説明

電子装置

【課題】部品点数を削減して生産性を向上させる際、特殊な防水部材を必要としていた。また、防水性により水が浸入しないようにされた場所で電気的な導通を確保させることができていなかった。
【解決手段】筐体の内側に防水部材が設けられた電子装置について、防水部材が、防水性を確保するための防水部分と、配線を上記筐体に当接して導通させる導通部分と、を備えるようにする。そして、上記の導通部分は、上記防水部分により防水された場所に配設されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば折りたたみ式の携帯電話機など、防水対策が施され、装置内部に導通のための接点を備えた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、装置内部に導通のための接点を備えた電子装置では、その接点部分に導電性テープやガスケットを設けることで導通を確保している。
【0003】
また、水のかかる場面での使用にも対応できるよう、パッキンにより防水性を持たせた製品が知られている。
【0004】
また、本発明の関連技術として、フレキシブル配線板の接続端子部を、パッキンの凸状の圧縮部に配置し、プリント配線板がネジにより締め付けられることで、フレキシブル配線板の接続端子部がプリント配線板とパッキンとによって挟持され、プリント配線板がパッキンを押しつぶすと共に、フレキシブル配線板の接続端子部がプリント配線板に押圧接合されるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、本発明の関連技術として、導電性のあるパッキンでフレキシブルケーブルを挟み込むと共に、この導電パッキンが第1および第2のケースにおける導電面の間を導通させるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−41173号公報
【特許文献2】特開2004−214443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような電子装置では、組み立ての容易性や生産性の向上のため、十分な防水性を確保しながらも、可能な限り部品点数を削減することが求められている。
【0008】
また、上述した特許文献1のものは、押圧接合による導電部分と防水部分とが同一となってしまっており、導通部分も水に接触してしまう虞があった。すなわち、防水性により水が浸入しないようにした場所で電気的に導通させることについてまで考慮されたものではなかった。
【0009】
また、上述した特許文献2のものは、導電性のパッキンにより導通と防水性とを確保するものであり、導電性防水部材を必要とせずに一般的なパッキンで防水性を持たせることについてまで考慮されたものではなかった。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、特殊な防水部材を必要とせず、可能な限り部品点数を削減して生産性を向上させながらも、防水性により水が浸入しないようにされた場所で電気的な導通を確保させることができ、安全性、信頼性に優れた電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明に係る電子装置は、筐体の内側に防水部材が設けられた電子装置であって、前記防水部材は、防水性を確保するための防水部分と、配線を前記筐体に当接して導通させる導通部分と、を備え、前記導通部分は、前記防水部分により防水された場所に配設されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、特殊な防水部材を必要とせず、可能な限り部品点数を削減して生産性を向上させることができる。
【0013】
さらに、防水性により水が浸入しないようにされた場所で電気的な導通を確保させることができ、安全性、信頼性に優れた電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態としての携帯電話機外観を示す図である。
【図2】該携帯電話機におけるB−B断面を示す部分断面図である。
【図3】該携帯電話機におけるA−A断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る電子装置を、携帯電話機に適用した一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1に装置外観を示し、図2にB−B断面、図3にA−A断面をそれぞれ示す。
【0017】
本実施形態の携帯電話機は、図1〜図3に示すように、表示画面を備えた表示側筐体(第1の筐体)と、操作入力部を備えた操作側筐体(第2の筐体)とが、各筐体に配設されたヒンジ部により開閉可能に連結されて構成される。表示側筐体に収納される電子部品と、操作側筐体に収納される電子部品とは、フレキシブルケーブル3により接続される。
【0018】
操作側筐体における電子部品が収納された装置本体部分と、その操作側筐体におけるヒンジ部との間には、防水のためのパッキン(防水部材)が設けられ、装置本体部分における防水性を確保している。このため、上述したフレキシブルケーブル3は、図2に示す上側パッキン2(第1の防水部材)の平面部分と、下側パッキン5(第2の防水部材)の押圧防水突起51(押圧防水部分)とによって押圧されて挟持される構成となっており、この押圧による挟持部分で防水性が確保され、装置本体部分への水の浸入を防ぐ構造となっている。
【0019】
上述した操作側筐体は、下側筐体6と筐体板金4とが一体化されたハイブリッド筐体と、上側筐体1とがネジ等で締め付けられ、押圧されて閉じられるようになっている。そして、上述した上側パッキン2は上側筐体1の内側の平面部分に、下側パッキン5は下側筐体6の内側の平面部分に、それぞれ固定される。
【0020】
また、下側パッキン5の押圧防水突起51は、先端に平面部のない凸型形状、より好ましくは図2に示す略楔形に形成される。このことにより、上側パッキン2と下側パッキン5との間での反力を大きくしすぎることなく、上側筐体1と下側筐体6とが上述のように閉じられるための押圧力だけで、押圧防水突起51先端部分における応力を十分に大きく確保することができる。このため、押圧防水突起51先端部分が確実にフレキシブルケーブル3の表面に圧着され、十分な防水性を確保できるようになっている。
【0021】
さらに、下側パッキン5が、上側パッキン2よりも剛性の低い材料で構成されることにより、押圧防水突起51先端部分がより確実にフレキシブルケーブル3の表面に圧着されることとなり、防水性をより確実なものとすることができる。
【0022】
また、上側パッキン2は、上述のように下側パッキン5の押圧防水突起51とでフレキシブルケーブル3を押圧して挟持することにより防水性を確保する平面部分よりも装置本体部分側、すなわち上記押圧により防水される場所に、導通のための押圧導通突起21(押圧導通部分)が形成されている。
【0023】
押圧導通突起21は、先端に図2に示すような押圧用平面部が形成されている。そして、上側筐体1と筐体板金4とが上述のように閉じられる押圧力により、この先端の押圧用平面部がフレキシブルケーブル3を筐体板金4に押圧し、フレキシブルケーブル3と筐体板金4との間での電気的な導通を確保させる。このことにより、上述のようにして下側パッキン5の押圧防水突起51での押圧により防水された場所で、押圧導通突起21による押圧で確実に導通が確保され、筐体板金4がグランドとして安定的に機能できるようになっている。
【0024】
図3はA−A断面、すなわち、押圧導通突起21でフレキシブルケーブル3と筐体板金4との間を導通させる位置における横断面を示す。この図3に示すように、上側パッキン2の押圧導通突起21先端の押圧用平面部によりフレキシブルケーブル3が筐体板金4に押圧され、防水性が確保された場所での導通が確保される。
【0025】
以上のように、上述した実施形態では、携帯電話機の電子部品収納部分(装置本体部分)へのヒンジ部からの水浸入を防止するためにパッキンを設置し、そのパッキンにより、フレキシブルケーブル3と筐体板金4との導通部における接圧を確保する構造を提供する。
【0026】
すなわち、上述した実施形態における携帯電話機は、電気特性確保のため、フレキシブルケーブル3と筐体板金4での導通をとる構造となっており、その導通のための接圧が、押圧防水突起51による防水性の確保と同時に、上側パッキン2の押圧導通突起21先端の押圧用平面部により確保される構成となっている。
【0027】
このように、上述した実施形態によれば、防水構造のためのパッキンで、導通のための接圧を確保する機能も兼ね備えることができる。このため、部品点数を削減でき、生産性向上させることができる。
【0028】
さらに、押圧防水突起51により防水性が確保された場所に、フレキシブルケーブル3と筐体板金4との導通部分が配設されるため、防水性により水が浸入しないようにされた場所で電気的な導通を確保させることができ、安全性、信頼性に優れた携帯電話機を提供することができる。
【0029】
また、防水のための押圧防水突起51と、導通を確保するための押圧導通突起21とを、上述のようにそれぞれの目的に応じた異なる先端形状とすることにより、下側筐体6と筐体板金4とが一体化されたハイブリッド筐体と、上側筐体1とがネジ等で締め付けられて閉じられることによる限られた押圧力を有効に活用し、確実な防水性と、防水された場所での確実な電気的導通とを効果的に両立させることができる。
【0030】
なお、上述した各実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
【0031】
例えば、フレキシブルケーブル3と筐体板金4との導通確保のため、導電性テープを介する場合であっても、本発明は同様に適用可能である。
【0032】
また、上述した実施形態では、表示側筐体に収納される電子部品と、操作側筐体に収納される電子部品とがフレキシブルケーブル3により接続されることとして説明したが、接続のための配線はこのものに限定されず、例えば単芯のケーブルや同軸ケーブルを含む配線であっても本発明は同様に適用することができる。
【0033】
また、上述した実施形態では、下側筐体6と筐体板金4とが一体化されたハイブリッド筐体を用い、この筐体板金4とフレキシブルケーブル3との間で導通を確保する構成として説明したが、筐体の一部が導通可能な材料で構成されていればこうしたハイブリッド筐体を用いる構成に限定されず、例えば、蒸着などにより樹脂製筐体の内面に金属メッキをした構成であってもよい。また、下側筐体6と筐体板金4とが一体化されたハイブリッド筐体に替えて、筐体全体が金属製であってもよい。
【0034】
また、上述した実施形態では携帯電話機として説明したが、部品点数の削減が求められて防水性を持たせる電子装置であればこのものに限定されず、例えばPDA(Personal Digital Assistant)、ノートPC(Personal Computer)といった各種の携帯端末装置であっても、本発明は同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 上側筐体
2 上側パッキン
21 押圧導通突起
3 フレキシブルケーブル
4 筐体板金
5 下側パッキン
51 押圧防水突起
6 下側筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内側に防水部材が設けられた電子装置であって、
前記防水部材は、
防水性を確保するための防水部分と、
配線を前記筐体に当接して導通させる導通部分と、
を備え、
前記導通部分は、前記防水部分により防水された場所に配設されたことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記導通部分は、先端が平面で当接することを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記防水部分は、先端に平面部がない凸型形状に形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の電子装置。
【請求項4】
前記防水部分は、略楔形に形成されたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電子装置。
【請求項5】
前記防水部材は、
前記導通部分を備えた第1の防水部材と、
前記防水部分を備えた第2の防水部材とを備えて構成され、
前記第2の防水部材の前記防水部分と前記第1の防水部材とで前記配線を当接して挟持することで前記防水性が確保されるよう構成されたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電子装置。
【請求項6】
前記第2の防水部材は、前記第1の防水部材よりも剛性の低い材料で構成されたことを特徴とする請求項5記載の電子装置。
【請求項7】
前記筐体は、導通可能な材料が少なくとも一部を構成する別の筐体を含み、
前記防水部材は、前記筐体内に設けられた電子部品収容部分を防水するよう別の筐体の側壁近傍に設けられたことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−209975(P2012−209975A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159651(P2012−159651)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2008−190920(P2008−190920)の分割
【原出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】