説明

電子部品容器

【課題】 熱融着を用いた小型振動子の封止工程で、封止状態を保持しながら、封止の品質を向上させることを目的とする。
【解決手段】 目的を実現するために本発明は、電子部品を収納する容器体と、前記容器体に蓋体を被せて融着封止により密閉容器を実現し、前記蓋体は前記容器体に嵌合するような前記蓋体の中央部に段差形状を有した電子部品容器において、前記蓋体の段差部より該蓋体の周辺端に至る範囲には、合金メッキの封止材を施したことにより課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子等のパッケージの構造に関し、特にセラミックパッケージの気密構造に関し、コストを安くして、性能や信頼性が高い圧電振動子と圧電振動素子の封止構造を提供することである。
【背景技術】
【0002】
昨今の電子機器の高機能、高精度化、小型化、軽量化に伴い、これらの電子機器に搭載する電子部品にも同様の課題が要求されてきている。例えば電子部品の容器構造をとってみても、従来の金属容器に代わり、セラミック材料を用いたものへの展開で前述する要求課題の改善に取り組んできている現状にある。一般的なセラミック材料を用いた気密容器は、セラミック材料を凹状に積層しコバール金属フタにニッケルメッキ処理を施したものとをシーム溶接で溶着したものが気密性の観点からみても最も一般的な手法で気密容器を構成している。
【0003】
従来から用いられているセラミック容器と金属フタとをシーム溶接で溶着する手法は、最も一般的なシーム溶接を一例に説明すると、気密容器は溶着部にあたるセラミック容器にタングステンのメタライズ処理を行いメタライズ膜を形成し、その上にニッケルメッキ処理し、更にその上に金メッキ処理を行い、金メッキの上に銀ろう付けによりコバールリングを配置してある。このコバールリングには(金属フタと接する面に)ニッケルメッキ処理とその上に金メッキ処理がなされている。
【0004】
一方、金属フタはコバール材の全面にニッケルメッキ処理がなされている。従って、金属フタの全面にニッケルメッキ処理を施すために金属フタは所定寸法に切断(型抜き)がなされていなければならない。これら凹状のセラミック容器と金属フタとをシーム溶接で溶着することにより気密容器を構成することができる。
【0005】
そしてシーム溶接で不可欠なことは、セラミック容器と金属フタとをシーム溶接で溶着する場合には、金属フタ上部からシーム溶接ヘッドにより加圧と電流を流すことにより、金属フタ表面のニッケルメッキ処理とコバールリングとの接触部とが溶着し、実際には金属フタのニッケルメッキ処理とコバールリングの金メッキとで金属フタとセラミック容器とを接合する格好となる。
【0006】
要するに、溶着部は溶着外周面に沿って接合された気密容器構造を成すものであり、シーム溶接に必要な電流はセラミック容器に配置されるコバールリング全体にも供給する必要がある。また昨今の電子部品は外形寸法が極小化傾向にあることから、上述するシーム溶接ヘッドを用いた気密容器を構成する封止方法では不可能となっている。
【0007】
そこで小型の電子部品の封止技術として、セラミックパッケージにコバールにニッケルメッキ処理を行い、金フラッシュメッキを施した金−スズのリング状の封止材を介して、コバールにニッケルメッキ処理と、金フラッシュメッキを施した金−スズペースト蓋を搭載し、上述のパッケージから蓋体を高熱の温度炉中で熱融着封止する手法が用いられている。
【特許文献1】特開平08−046075号公報
【特許文献2】特開2004−103880号公報
【特許文献3】特願2000−77965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述するように昨今の電子部品の中の一例とした水晶振動子は小型化が進むことで、従来多用されていたシーム溶接封止に代わり、封止工程の簡略化と機械的制約、封止精度の信頼性を考慮し向上した製造方法が必要となっている。また、上述する技術の中で融着封止という製造方法も取り入れられているが、水晶振動子の外形寸法の小型化が極端に早く展開する上で多くの課題も山積されているのが現状ある。
【0009】
とりわけ、現状では図3(b)に示すように各金−スズ蓋を搭載し熱融着炉にて封止を行ってきたが、金−スズの量がパッケージの外形寸法(蓋体の面積)が小さくなるにつれて、セラミックパッケージシール部面積との寸法差が大きくなり、余剰分となった融解した金−スズがセラミックパッケージ内部に流れ込み、内部の水晶振動板に影響を与え、ひいては水晶振動子そのものの周波数特性を悪化させていると言う問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明は、電子部品を収納する容器体と、前記容器体に蓋体を被せて融着封止により密閉容器を実現し、前記蓋体は前記容器体に嵌合するような前記蓋体の中央部に段差形状を有した電子部品容器において、
前記蓋体の中心部には凸部で段差部を設け、前記蓋体の段差部より該蓋体の周辺端に至る範囲には、金とスズの合金メッキの封止材を施したことを特徴とする電子部品容器である。
【0011】
また、上述する蓋体はコバールと42アローイ金属を用い、中心部に対して周辺端に至る範囲で、蓋体の厚みを薄くしてあることも特徴であり、蓋体の中心段差部より該蓋体の周辺端に至る寸法は、前記蓋体の外周部から0.2〜0.35mmの範囲で、厚み差としては20〜40μmの電子部品容器である。
【0012】
要するに、図3(a)のようにコバールにニッケルメッキ、金フラッシュメッキあるいは、42アロイにニッケルメッキと金フラッシュメッキを施した金−スズクラッドリッド(蓋体)の、外縁部にへこみ処理あるいは、つぶし加工を施し、金−スズリング状の封止材あるいは、金−スズペースト加工を施し搭載することにより、余剰に融解した場合の金−スズが流れ込む危険性を低減し流れ込み量を少なくすることができる。
【0013】
従って水晶振動子に与えるダメージを低減すこことにより水晶振動子そのものの周波数特性の悪化を軽減することができる。また、くぼみ処理部、あるいはつぶし加工部の寸法をパッケージシール幅最大のズレ幅量で設計し管理することにより、セラミックパッケージより外側に蓋体がはみ出ることも無く、蓋体のズレ防止に応用することができる。以上により従来の課題を解決する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば蓋体とパッケージ部を確実に接合し、圧電振動子の気密封止の信頼性を向上させることができる。また、封止部の構造に工夫を重ねることで、封止部材が水晶振動子を収納するパッーケージ容器の内側に流れ込むことが無くなるために水晶振動子に形成されている電極への付着を防止することができるので、水晶振動子そのものの周波数特性の悪化を軽減することができる。
【0015】
また、くぼみ処理部、あるいはつぶし加工部の寸法をパッケージシール幅最大のズレ幅量で設計し管理することにより、セラミックパッケージより外側に蓋体がはみ出ることも無く、蓋体のズレ防止に応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に従ってこの発明の実施例を説明する。なお、各図において同一の符号は同様の対象を示すものとする。なお、図2と図3の描画については、紙面の上部に蓋体2の容器内部方向で示している。
図1は本発明の封止部を示す電子部品容器3の要部断面図である。図1は封止前のセラミック材から成るセラミック容器体1と、蓋体2の部分断面図である。セラミック容器体1にはその内側に電子部品を収納する凹部空間があり、この凹部を封止するように蓋体2を載せ熱融着でセラミック容器体1と蓋体2とを接合し密閉容器構造を得るものである。
【0017】
セラミック容器体1の蓋体2との溶着部にはリング状にした接合部材を配置し蓋体2を被せて加熱により接合部材を融解し接合するものである。
【0018】
図2に示すのは本発明の特徴である蓋体2に注目した平面図である。電子部品を収納する容器体と、前記容器体に蓋体2を被せて融着封止により密閉容器を実現し、前記蓋体2は前記容器体に嵌合するような前記蓋体2の中央部に段差形状を有した電子部品容器において、前記蓋体2の中心部には、ニッケルメッキに金フラッシュを施し、前記蓋体2の段差部より該蓋体2の周辺端に至る範囲には、金とスズの合金メッキを施した電子部品容器である。
【0019】
図2に示すように、上述する蓋体2はコバールと42アローイ金属を用い、中心部に対して周辺端に至る範囲で、蓋体2の厚みを薄くし、蓋体2の中心段差部より蓋体2の周辺端に至る0.2〜0.35mmの範囲で、蓋体2の中心部との厚み差として20〜40μmの段差を設けたものである。
【0020】
このことにより、金−スズペーストリッド(蓋体)は母材外縁部にくぼみ処理を行った上に金−スズリングの封止材を搭載あるいは、金−スズペースト加工を施す事により、余剰に融解した場合の金−スズが流れ込む危険性を低減し流れ込み量を少なくすることができる。
【0021】
なお、図3に示すのは本発明の蓋体2と従来の蓋体とによる金−スズリング時の封止材の熱融着時の流れ込む様子の違いを概念図として説明したもので、本発明の蓋体2を用いることで、融着時の特に蓋体2の中心部に至る方向への封止部材の流れ込みを大幅に削減することができる。図3(a)は本発明の蓋体2の図2断面A−A部の様子を示し、図3(b)は従来の蓋体2の様子を示したものである。なお、本発明(図3(a))の蓋体2を用いることで、リング状の封止部材の形状くずれを起こしにくい効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の封止部を示す電子部品容器の要部断面図である。
【図2】本発明の特徴である蓋体に注目した平面図である。
【図3】本発明の蓋体と従来の蓋体とによる金−スズリング状封止材の熱融着時の流れ込む様子の違いを説明する概念図である。
【符号の説明】
【0023】
1 容器体
2 蓋体
3 電子部品容器
4 封止材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収納する容器体と、前記容器体に蓋体を被せて熱融着封止により密閉容器を実現し、前記蓋体は前記容器体に嵌合するような前記蓋体の中央部に段差形状を有した電子部品容器において、
前記蓋体の段差部より該蓋体の周辺端に至る範囲に、封止材を施したことを特徴とする電子部品容器。
【請求項2】
請求項1記載の蓋体はコバールにニッケルメッキ、金フラッシュメッキあるいは、42アロイにニッケルメッキと金フラッシュメッキを施した金−スズクラッドを用いたことを特徴とする電子部品容器。
【請求項3】
請求項1記載の蓋体に処理した封止材は、金とスズの合金メッキか、金−スズのペースト状であることを特徴とする電子部品容器。
【請求項4】
請求項1記載の該蓋体の中心段差部より該蓋体の周辺端に至る範囲とは、前記蓋体の外周部から0.2〜0.35mmの範囲であることを特徴とする電子部品容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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