説明

電子装置の製造方法及び電子装置

【課題】電子部品と回路基板との隙間に存在するボイドを低減して、電子部品の信頼性を向上させる構造体を提供する。
【解決手段】回路基板10の電極部又は前記電子部品の端子部上に、前記回路基板10及び前記電子部品の隙間の間隔よりも薄い膜厚の第1の樹脂材を供給する工程と、前記第1の樹脂材を供給した後、前記電子部品の端子部を前記回路基板10の電極部に接触させたまま、前記回路基板10の電極部又は前記電子部品の端子部上に配設された半田材30を第1の温度で溶融して、前記電子部品の端子部を前記回路基板10の電極部に接続する工程と、前記電子部品の端子部を前記回路基板10の電極部に接続した後、前記回路基板10及び前記電子部品の隙間に第2の樹脂材を充填する工程と、前記第2の樹脂材を、前記第1の温度よりも低温である第2の温度で加熱する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、電子部品及び回路基板間にアンダーフィル材を充填した電子装置の製造方法及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置の小型化、薄型化、高密度化の要求から、電子部品(例えば半導体チップ)又は回路基板の何れかに形成した突起状の電極(バンプ)により、電子部品と回路基板とを電気的に接続する、所謂フリップチップ実装が用いられることがある。
【0003】
フリップチップ実装は、電子部品と回路基板とを直接バンプで接続するため、電子装置を加熱したときに、電子部品と回路基板との熱膨張率差に起因して、バンプ接続部に大きな負荷が生じる。このため、電子部品と回路基板との隙間にアンダーフィル材を充填して、バンプ接続部に生じる応力を緩和することがある。
【0004】
アンダーフィル材の充填法としては、例えば、電子部品を回路基板にフリップチップ実装した後、電子部品と回路基板との隙間に、流動性のあるアンダーフィル材を供給する、所謂アンダーフィル材後入れ法が用いられることがある。しかし、アンダーフィル材後入れ法を用いると、アンダーフィル材が硬化するまでの期間、電子部品及び回路基板がバンプ接続部だけで接続されることになる。このため、バンプ接続部の接続強度によっては、アンダーフィル材が硬化する前に、電子部品が回路基板から離脱する恐れがある。そこで、電子部品と回路基板との隙間に未硬化の接着剤を充填して、当該接着剤を硬化させることで、電子部品と回路基板との接続を補強することがある(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−198384号公報
【特許文献2】特開2000−315698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、未硬化の接着剤は、揮発性物質を含有している。このため、電子部品及び回路基板を加熱すると、接着剤から多量のガスが発生する。このとき、発生したガスが接着剤の外部に充分に排出されないと、接着剤中にボイドが発生して、電子装置の信頼性を低下させる。
【0007】
開示の技術は、電子部品と回路基板との隙間に存在するボイドを低減して、電子部品の信頼性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術の一観点によれば、回路基板上に電子部品をフリップチップ実装する電子装置の製造方法において、前記回路基板の電極部又は前記電子部品の端子部上に、前記回路基板及び前記電子部品の隙間の間隔よりも薄い膜厚の第1の樹脂材を供給する工程と、前記第1の樹脂材を供給した後、前記電子部品の端子部を前記回路基板の電極部に接触させたまま、前記回路基板の電極部又は前記電子部品の端子部上に配設された半田材を第1の温度で溶融して、前記電子部品の端子部を前記回路基板の電極部に接続する工程と、
前記電子部品の端子部を前記回路基板の電極部に接続した後、前記回路基板及び前記電子部品の隙間に第2の樹脂材を充填する工程と、前記第2の樹脂材を、前記第1の温度よりも低温である第2の温度で加熱する工程と、を含む電子装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、電子部品と回路基板との隙間に存在するボイドを低減して、電子部品の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態にかかる半導体装置の斜視図である。
【図2】第1の実施形態にかかる半導体装置の断面図である。
【図3】第1の実施形態にかかる回路基板の平面図である。
【図4】第1の実施形態にかかる回路基板の部分断面図である。
【図5】第1の実施形態にかかる半導体チップの側面図である。
【図6】第1の実施形態にかかる半導体チップの下面図である。
【図7】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の説明図である。
【図8】第1の実施形態の変形例にかかる半導体装置の断面図である。
【図9】第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
以下、図1〜図8を参照しながら、第1の実施形態を説明する。
[半導体装置の構造]
図1は、第1の実施形態にかかる半導体装置の斜視図、図2は、第1の実施形態にかかる半導体装置の断面図であって、図1のII−IIにおける断面を示している。
【0012】
図1又は図2に示すように、半導体装置は、所謂BGA(Ball Grid Array)型の半導体パッケージであって、回路基板10と、回路基板10にフリップチップ実装される半導体チップ20と、回路基板10の第1の電極パッド12p及び半導体チップ20のバンプ22を接続する半田材30と、第1の電極パッド12p及びバンプ22の接続部を補強する接着材40と、回路基板10及び半導体チップ20の隙間に充填されるアンダーフィル樹脂50と、外部接続端子として回路基板10に取り付けられる半田ボール60と、を備える。
【0013】
図3は、第1の実施形態にかかる回路基板10の平面図、図4は、第1の実施形態にかかる回路基板10の部分断面図であって、図3のIV−IVにおける断面を示している。
【0014】
回路基板10は、所謂ガラスエポキシ基板である。しかし、本実施形態は、これに限定されるものではなく、他のプリント基板、例えばガラスコンポジット基板やセラミック基板を用いても良い。
【0015】
図3又は図4に示すように、回路基板10は、コア材11と、第1の配線層12と、第2の配線層13と、を備える。
【0016】
コア材11は、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させたものである。コア材11は、平面視で略矩形状に形成されている。コア材11の厚さは、例えば150μm〜250μmである。コア材11の所定位置には、複数のスルーホール11aが形成されている。スルーホール11aは、コア材11を上下に貫通している。スルーホール11aの内部には、ビア11bが埋め込まれている。ビア11bは、スルーホール11aの内面に形成された導電膜11cと、導電膜11cの内側に充填された絶縁材11dと、を備える。導電膜11cは、第1の配線層12及び第2の配線層13を電気的に接続している。導電膜11cの材料としては、例えばCuが用いられる。絶縁材11dの材料としては、例えばエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂が用いられる。
【0017】
第1の配線層12は、コア材11の上面、即ち半導体チップ20と対向する表面に形成され、複数の第1の配線パターン12aを備えている。第1の配線層12の材料としては、例えばCu箔などの金属箔が用いられる。第1の配線層12は、コア材11の上面に、例えばCu箔などの金属箔を形成した後、当該金属箔の不要な部分をエッチングで除去することにより、第1の配線パターン12aのパターン形状に整形される。さらに、コア材11の上面には、第1のソルダレジスト膜14が形成されている。第1のソルダレジスト膜14の材料としては、例えばポリイミド樹脂などが用いられる。第1のソルダレジスト膜14は、第1の配線パターン12aを被覆しているが、半導体チップ20のバンプ22に対応する位置には、それぞれ開口部14aが形成されている。第1の配線パターン12aは、第1のソルダレジスト膜14の開口部14aから部分的に露出して、それぞれの露出領域が第1の電極パッド12pを構成している。これにより、回路基板10の上面には、各辺に沿って、半導体チップ20のバンプ22に対応するように、複数の第1の電極パッド12pが配列されている。第1の電極パッド12pの幅寸法は、例えば10μm〜60μmに設定される。第1の電極パッド12pの間隔も同様に、例えば10μm〜60μmに設定される。
【0018】
第2の配線層13は、コア材11の下面、即ち半田ボール60が取り付けられる表面に形成され、複数の第2の配線パターン13aを備えている。第2の配線層13の材料としては、例えばCu箔などの金属箔が用いられる。第2の配線層13は、コア材11の下面に、例えばCu箔などの金属箔を形成した後、当該金属箔の不要な部分をエッチングで除去することにより、第2の配線パターン13aのパターン形状に整形される。さらに、コア材11の下面には、第2のソルダレジスト膜15が形成されている。第2のソルダレジスト膜15の材料としては、例えばポリイミド樹脂などが用いられる。第2のソルダレジスト膜15は、第2の配線パターン13aを被覆しているが、回路基板10の下面全体に、複数の開口部15aがマトリクス状に形成されている。第2の配線パターン13aは、第2のソルダレジスト膜15の開口部15aから部分的に露出して、それぞれの露出領域が第2の電極パッド13pを構成している。これにより、回路基板10の下面には、複数の第2の電極パッド13pがマトリクス状に配列されている。これらの第2の電極パッド13pには、それぞれ半田ボール60が取り付けられる。半田ボール60は、半導体装置を他の実装基板(マザーボード)に実装するときに、外部接続端子として機能するものである。
【0019】
図5は、第1の実施形態にかかる半導体チップ20の側面図、図6は、第1の実施形態にかかる半導体チップ20の下面図である。半導体チップ20は、例えば半導体ウェハに複数の回路領域を作り込み、ダイシングにより個片化したものを想定している。しかし、本実施形態は、半導体チップに限定されるものではなく、他の電子部品を用いても良い。
【0020】
図5又は図6に示すように、半導体チップ20は、チップ本体21と、チップ本体21の下面、即ち回路基板10に対向する表面に形成された複数のバンプ22と、を備える。
【0021】
チップ本体21は、平面視で略矩形状に形成されている。チップ本体11の各辺の長さは、平面寸法で、約4mmに設定されている。チップ本体21の厚さは、約0.2mmに設定されている。但し、本実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、チップ本体21の平面形状は、三角形状、五角形状、それ以上の多角形状であっても良い。さらに、チップ本体21の平面形状は、円形状、楕円形状であっても良い。
【0022】
複数のバンプ22は、チップ本体21の各辺に沿って配列されている。バンプ22のピッチは、約10μm〜100μmに設定されている。バンプ22の直径寸法は、例えば10〜60μmに設定される。バンプ22の材料としては、例えば金が用いられる。バンプ22の製造方法としては、例えばボールボンディングを用いても良い。
【0023】
以上のような半導体チップ20のバンプ22は、図4に示すように、それぞれ回路基板10の第1の電極パッド12pに、半田材30を介して接続される。半田材30は、第1の電極パッド12pの表面全体及びバンプ22の先端部を被覆して、第1の電極パッド12pとバンプ22とを電気的かつ機械的に接続している。半田材30の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、Sn−Pb系はんだなどの鉛はんだ、又はSn−Ag系はんだ、Sn−Zn系などの鉛フリーはんだを用いても良い。回路基板10と半導体チップ20との隙間は、主としてバンプ22の高さに応じて定まるものであるが、本実施形態では、約60μmに設定されている。
【0024】
接着材40は、第1のソルダレジスト膜14の表面からバンプ22の周面に延在して、第1の電極パッド12pとバンプ22との接続部を補強している。即ち、接着材40は、半田材30を周囲から被覆することで、半田材30そのものを補強すると共に、第1のソルダレジスト膜14の表面及びバンプ22の周面の双方に接合することで、両者の接続を補強している。接着剤40の膜厚は、回路基板10及びチップ本体21との隙間よりも薄い。本実施形態にかかる接着剤40の膜厚は、回路基板10及びチップ本体21の隙間の1/3程度、即ち約20μmに設定されている。従って、接着剤40及びチップ本体21間には、所定の隙間Gが形成されている。
【0025】
接着剤40の材料としては、例えばエポキシ系樹脂が用いられる。エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂に、硬化剤、添加物、着色料、及びフィラーなどを添加したものを用いても良い。硬化剤としては、例えば酸無水物が用いられる。添加物としては、例えばカップリング剤が用いられる。着色料としては、例えばカーボンが用いられる。フィラーとしては、例えばシリカが用いられる。このようなエポキシ系樹脂としては、例えば「ナガセケムテックス UFRシリーズ」を用いても良い。
【0026】
尚、本実施形態において、接着剤40は、第1のソルダレジスト膜14及びバンプ22の双方に接合しているが、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、接着剤40は、少なくとも半田材30を被覆していれば、第1の電極パッド12pとバンプ22との接続部を補強することができるので、必ずしも、第1のソルダレジスト膜14及びバンプ22の何れかに接合していなくても良い。
【0027】
アンダーフィル樹脂50は、回路基板10及び半導体チップ20の隙間に充填されている。勿論、アンダーフィル樹脂50は、接着剤40及びチップ本体21の隙間Gにも充填されている。アンダーフィル樹脂50は、回路基板10及び半導体チップ20の双方に接着して、自身の材料が凝固するときに生じる収縮力により、両者を接合している。アンダーフィル樹脂50は、半導体チップ20の周囲にはみ出して、所謂フィレット51を形成している。フィレット51は、回路基板10の上面から半導体チップ20の側面に及んでおり、回路基板10と半導体チップ20との接合強度を高めている。
【0028】
アンダーフィル樹脂50の材料としては、例えばエポキシ系樹脂が用いられる。エポキシ系樹脂の組成は、ほとんど接着剤40の組成と同等であるが、接着剤40よりも硬化時間が長くなるように、硬化剤の種類や含有量を調整しても良い。このようなエポキシ系樹脂としては、例えば「ナミック U8439-1」を用いても良い。
[半導体装置の製造方法]
図7は、第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の説明図である。但し、図7では、半導体装置の詳細構成を省略しているので、必要に応じて、図1〜図6を参照されたい。
【0029】
先ず、図7(a)に示すように、回路基板10の第1の電極パッド部12p上に、それぞれ半田材30を供給する。半田材30の供給法としては、例えばプリコート法を用いても良い。但し、第1の電極パッド12p上に既に半田材30が供給されている回路基板を用いても良い。
【0030】
次に、図7(b)に示すように、回路基板10の第1の電極パッド12p上に、半田材30を被覆するように、選択的に未硬化の接着剤40を供給する。接着剤40としては、アンダーフィル樹脂50よりも硬化時間が短い樹脂材が用いられる。このような樹脂材としては、例えば、前述した「ナガセケムテックス UFRシリーズ」を用いても良い。接着剤40の供給法としては、例えばスクリーン印刷法などを用いても良い。スクリーン印刷法を用いる場合、回路基板10の上方に、スクリーンとして、例えばSUS製の可撓板100を配置する。可撓板100は、印刷パターンに対応する位置に、印刷パターン対応する形状の開口部(図示しない)を備えている。そして、可撓板100上に供給される未硬化の接着剤Bを、スキージ101によりスキージングすることにより、回路基板10の第1の電極パッド12p上に、可撓板100の開口部の形状に応じた接着剤40を供給する。本実施形態にかかる可撓板100の開口部は、第1の電極パッド12pの表面全体と、第1のソルダレジスト膜14の開口部14aの内縁全体と、を包含している。従って、接着剤40は、第1の電極パッド12p上から第1のソルダレジスト膜14上に及ぶように供給される。
【0031】
次に、図7(c)に示すように、加圧ヘッドHpの下面に半導体チップ20を吸着して、バンプ22が第1の電極パッド12pに対応するように、半導体チップ20を位置決めする。そして、半導体チップ20を吸着した加圧ヘッドHpを降下させて、第1の電極パッド12pにバンプ22を接触させる。このとき、第1の電極パッド12p上に供給された接着剤40は、未硬化であるため、半導体チップ20が降下する過程で、バンプ22により押し退けられる。従って、半導体チップ20のバンプ22は、それぞれ第1の電極パッド12pに接触することができる。バンプ22に押し退けられた接着剤40は、自己の表面張力により、バンプ22の周面を這い上がる。こうして、接着剤40は、第1のソルダレジスト膜14の表面からバンプ22の周面に及ぶような形態となる。
【0032】
次に、加圧ヘッドHpに設けられたヒータ(図示しない)を作動させて、半導体チップ20を加熱する。加熱温度は、半田材30の融点以上の温度とする。具体的には、半田材30の材料により異なるが、例えば200℃〜300℃、より好ましくは230℃〜270℃とする。加熱時間も同様に、半田材30の材料により異なるが、例えば5〜15秒、より好ましくは8〜12秒とする。
【0033】
半導体チップ20を加熱すると、半田材30が融解して、第1の電極パッド12p全体に行き渡ると共に、バンプ22の周面を這い上がる。このとき、半田材30は、接着剤40により被覆されているが、自己の表面張力により、接着剤40と第1の電極パッド12pとの隙間、及び接着剤40とバンプ22との隙間に浸入するように濡れ広がる。こうして、半導体チップ20のバンプ22が回路基板10の第1の電極パッド12pに電気的及び機械的に接続される。即ち、半導体チップ20が回路基板10にフリップチップ実装される。
【0034】
又、半導体チップ20を加熱すると、接着剤40も同時に加熱される。接着剤40が加熱されると、接着剤40に含まれる揮発性物質や溶解水分が揮発してガスとなり、接着剤40の表面から排出される。このとき、接着剤40は、半導体チップ20のチップ本体21に接触していない。このため、接着剤40の内部で発生したガスは、接着剤40の周面だけでなく、接着剤40の上面からも排出される。従って、接着剤40の内部で発生したガスは、接着剤40の表面から迅速に排出され、ボイドの発生が抑制される。即ち、接着剤40の硬化前に、接着剤40の内部で発生したガスが外部に抜けるので、硬化後の接着剤40にガスが残留せず、故にボイドが生じないのである。特に、半田材30の融解温度は比較的高温であるため、半田材30の融解時には、接着剤40の内部から大量のガスが急激に発生するが、前述のように、接着剤40からのガスの排出が迅速に進むので、接着剤40に発生するボイドを最小限に抑えることができるのである。さらには、接着剤40が半導体チップ20のチップ本体21に接触していないので、回路基板10及び半導体チップ20の隙間を、接着剤40が流動することがない。従って、接着材40の流動に付随する空気の巻き込みが生じないので、このことによっても、接着剤40に発生するボイドを抑制することができる。そして、接着剤40は、加熱により硬化して、前述のように、第1の電極パッド12pとバンプ22との接続部を補強する。
【0035】
次に、回路基板10及び半導体チップ20を、アンダーフィル供給装置(図示しない)に搬送する。このとき、第1の電極パッド12pとバンプ22とを接続する半田材30は、接着剤40により被覆されている。従って、仮に半田材30にクラックなどが発生しても、半田材30の周囲に配設された接着剤30が半田材30の崩壊を防止する。故に、回路基板10及び半導体チップ20を搬送する際に、回路基板10からの半導体チップ20の脱落が抑制される。
【0036】
そして、図7(d)に示すように、アンダーフィル供給装置のノズルNから回路基板10上に、未硬化のアンダーフィル樹脂Lを供給する。このとき、ノズルNの先端を半導体チップ20の少なくとも1辺に対向する位置に配置する。これにより、ノズルNから吐出したアンダーフィル樹脂Lは、毛細管現象により、回路基板10及び半導体チップ20の隙間に侵入していく。アンダーフィル樹脂Lとしては、例えば、前述した「ナガセケムテックス UFRシリーズ」を用いても良い。アンダーフィル樹脂Lの供給量は、回路基板10及び半導体チップ20の隙間が完全に充填され、半導体チップ20の周囲にフィレット51が形成される程度に設定される。
【0037】
そして、回路基板10及び半導体チップ20の隙間にアンダーフィル樹脂Lが充填されたら、回路基板10及び半導体チップ20を加熱炉(図示しない)に搬入して、例えば120℃〜180℃で、例えば1時間〜3時間かけて加熱する。これにより、アンダーフィル樹脂50が硬化して、自己の収縮力により、回路基板10及び半導体チップ20を接合する。
【0038】
アンダーフィル樹脂50の硬化時間は、接着剤40の硬化時間に比べて長い。しかも、アンダーフィル樹脂50の加熱温度は、接着剤40の加熱温度よりも低い。即ち、アンダーフィル樹脂50は、接着剤40に比べて、低温で長時間をかけて緩やかに硬化する。従って、アンダーフィル樹脂50に含まれる揮発性物質や溶解水分は、アンダーフィル樹脂50が硬化するまでに充分に排出されるので、アンダーフィル樹脂50にはボイドが発生しにくい。尚、アンダーフィル樹脂50の加熱温度は、半田材30の融点よりも低いため、半田材30が融解することはない。
【0039】
次に、回路基板10の第2の電極パッド13pに、それぞれ半田ボール60を取り付ける。以上で、図2に示すような、第1の実施形態にかかる半導体装置が完成する。
【0040】
以上のように、本実施形態では、回路基板10及び半導体チップ20の隙間にアンダーフィル樹脂50を充填する前に、第1の電極パッド12pとバンプ22との接続部を接着剤40で被覆している。これにより、第1の電極パッド2pとバンプ22との接続部が接着剤40により補強されるので、回路基板10及び半導体チップ20の隙間にアンダーフィル樹脂50を充填するまでの期間に、半導体チップ20が回路基板10から脱落することが抑制される。
【0041】
しかも、接着剤40の膜厚は、回路基板10及び半導体チップ20の隙間の間隔よりも薄い。このため、半田材30を融解するための高温下で接着剤30加熱しても、接着剤30の内部で発生したガスが迅速に排出されるので、接着剤40にボイドが発生することが抑制される。
【0042】
尚、本実施形態では、回路基板10の第1の電極パッド12p上に、選択的に未硬化の接着剤40を供給しているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、回路基板10の上面全体に、未硬化の接着剤40を供給しても良い。回路基板10の上面全体を接着剤40で被覆すれば、回路基板10の上面を部分的に接着剤40で被覆した場合に比べて、回路基板10上の凹凸が少なくなる。このため、未硬化のアンダーフィル樹脂50を供給するときに、空気の巻き込みが発生しにくくなる。よって、回路基板10及び半導体チップ20の隙間に発生するボイドを、さらに低減することができる。
【0043】
又、本実施形態では、回路基板10の第1の電極パッド12p上に、未硬化の接着剤40を供給しているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、半導体チップ20のバンプ22上に、未硬化の接着剤40を供給しても良い。バンプ22への接着剤40の供給法としては、例えばディッピング法などを用いても良い。
[第2の実施形態]
以下、図9を参照しながら、第2の実施形態を説明する。但し、第1の実施形態と同等の内容については、説明を省略することとする。
[半導体装置の製造方法]
図9は、第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法の説明図である。
【0044】
第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法では、接着剤40として、所謂Bステージ樹脂を用いる。そして、第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法では、回路基板10に接着剤40を供給する工程と、回路基板10に半導体チップ20をフリップチップ実装する工程との間に、図9に示すように、接着剤40を加熱して、Bステージ化する工程を備える。このときの加熱温度は、例えば150℃〜180℃とする。
【0045】
Bステージ化された接着剤40は、回路基板10に半導体チップ20をフリップチップ実装するための加熱により、Cステージ化、即ち完全に硬化される。但し、Bステージ化した接着剤40は、フリップチップ実装するための加熱により、Cステージ化する前に、一時的に流動化するので、接着剤40の内部でガスが発生しても、接着剤40から迅速に排出される。さらに、接着剤40が一時的に流動化するので、回路基板10に半導体チップ20をフリップチップ実装するときに、半田材30の流動、即ち濡れ広がりが妨げられることもない。
【0046】
本実施形態のように、回路基板10に接着剤40を供給した後に、接着剤40をBステージ化しておけば、回路基板10に半導体チップ20をフリップチップ実装する際に、接着剤40が所望の位置から流出することがない。特に、回路基板10の上面全体に、未硬化の接着剤40を供給する場合、接着剤40の流出に充分な配慮が必要になるが、接着剤40をBステージ化して、ゲル状に変化させておけば、非常に簡単に、接着剤40の不要な流出を抑制することができる。
【符号の説明】
【0047】
10:回路基板
12p:第1の電極パッド
20:半導体チップ
22:バンプ
30:半田材
40:接着剤
50:アンダーフィル樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に電子部品をフリップチップ実装する電子装置の製造方法において、
前記回路基板の電極部又は前記電子部品の端子部上に、前記回路基板及び前記電子部品の隙間の間隔よりも薄い膜厚の第1の樹脂材を供給する工程と、
前記第1の樹脂材を供給した後、前記電子部品の端子部を前記回路基板の電極部に接触させたまま、前記回路基板の電極部又は前記電子部品の端子部上に配設された半田材を第1の温度で溶融して、前記電子部品の端子部を前記回路基板の電極部に接続する工程と、
前記電子部品の端子部を前記回路基板の電極部に接続した後、前記回路基板及び前記電子部品の隙間に第2の樹脂材を充填する工程と、
前記第2の樹脂材を、前記第1の温度よりも低温である第2の温度で加熱する工程と、
を含むことを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置の製造方法において、
前記半田材を溶融するときに、前記第1の樹脂材を硬化させることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子装置の製造方法において、
前記第1の樹脂材として、Bステージ樹脂を用い、
前記電子部品の端子部を前記回路基板の電極部に接触する前に、前記第1の樹脂材をBステージ化するために加熱する工程を含むことを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子装置の製造方法において、
前記第1の樹脂材は、前記回路基板の電極部上に、スクリーン印刷により選択的に供給されることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子装置の製造方法において、
前記第1の樹脂材は、前記回路基板の表面の、前記電子部品と対向する部分全体に供給されることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子装置の製造方法において、
前記第2の樹脂材は、前記回路基板及び前記電子部品の隙間に、毛細管現象により供給されることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項7】
電極部を備える回路基板と、
前記回路基板上に設けられ、前記回路基板に対向する表面に、前記電極部に対向する端子部を有する電子部品と、
前記電極部と前記端子部とを接続する半田材と、
前記半田材上に設けられ、前記回路基板及び前記電子部品の隙間の間隔よりも薄い膜厚の第1の樹脂材と、
前記回路基板及び前記電子部品の隙間に充填される第2の樹脂材と、
を備えることを特徴とする電子装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電子装置において、
前記第1の樹脂材は、前記電極部上に選択的に設けられていることを特徴とする電子装置。
【請求項9】
請求項7に記載の電子装置において、
前記第1の樹脂材は、前記回路基板の表面の、前記電子部品と対向する部分全体に設けられていることを特徴とする電子装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載の電子装置において、
前記第1の樹脂材は、前記回路基板の表面及び前記端子部の表面に密着していることを特徴とする電子装置。


【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−79876(P2012−79876A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222928(P2010−222928)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】