電子部品内蔵モジュール
【課題】電子回路やその周辺に位置する信号ラインに対して影響を及ぼすノイズを十分に抑制する又は遮断することができ、これにより、電子回路の誤動作を確実に防止して正確な動作を安定に維持することが可能な電子部品内蔵モジュールを提供する。
【解決手段】電子部品内蔵モジュールとしてのDCDCコンバータ1は、ICチップ7等が内蔵された電子部品内蔵基板2と、その2上に載置されたインダクタ8等とを備えるものである。この電子部品内蔵基板2の内部には、インダクタ8とICチップ7との間に、所定の接地電位に接続された第1シールド層33Gが形成されており、これにより、インダクタ8からの漏れ磁束がシールドされ、ICチップ7の安定な動作が確保され、DCDCコンバータ1の誤動作を防止することができる。
【解決手段】電子部品内蔵モジュールとしてのDCDCコンバータ1は、ICチップ7等が内蔵された電子部品内蔵基板2と、その2上に載置されたインダクタ8等とを備えるものである。この電子部品内蔵基板2の内部には、インダクタ8とICチップ7との間に、所定の接地電位に接続された第1シールド層33Gが形成されており、これにより、インダクタ8からの漏れ磁束がシールドされ、ICチップ7の安定な動作が確保され、DCDCコンバータ1の誤動作を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の内部に電子部品が埋め込まれた(内蔵された)電子部品内蔵モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に用いられるICチップ(ベアチップ:ダイ(Die))等の半導体装置といった能動部品や、コンデンサ(キャパシタ)、インダクタ、サーミスタ、抵抗等の受動部品等の電子部品が実装されたモジュール化が進んでおり、かかるモジュールに対する小型化や薄型化がますます熱望されている。
【0003】
かかる要求に応えるべく、例えば、特許文献1には、能動部品や受動部品が実装されたモジュールとして、電子部品が載置された基板上に電子部品より高いスタッド出力端子を設け、このスタッド出力端子上にマイクロインダクタを設置することにより、電子部品とマイクロインダクタとを、基板面に対して上下方向に載置するように配設してなるマイクロコンバータが提案されており、例えば電子機器の電源回路として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−63676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構造の電源回路としてのマイクロコンバータでは、その電源回路を構成する電子部品の低電圧化、高電流化及び高周波数化も進んできており、また、構造的にも、モジュールの更なる小型化に伴う配置の制約や機械的強度を確保する必要が生じてきており、その結果、上記特許文献1に開示されたようなマイクロコンバータの構造では、インダクタからの漏れ磁束(通常、インダクタンスを調整するためにフェライト間にギャップ(間隔)を一定に保持するギャップシートが挟持されているため、そこから磁束が外部へ漏れ出す)が、高周波ノイズ成分となって電源回路に影響を与える傾向にある。このような漏れ磁束は、インダクタの近傍に配置される電子部品の不安定な動作を誘発し、延いては電源回路やその制御回路の誤動作を引き起こす原因となり得る。
【0006】
例えば、電圧変換を行う電源回路では、一般に、入力電圧に対する出力電圧(スイッチングされた高周波電圧を平滑化した後の電圧)を制御回路にフィードバックすることにより、出力電圧を一定に維持するような回路構成が採られているが、そのフィードバック(FB)信号は、上述したインダクタからの漏れ磁束の影響を非常に受け易い傾向にある。そのため、フィードバック信号の乱れによって、電源回路の基準電圧を一定に保つことが困難となり、所望の正確な電圧変換を行い難くなる(すなわち、電源回路の誤動作を引き起こす)傾向にある。より一般化して言えば、インダクタからの漏れ磁束が、電子部品の周辺に形成された信号ラインと電磁結合することにより、その信号の純度の劣化を誘引する大きな要因の一つとなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、電子部品やその周辺に位置する信号ラインに対して影響を及ぼすノイズを十分に抑制する又は遮断することができ、これにより、電子回路の誤動作を確実に防止して正確な動作を安定に維持することが可能な電子部品内蔵モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による電子部品内蔵モジュールは、第1の電子部品が内蔵された基板(電子部品内蔵基板)と、この基板上に載置された第2の電子部品と、基板の内部において第1の電子部品と第2の電子部品との間に設けられており、且つ、所定の接地電位に接続された第1シールド層とを備えるものである。
【0009】
なお、本明細書において、「第1の電子部品」とは、その種類は特に制限されず、例えば、通常の電子機器に用いられるICチップ等の半導体装置といった能動部品、より具体的には、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)のように動作周波数が非常に高いデジタルIC、又は、高周波増幅器やアンテナスイッチ、高周波発振回路といったアナログIC等が挙げられる。また、「電子部品内蔵基板」に搭載されて「電子部品内蔵モジュール」の一部を構成する「第2の電子部品」の種類も特に制限されず、本発明では、「第2の電子部品」が上述したインダクタ等の電磁波(ノイズ)の発生源である受動部品であり、特に電子部品内蔵基板に直接接続することで高速でスイッチングされるものの場合に特に有効である。
【0010】
上記構成においては、第1の電子部品が内蔵された基板上に第2の電子部品が載置されるため、自ずと、その基板の面方向における上下位置に第1の電子部品と第2の電子部品とが互いに近接した状態で(第2の電子部品の実装範囲内に)配置されることとなる。このとき、第1の電子部品と第2の電子部品との間には、所定の接地電位(例えば、0V電圧)に接続された第1シールド層が設けられていることにより、第2の電子部品(例えば、インダクタ)から磁束が漏出したとしても、第1シールド層が電磁波シールドとして機能するので、第1の電子部品は、かかる第2の電子部品からの漏れ磁束に起因するノイズの影響を受けることなく、安定な動作が確保される。
【0011】
また、第1シールド層は、第1の電子部品が内蔵された基板内に形成され得る様々な信号ラインに対しても、電磁波シールドとして機能し得るので、第2の電子部品からの漏れ磁束のような電磁波ノイズと各種信号ラインを伝送される信号との相互干渉が防止され得る。そして、このように、第2の電子部品からの漏れ磁束のようなノイズとなり得る電磁波から、第1の電子部品や各種信号ラインを保護することができるので、例えば、電子部品内蔵基板(延いては電子部品内蔵モジュール)が多層且つ複雑な配線構造を有している場合でも、その複雑な信号経路を辿る信号伝送を安定して行い得る。
【0012】
また、第1シールド層は、接地電位に接続されたグラウンド端子にビア導体を介して接続され、そのビア導体は、第1の電子部品の側端部側に配置され、且つ、第1シールド層からグラウンド端子まで延設されてもよい。
【0013】
このようにすれば、第1シールド層とグラウンド端子が、第1の電子部品の側端部側を通って延設されるビア導体で接続されるので、第1の電子部品(の出力端子)を第2の電子部品から離間させることができ、しかも例えば、第1の電子部品の出力端子が第2の電子部品とは反対側を向くように、第1の電子部品を配置し易くなる。よって、第1の電子部品の周辺に位置し得る信号ラインが受動部品から十分に遠ざけられるので、第2の電子部品からの漏れ磁束に起因するノイズがその信号ラインに結合することに起因するノイズを一層抑制且つ遮断し得る。
【0014】
この場合、信号ラインに対するノイズ抑制や遮断を一層強化するためには、ビア導体が基板の厚み方向に沿って(すなわち、基板の面方向に対して垂直方向に)直線状に延設されることが好ましく、さらにビア導体が連続して形成されていることがより好ましい。このようにすれば、ビア導体の一方端(グラウンド端子との接続端)を第2の電子部品及び第1シールド層からより一層離間させることができ、また、第1シールド層とビア導体との間で浮遊容量が生じることを抑止し易くなるので、第1の電子部品への漏れ磁束等の電磁波ノイズの影響をより低減することができると考えられる。
【0015】
また、より具体的には、ノイズ対策の一環として第1シールド層による電磁波シールド機能をより高めるために、第1シールド層が、基板の面方向における第1の電子部品の実装領域を覆うように形成されるものであると好適である。換言すれば、第1シールド層が、基板の面方向において第1の電子部品の実装領域まで延在していても好ましいと言える。
【0016】
さらに第1シールド層のみならず、第1シールド層より下層(第1の電子部品を挟んで第2の電子部品及び第1シールド層と反対側)に形成されており、且つ、所定の接地電位に接続された第2シールド層(接地電位に接続されたグラウンド端子にビア導体を介して接続されていてもよい)を有するように形成すると、第1の電子部品が基板の面方向において上下から挟み込むようにシールドされるため、ノイズの抑制や遮断効果が一層向上され得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子部品内蔵モジュールによれば、基板の面方向に近接配置された半導体装置等の第1の電子部品とインダクタ等の第2の電子部品との間に、所定の接地電位に接続された第1シールド層を備えるので、第1の電子部品、及びその周辺に位置する信号ラインに対して影響を及ぼす第2の電子部品からの漏れ磁束のような電磁波ノイズを抑制又は遮断することが可能となり、これにより、電子部品内蔵モジュールの回路等の誤動作を確実に防止して正確な動作を定常的に維持することが可能なる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による電子部品内蔵モジュールの好適な一実施形態であるDCDCコンバータ1の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示すDCDCコンバータ1の等価回路図である。
【図3】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図4】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図5】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図6】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図7】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図8】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図9】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図10】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図11】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図12】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図13】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図14】本実施形態の電子部品内蔵基板2を模式的に示した要部断面図である。
【図15】図14に示すI−I線に沿って第1配線層31を接地側から平面視したときの配線図である。
【図16】図14に示すII−II線に沿って第2配線層32を接地側から平面視したときの配線図である。
【図17】図14に示すIII−III線に沿って第3絶縁層43を接地側に配置されたICチップ7の出力端子71〜76の端部から平面視したときの電子部品内蔵基板2の構造図である。
【図18】図14に示すIV−IV線に沿って第3配線層33を接地側から平面視したときの配線構造図である。
【図19】図14に示すV−V線に沿って第4配線層34を接地側から平面視したときの配線構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明による電子部品内蔵モジュールの好適な一実施形態であるDCDCコンバータ1の構造を概略的に示す断面図であり、図2は、DCDCコンバータ1の等価回路図である。
【0021】
DCDCコンバータ1は、電子部品内蔵基板2と、インダクタの端子となる接合部81を介して電子部品内蔵基板2の接合領域(電極パッド)61,62に接続された例えばインダクタ8(第2の電子部品:受動部品)とから構成されるものであり、電子部品内蔵基板2には、例えばICチップ7(第1の電子部品:能動部品)が内蔵されている。なお、電子部品内蔵基板2上には、インダクタ8の他にコンデンサ(キャパシタ)等の受動部品が更に載置されていてもよく、図1においては、DCDCコンバータ1を構成する受動部品のうち、インダクタ8のみを電子部品内蔵基板2上に載置している状態を示している。
【0022】
ICチップ7は、図2の等価回路図に示されるように、入力電圧VINに対してスイッチング制御を行い所望の出力電圧VOUTを出力させる制御回路Cと、実際のスイッチング動作を担うスイッチ回路S1,S2とから構成されている。
【0023】
DCDCコンバータ1においては、最下層から絶縁層41〜45と配線層31〜34とが順次積層されており、第3絶縁層43の内部の所定位置にICチップ7が埋設されている。最下層である第1絶縁層41には、外部素子と電気的に接続するために6つの各種出力端子21〜25(例えば、BGA:Ball Grid Array、いわゆるユーザ端子)が形成されており、それらは、DCDCコンバータ1に電圧を印加する入力電圧端子21、許可/不許可信号を出力して制御回路C(図2参照)から電圧の出力自体を制御するイネーブル(EN)端子22、接地電位(グラウンド;例えば0V電圧)に接地される2つのグラウンド(GND)端子23、制御回路Cの動作モードの切り替えを行うモード(MODE)端子24、DCDCコンバータ1から任意の電圧を出力する出力電圧端子25から構成されている。
【0024】
なお、入力電圧端子21と出力電圧端子25、イネーブル端子22とモード端子24、及び、2つのグラウンド端子23,23は、それぞれ、図1の視認方向において紙面の奥行き方向に重なるように設けられており、これらのうち、断面図である同図においては、入力電圧端子21、イネーブル端子22、及び、グラウンド端子23のみを示した。
【0025】
本実施形態のICチップ7も、各配線層31〜34と電気的に接続するために最下層側に各出力端子が設けられており(内部電極、バンプ、ランド等)、DCDCコンバータ1の電子部品内蔵基板2の最下層に形成された6つの各種出力端子21〜25に接続される6つの出力端子、すなわち、入力電圧端子71、イネーブル(EN)端子72、グラウンド(GND)端子73、モード(MODE)端子74、入力電圧に対してスイッチング制御を行うスイッチ(SW)端子75に加え、インダクタ8とキャパシタC2(図2参照:上述のとおり図1には示していない)によって平滑された出力電圧を監視し出力電圧が予め設定した基準電圧内となるように制御するフィードバック(FB)端子76から構成されている。
【0026】
このように、ICチップ7は、その出力端子が電子部品内蔵基板2の最下層側に向けて配置されたいわゆるフェイスダウンの形態で設置されている。なお、6つの各種出力端子21〜25と同様に、入力電圧端子71とモード端子74、イネーブル端子72とスイッチ端子75、及び、グラウンド端子73とフィードバック端子76が、それぞれ、図1の視認方向において紙面の奥行き方向に重なるように設けられており、これらのうち、断面図である同図においては、入力電圧端子71、イネーブル端子72、及び、グラウンド端子73のみを示した。
【0027】
ここで、電子部品内蔵基板2に形成された外部出力用の各種出力端子21〜25とICチップ7の各種出力端子71〜76との対応関係を整理すると以下のとおりである。すなわち、ICチップ7のフィードバック端子76に対応する電子部品内蔵基板2の出力端子は形成されておらず、その代わりに、上述したとおり、電子部品内蔵基板2にグラウンド端子23が2つ形成されている。これは、ICチップ7のフィードバック端子76は平滑後の出力電圧を監視するためのものであるので、電子部品内蔵基板2の出力電圧端子25と接続させれば、その機能は果たされ、また、グラウンド端子23を2つ(複数)設けて、それらを接地させることで、その接地電位が一層安定することによる。
【0028】
以上のとおり、図1は、ICチップ7を略中央で破断し、ICチップ7の一方側から平面視した場合の断面図を示しており、ICチップ7における片側一列の出力端子である、入力電圧端子71、イネーブル端子72、及びグラウンド端子73配線導体を介して、それぞれ、電子部品内蔵基板2の片側一列の入力電圧端子21、イネーブル端子22、及びグラウンド端子23と電気的に接続されている構成を示す。
【0029】
より具体的には、ICチップ7の入力電圧端子71は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、ビア導体92を介して第1配線層31及び電子部品内蔵基板2に形成された入力電圧端子21に接続される。また、ICチップ7のイネーブル端子72は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、ビア導体92を介して第1配線層31及び電子部品内蔵基板2に形成されたイネーブル端子22に接続される。
【0030】
またさらに、ICチップ7のグラウンド端子73は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、ビア導体92,92を介して第1配線層31に接続される。また、グラウンド端子73に接続された第2配線層32は、ICチップ7が埋め込まれた第3絶縁層43を図示鉛直方向(電子部品内蔵基板2の平面方向に対して垂直な方向)に貫通するようにICチップ7の側端部側に形成されたビア導体93を介して第3配線層33に接続されており、この第1配線層31は、上述した経路を辿って、電子部品内蔵基板2に形成されたグラウンド端子23に接続されている。さらに、第3配線層33は、ビア導体94を介して第4配線層34にも接続されている。後述するとおり、第3配線層の33のパターンの一部が第1シールドとして機能し、また、第2配線層32のパターンの一部が第2シールド層として機能する。
同様に、
【0031】
図3乃至図13は、DCDCコンバータ1の半導体内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図(プロセスフロー図)である。
【0032】
まず、両面CCL(Copper Clad Laminate)である両面銅張ガラスエポキシをドリル穿孔し、さらに無電解めっき、及び電解めっきを施した後、めっき膜の不要部分をエッチング等により除去するといった公知の手法を用いて、パターニングされた第3配線層33及び第4配線層34が形成されたコア基板3を準備する(図3)。
【0033】
次いで、そのコア基板3の上に絶縁性の樹脂フィルムを真空圧着させて未硬化状態の第3絶縁層43を積層し、RCC(Resin Coated Copper)構造を形成する(図4)。
【0034】
そして、未硬化状態の第3絶縁層43上にICチップ7をいわゆるフェイスアップの状態で載置した後(図5)、再びその上を未硬化状態の樹脂で覆って第3絶縁層43内にICチップ7を埋め込み、第3絶縁層43を硬化させる。次に、第3絶縁層43上に銅箔を重ねて形成された第2配線層32の不要部分をエッチング等によって除去した後、第2配線層32を除去した箇所に、公知の方法でビアホール93H,95Hを穿設し、ビアホール93Hの底部に第3配線層33を露出させ、且つ、ビアホール95Hの底部にICチップ7の各出力端子71〜76(図示においては、入力電圧端子71、イネーブル端子72、及びグラウンド端子73の3つの端子のみ示す)を露出させる(図6)。
【0035】
それから、ビアホール93H,95Hが形成されたコア基板3上に銅等のめっきを施し、第2配線層32と第3配線層33、及び、第2配線層とICチップ7の出力端子71〜76を、それぞれ、ビア導体93,95により接続する(図7)。
【0036】
次に、第2配線層32をエッチング等によりパターニングして第2配線層32の配線パターンを形成させる(図8)。次いで、第2配線層32上及びビアホール93H,95Hの内部に樹脂を充填して未硬化状態の第2絶縁層42を形成し、更にその上に銅箔等を積層して第1配線層31を形成した後、熱プレス等により基板全体を押圧することによって、第2絶縁層42を硬化させると同時に、積層される各配線層31〜34及び各絶縁層42〜44、並びにICチップ7間の密着性を高める(図9)。
【0037】
その後、その状態での最外両層である第1配線層31及び第4配線層34の不要部分をエッチング等によって除去して、ビアホール92H,94Hを穿設し、それらの底部に、それぞれ、第2配線層32及び第3配線層33を露出させる(図10)。
【0038】
次いで、ビアホール92H,94Hの内部、並びに、第1配線層31上及び第4配線層上に銅めっきを施して、第1配線層31と第2配線層32、及び第3配線層33と第4配線層34を、それぞれ、ビア導体92接続する(図11)。次いで、第1配線層31及び第4配線層34をエッチング等によりパターニングして配線パターンを形成する(図12)。そして、第1配線層31及び第4配線層34の配線パターン上、及び、配線パターン以外の適宜の部分に、ソルダーレジストを塗布等してマスク層である第1絶縁層41及び第5絶縁層45を形成させることにより、電子部品内蔵基板2を得る(図13)。それから、この電子部品内蔵基板2を反転させ上下を逆さまにした状態で、その上にインダクタ8及びキャパシタ等の受動部品を載置して接続することにより、DCDCコンバータ1を完成させる。
【0039】
このように形成された電子部品内蔵基板2を配線層31〜34ごとに接地側(インダクタ8の反対側)から平面視したときの配線構造を、図14から図19を参照しながら具体的に説明する。まず、図14は、本実施形態の電子部品内蔵基板2を模式的に示した要部断面図である。また、図15は、図14に示すI−I線に沿って第1配線層31を接地側から平面視したときの配線構造図である。
【0040】
第1配線層31には、入力電圧用の配線パターン31Vi、イネーブル信号用の配線
パターン31E、グラウンド(接地)用の配線パターン31G、モード切替用の配線パターン31M、及び、出力電圧用の配線パターン31Voが形成される。また、第1配線層31には、外部素子と電気的に接続するために出力端子が形成されており、入力電圧端子21、イネーブル端子22、グラウンド端子23、モード端子24、出力電圧端子25を有している。さらに、積層される第2配線層32と接続するために、入力電圧用のビア導体92Vi、イネーブル用のビア導体92E、グラウンド用のビア導体92
G、モード切替用のビア導体92M、及び、出力電圧用のビア導体92Voが形成されており、上記各種の配線パターン31は、各種出力端子21〜25と、各種出力端子21〜25に対応する各ビア導体92とを接続している。
【0041】
またさらに、第1配線層31にはフィードバック用の配線パターン31Fが形成されており、このように形成されたフィードバック用の配線パターン31Fは、出力電圧端子25とフィードバック用のビア92Fとに接続される。このように、フィードバック用の配線パターン31をインダクタ8から最も離間した第1配線層31に形成させてインダクタ8からより遠方に配置することにより、インダクタ8の漏れ磁束によって影響を受けやすいフィードバックの信号ラインへのノイズの重畳を抑止又は遮断させて安定化させることができる。なお、フィードバック用の配線パターン31Fは、前述の如く、平滑後の出力電圧を監視するためだけに形成された配線であるため、電流が僅かに流れる程度の細い配線パターンであればよい。
【0042】
また、第1配線層31に形成されるグラウンド用の配線パターン31Gは、電子部品内蔵基板2の端部に形成され、2つのグラウンド用のビア92G、及び電子部品内蔵基板2に形成された2つのグラウンド端子23を一体に接続する。
【0043】
図16は、図14に示すII−II線に沿って第2配線層32を接地側から平面視したときの配線構造図である。第2配線層32には、入力電圧用の配線パターン32Vi、イネーブル信号用の配線パターン32E、グラウンド(接地)用の配線パターン32G、モード切替用の配線パターン32M、出力電圧用の配線パターン32Vo、及びフィードバック用の配線パターン32Fが形成される。また、第2配線層32には、上述の第1配線層31と接続するために入力電圧用のビア導体92Vi、イネーブル用のビア導体92E、グラウンド用のビア導体92G、モード切替用のビア導体92M、出力電圧用のビア導体92Vo、フィードバック用のビア導体92Fが形成され、第3配線層33と接続するために出力電圧用のビア導体93Vo、スイッチ用のビア導体93S、及びグラウンド用のビア導体93Gが形成される。
【0044】
各種配線パターン32の一方端は、その配線経路(役割)に応じて、入力電圧用のビア導体92Vi、イネーブル用のビア導体92E、グラウンド用のビア導体92G、モード切替用のビア導体92M、出力電圧用のビア導体92Vo、及び、フィードバック用のビア導体92Fとそれぞれ接続される。また、各種配線パターン32の他方端は、その役割に応じて、出力電圧用のビア導体93Vo、スイッチ用のビア導体93S、グラウンド用のビア導体93G、及びICチップ7の各種出力端子71〜76とそれぞれ接続される。
【0045】
第3配線層33と接続するために形成されたグラウンド用のビア導体93Gは、第1配線層31と接続するために形成されたグラウンド用のビア導体92GとはICチップ7の1対の短辺を跨いで反対側に配置され、且つ、先述した如く、ICチップ7の側端部に図示において鉛直に配置される。このように、グラウンド用のビア導体93GをICチップ7の側端部に設けることで、インダクタの漏れ磁束に起因するノイズが、電子部品内蔵基板2に形成される信号ラインに結合し難くなる利点がある。なお、本実施形態における出力電圧用のビア導体93Vo、及びスイッチ用のビア導体93Sも、ICチップ7の側端部に配置されている。
【0046】
ここで、グラウンド用の配線パターン32Gは、フィードバック用の配線パターン32Fを囲むように形成され、インダクタ8の実装領域を覆うように略L字状に形成されるシールド層(第2シールド層)として機能する。グラウンド用の配線パターン32Gは、他の配線パターン32Vi,32E,32F,32S,32M、及び、ビア導体92,93が形成された以外の部分に、少なくとも積層されるインダクタ8の載置領域(実装領域)の一部と重なるように、なるべく広範囲に亘り形成されることが望ましい。
【0047】
図17は、図14に示すIII−III線に沿って第3絶縁層43を接地側に配置されたICチップ7の出力端子71〜76の端部から平面視したときの電子部品内蔵基板2の構造図である。第3絶縁層43の内部には、ICチップ7が埋設され、ICチップ7の各種出力端子71〜76及び第3配線層33と接続するための各種ビア導体93が形成される。これらの各種ビア導体93は、ICチップ7の一方側の端部に形成され、第2配線層32に形成されたビア導体93の略真上に設けられる。上述の如く、ICチップ7は、インダクタ8側からより離間した側(接地側)に各種出力端子71〜76が配置されるように第3絶縁層43内部に載置されている。
【0048】
図18は、図14に示すIV−IVに沿って第3配線層33を接地側から平面視したときの配線構造図である。第3配線層33には、グラウンド用の配線パターン33G、スイッチ用の配線パターン33S、及び、出力電圧用の配線パターン33Voが形成される。
【0049】
グラウンド用の配線パターン33Gは、第3配線層33下に載置されるICチップ7を覆うように又は略覆うように形成されたシールド層(第1シールド層)であって、本実施形態では、スイッチ用の配線パターン33S、及び出力電圧用の配線パターン33Voを除く、インダクタ8の載置領域(実装領域)の略全域を覆うように形成される。このように、インダクタ8とICチップ7との間に広範囲に亘るシールド層を形成させることにより、インダクタ8の表面から発生する漏れ磁束に起因する電磁波ノイズの影響を、効果的に抑制又は遮断することが可能となる。加えて、電子部品内蔵基板2に形成される様々な信号ラインの相互干渉が防止され得る。さらに、制御回路Cにおいては、高い周波数でスイッチングの制御を行っていることから、急峻な信号の立ち上がり時や立下り時に特にノイズが発生し易いが、かかるシールド層を設けることにより、そのようなタイミングで発生し易いノイズの発生をも防止することができる。
【0050】
本実施形態におけるグラウンド用の配線パターン33Gには、複数の穴部330が形成されている。複数の穴部330を形成することによって、製造手順において、電子部品内蔵基板2を熱プレス等によって押圧する際に第3絶縁層43と第3配線層33との間に混入するガスが排除され、グラウンド用の配線パターン33Gが平滑かつ均一に形成され得る。
【0051】
図19は、図14に示すV−V線に沿って第4配線層34を接地側から平面視したときの配線構造図である。第4配線層34は、スイッチ用の配線パターン34Sと出力電圧用の配線パターン34Voとから構成され、それぞれの配線パターン34S,34Voはスイッチ用のビア導体94Sと出力電圧用のビア導体94Voのそれぞれに接続される。それらのビア導体94S,94Voは、第3配線層33に形成されたビア導体94S,94Voの略直上に形成されている。それぞれの配線パターン34S,34Voは、電子部品内蔵基板2の中央部に形成されるそれぞれのビア導体94S,94Voから電子部品内蔵基板2の片側端部まで延在しており、インダクタ8が載置される領域の端部よりも外側に配置されるように形成されている。
【0052】
そして、それぞれの配線パターン34S,34Vo上に電極パッド61,62が設置される。各電極パッド61,62は、それぞれの配線パターン34S,34Voの領域内であって、インダクタ8が載置される領域の端部よりも外側に配置されるように形成されている。このように電極パッド61,62は電子部品内蔵基板2の両端部に形成することができるので、インダクタ8の載置領域内にDCDCコンバータ1を実装することができる。
【0053】
本実施形態によれば、第3配線層33に所定の接地電位と接続されるグラウンド用の配線パターン33Gを形成したことで、インダクタ8の近くに配置されるICチップ7の安定な動作を確保することができ、DCDCコンバータ1自体の誤動作を防止することができる。また、インダクタ8からの漏れ磁束がICチップ7の周辺に位置する信号ラインと電磁結合してしまうことも阻止されるため、純度の高い信号伝送を行うことが可能となる。
【0054】
さらに、第2配線層32にも所定の接地電位と接続されるグラウンド用の配線パターン32Gを形成したことにより、ICチップ7が基板の上下から挟み込まれるようにシールドされるため、上述したノイズ抑止効果が一層高められる利点がある。加えて、第2配線層32より下層に形成される信号ライン、特にフィードバック用の信号ラインの安定化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したとおり、本発明の電子部品内蔵モジュールは、インダクタ等の第2の電子部品の近傍に配置されるICチップ等の第1の電子部品の安定な動作を確保することができ、誤動作を確実に防止することができるとともに、純度の高い信号伝送を行うことができるので、電子部品を内蔵する機器、装置、システム、各種デバイス等、特に小型化及び高性能化が要求されるもの、並びにそれらの生産、製造等に広く且つ有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…DCDCコンバータ(電子部品内蔵モジュール)、2…電子部品内蔵基板、3…コア基板、C…制御回路、S1,S2…スイッチ回路、3…コア基板、7…ICチップ(第1の電子部品)、8…インダクタ(第2の電子部品)、21〜25…電子部品内蔵基板の各種出力端子、31〜34…配線層、41〜45…絶縁層、61,62…電極パッド、71〜76…ICチップの各種出力端子、81…接合部、92〜95…ビア導体、92H〜95H…ビアホール、330…穴部、VIN…入力電圧、VOUT…出力電圧。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の内部に電子部品が埋め込まれた(内蔵された)電子部品内蔵モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に用いられるICチップ(ベアチップ:ダイ(Die))等の半導体装置といった能動部品や、コンデンサ(キャパシタ)、インダクタ、サーミスタ、抵抗等の受動部品等の電子部品が実装されたモジュール化が進んでおり、かかるモジュールに対する小型化や薄型化がますます熱望されている。
【0003】
かかる要求に応えるべく、例えば、特許文献1には、能動部品や受動部品が実装されたモジュールとして、電子部品が載置された基板上に電子部品より高いスタッド出力端子を設け、このスタッド出力端子上にマイクロインダクタを設置することにより、電子部品とマイクロインダクタとを、基板面に対して上下方向に載置するように配設してなるマイクロコンバータが提案されており、例えば電子機器の電源回路として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−63676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構造の電源回路としてのマイクロコンバータでは、その電源回路を構成する電子部品の低電圧化、高電流化及び高周波数化も進んできており、また、構造的にも、モジュールの更なる小型化に伴う配置の制約や機械的強度を確保する必要が生じてきており、その結果、上記特許文献1に開示されたようなマイクロコンバータの構造では、インダクタからの漏れ磁束(通常、インダクタンスを調整するためにフェライト間にギャップ(間隔)を一定に保持するギャップシートが挟持されているため、そこから磁束が外部へ漏れ出す)が、高周波ノイズ成分となって電源回路に影響を与える傾向にある。このような漏れ磁束は、インダクタの近傍に配置される電子部品の不安定な動作を誘発し、延いては電源回路やその制御回路の誤動作を引き起こす原因となり得る。
【0006】
例えば、電圧変換を行う電源回路では、一般に、入力電圧に対する出力電圧(スイッチングされた高周波電圧を平滑化した後の電圧)を制御回路にフィードバックすることにより、出力電圧を一定に維持するような回路構成が採られているが、そのフィードバック(FB)信号は、上述したインダクタからの漏れ磁束の影響を非常に受け易い傾向にある。そのため、フィードバック信号の乱れによって、電源回路の基準電圧を一定に保つことが困難となり、所望の正確な電圧変換を行い難くなる(すなわち、電源回路の誤動作を引き起こす)傾向にある。より一般化して言えば、インダクタからの漏れ磁束が、電子部品の周辺に形成された信号ラインと電磁結合することにより、その信号の純度の劣化を誘引する大きな要因の一つとなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、電子部品やその周辺に位置する信号ラインに対して影響を及ぼすノイズを十分に抑制する又は遮断することができ、これにより、電子回路の誤動作を確実に防止して正確な動作を安定に維持することが可能な電子部品内蔵モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による電子部品内蔵モジュールは、第1の電子部品が内蔵された基板(電子部品内蔵基板)と、この基板上に載置された第2の電子部品と、基板の内部において第1の電子部品と第2の電子部品との間に設けられており、且つ、所定の接地電位に接続された第1シールド層とを備えるものである。
【0009】
なお、本明細書において、「第1の電子部品」とは、その種類は特に制限されず、例えば、通常の電子機器に用いられるICチップ等の半導体装置といった能動部品、より具体的には、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)のように動作周波数が非常に高いデジタルIC、又は、高周波増幅器やアンテナスイッチ、高周波発振回路といったアナログIC等が挙げられる。また、「電子部品内蔵基板」に搭載されて「電子部品内蔵モジュール」の一部を構成する「第2の電子部品」の種類も特に制限されず、本発明では、「第2の電子部品」が上述したインダクタ等の電磁波(ノイズ)の発生源である受動部品であり、特に電子部品内蔵基板に直接接続することで高速でスイッチングされるものの場合に特に有効である。
【0010】
上記構成においては、第1の電子部品が内蔵された基板上に第2の電子部品が載置されるため、自ずと、その基板の面方向における上下位置に第1の電子部品と第2の電子部品とが互いに近接した状態で(第2の電子部品の実装範囲内に)配置されることとなる。このとき、第1の電子部品と第2の電子部品との間には、所定の接地電位(例えば、0V電圧)に接続された第1シールド層が設けられていることにより、第2の電子部品(例えば、インダクタ)から磁束が漏出したとしても、第1シールド層が電磁波シールドとして機能するので、第1の電子部品は、かかる第2の電子部品からの漏れ磁束に起因するノイズの影響を受けることなく、安定な動作が確保される。
【0011】
また、第1シールド層は、第1の電子部品が内蔵された基板内に形成され得る様々な信号ラインに対しても、電磁波シールドとして機能し得るので、第2の電子部品からの漏れ磁束のような電磁波ノイズと各種信号ラインを伝送される信号との相互干渉が防止され得る。そして、このように、第2の電子部品からの漏れ磁束のようなノイズとなり得る電磁波から、第1の電子部品や各種信号ラインを保護することができるので、例えば、電子部品内蔵基板(延いては電子部品内蔵モジュール)が多層且つ複雑な配線構造を有している場合でも、その複雑な信号経路を辿る信号伝送を安定して行い得る。
【0012】
また、第1シールド層は、接地電位に接続されたグラウンド端子にビア導体を介して接続され、そのビア導体は、第1の電子部品の側端部側に配置され、且つ、第1シールド層からグラウンド端子まで延設されてもよい。
【0013】
このようにすれば、第1シールド層とグラウンド端子が、第1の電子部品の側端部側を通って延設されるビア導体で接続されるので、第1の電子部品(の出力端子)を第2の電子部品から離間させることができ、しかも例えば、第1の電子部品の出力端子が第2の電子部品とは反対側を向くように、第1の電子部品を配置し易くなる。よって、第1の電子部品の周辺に位置し得る信号ラインが受動部品から十分に遠ざけられるので、第2の電子部品からの漏れ磁束に起因するノイズがその信号ラインに結合することに起因するノイズを一層抑制且つ遮断し得る。
【0014】
この場合、信号ラインに対するノイズ抑制や遮断を一層強化するためには、ビア導体が基板の厚み方向に沿って(すなわち、基板の面方向に対して垂直方向に)直線状に延設されることが好ましく、さらにビア導体が連続して形成されていることがより好ましい。このようにすれば、ビア導体の一方端(グラウンド端子との接続端)を第2の電子部品及び第1シールド層からより一層離間させることができ、また、第1シールド層とビア導体との間で浮遊容量が生じることを抑止し易くなるので、第1の電子部品への漏れ磁束等の電磁波ノイズの影響をより低減することができると考えられる。
【0015】
また、より具体的には、ノイズ対策の一環として第1シールド層による電磁波シールド機能をより高めるために、第1シールド層が、基板の面方向における第1の電子部品の実装領域を覆うように形成されるものであると好適である。換言すれば、第1シールド層が、基板の面方向において第1の電子部品の実装領域まで延在していても好ましいと言える。
【0016】
さらに第1シールド層のみならず、第1シールド層より下層(第1の電子部品を挟んで第2の電子部品及び第1シールド層と反対側)に形成されており、且つ、所定の接地電位に接続された第2シールド層(接地電位に接続されたグラウンド端子にビア導体を介して接続されていてもよい)を有するように形成すると、第1の電子部品が基板の面方向において上下から挟み込むようにシールドされるため、ノイズの抑制や遮断効果が一層向上され得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電子部品内蔵モジュールによれば、基板の面方向に近接配置された半導体装置等の第1の電子部品とインダクタ等の第2の電子部品との間に、所定の接地電位に接続された第1シールド層を備えるので、第1の電子部品、及びその周辺に位置する信号ラインに対して影響を及ぼす第2の電子部品からの漏れ磁束のような電磁波ノイズを抑制又は遮断することが可能となり、これにより、電子部品内蔵モジュールの回路等の誤動作を確実に防止して正確な動作を定常的に維持することが可能なる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による電子部品内蔵モジュールの好適な一実施形態であるDCDCコンバータ1の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示すDCDCコンバータ1の等価回路図である。
【図3】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図4】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図5】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図6】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図7】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図8】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図9】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図10】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図11】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図12】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図13】電子部品内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図である。
【図14】本実施形態の電子部品内蔵基板2を模式的に示した要部断面図である。
【図15】図14に示すI−I線に沿って第1配線層31を接地側から平面視したときの配線図である。
【図16】図14に示すII−II線に沿って第2配線層32を接地側から平面視したときの配線図である。
【図17】図14に示すIII−III線に沿って第3絶縁層43を接地側に配置されたICチップ7の出力端子71〜76の端部から平面視したときの電子部品内蔵基板2の構造図である。
【図18】図14に示すIV−IV線に沿って第3配線層33を接地側から平面視したときの配線構造図である。
【図19】図14に示すV−V線に沿って第4配線層34を接地側から平面視したときの配線構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明による電子部品内蔵モジュールの好適な一実施形態であるDCDCコンバータ1の構造を概略的に示す断面図であり、図2は、DCDCコンバータ1の等価回路図である。
【0021】
DCDCコンバータ1は、電子部品内蔵基板2と、インダクタの端子となる接合部81を介して電子部品内蔵基板2の接合領域(電極パッド)61,62に接続された例えばインダクタ8(第2の電子部品:受動部品)とから構成されるものであり、電子部品内蔵基板2には、例えばICチップ7(第1の電子部品:能動部品)が内蔵されている。なお、電子部品内蔵基板2上には、インダクタ8の他にコンデンサ(キャパシタ)等の受動部品が更に載置されていてもよく、図1においては、DCDCコンバータ1を構成する受動部品のうち、インダクタ8のみを電子部品内蔵基板2上に載置している状態を示している。
【0022】
ICチップ7は、図2の等価回路図に示されるように、入力電圧VINに対してスイッチング制御を行い所望の出力電圧VOUTを出力させる制御回路Cと、実際のスイッチング動作を担うスイッチ回路S1,S2とから構成されている。
【0023】
DCDCコンバータ1においては、最下層から絶縁層41〜45と配線層31〜34とが順次積層されており、第3絶縁層43の内部の所定位置にICチップ7が埋設されている。最下層である第1絶縁層41には、外部素子と電気的に接続するために6つの各種出力端子21〜25(例えば、BGA:Ball Grid Array、いわゆるユーザ端子)が形成されており、それらは、DCDCコンバータ1に電圧を印加する入力電圧端子21、許可/不許可信号を出力して制御回路C(図2参照)から電圧の出力自体を制御するイネーブル(EN)端子22、接地電位(グラウンド;例えば0V電圧)に接地される2つのグラウンド(GND)端子23、制御回路Cの動作モードの切り替えを行うモード(MODE)端子24、DCDCコンバータ1から任意の電圧を出力する出力電圧端子25から構成されている。
【0024】
なお、入力電圧端子21と出力電圧端子25、イネーブル端子22とモード端子24、及び、2つのグラウンド端子23,23は、それぞれ、図1の視認方向において紙面の奥行き方向に重なるように設けられており、これらのうち、断面図である同図においては、入力電圧端子21、イネーブル端子22、及び、グラウンド端子23のみを示した。
【0025】
本実施形態のICチップ7も、各配線層31〜34と電気的に接続するために最下層側に各出力端子が設けられており(内部電極、バンプ、ランド等)、DCDCコンバータ1の電子部品内蔵基板2の最下層に形成された6つの各種出力端子21〜25に接続される6つの出力端子、すなわち、入力電圧端子71、イネーブル(EN)端子72、グラウンド(GND)端子73、モード(MODE)端子74、入力電圧に対してスイッチング制御を行うスイッチ(SW)端子75に加え、インダクタ8とキャパシタC2(図2参照:上述のとおり図1には示していない)によって平滑された出力電圧を監視し出力電圧が予め設定した基準電圧内となるように制御するフィードバック(FB)端子76から構成されている。
【0026】
このように、ICチップ7は、その出力端子が電子部品内蔵基板2の最下層側に向けて配置されたいわゆるフェイスダウンの形態で設置されている。なお、6つの各種出力端子21〜25と同様に、入力電圧端子71とモード端子74、イネーブル端子72とスイッチ端子75、及び、グラウンド端子73とフィードバック端子76が、それぞれ、図1の視認方向において紙面の奥行き方向に重なるように設けられており、これらのうち、断面図である同図においては、入力電圧端子71、イネーブル端子72、及び、グラウンド端子73のみを示した。
【0027】
ここで、電子部品内蔵基板2に形成された外部出力用の各種出力端子21〜25とICチップ7の各種出力端子71〜76との対応関係を整理すると以下のとおりである。すなわち、ICチップ7のフィードバック端子76に対応する電子部品内蔵基板2の出力端子は形成されておらず、その代わりに、上述したとおり、電子部品内蔵基板2にグラウンド端子23が2つ形成されている。これは、ICチップ7のフィードバック端子76は平滑後の出力電圧を監視するためのものであるので、電子部品内蔵基板2の出力電圧端子25と接続させれば、その機能は果たされ、また、グラウンド端子23を2つ(複数)設けて、それらを接地させることで、その接地電位が一層安定することによる。
【0028】
以上のとおり、図1は、ICチップ7を略中央で破断し、ICチップ7の一方側から平面視した場合の断面図を示しており、ICチップ7における片側一列の出力端子である、入力電圧端子71、イネーブル端子72、及びグラウンド端子73配線導体を介して、それぞれ、電子部品内蔵基板2の片側一列の入力電圧端子21、イネーブル端子22、及びグラウンド端子23と電気的に接続されている構成を示す。
【0029】
より具体的には、ICチップ7の入力電圧端子71は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、ビア導体92を介して第1配線層31及び電子部品内蔵基板2に形成された入力電圧端子21に接続される。また、ICチップ7のイネーブル端子72は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、ビア導体92を介して第1配線層31及び電子部品内蔵基板2に形成されたイネーブル端子22に接続される。
【0030】
またさらに、ICチップ7のグラウンド端子73は、ビア導体95を介して第2配線層32に接続され、さらに、ビア導体92,92を介して第1配線層31に接続される。また、グラウンド端子73に接続された第2配線層32は、ICチップ7が埋め込まれた第3絶縁層43を図示鉛直方向(電子部品内蔵基板2の平面方向に対して垂直な方向)に貫通するようにICチップ7の側端部側に形成されたビア導体93を介して第3配線層33に接続されており、この第1配線層31は、上述した経路を辿って、電子部品内蔵基板2に形成されたグラウンド端子23に接続されている。さらに、第3配線層33は、ビア導体94を介して第4配線層34にも接続されている。後述するとおり、第3配線層の33のパターンの一部が第1シールドとして機能し、また、第2配線層32のパターンの一部が第2シールド層として機能する。
同様に、
【0031】
図3乃至図13は、DCDCコンバータ1の半導体内蔵基板2を製造する手順の一例を示す工程図(プロセスフロー図)である。
【0032】
まず、両面CCL(Copper Clad Laminate)である両面銅張ガラスエポキシをドリル穿孔し、さらに無電解めっき、及び電解めっきを施した後、めっき膜の不要部分をエッチング等により除去するといった公知の手法を用いて、パターニングされた第3配線層33及び第4配線層34が形成されたコア基板3を準備する(図3)。
【0033】
次いで、そのコア基板3の上に絶縁性の樹脂フィルムを真空圧着させて未硬化状態の第3絶縁層43を積層し、RCC(Resin Coated Copper)構造を形成する(図4)。
【0034】
そして、未硬化状態の第3絶縁層43上にICチップ7をいわゆるフェイスアップの状態で載置した後(図5)、再びその上を未硬化状態の樹脂で覆って第3絶縁層43内にICチップ7を埋め込み、第3絶縁層43を硬化させる。次に、第3絶縁層43上に銅箔を重ねて形成された第2配線層32の不要部分をエッチング等によって除去した後、第2配線層32を除去した箇所に、公知の方法でビアホール93H,95Hを穿設し、ビアホール93Hの底部に第3配線層33を露出させ、且つ、ビアホール95Hの底部にICチップ7の各出力端子71〜76(図示においては、入力電圧端子71、イネーブル端子72、及びグラウンド端子73の3つの端子のみ示す)を露出させる(図6)。
【0035】
それから、ビアホール93H,95Hが形成されたコア基板3上に銅等のめっきを施し、第2配線層32と第3配線層33、及び、第2配線層とICチップ7の出力端子71〜76を、それぞれ、ビア導体93,95により接続する(図7)。
【0036】
次に、第2配線層32をエッチング等によりパターニングして第2配線層32の配線パターンを形成させる(図8)。次いで、第2配線層32上及びビアホール93H,95Hの内部に樹脂を充填して未硬化状態の第2絶縁層42を形成し、更にその上に銅箔等を積層して第1配線層31を形成した後、熱プレス等により基板全体を押圧することによって、第2絶縁層42を硬化させると同時に、積層される各配線層31〜34及び各絶縁層42〜44、並びにICチップ7間の密着性を高める(図9)。
【0037】
その後、その状態での最外両層である第1配線層31及び第4配線層34の不要部分をエッチング等によって除去して、ビアホール92H,94Hを穿設し、それらの底部に、それぞれ、第2配線層32及び第3配線層33を露出させる(図10)。
【0038】
次いで、ビアホール92H,94Hの内部、並びに、第1配線層31上及び第4配線層上に銅めっきを施して、第1配線層31と第2配線層32、及び第3配線層33と第4配線層34を、それぞれ、ビア導体92接続する(図11)。次いで、第1配線層31及び第4配線層34をエッチング等によりパターニングして配線パターンを形成する(図12)。そして、第1配線層31及び第4配線層34の配線パターン上、及び、配線パターン以外の適宜の部分に、ソルダーレジストを塗布等してマスク層である第1絶縁層41及び第5絶縁層45を形成させることにより、電子部品内蔵基板2を得る(図13)。それから、この電子部品内蔵基板2を反転させ上下を逆さまにした状態で、その上にインダクタ8及びキャパシタ等の受動部品を載置して接続することにより、DCDCコンバータ1を完成させる。
【0039】
このように形成された電子部品内蔵基板2を配線層31〜34ごとに接地側(インダクタ8の反対側)から平面視したときの配線構造を、図14から図19を参照しながら具体的に説明する。まず、図14は、本実施形態の電子部品内蔵基板2を模式的に示した要部断面図である。また、図15は、図14に示すI−I線に沿って第1配線層31を接地側から平面視したときの配線構造図である。
【0040】
第1配線層31には、入力電圧用の配線パターン31Vi、イネーブル信号用の配線
パターン31E、グラウンド(接地)用の配線パターン31G、モード切替用の配線パターン31M、及び、出力電圧用の配線パターン31Voが形成される。また、第1配線層31には、外部素子と電気的に接続するために出力端子が形成されており、入力電圧端子21、イネーブル端子22、グラウンド端子23、モード端子24、出力電圧端子25を有している。さらに、積層される第2配線層32と接続するために、入力電圧用のビア導体92Vi、イネーブル用のビア導体92E、グラウンド用のビア導体92
G、モード切替用のビア導体92M、及び、出力電圧用のビア導体92Voが形成されており、上記各種の配線パターン31は、各種出力端子21〜25と、各種出力端子21〜25に対応する各ビア導体92とを接続している。
【0041】
またさらに、第1配線層31にはフィードバック用の配線パターン31Fが形成されており、このように形成されたフィードバック用の配線パターン31Fは、出力電圧端子25とフィードバック用のビア92Fとに接続される。このように、フィードバック用の配線パターン31をインダクタ8から最も離間した第1配線層31に形成させてインダクタ8からより遠方に配置することにより、インダクタ8の漏れ磁束によって影響を受けやすいフィードバックの信号ラインへのノイズの重畳を抑止又は遮断させて安定化させることができる。なお、フィードバック用の配線パターン31Fは、前述の如く、平滑後の出力電圧を監視するためだけに形成された配線であるため、電流が僅かに流れる程度の細い配線パターンであればよい。
【0042】
また、第1配線層31に形成されるグラウンド用の配線パターン31Gは、電子部品内蔵基板2の端部に形成され、2つのグラウンド用のビア92G、及び電子部品内蔵基板2に形成された2つのグラウンド端子23を一体に接続する。
【0043】
図16は、図14に示すII−II線に沿って第2配線層32を接地側から平面視したときの配線構造図である。第2配線層32には、入力電圧用の配線パターン32Vi、イネーブル信号用の配線パターン32E、グラウンド(接地)用の配線パターン32G、モード切替用の配線パターン32M、出力電圧用の配線パターン32Vo、及びフィードバック用の配線パターン32Fが形成される。また、第2配線層32には、上述の第1配線層31と接続するために入力電圧用のビア導体92Vi、イネーブル用のビア導体92E、グラウンド用のビア導体92G、モード切替用のビア導体92M、出力電圧用のビア導体92Vo、フィードバック用のビア導体92Fが形成され、第3配線層33と接続するために出力電圧用のビア導体93Vo、スイッチ用のビア導体93S、及びグラウンド用のビア導体93Gが形成される。
【0044】
各種配線パターン32の一方端は、その配線経路(役割)に応じて、入力電圧用のビア導体92Vi、イネーブル用のビア導体92E、グラウンド用のビア導体92G、モード切替用のビア導体92M、出力電圧用のビア導体92Vo、及び、フィードバック用のビア導体92Fとそれぞれ接続される。また、各種配線パターン32の他方端は、その役割に応じて、出力電圧用のビア導体93Vo、スイッチ用のビア導体93S、グラウンド用のビア導体93G、及びICチップ7の各種出力端子71〜76とそれぞれ接続される。
【0045】
第3配線層33と接続するために形成されたグラウンド用のビア導体93Gは、第1配線層31と接続するために形成されたグラウンド用のビア導体92GとはICチップ7の1対の短辺を跨いで反対側に配置され、且つ、先述した如く、ICチップ7の側端部に図示において鉛直に配置される。このように、グラウンド用のビア導体93GをICチップ7の側端部に設けることで、インダクタの漏れ磁束に起因するノイズが、電子部品内蔵基板2に形成される信号ラインに結合し難くなる利点がある。なお、本実施形態における出力電圧用のビア導体93Vo、及びスイッチ用のビア導体93Sも、ICチップ7の側端部に配置されている。
【0046】
ここで、グラウンド用の配線パターン32Gは、フィードバック用の配線パターン32Fを囲むように形成され、インダクタ8の実装領域を覆うように略L字状に形成されるシールド層(第2シールド層)として機能する。グラウンド用の配線パターン32Gは、他の配線パターン32Vi,32E,32F,32S,32M、及び、ビア導体92,93が形成された以外の部分に、少なくとも積層されるインダクタ8の載置領域(実装領域)の一部と重なるように、なるべく広範囲に亘り形成されることが望ましい。
【0047】
図17は、図14に示すIII−III線に沿って第3絶縁層43を接地側に配置されたICチップ7の出力端子71〜76の端部から平面視したときの電子部品内蔵基板2の構造図である。第3絶縁層43の内部には、ICチップ7が埋設され、ICチップ7の各種出力端子71〜76及び第3配線層33と接続するための各種ビア導体93が形成される。これらの各種ビア導体93は、ICチップ7の一方側の端部に形成され、第2配線層32に形成されたビア導体93の略真上に設けられる。上述の如く、ICチップ7は、インダクタ8側からより離間した側(接地側)に各種出力端子71〜76が配置されるように第3絶縁層43内部に載置されている。
【0048】
図18は、図14に示すIV−IVに沿って第3配線層33を接地側から平面視したときの配線構造図である。第3配線層33には、グラウンド用の配線パターン33G、スイッチ用の配線パターン33S、及び、出力電圧用の配線パターン33Voが形成される。
【0049】
グラウンド用の配線パターン33Gは、第3配線層33下に載置されるICチップ7を覆うように又は略覆うように形成されたシールド層(第1シールド層)であって、本実施形態では、スイッチ用の配線パターン33S、及び出力電圧用の配線パターン33Voを除く、インダクタ8の載置領域(実装領域)の略全域を覆うように形成される。このように、インダクタ8とICチップ7との間に広範囲に亘るシールド層を形成させることにより、インダクタ8の表面から発生する漏れ磁束に起因する電磁波ノイズの影響を、効果的に抑制又は遮断することが可能となる。加えて、電子部品内蔵基板2に形成される様々な信号ラインの相互干渉が防止され得る。さらに、制御回路Cにおいては、高い周波数でスイッチングの制御を行っていることから、急峻な信号の立ち上がり時や立下り時に特にノイズが発生し易いが、かかるシールド層を設けることにより、そのようなタイミングで発生し易いノイズの発生をも防止することができる。
【0050】
本実施形態におけるグラウンド用の配線パターン33Gには、複数の穴部330が形成されている。複数の穴部330を形成することによって、製造手順において、電子部品内蔵基板2を熱プレス等によって押圧する際に第3絶縁層43と第3配線層33との間に混入するガスが排除され、グラウンド用の配線パターン33Gが平滑かつ均一に形成され得る。
【0051】
図19は、図14に示すV−V線に沿って第4配線層34を接地側から平面視したときの配線構造図である。第4配線層34は、スイッチ用の配線パターン34Sと出力電圧用の配線パターン34Voとから構成され、それぞれの配線パターン34S,34Voはスイッチ用のビア導体94Sと出力電圧用のビア導体94Voのそれぞれに接続される。それらのビア導体94S,94Voは、第3配線層33に形成されたビア導体94S,94Voの略直上に形成されている。それぞれの配線パターン34S,34Voは、電子部品内蔵基板2の中央部に形成されるそれぞれのビア導体94S,94Voから電子部品内蔵基板2の片側端部まで延在しており、インダクタ8が載置される領域の端部よりも外側に配置されるように形成されている。
【0052】
そして、それぞれの配線パターン34S,34Vo上に電極パッド61,62が設置される。各電極パッド61,62は、それぞれの配線パターン34S,34Voの領域内であって、インダクタ8が載置される領域の端部よりも外側に配置されるように形成されている。このように電極パッド61,62は電子部品内蔵基板2の両端部に形成することができるので、インダクタ8の載置領域内にDCDCコンバータ1を実装することができる。
【0053】
本実施形態によれば、第3配線層33に所定の接地電位と接続されるグラウンド用の配線パターン33Gを形成したことで、インダクタ8の近くに配置されるICチップ7の安定な動作を確保することができ、DCDCコンバータ1自体の誤動作を防止することができる。また、インダクタ8からの漏れ磁束がICチップ7の周辺に位置する信号ラインと電磁結合してしまうことも阻止されるため、純度の高い信号伝送を行うことが可能となる。
【0054】
さらに、第2配線層32にも所定の接地電位と接続されるグラウンド用の配線パターン32Gを形成したことにより、ICチップ7が基板の上下から挟み込まれるようにシールドされるため、上述したノイズ抑止効果が一層高められる利点がある。加えて、第2配線層32より下層に形成される信号ライン、特にフィードバック用の信号ラインの安定化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したとおり、本発明の電子部品内蔵モジュールは、インダクタ等の第2の電子部品の近傍に配置されるICチップ等の第1の電子部品の安定な動作を確保することができ、誤動作を確実に防止することができるとともに、純度の高い信号伝送を行うことができるので、電子部品を内蔵する機器、装置、システム、各種デバイス等、特に小型化及び高性能化が要求されるもの、並びにそれらの生産、製造等に広く且つ有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…DCDCコンバータ(電子部品内蔵モジュール)、2…電子部品内蔵基板、3…コア基板、C…制御回路、S1,S2…スイッチ回路、3…コア基板、7…ICチップ(第1の電子部品)、8…インダクタ(第2の電子部品)、21〜25…電子部品内蔵基板の各種出力端子、31〜34…配線層、41〜45…絶縁層、61,62…電極パッド、71〜76…ICチップの各種出力端子、81…接合部、92〜95…ビア導体、92H〜95H…ビアホール、330…穴部、VIN…入力電圧、VOUT…出力電圧。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電子部品が内蔵された基板と、
前記基板上に載置された第2の電子部品と、
前記基板の内部において前記第1の電子部品と前記第2の電子部品との間に設けられており、且つ、所定の接地電位に接続された第1シールド層と、
を有する電子部品内蔵モジュール。
【請求項2】
前記第1シールド層は、前記接地電位に接続されたグラウンド端子にビア導体を介して接続され、
前記ビア導体は、前記第1の電子部品の側端部側に配置され、且つ、前記第1シールド層から前記グラウンド端子まで延設される、
請求項1記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項3】
前記ビア導体は、前記基板の厚み方向に沿って直線状に延設される、
請求項2記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項4】
前記第1シールド層は、前記基板の面方向における前記第1の電子部品の実装領域を覆うように形成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項5】
前記第1の電子部品は、該第1の電子部品の出力端子が、前記第2の電子部品とは反対側を向くように配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項6】
前記基板の内部において前記第1シールド層よりも下層に形成されており、且つ、前記接地電位に接続された第2シールド層を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項1】
第1の電子部品が内蔵された基板と、
前記基板上に載置された第2の電子部品と、
前記基板の内部において前記第1の電子部品と前記第2の電子部品との間に設けられており、且つ、所定の接地電位に接続された第1シールド層と、
を有する電子部品内蔵モジュール。
【請求項2】
前記第1シールド層は、前記接地電位に接続されたグラウンド端子にビア導体を介して接続され、
前記ビア導体は、前記第1の電子部品の側端部側に配置され、且つ、前記第1シールド層から前記グラウンド端子まで延設される、
請求項1記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項3】
前記ビア導体は、前記基板の厚み方向に沿って直線状に延設される、
請求項2記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項4】
前記第1シールド層は、前記基板の面方向における前記第1の電子部品の実装領域を覆うように形成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項5】
前記第1の電子部品は、該第1の電子部品の出力端子が、前記第2の電子部品とは反対側を向くように配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項6】
前記基板の内部において前記第1シールド層よりも下層に形成されており、且つ、前記接地電位に接続された第2シールド層を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−238925(P2010−238925A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85483(P2009−85483)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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