説明

電子部品実装基板

【課題】多層配線基板の表面に、実装された電子部品の発熱による熱歪みの影響によって起こるはんだ接合部の破損を減少させ、信頼性の高い電子部品実装基板を提供する。
【解決手段】配線パターン4が形成された基板1を絶縁樹脂層5を間に介装して複数積層した多層配線基板2の表面に、はんだ接合により電子部品8が実装される電子部品実装基板3において、多層配線基板2は、最表層の基板1aと電子部品8との間に緩衝部6が形成されているとともに、基板1の配線パターン4と導通し、かつ緩衝部6の外表面6aに露出して電子部品8がはんだ7により接合される接続部9が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線パターンが形成された基板を、絶縁樹脂層を間に介装して複数積層した多層配線基板の表面に、はんだ接合により電子部品が実装される電子部品実装基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板上に電子部品を実装する場合には、基板上に形成された配線パターンに、錫−鉛の共晶はんだを用いたはんだ付けによって、上記電子部品を接合する方法が採用されていた。この錫−鉛の共晶はんだは、融点が低く、しかも柔軟性があるため、伸びと強度のバランスが良く、はんだ付けの際に、プリント基板と電子部品端子との間の熱膨張係数の違いによるストレスを吸収することができる。また、自らが劣化すること(粒径の粗大化)により、急激な破壊または破断を防止し、一種の緩衝剤として作用するため、はんだ付け接合部に高い信頼性を与えていた。
【0003】
しかしながら、鉛は人体に有害な金属である。そのため、地球環境の保護や有害物質の使用を回避しようとする国際的な要求の高まりに応じて、鉛を含有しない鉛フリーはんだの研究および開発が進められてきている。
【0004】
現在、最も一般的に使用されている無鉛はんだは、3元系の錫−銀−銅の合金である。この代表的な組成として、Sn−3.5Ag−0.7Cu、Sn−3.0Ag−0.5Cu等が実用化されている。これ以外にも、3元系のSn−Ag−Bi、Sn−Cu−Ni(Niは微量添加物)、4元系のSn−Ag−Cu−Bi、5元系のSn−Ag−Cu−Bi−Ge等の無鉛はんだ等が発表されている。
【0005】
しかし、これらの鉛フリーはんだ材料は、鉛含有はんだに比べて上記ストレスの吸収作用が小さいことが知られている。そのため、通電時の温度上昇において、基板と電子部品との熱膨張率が異なるために生じるストレスを完全に吸収することができず、微小な塑性歪みが蓄積されてしまう。
【0006】
また、電子部品実装基板では、使用のたびに自身や周囲の部品からの発熱による熱歪みが発生し、各部材間の熱歪み差に起因して発生する応力が、はんだ部にも及んでしまう。このため、鉛フリーはんだにおいては、発熱のたびに塑性歪みが蓄積されて、ある時点において接合部内部にクラックが発生し、さらに使用を続けていくと、クラックは成長して接合部の断裂を起こし、電気的な接続が保てなくなるという問題がある。
【0007】
さらに、電子部品の小型化に伴う搭載部品の高密度化、配線の複雑化が進む今日では、局所的に強度の低下した部分が現れやすく、高度な設計・製造技術が必要になっている。特に、図5に示すような配線パターン4が形成された基板1を、絶縁樹脂層5を間に介装して複数積層した多層配線基板2の表面に、はんだ7により電子部品8の端子と配線パターン4である接合部9とが接合されて実装される電子部品実装基板3においては、電子部品8の通電時の発熱による熱歪みによって、はんだ7の接合部の疲労寿命が低下する傾向があり、鉛フリーはんだの機械特性の改善やはんだ接合量・位置の最適化、使用部材の選定などによる対応では望みの信頼性を得られないケースが多くある。そのため、熱歪みの小さい高価な基板材料への変更など、コストの増加によって信頼性を維持させている現実がある。
【0008】
すなわち、熱歪みが発生した場合に起こる破壊の原因は、基板1と電子部品8との熱膨張率が異なるために現れる基板、の反りにある。例えば、チップ抵抗器やインダクタで多く利用されているセラミック焼結体やフェライト焼結体、IC部品の主要材料であるシリコン素子は、概ね3〜8×10-6/℃程度の熱膨張率を示す。
【0009】
一方、基板1は金属またはガラスをベースに樹脂含浸したものや、紙をベースに樹脂が含浸したものなど種類が多い。しかし、ほとんど熱膨張率は14〜30×10-6/℃の範囲に収まっている。このような部品構成において、高温または低温に移行すると、電子部品8と基板1の熱膨張率の差からストレスが発生し、はんだ7に歪みが蓄積される。また同時に基板1、が変形して反りが発生し、搭載する電子部品8に様々な応力が生じる。
【0010】
このような熱歪みは、内部に多数の金属配線を含む多層基板において、問題がより顕著になり、はんだの疲労寿命が大きく劣化するという問題がある。これは、配線材料として銅が最も頻繁に使用されるが、銅の熱膨張率は16.7×10-6/℃程度であり、熱膨張率は搭載部品に比べて大きく、かつ剛性は樹脂基板に比べて著しく高いため、大きな熱歪みの発生源となっているためである。そのため、金属の内層数が増えるとともに疲労寿命は大きく劣化する傾向があり、大きな問題となっている。
【0011】
この問題について種々に研究した結果、金属の内部配線パターンが熱歪みの原因となるのは部品の直下近傍にある配線のみであることが分かった。これは、配線パターンにより発生した熱歪みが基板の中で緩和されていくためである。また、部品の直下に金属配線がない場合も、部品と金属配線との熱歪みの差が発生しにくい状況になるため、はんだ接合部への負担は小さくなることが判明した。これにより、問題となる部品の周囲に金属配線が存在しないように設計段階において、留意することにより熱歪みを防止する方法がある。
【0012】
しかし、高密度化された現代の電子部品では、基板の放熱性を高めるために内層される銅の残銅率は高い方が好ましい。また、基板内部の配線パターンが、搭載部品の直下部を回避するために、複雑な形状になると放射ノイズの発生原因になるという問題がある。この放射ノイズは、搭載部品の正常動作を妨げることがあり、特に信号の受発信や処理を行う部品や回路を搭載した基板では重大な問題になる。さらに、高密度化を行う上では、配線パターンの制約が大きくなるため、設計開発コストが嵩むという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、多層配線基板の表面に、実装された電子部品の発熱による熱歪みの影響によって起こるはんだ接合部の破損を減少させ、信頼性の高い電子部品実装基板を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、配線パターンが形成された基板を絶縁樹脂層を間に介装して複数積層した多層配線基板の表面に、はんだ接合により電子部品が実装される電子部品実装基板において、上記多層配線基板は、最表層の上記基板と上記電子部品との間に緩衝部が形成されているとともに、上記基板の上記配線パターンと導通し、かつ上記緩衝部の外表面に露出して上記電子部品が上記はんだにより接合される接続部が形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記緩衝部は、上記多層配線基板の最表層の上記基板の全面を覆う層状に形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記緩衝部は、上記絶縁樹脂層と同質材により形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、上記緩衝部は、0.05mm〜1.0mmの厚さ寸法により形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜4に記載の本発明によれば、配線パターンが形成された基板を、絶縁樹脂層を間に介装して複数積層した多層配線基板は、最表層の上記基板と電子部品との間に緩衝部が形成されているため、当該緩衝部部において、上記電子部品の通電時の発熱を遮断して、熱膨張率および剛性が高い銅材料からなる上記配線パターンに熱を伝わりにくくするとともに、上記電子部品の通電時の発熱によって、上記配線パターンに熱歪みが生じた場合には、その熱歪みを吸収することができる。これにより、上記基板の上記配線パターンと上記電子部品とを接合している上記はんだに、上記熱歪みによるストレスの蓄積が抑制され、鉛フリーはんだの破損を防止することができるとともに、電子部品実装基板の使用寿命や信頼性を向上させることができる。
【0019】
また、上記電子部品を高密度化されて実装する場合でも、上記多層配線基板の内層において、上記配線パターンの無理な設計変更などを行う必要がなく、残銅率を高くすることができ、放熱性を向上させることができるとともに、上記配線パターンを複雑な形状にすることがないため、放射ノイズの発生を抑えることができる。
【0020】
そして、上記緩衝部の外表面に露出して上記電子部品を上記はんだにより接合する接続部が形成されているため、最表層の上記基板と上記電子部品との間に形成された上記緩衝部を絶縁性のある材質により形成しても、上記基板に形成された上記配線パターンと簡便に導通させることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、上記緩衝部が、上記多層配線基板の最表層の上記基板の全面を覆う層状に形成されているため、上記接続部(配線パターン)などを自由にレイアウトすることができるとともに、搭載する上記電子部品のマウント性やはんだによる接合性を損なうことがない。
【0022】
また、上記多層配線基板を製造する際に、上記配線パターンが形成された上記基板や上記絶縁樹脂層と共に、一括して成型することができる。この結果、容易に製造することができるとともに、新たな工程を追加することがなく製造コストを抑えることができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、上記緩衝部が、上記絶縁樹脂層と同じ材質により形成されているため、機械特性や熱膨張率を等しくすることができる。これにより、上記緩衝部が新たなストレスや反りの発生源になることがないとともに、良好な信頼性を持たせることができる。
【0024】
また、上記多層配線基板を製造する際に、新たな工程を追加することなく、従来の製造工程において、一括して製造することができる。この結果、容易に製造することができるとともに、製造コストを抑えることができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、上記緩衝部の厚さ寸法が、0.05〜1.0mmであるため、上記電子部品の通電時の発熱による上記配線パターンの材料の熱歪みの影響を少なくすることができるとともに、上記緩衝部を含む上記多層配線基板の内部残銅率の厚み方向の偏りによる反りの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の電子部品実装基板の一実施形態を示す断面概略図である。
【図2】本発明の電子部品実装基板の他の実施形態を示す断面概略図である。
【図3】(a)〜(b)は、図2の変形例を示す断面概略図である。
【図4】(a)〜(b)は、図2の他の変形を示す断面概略図である。
【図5】従来の電子部品実装基板を示す断面概略図である。
【図6】(a)〜(c)は、電子部品をはんだで多層配線基板に接合した有限要素解析形状モデルの解析結果を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明に係る電子部品実装基板3の一実施形態は、配線パターン4が両面に形成された4枚の基板1を、絶縁樹脂層5を間に介装して積層し多層配線基板2が形成され、この多層配線基板2の最表層の基板1aと、電子部品8との間に緩衝部6が形成されているとともに、基板1の配線パターン4と導通し、かつ緩衝部6の外表面6aに露出した接続部9に、電子部品8の端子部がはんだ7により接合され概略構成されている。
【0028】
ここで、基板1は、0.02〜0.05mmのリジッド基板が用いられ、その組成の種類から、 紙にフェノール樹脂を含浸させた紙フェノール基板、 紙にエポキシ樹脂を含浸させた紙エポキシ基板、切り揃えたガラス繊維を重ねエポキシ樹脂を含浸させたガラスコンポジット基板、 ガラス繊維製の布(クロス)を重ねたものに、エポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ基板などが用いられる。
【0029】
また、配線パターン4は、その主成分に銅が用いられ、基板1の両面に配線パターンが印刷されて形成されている。そして、絶縁樹脂層5は、熱硬化性樹脂組成物及び高弾性基材からなる熱硬化性接着材料である。そして、絶縁樹脂層5は、4枚の基板1の間に積層され、加熱加圧されることにより、4枚の基板1が接着されるとともに、基板1上の配線パターン4が埋設され多層配線基板2が形成されている。
【0030】
さらに、緩衝部6は、基板1より熱伝導率が低く、絶縁性があり、弾性係数が小さい合成樹脂などの材質により形成されている。また、絶縁樹脂層5と同質の材料である熱硬化性樹脂組成物及び高弾性基材からなる熱硬化性接着材料を用いることもできる。そして、緩衝部6が多層配線基板2の最表層の基板1aに加熱加圧されることにより接着されている。また、緩衝部6は、厚さ寸法が0.05〜1.0mmに形成されている。
【0031】
また、接続部9は、導体にめっきを施したものであり、緩衝部6を貫通して、最表層の基板1aの配線パターン4に導通し、かつ外表面6aに露出して形成されている。そして、緩衝部6の外表面6aに露出した接続部9に、はんだ7により電子部品8の端子部が接合され、電子部品実装基板3が形成されている。
【0032】
なお、はんだ7は、無鉛はんだが用いられている。この無鉛はんだは、3元系の錫−銀−銅の合金である。そして、その組成としては、Sn−3.5Ag−0.7Cu、Sn−3.0Ag−0.5Cu等がある。またこれ以外にも、3元系のSn−Ag−Bi、Sn−Cu−Ni(Niは微量添加物)、4元系のSn−Ag−Cu−Bi、5元系のSn−Ag−Cu−Bi−Ge等の無鉛はんだがある。
【0033】
(第2の実施形態)
図2は、本発明に係る電子部品実装基板3の第2の実施形態を示すものであり、図3および図4は、その変形例を示すものである。
なお、これらの図において、第1の実施形態に示したものと同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
【0034】
図2(b)に示すように、電子部品実装基板3は、配線パターン4が形成された4枚の基板1を、絶縁樹脂層5を間に介装して多層配線基板2を形成し、その最表層の基板1aと、電子部品8との間に層状をなす緩衝部6が、最表層の基板1aの全面を覆って形成されているとともに、基板1の配線パターン4と導通し、かつ緩衝部6の外表面6aに露出した接続部9に、電子部品8の端子部がはんだ7により接合され概略構成されている。
【0035】
ここで、基板1は、両面に配線パターン4が印刷されて形成されている。そして、絶縁樹脂層5が、4枚の基板1の間に積層され、加熱加圧されることにより、4枚の基板1が接着されるとともに、基板1上の配線パターン4が埋設され多層配線基板2が形成されている。
【0036】
さらに、緩衝部6が多層配線基板2の最表層の基板1aの全面に加熱加圧されることにより接着される。そして、緩衝部6の外表面6aに露出した接続部9に、はんだ7により電子部品8の端子部が接合され、電子部品実装基板3が形成されている。
【0037】
また、図3(a)の変形例では、4枚の基板1を絶縁樹脂層5を間に介装して多層配線基板2が形成され、この多層配線基板2の最表層の基板1aと、電子部品8との間に層状をなす緩衝部6が、最表層の基板1aの全面を覆って形成され、さらに層状をなす緩衝部6が下面側の最表層の基板1bの全面を覆って形成されているとともに、基板1の配線パターン4と導通し、かつ緩衝部6の外表面6aに露出した接続部9に、電子部品8の端子部がはんだ7により接合され概略構成されている。
【0038】
さらに、図3(b)の変形例では、基板1、配線パターン4,絶縁樹脂層5、緩衝部6の構成を図2に示す電子部品実装基板3と同一にし、緩衝部6の厚さ寸法を図2に示す緩衝部6より大きくしするとともに、絶縁樹脂層5の厚さ寸法を図2に示す絶縁樹脂層5より小さくすることにより、電子部品8の直下に配設され配線パターン4との距離を大きくし、断熱効果を高めるとともに、配線パターン4の熱歪みを吸収し易くするように形成されている。
【0039】
また、図4(a)の変形例では、3枚の基板1を絶縁樹脂層5を間に介装して多層配線基板2が形成され、この多層配線基板2の最表層の基板1aと、電子部品8との間に層状をなす緩衝部6が、最表層の基板1aの全面を覆って形成され、さらに層状をなす緩衝部6が下面側の最表層の基板1bの全面を覆って形成されているとともに、基板1の配線パターン4と導通し、かつ緩衝部6の外表面6aに露出した接続部9に、電子部品8の端子部がはんだ7により接合され概略構成されている。なお、この変形例では、緩衝部6の外表面6aに接続部9を形成し、この接続部9を配線パターン4とすることにより、基板1の積層数を減らすことができ、絶縁樹脂層5を厚さ寸法を大きくすることができる。
【0040】
そして、図4(b)の変形例では、図4(a)に示す電子部品実装基板3と同様に、3枚の基板1を絶縁樹脂層5を間に介装して多層配線基板2が形成され、この多層配線基板2の最表層の基板1aと、電子部品8との間に層状をなす緩衝部6が、最表層の基板1aの全面を覆って形成され、さらに層状をなす緩衝部6が下面側の最表層の基板1bの全面を覆って形成されているとともに、基板1の配線パターン4と導通し、かつ緩衝部6の外表面6aに露出した接続部9に、電子部品8の端子部がはんだ7により接合され概略構成されている。この変形例では、図4(a)の電子部品実装基板3の緩衝部6よりも、厚さ寸法を大きくするとともに、絶縁樹脂層5の厚さ寸法を小さくして形成し、さらに、緩衝部6の外表面6aに形成された接続部9を配線パターン4とすることによって、基板1の積層数を減らすことができ、さらに絶縁樹脂層5の厚さ寸法を小さくすることにより、多層配線基板2全体の厚さ寸法を小さくすることができる。
【0041】
以上の構成による電子部品実装基板を用いることにより、多層配線基板2の最表層の基板1の表面に形成した緩衝部6が、耐熱疲労性の改善に効果的があることを発明者らが行った実験を用いて説明する。
【0042】
<実施例>
今回の実験では、図6に示すように、ある電子部品8をはんだ7で多層配線基板2に接続した有限要素解析形状モデルを用いて解析を行った。
なお、このモデルで想定した温度サイクル条件及び各部の構成などの解析条件については、以下の通りである。
【0043】
1.温度サイクルは、125℃〜-−55℃におけるはんだ接合部に蓄積される塑性歪みを計算した。
2.チップ部品はセラミック、チップの電極部と基板配線部は銅、はんだはSn−3.0Ag−0.5Cu合金
3.基板の物性値はガラスコンポジット基板(CEM−3)を想定
4.チップ部品サイズ2.0×1.0mm、部品厚さ0.48mm、チップ部品と-基板の間隔0.08mm
5.チップ電極の厚さ0.015mm、基板電極部の厚さ0.05mm
6.基板の厚み1.2mm、内部配線パターンの厚み35μm、コア基板の厚み30μm
7.配線パターンの層数8層
8.本発明で提案する歪み抑制体(セラミックシート)の設置状況を以下の4通りで解析する。
(a)絶縁樹脂層5の厚みを267μmに設定、緩衝部6の設置無し(従来の多層基板構成) 図6(a)
(b)絶縁樹脂層5の厚みを90μm、緩衝部6を厚み265μmで上下に設置(両面実装を想定) 図6(b)
(c)絶縁樹脂層5の厚みを90μm、緩衝部6の厚み530μm(片面実装を想定した構成) 図6(c)
(d)内部配線パターンの存在しない構成(単層基板) 図無し
【0044】
上記の条件により解析した結果、電子部品8側面の下側のコーナー部近傍のはんだ部に強い応力集中が発生した。この応力集中の度合いは(a)、(b)、(c)、(d)の順に小さくなった。解析結果より得られるコーナー部のはんだに蓄積される塑性歪み量(非線形歪み振幅)と実際の温度サイクル試験結果の相関をとることで、類似構成での破断発生サイクル数などを予測することができる。例えば図6(a)に示す本発明を用いない標準的な部品構成では、温度サイクル125℃〜−55℃における破断サイクル数は、約480回となった。同様に計算結果より各構成での破断サイクル数を予測すると図6(b)の構成において、738回、(c)の構成で1130回、(d)の構成において、1220回となった。
【0045】
すなわち、いずれも同じ厚みの多層配線基板2でありながら、片面実装では疲労寿命が2.4倍、両面実装でも1.5倍の寿命向上効果が得られることが分かった。同型のチップサイズ・はんだ形状、同材質の基板を用いた条件では、図6(a)に示す構成では、上記に述べた通り寿命増加効果が得られることは殆どない。しかし、図6(b)および(c)において、極めて高い効果が得られていることが分かった。特に図6(c)においては、内部配線パターンのない基板構造(d)と殆ど同じ値にまで疲労寿命が回復している。
【0046】
また、緩衝部6の厚みが0.5mm程度あれば、応力緩和の効果がほぼ最大限に得られていることが分かった。図6(b)においては、緩衝部6の厚みが薄いため、そこまでの効果はないが、図6(a)に比べると明らかに高い疲労寿命を持ち、緩衝部6による寿命向上の効果の高いことが分かる。
【0047】
上述の実施形態による電子部品実装基板3によれば、多層配線基板2は、最表層の基板1aと電子部品8との間に緩衝部6が形成されているため、電子部品8の通電時の発熱を遮断して、熱膨張率および剛性が高い銅材料からなる配線パターン4に熱を伝わりにくくするとともに、電子部品8の通電時の発熱によって、配線パターン4に熱歪みが生じた場合には、その熱歪みを吸収することができる。これにより、上記実施例に示す実験結果から分かるように、基板1に電子部品8を接合しているはんだ7に、熱歪みによるストレスの蓄積が抑制され、鉛フリーはんだの破損を防止することができ、電子部品実装基板3の使用寿命や信頼性を向上させることができる。
【0048】
また、電子部品8を高密度化されて実装する場合でも、多層配線基板2の内層において、配線パターン4の無理な設計変更などを行う必要がなく、残銅率を高くすることができ、放熱性を向上させることができるとともに、配線パターン4を複雑な形状にすることがないため、放射ノイズの発生を抑えることができる。
【0049】
そして、緩衝部6の外表面6aに露出して上記電子部品を上記はんだ7により接合する接続部9が形成されているため、最表層の基板1aと電子部品8との間にに形成された緩衝部6を絶縁性のある材質により形成しても、基板1に形成された配線パターン4と簡便に導通させることができる。
【0050】
さらに、緩衝部6が、多層配線基板2の最表層の基板1aの全面を覆う層状に形成されているとともに、絶縁樹脂層5と同じ材質により形成されているため、接続部9などを自由にレイアウトすることができるとともに、機械特性や熱膨張率を等しくすることができる。これにより、緩衝部6が新たなストレスや反りの発生源になることがないとともに、良好な信頼性を持たせることができる。
【0051】
また、多層配線基板2を製造する際に、配線パターン4が形成された基板1や絶縁樹脂層5と共に、一括して成型することができる。この結果、容易に製造することができるとともに、新たな工程を追加することがなく製造コストを抑えることができる。
【0052】
そして、図4(a)および(b)に示すように、接続部9が、緩衝部6の外表面6aに形成されている場合には、この接続部9を配線パターン4として用いることができる。これにより、多層配線基板2に積層する配線パターン4を形成した基板1の積層する枚数を減らすことができる。これにより、多層配線基板2全体の厚さ寸法を小さくすることができるとともに、多層配線基板2全体の厚さ寸法を大きくすることなく、緩衝部6の厚さ寸法を大きくすることができる。
【0053】
さらに、緩衝部6を0.05〜1.0mmの厚さ寸法により形成しているため、電子部品8の通電時の発熱による配線パターン4の銅の熱歪みの影響を少なくすることができるとともに、多層配線基板2の内部残銅率の厚み方向の偏りによって起こる反りの発生を防ぐことができる。
【0054】
なお、上記実施の形態において、配線パターン4が形成された基板1において、配線パターンを両面に形成した基板1を用いる場合のみ説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、片面に配線パターンが形成された基板1でも対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
配線パターンが形成された基板を、絶縁樹脂層を間に介装して複数積層した多層配線基板に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 基板
1a 最表層の基板
1b 最表層の基板
2 多層配線基板
3 電子部品実装基板
4 配線パターン
5 絶縁樹脂層
6 緩衝部
7 はんだ
8 電子部品
9 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンが形成された基板を絶縁樹脂層を間に介装して複数積層した多層配線基板の表面に、はんだ接合により電子部品が実装される電子部品実装基板において、
上記多層配線基板は、最表層の上記基板と上記電子部品との間に緩衝部が形成されているとともに、上記基板の上記配線パターンと導通し、かつ上記緩衝部の外表面に露出して上記電子部品が上記はんだにより接合される接続部が形成されていることを特徴とする電子部品実装基板。
【請求項2】
上記緩衝部は、上記多層配線基板の最表層の上記基板の全面を覆う層状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装基板。
【請求項3】
上記緩衝部は、上記絶縁樹脂層と同質材により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品実装基板。
【請求項4】
上記緩衝部は、0.05mm〜1.0mmの厚さ寸法により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子部品実装基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−79765(P2012−79765A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221028(P2010−221028)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000237721)FDK株式会社 (449)
【Fターム(参考)】