説明

電子部品の放熱構造

【課題】外気中の粉塵や水蒸気が電子部品へ付着するのを防止すると同時に電子部品の高さ寸法の変動に対して容易に対応できる放熱構造。
【解決手段】基板4に搭載された電子部品2の周りに半田付用座3を形成し、略升状にしてその底面を電子部品2の表面に接触しその外縁部12を半田付用座3に半田付けして電子部品2を密封するようにおおう放熱部材1を用いている。電子部品の高さが高い場合は、放熱部材1と基板4との半田付部に放熱部材1の高さ寸法を調整するために所定の高さ寸法のロの字型の延長枠を挟み込んでも良い。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気部品の放熱構造に関し、特に基板に搭載された半導体集積回路などの発熱電気部品を冷却するための放熱構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の放熱構造は、例えば図4に示すような構造である。図4は特開平8−64732号公報に記載された従来例の(a)斜視図,(b)断面図である。
【0003】これらの図において、41はIC、LSIなどの電子部品、42は電子部品41を搭載する基板、43は電子部品41に取り付けられた放熱フィン、44は電子部品41と放熱フィン43との間に介在され、両者間の熱伝導を確保する熱伝導性樹脂もしくは熱伝導性油脂、45aは放熱フィン43の4つの端部のうちの一方の側の2つの端部を下方に押え支持する熱伝導体、45bは放熱フィン43の4つの端部のうちの前記一方の側に対向する他方の側の2つの端部を下方に押え支持する熱伝導体、46はこれらの熱伝導体45a,45bを基板42に接合するはんだである。
【0004】熱伝導第45a,45bが放熱フィン43を押える機構について説明する。今、電子部品41に対してその上面に熱伝導性樹脂もしくは熱伝導性油脂44を塗布し、さらにその上面に放熱フィン43を取り付ける。そしてその放熱フィン43の両側方から熱伝導体45a及び45bを、放熱フィン43の4つの端部すべてを押さえられるように設置する。そして、熱伝導体45a,45bの脚部すなわち基板42と接する部分を基板42にはんだ46で接合する。
【0005】放熱フィン43と熱伝導体45a及び45bとで放熱部材を構成し、電子部品42で発生した熱は熱伝導性樹脂44を介し放熱フィン41へ伝導され放熱されると同時に熱伝導体45a及び45bを伝導し基板42に設けられたサーマルピアからも放熱する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように従来例においては、放熱部材を放熱フィン43と熱伝導体45a及び45bとで構成している。放熱フィン43を熱伝導体45a及び45bの4本の柱で支える構造であるので、柱間の開口部が広くここから外気に含まれる粉塵や水蒸気が電子部品へ付着し易いという問題がある。特に小型化された携帯電話基地局用装置などに使用される場合、これら装置は放熱効率を上げるために積極的に外気を装置内に導入する構造となっており、発熱する電子部品には粉塵や水蒸気が付着し易いという事情がある。そしてこれら粉塵や水蒸気が長期間積み重なり付着すると電子部品の端子部などが腐食するようになる。
【0007】また、放熱部材は放熱フィンと2つの熱伝導体との3つの部材で構成されているので、部材点数が多く製造、組立に手間がかかりコスト的に不利となる問題がある。
【0008】更に、電子部品はその寸法が様々であり、特に高さ方向が高くなる場合は、熱伝導体の柱長を長くする必要があり、部品種類数が増加するという問題がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の電子部品の放熱構造は基板に搭載された電子部品の周りに半田付用の座を形成し、略升状にしてその底面を前記電子部品の表面に接触しその外縁部を前記半田付用の座に半田付けして、前記電子部品を密封するようにおおう放熱部材を用いている。
【0010】前記放熱部材は、材料にアルミ含侵カーボンを用い、前記半田付用の座に半田付けされる外縁部はニッケルメッキを施すようにしても良い。
【0011】また、前記電子部品の表面と前記放熱部材の底面との接触部に伝熱性のシリコンを塗布するようにしても良い。
【0012】また、前記電子部品の表面と前記放熱部材の底面との接触部に前記電子部品の高さ寸法を調整するために材料にアルミ含侵カーボンを用いて作られ所定の厚みを有する平板を挟みかつこの平板の両面に伝熱性シリコンを塗布するようにしても良い。
【0013】また、前記放熱部材と前記基板との半田付部に前記放熱部材の高さ寸法を調整するために所定の高さ寸法のロの字型の延長枠を挟み込み接続部をそれぞれ半田付するようにしても良い。
【0014】更に、前記延長枠は材料にアルミ含侵カーボンを用いかつ前記放熱部材側および前記基板側との接続部に対しニッケルメッキを施し、それぞれ半田付けするようにしても良い。
【0015】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態側を示す(a)分解斜視図(b)断面図である。
【0016】図1において、本放熱構造は、基板4に搭載された電子部品2の周りに半田付用座3を形成し、略升状にしてその底面内側を電子部品2の表面に接触しその外縁部12を半田付用座3に半田付けして電子部品2を密封するようにおおう放熱部材1を用いている。
【0017】そして、電子部品2の表面と放熱部材1の底面内側との接触部に伝熱性のシリコン5が塗布されている。 また、放熱部材1は、材料に熱伝導の良好な含侵カーボンを用いて作られ、半田付用座3に半田付けされる外縁部12は半田接着性の良いニッケルメッキが施されている。
【0018】放熱部材1は升状の底面表側に放熱フィン11が設けられており、図1(a)に示すように基板4に搭載された電子部品2をおおうように取付けられる。そして基板4側の半田付用座3とその外縁部12とが半田付けされて固定される。この組立てに先立って、あらかじめ電子部品2の表面あるいは放熱部材1の底面内側に伝熱性のシリコーン5が塗布されるので、接触面の伝熱性が確保される。
【0019】電子部品2から発生する熱は放熱部材1へ伝導して放熱フィン11から大部分放熱されるが、一部は外縁部12から基板4へ伝導して基板側からも放熱される。特に本放熱部材1は基板側との接触面積が広いので、基板側がサーマルピアなど放熱対策が施されたものであれば効果的な放熱が可能である。
【0020】図2は本発明の第2の実施の形態例を示す断面図である。本例は2つの電子部品6を1つの放熱部材1で放熱する場合で、特に高さの異なる電子部品6a,6bの場合に示すものである。高さの低い電子部品6bに対して電子部品6bの表面と放熱部材1との接触部に電子部品の高さ寸法を調整するために、材料にアルミ含侵カーボン用いて所定の厚みを有するスペーサ7を挟み、かつこのスペーサ7の両面に伝熱性のシリコン5が塗布されている。このようにして電子部品6a,6bの高さを揃えて、共通の放熱部材1への熱伝導を確保している。
【0021】図3は本発明の第3の実施の形態例を示す断面図である。本例は電子部品8の高さが高く標準の放熱部材では対応できない場合に適用するものである。即ち、放熱部材1と基板4との半田付部に放熱部材1の高さ寸法を調整するために所定の高さ寸法のロの字型の延長枠9を挟み込みそれぞれ接続部を半田付している。
【0022】そして延長枠9は材料に放熱部材1と同じ熱伝導の良好なアルミ含侵カーボンを用い、かつ放熱部材側および基板側との接続部に対し半田接着性の良いニッケルメッキを施し、それぞれ半田付けして固定している。本例は標準の高さの放熱部材に対し、延長枠9を付加することにより高さ方向を延長するためのもので、あらかじめ高さ寸法の異なる延長枠を必要種類用意しておくことにより、電子部品2の高さの変化に対して容易に対応することができる。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように本発明の電子部品の放熱構造は、電子部品を密封するようにおおう放熱部材を用いているので、外部からの粉塵や水蒸気が電子部品に付着することがなく、従って電子部品が腐食することがないという効果がある。また、放熱部材は一体構造であり、製造組立が容易であり低コストにできるという効果がある。更に電子部品の高さは寸法の変化に対してもスペーサあるいは延長枠を用いて容易に対応することができ、放熱部材が標準化できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す(a)分解斜視図、(b)断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の第3の実施例を示す断面図である。
【図4】従来例を示す(a)斜視図,(b)断面図である。
【符号の説明】
1 放熱部材
2、6、8 電子部品
3 半田付用座
4 基板
5 シリコン
7 スペーサ
9 延長枠
11 放熱フィン
12 外縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板に搭載された電子部品の周りに半田付用の座を形成し、略升状にしてその底面内側を前記電子部品の表面に接触しその外縁部を前記半田付用の座に半田付けして前記電子部品を密封するようにおおう放熱部材を用いることを特徴とする電子部品の放熱構造。
【請求項2】 前記放熱部材は、材料にアルミ含侵カーボンを用い、前記半田付用の座に半田付される外縁部はニッケルメッキを施すことを特徴とする請求項1記載の電子部品の放熱構造。
【請求項3】 前記電子部品の表面と前記放熱部材の底面との接触部に伝熱性のシリコンを塗布することを特徴とする請求項1あるいは2記載の電子部品放熱構造。
【請求項4】 前記電子部品の表面と前記放熱部材の底面との接触部に前記電子部品の高さ寸法を調整するために材料にアルミ含侵カーボン用いて作られ所定の厚みを有する平板を挟みかつこの平板の両面に電熱性シリコンを塗布することを特徴とする請求項1記載の電子部品の放熱構造。
【請求項5】 前記放熱部材と前記基板との半田付部に前記放熱部材の高さ寸法を調整するために所定の高さ寸法のロの字型の延長枠を挟み込み接続部をそれぞれ半田付することを特徴とする請求項1記載の電子部品の放熱構造。
【請求項6】 前記延長枠は材料にアルミ含侵カーボンを用い、かつ前記放熱部材側および前記基板側との接続部に対しニッケルメッキを施し、それぞれ半田付けすることを特徴とする請求項5記載の電子部品の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−76220(P2002−76220A)
【公開日】平成14年3月15日(2002.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−256215(P2000−256215)
【出願日】平成12年8月25日(2000.8.25)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】