説明

電子部品収納用パッケージおよび電子装置

【課題】 電気信号の高周波化が進んでも、高周波信号の入出力時における反射損失を小さくすることにより、電子部品の高周波での作動性を良好なものとすること。
【解決手段】 上面に電子部品7が搭載される基体1と、該基体1の上面の載置部1aに載置された載置用基台5と、上面に信号線路導体4aが形成され、下面に接地導体4bが形成されているとともに載置用基台5の上面に載置された回路基板4と、載置部1aを囲繞するように基体1の上面に取着されているとともに側部に貫通孔2aが形成された枠体2と、貫通孔2aに嵌着されて回路基板4に電気的に接続された同軸コネクタ3とを具備した電子部品収納用パッケージにおいて、枠体2の同軸コネクタ3の直下部と載置用基台5の側面側の上面とが導電性接合材6を介して接合されている。インピーダンスの不整合が小さくなり、高周波信号の反射損失が小さく伝送効率が良好なものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野やマイクロ波通信およびミリ波通信等の分野で用いられる、高い周波数帯域で作動する各種電子部品を収納する電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光通信やマイクロ波通信またはミリ波通信等で使用される、高い周波数帯域で作動する各種電子部品を収納する電子部品収納用パッケージを用いた電子装置を図9に示す。
【0003】
図9に示す例のように、従来の電子装置における電子部品収納用パッケージは、上面に電子レーザ(LD),フォトダイオード(PD)等の電子部品17が載置される基体11を有し、この基体11は、上面に信号線路導体14aが形成され下面に接地導体14bが形成された回路基板14が載置用基台15を介して載置される載置部11aを有していた。また、載置部11aを囲繞するようにして基体11の上面に取着され、側部に貫通孔12aが形成された枠体12を有していた。そして、枠体12の貫通孔12aに同軸コネクタ13が嵌着され、この同軸コネクタ13と回路基板14とが、電気的に接続されたものであった。さらに、基体11に電子部品17を実装して、電子部品17と回路基板14の信号線路導体14aとをボンディングワイヤ19で電気的に接続し、枠体12の上面に回路基板14および電子部品17を覆うように蓋体18を接合して気密封止することによって、電子装置としていた(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−115630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の電子部品収納用パッケージにおいて、信号線は、同軸コネクタ13の中心導体13cから回路基板14の信号線路導体14aを伝搬するという経路を辿るのに対して、接地電位(グランド)は、図9の破線矢印のように、同軸コネクタ13の下面の外周導体13aから、枠体12の内周側面および基体11の表面ならびに載置用基台15の側面を介して、回路基板14の下面に形成された接地導体14bに伝わるという経路を辿る。このように、同軸コネクタ13から回路基板104までの接地電位の伝搬経路が長くなるため、この接
地電位の経路長と、同軸コネクタの中心導体から回路基板の信号線路導体を伝搬する信号線の経路長との長さに大きな差が生じる。その結果、インピーダンスの不整合が発生し、高周波信号の入出力時における反射損失が大きくなり高周波信号の伝送性が劣化し易くなるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、同軸コネクタから回路基板までの接地電位の伝搬経路を短くしてインピーダンスの不整合を小さくし、高周波信号の反射損失を小さくすることにより、高周波信号を効率よく伝送させることができる電子部品収納用パッケージを提供することにある。また、電子部品収納用パッケージに実装された電子部品の、高周波での作動性が良好な電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品収納用パッケージは、上面に電子部品が搭載される基体と、該基体の上面の載置部に載置された載置用基台と、上面に信号線路導体が形成され、下面に接地導
体が形成されているとともに前記載置用基台の上面に載置された回路基板と、前記載置部を囲繞するように前記基体の上面に取着されているとともに側部に貫通孔が形成された枠体と、前記貫通孔に嵌着されて前記回路基板に電気的に接続された同軸コネクタとを具備した電子部品収納用パッケージにおいて、前記枠体の前記同軸コネクタの直下部と前記載置用基台の側面側の上面とが導電性接合材を介して接合されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の電子部品収納用パッケージは、上記構成において、前記回路基板は、前記同軸コネクタ側の側面に側面導体が形成され、前記枠体の内周側面と前記回路基板の前記側面導体とが前記導電性接合材を介して接合されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の電子装置は、上記本発明の電子部品収納用パッケージと、該電子部品収納用パッケージの前記基体に搭載されているとともに前記回路基板の前記信号線路導体に電気的に接続された電子部品と、前記枠体の上面に接合された蓋体とを具備していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子部品収納用パッケージによれば、上面に電子部品が搭載される基体と、該基体の上面の載置部に載置された載置用基台と、上面に信号線路導体が形成され、下面に接地導体が形成されているとともに載置用基台の上面に載置された回路基板と、載置部を囲繞するように基体の上面に取着されているとともに側部に貫通孔が形成された枠体と、貫通孔に嵌着されて回路基板に電気的に接続された同軸コネクタとを具備した電子部品収納用パッケージにおいて、枠体の同軸コネクタの直下部と載置用基台の側面側の上面とが導電性接合材を介して接合されていることから、接地電位(グランド)の伝搬経路が、枠体の内周側面および基体の表面ならびに載置用基台の側面を介することなく短くなって、接地電位の経路長と、信号線の経路長とをほぼ等しくすることができる。その結果、インピーダンスの不整合を小さくすることができ、高周波信号の反射損失が小さくなり、高周波信号を効率よく伝送させることが可能となる。
【0011】
本発明の電子部品収納用パッケージによれば、上記構成において、回路基板は、同軸コネクタ側の側面に側面導体が形成され、枠体の内周側面と回路基板の側面導体とが導電性接合材を介して接合されている場合は、枠体の内周側面と搭載用基台との間の隙間に充填された導電性接合材を、搭載用基台の上面よりも高い位置にまで這い上がらせて、同軸コネクタの中心導体の絶縁体から突出した部分と、接地電位としての導電性接合材との間の距離を短くすることができる。その結果、中心導体の絶縁体から突出した部分におけるインピーダンスの不整合をより小さくすることができ、高周波信号の反射損失がより小さくなり、高周波信号をより効率よく伝送させることが可能となる。
【0012】
本発明の電子装置によれば、上記本発明の電子部品収納用パッケージと、該電子部品収納用パッケージの基体に搭載されているとともに回路基板の信号線路導体に電気的に接続された電子部品と、枠体の上面に接合された蓋体とを具備していることから、同軸コネクタから回路基板までの接地電位の伝搬経路を短くして、接地電位の経路長と、同軸コネクタの中心導体から回路基板の信号線路導体を伝搬する信号線の経路長とをほぼ等しくすることができる。その結果、インピーダンスの不整合を小さくすることができ、高周波信号を効率よく伝送させて、電子部品収納用パッケージに実装された電子部品を、高周波での作動性が良好なものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明の電子装置の実施の形態の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)のX−X線で切断した断面の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す要部拡大断面図である。
【図3】本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す要部拡大断面図である。
【図4】本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す要部拡大断面図である。
【図6】本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す要部拡大断面図である。
【図7】本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す要部拡大断面図である。
【図8】(a)は、本発明の電子部品収納用パッケージの実施の形態の他の例を示す平面図であり、(b)は、(a)のX−X線で切断した断面の一例を示す断面図である。
【図9】従来の電子装置の実施の形態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置について、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1(a)は、本発明の電子部品収納用パッケージを用いた電子装置の蓋体を透視して上面からみた実施の形態の一例を示す平面図である。図1(b)は、図1(a)のX−X線で切断した断面の一例を示す断面図である。この図1(a),(b)において、1は電子部品7を収容する電子部品収納用パッケージ本体の底面を構成する基体、2は電子部品収納用パッケージ本体の側壁用の枠体、2aは枠体2の側部に形成され同軸コネクタ3が嵌着される貫通孔である。3は高周波信号の入出力端子である同軸コネクタであり、外周導体3a、絶縁体3b、中心導体3cからなる。4はインピーダンス整合用の回路基板であり、回路基板4の上面には信号線路導体4aが形成され、回路基板4の上面および下面に接地導体4bが形成されている。回路基板4の上面および下面に形成された接地導体4bは、貫通導体4dを介して電気的に接続されている。5は基体1の上面の載置部1aに載置され、回路基板4が搭載接合される載置用基台、6は枠体2の内周側面と、載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面とを接合する導電性接合材である。7は基体1に搭載実装されたLN変調素子等の電子部品、8は枠体2の上面に接合され、回路基板4および電子部品7を気密封止する蓋体である。本発明の電子部品収納用パッケージは、これら基体1,枠体2,同軸コネクタ3,回路基板4および載置用基台5で構成され、枠体2と載置用基台5とが導電性接合材6を介して接合されている。また、本発明の電子装置は、上記の電子部品収納用パッケージに、電子部品7を搭載実装し、枠体2の上面に蓋体8を接合することにより、回路基板4および電子部品7を気密封止してなる。
【0016】
また、本発明の電子部品収納用パッケージは、高周波信号の周波数が10GHz以上、特に30GHz以上の周波数において有効であり、従来反射損失が発生していたのを抑制し、高周波信号を効率よく伝送させることができる。
【0017】
また、電子装置における電気的接続は、同軸コネクタ3の中心導体3cの一端が、回路基板4の上面の信号線路導体4aに接合され、電子部品7と信号線路導体4aとがボンディングワイヤ9で電気的接続されて、高周波信号の伝播が行なわれる。
【0018】
本発明の電子部品収納用パッケージは、図1(a),(b)に示す例のように、上面に電子部品7が搭載される基体1と、該基体1の上面の載置部1aに載置された載置用基台5と、上面に信号線路導体4aが形成され、下面に接地導体4bが形成されているととも
に載置用基台5の上面に載置された回路基板4と、載置部1aを囲繞するように基体1の上面に取着されているとともに側部に貫通孔2aが形成された枠体2と、貫通孔2aに嵌着されて回路基板4に電気的に接続された同軸コネクタ3とを具備した電子部品収納用パッケージにおいて、枠体2の同軸コネクタ3の直下部と載置用基台5の側面側の上面とが導電性接合材6を介して接合されていることを特徴とするものである。このような構成としたことから、枠体2の同軸コネクタ3の直下部と載置用基台5の側面側の上面とが直線状に接続することとなり、接地電位(グランド)が、枠体2の内周側面および基体1の表面ならびに載置用基台5の側面を介することなく、直接、同軸コネクタ3の下面の外周導体3aから、回路基板4の下面に形成された接地導体4bに伝わるという経路を辿る。このように、接地電位の伝搬経路が、従来の電子部品収納用パッケージに比べて短くなることにより、この接地電位の経路長と、同軸コネクタ3の中心導体3cから回路基板4の信号線路導体4aを伝搬する信号線の経路長とをほぼ等しくすることができる。その結果、インピーダンスの不整合を小さくすることができ、高周波信号の反射損失が小さくなり、高周波信号を効率よく伝送させることが可能となる。
【0019】
本発明の電子部品収納用パッケージは、具体的には、図1(a)に平面図で示す例のように、回路基板4の上面に、同軸コネクタ3の中心導体3cが接続される信号線路導体4aと、貫通導体4dを介して回路基板4の下面に形成された接地導体4bと電気的に接続される接地導体4bとが形成されている。図1(b)は、図1(a)のX−X線で切断した断面の一例を示す断面図であり、回路基板4の下面に、回路基板4の上面に形成された接地導体4bに貫通導体4dを介して電気的に接続される接地導体4bが形成されている。信号線は、同軸コネクタ3の中心導体3cを経由し、回路基板4の上面に形成された信号線路導体4aに伝播し、また接地電位(グランド)は、同軸コネクタ3の外周導体3aの外周面から導電性接合材6の上面を経由して回路基板4の下面に形成された接地導体4bに伝播する。
【0020】
基体1は、電子部品7を支持するための支持部材として機能し、基体1の上面には、回路基板4が載置用基台5を介して載置される載置部1aを有しており、この載置部1aに、載置用基台5がAu−Sn半田等の低融点ろう材を介して接着固定されている。
【0021】
基体1は、Fe−Ni−Cr合金(JIS規格のSUS304、SUS310等)やFe-Ni-Cr-Mo合金(JIS規格のSUS303、SUS316等)等のステンレス鋼や、Fe−Ni
−Co合金や、Cu−Zn合金等の金属材料から成る。
【0022】
例えば、基体1の上面に載置実装される電子部品7が、強誘電体素子であるLN(ニオ
ブ酸リチウム)による変調素子(以下、LN素子という)の場合、LN素子の熱膨張係数15.4×10-6/℃と近似しているSUS303(熱膨張係数14.6×10-6/℃)、SUS304(熱膨
張係数17.3×10-6/℃)、SUS310(熱膨張係数15.8×10-6/℃)、SUS316(熱膨張係数16.0×10-6/℃)等のFe−Ni−Cr合金やFe−Ni−Cr−Mo合金の金属材料を
用いて、基体1を作製することが好ましい。この場合、基体1の上面にLN素子を載置実装して電子装置とした場合、基体1と電子部品7との熱膨張係数が近似しているため、電子部品7が作動した際に発生する熱により、熱膨張係数の差に起因する応力で、電子部品7が基体1から剥がれたりすることがなくなるので好ましい。
【0023】
また、基体1は、基体1を形成する金属材料のインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工法を施すことによって所定の形状に製作される。また、その表面に耐蝕性に優れ、かつ、ろう材との濡れ性に優れる金属、具体的には厚さ0.5〜9μmのN
i層と厚さ0.5〜9μmのAu層を順次めっき法により被着させておくのがよく、基体1
が酸化腐食するのを有効に防止するとともに、基体1の上面に電子部品7および回路基板4が載置された載置用基台5を強固に接着固定させることができる。
【0024】
枠体2は、電子部品収納用パッケージ外部との電磁的遮蔽を行なうとともに、貫通孔2aに同軸コネクタ3が嵌着接合される。枠体2は、基体1との接合における熱歪みを小さくし接合を強固なものとするために、基体1の熱膨張係数に近似する金属材料が用いられる。この枠体2は、基体1と同様に、その材料のインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工法を施すことにより所定の形状に製作される。そして、基体1と同様に、その表面に耐蝕性に優れ、かつ、ろう材との濡れ性に優れる金属、具体的には厚さ0.5〜9μmのNi層と厚さ0.5〜9μmのAu層を順次めっき法により被着させておくのがよく、枠体2が酸化腐食するのを有効に防止するとともに貫通孔2aに同軸コネクタ3を強固に接合できる。
【0025】
また、枠体2は、基体1と同じ金属材料を用いて、基体1と枠体2とを一体成形することが好ましい。この一体成形の方法としては、上述したFe−Ni−Cr合金やFe−Ni−Cr−Mo合金等の金属材料のインゴットに切削加工等の従来周知の金属加工法を施すことにより所定の形状に製作することができる。基体1と枠体2とを一体成形した場合は、組み立て時の接合ずれを生じるという不具合が発生することがなくなるので好ましい。
【0026】
同軸コネクタ3は、外部電気回路(図示せず)と電子部品7とを電気的に接続する機能を有するとともに、電子部品収納用パッケージ内部を塞ぐ機能を有し、外周導体3a,絶縁体3bおよび中心導体3cからなる。外周導体3aは、筒状であり、Fe−Ni−Co合金等の金属材料からなり、絶縁体3bは、外周導体3aの貫通孔に充填されたホウケイ酸ガラス等の絶縁材料からなる。中心導体3cは、外周導体3aの中心軸部分に絶縁体3bを介して装着され電子部品収納用パッケージ内外を導通させるものであり、両端部が絶縁体3bから突出している。貫通孔2aへの同軸コネクタ3の嵌着接合は、貫通孔2aに同軸コネクタ3を挿入するとともに、リング状のAu−Sn合金等の低融点ろう材を外周導体3aと貫通孔2aの内周面との間に挿入保持させ、しかる後、低融点ろう材を加熱溶融させて貫通孔2aの内周面と外周導体3aとの間の隙間が全周にわたりAu−Sn合金等の封着材によって充填されることによって行なわれる。
【0027】
また、同軸コネクタ3は、高周波信号が伝送される中心導体3cと、それを取り囲む部位、すなわち金属材料からなる外周導体3aおよび貫通孔2a内周面部とが、高周波信号伝送時のインピーダンスの整合が可能な同軸構造をなしている。
【0028】
また、同軸コネクタ3の形状は、円柱状または角柱状であり、枠体2に形成された貫通孔2aの内周面に嵌着接合して電子部品収納用パッケージ内部を塞ぐような形状であればよい。例えば、同軸コネクタ3が円柱状の場合は、同軸コネクタ3の外周導体3aの外周面を貫通孔2aの円状の内周面に嵌着接合する。また、同軸コネクタ3が角柱状の場合は、同軸コネクタ3の外周導体3aの外周面に平坦面を形成し、貫通孔2aの内面にも平坦面を形成しておき、外周導体3aの外周面に形成された平坦面と、貫通孔2aの内面に形成された平坦面とを接合して、貫通孔2a内に同軸コネクタ3を嵌着接合する。
【0029】
回路基板4は、アルミナ(Al)セラミックスまたは窒化アルミニウム(AlN)セラミックス等のセラミックスから成り、インピーダンス整合用の基板として機能する。また、回路基板4は、図1(a),(b)に示す例のように、その上面に高周波信号の
伝送線路としての信号線路導体4aが形成され、上面および下面には、接地導体4bが形成され、また、回路基板4の上面および下面に形成された接地導体4bを接続するビア導体4dが形成されている。信号線路導体4aは、同軸コネクタ3の中心導体3cのインピーダンスと同じになるように形成されたグランド付きコープレナー線路であり、その一端側は電子部品7とボンディングワイヤ9を介して接続され、他端側は中心導体3cの先端
部に接合される。そして、中心導体3cと電子部品7とを電気的に接続することにより、同軸コネクタ3と電子部品7とが電気的に接続される。また、接地電位(グランド)は、同軸コネクタ3の下面の外周導体3aから、枠体2と載置用基台5とを接合する導電性接合材6の上面を経由して、回路基板4の下面に形成された接地導体4bに接続され、貫通導体4dを介して回路基板4の上面に形成された接地導体4bに接続され、電子部品7とボンディングワイヤ9を介して電気的に接続される。
【0030】
回路基板4は、例えばアルミナセラミックスからなる場合であれば、酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ,可塑剤,および溶剤を添加混合して泥漿物に従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を形成し、次にこのセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施して所定形状となすとともに、必要に応じて複数枚を積層して成形体となし、しかる後、この成形体を約1,600℃の温度で
焼成することによって製作される。
【0031】
信号線路導体4a、接地導体4b、貫通導体4dは、タングステン,モリブデン,マンガン,銅,銀,パラジウム,白金,金等の金属材料からなる。
【0032】
信号線路導体4a、接地導体4b、貫通導体4dは、例えばタングステンからなる場合であれば、タングステンの粉末に有機溶剤,バインダを添加混練して金属ペーストを作製する。信号線路導体4aおよび接地導体4bを形成する場合は、回路基板4となるセラミックグリーンシートに金属ペーストを所定の配線パターンとなるように、従来周知のスクリーン印刷法を用いて印刷することによって形成する。貫通導体4dを形成する場合は、回路基板4を作製する際にセラミックグリーンシートに打ち抜き加工やレーザ加工等によって貫通孔を形成しておき、この貫通孔に金属ペーストを充填することによって形成する。
【0033】
信号線路導体4a、接地導体4b、貫通導体4dは、薄膜加工で作製することもできる。信号線路導体4a、接地導体4b、貫通導体4dを薄膜加工で作製することにより、信号線路導体4a、接地導体4b、貫通導体4dを密着金属層、拡散防止層および主導体層が順次積層された3層構造の導体層とすることができ、高精度なパターンを形成できるので好ましい。
【0034】
信号線路導体4a、接地導体4b、貫通導体4dは、例えば以下のようにして薄膜加工で作製する。
【0035】
焼成後の回路基板4にレーザ加工やサンドブラストのような従来周知の加工法によって、貫通孔を形成し、蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法等の薄膜形成法によって信号線路導体4a、接地導体4b、貫通導体4dとなる各層(密着金属層、拡散防止層および主導体層が順次積層された3層構造の導体層)を形成する。その後レジスト膜を形成し、フォトリソ加工、エッチング等の薄膜加工によって信号線路導体4a、接地導体4b、貫通導体4dを形成する。
【0036】
載置用基台5は、基体1の上面の載置部1aに載置されており、載置用基台5の上面には、回路基板4が載置されている。また、載置用基台5は、基体1の熱膨張係数と、回路基板4の熱膨張係数との中間の熱膨張係数を持つFe−Ni合金等の金属から成り、温度変化によって、上面に載置する回路基板4に大きな応力が働いて割れたりすることがないようにするための緩衝材としての中継基体として機能する。すなわち、LN素子の熱膨張係数に合わせた基体1に、直接、回路基板4を載置すると、基体1の熱膨張係数と回路基板4の熱膨張係数との違いによる応力で、回路基板4が割れてしまうことがあるために、
基体1の上面の載置部1aに載置用基台5を載置し、この載置用基台5の上面に回路基板4を載置するという本発明の構成としている。
【0037】
載置用基台5は、例えば基体1がSUS304(熱膨張係数17.3×10-6/℃)で、回路基
板4がアルミナセラミックス(熱膨張係数6.5×10-6/℃)の場合は、基体1および回路
基板4の中間の熱膨張係数を持つFe−50Ni合金(熱膨張係数9.9×10-6/℃)の金属
材料からなることが好ましい。この場合、載置用基台5が、基体1および回路基板4の中間の熱膨張係数を持つことで、熱膨張係数の差による応力によって、回路基板4が割れてしまうことがなくなるので好ましい。
【0038】
導電性接合材6は、枠体2の内周側面と載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面とを接合する機能を有する。導電性接合材6は、Au−Sn合金やSn−Ag合金等の低融点ろう材が用いられる。
【0039】
導電性接合材6は、図1(b)に示す例のように、枠体2の内周側面と載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面との間の隙間全体に充填されていてもよく、この場合の枠体2の内周側面と載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面とを接合させる方法としては、導電性接合材6を従来周知のディスペンス法で、枠体2の内周側面と載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面との隙間に注入して充填し、その後、導電性接合材6を加熱溶融し、固化させることにより、枠体2と載置用基台5とを接合させることができる。
【0040】
また、導電性接合材6は、図2に示す例のように、枠体2の内周側面と載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面との間の隙間の上部のみに充填されていてもよく、この場合の枠体2の内周側面と載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面とを接合させる方法としては、箔状または板状のAu−Sn合金を枠体2の内周側面と載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面との隙間に挿入し挟み込んで、その後、導電性接合材6を加熱溶融し、固化させることにより、枠体2と載置用基台5とを接合させることができる。
【0041】
載置用基台5の側面側の上面と、枠体2の同軸コネクタ3の直下部と接合する際、図2に示す例のように、枠体2の内周側面と載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面との間の隙間の上部のみに導電性接合材6を充填して接合することが好ましい。この場合、枠体2の内周側面および載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面の全面が導電性接合材6を介して接合されることがないので、枠体2と載置用基台5との熱膨張係数の差に起因する応力によって、導電性接合材6が、枠体2の内周側面または載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面から剥がれたりすることがなくなるので好ましい。
【0042】
載置用基台5は、図3および図4に示す例のように、載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面に突出部5aが形成されていることが好ましい。このような構成の場合、枠体2の内周側面と載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面と突出部5aの上面とで、凹部が形成され、この凹部に導電性接合材6が溜まるように充填されるので、図2に示す例のような、枠体2の内周側面と載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面との間の隙間の上部のみに導電性接合材6を充填して接合することを安定して容易に行なうことができる。また、載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面に突出部5aが形成されていることから、導電性接合材6の上面の位置決めを確実に行うことができ、突出部5aより下方に導電性接合材6が落ち込むことがなく、導電性接合材6の上面の位置が下がることで接地電位(グランド)の経路長が長くなり、信号線路との長さに差が生じることを有効に防止することができる。また、図3および図4に示す例のように、載置用基台5に突出部5aを形成することにより、この突出部5aを枠体2の内周側面に当接させて、載置用基台5の上面に載置された回路基板4の位置決めが容易にできる点でも好ましい。
【0043】
突出部5aの形状は、図3に示す例のように、載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面の中央部の一部に形成されていてもよく、図4に示す例のように、載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面の中央部から基体1の上面にかけてつながって形成されていてもよい。また、図3に示す例のように、突出部5aが、載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面の中央部の一部に形成されている場合がより好ましい。この場合は、枠体2と載置用基台5とが当接する面積が小さくなるので、枠体2と載置用基台5との熱膨張係数の差に起因する応力によって、導電性接合材6が、枠体2の内周側面または載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面から剥がれたりすることがなくなるので好ましい。
【0044】
載置用基台5は、その材料のインゴットに圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工法を施すことで形成でき、突出部5aについては、その周辺部を研削したり、別に加工した突出部5a部の形状の部品を載置用基台5の側面に金属ろう材等で接合することで作製される。
【0045】
蓋体8は、図1(b)に示す例のように、枠体2の上面に接合され、電子部品7を電子部品収納用パッケージの中に気密封止するものである。蓋体8の材料は、Fe−Ni−Co合金等の金属材料やアルミナセラミックス等のセラミックスから成り、枠体2上面にAu−Sn合金等の低融点ろう材を介して接合したり、シーム溶接等の溶接により接合することで、電子部品7を電子部品収納用パッケージ内に封止する。
【0046】
本発明の電子部品収納用パッケージは、図5および図6に示す例のように、上記構成において、回路基板4は、同軸コネクタ3側の側面に、接地導体4bと接続され、かつ信号線路導体4aと絶縁されて、側面導体4cが形成されており、枠体2の内周側面と回路基板4の側面導体4cとが導電性接合材6を介して接合されていることが好ましい。このような構成としたときには、枠体2の内周側面と搭載用基台5との間の隙間に充填された導電性接合材6を、搭載用基台5の上面よりも高い位置にまで這い上がらせて、中心導体3cと接地電位としての導電性接合材6との間の距離を短くすることができる。その結果、同軸コネクタ3の中心導体3cの絶縁体3bから突出した部分のインピーダンスの不整合をより小さくすることができるので、高周波信号の反射損失がより小さくなり、高周波信号をより効率よく伝送させることが可能となる。
【0047】
側面導体4cは、図5および図6に示す例のように、回路基板4の同軸コネクタ3側の側面に、接地導体4bと接続され、かつ信号線路導体4aと絶縁されて形成されている。図5に示す例は、側面導体4cの同軸コネクタ3側の端面が、載置用基台5の枠体2側の側面と面一になるように、回路基板4の同軸コネクタ3側の側面に形成されている例である。図6に示す例は、より好ましい例であり、側面導体4cの同軸コネクタ3側の端面が、載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面より同軸コネクタ3側に突出するように、回路基板4の同軸コネクタ3側の側面に形成されている例である。図6に示す例のように側面導体4cが形成されている場合は、導電性接合材6が、側面導体4cの同軸コネクタ3側の端面から側面導体4cの下面にかけて回り込むように充填されるので、側面導体4cと導電性接合材6とがかみ合い、また接合にあずかる側面導体4cの接合面積が増えるため、枠体2の内周側面と側面導体4cとを強固に接合することができるので好ましい。
【0048】
図7に示す例は、枠体2の内側に貫通孔2aと連続してつながるように、貫通孔2aよりも小径の貫通孔2bを形成した例である。枠体2の貫通孔2a,2bをこのような形状として、枠体2の内周側面と載置用基台5の同軸コネクタ3側の側面との間の隙間に導電性接合材6を充填することにより、中心導体3cと接地電位としての導電性接合材6との間の距離をより短くすることができる。その結果、同軸コネクタ3の中心導体3cの絶縁体3bから突出した部分のインピーダンスの不整合をより小さくすることができるので、高周波信号の反射損失がより小さくなり、高周波信号をより効率よく伝送させることが可
能となる。導電性接合材6と中心導体3cとの距離を小さくするためには、枠体2の同軸コネクタ3の下部と回路基板4との間に枠体2の内周側面が位置されればよいが、枠体2の貫通孔2a,2bを上記のような形状とすることで、貫通孔2bの部分は中心導体3cの周りの誘電体が空気である、いわゆるエア同軸構造となるので、この部分でのインピーダンスの不整合が発生しにくくなるので好ましい。また同軸コネクタ3を貫通孔2a内に嵌着させる際に、同軸コネクタ3を貫通孔2aの内周面に突き当てることによって、同軸コネクタ3の位置決めが容易にできる点でも好ましい。
【0049】
図8(a),(b)に示す例は、回路基板4の側面のうち、回路基板4の上面に形成された接地導体4bの端の下だけに、側面導体4cを形成した例である。具体的には、本発明の電子部品収納用パッケージは、図8(a)に平面図で示す例のように、回路基板4の上面に、同軸コネクタ3の中心導体3cが接続される信号線路導体4aと、貫通導体4dを介して回路基板4の下面に形成された接地導体4bと電気的に接続される接地導体4bとが形成されている。この回路基板4の上面に形成された接地導体4bの端の下だけに側面導体4cを形成して、同軸コネクタ3側の接地電位と接続することで導通をとることができる。この場合は、回路基板4の上面の接地導体4bと下面の接地導体4bとを接続するように側面導体4cを形成することが好ましい。このように、側面導体4cを形成し、枠体2と側面導体4cとを導電性接合材6で接合すると、中心導体3cの下面を接地導体が擬似同軸構造で覆うようになるので、同軸コネクタ3の中心導体3cの絶縁体3bから突出した部分のインピーダンスの不整合をより小さくすることができるので、高周波信号の反射損失がより小さくなり、高周波信号をより効率よく伝送させることが可能となる。
【0050】
側面導体4cは、信号線路導体4aおよび接地導体4bと同様な金属材料を用い同様な作製方法をすることにより形成される。
【0051】
本発明の電子装置は、図1(b)に示す例のように、基体1の載置部1aに電子部品7を、この電子部品7の電極と電気的に接続された信号線路導体4aを有する回路基板4に実装した状態で搭載固定し、信号線路導体4aと中心導体3cとを半田を介して電気的に接合するとともに電子部品7と信号線路導体4aとをボンディングワイヤ9で電気的に接続し、しかる後、枠体2の上面に蓋体8を半田付け法やシーム溶接法により接合することにより構成される。そして、同軸コネクタ3と同軸ケーブル(図示せず)とを接続することにより、電子部品7が外部電気回路に電気的に接続されることとなる。
【0052】
なお、本発明は、上述した最良の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行なうことは何ら差し支えない。例えば、本実施形態では、電子部品7をLN素子の例として回路基板4をグランド付きコープレナー構造としたが、電子部品7の入出力端子形状や素子形状によって、回路基板4をマイクロストリップ構造の基板としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1・・・・・基体
1a・・・・載置部
2・・・・・枠体
2a・・・・貫通孔
2b・・・・小径の貫通孔
3・・・・・同軸コネクタ
3a・・・・外周導体
3b・・・・絶縁体
3c・・・・中心導体
4・・・・・回路基板
4a・・・・信号線路導体
4b・・・・接地導体
4c・・・・側面導体
4d・・・・貫通導体
5・・・・・載置用基台
5a・・・・突出部
6・・・・・導電性接合材
7・・・・・電子部品
8・・・・・蓋体
9・・・・・ボンディングワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に電子部品が搭載される基体と、該基体の上面の載置部に載置された載置用基台と、上面に信号線路導体が形成され、下面に接地導体が形成されているとともに前記載置用基台の上面に載置された回路基板と、前記載置部を囲繞するように前記基体の上面に取着されているとともに側部に貫通孔が形成された枠体と、前記貫通孔に嵌着されて前記回路基板に電気的に接続された同軸コネクタとを具備した電子部品収納用パッケージにおいて、前記枠体の前記同軸コネクタの直下部と前記載置用基台の側面側の上面とが導電性接合材を介して接合されていることを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項2】
前記回路基板は、前記同軸コネクタ側の側面に側面導体が形成され、前記枠体の内周側面と前記回路基板の前記側面導体とが前記導電性接合材を介して接合されていることを特徴とする請求項1記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子部品収納用パッケージと、該電子部品収納用パッケージの前記基体に搭載されているとともに前記回路基板の前記信号線路導体に電気的に接続された電子部品と、前記枠体の上面に接合された蓋体とを具備していることを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−151232(P2012−151232A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7983(P2011−7983)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】