説明

電子線硬化のレジスト下層膜形成組成物

【課題】
半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいて用いられるレジスト下層膜形成組成物を提供する。
【解決手段】 半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいてフォトレジストの下層に使用される下層膜を電子線照射によって硬化する組成物であって、重合性物質を含むレジスト下層膜形成組成物。前記重合性物質が電子線照射により重合可能な反応性基を少なくとも一つ有する化合物である。電子線照射による重合可能な反応性基が、炭素と炭素の不飽和多重結合を有する反応性基である。炭素と炭素の不飽和多重結合を有する反応性基が、アクリレート基、メタクリレート基、又はビニルエーテル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板とフォトレジストの間に下層膜を形成するための組成物に関する。詳しくは、半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいてフォトレジストの下層に使用される下層膜を電子線照射によって形成するための下層膜形成組成物に関する。また、当該下層膜形成組成物を用いた下層膜の形成方法、及びフォトレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体装置の製造において、フォトレジストを用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工はシリコンウエハ等の半導体基板上にフォトレジストの薄膜を形成し、その上に半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、前記パターンに対応する微細凹凸を形成する加工法である。
【0003】
近年、半導体装置の高集積度化が進み、使用される活性光線もKrFエキシマレーザ(248nm)からArFエキシマレーザ(193nm)へと短波長化される傾向にある。これに伴い活性光線の基板からの乱反射や定在波の影響が大きな問題となってきた。そこで、この問題を解決すべく、フォトレジストと基板の間に反射防止膜(bottom anti−reflective coating)を設ける方法が広く検討されている。かかる反射防止膜としては、その使用の容易さなどから有機反射防止膜について数多くの検討が行われてきている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、近年、半導体装置のパターンルールの微細化に従い明らかになってきた配線遅延の問題を解決するために、配線材料として銅を使用する検討が行われており、そして、それと共に半導体基板への配線形成方法としてデュアルダマシンプロセスの検討が行われている。そして、デュアルダマシンプロセスではビアホールが形成され、大きなアスペクト比を有する基板に対して反射防止膜が形成されることになる。そのため、このプロセスに使用される反射防止膜に対しては、ホールを隙間なく充填することができる埋め込み特性や、基板表面に平坦な膜が形成されるようになる平坦化特性などが要求されている。しかし、有機系の反射防止膜用材料を大きなアスペクト比を有する基板に適用することは難しく、近年、埋め込み特性や平坦化特性に重点をおいた材料が開発されるようになってきている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照。)。
【0005】
また、半導体装置等のデバイス製造において、誘電体層によるフォトレジストのポイズニング効果を減少させるために、架橋可能なポリマー等を含む組成物より形成されるバリア層を誘電体層とフォトレジストの間に設けるという方法が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0006】
このように、近年の半導体装置の製造においては、反射防止効果を初め、さまざまな効果を達成するために、半導体基板とフォトレジストの間、すなわちフォトレジストの下層として、有機化合物を含む組成物から形成される有機系の下層膜が配置されるようになってきている。
【0007】
ところで、これらの有機系の下層膜は、一般に、下層膜形成用の組成物を半導体基板上に塗布した後、半導体基板を170℃〜200℃程度の高温で加熱することによって形成されている。そのため、高温での加熱時に下層膜形成用の組成物に含まれている低分子量の成分が揮発または昇華し、周辺装置に付着し、装置を汚染するということが問題となっていた。また、装置に付着した成分が半導体基板上に落下し、パターン形成に悪影響を及ぼすということが問題になっていた。
【特許文献1】米国特許第5919599号明細書
【特許文献2】特開2000−294504号公報
【特許文献3】特開2002−47430号公報
【特許文献4】特開2002−190519号公報
【特許文献5】国際公開第02/05035号パンフレット
【特許文献6】特開2002−128847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいてフォトレジストの下層に使用される下層膜を電子線照射によって硬化し形成するための下層膜形成組成物を提供することである。また、当該組成物を用いた半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいてフォトレジストの下層に使用される下層膜の形成方法、及びフォトレジストパターンの形成方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の目的は、上層に塗布、形成されるフォトレジストとのインターミキシングを起こさず、フォトレジストに比較して大きなドライエッチング速度を有する下層膜及び当該下層膜を形成するための下層膜形成組成物を提供することである。
【0010】
また、本発明の目的は、半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいて、半導体基板上に形成されたフォトレジストへの露光照射光の基板からの反射を軽減させるレジスト下層反射防止膜、凹凸のある半導体基板を平坦化するための平坦化膜、及び加熱時などに半導体基板から発生する物質によるフォトレジストの汚染を防止する膜等として使用できるレジスト下層膜を電子線照射により硬化し下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成組成物を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、半導体基板に形成された、高さ/直径で示されるアスペクト比が1以上のホールを電子線照射により硬化し形成されるレジスト下層膜で充填する方法を提供することである。
【0012】
今後、レジストパターンの微細化が進行すると、解像度の問題やレジストパターンが現像後に倒れるという問題が生じ、フォトレジストの薄膜化が望まれてくる。そのため、基板加工に充分なレジストパターン膜厚を得ることが難しく、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間に作成されるレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。このようなプロセス用のレジスト下層膜として従来の高エッチレート性レジスト下層膜とは異なり、フォトレジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つレジスト下層膜、フォトレジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つレジスト下層膜下層膜や半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つレジスト下層膜が要求されるようになってきている。また、このようなレジスト下層膜には反射防止能を付与することも可能であり、従来の反射防止膜の機能を併せ持つことができる。本発明はこの様なレジスト下層膜を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は第1観点として、半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいてフォトレジストの下層に使用される下層膜を電子線照射によって硬化する組成物であって、電子線照射による重合性物質を含むレジスト下層膜形成組成物、
第2観点として、前記重合性物質が電子線照射により重合可能な反応性基を少なくとも一つ有する化合物である第1観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第3観点として、電子線照射による重合可能な反応性基が、炭素と炭素の不飽和多重結合を有する反応性基である第2観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第4観点として、炭素と炭素の不飽和多重結合を有する反応性基が、アクリレート基、メタクリレート基、又はビニルエーテル基である第3観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第5観点として、前記重合性物質が、分子内に1個乃至4個のアクリレート基、メタクリレート基、又はビニルエーテル基を有する化合物である第1観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第6観点として、前記重合性物質が、分子内に1個乃至4個のアクリレート基、又はメタクリレート基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂である第1観点に記載のレジスト下層膜形成組成物、
第7観点として、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布してレジスト下層膜を形成する工程、及び上記レジスト下層膜に電子線照射することによってレジスト下層膜を硬化する工程を含む半導体装置の製造方法、
第8観点として、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布してレジスト下層膜を形成する工程、及び上記レジスト下層膜に電子線照射することによってレジスト下層膜を硬化する工程、上記レジスト下層膜上にフォトレジスト組成物を塗布し加熱することによってフォトレジスト層を形成する工程、及び上記レジスト下層膜及びフォトレジスト層で被覆された半導体基板を露光する工程、露光後にフォトレジストを現像しレジストパターンを得る工程、レジストパターンによりレジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法、
第9観点として、第1観点乃至第6観点のいずれか一つに記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布してレジスト下層膜を形成する工程、及び上記レジスト下層膜に電子線照射することによってレジスト下層膜を硬化する工程、その上にハードマスクを形成する工程、更にその上にレジスト膜を形成する工程、露光と現像によりレジストパターンを形成する工程、レジストパターンによりハードマスクをエッチングする工程、パターン化されたハードマスクによりレジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法、
第10観点として、上記半導体基板が高さ/直径で示されるアスペクト比が1以上のホールを有する半導体基板である第7観点乃至第9観点のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法、及び
第11観点として、上記電子線照射が、吸収線量として1〜300kGyの範囲で行われる第7観点乃至第10観点のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のレジスト下層膜形成組成物により、電子線照射によって、フォトレジストと比較して大きなドライエッチング速度を有し、フォトレジストとのインターミキシングを起こさない、優れたレジスト下層膜を形成することができる。
【0015】
また、レジスト下層膜に基板加工時のハードマスク機能を持たせたレジスト下層膜にも使用できる。即ち、耐ドライエッチング速度が遅くなる様に炭素含有量の高い芳香族化合物を多用することにより、フォトレジストに比べてドライエッチング速度の遅いハードマスク機能を持ったレジスト下層膜が得られる。
【0016】
また、本発明のレジスト下層膜形成組成物により、高さ/直径で示されるアスペクト比が1以上であるホールを有する半導体基板の表面を平坦化することができる。そのため、その上に塗布、形成されるフォトレジスト等の膜厚の均一性を上げることができる。そして、ホールを有する基板を用いたプロセスにおいても、良好なフォトレジストパターンを形成することができる。
【0017】
本発明のレジスト下層膜形成組成物により、半導体基板に形成されたホールを隙間(ボイド)を発生することなくレジスト下層膜で充填することができる。
【0018】
また、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、半導体基板上に塗布した後に高温での加熱を行うことなく、電子線照射によってレジスト下層膜を硬化し形成することができる。そのため、低分子量の成分の揮発または昇華による周辺装置の汚染を防ぐことができる。昇華物の発生が有る場合は、加工装置内に昇華物が付着し、その昇華物が固まりを形成し、その固まりが半導体基板上に異物として落下し半導体製品の不良の原因となる。しかし、本発明のレジスト下層膜は、半導体基板に塗布した後、高温での加熱を必要とせず、溶剤の除去程度の加熱の後、電子線照射によりレジスト下層膜を硬化し形成する。従って、昇華物発生が原因となる様な上記の問題が起こらない。
また、高温での加熱を必要としないので、低分子量の成分をレジスト下層膜形成組成物に使用しても昇華等の懸念がなく、比較的多量の低分子量の成分をレジスト下層膜形成組成物に使用することができる。そのため、比較的低粘度のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成することができる。そして、ホールの充填性や半導体基板の平坦化性に優れたレジスト下層膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいてフォトレジストの下層に使用される下層膜を電子線照射によって形成するための組成物であって、重合性物質を含むレジスト下層膜形成組成物である。
【0020】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、重合性物質と溶剤を含み固形分は例えば0.5〜50質量%、又は3〜40質量%、又は10〜30質量%の範囲で用いることができる。固形分は、レジスト下層膜形成組成物から溶剤を除いた残りの全成分である。
【0021】
上記重合性物質は、電子線照射による重合可能な反応性基を少なくとも一つ有する物質である。
【0022】
電子線照射による重合可能な反応性基は、炭素と炭素の不飽和多重結合を有する反応性基であり、炭素と炭素の二重結合、及び炭素と炭素の三重結合を含む反応性基であるが、炭素と炭素の二重結合が好ましく用いられる。
【0023】
上記の炭素と炭素の二重結合を含む反応性基としては、例えばアクリレート基、メタクリレート基、及びビニルエーテル基が挙げられる。
【0024】
本発明に用いられる重合性物質は、これらの反応性基を含む化合物として用いる場合と、これらの反応性基を含む樹脂として用いる場合がある。化合物として用いる場合も、樹脂として用いる場合も分子内に1個乃至4個のアクリレート基、メタクリレート基、又はビニルエーテル基を有するものである。
【0025】
即ち、分子内に1個乃至4個のアクリレート基又はメタクリレート基を有する化合物(化合物1)、分子内に1個乃至4個のビニルエーテル基を有する化合物(化合物2)、分子内に1個乃至4個のアクリレート基又はメタクリレート基を有するポリエステル(メタ)アクリレート基を有するポリエステルアクリレート(樹脂1)、分子内に1個乃至4個のアクリレート基又はメタクリレート基を有するポリウレタンアクリレート(樹脂2)、分子内に1個乃至4個のアクリレート基又はメタクリレート基を有するエポキシアクリレート樹脂(樹脂3)が挙げられる。
【0026】
重合性物質として分子内に1個乃至4個のアクリレート基又はメタクリレート基を有する化合物(化合物1)としては、下記式(1):
【0027】
【化1】

【0028】
(式(1)中で、Rはそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、Rはそれぞれ水素原子、又はメチル基を示す。)が挙げられる。
【0029】
この化合物の分子量は290〜3000、又は290〜1000 である。
式(1)中のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、1−メチル−シクロプロピル、2−メチル−シクロプロピル、n−ペンチル、1−メチル−n−ブチル、2−メチル−n−ブチル、3−メチル−n−ブチル、1,1−ジメチル−n−プロピル、1,2−ジメチル−n−プロピル、2,2−ジメチル−n−プロピル、1−エチル−n−プロピル、シクロペンチル、1−メチル−シクロブチル、2−メチル−シクロブチル、3−メチル−シクロブチル、1,2−ジメチル−シクロプロピル、2,3−ジメチル−シクロプロピル、1−エチル−シクロプロピル、2−エチル−シクロプロピル、n−ヘキシル、1−メチル−n−ペンチル、2−メチル−n−ペンチル、3−メチル−n−ペンチル、4−メチル−n−ペンチル、1,1−ジメチル−n−ブチル、1,2−ジメチル−n−ブチル、1,3−ジメチル−n−ブチル、2,2−ジメチル−n−ブチル、2,3−ジメチル−n−ブチル、3,3−ジメチル−n−ブチル、1−エチル−n−ブチル、2−エチル−n−ブチル、1,1,2−トリメチル−n−プロピル、1,2,2−トリメチル−n−プロピル、1−エチル−1−メチル−n−プロピル、1−エチル−2−メチル−n−プロピル、シクロヘキシル、1−メチル−シクロペンチル、2−メチル−シクロペンチル、3−メチル−シクロペンチル、1−エチル−シクロブチル、2−エチル−シクロブチル、3−エチル−シクロブチル、1,2−ジメチル−シクロブチル、1,3−ジメチル−シクロブチル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2,3−ジメチル−シクロブチル、2,4−ジメチル−シクロブチル、3,3−ジメチル−シクロブチル、1−n−プロピル−シクロプロピル、2−n−プロピル−シクロプロピル、1−i−プロピル−シクロプロピル、2−i−プロピル−シクロプロピル、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピル等が挙げられる。これらのアルキル基はハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、アクリレート基、メタクリレート基等で置換されていても良い。
【0030】
重合性物質として分子内に1個乃至4個のアクリレート基又はメタクリレート基を有する化合物(化合物1)として、式(1)で示される化合物は、例えば下記[1−1]〜[1−8]が例示される。
【0031】
【化2】

【0032】
また、重合性物質として分子内に1個乃至4個のアクリレート基又はメタクリレート基を有する化合物(化合物1)としては下記式(2):
【0033】
【化3】

【0034】
(但し、上記式(2)中のRは、式(1)中のRと同じである。Rは水素原子、又はメチル基である。qは1〜6の整数であり、nは0〜30の整数である。tは0〜3の整数であり、mはm=(4−t)を満たす整数である。)が挙げられる。特にqが2〜3であり、式(2)中のnの総和が4〜25であり、mが3〜4である場合が好ましい。
【0035】
この化合物1の分子量は、300〜20000又は300〜10000である。
【0036】
上記式(2)は、例えば[2−1]〜[2−16]:
【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
が例示される。
重合性物質として分子内に1個乃至4個のビニルエーテル基を有する化合物(化合物2)としては例えば以下の化合物が例示される。ビニル−2−クロロエチルエーテル、ビニル−ノルマルブチルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビス(4−(ビニロキシメチル)シクロヘキシルメチル)グルタレート、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、アジピン酸ジビニルエステル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリス(4−ビニロキシ)ブチルトリメリレート、ビス(4−(ビニロキシ)ブチル)テレフタレート、ビス(4−(ビニロキシ)ブチルイソフタレート、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル及びシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等を挙げることができる。
【0041】
重合性物質として分子内に1個乃至4個のアクリレート基又はメタクリレート基を有するポリエステル(メタ)アクリレート基を有するポリエステルアクリレート(樹脂1)は、式(3):
【0042】
【化5】

【0043】
で示される。
【0044】
式(3)において、Rは水素原子、またはメチル基である。Rは2価アルコールに基づく有機基であり、2つの水酸基から2つの水素原子を取り除いた2価の有機基である。Rは2塩基酸に基づく有機基であり、2つのカルボキシル基から2つの水素原子を取り除いた2価の有機基である。式(3)においてnは繰り返し単位の数を示し、1〜200、又は1〜40の整数である。分子量は200〜100000、又は200〜20000である。
【0045】
上記の2価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール等が挙げられる。これらの2価アルコールはハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、アクリレート基、メタクリレート基等で置換されていても良い。
【0046】
上記の2塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セパシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。これらの2塩基酸はハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、アクリレート基、メタクリレート基等で置換されていても良い。
【0047】
分子内に1個乃至4個のアクリレート基又はメタクリレート基を有するポリウレタン(メタ)アクリレートは、式(4):
【0048】
【化6】

【0049】
で示される。
【0050】
式(4)において、Rは多価アルコールに由来する有機基であり、2価アルコール、3価アルコールに由来する2価乃至3価の有機基が挙げられる。3価アルコールは例えばグリセリン、ベンゼントリオール、ナフタレントリオール等ある。2価アルコールは式(3)のRの2価アルコールが例示される。
はイソシアネート基であり、式(5):
【0051】
【化7】

【0052】
で示される。式(5)中で、Rは炭素数1〜10のメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0053】
またRは上記2価アルコールに由来する2価有機基が挙げられる。
【0054】
式(4)において、nは繰り返し単位の数を示し、1〜200、又は1〜40の整数である。分子量は350〜150000、又は350〜30000である。
【0055】
分子内に1個乃至4個のアクリレート基、又はメタクリレート基を有するエポキシアクリレート樹脂としては式(6):
【0056】
【化8】

【0057】
が挙げられる。Rは水素原子、又はメチル基を示す。RはビスA型エポキシ樹脂残基や、グリシジルシアヌレート残基を示し、これらの残基はハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、アクリレート基、メタクリレート基等で置換されていても良い。式(6)の樹脂は、例えば[6−1]〜[6−6]が挙げられる。
【0058】
【化9】

【0059】
上記の重合性物質は、レジスト下層膜形成組成物の全固形分中で、50〜100質量%、又は50〜98質量%である。
【0060】
本発明のレジスト下層膜形成組成物には、上記重合性物質の他に必要に応じて、界面活性剤、ポリマー化合物、酸化防止剤、熱重合禁止剤、表面改質剤及び脱泡剤等を添加することができる。
【0061】
界面活性剤を添加することによって、ピンホールやストレーション等の発生を抑え、また、下層膜形成組成物の塗布性を向上させることができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル及びポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル化合物、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー化合物、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート及びソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル化合物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート及びポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル化合物が挙げられる。また、商品名エフトップEF301,EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製)、商品名メガファックF171、F173、R−08、R−30(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤及びオルガノシロキサンポリマ−KP341(信越化学工業(株)製)等を上げることができる。界面活性剤が使用される場合、その添加量としては、重合性物質100質量部に対して、例えば、0.1〜5質量部であり、または0.5〜2質量部である。
【0062】
ポリマー化合物を使用することにより、本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜の屈折率、減衰係数、及び吸光性能等を調節することができ、上部に塗布されるレジスト膜の露光時の乱反射防止の働きをする。それらポリマー化合物は、例えばベンゼン環を有するポリマー化合物を使用することにより、ArFエキシマレーザ(波長193nm)に対するレジスト下層膜の吸光性能を高めることができる。また、例えば、ナフタレン環またはアントラセン環を有するポリマー化合物を使用することにより、KrFエキシマレーザ(波長248nm)に対する下層膜の吸収性能を高めることができる。
【0063】
ポリマー化合物としては、その種類に特に制限はなく、重量平均分子量が1000〜100000程度の種々のポリマー化合物を用いることができる。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環を有するアクリレートポリマー、メタクリレートポリマー、ノボラックポリマー、スチレンポリマー、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリエステル及びポリイミド等を挙げることができる。
【0064】
また、半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいて、フォトレジスト下層の反射防止膜に使用されている吸光性能に優れたポリマー化合物を使用することもできる。このようなポリマー化合物の使用によって、本発明の下層膜形成組成物から形成される下層膜の反射防止膜としての性能を高めることができる。
【0065】
ポリマー化合物が使用される場合、その添加量としては重合性物質100質量部に対して、例えば、0.1〜50質量部である。
【0066】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、前記重合性物質等の各成分を溶剤に溶かした溶液状態で使用されることが好ましい。溶剤としては、各成分を溶解し、均一溶液とできるものであれば使用することができる。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N−ジメチルホルムアミド、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド及びN−メチルピロリドン等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。溶剤としては、沸点が80〜250℃、または100〜200℃、または120〜180℃である溶剤が好ましく使用される。溶剤の沸点が低い場合には、レジスト下層膜形成組成物の塗布中に溶剤が多く蒸発し、粘度の上昇が生じ、塗布性の低下を招くことがある。溶剤の沸点が高い場合には、レジスト下層膜形成組成物の塗布後の乾燥に時間を要することが考えられる。
【0067】
以下、本発明のレジスト下層膜形成組成物の使用について説明する。
【0068】
半導体装置に製造に使用される半導体基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンウエハ基板、シリコンナイトライド基板、ガラス基板、ITO基板、ポリイミド基板、低誘電率材料(low−k材料)被覆基板等)の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のレジスト下層膜形成組成物が塗布され塗布膜が形成される。そして、塗布膜に電子線照射を行う前に、必要に応じて乾燥工程をおくことができる。溶剤を含むレジスト下層膜形成組成物が使用された場合は、乾燥工程をおくことが好ましい。
【0069】
乾燥工程は、高温での加熱という方法でなければ特に制限はない。高温(例えば150℃、またはそれ以上の温度)で加熱されると、塗布膜に含まれる固形分の昇華等が起こり、装置を汚染することが考えられるからである。この様な昇華が起こると加工装置内を汚染し、加工装置内に付着した昇華物の固まりが半導体基板上に落下し、落下物が異物の原因となり半導体不良を起こす場合がある。本発明ではレジスト下層膜を塗布した後に乾燥工程を経て、電子線照射によりレジスト下層膜を硬化し形成するためこの様な問題が起こらない。
上記乾燥工程は、例えば、ホットプレート上、基板を50〜100℃で0.1〜10分間加熱することによって行うことができる。また、例えば、室温(20℃程度)で風乾することで行うことができる。
【0070】
次に塗布されたレジスト下層膜に対して電子線照射が行われる。電子線照射には、前記の電子線重合化合物に作用し重合性物質の重合を起こすことができる方法であれば、特に制限なく使用することができる。照射する電子線量は、吸収線量として1から300kGy程度の範囲で調節するのが望ましい。1kGy未満では十分な照射効果が得られず、300kGyを超えるような照射は基材を劣化させる恐れがあるため好ましくない。電子線の照射方法としては、例えばスキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが用いられ、電子線 を照射する際の加速電圧は、照射する側の基材の厚さによりコントロールする必要があるが、20から100kV程度が適当である。
【0071】
電子線照射によって塗布膜中の電子線重合化合物よりカチオン種や活性ラジカルが生じ、そして、これらにより塗布膜中の重合性物質の重合反応が起こる。電子線重合化合物中の付加重合性不飽和結合を有するラジカル重合が電子線照射により起こる。そして、この重合反応の結果、レジスト下層膜が形成される。このようにして形成されたレジスト下層膜は、その上層に塗布されるフォトレジスト用組成物に使用されている溶剤、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ピルビン酸メチル、乳酸エチル及び乳酸ブチル等に対する溶解性が低いものとなる。このため、本発明のレジスト下層膜形成組成物より形成されるレジスト下層膜はフォトレジストとのインターミキシングを起こさないものとなる。
【0072】
本発明のレジスト下層膜形成組成物を、図1に示すような高さ/直径で示されるアスペクト比が1以上、例えば1〜10、または2〜5のホールを有する半導体基板に適用することができる。そして、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、そのようなホールを隙間(ボイド)を発生させることなくレジスト下層膜で充填するために使用することができる。また、アスペクト比が1以上のホールを密疎に有する半導体基板(ホールが密に存在する部分と疎に存在する部分とを有する基板)に本発明のレジスト下層膜形成組成物を適用することができる。そして、本発明のレジスト下層膜形成組成物は、そのようなホールが密疎に存在する基板の表面に平坦なレジスト下層膜を形成するために使用することができる。
【0073】
また、本発明のレジスト下層膜形成組成物を1より小さいアスペクト比のホールを有する半導体基板や、段差を有する半導体基板に対しても使用することができる。また、段差などを有さない半導体基板に対しても使用することができる。
【0074】
本発明のレジスト下層膜形成組成物より形成されるレジスト下層膜の膜厚としては、基板表面上で、例えば20〜2000nmであり、または30〜1000nmであり、または50〜800nmである。
【0075】
次に、レジスト下層膜の上にフォトレジストが形成される。これによって、半導体基板上にレジスト下層膜及びフォトレジストの積層構造が形成される。フォトレジストの形成は、周知の方法、すなわち、フォトレジスト用組成物溶液のレジスト下層膜上への塗布及び加熱によって行なうことができる。本発明のレジスト下層膜の上に形成されるフォトレジストとしては特に制限はなく、汎用されているネガ型フォトレジスト、ポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。例えば、ノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジストなどがあり、例えば、シプレー社製商品名APEX−E、住友化学工業(株)製商品名PAR710、信越化学工業(株)製商品名SEPR430等が挙げられる。
【0076】
次に、所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光には、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)及びF2エキシマレーザ(波長157nm)等を使用することができる。露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃〜150℃、加熱時間0.3〜10分間から適宜、選択される。
【0077】
次いで、現像液によって現像が行なわれる。これにより、例えばポジ型フォトレジストが使用された場合は、露光された部分のフォトレジストが除去され、フォトレジストのパターンが形成される。
【0078】
現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、温度5〜50℃、時間0.1〜5分間から適宜選択される。
【0079】
そして、このようにして形成されたフォトレジストのパターンを保護膜として、レジスト下層膜の除去及び半導体基板の加工が行なわれる。レジスト下層膜の除去は、テトラフルオロメタン、パーフルオロシクロブタン(C8)、パーフルオロプロパン(C)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素等のガスを用いたドライエッチングにより行うことができる。レジスト下層膜の除去によって、半導体基板上にレジスト下層膜及びフォトレジストからなるパターンが形成される。
【0080】
また、本発明のレジスト下層膜の上には、フォトレジストの形成前に反射防止膜層を形成することができる。その反射防止膜としては特に制限はなく、既存の反射防止膜が使用可能であり、有機反射防止膜、ケイ素含有の無機反射防止膜、又は有機と無機をハイブリッド化させた反射防止膜を用いることができる。例えば、これまでリソグラフィープロセスにおいて慣用されている反射防止膜形成用の組成物を用いて、慣用されている方法、例えば、スピナー、コーターによる下層膜上への塗布、及び焼成によって反射防止膜の形成を行なうことができる。反射防止膜組成物としては、例えば、吸光性化合物、樹脂及び溶剤を主成分とするもの、化学結合により連結した吸光性基を有する樹脂、架橋剤及び溶剤を主成分とするもの、吸光性化合物、架橋剤及び溶剤を主成分とするもの、吸光性を有する高分子架橋剤及び溶剤を主成分とするもの、等が挙げられる。これらの反射防止膜組成物はまた、必要に応じて、酸成分、酸発生剤成分、レオロジー調整剤等を含むことができる。吸光性化合物としては、反射防止膜の上に設けられるフォトレジスト中の感光成分の感光特性波長領域における光に対して高い吸収能を有するものであれば用いることができ、例えば、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アゾ化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、アントラキノン化合物、トリアジン化合物等が挙げられる。樹脂としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ノボラック樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。化学結合により連結した吸光性基を有する樹脂としては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環といった吸光性芳香環構造を有する樹脂を挙げることができる。
【0081】
また、本発明の下層膜形成組成物を塗布する前に、半導体基板上に反射防止膜又は平坦化膜を形成することができる。
【0082】
本発明のレジスト下層膜形成組成物より形成されるレジスト下層膜は、また、リソグラフィープロセスにおいて使用される光の波長によっては、その光に対する吸収を有することがある。そのような場合には、基板からの反射光を防止する効果を有する層、すなわち反射防止膜として機能することができる。さらに、本発明のレジスト下層膜は、基板とフォトレジストとの相互作用の防止するための層、フォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の半導体基板への悪作用を防ぐための層、加熱焼成時に半導体基板から生成する物質の上層フォトレジストへの拡散を防ぐための層等として使用することも可能である。
【0083】
今後、レジストパターンの微細化が進行すると、解像度の問題やレジストパターンが現像後に倒れるという問題が生じ、フォトレジストの薄膜化が望まれてくる。そのため、基板加工に充分なレジストパターン膜厚を得ることが難しく、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間に作成されるレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。このようなプロセス用のレジスト下層膜として従来の高エッチレート性レジスト下層膜とは異なり、フォトレジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つレジスト下層膜、フォトレジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つレジスト下層膜下層膜や半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つレジスト下層膜が要求されるようになってきている。また、このようなレジスト下層膜には反射防止能を付与することも可能であり、従来の反射防止膜の機能を併せ持つことができる。
【0084】
本発明では基板上に本発明のレジスト下層膜を成膜した後、レジスト下層膜上に直接、または必要に応じて1層乃至数層の塗膜材料をレジスト下層膜上に成膜した後、フォトレジストを塗布することができる。これによりフォトレジストのパターン幅が狭くなり、パターン倒れを防ぐ為にフォトレジストを薄く被覆した場合でも、適切なエッチングガスを選択することにより基板の加工が可能になる。
【0085】
即ち、半導体基板にレジスト下層膜形成組成物により該レジスト下層膜を形成する工程、その上にケイ素成分等を含有する塗膜材料によるハードマスクを形成する工程、更にその上にレジスト膜を形成する工程、露光と現像によりレジストパターンを形成する工程、レジストパターンによりハードマスクをエッチングする工程、パターン化されたハードマスクにより該レジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を経て半導体装置を製造することができる。
【0086】
本発明のレジスト下層膜は、これらの要求を満たす適度なドライエッチング速度を得ることができる特性を有している。
【0087】
さらに、本発明のレジスト下層膜材料は、プロセス条件によっては、光の反射を防止する機能と、更には基板とフォトレジストとの相互作用の防止或いはフォトレジストに用いられる材料又はフォトレジストへの露光時に生成する物質の基板への悪作用を防ぐ機能とを有する膜としての使用が可能である。
【0088】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0089】
合成例1
プロピレングリコールモノメチルエーテル40gに、ベンジルアクリレート2.5g、ヒドロキシプロピルアクリレート7.5gを溶解させ、反応液中に窒素を30分流した後、70℃に昇温した。反応溶液を70℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.3gを添加し、窒素雰囲気下、70℃で24時間撹拌することにより、ベンジルアクリレートとヒドロキシプロピルアクリレートのコポリマー溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、重量平均分子量は9800であった。
【0090】
GPCの測定には、東ソー(TOSOH)(株)製、GPC(RI8020、SD8022、CO8020、AS8020、DP8020)装置により、合成例1で得たポリマー0.05重量%のDMF溶液を10μlに調整し、流量0.6ml/minで30分流した後、IR(赤外線吸収スペクトル)で検出させる試料の溶出時間を測定した。
カラムは、ガードカラムとして、Shodex Asahipak GF1G7Bを使用し、Shodex Asahipak GF710HQ、GF510HQ,及びGF310HQを用い、カラム温度を40℃に設定した。
【0091】
実施例1
プロピレングリコールモノメチルエーテル11.39gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート11.39gを混合し、電子線による重合性物質としてウレタンアクリレート系化合物(三菱レイヨン(株)製)2.0g、電子線による重合性物質としてポリエステルアクリレート系化合物(三菱レイヨン(株)製)2.0g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名メガファックR30)0.020gを加え15質量%溶液とした。そして、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、レジスト下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0092】
上記電子線重合性物質ウレタンアクリレートは下記式(7):
【0093】
【化10】

【0094】
の構造を有するものであった。
【0095】
上記電子線重合性物質ポリエステルアクリレートは下記式(8):
【0096】
【化11】

【0097】
実施例2
プロピレングリコールモノメチルエーテル11.39gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート11.39gを混合し、電子線による重合性物質としてウレタンアクリレート系化合物(三菱レイヨン(株)製)2.0g、電子線による重合性物質としてジペンタエリスリトール ペンタ−/ヘキサ−アクリレート (シグマアルドリッチジャパン(株)製、分子量524.51)2.0g、及び界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名メガファックR30)0.020gを加え15質量%溶液とした。そして、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、下層膜形成組成物の溶液を調製した。
上記電子線による重合性物質のウレタンアクリレートは式(7)と同じものを使用した。
ジペンタエリスリトール ペンタ−/ヘキサ−アクリレートは、式(9)と式(10):
【0098】
【化12】

【0099】
で示される構造であり、式(9)と式(10)を1:1のモル比で有するものであった。
【0100】
実施例3
プロピレングリコールモノメチルエーテル12.23gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.23gを混合し、電子線による重合性物質としてポリエステルアクリレート系化合物(三菱レイヨン(株)製)2.0g、電子線による重合性物質としてジペンタエリスリトール ペンタ−/ヘキサ−アクリレート (シグマアルドリッチジャパン(株)製、分子量524.51)2.0g、及び合成例1で得たベンジルアクリレートとヒドロキシプロピルアクリレートのコポリマー溶液2.0g、界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名メガファックR30)0.020gを加え15質量%溶液とした。そして、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0101】
電子線による重合性物質としてポリエステルアクリレート化合物は式(8)の化合物を用い、ジペンタエリスリトール ペンタ−/ヘキサ−アクリレートは式(9)と式(10)を1:1のモル比に有するものであった。
【0102】
実施例4
プロピレングリコールモノメチルエーテル12.23gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.23gを混合し、電子線による重合性物質としてペンタエリスリトール テトラアクリレート(三菱レイヨン(株)製)2.0g、電子線による重合性物質としてポリエステルアクリレート系化合物(三菱レイヨン(株)製)2.0g、及び合成例1で得たベンジルアクリレートとヒドロキシプロピルアクリレートのコポリマー溶液2.0g、界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名メガファックR30)0.020gを加え15質量%溶液とした。そして、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、下層膜形成組成物の溶液を調製した。
電子線による重合性物質のペンタエリスリトールテトラアクリレートは式[2−11]で示され、電子線による重合性物質のポリエステルアクリレート系化合物は式(8)で示されるものであった。
【0103】
実施例5
プロピレングリコールモノメチルエーテル12.23gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.23gを混合し、電子線による重合性物質としてペンタエリスリトールエトキシレーテッドテトラアクリレート(三菱レイヨン(株)製)2.0g、電子線による重合性物質としてウレタンアクリレート系化合物(三菱レイヨン(株)製)2.0g、及び合成例1で得たベンジルアクリレートとヒドロキシプロピルアクリレートのコポリマー溶液2.0g、界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名メガファックR30)0.020gを加え15質量%溶液とした。そして、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、下層膜形成組成物の溶液を調製した。
電子線による重合性物質としてペンタエリスリトールエトキシレーテッドテトラアクリレートは式[2−12]で示され、電子線による重合性物質としてウレタンアクリレート系化合物は式(7)で示されるものであった。
【0104】
実施例6
プロピレングリコールモノメチルエーテル12.23gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート12.23gを混合し、電子線による重合性物質としてペンタエリスリトールプロポキシレートトリアクリレート (シグマアルドリッチジャパン(株)製、数平均分子量530)2.0g、電子線による重合性物質としてジペンタエリスリトール ペンタ−/ヘキサ−アクリレート (シグマアルドリッチジャパン(株)製、分子量524.51)2.0g、及び合成例1で得たベンジルアクリレートとヒドロキシプロピルアクリレートのコポリマー溶液2.0g、界面活性剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名メガファックR30)0.020gを加え15質量%溶液とした。そして、孔径0.2μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、下層膜形成組成物の溶液を調製した。
【0105】
ペンタエリスリトールプロポキシレートトリアクリレートは式[2−15]で示され、ジペンタエリスリトール ペンタ−/ヘキサ−アクリレートは式(9)と式(10)を1:1のモル比で含有するものであった。
比較例1
乳酸エチル120gに、2−ヒドロキシエチルアクリレート30gを溶解させ、反応液中に窒素を30分流した後、70℃に昇温した。反応溶液を70℃に保ちながらアゾビスイソブチロニトリル0.3gを添加し、窒素雰囲気下、70℃で24時間撹拌することにより、ポリ(2−ヒドロキシエチル)アクリレートの溶液を得た。得られたポリマーのGPC分析を行ったところ、GPC曲線の面積比から得た全分子量ポリマー中における重量平均分子量3000以下ポリマーの割合は8%であり、重量平均分子量は9800であった。
次に合成したで得たポリ(2−ヒドロキシエチル)アクリレートを含む溶液20gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル0.92g、ピリジウムp−トルエンスルホン酸0.0046g、プロピレングリコールモノメチルエーテル9.50g、及び乳酸エチル6.18gを加え、13.5%溶液とした後、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過し、リソグラフィー用熱硬化性ギャップフィル材形成組成物の溶液を調製した。
【0106】
フォトレジスト溶剤への溶出試験
実施例1〜6で得たレジスト下層膜形成組成物の溶液をスピナーにより、それぞれ半導体基板(シリコンウエハ基板)上に塗布し塗布膜を形成した。そして、溶剤を除去して乾燥させるため、ホットプレート上、100℃で1分間加熱した。
【0107】
次いで、塗布膜を電子線照射装置((株)アイ・エレクトロンビーム製、型式CB250/15/180L)を用い、加速電圧100kV、電流値3.52mA、K値14.6、照射線量50.0kGyの条件で照射し、レジスト下層膜(膜厚440nm)を形成した。これらのレジスト下層膜をフォトレジストに使用する溶剤である乳酸エチルに浸漬し、それらの溶剤に不溶であることを確認した。
【0108】
フォトレジストとのインターミキシングの試験
実施例1〜6で得たレジスト下層膜形成組成物の溶液をスピナーにより、それぞれシリコンウエハ上に塗布し塗布膜を形成した。そして、溶剤を除去して乾燥させるため、ホットプレート上、100℃で1分間加熱した。次いで、塗布膜を電子線照射装置((株)アイ・エレクトロンビーム製、型式CB250/15/180L)を用い、加速電圧100kV、電流値3.52mA、K値14.6、照射線量50.0kGyの条件で照射し、レジスト下層膜(膜厚440nm)を形成した。これらのレジスト下層膜の上に、市販のフォトレジスト溶液(シプレー社製、商品名APEX−E)をスピナーにより塗布した。ホットプレート上、90℃で1分間加熱した。そして、フォトレジストを露光後、露光後加熱を90℃で1.5分間行った。フォトレジストを現像させた後、レジスト下層膜の膜厚を測定し、実施例1〜6より形成したレジスト下層膜とフォトレジストとのインターミキシングが起こっていないことを確認した。
【0109】
平坦化率、充填性の試験
実施例3〜6で得たレジスト下層膜形成組成物の溶液をスピナーにより、それぞれ、ホール(直径0.18μm、深さ1.0μm)を有する二酸化シリコン(SiOウエハー)基板上に塗布して塗布膜を形成した。使用した基板は図1に示すようなホールのIso(粗)とDense(密)パターンを有する基板である。Isoパターンは、ホール中心から隣のホール中心までの間隔が、当該ホールの直径の5倍であるパターンである。また、Denseパターンは、ホール中心から隣のホール中心までの間隔が、当該ホールの直径の1倍であるパターンである。ホールの深さは1.0μmであり、ホールの直径は0.18μmである。
【0110】
溶剤を除去して乾燥させるため、ホットプレート上、100℃で1分間加熱した。次いで、塗布膜を電子線照射装置((株)アイ・エレクトロンビーム製、型式CB250/15/180L)を用い、加速電圧100kV、電流値3.52mA、K値14.6、照射線量50.0kGyの条件で照射し、レジスト下層膜を形成した。膜厚は、ホールパターンが近傍に無いオープンエリアで0.44μmであった。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて基板の断面形状を観察することにより、レジスト下層膜による平坦化率を評価した。平坦化率は、下式に従い求めた。基板上のホールを、完全に平坦化できたときの平坦化率は100%である。結果を表1に示す。
【0111】
平坦化率={1−(ホール中心部での下層膜の凹み深さa)/(ホールの深さb)}×100
また、ホール内部にボイド(隙間)の発生は観察されず、ホール内部が下層膜で充填されていることが観察された。
[表1]
表1
――――――――――――――――――――――――――――――――――
膜厚(nm) 平坦化率(%)
Iso Dense Bias Iso Dense Bias
――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例3 440 300 140 100 100 0
実施例4 450 250 200 100 100 0
実施例5 430 290 140 100 100 0
実施例6 440 380 60 100 100 0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例3〜6のレジスト下層膜のIso(粗)とDense(密)パターン上の膜厚差(Bias)は小さい。実施例3〜6の下層膜は、特に膜厚一定が困難である微細Denseホールパターン上での流動性に優れる。これは、ホール基板上の単位面積当たりのホール数(ホール密度)が、Iso部に比べ大きいDense部においても、それら多数の下層膜形成組成物の溶液がスムーズに流れ込み、一定の膜厚が得られるためであり、その結果、Iso部とDense部の膜厚差が小さく、かつ平坦化率が大きくなったものと考えられる。また、実施例1〜11の下層膜は、Iso部とDense部に関わらず平坦化できた。
光学パラメータの測定
実施例1〜6で調製した下層膜形成組成物の溶液をスピナーにより、シリコンウェハ上に塗布し塗布膜を形成した。そして、溶剤を除去して乾燥させるため、ホットプレート上、100℃で1分間加熱した。次いで、電子線照射装置((株)アイ・エレクトロンビーム製、型式CB250/15/180L)を用い、加速電圧100kV、電流値3.52mA、K値14.6、照射線量50.0kGyの条件で照射し、レジスト下層膜(膜厚320nm)を形成した。そして、これらのレジスト下層膜を分光エリプソメーターにより、波長193nmでの屈折率(n値)及び減衰係数(k値)を測定した。結果を表2に示す。
[表2]
表2
――――――――――――――――――――――――――
屈折率(n値) 減衰係数(k値)
――――――――――――――――――――――――――
実施例1 1.46 0.47
実施例2 1.72 0.11
実施例3 1.55 0.49
実施例4 1.72 0.10
実施例5 1.57 0.27
実施例6 1.49 0.15
――――――――――――――――――――――――――
ドライエッチング速度の試験
実施例1〜6で得たレジスト下層膜形成組成物の溶液をスピナーにより、それぞれ、半導体基板(シリコンウエハ基板)上に塗布し塗布膜を形成した。そして、溶剤を除去して乾燥させるため、ホットプレート上、100℃で1分間加熱した。次いで、電子線照射装置((株)アイ・エレクトロンビーム製、型式CB250/15/180L)を用い、加速電圧100kV、電流値3.52mA、K値14.6、照射線量50.0kGyの条件で照射し、レジスト下層膜を形成した。そして、これらのレジスト下層膜について、日本サイエンティフィック製RIEシステムES401を用い、ドライエッチングガスとしてCF4を使用した条件下でドライエッチング速度(単位時間当たりの膜厚の減少量)を測定した。結果を表2に示す。表中、選択性は、KrFレーザーリソグラフィー用のフォトレジスト(信越化学工業(株)製、商品名SEPR430)の同様の条件下でのドライエッチング速度を1.00とした時の、レジスト下層膜のドライエッチング速度を示したものである。
[表3]
表3
――――――――――――
選択性
――――――――――――
実施例1 1.75
実施例2 1.75
実施例3 1.95
実施例4 1.94
実施例5 1.93
実施例6 1.90
――――――――――――
実施例1〜6のレジスト下層膜形成組成物から得られたレジスト下層膜のエッチング速度は、フォトレジストに比較して大きいことが確認された。レジスト下層膜のドライエッチング速度がフォトレジストのドライエッチング速度よりも高いことの必要性は、レジスト下層膜上に形成されたフォトレジストを現像し、その後でドライエッチングにより基板の下地を露出させる工程で、レジスト下層膜のドライエッチング速度の方がフォトレジストのドライエッチング速度よりも高くなる事により、フォトレジストが削り取られる前に下層膜が除去されるので、現像されたフォトレジストのパターンを正確に基板に転写する事ができるためである。
(硬化時の昇華物の比較)
直径4インチのシリコンウエハー基板にスピンコーターにて、実施例1〜6のレジスト下層膜形成組成物を塗布した。そして、溶剤を除去して乾燥させるため、ホットプレート上、100℃で1分間加熱した。次いで、塗布膜を電子線照射装置((株)アイ・エレクトロンビーム製、型式CB250/15/180L)を用い、加速電圧100kV、電流値3.52mA、K値14.6、照射線量50.0kGyの条件で照射し、レジスト下層膜(膜厚440nm)を形成した。反射防止膜が塗膜されたウエハーを100℃に調整されたホットプレートが一体化した昇華物測定装置にセットして、120秒間ベークおよび昇華物をQCMセンサーに捕集した。
直径4インチのシリコンウエハー基板にスピンコーターにて、比較例1のレジスト下層膜形成組成物を塗布した。そして、溶剤を除去して乾燥させるため、ホットプレート上、205℃で1分間加熱した。
実施例1〜実施例6で得られたレジスト下層膜形成組成物の測定はホットプレートを100℃に昇温し、ポンプ流量が1m/sに設定し、最初の60秒間はエージングのために放置する。その後直ちに、スライド口から速やかにレジスト下層膜が被覆されたウエハーをホットプレートに乗せ(測定物をインストール)、60秒の時点から180秒の時点(60秒間)の昇華物の捕集を行った。
比較例1で得られたレジスト下層膜形成組成物の測定はホットプレートを205℃に昇温し、ポンプ流量が1m/sに設定し、最初の60秒間はエージングのために放置する。その後直ちに、スライド口から速やかにレジスト下層膜が被覆されたウエハーをホットプレートに乗せ(測定物をインストール)、60秒の時点から180秒の時点(60秒間)の昇華物の捕集を行った。
また、フローアタッチメント(検出部分)にはノズルをつけず、そのため口径が32mmになり、センサーとの距離が30mmのチャンバーユニットとの流路から気流が絞られることなく流入する。また、QCMセンサーはアルミシリコン材質の電極を用い、水晶振動子の直径(センサー直径)が14mm、水晶振動子表面の電極直径が5mm、共振周波数が9MHzのものを用いた。
各測定において、QCMセンサーはリアルタイムで昇華物測定できるように、パソコンにデータを直接取り込めるようにシリアルケーブルからの接続と専用ソフトのインストールを行った。
【0112】
得られた周波数変化は、測定に使用した水晶振動子の固有値からグラム換算して、60秒加熱後の反射防止膜が塗布されたウエハー1枚の昇華物量を記載した。
表には、実施例1〜6及び比較例1における60秒の測定装置が示す昇華物量(単位はng:ナノグラム)を記載した。
〔表4〕
表4
―――――――――――――――――――――
測定装置が示す60秒後の昇華物量(ng)
―――――――――――――――――――――
実施例1 580
実施例2 430
実施例3 400
実施例4 530
実施例5 540
実施例6 320
比較例1 1100
―――――――――――――――――――――
実施例1〜6、比較例1のレジスト下層膜形成組成物から得られたレジスト下層膜の昇華物量は昇華物をQCMセンサーに捕集する昇華物測定装置を用いて測定し、実施例1〜6のそれらの量は比較例1のそれらの量に比べて非常に小さいことが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1はホールを有する半導体基板にレジスト下層膜を形成した状態の断面図である。
【符号の説明】
【0114】
aはホール中心でのレジスト下層膜の凹み深さである。
【0115】
bは使用した半導体基板における当初のホールの深さである。
【0116】
cはレジスト下層膜である。
【0117】
dは半導体基板である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置製造のリソグラフィープロセスにおいてフォトレジストの下層に使用される下層膜を電子線照射によって硬化する組成物であって、電子線照射による重合性物質を含むレジスト下層膜形成組成物。
【請求項2】
前記重合性物質が電子線照射により重合可能な反応性基を少なくとも一つ有する化合物である請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
電子線照射による重合可能な反応性基が、炭素と炭素の不飽和多重結合を有する反応性基である請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
炭素と炭素の不飽和多重結合を有する反応性基が、アクリレート基、メタクリレート基、又はビニルエーテル基である請求項3に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
前記重合性物質が、分子内に1個乃至4個のアクリレート基、メタクリレート基、又はビニルエーテル基を有する化合物である請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
前記重合性物質が、分子内に1個乃至4個のアクリレート基、又はメタクリレート基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂である請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布してレジスト下層膜を形成する工程、及び上記レジスト下層膜に電子線照射することによってレジスト下層膜を硬化する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布してレジスト下層膜を形成する工程、及び上記レジスト下層膜に電子線照射することによってレジスト下層膜を硬化する工程、上記レジスト下層膜上にフォトレジスト組成物を塗布し加熱することによってフォトレジスト層を形成する工程、及び上記レジスト下層膜及びフォトレジスト層で被覆された半導体基板を露光する工程、露光後にフォトレジストを現像しレジストパターンを得る工程、レジストパターンによりレジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布してレジスト下層膜を形成する工程、及び上記レジスト下層膜に電子線照射することによってレジスト下層膜を硬化する工程、その上にハードマスクを形成する工程、更にその上にレジスト膜を形成する工程、露光と現像によりレジストパターンを形成する工程、レジストパターンによりハードマスクをエッチングする工程、パターン化されたハードマスクによりレジスト下層膜をエッチングする工程、及びパターン化されたレジスト下層膜により半導体基板を加工する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項10】
上記半導体基板が高さ/直径で示されるアスペクト比が1以上のホールを有する半導体基板である請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
上記電子線照射が、吸収線量として1〜300kGyの範囲で行われる請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−76551(P2008−76551A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253289(P2006−253289)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】