電子装置の製造方法
【課題】1枚の導体板から並列に位置するように形成される高電位側導体と低電位側導体との隙間を小さくし得る電子装置の製造方法を提供する。
【解決手段】1枚の導体板30が用意され、縁部31aと縁部32aとが調整前隙間dを形成するように各導体31および各導体32が並列に位置するとともに、これら各導体が連結部51,52等を介して連結するように、上記導体板30が加工される。そして、連結部52の中央部52aを変形させることで調整前隙間dが狭くされる。そして、搭載された各スイッチおよび各導体等をモールド樹脂により封止した後に、連結部51,52等による連結を解除することで、電力変換回路が成形される。
【解決手段】1枚の導体板30が用意され、縁部31aと縁部32aとが調整前隙間dを形成するように各導体31および各導体32が並列に位置するとともに、これら各導体が連結部51,52等を介して連結するように、上記導体板30が加工される。そして、連結部52の中央部52aを変形させることで調整前隙間dが狭くされる。そして、搭載された各スイッチおよび各導体等をモールド樹脂により封止した後に、連結部51,52等による連結を解除することで、電力変換回路が成形される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に配置される高電位側導体および低電位側導体が封止部材により封止される電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スイッチング素子を有する電力変換装置において、スイッチング時のサージノイズを低減するためには、高電位側スイッチング素子が搭載される高電位側導体と低電位側スイッチング素子が搭載される低電位側導体とを並列に配置しその隙間を小さくすることで、上記サージノイズに起因する寄生インダクタンスを低減することが知られている。
【0003】
このような構成として、例えば、下記特許文献1に開示される回路装置が知られている。この回路装置では、直流接続導体は、僅かな寄生インダクタンスを達成するために、それらの全経路において狭い間隔で隣り合っていて、双方の電気絶縁のために必要不可欠な層によってのみ互いに離されている。更に、出来るだけ僅かな寄生インダクタンスを達成するためには、直流接続導体が主要な一区画において基板及び/又は接続パスに対して狭い間隔で隣り合って配設されている。
【0004】
また、下記特許文献2に開示される電力変換装置では、負極側板状導体と正極側板状導体において流れる電流の向きが互いに逆になっており、導体間距離が絶縁シート厚さ分の極近接し、かつ、負極側板状導体と正極側板状導体とが積層化されている。そのため、これらの導体(配線)は低インダクタンス構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−080993号公報
【特許文献2】特開2001−286158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スイッチング素子を有する電力変換装置において、寄生インダクタンスのさらなる低減を図るためには、高電位側導体および低電位側導体の隙間をさらに小さくする必要がある。しかしながら、1枚の導体板から高電位側導体および低電位側導体を、通常のダイおよびパンチを用いた打ち抜き加工等により形成する場合には、両導体間の隙間は導体板の板厚程度が限界であり、その加工限度(例えば、板厚)よりも小さな隙間の形成が困難であるという問題がある。
【0007】
また、高電位側導体と低電位側導体とを個別に成形してその隙間を小さくするように両導体を配置することで、当該隙間をその板厚よりも小さくできるが、所望の隙間長さに応じて高電位側導体および低電位側導体をそれぞれ精度良く配置する工程が必要となり、製造コストが高くなるという別の問題がある。
【0008】
また、スイッチング素子を有する電力変換装置に限らず、例えば、並列に位置する高電位側バスバー(高電位側導体)と低電位側バスバー(低電位側導体)との隙間をその板厚より小さくする要求があるが、この構成に関しても上記電力変換装置と同様の問題が生じることとなる。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、1枚の導体板から並列に位置するように形成される高電位側導体と低電位側導体との隙間を小さくし得る電子装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の電子装置の製造方法は、高電位側導体(31,33,35,81)と低電位側導体(32,34,36,82)とが並列に位置するようにそれぞれ配置されてこれら各導体の少なくとも一部が封止部材(12,13)により封止される電子装置(10,10a)の製造方法であって、前記高電位側導体および前記低電位側導体を形成するための1枚の導体板(30,80)を用意する第1工程(S1)と、前記高電位側導体の縁部(31a,33a,35a,81a)と前記低電位側導体の縁部(32a,34a,36a,82a)とが対向する対向方向にて所定の隙間(d,d3)を形成するように前記高電位側導体および前記低電位側導体が並列に位置するとともに、これら各導体が連結部(51,52,83,84)を介して連結するように、前記導体板を加工する第2工程(S2)と、前記連結部の一部(52a,83a,84a)を変形させることで前記所定の隙間を狭くする第3工程(S3)と、前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除する第4工程(S5,S6)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子装置の製造方法において、前記電子装置は、高電位側スイッチング素子(91)と低電位側スイッチング素子(92)とを直列接続して構成される電力変換回路(90)を有し、前記高電位側スイッチング素子が搭載される前記高電位側導体(93)と前記低電位側スイッチング素子が搭載される前記低電位側導体(94)とが並列に位置するように配置される電力変換装置(10b)であって、前記第3工程にて前記高電位側導体および前記低電位側導体が連結する前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くした後に、前記高電位側導体に対応する前記高電位側スイッチング素子を搭載するとともに前記低電位側導体に対応する前記低電位側スイッチング素子を搭載する搭載工程を有し、前記第4工程は、前記各スイッチング素子および前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除することで、前記電力変換回路を成形することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電子装置の製造方法において、前記電子装置は、直列接続された高電位側スイッチング素子(21,23,25)と低電位側スイッチング素子(22,24,26)とを複数組並列接続して構成される電力変換回路(11)を有し、前記高電位側スイッチング素子が搭載される前記高電位側導体と前記低電位側スイッチング素子が搭載される前記低電位側導体とが並列に位置するようにそれぞれ配置される電力変換装置(10)であって、前記第3工程にて複数組の前記高電位側導体および前記低電位側導体が連結する前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間をそれぞれ狭くした後に、前記各高電位側導体に対応する前記高電位側スイッチング素子をそれぞれ搭載するとともに前記各低電位側導体に対応する前記低電位側スイッチング素子をそれぞれ搭載する搭載工程(S4)を有し、前記第4工程は、前記各スイッチング素子および前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除することで、前記電力変換回路を成形することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第3工程は、前記所定の隙間を前記各導体の板厚よりも狭くするように前記連結部の一部を変形させることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第3工程は、前記対向方向との角度が鋭角となる方向に前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第3工程は、前記高電位側導体および前記低電位側導体が同一平面上にて近づくように、前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第3工程は、前記高電位側導体および前記低電位側導体が板厚方向の位置を異ならせるように、前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第3工程は、前記連結部のうち、前記第4工程にて前記封止部材により封止されない部位を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第2工程は、さらに、前記高電位側導体の縁部と前記低電位側導体の縁部とのうち少なくとも一方の縁部の一部に切り欠き(31b,32b)を形成し、前記第3工程は、前記第2工程により形成された前記切り欠きから構成される開口に治具(70)を挿入した状態で、前記連結部の一部を変形させて当該治具に前記切り欠きの縁部を当接させて前記高電位側導体および前記低電位側導体の前記対向方向の相対移動を規制することを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第2工程は、さらに、前記各高電位側導体がそれぞれ接続される高電位側配線(37)と、前記各低電位側導体がそれぞれ接続される低電位側配線(38)とが第2の隙間(d3)を介して並列に位置するとともに、これら両配線が第2の連結部(54,55)を介して連結するように形成し、前記第3工程は、さらに、前記第2の連結部の一部を変形させることで前記第2の隙間を狭くすることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明では、第1工程により、高電位側導体および低電位側導体を形成するための1枚の導体板が用意され、第2工程により、高電位側導体の縁部と低電位側導体の縁部とが所定の隙間を形成するように高電位側導体および低電位側導体が並列に位置するとともに、これら各導体が連結部を介して連結するように、上記導体板が加工される。そして、第3工程により、連結部の一部を変形させることで所定の隙間が狭くされ、第4工程により、各導体の少なくとも一部を封止部材により封止した後に連結部による連結が解除される。
【0021】
これにより、1枚の導体板から打ち抜き加工等で所定の隙間を介して並列に位置する高電位側導体および低電位側導体を形成した後に、両導体を連結する連結部の一部を変形させることで、上記所定の隙間を狭く制御できる。
したがって、打ち抜き加工等の加工限度に影響されることなく、1枚の導体板から並列に位置するように形成される高電位側導体と低電位側導体との隙間を小さくすることができる。
【0022】
請求項2の発明では、電子装置は、高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを直列接続して構成される電力変換回路を有する電力変換装置であって、第3工程にて高電位側導体および低電位側導体が連結する連結部の一部を変形させることで所定の隙間を狭くした後に、搭載工程により、高電位側導体に対応する高電位側スイッチング素子が搭載されるとともに低電位側導体に対応する低電位側スイッチング素子が搭載される。そして、第4工程により、各スイッチング素子および各導体の少なくとも一部を封止部材により封止した後に連結部による連結を解除することで、電力変換回路が成形される。
【0023】
これにより、高電位側スイッチング素子および低電位側スイッチング素子が高電位側導体および低電位側導体に搭載される電力変換装置であっても、1枚の導体板から並列に位置するように形成される高電位側導体と低電位側導体との隙間をそれぞれ小さくすることができる。
【0024】
請求項3の発明では、電子装置は、直列接続された高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを複数組並列接続して構成される電力変換回路を有する電力変換装置であって、第3工程にて複数組の高電位側導体および低電位側導体が連結する連結部の一部を変形させることで所定の隙間をそれぞれ狭くした後に、搭載工程により、各高電位側導体に対応する高電位側スイッチング素子がそれぞれ搭載されるとともに各低電位側導体に対応する低電位側スイッチング素子がそれぞれ搭載される。そして、第4工程により、各スイッチング素子および各導体の少なくとも一部を封止部材により封止した後に連結部による連結を解除することで、電力変換回路が成形される。
【0025】
これにより、複数組の高電位側スイッチング素子および低電位側スイッチング素子がそれぞれ高電位側導体および低電位側導体に搭載される電力変換装置であっても、1枚の導体板から並列に位置するように形成される複数組の高電位側導体と低電位側導体との各隙間をそれぞれ小さくすることができる。
【0026】
請求項4の発明では、第3工程により、連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間が各導体の板厚よりも狭く形成されるので、上記所定の隙間を各導体の板厚よりも狭く形成する加工を容易に実施することができる。
【0027】
請求項5の発明では、第3工程により、対向方向との角度が鋭角となる方向に連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間が狭くされる。これにより、連結部の一部を変形させる変形量に対して、上記所定の隙間を狭くする方向への移動量が小さくなるので、この所定の隙間を狭くするための微調整が容易となり、当該所定の隙間を精度良く形成することができる。
【0028】
請求項6の発明のように、第3工程により、高電位側導体および低電位側導体が同一平面上にて近づくように、連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間を狭くしてもよい。
【0029】
請求項7の発明のように、第3工程により、高電位側導体および低電位側導体が板厚方向の位置を異ならせるように、連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間を狭くしてもよい。
【0030】
請求項8の発明では、第3工程により、連結部のうち、第4工程にて封止部材により封止されない部位を変形させることで上記所定の隙間を狭くするため、封止部材を形成する材料を注入する際の注入圧力が連結部の変形部位に直接作用することをなくすことができる。これにより、連結部の変形部位に上記注入圧力が作用したために上記所定の隙間がばらつくようなこともないので、封止部材による封止工程に起因する上記所定の隙間の加工精度の低下をなくすことができる。
【0031】
請求項9の発明では、第2工程により、さらに、高電位側導体の縁部と低電位側導体の縁部とのうち少なくとも一方の縁部の一部に切り欠きが形成される。そして、第3工程により、切り欠きから構成される開口に治具を挿入した状態で、連結部の一部を変形させて当該治具に切り欠きの縁部を当接させることで、高電位側導体および低電位側導体の対向方向の相対移動が規制される。これにより、上記所定の隙間を、開口に挿入される治具の対向方向の長さに応じて容易に制御することができる。
【0032】
請求項10の発明では、第2工程により、さらに、高電位側配線と低電位側配線とが第2の隙間を介して並列に位置するとともにこれら両配線が第2の連結部を介して連結するように形成され、第3工程により、さらに、第2の連結部の一部を変形させることで第2の隙間が狭くされる。これにより、各高電位側導体がそれぞれ接続される高電位側配線と、各低電位側導体がそれぞれ接続される低電位側配線との隙間(第2の隙間)も、容易に狭くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係る電力変換装置の要部を示す斜視図である。
【図2】図1の各導体の位置関係を示す説明図である。
【図3】電力変換装置の製造工程を示す工程図である。
【図4】図3の製造工程を説明するための説明図である。
【図5】図3の製造工程を説明するための説明図である。
【図6】図6(A)は、連結部の変形状態を拡大して示す拡大断面図であり、図6(B)は、連結部の他の変形状態を拡大して示す拡大断面図である。
【図7】第1実施形態の第1変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
【図8】第1実施形態の第2変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
【図9】第2実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
【図10】図10(A)は、第2実施形態の変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図であり、図10(B)は、図10(A)の10B−10B線相当の切断面による断面図である。
【図11】第3実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
【図12】第4実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
【図13】第5実施形態に係る電子装置の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図14】第5実施形態に係る電子装置の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図15】第6実施形態に係る電力変換装置の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る電子装置の製造方法を電力変換装置の製造方法に適用した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る電力変換装置10の要部を示す斜視図である。図2は、図1の各導体31〜36の位置関係を示す説明図である。なお、図1では、説明の便宜上、モールド樹脂12等を図略している。
本第1実施形態に係る電力変換装置10は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)や制御回路などを一つのモジュール内に集積して高性能、高機能化したインテリジェントパワーモジュール(IPM:Intelligent Power Module)として機能するものである。
【0035】
図1に示す電力変換装置10は、直流電源の電圧を変換して出力する電力変換回路11を有するもので、この電力変換回路11は、直列接続された高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とが複数組並列接続して構成されている。
【0036】
具体的には、図2に示すように、U相用の高電位側スイッチング素子(以下、スイッチ21という)とこのスイッチ21に逆並列接続される環流ダイオード21aとが高電位側導体(以下、導体31という)に搭載され、U相用の低電位側スイッチング素子(以下、スイッチ22という)とこのスイッチ22に逆並列接続される環流ダイオード22aとが低電位側導体(以下、導体32という)に搭載されている。
【0037】
導体31と導体32とは、上述した寄生インダクタンスを低減するため、その縁部31aと縁部32aとが対向する対向方向(図2の左右方向)にて後述する調整後隙間dnを形成するように並列に配置されている。これら導体31および導体32が、スイッチ21または環流ダイオード21aの動作に応じてワイヤ41を介した電気的接続がなされるように構成されることで、スイッチ21とスイッチ22とが直列接続されることとなる。
【0038】
また、V相用の高電位側スイッチング素子(以下、スイッチ23という)とこのスイッチ23に逆並列接続される環流ダイオード23aとが高電位側導体(以下、導体33という)に搭載され、V相用の低電位側スイッチング素子(以下、スイッチ24という)とこのスイッチ24に逆並列接続される環流ダイオード24aとが低電位側導体(以下、導体34という)に搭載されている。
【0039】
導体33と導体34とは、上述した寄生インダクタンスを低減するため、その縁部33aと縁部34aとが対向する対向方向にて所定の隙間(調整後隙間)を形成するように並列に配置されている。これら導体33および導体34が、スイッチ23または環流ダイオード23aの動作に応じてワイヤ43を介した電気的接続がなされるように構成されることで、スイッチ23とスイッチ24とが直列接続されることとなる。
【0040】
また、W相用の高電位側スイッチング素子(以下、スイッチ25という)とこのスイッチ25に逆並列接続される環流ダイオード25aとが高電位側導体(以下、導体35という)に搭載され、W相用の低電位側スイッチング素子(以下、スイッチ26という)とこのスイッチ26に逆並列接続される環流ダイオード26aとが低電位側導体(以下、導体36という)に搭載されている。
【0041】
導体35と導体36とは、上述した寄生インダクタンスを低減するため、その縁部35aと縁部36aとが対向する対向方向にて所定の隙間(調整後隙間)を形成するように並列に配置されている。これら導体35および導体36が、スイッチ25または環流ダイオード25aの動作に応じてワイヤ45を介した電気的接続がなされるように構成されることで、スイッチ25とスイッチ26とが直列接続されることとなる。
【0042】
そして、高電位側の各導体31,33,35は、電源配線パターン37に直接接続されている。また、導体32は、スイッチ22または環流ダイオード22aの動作に応じてワイヤ42を介したグランド配線パターン38との電気的接続がなされるように構成されている。また、導体34は、スイッチ24または環流ダイオード24aの動作に応じてワイヤ44を介したグランド配線パターン38との電気的接続がなされるように構成されている。また、導体36は、スイッチ26または環流ダイオード26aの動作に応じてワイヤ46を介したグランド配線パターン38との電気的接続がなされるように構成されている。また、電源配線パターン37とグランド配線パターン38とは、後述する調整後隙間d2nを介して並列に位置するように配置されている。
【0043】
上述した各スイッチ21〜26および環流ダイオード21a〜26aは、対応する導体31〜36に搭載された状態でモールド樹脂12により封止されている。このモールド樹脂12から低電位側の各導体32,34,36の端部がU相出力端子、V相出力端子およびW相出力端子として露出し、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38の端部が電源端子として露出している。なお、モールド樹脂12は、特許請求の範囲に記載の「封止部材」の一例に相当し得る。
【0044】
次に、本実施形態に係る電力変換装置10の製造方法について、図3〜図6を用いて説明する。図3は、電力変換装置の製造工程を示す工程図である。図4および図5は、図3の製造工程を説明するための説明図である。図6(A)は、連結部の変形状態を拡大して示す拡大断面図であり、図6(B)は、連結部の他の変形状態を拡大して示す拡大断面図である。なお、図5では、説明の便宜上、スイッチ21,22や環流ダイオード21a,22a等を図略している。
【0045】
本実施形態では、上述した寄生インダクタンスを低減するため、打ち抜き工程直後における高電位側の各導体31,33,35の縁部31a,33a,35aと低電位側の各導体32,34,36の縁部32a,34a,36aとが対向する対向方向での所定の隙間(以下、調整前隙間dという)を、後述する連結部の変形に応じて、各導体の板厚(例えば、500μm)よりも狭くしている。
【0046】
以下、調整前隙間dを狭くすることを技術的特徴とする電力変換装置10の製造工程について、詳細に説明する。
まず、図4(A)に示すように、高電位側の各導体31,33,35および低電位側の各導体32,34,36と、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38とを形成するための1枚の導体板30を用意する(図3のS1)。この導体板30は、例えば、銅板から構成される。なお、図3のS1に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第1工程」の一例に相当し得る。
【0047】
次に、高電位側の各導体31,33,35の縁部31a,33a,35aと低電位側の各導体32,34,36の縁部32a,34a,36aとが対向する対向方向にて調整前隙間dを形成するように各導体31,33,35および各導体32,34,36が並列に位置するとともに、これら各導体31〜36が連結部を介して連結するように、導体板30に対して打ち抜き加工を実施する(図3のS2)。
【0048】
具体的には、図4(B)に例示するように、導体31に連結する連結部51と導体32に連結する連結部52とを枠状に形成される支持片50を介して連結するように、導体板30に対して打ち抜き加工を実施する。また、導体33に連結する連結部と導体34に連結する連結部と支持片50を介して連結するとともに、導体35に連結する連結部と導体36に連結する連結部と支持片50を介して連結するように、導体板30に対して打ち抜き加工を実施する。なお、図3のS2に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第2工程」の一例に相当し得る。
【0049】
続いて、連結部の一部を変形させることで調整前隙間dを狭くする(図3のS3)。具体的には、導体31および導体32に関しては、図4(C)および図6(A)に例示するように、連結部52の中央部52aを山状に押しつぶして変形させることで、この連結部52に連結する導体32をその縁部32aが導体31の縁部31aに同一平面上にて近づく方向(上記対向方向)に移動させる。また、導体33および導体34や導体35および導体36に関しても同様に連結部の一部を変形させて、同一平面上にて互いに近づく方向に相対移動させる。なお、このように変形される連結部の変形部位52aは、後述する封止工程にてモールド樹脂12により封止されない部位である。スイッチと対応する還流ダイオードを冷却させることが必要な場合には、スイッチおよび還流ダイオードを同一平面上に近づけることで、ヒートシンクに同一平面で接触することができ、放熱面で有利である。
【0050】
これにより、各導体間の調整前隙間dを、その板厚よりも小さくすることができる。なお、図4(C)では、小さく調整した調整後隙間を符号dnで図示している。また、図3のS3に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第3工程」の一例に相当し得る。
【0051】
なお、調整前隙間dを狭くするための連結部の変形は、図6(A)に示すように連結部52の中央部52aを山状に押しつぶして変形させることに限らず、例えば、図6(B)に示すように、連結部52の中央部52aを凸状に押しつぶして変形させてもよい。
【0052】
次に、図2に示すように、高電位側の各導体31,33,35に対応するスイッチ21,23,25および環流ダイオード21a,23a,25aをそれぞれ搭載するとともに、低電位側の各導体32,34,36に対応するスイッチ22,24,26および環流ダイオード22a,24a,26aをそれぞれ搭載する(図3のS4)。そして、ワイヤボンディングにより、ワイヤ41〜46等を用いて、対応する各導体や各スイッチ等を電気的に接続する。なお、図3のS4に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「搭載工程」の一例に相当し得る。
【0053】
続いて、図5(D)に示すように、各スイッチ21〜26および各導体31〜36等をモールド樹脂12により封止する(図3のS5)。そして、図5(E)に示すように、連結部51,52や支持片50に連結される他の連結部を除去することで、連結部による連結を解除して(図3のS6)、電力変換回路11が成形される。なお、図3のS5,S6に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第4工程」の一例に相当し得る。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10の製造方法では、S1に示す工程により、高電位側の各導体31,33,35および低電位側の各導体32,34,36を形成するための1枚の導体板30が用意され、打ち抜き工程(S2)により、高電位側の各導体31,33,35の縁部31a,33a,35aと低電位側の各導体32,34,36の縁部32a,34a,36aとが調整前隙間dを形成するように各導体31,33,35および各導体32,34,36が並列に位置するとともに、これら各導体31〜36が連結部51,52等を介して連結するように、上記導体板30が加工される。そして、変形工程(S3)により、連結部52の中央部52a等を変形させることで調整前隙間dが狭くされ、搭載工程(S4)により、高電位側の各導体31,33,35に対応するスイッチ21,23,25がそれぞれ搭載されるとともに低電位側の各導体32,34,36に対応するスイッチ22,24,26がそれぞれ搭載される。そして、封止工程(S5)により、各スイッチ21〜26および各導体31〜36等をモールド樹脂12により封止した後に、解除工程(S6)により、連結部51,52等による連結を解除することで、電力変換回路11が成形される。
【0055】
これにより、1枚の導体板30から打ち抜き加工等で調整前隙間dを介して並列に位置する高電位側の各導体31,33,35および低電位側の各導体32,34,36を形成した後に、各導体31〜36を連結する連結部51,52の一部を変形させることで、調整前隙間dを狭く制御できる。
したがって、打ち抜き加工等の加工限度に影響されることなく、1枚の導体板30から並列に位置するように形成される高電位側の各導体31,33,35および低電位側の各導体32,34,36との隙間を小さくすることができる。
【0056】
また、変形工程(S3)により、連結部51,52等の一部を変形させることで調整前隙間dが各導体31〜36の板厚よりも狭く形成されるので、調整前隙間dを各導体31〜36の板厚よりも狭く形成する加工を容易に実施することができる。
【0057】
さらに、変形工程(S3)により、連結部51,52等のうち、封止工程(S5)にてモールド樹脂12により封止されない部位を変形させることで調整前隙間dを狭くするため、モールド樹脂12を形成する材料を注入する際の注入圧力が連結部の変形部位52a等に直接作用することをなくすことができる。これにより、連結部の変形部位52aに上記注入圧力が作用したために調整前隙間dを狭くした調整後隙間dnがばらつくようなこともないので、モールド樹脂12による封止工程に起因する上記調整後の隙間の加工精度の低下をなくすことができる。
【0058】
図7は、第1実施形態の第1変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。図8は、第1実施形態の第2変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
なお、上記第1実施形態の第1変形例に係る電力変換装置の製造方法として、各連結部51,52のうち、封止工程(S5)にてモールド樹脂12により封止される部位を変形させることで調整前隙間dを狭くしてもよい。具体的には、図7に例示する変形工程のように、連結部52の端部52bは、モールド樹脂12により封止される部位であり、この端部52bを変形させることで、調整前隙間dを狭くすることができる。
【0059】
また、上記第1実施形態にて述べたように、S3に示す変形工程により、高電位側の各導体31,33,35および低電位側の各導体32,34,36が同一平面上にて近づくように、連結部52の中央部52aを変形させることで調整前隙間dを狭くすることに限らず、上記第1実施形態の第2変形例に係る電力変換装置の製造方法として、導体同士の板厚方向の位置を異ならせるように連結部の一部を変形させることで、調整前隙間dを狭くしてもよい。
【0060】
具体的には、図8(B)に例示するように、高電位側の導体31および低電位側の導体32が板厚方向の位置を異ならせるように、連結部52の中央部52aを変形させることで(図8(A)参照)、調整前隙間dを狭くすることができる。同様に、高電位側の各導体33,35および低電位側の各導体34,36が板厚方向の位置を異ならせるように、連結部の一部を変形させることで調整前隙間dを狭くすることができる。これにより、高電位側の各導体31,33,35と低電位側の各導体32,34,36とを板厚方向に対して直交する方向に相対移動させても接触しないので、調整前隙間dを狭くすることに起因する接触不良等をなくすことができる。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る電子装置の製造方法を電力変換装置の製造方法に適用した第2実施形態について、図9を参照して説明する。図9は、第2実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
本第2実施形態に係る電力変換装置10の製造方法では、連結部の変形方向が異なる点が、上記第1実施形態に係る電力変換装置の製造方法と異なる。
【0062】
以下、本実施形態に係る製造方法の特徴的工程を、導体31および導体32を例に図9を用いて説明する。
図9に例示するように、導体32と支持片50とは、連結部53を介して連結しており、対向方向との角度が45度となる方向に連結部53の中央部53aを変形させることで調整前隙間dが狭くされる。これにより、連結部53の中央部53aを変形させる変形量に対して、調整前隙間dを狭くする方向への移動量が小さくなるので、この調整前隙間dを狭くするための微調整が容易となり、調整後隙間dnを精度良く形成することができる。
なお、連結部の変形方向は、対向方向との角度が45度となることに限らず、対向方向との角度が鋭角となる方向であればよい。
【0063】
また、導体33および導体34の少なくともいずれかに連結する連結部や、導体35および導体36の少なくともいずれかに連結する連結部を、その対向方向との角度が鋭角となる方向に変形させて調整前隙間dを狭くすることで、上記効果を奏する。
【0064】
なお、本第2実施形態に係る電力変換装置10における調整前隙間dを狭くする製造方法では、上記第1実施形態の変形例などにて説明された特徴的工程を適用してもよい。
【0065】
図10(A)は、第2実施形態の変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図であり、図10(B)は、図10(A)の10B−10B線相当の切断面による断面図である。
なお、上記第2実施形態の変形例に係る電力変換装置の製造方法として、連結部を含めた複数の箇所を、その対向方向との角度が鋭角となる方向に変形させて調整前隙間dを狭くすることでも、上記効果を奏する。また、図10(A),(B)に示すように、各変形箇所61〜63を板厚方向の位置を異ならせるように変形させても、上記効果を奏する。
【0066】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る電子装置の製造方法を電力変換装置の製造方法に適用した第3実施形態について、図11を参照して説明する。図11は、第3実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図であり、図11(A)は、打ち抜き工程を示し、図11(B)は変形工程を示す。
本第3実施形態に係る電力変換装置10の製造方法では、変形工程時に治具70を使用する点が、上記第1実施形態に係る電力変換装置の製造方法と異なる。
【0067】
以下、本実施形態に係る製造方法の特徴的工程を、導体31および導体32を例に図11(A),(B)を用いて説明する。
図11(A)に例示するように、S3の打ち抜き工程において、導体31の縁部31aと導体32の縁部32aとの一部に切り欠き31b,32bを形成する。
【0068】
次に、図11(B)に例示するように、S4の変形工程において、両切り欠き31b,32bから構成される開口に治具70を挿入した状態で、連結部52の中央部52aを変形させて当該治具70に切り欠き31b,32bの縁部を当接させることで、導体31および導体32の対向方向の相対移動が規制される。
【0069】
これにより、調整後隙間dnを、上記開口に挿入される治具70の対向方向の長さに応じて容易に制御することができる。
なお、切り欠きは、導体31および導体32のうちいずれか一方のみに形成されてもよい。
【0070】
また、S3の打ち抜き工程にて、導体33および導体34の少なくともいずれか一方に治具70を挿入するための切り欠きを形成して、S4の変形工程にて、切り欠きから構成される開口に治具70を挿入した状態で、連結部の一部を変形させることでも、上記効果を奏する。また、導体35および導体36に同様に切り欠きを形成しても、上記効果を奏する。
【0071】
なお、本第3実施形態に係る電力変換装置10における調整前隙間dを狭くする製造方法では、上記第1実施形態の変形例や他の実施形態などにて説明された特徴的工程を適用してもよい。
【0072】
[第4実施形態]
次に、本発明に係る電子装置の製造方法を電力変換装置の製造方法に適用した第4実施形態について、図12を参照して説明する。図12は、第4実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図であり、図12(A)は、打ち抜き工程を示し、図12(B)は変形工程を示す。
本第4実施形態に係る電力変換装置10の製造方法では、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38の隙間を連結部の変形に応じて狭くする点が、上記第1実施形態に係る電力変換装置の製造方法と異なる。
【0073】
以下、本実施形態に係る製造方法の特徴的工程を、図12(A),(B)を用いて説明する。
図12(A)に例示するように、S3の打ち抜き工程において、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38が調整前隙間d2を介して並列に位置するとともに、電源配線パターン37が2つの連結部54,55を介して支持片50に連結し、グランド配線パターン38が連結部56を介して支持片50に連結するように、導体板30に対して打ち抜き加工を実施する。
【0074】
次に、図12(B)に例示するように、S4の変形工程において、連結部54の中央部54aと連結部55の中央部55aとを変形させることで、調整前隙間d2を調整後隙間d2nに狭くする。これにより、高電位側の各導体31,33,35がそれぞれ接続される電源配線パターン37と、低電位側の各導体32,34,36がそれぞれ接続されるグランド配線パターン38との隙間も、容易に狭くすることができる。なお、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38は、特許請求の範囲に記載の「高電位側配線」および「低電位側配線」の一例に相当し、調整前隙間d2は、特許請求の範囲に記載の「第2の隙間」の一例に相当し得る。
【0075】
なお、本第4実施形態に係る電力変換装置10における調整前隙間d2を狭くする製造方法では、上記第1実施形態の変形例や他の実施形態などにて説明された特徴的工程を適用してもよい。
また、高電位側導体31、33、35と低電位側導体32、34,36との調整前隙間dをそれぞれ狭くすることなく、調整前隙間d2のみを狭くしてもよい。この場合、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38は、特許請求の範囲に記載の「高電位側導体」および「低電位側導体」の一例に相当し、調整前隙間d2は、特許請求の範囲に記載の「所定の隙間」の一例に相当し得る。
【0076】
[第5実施形態]
次に、本発明に係る電子装置の製造方法を具現化した第5実施形態について、図13および図14を参照して説明する。図13および図14は、第5実施形態に係る電子装置10aの製造工程を説明するための説明図である。
本第5実施形態に係る電子装置10aは、直列接続されたスイッチ21,23,25とスイッチ22,24,26とを複数組並列接続して構成される電力変換回路11を有し、スイッチ21,23,25が搭載される高電位側の各導体31,33,35とスイッチ22,24,26が搭載される低電位側の各導体32,34,36とが並列に位置するようにそれぞれ配置される電力変換装置10と異なり、以下のように構成される。
【0077】
すなわち、電子装置10aは、図14(E)に示すように、高電位側のバスバー81と低電位側のバスバー82とが並列に位置するようにそれぞれ配置されてこれら各バスバー81,82の少なくとも一部がモールド樹脂13により封止される装置である。なお、バスバー81およびバスバー82は、特許請求の範囲に記載の「高電位側導体」および「低電位側導体」の一例に相当し、モールド樹脂13は、特許請求の範囲に記載の「封止部材」の一例に相当し得る。
【0078】
このように構成される電子装置10aの製造方法について、図13および図14を用いて説明する。
まず、図13(A)に示すように、バスバー81およびバスバー82等を形成するための1枚の導体板80を用意する。なお、図13(A)に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第1工程」の一例に相当し得る。
【0079】
次に、図13(B)に示すように、バスバー81の縁部81aとバスバー82の縁部82aとが対向する対向方向(図13の上下方向)にて調整前隙間d3を形成するように各バスバー81,82が並列に位置するとともに、これら各バスバー81,82が連結部83,84を介して連結するように、導体板に対して打ち抜き加工を実施する。なお、図13(B)に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第2工程」の一例に相当し得る。
【0080】
続いて、図13(C)に示すように、連結部83の中央部83aと連結部84の中央部84aを山状に押しつぶして変形させることで(図6(A)参照)、バスバー81およびバスバー82を縁部81a,82aが同一平面上にて近づく方向(上記対向方向)に相対移動させる。これにより、バスバー81およびバスバー82間の調整前隙間d3を、その板厚よりも小さい調整後隙間d3nにすることができる。
【0081】
なお、調整前隙間d3を狭くするための連結部83,84の変形は、その中央部83a,84aを山状に押しつぶして変形させることに限らず、例えば、その中央部83a,84aを凸状に押しつぶして変形させてもよい(図6(B)参照)。また、図13(C)に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第3工程」の一例に相当し得る。
【0082】
次に、バスバー81,82やその他の導体に対して電子部品(図示略)等を搭載した後、図14(D)に示すように、バスバー81,82の中央部等をモールド樹脂13により封止する。そして、図14(E)に示すように、連結部83,84を除去することで、連結部による連結を解除する。なお、図14(D),(E)に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第4工程」の一例に相当し得る。
【0083】
以上説明したように、本実施形態に係る電子装置10aの製造方法では、バスバー81およびバスバー82を形成するための1枚の導体板80が用意されると、バスバー81の縁部81aとバスバー82の縁部82aとが調整前隙間d3を形成するようにバスバー81およびバスバー82が並列に位置するとともに、これら各バスバー81,82が連結部83,84を介して連結するように、導体板80が加工される。そして、連結部83,84の中央部83a,84aを変形させることで調整前隙間d3が狭くされ、各バスバー81,82の中央部等をモールド樹脂13により封止した後に連結部83,84による連結が解除される。
【0084】
これにより、1枚の導体板80から打ち抜き加工等で調整前隙間d3を介して並列に位置するバスバー81およびバスバー82を形成した後に、両バスバー81,82を連結する連結部83,84の一部を変形させることで、調整前隙間d3を狭く制御できる。
したがって、打ち抜き加工等の加工限度に影響されることなく、1枚の導体板80から並列に位置するように形成されるバスバー81およびバスバー82との隙間を小さくすることができる。
【0085】
なお、本第5実施形態に係る電子装置10aのバスバー81およびバスバー82の調整前隙間d3を狭くする製造方法では、上記第1実施形態の変形例や他の実施形態などにて説明された特徴的工程を適用してもよい。
【0086】
[第6実施形態]
次に、本発明に係る電子装置の製造方法を具現化した第6実施形態について、図15を参照して説明する。図15は、第6実施形態に係る電力変換装置10bの要部を示す説明図である。
本第6実施形態に係る電力変換装置10bは、直列接続されたスイッチ21,23,25とスイッチ22,24,26とを複数組並列接続して構成される電力変換回路11を有し、スイッチ21,23,25が搭載される高電位側の各導体31,33,35とスイッチ22,24,26が搭載される低電位側の各導体32,34,36とが並列に位置するようにそれぞれ配置される電力変換装置10と異なり、以下のように構成される。
【0087】
すなわち、電力変換装置10bは、図15に示すように、高電位側スイッチング素子91と低電位側スイッチング素子92とを直列接続して構成される電力変換回路としてハーフブリッジ回路90を有している。この電力変換装置10bは、高電位側スイッチング素子91とこの高電位側スイッチング素子91に逆並列接続される環流ダイオード91aとが搭載される高電位側導体93と、低電位側スイッチング素子92とこの低電位側スイッチング素子92に逆並列接続される環流ダイオード92aとが搭載される低電位側導体94とが、並列に位置するように配置されて構成されている。
【0088】
これら高電位側導体93および低電位側導体94が、高電位側スイッチング素子91または環流ダイオード91aの動作に応じてワイヤ95を介した電気的接続がなされるように構成されることで、高電位側スイッチング素子91と低電位側スイッチング素子92とが直列接続されることとなる。
【0089】
そして、高電位側導体93は、電源配線パターン97に直接接続されるように構成され、低電位側導体94は、低電位側スイッチング素子92または環流ダイオード92aの動作に応じてワイヤ96を介したグランド配線パターン98との電気的接続がなされるように構成されている。
【0090】
このように構成される高電位側導体93と低電位側導体94とは、上述した寄生インダクタンスを低減するため、その縁部93aと縁部94aとが対向する対向方向にて所定の隙間(調整後隙間)d4nを形成するように並列に配置されている。また、電源配線パターン97およびグランド配線パターン98も同様に、その縁部97aと縁部98aとが対向する対向方向にて所定の隙間(調整後隙間)d5nを形成するように並列に配置されている。
【0091】
次に、本実施形態に係る電力変換装置10bの製造方法について説明する。
上記変形工程(図3に示すS3の工程)にて、高電位側導体93および低電位側導体94が連結する連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間を狭くして調整後隙間d4nとするとともに、電源配線パターン97およびグランド配線パターン98が連結する連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間を狭くして調整後隙間d5nとする。この変形工程では、上記各実施形態にて述べた変形方法を適用することができる。
【0092】
そして、上記搭載工程(図3に示すS4の工程)により、高電位側導体93に対応する高電位側スイッチング素子91等が搭載されるとともに低電位側導体94に対応する低電位側スイッチング素子92等が搭載される。そして、上記封止工程および解除工程(図3のS5,S6に示す工程)により、各スイッチング素子91,92および各導体93,94の少なくとも一部をモールド樹脂12により封止した後に連結部による連結を解除することで、ハーフブリッジ回路90が成形される。
【0093】
これにより、高電位側スイッチング素子91および低電位側スイッチング素子92が高電位側導体93および低電位側導体94に搭載される電力変換装置10bであっても、1枚の導体板から並列に位置するように形成される高電位側導体93と低電位側導体94との隙間や電源配線パターン97とグランド配線パターン98との隙間をそれぞれ小さくすることができる。
【0094】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明に係る電子装置の製造方法は、上述した電力変換装置10や電子装置10aの製造方法に適用されることに限らず、高電位側導体と低電位側導体とが並列に位置するようにそれぞれ配置されてこれら各導体の少なくとも一部がモールド樹脂12等の封止部材により封止される電子装置の製造方法に適用されてもよい。
【0095】
(2)調整前隙間d,d2,d3は、上述した変形工程により、その導体の板厚よりも小さく形成されているが、これに限らず、所望の長さに形成されてもよい。
【0096】
(3)連結部51および連結部52は、支持片50を介することなく直接連結されるように形成されてもよい。
【0097】
(4)導体板30,80は、銅板から構成されているが、これに限らず、導体を構成し得る金属材料等により構成されてもよい。
【符号の説明】
【0098】
10,10b…電力変換装置(電子装置)
10a…電子装置
11…電力変換回路
12,13…モールド樹脂(封止部材)
21,23,25…スイッチ(高電位側スイッチング素子)
22,24,26…スイッチ(低電位側スイッチング素子)
30…導体板
31,33,35…導体(高電位側導体)
32,34,36…導体(低電位側導体)
31a〜36a…縁部
37,97…電源配線パターン(高電位側配線)
38,98…グランド配線パターン(低電位側配線)
51〜56…連結部
70…治具
80…導体板
81…バスバー(高電位側導体)
82…バスバー(低電位側導体)
81a,82a…縁部
83,84…連結部
90…ハーフブリッジ回路(電力変換回路)
91…高電位側スイッチング素子
92…低電位側スイッチング素子
93…高電位側導体
94…低電位側導体
d,d3…調整前隙間(所定の隙間)
dn,d3n…調整後隙間
d2…調整前隙間(第2の隙間)
d2n…調整後隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に配置される高電位側導体および低電位側導体が封止部材により封止される電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スイッチング素子を有する電力変換装置において、スイッチング時のサージノイズを低減するためには、高電位側スイッチング素子が搭載される高電位側導体と低電位側スイッチング素子が搭載される低電位側導体とを並列に配置しその隙間を小さくすることで、上記サージノイズに起因する寄生インダクタンスを低減することが知られている。
【0003】
このような構成として、例えば、下記特許文献1に開示される回路装置が知られている。この回路装置では、直流接続導体は、僅かな寄生インダクタンスを達成するために、それらの全経路において狭い間隔で隣り合っていて、双方の電気絶縁のために必要不可欠な層によってのみ互いに離されている。更に、出来るだけ僅かな寄生インダクタンスを達成するためには、直流接続導体が主要な一区画において基板及び/又は接続パスに対して狭い間隔で隣り合って配設されている。
【0004】
また、下記特許文献2に開示される電力変換装置では、負極側板状導体と正極側板状導体において流れる電流の向きが互いに逆になっており、導体間距離が絶縁シート厚さ分の極近接し、かつ、負極側板状導体と正極側板状導体とが積層化されている。そのため、これらの導体(配線)は低インダクタンス構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−080993号公報
【特許文献2】特開2001−286158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スイッチング素子を有する電力変換装置において、寄生インダクタンスのさらなる低減を図るためには、高電位側導体および低電位側導体の隙間をさらに小さくする必要がある。しかしながら、1枚の導体板から高電位側導体および低電位側導体を、通常のダイおよびパンチを用いた打ち抜き加工等により形成する場合には、両導体間の隙間は導体板の板厚程度が限界であり、その加工限度(例えば、板厚)よりも小さな隙間の形成が困難であるという問題がある。
【0007】
また、高電位側導体と低電位側導体とを個別に成形してその隙間を小さくするように両導体を配置することで、当該隙間をその板厚よりも小さくできるが、所望の隙間長さに応じて高電位側導体および低電位側導体をそれぞれ精度良く配置する工程が必要となり、製造コストが高くなるという別の問題がある。
【0008】
また、スイッチング素子を有する電力変換装置に限らず、例えば、並列に位置する高電位側バスバー(高電位側導体)と低電位側バスバー(低電位側導体)との隙間をその板厚より小さくする要求があるが、この構成に関しても上記電力変換装置と同様の問題が生じることとなる。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、1枚の導体板から並列に位置するように形成される高電位側導体と低電位側導体との隙間を小さくし得る電子装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の電子装置の製造方法は、高電位側導体(31,33,35,81)と低電位側導体(32,34,36,82)とが並列に位置するようにそれぞれ配置されてこれら各導体の少なくとも一部が封止部材(12,13)により封止される電子装置(10,10a)の製造方法であって、前記高電位側導体および前記低電位側導体を形成するための1枚の導体板(30,80)を用意する第1工程(S1)と、前記高電位側導体の縁部(31a,33a,35a,81a)と前記低電位側導体の縁部(32a,34a,36a,82a)とが対向する対向方向にて所定の隙間(d,d3)を形成するように前記高電位側導体および前記低電位側導体が並列に位置するとともに、これら各導体が連結部(51,52,83,84)を介して連結するように、前記導体板を加工する第2工程(S2)と、前記連結部の一部(52a,83a,84a)を変形させることで前記所定の隙間を狭くする第3工程(S3)と、前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除する第4工程(S5,S6)と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子装置の製造方法において、前記電子装置は、高電位側スイッチング素子(91)と低電位側スイッチング素子(92)とを直列接続して構成される電力変換回路(90)を有し、前記高電位側スイッチング素子が搭載される前記高電位側導体(93)と前記低電位側スイッチング素子が搭載される前記低電位側導体(94)とが並列に位置するように配置される電力変換装置(10b)であって、前記第3工程にて前記高電位側導体および前記低電位側導体が連結する前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くした後に、前記高電位側導体に対応する前記高電位側スイッチング素子を搭載するとともに前記低電位側導体に対応する前記低電位側スイッチング素子を搭載する搭載工程を有し、前記第4工程は、前記各スイッチング素子および前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除することで、前記電力変換回路を成形することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電子装置の製造方法において、前記電子装置は、直列接続された高電位側スイッチング素子(21,23,25)と低電位側スイッチング素子(22,24,26)とを複数組並列接続して構成される電力変換回路(11)を有し、前記高電位側スイッチング素子が搭載される前記高電位側導体と前記低電位側スイッチング素子が搭載される前記低電位側導体とが並列に位置するようにそれぞれ配置される電力変換装置(10)であって、前記第3工程にて複数組の前記高電位側導体および前記低電位側導体が連結する前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間をそれぞれ狭くした後に、前記各高電位側導体に対応する前記高電位側スイッチング素子をそれぞれ搭載するとともに前記各低電位側導体に対応する前記低電位側スイッチング素子をそれぞれ搭載する搭載工程(S4)を有し、前記第4工程は、前記各スイッチング素子および前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除することで、前記電力変換回路を成形することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第3工程は、前記所定の隙間を前記各導体の板厚よりも狭くするように前記連結部の一部を変形させることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第3工程は、前記対向方向との角度が鋭角となる方向に前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第3工程は、前記高電位側導体および前記低電位側導体が同一平面上にて近づくように、前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第3工程は、前記高電位側導体および前記低電位側導体が板厚方向の位置を異ならせるように、前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第3工程は、前記連結部のうち、前記第4工程にて前記封止部材により封止されない部位を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第2工程は、さらに、前記高電位側導体の縁部と前記低電位側導体の縁部とのうち少なくとも一方の縁部の一部に切り欠き(31b,32b)を形成し、前記第3工程は、前記第2工程により形成された前記切り欠きから構成される開口に治具(70)を挿入した状態で、前記連結部の一部を変形させて当該治具に前記切り欠きの縁部を当接させて前記高電位側導体および前記低電位側導体の前記対向方向の相対移動を規制することを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、前記第2工程は、さらに、前記各高電位側導体がそれぞれ接続される高電位側配線(37)と、前記各低電位側導体がそれぞれ接続される低電位側配線(38)とが第2の隙間(d3)を介して並列に位置するとともに、これら両配線が第2の連結部(54,55)を介して連結するように形成し、前記第3工程は、さらに、前記第2の連結部の一部を変形させることで前記第2の隙間を狭くすることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明では、第1工程により、高電位側導体および低電位側導体を形成するための1枚の導体板が用意され、第2工程により、高電位側導体の縁部と低電位側導体の縁部とが所定の隙間を形成するように高電位側導体および低電位側導体が並列に位置するとともに、これら各導体が連結部を介して連結するように、上記導体板が加工される。そして、第3工程により、連結部の一部を変形させることで所定の隙間が狭くされ、第4工程により、各導体の少なくとも一部を封止部材により封止した後に連結部による連結が解除される。
【0021】
これにより、1枚の導体板から打ち抜き加工等で所定の隙間を介して並列に位置する高電位側導体および低電位側導体を形成した後に、両導体を連結する連結部の一部を変形させることで、上記所定の隙間を狭く制御できる。
したがって、打ち抜き加工等の加工限度に影響されることなく、1枚の導体板から並列に位置するように形成される高電位側導体と低電位側導体との隙間を小さくすることができる。
【0022】
請求項2の発明では、電子装置は、高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを直列接続して構成される電力変換回路を有する電力変換装置であって、第3工程にて高電位側導体および低電位側導体が連結する連結部の一部を変形させることで所定の隙間を狭くした後に、搭載工程により、高電位側導体に対応する高電位側スイッチング素子が搭載されるとともに低電位側導体に対応する低電位側スイッチング素子が搭載される。そして、第4工程により、各スイッチング素子および各導体の少なくとも一部を封止部材により封止した後に連結部による連結を解除することで、電力変換回路が成形される。
【0023】
これにより、高電位側スイッチング素子および低電位側スイッチング素子が高電位側導体および低電位側導体に搭載される電力変換装置であっても、1枚の導体板から並列に位置するように形成される高電位側導体と低電位側導体との隙間をそれぞれ小さくすることができる。
【0024】
請求項3の発明では、電子装置は、直列接続された高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを複数組並列接続して構成される電力変換回路を有する電力変換装置であって、第3工程にて複数組の高電位側導体および低電位側導体が連結する連結部の一部を変形させることで所定の隙間をそれぞれ狭くした後に、搭載工程により、各高電位側導体に対応する高電位側スイッチング素子がそれぞれ搭載されるとともに各低電位側導体に対応する低電位側スイッチング素子がそれぞれ搭載される。そして、第4工程により、各スイッチング素子および各導体の少なくとも一部を封止部材により封止した後に連結部による連結を解除することで、電力変換回路が成形される。
【0025】
これにより、複数組の高電位側スイッチング素子および低電位側スイッチング素子がそれぞれ高電位側導体および低電位側導体に搭載される電力変換装置であっても、1枚の導体板から並列に位置するように形成される複数組の高電位側導体と低電位側導体との各隙間をそれぞれ小さくすることができる。
【0026】
請求項4の発明では、第3工程により、連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間が各導体の板厚よりも狭く形成されるので、上記所定の隙間を各導体の板厚よりも狭く形成する加工を容易に実施することができる。
【0027】
請求項5の発明では、第3工程により、対向方向との角度が鋭角となる方向に連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間が狭くされる。これにより、連結部の一部を変形させる変形量に対して、上記所定の隙間を狭くする方向への移動量が小さくなるので、この所定の隙間を狭くするための微調整が容易となり、当該所定の隙間を精度良く形成することができる。
【0028】
請求項6の発明のように、第3工程により、高電位側導体および低電位側導体が同一平面上にて近づくように、連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間を狭くしてもよい。
【0029】
請求項7の発明のように、第3工程により、高電位側導体および低電位側導体が板厚方向の位置を異ならせるように、連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間を狭くしてもよい。
【0030】
請求項8の発明では、第3工程により、連結部のうち、第4工程にて封止部材により封止されない部位を変形させることで上記所定の隙間を狭くするため、封止部材を形成する材料を注入する際の注入圧力が連結部の変形部位に直接作用することをなくすことができる。これにより、連結部の変形部位に上記注入圧力が作用したために上記所定の隙間がばらつくようなこともないので、封止部材による封止工程に起因する上記所定の隙間の加工精度の低下をなくすことができる。
【0031】
請求項9の発明では、第2工程により、さらに、高電位側導体の縁部と低電位側導体の縁部とのうち少なくとも一方の縁部の一部に切り欠きが形成される。そして、第3工程により、切り欠きから構成される開口に治具を挿入した状態で、連結部の一部を変形させて当該治具に切り欠きの縁部を当接させることで、高電位側導体および低電位側導体の対向方向の相対移動が規制される。これにより、上記所定の隙間を、開口に挿入される治具の対向方向の長さに応じて容易に制御することができる。
【0032】
請求項10の発明では、第2工程により、さらに、高電位側配線と低電位側配線とが第2の隙間を介して並列に位置するとともにこれら両配線が第2の連結部を介して連結するように形成され、第3工程により、さらに、第2の連結部の一部を変形させることで第2の隙間が狭くされる。これにより、各高電位側導体がそれぞれ接続される高電位側配線と、各低電位側導体がそれぞれ接続される低電位側配線との隙間(第2の隙間)も、容易に狭くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係る電力変換装置の要部を示す斜視図である。
【図2】図1の各導体の位置関係を示す説明図である。
【図3】電力変換装置の製造工程を示す工程図である。
【図4】図3の製造工程を説明するための説明図である。
【図5】図3の製造工程を説明するための説明図である。
【図6】図6(A)は、連結部の変形状態を拡大して示す拡大断面図であり、図6(B)は、連結部の他の変形状態を拡大して示す拡大断面図である。
【図7】第1実施形態の第1変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
【図8】第1実施形態の第2変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
【図9】第2実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
【図10】図10(A)は、第2実施形態の変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図であり、図10(B)は、図10(A)の10B−10B線相当の切断面による断面図である。
【図11】第3実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
【図12】第4実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
【図13】第5実施形態に係る電子装置の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図14】第5実施形態に係る電子装置の製造工程の一部を説明するための説明図である。
【図15】第6実施形態に係る電力変換装置の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る電子装置の製造方法を電力変換装置の製造方法に適用した第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る電力変換装置10の要部を示す斜視図である。図2は、図1の各導体31〜36の位置関係を示す説明図である。なお、図1では、説明の便宜上、モールド樹脂12等を図略している。
本第1実施形態に係る電力変換装置10は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)や制御回路などを一つのモジュール内に集積して高性能、高機能化したインテリジェントパワーモジュール(IPM:Intelligent Power Module)として機能するものである。
【0035】
図1に示す電力変換装置10は、直流電源の電圧を変換して出力する電力変換回路11を有するもので、この電力変換回路11は、直列接続された高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とが複数組並列接続して構成されている。
【0036】
具体的には、図2に示すように、U相用の高電位側スイッチング素子(以下、スイッチ21という)とこのスイッチ21に逆並列接続される環流ダイオード21aとが高電位側導体(以下、導体31という)に搭載され、U相用の低電位側スイッチング素子(以下、スイッチ22という)とこのスイッチ22に逆並列接続される環流ダイオード22aとが低電位側導体(以下、導体32という)に搭載されている。
【0037】
導体31と導体32とは、上述した寄生インダクタンスを低減するため、その縁部31aと縁部32aとが対向する対向方向(図2の左右方向)にて後述する調整後隙間dnを形成するように並列に配置されている。これら導体31および導体32が、スイッチ21または環流ダイオード21aの動作に応じてワイヤ41を介した電気的接続がなされるように構成されることで、スイッチ21とスイッチ22とが直列接続されることとなる。
【0038】
また、V相用の高電位側スイッチング素子(以下、スイッチ23という)とこのスイッチ23に逆並列接続される環流ダイオード23aとが高電位側導体(以下、導体33という)に搭載され、V相用の低電位側スイッチング素子(以下、スイッチ24という)とこのスイッチ24に逆並列接続される環流ダイオード24aとが低電位側導体(以下、導体34という)に搭載されている。
【0039】
導体33と導体34とは、上述した寄生インダクタンスを低減するため、その縁部33aと縁部34aとが対向する対向方向にて所定の隙間(調整後隙間)を形成するように並列に配置されている。これら導体33および導体34が、スイッチ23または環流ダイオード23aの動作に応じてワイヤ43を介した電気的接続がなされるように構成されることで、スイッチ23とスイッチ24とが直列接続されることとなる。
【0040】
また、W相用の高電位側スイッチング素子(以下、スイッチ25という)とこのスイッチ25に逆並列接続される環流ダイオード25aとが高電位側導体(以下、導体35という)に搭載され、W相用の低電位側スイッチング素子(以下、スイッチ26という)とこのスイッチ26に逆並列接続される環流ダイオード26aとが低電位側導体(以下、導体36という)に搭載されている。
【0041】
導体35と導体36とは、上述した寄生インダクタンスを低減するため、その縁部35aと縁部36aとが対向する対向方向にて所定の隙間(調整後隙間)を形成するように並列に配置されている。これら導体35および導体36が、スイッチ25または環流ダイオード25aの動作に応じてワイヤ45を介した電気的接続がなされるように構成されることで、スイッチ25とスイッチ26とが直列接続されることとなる。
【0042】
そして、高電位側の各導体31,33,35は、電源配線パターン37に直接接続されている。また、導体32は、スイッチ22または環流ダイオード22aの動作に応じてワイヤ42を介したグランド配線パターン38との電気的接続がなされるように構成されている。また、導体34は、スイッチ24または環流ダイオード24aの動作に応じてワイヤ44を介したグランド配線パターン38との電気的接続がなされるように構成されている。また、導体36は、スイッチ26または環流ダイオード26aの動作に応じてワイヤ46を介したグランド配線パターン38との電気的接続がなされるように構成されている。また、電源配線パターン37とグランド配線パターン38とは、後述する調整後隙間d2nを介して並列に位置するように配置されている。
【0043】
上述した各スイッチ21〜26および環流ダイオード21a〜26aは、対応する導体31〜36に搭載された状態でモールド樹脂12により封止されている。このモールド樹脂12から低電位側の各導体32,34,36の端部がU相出力端子、V相出力端子およびW相出力端子として露出し、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38の端部が電源端子として露出している。なお、モールド樹脂12は、特許請求の範囲に記載の「封止部材」の一例に相当し得る。
【0044】
次に、本実施形態に係る電力変換装置10の製造方法について、図3〜図6を用いて説明する。図3は、電力変換装置の製造工程を示す工程図である。図4および図5は、図3の製造工程を説明するための説明図である。図6(A)は、連結部の変形状態を拡大して示す拡大断面図であり、図6(B)は、連結部の他の変形状態を拡大して示す拡大断面図である。なお、図5では、説明の便宜上、スイッチ21,22や環流ダイオード21a,22a等を図略している。
【0045】
本実施形態では、上述した寄生インダクタンスを低減するため、打ち抜き工程直後における高電位側の各導体31,33,35の縁部31a,33a,35aと低電位側の各導体32,34,36の縁部32a,34a,36aとが対向する対向方向での所定の隙間(以下、調整前隙間dという)を、後述する連結部の変形に応じて、各導体の板厚(例えば、500μm)よりも狭くしている。
【0046】
以下、調整前隙間dを狭くすることを技術的特徴とする電力変換装置10の製造工程について、詳細に説明する。
まず、図4(A)に示すように、高電位側の各導体31,33,35および低電位側の各導体32,34,36と、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38とを形成するための1枚の導体板30を用意する(図3のS1)。この導体板30は、例えば、銅板から構成される。なお、図3のS1に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第1工程」の一例に相当し得る。
【0047】
次に、高電位側の各導体31,33,35の縁部31a,33a,35aと低電位側の各導体32,34,36の縁部32a,34a,36aとが対向する対向方向にて調整前隙間dを形成するように各導体31,33,35および各導体32,34,36が並列に位置するとともに、これら各導体31〜36が連結部を介して連結するように、導体板30に対して打ち抜き加工を実施する(図3のS2)。
【0048】
具体的には、図4(B)に例示するように、導体31に連結する連結部51と導体32に連結する連結部52とを枠状に形成される支持片50を介して連結するように、導体板30に対して打ち抜き加工を実施する。また、導体33に連結する連結部と導体34に連結する連結部と支持片50を介して連結するとともに、導体35に連結する連結部と導体36に連結する連結部と支持片50を介して連結するように、導体板30に対して打ち抜き加工を実施する。なお、図3のS2に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第2工程」の一例に相当し得る。
【0049】
続いて、連結部の一部を変形させることで調整前隙間dを狭くする(図3のS3)。具体的には、導体31および導体32に関しては、図4(C)および図6(A)に例示するように、連結部52の中央部52aを山状に押しつぶして変形させることで、この連結部52に連結する導体32をその縁部32aが導体31の縁部31aに同一平面上にて近づく方向(上記対向方向)に移動させる。また、導体33および導体34や導体35および導体36に関しても同様に連結部の一部を変形させて、同一平面上にて互いに近づく方向に相対移動させる。なお、このように変形される連結部の変形部位52aは、後述する封止工程にてモールド樹脂12により封止されない部位である。スイッチと対応する還流ダイオードを冷却させることが必要な場合には、スイッチおよび還流ダイオードを同一平面上に近づけることで、ヒートシンクに同一平面で接触することができ、放熱面で有利である。
【0050】
これにより、各導体間の調整前隙間dを、その板厚よりも小さくすることができる。なお、図4(C)では、小さく調整した調整後隙間を符号dnで図示している。また、図3のS3に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第3工程」の一例に相当し得る。
【0051】
なお、調整前隙間dを狭くするための連結部の変形は、図6(A)に示すように連結部52の中央部52aを山状に押しつぶして変形させることに限らず、例えば、図6(B)に示すように、連結部52の中央部52aを凸状に押しつぶして変形させてもよい。
【0052】
次に、図2に示すように、高電位側の各導体31,33,35に対応するスイッチ21,23,25および環流ダイオード21a,23a,25aをそれぞれ搭載するとともに、低電位側の各導体32,34,36に対応するスイッチ22,24,26および環流ダイオード22a,24a,26aをそれぞれ搭載する(図3のS4)。そして、ワイヤボンディングにより、ワイヤ41〜46等を用いて、対応する各導体や各スイッチ等を電気的に接続する。なお、図3のS4に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「搭載工程」の一例に相当し得る。
【0053】
続いて、図5(D)に示すように、各スイッチ21〜26および各導体31〜36等をモールド樹脂12により封止する(図3のS5)。そして、図5(E)に示すように、連結部51,52や支持片50に連結される他の連結部を除去することで、連結部による連結を解除して(図3のS6)、電力変換回路11が成形される。なお、図3のS5,S6に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第4工程」の一例に相当し得る。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る電力変換装置10の製造方法では、S1に示す工程により、高電位側の各導体31,33,35および低電位側の各導体32,34,36を形成するための1枚の導体板30が用意され、打ち抜き工程(S2)により、高電位側の各導体31,33,35の縁部31a,33a,35aと低電位側の各導体32,34,36の縁部32a,34a,36aとが調整前隙間dを形成するように各導体31,33,35および各導体32,34,36が並列に位置するとともに、これら各導体31〜36が連結部51,52等を介して連結するように、上記導体板30が加工される。そして、変形工程(S3)により、連結部52の中央部52a等を変形させることで調整前隙間dが狭くされ、搭載工程(S4)により、高電位側の各導体31,33,35に対応するスイッチ21,23,25がそれぞれ搭載されるとともに低電位側の各導体32,34,36に対応するスイッチ22,24,26がそれぞれ搭載される。そして、封止工程(S5)により、各スイッチ21〜26および各導体31〜36等をモールド樹脂12により封止した後に、解除工程(S6)により、連結部51,52等による連結を解除することで、電力変換回路11が成形される。
【0055】
これにより、1枚の導体板30から打ち抜き加工等で調整前隙間dを介して並列に位置する高電位側の各導体31,33,35および低電位側の各導体32,34,36を形成した後に、各導体31〜36を連結する連結部51,52の一部を変形させることで、調整前隙間dを狭く制御できる。
したがって、打ち抜き加工等の加工限度に影響されることなく、1枚の導体板30から並列に位置するように形成される高電位側の各導体31,33,35および低電位側の各導体32,34,36との隙間を小さくすることができる。
【0056】
また、変形工程(S3)により、連結部51,52等の一部を変形させることで調整前隙間dが各導体31〜36の板厚よりも狭く形成されるので、調整前隙間dを各導体31〜36の板厚よりも狭く形成する加工を容易に実施することができる。
【0057】
さらに、変形工程(S3)により、連結部51,52等のうち、封止工程(S5)にてモールド樹脂12により封止されない部位を変形させることで調整前隙間dを狭くするため、モールド樹脂12を形成する材料を注入する際の注入圧力が連結部の変形部位52a等に直接作用することをなくすことができる。これにより、連結部の変形部位52aに上記注入圧力が作用したために調整前隙間dを狭くした調整後隙間dnがばらつくようなこともないので、モールド樹脂12による封止工程に起因する上記調整後の隙間の加工精度の低下をなくすことができる。
【0058】
図7は、第1実施形態の第1変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。図8は、第1実施形態の第2変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
なお、上記第1実施形態の第1変形例に係る電力変換装置の製造方法として、各連結部51,52のうち、封止工程(S5)にてモールド樹脂12により封止される部位を変形させることで調整前隙間dを狭くしてもよい。具体的には、図7に例示する変形工程のように、連結部52の端部52bは、モールド樹脂12により封止される部位であり、この端部52bを変形させることで、調整前隙間dを狭くすることができる。
【0059】
また、上記第1実施形態にて述べたように、S3に示す変形工程により、高電位側の各導体31,33,35および低電位側の各導体32,34,36が同一平面上にて近づくように、連結部52の中央部52aを変形させることで調整前隙間dを狭くすることに限らず、上記第1実施形態の第2変形例に係る電力変換装置の製造方法として、導体同士の板厚方向の位置を異ならせるように連結部の一部を変形させることで、調整前隙間dを狭くしてもよい。
【0060】
具体的には、図8(B)に例示するように、高電位側の導体31および低電位側の導体32が板厚方向の位置を異ならせるように、連結部52の中央部52aを変形させることで(図8(A)参照)、調整前隙間dを狭くすることができる。同様に、高電位側の各導体33,35および低電位側の各導体34,36が板厚方向の位置を異ならせるように、連結部の一部を変形させることで調整前隙間dを狭くすることができる。これにより、高電位側の各導体31,33,35と低電位側の各導体32,34,36とを板厚方向に対して直交する方向に相対移動させても接触しないので、調整前隙間dを狭くすることに起因する接触不良等をなくすことができる。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る電子装置の製造方法を電力変換装置の製造方法に適用した第2実施形態について、図9を参照して説明する。図9は、第2実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図である。
本第2実施形態に係る電力変換装置10の製造方法では、連結部の変形方向が異なる点が、上記第1実施形態に係る電力変換装置の製造方法と異なる。
【0062】
以下、本実施形態に係る製造方法の特徴的工程を、導体31および導体32を例に図9を用いて説明する。
図9に例示するように、導体32と支持片50とは、連結部53を介して連結しており、対向方向との角度が45度となる方向に連結部53の中央部53aを変形させることで調整前隙間dが狭くされる。これにより、連結部53の中央部53aを変形させる変形量に対して、調整前隙間dを狭くする方向への移動量が小さくなるので、この調整前隙間dを狭くするための微調整が容易となり、調整後隙間dnを精度良く形成することができる。
なお、連結部の変形方向は、対向方向との角度が45度となることに限らず、対向方向との角度が鋭角となる方向であればよい。
【0063】
また、導体33および導体34の少なくともいずれかに連結する連結部や、導体35および導体36の少なくともいずれかに連結する連結部を、その対向方向との角度が鋭角となる方向に変形させて調整前隙間dを狭くすることで、上記効果を奏する。
【0064】
なお、本第2実施形態に係る電力変換装置10における調整前隙間dを狭くする製造方法では、上記第1実施形態の変形例などにて説明された特徴的工程を適用してもよい。
【0065】
図10(A)は、第2実施形態の変形例に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図であり、図10(B)は、図10(A)の10B−10B線相当の切断面による断面図である。
なお、上記第2実施形態の変形例に係る電力変換装置の製造方法として、連結部を含めた複数の箇所を、その対向方向との角度が鋭角となる方向に変形させて調整前隙間dを狭くすることでも、上記効果を奏する。また、図10(A),(B)に示すように、各変形箇所61〜63を板厚方向の位置を異ならせるように変形させても、上記効果を奏する。
【0066】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る電子装置の製造方法を電力変換装置の製造方法に適用した第3実施形態について、図11を参照して説明する。図11は、第3実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図であり、図11(A)は、打ち抜き工程を示し、図11(B)は変形工程を示す。
本第3実施形態に係る電力変換装置10の製造方法では、変形工程時に治具70を使用する点が、上記第1実施形態に係る電力変換装置の製造方法と異なる。
【0067】
以下、本実施形態に係る製造方法の特徴的工程を、導体31および導体32を例に図11(A),(B)を用いて説明する。
図11(A)に例示するように、S3の打ち抜き工程において、導体31の縁部31aと導体32の縁部32aとの一部に切り欠き31b,32bを形成する。
【0068】
次に、図11(B)に例示するように、S4の変形工程において、両切り欠き31b,32bから構成される開口に治具70を挿入した状態で、連結部52の中央部52aを変形させて当該治具70に切り欠き31b,32bの縁部を当接させることで、導体31および導体32の対向方向の相対移動が規制される。
【0069】
これにより、調整後隙間dnを、上記開口に挿入される治具70の対向方向の長さに応じて容易に制御することができる。
なお、切り欠きは、導体31および導体32のうちいずれか一方のみに形成されてもよい。
【0070】
また、S3の打ち抜き工程にて、導体33および導体34の少なくともいずれか一方に治具70を挿入するための切り欠きを形成して、S4の変形工程にて、切り欠きから構成される開口に治具70を挿入した状態で、連結部の一部を変形させることでも、上記効果を奏する。また、導体35および導体36に同様に切り欠きを形成しても、上記効果を奏する。
【0071】
なお、本第3実施形態に係る電力変換装置10における調整前隙間dを狭くする製造方法では、上記第1実施形態の変形例や他の実施形態などにて説明された特徴的工程を適用してもよい。
【0072】
[第4実施形態]
次に、本発明に係る電子装置の製造方法を電力変換装置の製造方法に適用した第4実施形態について、図12を参照して説明する。図12は、第4実施形態に係る電力変換装置の製造工程の一部を示す説明図であり、図12(A)は、打ち抜き工程を示し、図12(B)は変形工程を示す。
本第4実施形態に係る電力変換装置10の製造方法では、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38の隙間を連結部の変形に応じて狭くする点が、上記第1実施形態に係る電力変換装置の製造方法と異なる。
【0073】
以下、本実施形態に係る製造方法の特徴的工程を、図12(A),(B)を用いて説明する。
図12(A)に例示するように、S3の打ち抜き工程において、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38が調整前隙間d2を介して並列に位置するとともに、電源配線パターン37が2つの連結部54,55を介して支持片50に連結し、グランド配線パターン38が連結部56を介して支持片50に連結するように、導体板30に対して打ち抜き加工を実施する。
【0074】
次に、図12(B)に例示するように、S4の変形工程において、連結部54の中央部54aと連結部55の中央部55aとを変形させることで、調整前隙間d2を調整後隙間d2nに狭くする。これにより、高電位側の各導体31,33,35がそれぞれ接続される電源配線パターン37と、低電位側の各導体32,34,36がそれぞれ接続されるグランド配線パターン38との隙間も、容易に狭くすることができる。なお、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38は、特許請求の範囲に記載の「高電位側配線」および「低電位側配線」の一例に相当し、調整前隙間d2は、特許請求の範囲に記載の「第2の隙間」の一例に相当し得る。
【0075】
なお、本第4実施形態に係る電力変換装置10における調整前隙間d2を狭くする製造方法では、上記第1実施形態の変形例や他の実施形態などにて説明された特徴的工程を適用してもよい。
また、高電位側導体31、33、35と低電位側導体32、34,36との調整前隙間dをそれぞれ狭くすることなく、調整前隙間d2のみを狭くしてもよい。この場合、電源配線パターン37およびグランド配線パターン38は、特許請求の範囲に記載の「高電位側導体」および「低電位側導体」の一例に相当し、調整前隙間d2は、特許請求の範囲に記載の「所定の隙間」の一例に相当し得る。
【0076】
[第5実施形態]
次に、本発明に係る電子装置の製造方法を具現化した第5実施形態について、図13および図14を参照して説明する。図13および図14は、第5実施形態に係る電子装置10aの製造工程を説明するための説明図である。
本第5実施形態に係る電子装置10aは、直列接続されたスイッチ21,23,25とスイッチ22,24,26とを複数組並列接続して構成される電力変換回路11を有し、スイッチ21,23,25が搭載される高電位側の各導体31,33,35とスイッチ22,24,26が搭載される低電位側の各導体32,34,36とが並列に位置するようにそれぞれ配置される電力変換装置10と異なり、以下のように構成される。
【0077】
すなわち、電子装置10aは、図14(E)に示すように、高電位側のバスバー81と低電位側のバスバー82とが並列に位置するようにそれぞれ配置されてこれら各バスバー81,82の少なくとも一部がモールド樹脂13により封止される装置である。なお、バスバー81およびバスバー82は、特許請求の範囲に記載の「高電位側導体」および「低電位側導体」の一例に相当し、モールド樹脂13は、特許請求の範囲に記載の「封止部材」の一例に相当し得る。
【0078】
このように構成される電子装置10aの製造方法について、図13および図14を用いて説明する。
まず、図13(A)に示すように、バスバー81およびバスバー82等を形成するための1枚の導体板80を用意する。なお、図13(A)に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第1工程」の一例に相当し得る。
【0079】
次に、図13(B)に示すように、バスバー81の縁部81aとバスバー82の縁部82aとが対向する対向方向(図13の上下方向)にて調整前隙間d3を形成するように各バスバー81,82が並列に位置するとともに、これら各バスバー81,82が連結部83,84を介して連結するように、導体板に対して打ち抜き加工を実施する。なお、図13(B)に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第2工程」の一例に相当し得る。
【0080】
続いて、図13(C)に示すように、連結部83の中央部83aと連結部84の中央部84aを山状に押しつぶして変形させることで(図6(A)参照)、バスバー81およびバスバー82を縁部81a,82aが同一平面上にて近づく方向(上記対向方向)に相対移動させる。これにより、バスバー81およびバスバー82間の調整前隙間d3を、その板厚よりも小さい調整後隙間d3nにすることができる。
【0081】
なお、調整前隙間d3を狭くするための連結部83,84の変形は、その中央部83a,84aを山状に押しつぶして変形させることに限らず、例えば、その中央部83a,84aを凸状に押しつぶして変形させてもよい(図6(B)参照)。また、図13(C)に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第3工程」の一例に相当し得る。
【0082】
次に、バスバー81,82やその他の導体に対して電子部品(図示略)等を搭載した後、図14(D)に示すように、バスバー81,82の中央部等をモールド樹脂13により封止する。そして、図14(E)に示すように、連結部83,84を除去することで、連結部による連結を解除する。なお、図14(D),(E)に示す工程は、特許請求の範囲に記載の「第4工程」の一例に相当し得る。
【0083】
以上説明したように、本実施形態に係る電子装置10aの製造方法では、バスバー81およびバスバー82を形成するための1枚の導体板80が用意されると、バスバー81の縁部81aとバスバー82の縁部82aとが調整前隙間d3を形成するようにバスバー81およびバスバー82が並列に位置するとともに、これら各バスバー81,82が連結部83,84を介して連結するように、導体板80が加工される。そして、連結部83,84の中央部83a,84aを変形させることで調整前隙間d3が狭くされ、各バスバー81,82の中央部等をモールド樹脂13により封止した後に連結部83,84による連結が解除される。
【0084】
これにより、1枚の導体板80から打ち抜き加工等で調整前隙間d3を介して並列に位置するバスバー81およびバスバー82を形成した後に、両バスバー81,82を連結する連結部83,84の一部を変形させることで、調整前隙間d3を狭く制御できる。
したがって、打ち抜き加工等の加工限度に影響されることなく、1枚の導体板80から並列に位置するように形成されるバスバー81およびバスバー82との隙間を小さくすることができる。
【0085】
なお、本第5実施形態に係る電子装置10aのバスバー81およびバスバー82の調整前隙間d3を狭くする製造方法では、上記第1実施形態の変形例や他の実施形態などにて説明された特徴的工程を適用してもよい。
【0086】
[第6実施形態]
次に、本発明に係る電子装置の製造方法を具現化した第6実施形態について、図15を参照して説明する。図15は、第6実施形態に係る電力変換装置10bの要部を示す説明図である。
本第6実施形態に係る電力変換装置10bは、直列接続されたスイッチ21,23,25とスイッチ22,24,26とを複数組並列接続して構成される電力変換回路11を有し、スイッチ21,23,25が搭載される高電位側の各導体31,33,35とスイッチ22,24,26が搭載される低電位側の各導体32,34,36とが並列に位置するようにそれぞれ配置される電力変換装置10と異なり、以下のように構成される。
【0087】
すなわち、電力変換装置10bは、図15に示すように、高電位側スイッチング素子91と低電位側スイッチング素子92とを直列接続して構成される電力変換回路としてハーフブリッジ回路90を有している。この電力変換装置10bは、高電位側スイッチング素子91とこの高電位側スイッチング素子91に逆並列接続される環流ダイオード91aとが搭載される高電位側導体93と、低電位側スイッチング素子92とこの低電位側スイッチング素子92に逆並列接続される環流ダイオード92aとが搭載される低電位側導体94とが、並列に位置するように配置されて構成されている。
【0088】
これら高電位側導体93および低電位側導体94が、高電位側スイッチング素子91または環流ダイオード91aの動作に応じてワイヤ95を介した電気的接続がなされるように構成されることで、高電位側スイッチング素子91と低電位側スイッチング素子92とが直列接続されることとなる。
【0089】
そして、高電位側導体93は、電源配線パターン97に直接接続されるように構成され、低電位側導体94は、低電位側スイッチング素子92または環流ダイオード92aの動作に応じてワイヤ96を介したグランド配線パターン98との電気的接続がなされるように構成されている。
【0090】
このように構成される高電位側導体93と低電位側導体94とは、上述した寄生インダクタンスを低減するため、その縁部93aと縁部94aとが対向する対向方向にて所定の隙間(調整後隙間)d4nを形成するように並列に配置されている。また、電源配線パターン97およびグランド配線パターン98も同様に、その縁部97aと縁部98aとが対向する対向方向にて所定の隙間(調整後隙間)d5nを形成するように並列に配置されている。
【0091】
次に、本実施形態に係る電力変換装置10bの製造方法について説明する。
上記変形工程(図3に示すS3の工程)にて、高電位側導体93および低電位側導体94が連結する連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間を狭くして調整後隙間d4nとするとともに、電源配線パターン97およびグランド配線パターン98が連結する連結部の一部を変形させることで上記所定の隙間を狭くして調整後隙間d5nとする。この変形工程では、上記各実施形態にて述べた変形方法を適用することができる。
【0092】
そして、上記搭載工程(図3に示すS4の工程)により、高電位側導体93に対応する高電位側スイッチング素子91等が搭載されるとともに低電位側導体94に対応する低電位側スイッチング素子92等が搭載される。そして、上記封止工程および解除工程(図3のS5,S6に示す工程)により、各スイッチング素子91,92および各導体93,94の少なくとも一部をモールド樹脂12により封止した後に連結部による連結を解除することで、ハーフブリッジ回路90が成形される。
【0093】
これにより、高電位側スイッチング素子91および低電位側スイッチング素子92が高電位側導体93および低電位側導体94に搭載される電力変換装置10bであっても、1枚の導体板から並列に位置するように形成される高電位側導体93と低電位側導体94との隙間や電源配線パターン97とグランド配線パターン98との隙間をそれぞれ小さくすることができる。
【0094】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明に係る電子装置の製造方法は、上述した電力変換装置10や電子装置10aの製造方法に適用されることに限らず、高電位側導体と低電位側導体とが並列に位置するようにそれぞれ配置されてこれら各導体の少なくとも一部がモールド樹脂12等の封止部材により封止される電子装置の製造方法に適用されてもよい。
【0095】
(2)調整前隙間d,d2,d3は、上述した変形工程により、その導体の板厚よりも小さく形成されているが、これに限らず、所望の長さに形成されてもよい。
【0096】
(3)連結部51および連結部52は、支持片50を介することなく直接連結されるように形成されてもよい。
【0097】
(4)導体板30,80は、銅板から構成されているが、これに限らず、導体を構成し得る金属材料等により構成されてもよい。
【符号の説明】
【0098】
10,10b…電力変換装置(電子装置)
10a…電子装置
11…電力変換回路
12,13…モールド樹脂(封止部材)
21,23,25…スイッチ(高電位側スイッチング素子)
22,24,26…スイッチ(低電位側スイッチング素子)
30…導体板
31,33,35…導体(高電位側導体)
32,34,36…導体(低電位側導体)
31a〜36a…縁部
37,97…電源配線パターン(高電位側配線)
38,98…グランド配線パターン(低電位側配線)
51〜56…連結部
70…治具
80…導体板
81…バスバー(高電位側導体)
82…バスバー(低電位側導体)
81a,82a…縁部
83,84…連結部
90…ハーフブリッジ回路(電力変換回路)
91…高電位側スイッチング素子
92…低電位側スイッチング素子
93…高電位側導体
94…低電位側導体
d,d3…調整前隙間(所定の隙間)
dn,d3n…調整後隙間
d2…調整前隙間(第2の隙間)
d2n…調整後隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電位側導体と低電位側導体とが並列に位置するようにそれぞれ配置されてこれら各導体の少なくとも一部が封止部材により封止される電子装置の製造方法であって、
前記高電位側導体および前記低電位側導体を形成するための1枚の導体板を用意する第1工程と、
前記高電位側導体の縁部と前記低電位側導体の縁部とが対向する対向方向にて所定の隙間を形成するように前記高電位側導体および前記低電位側導体が並列に位置するとともに、これら各導体が連結部を介して連結するように、前記導体板を加工する第2工程と、
前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くする第3工程と、
前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除する第4工程と、
を備えることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記電子装置は、高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを直列接続して構成される電力変換回路を有し、前記高電位側スイッチング素子が搭載される前記高電位側導体と前記低電位側スイッチング素子が搭載される前記低電位側導体とが並列に位置するように配置される電力変換装置であって、
前記第3工程にて前記高電位側導体および前記低電位側導体が連結する前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くした後に、前記高電位側導体に対応する前記高電位側スイッチング素子を搭載するとともに前記低電位側導体に対応する前記低電位側スイッチング素子を搭載する搭載工程を有し、
前記第4工程は、前記各スイッチング素子および前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除することで、前記電力変換回路を成形することを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記電子装置は、直列接続された高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを複数組並列接続して構成される電力変換回路を有し、前記高電位側スイッチング素子が搭載される前記高電位側導体と前記低電位側スイッチング素子が搭載される前記低電位側導体とが並列に位置するようにそれぞれ配置される電力変換装置であって、
前記第3工程にて複数組の前記高電位側導体および前記低電位側導体が連結する前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間をそれぞれ狭くした後に、前記各高電位側導体に対応する前記高電位側スイッチング素子をそれぞれ搭載するとともに前記各低電位側導体に対応する前記低電位側スイッチング素子をそれぞれ搭載する搭載工程を有し、
前記第4工程は、前記各スイッチング素子および前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除することで、前記電力変換回路を成形することを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記第3工程は、前記所定の隙間を前記各導体の板厚よりも狭くするように前記連結部の一部を変形させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
前記第3工程は、前記対向方向との角度が鋭角となる方向に前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3工程は、前記高電位側導体および前記低電位側導体が同一平面上にて近づくように、前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項7】
前記第3工程は、前記高電位側導体および前記低電位側導体が板厚方向の位置を異ならせるように、前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程は、前記連結部のうち、前記第4工程にて前記封止部材により封止されない部位を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2工程は、さらに、前記高電位側導体の縁部と前記低電位側導体の縁部とのうち少なくとも一方の縁部の一部に切り欠きを形成し、
前記第3工程は、前記第2工程により形成された前記切り欠きから構成される開口に治具を挿入した状態で、前記連結部の一部を変形させて当該治具に前記切り欠きの縁部を当接させて前記高電位側導体および前記低電位側導体の前記対向方向の相対移動を規制することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2工程は、さらに、前記各高電位側導体がそれぞれ接続される高電位側配線と、前記各低電位側導体がそれぞれ接続される低電位側配線とが第2の隙間を介して並列に位置するとともに、これら両配線が第2の連結部を介して連結するように形成し、
前記第3工程は、さらに、前記第2の連結部の一部を変形させることで前記第2の隙間を狭くすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項1】
高電位側導体と低電位側導体とが並列に位置するようにそれぞれ配置されてこれら各導体の少なくとも一部が封止部材により封止される電子装置の製造方法であって、
前記高電位側導体および前記低電位側導体を形成するための1枚の導体板を用意する第1工程と、
前記高電位側導体の縁部と前記低電位側導体の縁部とが対向する対向方向にて所定の隙間を形成するように前記高電位側導体および前記低電位側導体が並列に位置するとともに、これら各導体が連結部を介して連結するように、前記導体板を加工する第2工程と、
前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くする第3工程と、
前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除する第4工程と、
を備えることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記電子装置は、高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを直列接続して構成される電力変換回路を有し、前記高電位側スイッチング素子が搭載される前記高電位側導体と前記低電位側スイッチング素子が搭載される前記低電位側導体とが並列に位置するように配置される電力変換装置であって、
前記第3工程にて前記高電位側導体および前記低電位側導体が連結する前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くした後に、前記高電位側導体に対応する前記高電位側スイッチング素子を搭載するとともに前記低電位側導体に対応する前記低電位側スイッチング素子を搭載する搭載工程を有し、
前記第4工程は、前記各スイッチング素子および前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除することで、前記電力変換回路を成形することを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記電子装置は、直列接続された高電位側スイッチング素子と低電位側スイッチング素子とを複数組並列接続して構成される電力変換回路を有し、前記高電位側スイッチング素子が搭載される前記高電位側導体と前記低電位側スイッチング素子が搭載される前記低電位側導体とが並列に位置するようにそれぞれ配置される電力変換装置であって、
前記第3工程にて複数組の前記高電位側導体および前記低電位側導体が連結する前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間をそれぞれ狭くした後に、前記各高電位側導体に対応する前記高電位側スイッチング素子をそれぞれ搭載するとともに前記各低電位側導体に対応する前記低電位側スイッチング素子をそれぞれ搭載する搭載工程を有し、
前記第4工程は、前記各スイッチング素子および前記各導体の少なくとも一部を前記封止部材により封止した後に前記連結部による連結を解除することで、前記電力変換回路を成形することを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記第3工程は、前記所定の隙間を前記各導体の板厚よりも狭くするように前記連結部の一部を変形させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
前記第3工程は、前記対向方向との角度が鋭角となる方向に前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3工程は、前記高電位側導体および前記低電位側導体が同一平面上にて近づくように、前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項7】
前記第3工程は、前記高電位側導体および前記低電位側導体が板厚方向の位置を異ならせるように、前記連結部の一部を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程は、前記連結部のうち、前記第4工程にて前記封止部材により封止されない部位を変形させることで前記所定の隙間を狭くすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2工程は、さらに、前記高電位側導体の縁部と前記低電位側導体の縁部とのうち少なくとも一方の縁部の一部に切り欠きを形成し、
前記第3工程は、前記第2工程により形成された前記切り欠きから構成される開口に治具を挿入した状態で、前記連結部の一部を変形させて当該治具に前記切り欠きの縁部を当接させて前記高電位側導体および前記低電位側導体の前記対向方向の相対移動を規制することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2工程は、さらに、前記各高電位側導体がそれぞれ接続される高電位側配線と、前記各低電位側導体がそれぞれ接続される低電位側配線とが第2の隙間を介して並列に位置するとともに、これら両配線が第2の連結部を介して連結するように形成し、
前記第3工程は、さらに、前記第2の連結部の一部を変形させることで前記第2の隙間を狭くすることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−51376(P2013−51376A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189821(P2011−189821)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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