説明

電子部品供給装置及び電子部品の供給方法

【課題】処理部における処理能力に対応した電子部品の供給能力を常に維持できる電子部品供給装置及び電子部品の供給方法を提供する。
【解決手段】仕切り部28の仕切りを解除してから電子部品Eが検知部32を遮るまでの通過時間の基準幅を記憶する記憶部46と、仕切り部28の仕切りを解除してから電子部品Eが検知部32を遮るまでの通過時間を測定する時間測定部24Aと、時間測定部24Aの複数回の測定結果に基づいて通過時間ばらつきを算出するばらつき算出部24Bと、ばらつき算出部24Bで算出された通過時間ばらつきと記憶部46に記憶されている通過時間の基準幅との差分を算出する差分算出部24Cと、差分算出部24Cで算出された差分に基づいて搬送部14、18の振幅量を補正する振幅補正部24Dと、振幅補正部24Dで補正された搬送部14、18の振幅量に基づいて搬送部14、18の振動を制御する振動制御部22と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を処理部に供給する電子部品供給装置及び電子部品の供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品を整列供給する整列フィーダと、整列フィーダからの供給速度より速い平均速度で部品を処理部(ターンテーブルなど)に搬送する搬送フィーダと、搬送フィーダから搬送された部品の送りを止めるストッパと、処理部に部品が搬送されたことを検知するセンサと、処理部に搬送される部品(1番目の部品)をセンサで検知し次の部品(2番目の部品)が供給される前に次の部品(2番目の部品)をストッパで止めることにより、部品を1個ずつ分離して処理部に供給する部品供給装置が記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−7136号公報
【特許文献2】特開2004−352395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、パーツフィーダ(整列フィーダと搬送フィーダとを含む概念と定義する)の制御方法として、パーツフィーダの振動条件(振幅、周波数、楕円軌跡)を目標条件に自動制御する方法が考えられてきた。しかし、部品の重量、表面形状、搬送面の汚れ、部品の形状といった、パーツフィーダの振動条件以外の要因でも供給能力が変動するため、従来では部品の供給能力の低下を見越し、最適な供給能力よりも過剰供給になるようにパーツフィーダの振動条件を調整してきた。処理部に対して部品が過剰供給となるようにパーツフィーダの振動条件を調整すると、部品の供給能力が低下することは防止できるものの、部品の供給速度が速くなり過ぎるため、ストッパを作動させる前に、部品が処理部に2個進入するという問題が発生していた。さらに、ストッパによって部品の供給が停止させられる時間が長くなると、パーツフィーダ内において部品が円滑に搬送されなくなるため、パーツフィーダ内において部品が詰まるなどの問題が生じていた。
【0005】
その一方で、ストッパが設けられていない部品供給装置もある(特許文献2参照)。この部品供給装置は、所定時間内の部品の通過数または部品がセンサを通過する平均時間から部品の供給能力を算出して、パーツフィーダの振幅を制御する。
【0006】
ここで、特許文献1の部品供給装置と特許文献2の部品供給装置とを組み合わせると、特許文献1の部品供給装置においてストッパを解除してから部品がセンサを通過するまでの平均時間によって部品の供給能力を算出し、平均時間と目標時間との差分に基づき、パートフィーダの振幅を制御する方法も考えられる。
【0007】
しかしながら、上記平均時間は、パーツフィーダの供給能力だけでなく、ストッパの動作時間や搬送機構の搬送速度の変動、センサの光量、センサの閾値などによっても変動するため、上記した平均時間によって部品の供給能力を正確に制御することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、処理部における処理能力に対応した電子部品の供給能力を常に維持することができる電子部品供給装置及び電子部品の供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電子部品に所定の処理を行う処理部と、振動により前記処理部に電子部品を搬送する搬送部と、搬送される電子部品のうち、先頭の電子部品を前記処理部側から吸引して移送する吸引部と、先頭から2番目の電子部品が先頭の電子部品に連なって移送されることを防止する仕切り部と、吸引により移送している途中の電子部品を検知する検知部と、を有し、前記搬送部の電子部品を1個ずつ分離して前記処理部に供給する電子部品供給装置であって、前記仕切り部の仕切りを解除してから電子部品が前記検知部を遮るまでの通過時間の基準幅を記憶する記憶部と、前記仕切り部の仕切りを解除してから電子部品が前記検知部を遮るまでの通過時間を測定する時間測定部と、前記時間測定部の複数回の測定結果に基づいて通過時間ばらつきを算出するばらつき算出部と、前記ばらつき算出部で算出された前記通過時間ばらつきと前記記憶部に記憶されている前記通過時間の基準幅との差分を算出する差分算出部と、前記差分算出部で算出された前記差分に基づいて前記搬送部の振幅量を補正する振幅補正部と、前記振幅補正部で補正された前記搬送部の振幅量に基づいて前記搬送部の振動を制御する振動制御部と、を有することを特徴とする。
【0010】
前記ばらつき算出部は、前記時間測定部の複数回の測定結果から最大通過時間と最小通過時間との差を算出し、当該最大通過時間と最小通過時間との差を前記通過時間ばらつきとすることが好ましい。
【0011】
前記記憶部は、前記通過時間ばらつきに対する許容範囲となる最大幅と最小幅を記憶し、前記振幅補正部は、前記通過時間ばらつきが、前記最大幅より大きくなったとき、または前記最小幅より小さくなったときに前記搬送部の振幅量を補正することが好ましい。
【0012】
前記ばらつき算出部は、前記時間測定部の複数回の測定結果から分散値を算出し、当該分散値を定数倍したものを前記通過時間ばらつきとすることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、電子部品に所定の処理を行う処理部と、振動により前記処理部に電子部品を搬送する搬送部と、搬送される電子部品のうち、先頭の電子部品を前記処理部側から吸引して移送する吸引部と、先頭から2番目の電子部品が先頭の電子部品に連なって移送されることを防止する仕切り部と、吸引により移送している途中の電子部品を検知する検知部と、を有する電子部品供給装置を用い、前記搬送部の電子部品を1個ずつ分離して前記処理部に供給する電子部品の供給方法であって、前記仕切り部の仕切りを解除してから電子部品が前記検知部を遮るまでの通過時間の基準幅を記憶部に記憶する記憶する第1工程と、前記仕切り部の仕切りを解除してから電子部品が前記検知部を遮るまでの通過時間を時間測定部によって測定する第2工程と、前記時間測定部の複数回の測定結果に基づいて通過時間ばらつきをばらつき算出部によって算出する第3工程と、前記ばらつき算出部で算出された前記通過時間ばらつきと前記記憶部に記憶されている前記通過時間の基準幅との差分を差分算出部によって算出する第4工程と、前記差分算出部で算出された前記差分に基づいて前記搬送部の振幅量を振幅補正部によって補正する第5工程と、前記振幅補正部で補正された前記搬送部の振幅量に基づいて前記搬送部の振動を振幅制御部によって制御する第6工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
前記第3工程では、前記ばらつき算出部が前記時間測定部の複数回の測定結果から最大通過時間と最小通過時間との差を算出し、当該最大通過時間と最小通過時間との差を前記通過時間ばらつきとすることが好ましい。
【0015】
前記第1工程では、前記記憶部が前記通過時間ばらつきに対する許容範囲となる最大幅と最小幅を記憶し、前記第5工程では、前記振幅補正部は、前記通過時間ばらつきが、前記最大幅より大きくなったとき、または前記最小幅より小さくなったときに前記搬送部の振幅量を補正することが好ましい。
【0016】
前記第3工程では、前記ばらつき算出部が前記時間測定部の複数回の測定結果から分散値を算出し、当該分散値を定数倍したものを前記通過時間ばらつきとすることが好ましい。
【0017】
以上のように、処理部における電子部品の処理時間や処理部への電子部品の平均供給時間の経年変化に対応して、常に、処理部における電子部品の処理能力に適応した電子部品の供給能力が維持されるように、搬送部の振幅が制御される。これにより、以下の効果を得ることができる。
(1)電子部品の重量及び表面形状、搬送部の搬送面の汚れといった要因下においても、電子部品の供給能力が低下しない。
(2)電子部品の供給能力が過剰にならず、処理部に電子部品が2個進入することを防止できる。
(3)電子部品の供給能力が過剰にならず、電子部品が停止部によって停止させられることが最小限に抑制できるため、電子部品が搬送部上を円滑に搬送することができる。この結果、電子部品が搬送部で詰まり難い。
(4)停止部の動作時間、搬送部における搬送速度、検知部の光量及び閾値を調整しなくても、電子部品供給装置の最適な電子部品の供給能力を維持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、処理部における処理能力に対応した電子部品の供給能力を常に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子部品供給装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電子部品供給装置の主制御部の構成を示した説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る電子部品の供給方法を示したフローチャートである。
【図4】整列フィーダ及び搬送フィーダの供給能力が最適であるときの電子部品の搬送状態(最適供給)を時系列的に示した図である。
【図5】整列フィーダ及び搬送フィーダの供給能力が過剰であるときの電子部品の搬送状態(供給過剰)を時系列的に示した図である。
【図6】整列フィーダ及び搬送フィーダの供給能力が不足しているときの電子部品の搬送状態(供給不足)を時系列的に示した図である。
【図7】最適供給の搬送状態のときの電子部品の通過時間分布を示す図である。
【図8】供給過剰の搬送状態のときの電子部品の通過時間分布を示す図である。
【図9】供給不足の搬送状態のときの電子部品の通過時間分布を示す図である。
【図10】最適供給の搬送状態であり、かつ無駄時間が小さいときの電子部品の通過時間分布を示す図である。
【図11】最適供給の搬送状態であり、かつ無駄時間が大きいときの電子部品の通過時間分布を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る電子部品の供給方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1実施形態の電子部品供給装置及び電子部品の供給方法について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1に示すように、電子部品供給装置10は、電子部品Eを1個ずつ分離して処理部12に供給する装置である。電子部品供給装置10は、整列フィーダ14を備えている。整列フィーダ14には、振動発生部である圧電アクチュエータ16が取り付けられている。圧電アクチュエータ16から所定の振幅及び周波数の振動が整列フィーダ14に付与され、整列フィーダ14が振動することにより振動により電子部品Eが後述の搬送フィーダ18に供給される。
【0022】
電子部品供給装置10は、搬送フィーダ18を備えている。搬送フィーダ18には、振動発生部である圧電アクチュエータ20が取り付けられている。圧電アクチュエータ20から所定の振幅及び周波数の振動が搬送フィーダ18に付与され、搬送フィーダ18の振動により電子部品Eが搬送フィーダ18上を搬送してさらに無振動部29を経由して処理部12側に向って搬送する。
【0023】
なお、本実施形態では、本発明の「搬送部」は、整列フィーダ14と搬送フィーダ18、無振動部29を含む概念である。
【0024】
2つの圧電アクチュエータ16、20の駆動は、振動制御部22により制御される。すなわち、振動制御部22は、所定の周波数及び振幅の振動が整列フィーダ14及び搬送フィーダ18に付与されるように、2つの圧電アクチュエータ16、20の出力を制御する。なお、振動制御部22は、例えば、CPUで構成されている。振動制御部22は、主制御部(例えば、CPU)24からの制御信号に基づいて2つの圧電アクチュエータ16、20の駆動を制御する。
【0025】
電子部品供給装置10は、搬送中の電子部品Eを1個ずつ分離して処理部12に供給するためのストッパ28を備えている。ストッパ28は、搬送フィーダ18の下流側に配置された無振動部29に設けられている。ストッパ28は、電子部品Eを搬送する無振動部29の溝に出没するものであり、無振動部29の溝に突出することにより無振動部29上の電子部品Eが連なって処理部12へ供給されるのを防止する。また、ストッパ28が無振動部29上から退避することにより、先頭の電子部品Eのみが搬送され処理部12に供給される。ストッパ28の動作は、ストッパ駆動部30からの制御信号に基づいて制御される。また、ストッパ駆動部30は、主制御部24からの制御信号に基づいてストッパ28の動作を制御する。
【0026】
ストッパ28の電子部品搬送方向の下流側には、電子部品Eの通過を検知するための通過確認センサ32が配置されている。通過確認センサ32は、例えば、光センサで構成されており、発光部と受光部とからなる。発光部32Aと受光部32Bとの間を電子部品が通過すると、発光部32Aの光が電子部品Eで遮断されて受光部32Bで受光されないため、受光部32Bから主制御部24に出力される検知信号が停止する。主制御部24に内蔵するタイマ24Fが検知信号の受信停止回数をカウントする。主制御部24の演算部24Eは、タイマ24Fからのカウント値に基づいて通過した電子部品Eの個数を算出する。
【0027】
通過確認センサ32は、例えば、CCDカメラのようなものを使用してもよい。CCDカメラから得た映像を演算部24Eにおいて所定の解析プログラムに基づいて解析することにより、通過する電子部品Eを確認することもできる。
【0028】
電子部品供給装置10は、電子部品Eに所定の処理を施すための処理部12を備えている。処理部12は、無振動部29の電子部品搬送方向の下流側に配置されている。処理部12は、例えば、搬送フィーダ18から搬送されてきた電子部品Eを電子部品収納テープ(図示省略)に収納するためのターンテーブルが該当する。処理部12は、ステッピングモータ34により回転駆動される。ステッピングモータ34は、処理部駆動部36により駆動制御される。また、処理部駆動部36は、主制御部24からの制御信号に基づいて処理部12の回転駆動を制御する。なお、処理部駆動部36は、例えば、CPUで構成されている。
【0029】
処理部12の外周部には、等間隔で凹部38が形成されている。凹部38は、処理部12の径方向外側に開口するように形成されている。各凹部には、搬送フィーダ18で搬送されてきた電子部品Eが1個ずつ進入する。
【0030】
凹部38には、空気吸引孔40が形成されている。処理部12の空気吸引孔40の入口には、吸引バルブ42が設けられており、吸引バルブ42の開閉操作により凹部38の内部に空気を吸引することが可能になる。これにより、搬送フィーダ18で搬送されてきた電子部品Eは、空気吸引力を受けて凹部38に進入することができる。
【0031】
吸引バルブ42の開閉操作は、吸引バルブ駆動部44によって実行される。また、吸引バルブ駆動部44は、主制御部24からの制御信号に基づいて吸引バルブ42の開閉操作を制御する。
【0032】
なお、電子部品供給装置10の駆動中は、常時、吸引バルブ42が開いて吸引動作が継続している。
【0033】
図2に示すように、主制御部24は、ストッパ28が無振動部29上から退避して電子部品Eの仕切りを解除してから電子部品Eが通過確認センサ32を遮るまでの通過時間を測定する時間測定部24Aと、時間測定部24Aの複数回の測定結果に基づいて通過時間ばらつきを算出するばらつき算出部24Bと、ばらつき算出部24Bで算出された前記通過時間ばらつきと後述の記憶部46に記憶されている通過時間ばらつきの基準幅との差分を算出する差分算出部24Cと、差分算出部24Cで算出された差分に基づいて整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅量を補正する振幅補正部24Dと、を備えている。
【0034】
特に、ばらつき算出部24Bは、時間測定部24Aの複数回の測定結果から最大通過時間と最小通過時間との差を算出し、当該最大通過時間と最小通過時間との差を通過時間ばらつきと決定する。
【0035】
なお、上記した振動制御部22は、主制御部24からの制御信号を受けて、振幅補正部24Dで補正された整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅量に基づき、2つの圧電アクチュエータ16、20の出力を制御する。
【0036】
主制御部24は、記憶部46に電気的に接続されている。なお、主制御部24が記憶部46を内蔵している構成でもよい。記憶部46は、例えば、ROMで構成されており、各部の駆動プログラム、主制御部24の各部の演算プログラムなどを記憶している。特に、記憶部46には、ストッパ28が電子部品Eの仕切りを解除してから当該電子部品Eが通過確認センサ32を遮るまでの通過時間ばらつきの基準となる通過時間の基準幅を記憶する。
【0037】
本発明の第1実施形態の電子部品供給装置及び電子部品の供給方法について、図面を参照して説明する。
【0038】
図1、図2、図3に示すように、制御周期に到達したか否かが主制御部24により判断される(S100)。ここで、「制御周期」とは、定期的に電子部品Eの供給状態を判定するための周期Tをいう。周期Tを予め記憶部46に記憶しておき、この周期Tになれば、電子部品Eの供給状態の判定を開始する。
【0039】
制御周期に到達したと主制御部24により判断された場合(S100:YES)には、主制御部24の時間測定部24Aにより通過時間が、複数回(例えば、10回)、測定される(S110)。ここで、「通過時間」とは、ストッパ28が無振動部29上から退避してから電子部品Eが通過確認センサ32を遮るまでの時間を意味する。なお、上述した通り、通過確認センサ32により電子部品Eの通過が確認される。これにより、電子部品毎の通過時間t1、t2、t3、…、t10が算出される。この通過時間の算出結果は、記憶部46に一時的に記憶される。
【0040】
次に、時間測定部24Aの複数回(例えば、10回)の通過時間の測定結果に基づいてばらつき算出部24Bにより通過時間ばらつきが算出される(S120)。特に、ばらつき算出部24Bは、時間測定部24Aの複数回の測定結果から最大通過時間と最小通過時間との差を算出し、当該最大通過時間と最小通過時間との差を通過時間ばらつきと認定する。具体的には、ばらつき算出部24Bは、tmax−tmin=tr(通過時間ばらつき)を算出する。
【0041】
次に、ばらつき算出部24Bで算出された通過時間ばらつきと記憶部46に記憶されている通過時間ばらつきの基準幅との差分が差分算出部24Cによって算出される(S130)。S130では、記憶部46に予め記憶されている通過時間ばらつきの基準幅tsと、上記した通過時間ばらつきtrとの差(tr−ts)が算出される。
【0042】
次に、上記差分に基づいて整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅補正量が振幅補正部24Dにより算出される(S140)。S140では、整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅補正量は、上記差分に所定の係数を乗じることにより算出される。差分が正のときと負のときとで、振幅を大きくするか小さくするかを変え、また、乗じる係数も変える。
【0043】
なお、整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅補正量の決定方法として、例えば、記憶部46に予め差分と振幅補正量との関係を示すテーブルを記憶しておき、このテーブルに基づいて、振幅補正部24Dが整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅補正量を決定するようにしてもよい。
【0044】
次に、整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅補正量が振幅補正部24Dにより算出されると、振動制御部22が主制御部24からの制御信号を受けて、振幅補正部24Dで補正された整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅量に基づき、2つの圧電アクチュエータ16、20の出力を制御する。これにより、整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振動がそれぞれ制御され、処理部12における電子部品Eの処理能力に対応した電子部品Eの供給能力を維持することができる。
【0045】
なお、整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の両方の振幅量を補正して振動を制御する構成に限られるものではなく、整列フィーダ14又は搬送フィーダ18のいずれか一方のみの振幅量を補正して振動を制御するようにしてもよい。この場合には、本発明の「搬送部」とは、整列フィーダ14又は搬送フィーダ18のいずれか一方を意味する概念になる。
【0046】
第1実施形態によれば、処理部12における電子部品Eの処理時間や処理部12への電子部品Eの供給時間の経年変化に対応して、処理部12における電子部品Eの処理能力に適応した電子部品Eの供給能力が維持されるように、整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振動(あるいは振幅)が制御される。
【0047】
これにより、以下の効果を得ることができる。
(1)電子部品Eの重量及び表面形状、搬送フィーダ18の搬送面の汚れといった要因下においても、電子部品Eの供給能力が低下しない。
(2)電子部品Eの供給能力が過剰にならず、処理部12に電子部品Eが2個進入することを防止できる。
(3)電子部品Eの供給能力が過剰にならず、電子部品Eがストッパ28によって停止させられる事態が最小限に抑制できるため、電子部品Eが搬送フィーダ18上を円滑に搬送することができる。この結果、電子部品Eが搬送フィーダ18または整列フィーダ14上で詰まり難い。
(4)ストッパ28の動作時間、搬送フィーダ18における搬送速度、通過確認センサ32の光量及び閾値を調整しなくても、電子部品供給装置10の最適な電子部品Eの供給能力を維持することができる。
【0048】
ここで、整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の電子部品Eの供給能力と通過時間分布との関係について説明する。なお、「通過時間分布」とは、通過時間の度数分布を意味する。
【0049】
図4は、整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の供給能力が最適であるときの電子部品Eの搬送状態(最適供給)を時系列的に示した図である。図5は、整列フィーダ及び搬送フィーダの供給能力が過剰であるときの電子部品Eの搬送状態(供給過剰)を時系列的に示した図である。図6は、整列フィーダ及び搬送フィーダの供給能力が不足しているときの電子部品Eの搬送状態(供給不足)を時系列的に示した図である。最適供給、供給過剰、供給不足のそれぞれの状態は、供給装置の稼働時間のうち任意の割合で存在するものであり、最適供給の時間の割合が大きいほど安定した供給が行われる。
【0050】
図4は、整列フィーダ及び搬送フィーダの供給能力が最適供給の搬送状態を示す図である。それぞれの電子部品Eは隙間のあいた状態で搬送され、ストッパ28に近づくにつれ、その隙間は小さくなっている。図4に示すように、ストッパ28を解除するとき、ストッパ28の近傍に微小隙間の空いた状態で先頭の電子部品Eが配置されている。
【0051】
図7は、最適供給の搬送状態のときの電子部品Eの通過時間分布を示す図である。ストッパ28を解除したときに、ストッパ28の近傍手前に先頭の電子部品Eが来ているので、電子部品Eが処理部12に吸引で移送される通過時間のばらつきが比較的小さい。この場合には、電子部品Eの通過時間のばらつきが許容範囲内となり、特別に整列フィーダ14または搬送フィーダ16の振幅を補正しなくても問題は生じない。すなわち、通過時間ばらつきは許容範囲となる最大幅と最小幅を有し、その許容範囲にある限り、最適供給の搬送状態にあるとみなされ、振幅の補正は行わない。
【0052】
図5は、整列フィーダ及び搬送フィーダの供給能力が供給過剰であるときの搬送状態を示す図である。それぞれの電子部品Eは隙間のない状態で無振動部29に満たされている。図5に示すように、ストッパ28を解除するとき、ストッパ28に接触した状態で先頭の電子部品Eが配置されている。
【0053】
図8は、供給過剰の搬送状態のときの電子部品Eの通過時間分布を示す図である。先頭の電子部品Eが常にストッパ28の手前に来ているので、電子部品Eが処理部12に移送される通過時間のばらつきが図4に比べて更に小さい。しかしこの場合、先頭から2番目の電子部品Eに後方から押される力が作用し、仕切りであるストッパ28が降りる前に、先頭の電子部品Eに連なって処理部12に進入してしまう事態が発生しやすい。この場合には、電子部品Eの通過時間のばらつきが許容できる最小幅を下回り、供給能力が大きすぎると判断する。そのため、整列フィーダ14または搬送フィーダ16の振幅を小さく補正することになる。
【0054】
図6は、整列フィーダ及び搬送フィーダの供給能力が供給不足であるときの搬送状態を示す図である。それぞれの電子部品Eは隙間のあいた状態で搬送されている。図6に示すように、ストッパ28を解除するとき、ストッパ28と先頭の電子部品Eの間に大きめの隙間がある。特に、先頭の電子部品Eを搬送してからストッパ28を下降させたときは、先頭から2番目の電子部品Eとストッパ28の間に、最適供給に比べて大きな隙間ができてしまう。
【0055】
図9は、供給不足の搬送状態のときの電子部品Eの通過時間分布を示す図である。電子部品Eとストッパ28との距離が大きいので、電子部品Eが処理部12に移送される通過時間のばらつきが図4に比べて大きい。この場合、電子部品Eの通過時間のばらつきが許容できる最大幅を超えてしまい、供給能力が小さいと判断する。供給能力を上げるために、整列フィーダ14または搬送フィーダ16の振幅を大きく補正することになる。
【0056】
特許文献2の電子部品供給装置は、供給時間平均を見る方法を採用している。特許文献2の電子部品供給装置では、供給能力が足りないと供給時間平均が大きくなる。したがって、図7及び図9において、本願発明と特許文献2の電子部品供給装置との間では、大きな差が生じていない。そこで、以下のケースを説明する。
【0057】
図10は、最適供給の搬送状態であり、かつ無駄時間が小さいときの電子部品Eの通過時間分布を示す図である。「無駄時間」とは、ストッパ28の解除信号が主制御部24から出力されてから電子部品Eが実際に動き出すまでの時間を意味する。無駄時間は、ストッパ28のこじれなどの外乱の影響を受け易いことで発生する。図10に示すように、ストッパ28を解除したときに、ストッパ28の近傍手前に電子部品Eが来ているので、電子部品Eが処理部12へ移送されるときの通過時間のばらつきが小さい。この場合には、電子部品Eの通過時間のばらつきが許容範囲内なので、特別に整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅を補正して振動を制御しなくても問題は生じない(図7の状態同様)。
【0058】
図11は、最適供給の搬送状態であり、かつ無駄時間が大きいときの電子部品の通過時間分布を示す図である。図11に示すように、外乱の影響を受けて無駄時間が大きくなる。電子部品Eの動き出す時間は遅くなるが、本来の電子部品Eの供給能力は十分なので、通過時間のばらつきは図7のものと同じになる。一方、電子部品Eの動き出すタイミングが遅くなるため、その分だけ、通過時間の平均値が大きくなる。
【0059】
特許文献2の電子部品供給装置は、通過時間の平均値を見る方法を採用している。図11では、通過時間の平均値が大きくなり、実際に電子部品Eの供給能力が十分あるにもかかわらず、電子部品Eの供給能力が足りないと判断される。このため、電子部品Eの供給能力を大きくするために、整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅を大きくするという事実に反する制御が実行されることになり、搬送部にて詰まりが発生しやすくなる。
【0060】
これに対して、本実施形態によれば、電子部品Eの通過時間の平均値ではなく、通過時間のばらつきに基づいて整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振動を制御しているため、無駄時間の変動が発生しても、これに影響されず、電子部品Eの適正な供給能力を維持することができる。
【0061】
次に、本発明の第2実施形態の電子部品供給装置及び電子部品の供給方法について説明する。なお、本発明の第2実施形態の電子部品供給装置の構成と重複する構成については説明を省略する。
【0062】
図2において、主制御部24のばらつき算出部24Bは、時間測定部24Aの複数回の測定結果から分散値を算出し、当該分散値を定数倍したものを通過時間ばらつきと決定する。
【0063】
次に、本発明の第2実施形態の電子部品供給装置及び電子部品の供給方法の作用・効果について説明する。なお、図3のフローチャートで説明したステップと同じ内容となるステップの説明は省略する。
【0064】
図12に示すように、S120Aにおいて、ばらつき算出部24Bが、時間測定部24Aの複数回の測定結果から分散値を算出する。これにより、複数回にわたる電子部品Eの通過時間の測定結果に基づいて、分散値が算出される。
【0065】
S120Bにおいて、ばらつき算出部24Bは、S120Aで算出した分散値を定数倍し、これを通過時間ばらつきと決定する。
【0066】
次に、S130においてばらつき算出部24Bで算出された通過時間ばらつきと記憶部46に記憶されている通過時間ばらつきの基準幅との差分が差分算出部24Cによって算出される。
【0067】
そして、S140において上記差分に基づいて整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅補正量が振幅補正部24Dにより算出される。
【0068】
さらに、整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅補正量が振幅補正部24Dにより算出されると、振動制御部22が、振幅補正部24Dで補正された整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振幅量に基づいて2つの圧電アクチュエータ16、20の出力を制御し、整列フィーダ14及び搬送フィーダ18の振動を制御する。
【符号の説明】
【0069】
10 電子部品供給装置
12 処理部
14 整列フィーダ(搬送部)
18 搬送フィーダ(搬送部)
29 無振動部(搬送部)
22 振動制御部
24A 時間測定部
24B ばらつき算出部
24C 差分進出部
24D 振幅補正部
28 ストッパ(仕切り部)
32 通過確認センサ(検知部)
46 記憶部
E 電子部品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品に所定の処理を行う処理部と、振動により前記処理部に電子部品を搬送する搬送部と、搬送される電子部品のうち、先頭の電子部品を前記処理部側から吸引して移送する吸引部と、先頭から2番目の電子部品が先頭の電子部品に連なって移送されることを防止する仕切り部と、吸引により移送している途中の電子部品を検知する検知部と、を有し、前記搬送部の電子部品を1個ずつ分離して前記処理部に供給する電子部品供給装置であって、
前記仕切り部の仕切りを解除してから電子部品が前記検知部を遮るまでの通過時間の基準幅を記憶する記憶部と、
前記仕切り部の仕切りを解除してから電子部品が前記検知部を遮るまでの通過時間を測定する時間測定部と、
前記時間測定部の複数回の測定結果に基づいて通過時間ばらつきを算出するばらつき算出部と、
前記ばらつき算出部で算出された前記通過時間ばらつきと前記記憶部に記憶されている前記通過時間の基準幅との差分を算出する差分算出部と、
前記差分算出部で算出された前記差分に基づいて前記搬送部の振幅量を補正する振幅補正部と、
前記振幅補正部で補正された前記搬送部の振幅量に基づいて前記搬送部の振動を制御する振動制御部と、
を有することを特徴とする電子部品供給装置。
【請求項2】
前記ばらつき算出部は、前記時間測定部の複数回の測定結果から最大通過時間と最小通過時間との差を算出し、当該最大通過時間と最小通過時間との差を前記通過時間ばらつきとすることを特徴とする請求項1に記載の電子部品供給装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記通過時間ばらつきに対する許容範囲となる最大幅と最小幅を記憶し、
前記振幅補正部は、前記通過時間ばらつきが、前記最大幅より大きくなったとき、または前記最小幅より小さくなったときに前記搬送部の振幅量を補正することを特徴とする請求項2に記載の電子部品供給装置。
【請求項4】
前記ばらつき算出部は、前記時間測定部の複数回の測定結果から分散値を算出し、当該分散値を定数倍したものを前記通過時間ばらつきとすることを特徴とする請求項1に記載の電子部品供給装置。
【請求項5】
電子部品に所定の処理を行う処理部と、振動により前記処理部に電子部品を搬送する搬送部と、搬送される電子部品のうち、先頭の電子部品を前記処理部側から吸引して移送する吸引部と、先頭から2番目の電子部品が先頭の電子部品に連なって移送されることを防止する仕切り部と、吸引により移送している途中の電子部品を検知する検知部と、を有する電子部品供給装置を用い、前記搬送部の電子部品を1個ずつ分離して前記処理部に供給する電子部品の供給方法であって、
前記仕切り部の仕切りを解除してから電子部品が前記検知部を遮るまでの通過時間の基準幅を記憶部に記憶する記憶する第1工程と、
前記仕切り部の仕切りを解除してから電子部品が前記検知部を遮るまでの通過時間を時間測定部によって測定する第2工程と、
前記時間測定部の複数回の測定結果に基づいて通過時間ばらつきをばらつき算出部によって算出する第3工程と、
前記ばらつき算出部で算出された前記通過時間ばらつきと前記記憶部に記憶されている前記通過時間の基準幅との差分を差分算出部によって算出する第4工程と、
前記差分算出部で算出された前記差分に基づいて前記搬送部の振幅量を振幅補正部によって補正する第5工程と、
前記振幅補正部で補正された前記搬送部の振幅量に基づいて前記搬送部の振動を振幅制御部によって制御する第6工程と、
を有することを特徴とする電子部品の供給方法。
【請求項6】
前記第3工程では、
前記ばらつき算出部が前記時間測定部の複数回の測定結果から最大通過時間と最小通過時間との差を算出し、当該最大通過時間と最小通過時間との差を前記通過時間ばらつきとすることを特徴とする請求項5に記載の電子部品の供給方法。
【請求項7】
前記第1工程では、前記記憶部が前記通過時間ばらつきに対する許容範囲となる最大幅と最小幅を記憶し、
前記第5工程では、前記振幅補正部は、前記通過時間ばらつきが、前記最大幅より大きくなったとき、または前記最小幅より小さくなったときに前記搬送部の振幅量を補正することを特徴とする請求項6に記載の電子部品の供給方法。
【請求項8】
前記第3工程では、
前記ばらつき算出部が前記時間測定部の複数回の測定結果から分散値を算出し、当該分散値を定数倍したものを前記通過時間ばらつきとすることを特徴とする請求項5に記載の電子部品の供給方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−106838(P2012−106838A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257238(P2010−257238)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】