説明

電子部品のパターン印刷方法および電子部品の製造方法

【課題】 塗出不良が発生しにくく、微細で薄膜のパターン形成が可能な電子部品のパターン印刷方法および電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】 少なくとも有機溶剤と分散剤とを含むペースト27を、柔軟性を有する製版30を用いて印刷する電子部品のパターン印刷方法であって、製版30は、メッシュ状に編み込んだ線材31で構成され、線材31が、芯材32を有し、芯材32の周囲には、金属および撥水性粒子の複合メッキ層34が形成され、撥水性粒子は、分散剤をはじく特性を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサなどの電子部品のパターン印刷方法および電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックコンデンサなどの電子部品を製造するために、内部電極をスクリーン印刷することが知られている。スクリーン印刷に用いられる製版としては、メッシュスクリーンシートが用いられている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、メッシュスクリーンシートを構成するステンレススチール細線の周囲にNiメッキ層を形成している。しかしながら、Niのみによるメッキでは、スキージングを重ねるごとに、Niなどの導電性粒子を含有するペーストがメッシュスクリーンシートに付着し、メッシュが目詰まりするおそれがある。また、メッシュが目詰まりするために、ペーストの塗出不良が発生するおそれがあった。
【0004】
なお、他のスクリーン印刷方法では、特許文献2のように、メタルマスク基板の表面に、撥水性の粉末を含有させたメッキ被膜を形成する技術が知られている。しかしながら、メタルマスクを用いたスクリーン印刷では、メタルマスクの厚みによりペースト厚みが決定され、ペースト厚み精度の微調整が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−131988号公報
【特許文献2】特開平5−77576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、塗出不良が発生しにくく、微細で薄膜のパターン形成が可能な電子部品のパターン印刷方法および電子部品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子部品のパターン印刷方法は、
少なくとも有機溶剤と分散剤とを含むペーストを、柔軟性を有する製版を用いて印刷する電子部品のパターン印刷方法であって、
前記製版は、メッシュ状に編み込んだ線材で構成され、前記線材が、芯材を有し、前記芯材の周囲には、金属および撥水性粒子の複合メッキ層が形成され、
前記撥水性粒子は、前記分散剤をはじく特性を有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、複合メッキ層に含まれる撥水性粒子は、ペーストに含まれる分散剤をはじく特性を有している。本発明では、金属および撥水性粒子の複合メッキ層が芯材の周囲に形成される。したがって、分散剤を含むペーストが、スキージングを重ねるごとに製版に付着して目詰まりすることなく、ペーストの抜け性を良好にすることができる。そして、製版の目詰まりが起きにくいために、ペーストの塗出不良や、製版を離した際に被印刷物からペーストが版離れを起こすのを防止することが可能であり、微細なパターンでペーストを塗布することができる。また、本発明では、複合メッキ層に金属を有しているので、ペースト膜厚の制御が容易である。
【0009】
また本発明では、製版のメッシュの開口面積によってペースト厚みを制御している。本発明では、製版のメッシュ開口面積を狭くしても、ペーストの抜け性が良好なため、被印刷物上に供給されるペーストの量をより細かく制御することが可能となる。したがって、被印刷物の更なる微細化・薄層化を実現することができる。
【0010】
好ましくは、前記金属は、Ni,Cr,Cu,Ag,Ag−Pdのうちの少なくとも1つを含む。前記ペーストは、前記複合メッキ層に含まれる金属と同じ金属を含んでも良い。
【0011】
製版の芯材の周囲に複合メッキ層が形成されているので、複合メッキ層に含まれる金属と、ペーストに含まれる金属を同じ金属で構成しても、複合メッキ層が分散剤を含むペーストをはじき、ペーストが製版に付着することがない。
【0012】
好ましくは、前記複合メッキ層における前記撥水性粒子の含有率は、10wt%より多く30wt%より少なく、さらに好ましくは、20〜25wt%である。複合メッキ層における撥水性粒子の含有率をこの範囲にすることにより、塗出不良の発生率を最小限にすることができると共に、芯材から複合めっき層が脱落することを防ぐことがきる。
【0013】
好ましくは、前記複合メッキ層の厚みは、前記芯材の外径に対して、1.0〜30%の厚みである。複合メッキ層の厚みが、芯材の外径に対して所定比率の厚みを有することにより、製版の変形が抑えられるという効果がある。
【0014】
好ましくは、前記線材同士の間には所定間隔が形成され、前記線材の外径に対する前記所定間隔の比率が1.1以下である。好ましくは、線材の外径に対する所定間隔の比率が0.8〜1.1である。
【0015】
線材の外径に対する所定間隔の比率が1.1より大きいと、ペーストの抜け性が悪化することはない。しかし、線材の外径に対する所定間隔の比率が1.1以下だと、ペーストの抜け性が悪化する傾向にある。本発明では、線材の外径に対する所定間隔の比率を上記範囲にしても、ペーストの抜け性が悪化することはない。そのため、被印刷物上に供給されるペーストの量をより細かく制御することが可能となり、被印刷物の更なる微細化・薄層化を実現することができる。
【0016】
前記ペーストの粘度をμ(Pa・s)、前記ペーストをスキージングするスキージ速度をV(mm/sec)としたときに、好ましくは、2≦μ≦20、100≦V≦1000である。
【0017】
ペーストの粘度が2Pa・s未満の場合には、製版のメッシュ上からペーストが製版の下方へと落ち易くなり、ペーストの粘度が20Pa・sより大きい場合には、ペーストを製版から被印刷物へ塗布することが困難になる傾向にある。また、スキージ速度が100mm/secより遅い場合には、被印刷物がにじんでしまう傾向にあり、スキージ速度が1000mm/secより速い場合には、ペーストをメッシュに押し込む力が弱くなり、ペーストを製版から被印刷物へ塗布することが困難になる傾向がある。
【0018】
本発明に係る電子部品の製造方法は、上記に記載の電子部品のパターン印刷方法を用いて、前記ペーストを印刷する工程を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【図2】図2(A)〜図2(C)は、本発明の一実施形態に係る電極層およびグリーンシートの形成方法を示す要部断面図である。
【図3】図3は、スクリーンメッシュの部分平面図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV断面図である。
【図5】図5は、スクリーンメッシュ30のパターン開口24aを示す平面図である。
【図6】図6は、実施例1と比較例1におけるペーストの塗出不良発生率を比較するグラフである。
【図7】図7は、比較例における電極端部の塗出不良状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
積層セラミックコンデンサ
まず、本発明に係る方法により製造される電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層してある。交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第1端部の外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第2端部の外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
【0021】
誘電体層10の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。各誘電体層10の厚みは、特に限定されないが、0.5〜5.0μmにしてある。
【0022】
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極6および8の厚みも特に限定されないが、10〜50μmである。
【0023】
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
【0024】
積層セラミックコンデンサの製造方法
まず、図2(A)に示すように、キャリアシート20上に、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは0.5〜2.5μmの厚みで、セラミックグリーンシート22を形成する。
【0025】
キャリアシート20としては、たとえばPETフィルムなどが用いられる。セラミックグリーンシート22は、キャリアシート20に形成された後に乾燥される。乾燥後のセラミックグリーンシート22の厚みは、乾燥前に比較して、5〜25%の厚みに収縮する。
【0026】
次に、図2(B)に示すように、キャリアシート20上に形成されたセラミックグリーンシート22の表面に、焼成後に図1に示す内部電極層12となる所定パターンの電極層(内部電極パターン)24を形成する。
【0027】
電極層24の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では、導電体ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
【0028】
本実施形態では、後述する印刷用のスキージ25、スクリーンメッシュ30および導電性ペースト27を用いて、スクリーン印刷を行い、所定パターンの電極層を形成する。
【0029】
具体的には、まず、図2(A)に示すセラミックグリーンシート22上に所定の印刷パターンを有するスクリーンメッシュ30をセットし、次いで、このスクリーンメッシュ30上に導電性ペースト27を載せる。そして、印刷用のスキージ25をスクリーンメッシュ30に沿って移動させることにより、スクリーンメッシュ30上に載せた導電性ペースト27を掻き取りつつ、セラミックグリーンシート22上に所定パターンの電極層24を印刷する(図2(B)に示す)。
【0030】
印刷用のスキージ25を構成する材質としては特に限定されないが、ポリウレタン、ウレタンゴム、ガラス、金属などが好ましく用いられる。
【0031】
詳細は省略するが、上記の工程以後、セラミックグリーンシート22の切断工程、積層工程等を経た後に、脱バインダ処理および焼成処理を行い、電極層24およびセラミックグリーンシート22が交互に多数積層された図1に示す積層セラミックコンデンサ2が形成される。
【0032】
また、本実施形態では、以下に述べる転写法によっても、図1に示す積層セラミックコンデンサ2が形成されても良い。
【0033】
図2(C)に示すように、第1支持シートとしてのキャリアシート20を準備し、その上に、剥離層26を形成する。次に、剥離層26の表面に、焼成後に内部電極層12を構成することになる電極層24を所定パターンで形成する。電極層24の形成手法は、上述した通りである。
【0034】
次に、上記のキャリアシート20とは別に、図2(C)に示すように、第2支持シートとしてのキャリアシート21の表面に接着層23が形成してある接着層転写用シートを準備する。
【0035】
次に、図2(C)に示すキャリアシート21の接着層23を、電極層24の表面24aに押し付け、加熱加圧して、その後キャリアシート21を剥がすことにより、接着層23を、電極層24の表面24aのみに転写する。
【0036】
詳細は省略するが、上記の工程以後、グリーンシートの形成、グリーンシートの切断工程、積層工程等を経た後に、脱バインダ処理および焼成処理を行い、電極層24およびグリーンシートが交互に多数積層された図1に示す積層セラミックコンデンサ2が形成される。
【0037】
スクリーンメッシュ30の製造方法
図3は、図2(A)に示すスクリーンメッシュ(製版)30の部分平面図、図4は図3のIV−IV断面図である。
【0038】
図3に示すように、図2(A)に示すスクリーンメッシュ30を、メッシュ状に編み込んだ線材31で構成する。図3に示すように、外径βを有する線材31同士の間には、間隔αが形成される。本実施形態では、線材31の外径βに対する間隔αの比率(α/β)は、1.1以下、特に0.8〜1.1に間隔αを狭くすることができる。
【0039】
図3に示す線材31は、図4に示す芯材32を有している。芯材32の直径δは10〜25μmであることが好ましい。芯材32の周囲には、金属および撥水性粒子を含む複合メッキ層34(図4に示す)が形成される。撥水性粒子は、後述する分散剤をはじく特性を有している。複合メッキ層34における撥水性粒子の含有率は、10wt%より多く30wt%より少ないことが好ましく、さらに好ましくは、20〜25wt%である。また、複合メッキ層34の厚みγは、芯材32の外径δに対して、1〜30%の厚みであることが好ましい。複合メッキ層34のメッキ厚みγを調整することにより、線材31の外径βをコントロールすることができる。
【0040】
芯材32の材質としては、ステンレス、ポリエステル、ポリアリレート繊維等が用いられることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0041】
撥水性粒子としては、フッ素樹脂またはフッ化グラファイト(CF)を用いることが好ましい。フッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PVF(ポリフッ化ビニル)などが好ましく用いられる。
【0042】
本実施形態において、金属とは、金属または合金を意味し、複合メッキ層34に含有される金属としては、Ni,Cr,Cu,Ag,Ag−Pdなどが好ましく用いられる。
【0043】
複合メッキ層34の製造方法
まず、図5に示すスクリーンメッシュ30の芯材32の周囲に複合メッキ層34を形成する。メッキ法は特に限定されないが、たとえば無電解メッキ法、あるいは電解メッキ法等を用いることができる。
【0044】
図5に示すように、複合メッキ層形成後のスクリーンメッシュ30において、たとえば乳剤35を全面に塗布し、固化させた後、所定形状にパターニングし、パターン開口24aを形成する。パターニング方法としては、フォトリソグラフィ法等の方法が用いられる。乳剤35としては特に限定されないが、ジアゾ系、SBQ(スチルバゾリウム)系等を用いることが好ましい。
【0045】
なお、芯材32に対して複合メッキを形成する前に、芯材32で構成されたスクリーンメッシュ30において、乳剤35を全面に塗布し、固化させた後、所定形状にパターニングし、パターン開口24aを形成しても良い。パターン開口24aを形成した後に、スクリーンメッシュ30のパターン開口24aの領域のみをメッキ処理して複合メッキ層34を形成しても良い。
【0046】
このようにして形成されるパターン開口24aを有するスクリーンメッシュ30を用いて、図2(B)に示す電極層24が形成される。スクリーンメッシュ30のパターン開口24aが、図2(B)に示す電極層24のパターンに対応する。
【0047】
導電性ペースト27の製造方法
図2(A)に示す導電性ペースト27は、各種導電性金属や合金からなる導電体材料、あるいは焼成後に上記した導電体材料となる各種酸化物、有機溶剤、分散剤等を混練して調製する。
【0048】
導電性ペースト27を製造する際に用いる導体材料としては、特に限定されないが、たとえばNi,Cr,Cu,Ag,Ag−Pd、Ni合金などが用いられる。このような導体材料は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものを混合したものであってもよい。導体材料の平均粒子径は、通常、0.05〜0.6μm、好ましくは0.05〜0.2μm程度のものを用いればよい。
【0049】
有機溶剤としては、好ましくは、ターピネオール、ターピニルアセテート、イソボニルアセテートなどが用いられる。また、分散剤としては、導体材料に優先的に他のある分散剤を含んでいることが好ましく、ベンゾトリアゾール、脂肪族アミン及びその塩基、4級アンモニウム塩などが好ましく用いられる。
【0050】
導電性ペースト27の粘度をμ(Pa・s)としたときに、2≦μ≦20の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、導電性ペースト27の粘度は、3.0≦μ≦10の範囲である。
【0051】
図2(A)に示す導電性ペースト27は、上述したように、スクリーンメッシュ30上に載せられ、印刷用のスキージ25をスクリーンメッシュ30に沿って移動させることにより、セラミックグリーンシート22上に所定パターンの電極層24(図2(B)に示す)を印刷する。なお、導電性ペースト27をスキージングするスキージ速度をV(mm/sec)としたときに、100≦V≦1000であることが好ましい。さらに好ましくは、導電性ペースト27をスキージングするスキージ速度Vは、200≦V≦600の範囲である。
【0052】
本実施形態では、複合メッキ層34に含まれる撥水性粒子は、導電性ペースト27に含まれる分散剤をはじく特性を有している。本実施形態では、金属および撥水性粒子の複合メッキ層34が芯材32の周囲に形成される。したがって、分散剤を含む導電性ペースト27が、スキージングを重ねるごとにスクリーンメッシュ30に付着して目詰まりすることなく、導電性ペースト27の抜け性を良好にすることができる。そして、スクリーンメッシュ30の目詰まりが起きにくいために、導電性ペースト27の塗出不良を防止することが可能である。
【0053】
また、スクリーンメッシュ30をセラミックグリーンシート22から離した際にセラミックグリーンシート22から電極層24が版離れ不良を起こすのを防止することが可能であり、微細なパターンで導電性ペースト27を塗布することができる。また、本実施形態では、複合メッキ層34の厚みを制御することで、線材31の外径βが変化し、線材31の外径βに対する間隔αの比率(α/β)が変化する。したがって、電極層24の膜厚制御が容易である。
【0054】
また本実施形態では、スクリーンメッシュ30の開口面積によって電極層24の膜厚を制御している。本実施形態では、スクリーンメッシュ30のメッシュ開口面積を狭くしても、導電性ペースト27の抜け性が良好なため、被印刷物上に供給される導電性ペースト27の量をより細かく制御することが可能となる。したがって、被印刷物の更なる微細化・薄層化を実現することができる。
【0055】
また、スクリーンメッシュ30の芯材32の周囲に複合メッキ層34が形成されているので、複合メッキ層34に含まれる金属と、導電性ペースト27に含まれる金属を同じ金属で構成しても、スクリーンメッシュ30が分散剤を含む導電性ペースト27をはじき、導電性ペースト27がスクリーンメッシュ30に付着することがない。
【0056】
さらに、複合メッキ層34における撥水性粒子の含有率を10wt%より多く30wt%より少ない範囲にすることにより、塗出不良の発生率を最小限にすることができると共に、芯材32から複合メッキ層34が脱落することを防ぐという効果がある。
【0057】
また、複合メッキ層34の厚みが、芯材32の外径に対して所定比率の厚みを有することにより、製版30の変形が抑えられるという効果がある。
【0058】
また、本実施形態では、線材31の外径βに対する所定間隔αの比率(α/β)を1.1以下にしても、導電性ペースト27の抜け性が悪化することはない。そのため、被印刷物上に供給される導電性ペースト27の量をより細かく制御することが可能となり、被印刷物の更なる微細化・薄層化を実現することができる。
【0059】
また、導電性ペースト27の粘度μ(Pa・s)を2≦μ≦20の範囲内にし、導電性ペースト27をスキージングするスキージ速度V(mm/sec)を100≦V≦1000の範囲内にすることで、被印刷物上に供給される導電性ペースト27の量を細かく制御することができる。したがって、電極層24の膜厚を微調節したり、印刷パターンの細密化を達成することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
【0061】
実施例1では、図3に示すスクリーンメッシュ30の芯材32(図4に示す)の材質としてステンレスを用いた。複合メッキ層34における撥水性粒子をフッ素樹脂のPTFEとし、複合メッキ層34におけるPTFEの含有率を25wt%とした。また、複合メッキ層34に含有される金属としてNiを用いて、芯材32の直径δを15μmとした。そして、複合メッキ層34を形成するためのメッキ時間を変化させて、芯材32の外径δに対して複合メッキ層34のメッキ厚みγが異なるように(図3に示すα/βの値が異なるように)試料1〜5を製造した。
【0062】
また、図2(A)に示す導電性ペースト27に含有される金属としてNiを用い、有機溶剤としてイソボニルアセテートを用い、分散剤としてベンゾトリアゾールを用いて導電性ペースト27を製造した。導電性ペースト27の粘度μは同心円筒回転型粘度計による測定を行い、100rpmの回転数で撹拌させながら測定し、導電性ペースト27の粘度μは5.5Pa・sであった。
【0063】
印刷用のスキージ25はウレタンゴム製のものを用い、サイズは厚さ9mm、幅40mm、長さ200mmであった。
【0064】
次に、試料1〜5について、図2(A)に示すスクリーンメッシュ30上に上記の導電性ペースト27を載せ、印刷用のスキージ25をスクリーンメッシュ30に沿ってスキージ速度V=400mm/secの速度で移動させて、電極層24を形成した。そして、導電性ペースト27の塗出不良率の測定を行った。導電性ペースト27の塗出不良の検出方法は、透過型電子顕微鏡写真を用いて、図7に示すように電極層24の端部が型崩れしているか否かを判定し、電極層24の端部が型崩れしている場合には塗出不良と判定し、塗出不良発生率を求めた。塗出不良発生率は、各試料それぞれについて1000個の電極層を製造し、製造した1000個の電極層に含まれる塗出不良電極層の比率から求めた。その結果を図6および表1に示す。また、試料1〜5について、導電性ペースト27のスクリーンメッシュ30の透過体積も測定した。なお、透過体積は、スクリーンメッシュ30の紗厚、スクリーンメッシュ30のメッキされた線材31の線径(メッキ後)、および乳剤35の厚みなどにより算出した。透過体積は、試料1の透過体積を100%とした場合における、各試料の透過体積の比率で示してある。その結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
比較例1
比較例1では、複合メッキ層34において、撥水性粒子であるPTFEを含有しない以外は実施例1と同様にして、Niのみのメッキ層で構成されるスクリーンメッシュ30を製造し、同様のスキージ条件で測定を行った。
【0067】
評価1
表1および図6に示す実験データから、比較例1に比べ、実施例1において、塗出不良発生率を低減させることができた。また、線材31の外径βに対する所定間隔αの比率(α/β)を小さくするにしたがい、比較例1では、導電性ペースト27の塗出不良発生率が顕著に増大する傾向にある。これに対し、実施例1では、線材31の外径βに対する所定間隔αの比率(α/β)を小さくしても、導電性ペースト27の塗出不良発生率が低いことが確認された。
【0068】
実施例2
複合メッキ層34のPTFE含有率が5wt%であること以外は、実施例1における試料4と同様にして、スクリーンメッシュ30を製造し、実施例1と同様の方法で塗出不良発生率の測定および電極膜の不具合の発生の検証を行った。その結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
実施例3
複合メッキ層34のPTFE含有率が10wt%であること以外は実施例2と同様にして、スクリーンメッシュ30を製造し、上述した方法で塗出不良発生率の測定および電極膜の不具合の発生の検証を行った。
【0071】
実施例4
複合メッキ層34のPTFE含有率が20wt%であること以外は実施例2と同様にして、スクリーンメッシュ30を製造し、上述した方法で塗出不良発生率の測定および電極膜の不具合の発生の検証を行った。
【0072】
実施例5
複合メッキ層34のPTFE含有率が30wt%であること以外は実施例2と同様にして、スクリーンメッシュ30を製造し、上述した方法で塗出不良発生率の測定および電極膜の不具合の発生の検証を行った。
【0073】
評価2
表2に示す実験データから、複合メッキ層34におけるPTFEの含有率は、10wt%より多く30wt%より少ない範囲、特に20〜25wt%において、塗出不良を良好に抑えることが確認された。
【符号の説明】
【0074】
2…積層セラミックコンデンサ
24…電極層
27…導電性ペースト
30…スクリーンメッシュ
31…線材
32…芯材
34…複合メッキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機溶剤と分散剤とを含むペーストを、柔軟性を有する製版を用いて印刷する電子部品のパターン印刷方法であって、
前記製版は、メッシュ状に編み込んだ線材で構成され、前記線材が、芯材を有し、前記芯材の周囲には、金属および撥水性粒子の複合メッキ層が形成され、
前記撥水性粒子は、前記分散剤をはじく特性を有することを特徴とする電子部品のパターン印刷方法。
【請求項2】
前記金属は、Ni,Cr,Cu,Ag,Ag−Pdのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の電子部品のパターン印刷方法。
【請求項3】
前記ペーストは、前記複合メッキ層に含まれる金属と同じ金属を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品のパターン印刷方法。
【請求項4】
前記複合メッキ層における前記撥水性粒子の含有率は、10wt%より多く30wt%より少ないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子部品のパターン印刷方法。
【請求項5】
前記複合メッキ層の厚みは、前記芯材の外径に対して、1.0〜30%の厚みであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子部品のパターン印刷方法。
【請求項6】
前記線材同士の間には所定間隔(α)が形成され、
前記線材の外径(β)に対する前記所定間隔(α)の比率(α/β)が1.1以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子部品のパターン印刷方法。
【請求項7】
前記ペーストの粘度をμ(Pa・s)、前記ペーストをスキージングするスキージ速度をV(mm/sec)としたときに、2≦μ≦20,100≦V≦1000であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子部品のパターン印刷方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の電子部品のパターン印刷方法を用いて、前記ペーストを印刷する工程を有することを特徴とする電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−206983(P2011−206983A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75627(P2010−75627)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】