説明

電子部品保持具及びその使用方法

【課題】薄い電子部品を面方向でテスト等することができ、しかも、電子部品が剥がれて脱落するおそれを排除できる電子部品保持具及びその使用方法を提供する。
【解決手段】保持フレーム10の中空部11に可撓性の保持層20を覆着し、保持層20の表面に薄い半導体ウェーハ1を保持させる電子部品保持具で、保持層20に半導体ウェーハ1用の露出口21を穿孔してその周縁には半導体ウェーハ1の周縁部4を粘着保持させ、保持層20の表面には、半導体ウェーハ1を包囲してその周縁部4に干渉する中空の抑え層30を貼着し、保持層20と抑え層30とに、半導体ウェーハ1の周縁部4を挟持させる。保持層20と抑え層30とに半導体ウェーハ1の周縁部4を挟持させるので、電子部品保持具を表裏逆にしたり、起立させても、半導体ウェーハ1のシャープエッジの欠けや割れを招いたり、半導体ウェーハ1が剥がれて脱落するおそれを排除できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハに代表される電子部品の保持・保管や電気的特性の検査の際等に使用される電子部品保持具及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの表面に形成された半導体デバイスは電気的特性がテストされる(特許文献1、2、3、4参照)が、この電気的特性のテストに際しては、半導体ウェーハの表面上方向から裏面下方向に通電して半導体デバイスをテストしたい場合がある。このようなテストを実施する場合には、従来、半導体ウェーハを元の厚さのままその周縁部を支持し、この半導体ウェーハの表面内のパッド間でテストするようにしている。
【0003】
ところで、半導体ウェーハは、半導体パッケージの薄型化に資するため、バックグラインドにより薄化されるが、薄化されると、半導体デバイスの電気的特性が変化することが従来より指摘されている。そこで近年、薄化された後の半導体ウェーハの半導体デバイスの電気的特性をテストしたいという要望が少なくない。
【0004】
しかしながら、半導体ウェーハが薄化されると、半導体ウェーハの周縁部がシャープエッジ(いわゆるナイフエッジ)になるので、半導体ウェーハの周縁部を支持して半導体デバイスをテストする場合、エッジの欠けや割れを招くおそれがある。したがって、従来のテスト方法では、薄化された半導体ウェーハの表面に形成された半導体デバイスの電気的特性をテストするのは実に困難である。
【0005】
以上の点に鑑み、中空のテープフレームの裏面内周縁部にリング形の両面粘着テープを粘着してその内周縁部には半導体ウェーハの表面周縁部を粘着保持させ、両面粘着テープの表面には、半導体ウェーハの表面を覆う保護テープを着脱自在に粘着する電子部品保持具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05‐333098号公報
【特許文献2】特開平07‐245401号公報
【特許文献3】特開平08‐153763号公報
【特許文献4】特開2005‐294773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来における電子部品保持具は、以上のように構成され、両面粘着テープの内周縁部に半導体ウェーハの表面周縁部のみを単に粘着保持させ、半導体ウェーハを水平に吊持するので、テスト装置にセットされる際やカセットに保管される際、両面粘着テープから半導体ウェーハが簡単に剥がれて脱落するおそれがあり、半導体ウェーハを安全にハンドリングすることができないという問題がある。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたもので、薄い電子部品を面方向でテスト等することができ、しかも、電子部品が剥がれて脱落するおそれを排除することのできる電子部品保持具及びその使用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては上記課題を解決するため、保持フレームの中空部を可撓性の保持層により被覆し、この保持層に電子部品を保持させるものであって、
保持層に電子部品用の露出口を設けてその周縁には電子部品の周縁部を着脱自在に保持させ、保持層に、電子部品の周囲に位置してその周縁部に干渉する中空の抑え層を着脱自在に貼り付け、保持層と抑え層とに、電子部品の周縁部を挟み持たせるようにしたことを特徴としている。
【0010】
なお、電子部品を、バックグラインドにより薄化された半導体ウェーハとすることができる。
また、抑え層に、摘み片を取り付けることができる。
【0011】
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1又は2記載の電子部品保持具の使用方法であって、
表面下向きの電子部品を隙間を介して包囲するよう保持フレームを表面下向きに配置し、電子部品の裏面周縁部に保持層の露出口の周縁部を粘着するとともに、保持フレームの裏面に保持層を粘着し、保持フレームを表裏逆にして表面上向きとした後、保持層の表面に電子部品を包囲する抑え層を貼り付けてその周縁部を電子部品の表面周縁部に干渉させ、保持層と抑え層とに電子部品の周縁部を挟み持たせることを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における保持フレームは、平面視でリング形や枠形等とすることができる。また、電子部品には、少なくとも電気的特性のテスト対象となる薄い半導体パッケージや各種大きさの半導体ウェーハ(φ200、300、450mm等)等が含まれる。この電子部品は単数複数を特に問うものではない。
【0013】
本発明によれば、保持層に電子部品を単に保持させるのではなく、保持層と抑え層とに電子部品の周縁部を挟み持たせるので、例え保持フレームを上下逆にしたり、起立させても、電子部品の周縁部の損傷を招いたり、保持層から電子部品が剥がれて脱落するおそれを排除することができる。また、保持層の露出口が電子部品の一部を露出させるので、電子部品の面方向に通電して電子部品を検査することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例え電子部品が薄い場合でも、電子部品の面方向でテスト等することができ、しかも、保持層から電子部品が剥がれて脱落するおそれを払拭することができるという効果がある。
【0015】
また、抑え層に摘み片を取り付ければ、抑え層の端を捲り上げなくても、摘み片を操作することにより、保持層に貼りついた抑え層を簡易に剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電子部品保持具及びその使用方法の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図2】本発明に係る電子部品保持具及びその使用方法の実施形態における保持層から抑え層を剥がした状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る電子部品保持具の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における電子部品保持具は、図1ないし図3に示すように、薄化された半導体ウェーハ1を包囲する保持フレーム10の中空部11に可撓性の保持層20を覆着し、この保持層20に半導体ウェーハ1を保持させる保持具で、保持層20に半導体ウェーハ1用の露出口21を穿孔してその周縁には半導体ウェーハ1の周縁部4を保持させ、保持層20に、半導体ウェーハ1を囲んでその周縁部4に干渉する中空の抑え層30を貼着するようにしている。
【0018】
半導体ウェーハ1は、例えばφ200mmで厚さ750μm程度のシリコンウェーハ等からなり、前工程で周縁部4に直線的な位置合わせ用のオリフラ2が形成され、表裏面のうち、少なくとも表面3に回路パターン、電極、及び半導体デバイスが形成されており、後工程のバックグラインドにより厚さ100μm以下に薄化され、ダイシング工程に供される。
【0019】
保持フレーム10は、所定の材料を使用して基本的には半導体ウェーハ1よりも拡径の平面略リング形の平板に形成され、前後左右の外周縁部がそれぞれ直線的に切り欠かれるとともに、前部両側には平面視で略三角形の位置決め部12がそれぞれ切り欠かれており、裏面13の内周縁部付近には、保持層20を接着するための段差凹部14が平面略リング形に切り欠かれる(図3参照)。この保持フレーム10は、各種の金属材料や樹脂を含む成形材料で形成されたり、あるいは通常のダイシング工程で使用されるリング形のテープフレームが流用される。
【0020】
保持フレーム10が金属材料で形成される場合には、ステンレスや表面にメッキが施されて錆の発生を防止可能な材料で形成されることが好ましい。これに対し、保持フレーム10が樹脂を含む成形材料で形成される場合には、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリカーボネート等を含有する成形材料で成形されると良い。
【0021】
保持層20は、所定の材料を使用して基本的には屈曲可能な平面円形の膜に形成され、保持フレーム10の段差凹部14に接着されて保持フレーム10の中空部11を下方から被覆しており、表面に半導体ウェーハ1を着脱自在に保持するよう機能する。この保持層20は、特に限定されるものではないが、例えば微弱の自己粘着性を有するシリコーン系やフッ素系のゴム、ポリオレフィン系やポリエステル系、ウレタン系のエラストマーフィルム、ポリエステル製のフィルムに再剥離可能なアクリル系やシリコーン系の粘着層が積層された積層フィルムの加工により形成される。
【0022】
保持層20の中央部には図1や図3に示すように、半導体ウェーハ1の裏面を露出させる露出口21が貫通して穿孔され、この露出口21の表面周縁に半導体ウェーハ1の裏面の周縁部4が着脱自在に粘着保持される。保持層20の露出口21は、オリフラ2付きの半導体ウェーハ1の形に対応するよう形成され、半導体ウェーハ1の落下防止の観点から、半導体ウェーハ1よりもやや小さい寸法に調整される。
【0023】
抑え層30は、所定の材料を使用して基本的には屈曲可能な平面略リング形に形成され、保持フレーム10内の保持層20の表面に着脱自在に貼着されて半導体ウェーハ1を包囲した状態でその表面3の周縁部4に係止するよう機能する。この抑え層30の材料としては、特に制約されるものではないが、例えば所定の剛性を有する塩化ビニル樹脂製のシート、ポリエステル二軸延伸フィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系フィルムが好適に使用される。
【0024】
抑え層30は、保持フレーム10の中空部11以下の大きさに形成され、中空がオリフラ2付きの半導体ウェーハ1の形に対応するよう形成されており、表面の周縁部には、保持層20からの剥離操作の便宜を図るため、細長い摘み片31が貼着される。この摘み片31は、顕現性を高める観点から、保持フレーム10、保持層20、及び抑え層30とは異なる色彩で着色されることが好ましい。このような抑え層30は、保持層20の表面に貼着されると、露出口21の周縁部との間に半導体ウェーハ1の周縁部4やその近傍部を挟持し、電子部品保持具の姿勢や状態にかかわらず、半導体ウェーハ1の脱落を有効に防止する(図3参照)。
【0025】
上記において、電子部品保持具を使用して半導体ウェーハ1を保持する場合には、先ず、図示しないウェーハマウンタの吸着テーブルに半導体ウェーハ1を表面下向きに配置し、吸着テーブルに、半導体ウェーハ1を隙間を介して包囲するよう保持フレーム10を表面下向きに配置する。
【0026】
こうして吸着テーブルに半導体ウェーハ1と保持フレーム10とをそれぞれ配置したら、大きくカットしておいた保持層20を用意し、半導体ウェーハ1の裏面の周縁部4に保持層20の予め穿孔しておいた露出口21の表面周縁部を粘着し、保持フレーム10の段差凹部14に保持層20を粘着して保持フレーム10の裏面13と保持層20の裏面とを面一に揃え、保持フレーム10の段差凹部14から食み出た保持層20の余剰部を除去する。
【0027】
次いで、吸着テーブルから保持層20付きの保持フレーム10を取り外して表裏逆とし、平坦な作業テーブル等に半導体ウェーハ1と保持フレーム10とを表面上向きに配置し、その後、保持フレーム10内の保持層20の表面に半導体ウェーハ1を包囲する抑え層30を貼着してその周縁部を半導体ウェーハ1の表面3の周縁部4上に係止させれば、保持層20と抑え層30とに半導体ウェーハ1の周縁部4を挟持させることができ、この挟持構造により、電子部品保持具に半導体ウェーハ1を確実に保持させることができる。
【0028】
次に、電子部品保持具に保持した半導体ウェーハ1の半導体デバイスの電気的特性をテストしたい場合には、保持層20の露出口21から半導体ウェーハ1の裏面が適切に露出しているのを確認し、検査プローブ等を利用すれば、半導体ウェーハ1の表面上方向から裏面下方向に通電し、半導体デバイスを容易にテストすることができる。
【0029】
半導体デバイスの電気的特性をテストし、電子部品保持具から半導体ウェーハ1を取り外したい場合には、先ず、平坦な作業テーブル等に電子部品保持具を表面上向きに配置し、抑え層30の摘み片31を握持操作して引っ張り上げることにより、保持層20から抑え層30を剥離する(図2参照)。保持層20から抑え層30を取り除いたら、電子部品保持具を表裏逆にして半導体ウェーハ1を図示しない吸着テーブル等に吸着固定した後、電子部品保持具の保持フレーム10を部分的に引き上げれば、半導体ウェーハ1から保持層20が剥がれるので、電子部品保持具から半導体ウェーハ1を取り外すことができる。
【0030】
上記構成によれば、保持層20に半導体ウェーハ1を単に保持させたり、吊持させるのではなく、保持層20と抑え層30とに半導体ウェーハ1の周縁部4やその近傍部を表裏方向から挟持させるので、テスト装置にセットされる際やカセットに保管される場合に、電子部品保持具を表裏逆にしたり、起立させても、半導体ウェーハ1のシャープエッジの欠けや割れを招いたり、保持層20から半導体ウェーハ1が簡単に剥がれて脱落するおそれを有効に排除することができる。
【0031】
したがって、通常の厚い半導体ウェーハ1だけではなく、バックグラインドにより薄化された半導体ウェーハ1をも長期に亘って安全確実にハンドリングすることができる。また、保持層20の露出口21が半導体ウェーハ1の裏面を露出させ、検査プローブの接触を可能とするので、半導体ウェーハ1の表裏両面に通電して半導体デバイスを容易にテストすることができる。さらに、電子部品保持具を簡易な構成にすることができるので、製造コストの削減が大いに期待できる。
【0032】
なお、上記実施形態の半導体ウェーハ1の周縁部4には、オリフラ2の代わりにノッチを形成しても良い。また、保持フレーム10には半導体ウェーハ1の脱着を容易にするため、可撓性を付与しても良い。また、保持フレーム10、保持層20、及び抑え層30には、静電気に伴う半導体デバイスの損傷を防止する観点から、選択的に導電性を付与しても良い。
【0033】
また、保持フレーム10の段差凹部14に弱粘着性の保持層20を接着剤や接着層により接着することもできる。また、保持層20や抑え層30は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。さらに、抑え層30の材料を選択して抑え層30の裏面のみを保持層20に粘着させ、抑え層30の表面が保持層20に粘着しないようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 半導体ウェーハ(電子部品)
3 表面
4 周縁部
10 保持フレーム
11 中空部
13 裏面
20 保持層
21 露出口
30 抑え層
31 摘み片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持フレームの中空部を可撓性の保持層により被覆し、この保持層に電子部品を保持させる電子部品保持具であって、
保持層に電子部品用の露出口を設けてその周縁には電子部品の周縁部を着脱自在に保持させ、保持層に、電子部品の周囲に位置してその周縁部に干渉する中空の抑え層を着脱自在に貼り付け、保持層と抑え層とに、電子部品の周縁部を挟み持たせるようにしたことを特徴とする電子部品保持具。
【請求項2】
抑え層に、摘み片を取り付けた請求項1記載の電子部品保持具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電子部品保持具の使用方法であって、表面下向きの電子部品を隙間を介して包囲するよう保持フレームを表面下向きに配置し、電子部品の裏面周縁部に保持層の露出口の周縁部を粘着するとともに、保持フレームの裏面に保持層を粘着し、保持フレームを表裏逆にして表面上向きとした後、保持層の表面に電子部品を包囲する抑え層を貼り付けてその周縁部を電子部品の表面周縁部に干渉させ、保持層と抑え層とに電子部品の周縁部を挟み持たせることを特徴とする電子部品保持具の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−23546(P2011−23546A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167343(P2009−167343)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】