により試料から放出される二次粒子の放出密度のエネルギー分布を示す図である。図中、縦軸は二次粒子の放出密度、横軸は二次粒子の持つエネルギーを示す。二次粒子のエネルギーは、0から一次ビームの照射エネルギー(Vp)までの範囲に分布をもつ。上記放出密度は、低エネルギー側と高エネルギー側にピークを有し、低エネルギー(低速)側のピーク10が二次電子に、高エネルギー(高速)側のピーク11が後方散乱電子にそれぞれ対応する。以後、上記SEのピーク10と上記BSEのピーク11を、それぞれ二次電子の発生箇所における低速成分と高速成分の代表値とする。ここで、図2から分かるように、二次電子の分布も後方散乱電子の分布も、互いに高エネルギー側と低エネルギー側に裾を引くため、二次電子と後方散乱電子とを厳密に分別することは不可能である。よって、以下の説明で「高速成分・低速成分」と言った場合は、図2におけるピーク10または11を主成分として分布する二次粒子を意味するものとする。なお、必要がある場合には「二次電子」あるいは「後方散乱電子」の表現を用いる。
【0015】
図3は、二次電子(SE)と後方散乱電子(BSE)が対物レンズを通過する際に受ける磁場の影響を表すシミュレーション結果であって、磁場によるSE20及びBSE21の回転角と二次粒子の発生箇所における仰角との関係を示す図である。図中、縦軸は回転角、横軸は二次粒子の発生箇所における仰角に対応する。SE20及びBSE2120は特定の方向を向いて試料から放出されるため、発生位置においては、個々のSE20及びBSE2120とはそれぞれ固有の速度ベクトルを有している。この速度ベクトルは、各SE20及びBSE2120の方位各と仰角と及びエネルギーで表現することができる。対物レンズが磁界を利用するレンズである場合、SE20及びBSE2120は対物レンズの磁場内をらせん状に回転しながら通過するが、磁場による回転角は二次粒子のエネルギーに依存して変わる。従って、回転の度合いが大きければ、二次粒子が発生位置で持っている方位角の情報は失われ、各二次粒子毎の方位角成分の分別ができなくなる。図3から、発生位置での仰角が同じ場合、BSE2120よりもSE20の方が回転角は大きいことが分かる。従って、SE像ではBSE像よりも陰影コントラストを強調することが困難である。
【0016】
一方、BSE21は、SEに比べて上記仰角に依存して回転角が変化しないために陰影コントラストを強調することが可能となる。ここで、浅い凹凸、微細異物の観察像のコントラストは一般に小さい。陰影がつくように観察すると浅い凹凸に新たにコントラストが発生し強調することができる。この新たに発生したコントラストが陰影コントラストである。2次粒子の回転角が小さければ、方位各成分に選別することが可能となり陰影コントラストは増大する。したがって、発生箇所における仰角成分の広い範囲の高速成分を方位角成分に選別することにより、陰影コントラストの強調が可能となる。その結果、浅い凹凸、微細異物等を高感度で検出することができる。
【0017】
次に、図4と図5を用いて、二次粒子に含まれる高速成分と低速成分を分離し、かつその分離比率を制御する手法について説明する。
【0018】
図4は、二次粒子の高速成分と低速成分の分離が十分でない電子光学系における二次粒子の軌道を示す図である。簡単のため、電子ビームの光軸33は試料32に対して垂直であるものとする。試料32に対向して電磁重畳型対物レンズ31が設置される。電磁重畳型対物レンズ31は、コイル34と電極35で構成される。試料32と電極35との電位差は、+1kVから+50kVに保たれる。電磁重畳型対物レンズ31を挟んで試料32と反対側に、左反射板36と右反射板37とが設置される。左反射板36と右反射板37の両側には、BSE用の左側検出器42と右側検出器43とが配置されている。図示されていないが、左反射板36と右反射板37の上方には、SE検出用の検出器とが配置されている。左反射板36と右反射板37には負電位が印加され、電極35に対する左反射板36および右反射板37の電位差は、0Vから−50kVである。
【0019】
一次ビーム照射により発生した二次粒子は、電磁重畳型対物レンズ31を通過する際に、電極35の電界により加速される。この際、二次粒子に含まれるSEは、高角・低角成分の両方とも、反射板に設けられた開口を通過する。一方、BSEの低角成分については、光軸からそれた軌道39を通過する。BSEの高角成分については、BSEがもともと持っているエネルギーが大きい(つまり速度が大きい)ため、XY面内方向へ十分移動する前に(つまり横方向へは軌道が広がらずに)反射板の開口を通過してしまう。すなわち、BSEの高角成分が、本来検出されるべきBSE検出器42ないし43では検出されないことになる。SEの低角成分の軌道38が、BSEの高角成分の軌道40と重なってしまうとSEとBSEの分離が不可能となる。
【0020】
一方、左反射板36と右反射板37に衝突したBSEは、左反射板36ないし右反射板37に衝突して再放出二次電子41を発生する。再放出二次電子41は左検出器42と右検出器43で検出されるが、一部の再放出二次電子41は、電極35に引き込まれるため検出されないことがある。
【0021】
以上、従来の電子光学系においては、BSEの仰角の高角成分40と再放出二次電子41の一部が失われた二次粒子が、最終的に各検出器に到達することになる。その結果、左検出器42と右検出器43の信号により形成する画像において、陰影コントラストを強調することができなくなる。
【0022】
図5は、二次粒子の高速成分と低速成分との分離手段、より具体的には、SEとBSEの軌道分離手段を備えた電子光学系内における二次粒子軌道を示す図である。図4と機能が同じ構成要素については説明を省略するが、図5に示される電子光学系においては、SEとBSEの軌道分離手段として、電磁重畳型対物レンズ51と2対の左反射板52と右反射板53との間に一次電子ビームの光軸59を環状に囲むアシスト電極50が設置されている。アシスト電極には、左反射板52と右反射板53とほぼ同電位の電圧が印加される。好ましくは、左反射板52と右反射板53とアシスト電極50間の電圧差ないし電圧変動は±100V以内に保たれる。アシスト電極50は、一次ビームの通過する開口を備えた導体板により構成される。また、BSEの発生箇所における仰角のうち検出が可能な範囲の上限は、上記左反射板52と上記右反射板53との間の光軸上の穴により制限される。ここで、開口の淵にテーパーを設けると、アシスト電極50による電子ビームへの影響(開口部の静電レンズ効果)が抑制され、対物レンズによる集束効率を高めることができる。
【0023】
一次ビーム照射により発生する二次粒子は、対物レンズ底面の電極により上方(一次電子ビームの入射方向と逆の方向)へ加速されるが、図5の電子光学系においては、対物レンズを通過した二次粒子に対して、アシスト電極によりZ方向への減速電界が印加される。この際、BSEのXY面内方向の速度成分は減速されない。その結果、BSEの高角成分56は、反射板の開口部に達する前に十分に横方向へ広がり、よってBSEとSEの低角成分・高角成分の軌道とが分離される。同様に、BSEの低角成分もZ方向の減速電界を受け、XY面内方向に軌道が広がる。従って、反射板へは、BSEの高角成分とは分離された状態で到達する。一方、SEのXY面内方向の速度成分は非常に小さいために、反射板の開口部に達する前に横方向へ広がりにくい。
【0024】
なお、BSEの横方向への広がりは、二次粒子に印加するZ方向の減速電界の大小により制御できる。従って、反射板の開口を通過するBSEの数は、アシスト電極50への供給電圧により制御でき、よって、アシスト電極50を設けることにより、SEとBSEの分離比率まで制御可能となる。以上、図5の電子光学系においては、BSEを左検出器57と右検出器58により検出されるBSEが、図4ではSEと重なるために取りこぼしていた分だけ増加すし、よって陰影コントラストを強調することができる。
【0025】
なお、本例では、一対の左反射板52および右反射板53を、光軸に対して左右対称に配置したが、これに限らず、2種類以上の方位角成分に分離して検出するよう構成してもよい。また、以上の説明では、対物レンズが電磁重畳型である場合を例にして説明したが、それ以外の電磁レンズを用いても原理は同じである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、回路パターンを有する半導体装置等の検査において、陰影コントラストの強調された像を取得することが可能となり、浅い凹凸の微細な異物等を高感度に検出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】陰影像が発生する原理について説明する基本原理図。
【図2】二次粒子の放出密度の二次粒子エネルギー依存性を示す図。
【図3】回転角の二次粒子の発生箇所における仰角依存性を示す図。
【図4】電磁重畳型対物レンズを備えた電子光学カラム内での二次粒子軌道を示す図。
【図5】アシスト電極を搭載した電子光学カラム内での二次粒子軌道を示す図。
【図6】実施例1の電子線応用装置の内部構成を示す図。
【図7】アシスト電極電源と対物レンズ下部電極制御電源の電源制御テーブルの構成図。
【図8】アシスト電極の効果を示す図。
【図9】実施例2の電子線応用装置の内部構成を示す図。
【図10】実施例3の電子線応用装置の内部構成を示す図。
【図11】一次ビーム走査範囲と対物下部電極の印加電圧と試料の帯電量との相関図。
【図12】陰影コントラスト/ノイズ比の試料表面の傾斜角度依存性を示す図。
【図13】実施例4の欠陥レビュー装置に搭載される走査電子顕微鏡の内部構成図。
【図14】実施例4の欠陥レビュー装置の全体構成図。
【図15】実施例4の電源制御テーブルとレンズ制御テーブルの構成図。
【図16】実施例5の電子線応用装置の内部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施例1)
本実施例では、走査電子顕微鏡への実施例について説明する。
【0029】
図6には、第1の実施例である荷電粒子ビーム装置の基本構成を示す。本実施例の荷電粒子ビーム装置は、真空筺体125内に形成された電子光学系、その周囲に配置された電子光学系制御装置124、制御電源124に含まれる個々の制御ユニットを制御し、装置全体を統括制御するホストコンピュータ121、制御装置に接続された操作卓122、取得画像を表示されるモニタを備える表示手段123などにより構成される。電子光学系制御装置124は、電子光学系の各構成要素に電流、電圧を供給するための電源ユニットや、各構成要素に対して制御信号を伝送するための信号制御線などにより構成される。
【0030】
電子光学系は、電子ビーム(一次荷電粒子ビーム)100を生成する電子銃101、電子ビーム100を偏向する偏向器102、電子ビーム100を集束する電磁重畳型対物レンズ103、ステージ105上に保持された試料104から放出される二次粒子(二次粒子)を集束発散するアシスト電極106、二次粒子が衝突するための反射部材、当該衝突により再放出される副次粒子(三次粒子)を検出する左検出器110と右検出器111と中央検出器112などにより構成される。アシスト電極106は、電磁重畳型対物レンズ103の上面とほぼ一致する位置に配置されている。また、上記の反射部材は、対物レンズ103と走査偏向器102の間に配置される下段側反射部材と、電子銃101と走査偏向器102との間に配置される上段側反射部材とに分かれており、下段側反射部材は、円錐形状の金属部材により構成され、その円錐面には、二次粒子が衝突するための左衝突面107と右衝突面108とが形成されている。上段側反射部材は、一次ビームの通過開口が形成された円盤状の金属部材により構成され、その底面が二次粒子反射面109を形成している。
【0031】
電子銃101から放出された電子ビーム100は、引き出し電極と加速電極(いずれも図示しないが、電子銃の構成要素)との間に形成される電位差により加速され、電磁重畳型対物レンズ103に達する。電磁重畳型対物レンズ103の下部電極には、電極電源113によって、上記加速電極の電位に対する電位差が正になるような電位が供給されており、電子ビーム100は、加速電極と下部電極との間の電位差によって加速された状態で、下部電極を通過する。一方、ステージ105には、ステージ電源114によって、下部電極との電位差が負になるような電位が印加されており、下部電極を通過した電子ビーム100は、急激に減速され、一次ビームとして試料表面に達する。一次ビーム照射により発生した二次粒子は、極性が負であるため、試料表面と下部電極との間の電位差によって加速され、電磁重畳型対物レンズ103の上面に達する。
【0032】
アシスト電極106の近傍には、アシスト電極電源115から印加される電位により、二次粒子のZ方向への減速電界が形成されている。これにより、アシスト電極106を通過する二次粒子に含まれる高速成分(BSE)は、低速成分とは軌道分離され、反射部材の左衝突面107ないし右衝突面108とに衝突する。左衝突面107ないし右衝突面108には、二次粒子の高速成分の衝突により発生する三次粒子を、左検出器110ないし右検出器111に誘導するための電界形成用の電位が、左電源116と右電源117から電位がそれぞれ供給される。更に、上記左検出器110と上記右検出器111とには、誘導されたBSEを検出器に取り込むための電界形成用電位が、左取り込み電源118と右取り込み電源119がそれぞれ供給される。
【0033】
BSE(厳密には、二次粒子の高速成分)が分離された二次粒子は、上段側反射部材に到達し、二次粒子衝突面109と衝突して三次粒子を発生する。上段側反射部材の側方に配置された中央検出器112の本体には、中央取り込み電源120により引き込み電界が形成されており、上記再放出された三次粒子を強力な電界で検出器内に取り込む。
【0034】
以上説明した基本構成により、二次粒子の高速成分について、高仰角成分と低仰角成分とを弁別検出し、コントラストを強調させた陰影像の取得を上記左検出器と上記右検出器で可能にする。
【0035】
次に、アシスト電極106に供給する電位の制御方法について説明する。本実施例の走査電子顕微鏡は、試料表面の凹凸強調像を表示する動作モード(観察モード)と試料表面の材料の相違に起因するコントラストを強調した画像を表示する動作モード(検査モード)の2つの動作モードで動作できるようになっている。
【0036】
表示手段123の表示画面には、常に、「検査モード」/「観察モード」の2つの切り替えボタンと「帯電除去」というボタンが表示されており、装置ユーザは、操作卓122を介していずれかのボタンを選択できるようになっている。ホストコンピュータ121には、各動作モードに応じた、アシスト電極106及び対物レンズ下部電極に印加されるべき電圧の情報が格納されている。図7には、動作モードに対応する供給電圧を格納したデータテーブルを用いて、各動作モードの制御を行った構成例について示す。図7に示されたデータテーブルには、各動作モードに対応する引数の情報が格納されたビームモード切替条件フィールドと、アシスト電極106および対物レンズ下部電極への印加電圧を格納した電圧設定値フィールドにより構成される。ビームモード切替条件フィールドは、更に大分類フィールドと小分類フィールドに別れ、それぞれ「検査モード」、「観察モード」、「通常モード」、「帯電モード」に対応する引数の情報が格納されている。「電圧設定値フィールド」には、大分類フィールドと小分類フィールドに格納された引数情報の組合せにより構成される各条件に対応するアシスト電極106および対物レンズ下部電極への印加電圧値が格納されている。
【0037】
装置ユーザが、「検査モード」のボタンを選択すると、ホストコンピュータ121が、電子光学系制御装置124内の信号接続を制御して、中央検出器112の検出信号を読み出す。ホストコンピュータ121は、画像演算ユニットを備えており、中央検出器112の検出信号をもとに、二次粒子の低速成分像を形成する。形成された画像は、表示手段123に表示される。装置ユーザが、「観測モード」を選択した場合には、ホストコンピュータ121は、左検出器110または右検出器111の検出信号を読み出して画像形成処理を実行し、二次粒子の高速成分像を表示する。また、試料が帯電している場合、表示画像に輝度斑(シェーディング)が現れることがある。シェーディングは、環状検出器の配置が二次粒子の軌道に対して軸対称からずれることにより発生する。一方、本実施例の装置構成では、二次粒子の方位角選別のために、二次粒子検出器を一次電子ビーム光軸に対して軸対称に配置している。試料の帯電により、二次粒子軌道の光軸が、検出器の中心軸から、相対的にずれる場合があり、そのような場合にシェーディングが発生する。
【0038】
シェーディング発生時には、装置動作を帯電除去モードに切り替えることにより、シェーディングを除去することができる。装置ユーザが「帯電除去」ボタンを押すと、アシスト電極106および対物レンズ下部電極への印加電圧が、図7に従って再設定される。これにより、試料の帯電状態に応じた二次粒子検出条件が実現され、シェーディングの除去された画像を得ることができる。
【0039】
以上説明した構成は、本実施例を実現する荷電粒子ビーム装置の最小構成である。例えば、電子ビームの集束を助けるコンデンサレンズやビーム電流を測定するファラデーカップなどを設けても本実施例の機能を達成することができる。また、上記偏向器は、一般に静電型と電磁型のタイプがある。二次粒子放出の発生箇所における方位角を複数に選別して検出するために、左反射板と右反射板を複数に分割し、それぞれの反射板に対して新規の検出器を設けることも可能である。
【0040】
電子銃101と二次粒子反射面109の間にコンデンサレンズを設けることにより、電子ビームの集束を助けることができる。さらにコンデンサレンズを2段として、その間に電流制限絞りを設けると、ビーム電流と対物レンズでのビームの開きを独立に制御できるようになり電子ビームの集束を助けることができる。
【0041】
図8には、本実施例の効果を示すため、左検出器110で検出される二次粒子の仰角成分のエネルギー分布を、アシスト電極がある場合とない場合とで対比して示した。図の縦軸は、左反射板に衝突する二次粒子の仰角成分であり、0度から90度まである。横軸は二次電子のエネルギーであり、0から一次電子ビームの照射エネルギー(Vp)まである。図中、打点によるハッチングを付した部分が、左反射板にあたる二次粒子に相当する。また、横線によるハッチングを付した部分が本実施例で言う「二次粒子の低速成分」に相当するエネルギーの範囲、VCFが、「二次粒子の高速成分」の低エネルギー側の裾にそれぞれ相当する。
【0042】
アシスト電極が無い場合(図8(a))、VCFが、低速成分領域内に存在しており、本来上段側検出器で検出されるべき低エネルギーの二次粒子が、下段側検出器で検出されていることが分かる。一方、アシスト電極がある場合(図8(b))では、VCFが、低速成分領域とは離れた場所に存在しており、下段側検出器で検出された二次粒子には、低速成分の混入が無いことが分かる。
【0043】
以上、本実施例で説明した構成により、二次粒子の高速成分と低速成分との分離の程度が従来よりも高い電子光学系が実現され、その効果は、走査電子顕微鏡を応用した欠陥検査装置や測長装置に適用した場合に特に大きい。
【0044】
(実施例2)
図9は、第2の実施例である荷電粒子ビーム装置の基本構成を示す。本実施例の荷電粒子ビーム装置は、反射部材を持たない構成であって、実施例1で説明した装置構成に比べて、単純な構成で同じ機能を実現することを目的としたものである。以下、図9に従って装置の各構成を説明するが、動作・機能あるいは配置などが同じ構成要素については説明を省略する。
【0045】
本実施例の荷電粒子ビーム装置は、真空筺体170内に形成された電子光学系、電子光学系制御装置169、装置全体を統括制御するホストコンピュータ166、制御装置に接続された操作卓167、取得画像を表示されるモニタを備える表示手段168、ステージ155などにより構成される。電子光学系制御装置169は、電子光学系の各構成要素に電流、電圧を供給するための電源ユニットや、各構成要素に対して制御信号を伝送するための信号制御線などを含む。電子光学系は、電子ビーム150を生成する電子銃151、試料154上に電子ビームを走査する走査偏向器152、電磁重畳型対物レンズ153、試料154から放出される二次粒子を集束発散するアシスト電極156、二次粒子が衝突する左検出器157と右検出器158と中央検出器159とにより構成される。
【0046】
電磁重畳型対物レンズ153は、一次ビーム光軸に磁界を漏洩させる為の磁極と、磁極に磁界を発生させるための励磁コイル、対物レンズ底面に配置された下部電極とを備える。電極電源160から下部電極に電位が供給され、その結果発生する電界により電子ビーム150と二次粒子が加速される。ステージ155には、ステージ電源161からリターディング電位が供給され、当該電位により二次粒子が加速される。アシスト電極電源162は、アシスト電極156にBSE減速電界形成用の電位を供給する。左検出器157と右検出器158と中央検出器159では、左取り込み電源163と右取り込み電源164と中央取り込み電源165により、二次粒子をそれぞれの検出器内に取り込む。本実施例の装置は、反射部材を持たないため、実施例1の装置における左衝突面107と右衝突面108がない。よって実施例1の装置と比較して、左検出器157と右検出器158の電位が相対的に高くなりやすいため、実施例1の装置よりもアシスト電極156の電位の絶対値を高くする必要がある。
【0047】
かかる基本構成により、二次粒子放出の発生箇所における速度成分と方位角を選別して検出し、コントラストを強調させた陰影像の取得を上記左検出器と上記右検出器で可能にする。
【0048】
上記基本構成は、本実施例を実現する荷電粒子ビーム装置の最小構成である。例えば、電子ビームの集束を助けるコンデンサレンズやビーム電流を測定するファラデーカップなどを設けても、本実施例の機能を達成することができる。また、上記偏向器は電磁型よりも静電型のタイプの方が使いやすい。これは、静電型は小型であることと二次粒子の軌道への影響が少ないために検出器をスペースのある電子銃側に配置しやすい。二次粒子放出の発生箇所における方位角を複数に選別して検出するために、左検出器と右検出器を複数の検出器に分割しなおすことも可能である。
【0049】
(実施例3)
図10に、本実施例の第3の実施例である荷電粒子ビーム装置の基本構成を示す。本実施例の荷電粒子ビーム装置は、反射部材に加えてE×B偏向器を供え、かつSEとBSEとの軌道分離手段として、アシスト電極に換えて磁極を用いた装置構成である。以下、図10に従って装置の各構成を説明するが、動作・機能あるいは配置などが実施例1と同じ構成要素については説明を省略する。
【0050】
本実施例の荷電粒子ビーム装置は、真空筺体225内に形成された電子光学系、電子光学系制御装置224、装置全体を統括制御するホストコンピュータ221、制御装置に接続された操作卓222、取得画像を表示されるモニタを備える表示手段223、ステージ205などにより構成される。電子光学系制御装置224は、電子光学系の各構成要素に電流、電圧を供給するための電源ユニットや、各構成要素に対して制御信号を伝送するための信号制御線などを含む。電子光学系は、一次電子ビーム200を生成する電子銃201、一次ビーム照射により発生する二次粒子を一次ビーム光軸から分離するE×B偏向器(ウィーンフィルタ)202、電磁重畳型対物レンズ203、電磁重畳型対物レンズ203の下部電極とE×B偏向器202の間に配置されたアシスト磁場印加装置206、二次粒子が衝突する左衝突面207と右衝突面208を備えた一段目反射部材、当該反射部材に衝突する二次粒子によって発生する三次粒子を検出する左検出器210と右検出器211を備えた下段側検出器、一段目反射部材と電子銃との間に配置される二段目反射部材209、上段側検出器212とにより構成される。なお、図示されてはいないが、図10の電子光学系は、一次ビーム200を走査するための走査偏向器も備えている。
【0051】
一段目反射部材の左衝突面207と右衝突面208には、左電源216及び右電源217から、三次粒子の誘導電界形成用の電力が供給される。上段側検出器、下段側検出器には、左取り込み電源218、右取り込み電源219および中央取り込み電源220から、三次粒子取り込み用の電界形成用の電力が供給される。
【0052】
電磁重畳型対物レンズ203の下部電極には、電極電源213により電子ビーム200と二次粒子の加速電界形成用電力が供給される。ステージ205には、ステージ電源214によりリターディング電界形成用電力が供給される。アシスト磁場印加装置206は、軟磁性材料の磁極とコイルにより構成されており、コイルの励磁電流がアシスト磁場電源215から供給されている。左右の磁極から発生する磁界によりBSEを曲げて、SEとの軌道分離を実現する。磁界を用いることにより、直接XY面内方向の速度成分を加速することが可能となり、SEとの軌道分離が効率的になる。
【0053】
かかる基本構成により、二次粒子放出の発生箇所における速度成分と方位角を選別して検出し、コントラストを強調させた陰影像の取得を左検出器210と右検出器211で可能にする。
【0054】
(実施例4)
本実施例は、欠陥レビュー用の検査装置の構成例について説明する。欠陥レビュー装置においては、試料の帯電により発生するシェーディングが問題となる場合が多い。そこで本実施例では、初めにシェーディングの発生原因について説明する。
【0055】
まず、図11を用いて、試料の帯電とシェーディングの関係について説明する。図11は、電流量を一定にした電子ビームを絶縁物試料に対して照射した場合の、試料の帯電量を示す図である。縦軸は電磁重畳型対物レンズ内の下部電極の電圧Vb(kV)、横軸は電子ビームの走査範囲の長さFOV(μm)である。帯電量は等高線93の高さで示す。電磁重畳型対物レンズにおいては、電極の電圧が高いほど分解能が向上するが、帯電量は増大する。帯電量が増大すると、試料の破壊、二次電子の軌道ずれに起因するシェーディングなどの問題が発生する。このような問題を回避するためには、電磁重畳型対物レンズ内の電極電圧を適宜制御する必要がある。対物レンズ内の電極電圧が変化すると二次電子の軌道も変化するので、陰影像のコントラストを落とさないためには、対物レンズ内の電極電圧制御と同時に、軌道分離手段の制御も行う必要がある。
【0056】
次に、図12を用いて、陰影像のコントラストを落とさないために必要な仰角成分について、定性的に説明する。図12は、陰影コントラストの傾斜角度依存性を示す図である。縦軸は、規格化した陰影コントラストであり、試料表面の傾斜角度5(図1)により平坦な試料表面との間に生じる陰影コントラストを電子ビームの観察像中に含まれるノイズで規格化したものである。横軸は、異物などの凹凸により生じた二次電子の発生箇所における試料表面の傾斜角度5である。凡例70は、BSEの発生箇所における仰角のうち検出が可能な上限値を示す。上記上限値が70度の曲線71は、70度未満の曲線に比べて相対的に陰影コントラストが強い。一方、上記上限値が70度以上の曲線は、図中全域でほぼ重なっている。したがって、BSEの仰角成分のうち90度から70度の成分がSEの軌道と重なり、残りの70度から0度の成分を検出することにより、すべてのBSEを左右分別検出する場合の陰影コントラストとほぼ同等の強度を得ることができる。
【0057】
次に、図13及び図14を用いて、本実施例の欠陥レビュー検査装置の電子光学形の名部構成と全体構成について説明する。本実施例の荷電粒子ビーム装置は、真空筺体328内に形成された電子光学系、その周囲に配置された電子光学系制御装置327、電子光学系制御装置327に含まれる個々の制御ユニットや電源ユニットを制御し、装置全体を統括制御する情報処理装置324、制御装置に接続された操作卓325、取得画像を表示されるモニタを備える表示手段326、試料304を保持するステージ305などにより構成される。電子光学系制御装置327は、電子光学系の各構成要素に電流、電圧を供給するための電源ユニットや、各構成要素に対して制御信号を伝送するための信号制御線などにより構成される。
【0058】
電子光学系は、一次電子ビーム300を生成する電子銃301、一次ビーム照射により発生する二次粒子を一次ビーム光軸から分離するE×B偏向器(ウィーンフィルタ)302、電子ビーム300を集束する電磁重畳型対物レンズ303、電磁重畳型対物レンズ303の上面とほぼ一致する位置に配置されたアシスト電極306、二次粒子が衝突するための第一反射部材、当該衝突により再放出される副次粒子(三次粒子)を検出する左検出器110と左検出器310と右検出器311、第一反射部材の上段側(電子源側)に設けられた第二反射部材309、当該第二反射部材に衝突した二次粒子により生成される副次粒子(三次粒子)を検出する中央検出器312、第1コンデンサレンズ313と第2コンデンサレンズ314とビーム制限絞り315とスティグマ329とアライナ330、電磁重畳型対物レンズ303の下部電極への電圧供給用電源316、試料台にリターディング電位を供給するリターディング電源317、アシスト電極電源318、各検出器に二次粒子の誘導電界を形成する電力を供給する左電源319及び右電源320、左取り込み電源321と右取り込み電源322と中央取り込み電源323などにより構成される。電子銃としては、拡散補給型電子源、冷電界放出型電子源あるいは熱電子放出型電子源などを用いることができる。上記の第一反射部材は円錐形状の金属部材により構成され、その円錐面には、二次粒子が衝突するための左衝突面307と右衝突面308とが形成されている。また、第二反射部材は、一次ビームの通過開口が形成された円盤状の金属部材により構成され、その底面が二次粒子反射面309を形成する。反射部材を複数に分割し、分割された複数の反射部材に応じて検出器を設けることも可能である。これにより、二次粒子の方位角をより細かく弁別することができる。また、第1コンデンサレンズ313と第2コンデンサレンズ314とビーム制限絞り315により、ビーム電流を切り替えることができる。本実施例ではE×B偏向器(ウィーンフィルタ)302を搭載することにより、二次粒子を効率的に収集することがきる。さらに、第1コンデンサレンズ313と第2コンデンサレンズ314の間にビーム制限絞り315を設けることにより、ビーム電流の制御と電磁重畳型対物レンズ303での一次電子ビーム300の広がりの制御を独立に制御することができる。その結果、本実施例の装置は、他実施例の装置と比較して、各ビーム電流で最も効率よく一次電子ビーム300を集束することできる。
【0059】
図14には、本実施例の欠陥レビューシステムの全体構成を示した。本実施例の欠陥レビューシステムは、情報処理装置324、表示手段326の他、被検査試料である試料基板に対して荷電粒子ビーム装置を照射して二次粒子信号あるいは二次粒子信号に起因する二次元強度分布データを検出する電子光学カラム351、試料基板を格納する試料室、当該試料室内に試料基板を搬送・搬出するための予備室352、格納する試料基板ケース、試料基板ケースから予備室に試料基板を搬送するためのロボット353、などを備え、試料室内の試料基板を自動的に交換することができる。
【0060】
制御装置500は、表示制御部501、電子顕微鏡の各構成ユニットの制御を実行する電子顕微鏡制御部502、表示制御部501で処理される各種表示用データの演算処理を行なう表示データ演算部503などの機能ブロックにより構成される。
【0061】
電子顕微鏡制御部502は、更にビーム走査制御部、カラム制御部、ステージ制御部、真空ポンプ制御部、ロボット制御部などの複数の機能ブロックにより構成されている。ビーム走査制御部は、電子光学カラムのビーム走査を制御し信号を取得する。また、ビーム走査制御部とカラム制御部とステージ制御部とは、同期を取りながら並行して制御を検査完了まで実行する。表示データ演算部503は、レシピ画面のGUI処理などを実行するレシピ制御部、欠陥部の高解像度観察像形成処理、欠陥・異物の抽出、欠陥分類あるいはその他の検査処理を、画像比較や画像解析などの演算処理により実行する画像処理部、画像処理部での欠陥座標抽出処理あるいは他の検査装置から得られた欠陥位置情報を基に一次電子ビームの照射位置を決定し、ステージ制御部に伝送する欠陥座標制御部などにより構成される。以上の機能ブロックは、制御装置500内に設けられた演算手段と、当該演算手段で実行されるソフトウェアと、当該ソフトウェアを格納する記憶手段と、制御命令を発信する手段、および信号を受信する手段により実現される。
【0062】
装置オペレータは、表示制御部を通してレシピ制御部に検査システムの検査レシピを登録する。レシピ制御部は検査レシピに基づき、表示制御部、画像処理部、欠陥座標制御部、ビーム走査制御部、カラム制御部、ステージ制御部、真空ポンプ制御部、ロボット制御部と高速に通信をおこなう。ビーム走査制御部、カラム制御部、ステージ制御部、真空ポンプ制御部、ロボット制御部は、荷電粒子ビーム制御装置との間で制御や信号の通信を行う。表示手段326に設けられた表示画面には、形成画像、観察倍率の切り替えボタン、ビームモードの切り替えボタン、検査レシピ、欠陥の分類結果等の情報が表示される。これにより、オペレータは観察倍率とビームモードとを選択できる。ここで、ビームモードとは、検査モードおよび観測モード(後述)、これらに付随する通常モード及び帯電除去モードにおける一次電子ビーム照射の設定条件のことである。また、上記検査レシピは、検査の目的に合わせて適切に選別・構成される。図14には、検査レシピの設定項目として、欠陥マップ表示ボタン、検出モード/観察モードの切り替えボタン、分類マップ表示ボタンが表示画面上に表示された例を示した。ここで、検出モード/観察モードとは、欠陥・異物の検出に用いる観察像を取得する際の電子光学カラムの動作モードと、欠陥・異物の詳細な観察像を取得する際の電子光学カラムの動作モードのことである。これにより、オペレータは簡便に検査レシピを選択し、レシピ制御部に設定を登録することができる。更にまた、上記表示画面には、欠陥の分類結果が表示され、表示された欠陥画像と分類結果とを対比してオペレータが目視確認できるようになっている。
【0063】
検査レシピに基づき検査が終了すると、試料基板は予備室に搬送され、更に、ロボットにより予備室からケースに搬送する。必要な場合は、次の試料基板の搬送が開始される。上記検査レシピ、取得された観察画像データ及び上記分類結果は、情報処理装置324内の記憶手段に格納され、必要に応じて、検査データとして出力される。
【0064】
図15(A)には、各ビームモードでの電子光学系の各構成要素に対する電源制御値を示す電源制御テーブルである。ここで、電源設定値のVst、Vb、Vc、Vre、Vscは、それぞれ、リターディング電源317(Vst)、下部電極電源316(Vb)、アシスト電極電源318(Vc)、左右の反射部材用電源319,320(Vre)と左右の取り込み電源321,322(Vsc)及び中央取り込み電源323(Vsc)から供給される制御電圧値である。上記電源制御テーブルは情報処理装置324内に格納される。装置オペレータが、画面上に表示されたビームモード切替ボタンないしは操作卓325を介してビームモードを選択すると、情報処理装置324内の演算手段が上記電源制御テーブルを参照し、対応する電源制御値を読み出す。読み出された制御電圧値は、電子光学系制御装置327に伝送され、それに従って各電源ユニットが制御される。帯電が顕著な場合は、帯電モードが選択される。特に、検査モードでの低倍観察(走査範囲が約10μm以上になるような倍率)では、観察モードに比べて帯電電位が高くなりやすいため、帯電モードが使用される場合が多い。
【0065】
図15(B)は、各ビームモードに対応した電子光学系のレンズ設定値が格納されたレンズ設定テーブルである。電源制御テーブルと同様、情報処理装置324内の記憶手段に格納されており、ビームモード切り替え時に、演算手段によって参照され、対物レンズ、スティグマ、アライナの各制御電流値が読み出される。シェーディング発生時の除電モードでは、VstとVb間の電位差を小さくし、VcとVre間の電位差も小さく設定すると良い。読み出された制御電流値は、電子光学系制御装置327に伝送され、それに従って光学系の各構成要素が制御される。
【0066】
以上詳述したように、本実施例の欠陥レビュー装置によれば、回路パターンを有する半導体装置等の検査において、陰影コントラストの強調された像を取得することが可能となり、浅い凹凸の微細な異物等を高感度に検出することが可能となる。それにより、画質確保のための画像積算回数が減り、よって、欠陥検出精度を落とさずに高速な欠陥検出、欠陥レビューが実現される。更には、欠陥分類の精度も向上し、欠陥の原因特定も容易となる。また、本実施例では、電子ビームを用いた欠陥レビュー装置を例にとって説明してきたが、イオンビーム等の荷電粒子ビーム一般を用いた荷電粒子ビーム応用装置に適用しても有効である。
【0067】
(実施例5)
本実施例では、図13に示した電子光学系の変形例について説明する。図16に、本実施例の第5の実施例である荷電粒子ビーム装置の基本構成を示す。なお、以下の説明において、図13の構成と共通する機能・動作については説明を省略する。
【0068】
本実施例の荷電粒子ビーム装置は、電子ビーム400を生成する電子銃401、電子ビーム400を偏向する偏向器402、電子ビーム400を集束する第1コンデンサレンズ421と第2コンデンサレンズ422と電磁重畳型対物レンズ403、試料404を移動させるステージ405、試料404から放出される二次電子を集束発散するアシスト電極406、二次電子が衝突する左反射板407と右反射板408と中央反射板409、上記衝突により再放出される二次電子を検出する左検出器410と右検出器411と中央検出器412、第1コンデンサレンズ421と第2コンデンサレンズ422とにより構成される。
【0069】
電磁重畳型対物レンズ403では、電極電源413により電子ビーム400と二次電子を加速する。ステージ405では、ステージ電源414により電子ビーム400を減速し二次電子を加速する。アシスト電極406では、アシスト電極電源415により上記二次電子を集束発散する。左反射板407では、左電源416により上記再放出される2次電子を左検出器410に誘導し、右反射板408では、右電源417により上記右検出器411に誘導する。左検出器410と右検出器411と中央検出器412では、左取り込み電源418と右取り込み電源419と中央取り込み電源420により上記再放出される二次電子を強力な電界でそれぞれの検出器内に取り込む。
【0070】
かかる基本構成により、二次電子放出の発生箇所における速度成分と方位角を選別して検出し、コントラストを強調させた陰影像の取得を上記左検出器と上記右検出器で可能にする。本実施例では第1コンデンサレンズ421と第2コンデンサレンズ422の間に中央反射板409を設けることにより、ビーム電流の制御のためのビーム制限絞りを兼ねることができる。その結果、電子ビーム400が通過する微細穴を1つ削減でき、各ビーム電流で最も効率よく一次電子ビーム300を集束することできる。
【符号の説明】
【0071】
1…凹凸、2…電子ビーム2、3…二次電子、4…検出器、5…傾斜角度、6…仰角成分、7…陰影像、31…電磁重畳型対物レンズ、32…試料、33…光軸、34…コイル、35…電極、36…左反射板、37…右反射板、38…SEの発生箇所における仰角の低角成分の軌道、39…BSEの低角成分の軌道、40…BSEの仰角の高角成分の軌道、41…再放出二次電子、42…左検出器、43…右検出器、50…アシスト電極、51…電磁重畳型対物レンズ、52…左反射板、53…右反射板、54…SEの発生箇所における仰角の低角成分の軌道、55…BSEの低角成分の軌道、56…BSEの高角成分の軌道、57…左検出器、58…右検出器、59…電子ビームの光軸、80…陰影像検出器、81…SE像検出器、82…電磁重畳型対物レンズ、83…左反射板、84…左反射板、85…BSE、86…SE、87…電子ビームの光軸、88…SE反射板、89…再放出二次電子、100、150、200、300、400…電子ビーム、101、151、201、301、401…電子銃、102、152、202、302、402…走査偏向器、103、153、203、303、403…電磁重畳型対物レンズ、104、154、204、304、404…試料、105、155、205、305、405…ステージ、106、156、206、306、406…アシスト電極、107、207、307、407…左反射板、108、208、308、408…右反射板、109、209、309、409…中央反射板、110、157、210、310、410…左検出器、111、158、211、311、411…右検出器、112、159、212、312、412…中央検出器、113、160、213、316、413…電極電源、114、161、214、317、414…ステージ電源、115、162、215、318、415…アシスト電極電源、116、216、319、416…左電源、117、217、320、417…右電源、118、163、218、321、418…左取り込み電源、119、164、219、322、419…右取り込み電源、120、165、220、323、420…中央取り込み電源、121、166、221、324、423、500…制御装置、122、167、222、325,424…表示画面、123、168、223、326、425…入力システム、313、421…第1コンデンサレンズ、314、422…第2コンデンサレンズ、315…ビーム制限絞り。329…スティグマ、330…アライナ、351…電子光学カラム、352…予備室、353…ロボット、501…表示制御部、502…電子顕微鏡制御部、503…表示データ演算部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載せるステージと、電子光学系とを備えた電子線応用装置において、
前記電子光学系は、
一次電子ビームを生成する電子銃と、
前記一次電子ビームを前記試料上に集束する電磁重畳型対物レンズと、
前記一次電子ビームの前記試料への照射により生じる二次粒子を前記一次電子ビームの光軸から分離するE×B偏向器と、
前記二次粒子を衝突させるための反射部材と、
前記反射部材の下方に配置されたアシスト電極と、
前記二次粒子の前記反射部材への衝突により生じる三次粒子を用いて速度成分と方位角成分を選別して検出する複数の粒子検出器と、
前記反射部材の上方に配置された中央検出器と、を有することを特徴とする電子線応用装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子線応用装置において、
前記E×B偏向器は、前記アシスト電極の下方に配置されていることを特徴とする電子線応用装置。
【請求項3】
情報処理装置と、表示手段と、被検査試料である試料基板に対して一次電子ビームを照射して二次粒子信号あるいは二次粒子信号に起因する二次元強度分布データを検出する電子光学カラムと、前記試料基板を格納する試料室と、前記試料室内に前記試料基板を搬送・搬出するための予備室と、前記予備室に前記試料基板を搬送するためのロボットと、を備えて前記試料室内の前記試料基板を自動的に交換することができる電子線応用装置において、
前記情報処理装置は、
表示制御部と、
ビーム走査制御部とカラム制御部とステージ制御部とポンプ制御部とロボット制御部とを有する電子顕微鏡制御部と、
レシピ制御部と画像処理部と欠陥座標制御部とを有する表示データ演算部と、を含み、
前記レシピ制御部は、前記表示制御部を介して登録された検査レシピに基づき、前記表示制御部、前記画像処理部、前記欠陥座標制御部、前記ビーム走査制御部、前記カラム制御部、前記ステージ制御部、前記ポンプ制御部、及び前記ロボット制御部と高速に通信を行い、
前記表示手段は、欠陥マップ、分類マップ、形成画像、観察倍率、欠陥・異物の検出に用いる観察像を取得する際の前記電子光学カラムの動作モードである検査モード、前記欠陥・異物の詳細な観察像を取得する際の前記電子光学カラムの動作モードである観測モード、前記検査モード又は前記観察モードに付随する一次電子ビーム照射の設定条件である通常モード又は帯電モードの表示と選択の画面を有すると共に、欠陥の分類結果を表示するものであることを特徴とする電子線応用装置。
【請求項4】
請求項3記載の電子線応用装置において、
前記レシピ制御部は、各動作モードに対応する引数情報が格納されたビームモード切替条件フィールドと、アシスト電極および電磁重畳型対物レンズ下部電極への印加電圧を格納した電圧設定値フィールドにより構成され、
前記ビームモード切替条件フィールドは、更に、大分類フィールドと小分類フィールドに分けられ、前記検査モードと前記観察モード、前記通常モード或いは前記帯電モードに対応する引数情報が格納され、
前記電圧設定値フィールドには、前記大分類フィールドと前記小分類フィールドに格納された前記引数情報の組合せにより構成される各条件に対応する前記アシスト電極および前記電磁重畳型対物レンズ下部電極へ印加される電圧値が格納されていることを特徴とする電子線応用装置。
【請求項1】
試料を載せるステージと、電子光学系とを備えた電子線応用装置において、
前記電子光学系は、
一次電子ビームを生成する電子銃と、
前記一次電子ビームを前記試料上に集束する電磁重畳型対物レンズと、
前記一次電子ビームの前記試料への照射により生じる二次粒子を前記一次電子ビームの光軸から分離するE×B偏向器と、
前記二次粒子を衝突させるための反射部材と、
前記反射部材の下方に配置されたアシスト電極と、
前記二次粒子の前記反射部材への衝突により生じる三次粒子を用いて速度成分と方位角成分を選別して検出する複数の粒子検出器と、
前記反射部材の上方に配置された中央検出器と、を有することを特徴とする電子線応用装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子線応用装置において、
前記E×B偏向器は、前記アシスト電極の下方に配置されていることを特徴とする電子線応用装置。
【請求項3】
情報処理装置と、表示手段と、被検査試料である試料基板に対して一次電子ビームを照射して二次粒子信号あるいは二次粒子信号に起因する二次元強度分布データを検出する電子光学カラムと、前記試料基板を格納する試料室と、前記試料室内に前記試料基板を搬送・搬出するための予備室と、前記予備室に前記試料基板を搬送するためのロボットと、を備えて前記試料室内の前記試料基板を自動的に交換することができる電子線応用装置において、
前記情報処理装置は、
表示制御部と、
ビーム走査制御部とカラム制御部とステージ制御部とポンプ制御部とロボット制御部とを有する電子顕微鏡制御部と、
レシピ制御部と画像処理部と欠陥座標制御部とを有する表示データ演算部と、を含み、
前記レシピ制御部は、前記表示制御部を介して登録された検査レシピに基づき、前記表示制御部、前記画像処理部、前記欠陥座標制御部、前記ビーム走査制御部、前記カラム制御部、前記ステージ制御部、前記ポンプ制御部、及び前記ロボット制御部と高速に通信を行い、
前記表示手段は、欠陥マップ、分類マップ、形成画像、観察倍率、欠陥・異物の検出に用いる観察像を取得する際の前記電子光学カラムの動作モードである検査モード、前記欠陥・異物の詳細な観察像を取得する際の前記電子光学カラムの動作モードである観測モード、前記検査モード又は前記観察モードに付随する一次電子ビーム照射の設定条件である通常モード又は帯電モードの表示と選択の画面を有すると共に、欠陥の分類結果を表示するものであることを特徴とする電子線応用装置。
【請求項4】
請求項3記載の電子線応用装置において、
前記レシピ制御部は、各動作モードに対応する引数情報が格納されたビームモード切替条件フィールドと、アシスト電極および電磁重畳型対物レンズ下部電極への印加電圧を格納した電圧設定値フィールドにより構成され、
前記ビームモード切替条件フィールドは、更に、大分類フィールドと小分類フィールドに分けられ、前記検査モードと前記観察モード、前記通常モード或いは前記帯電モードに対応する引数情報が格納され、
前記電圧設定値フィールドには、前記大分類フィールドと前記小分類フィールドに格納された前記引数情報の組合せにより構成される各条件に対応する前記アシスト電極および前記電磁重畳型対物レンズ下部電極へ印加される電圧値が格納されていることを特徴とする電子線応用装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−186177(P2012−186177A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−136535(P2012−136535)
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2006−290772(P2006−290772)の分割
【原出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月18日(2012.6.18)
【分割の表示】特願2006−290772(P2006−290772)の分割
【原出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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