説明

電子部品搭載装置

【課題】簡易な構成で、電子部品における吸着ノズルの吸着位置調整を確実に行い、電子部品の実装に要する時間を短縮することができる電子部品搭載装置を提供する。
【解決手段】電子部品搭載装置において、記憶装置に記憶された駆動パターンに基づいて駆動モータ164を駆動制御するモータ制御手段,モータ制御手段による駆動制御の際、振動部165の上下振動を制御する振動部制御手段として機能するCPUを備え、駆動パターンは、部品テープAの搬送動作における加速と減速の一方の加速度による部品テープA内の電子部品Cの慣性力のみが、当該電子部品Cと当該電子部品Cが収容される収容部との摩擦に打ち勝つように設定され、振動部制御手段は、駆動モータ164の加速度の絶対値が所定値以上となるタイミングで振動部165が上下振動するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ノズルで電子部品を吸着して基板に搭載する電子部品搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品搭載装置では、吸着ノズルを搭載し、X−Y平面を自在に移動可能なヘッドを備え、電子部品フィーダにより吸着領域まで搬送される電子部品を吸着ノズルで吸着することで電子部品を受け取り、基板の部品搭載箇所までヘッドが移動して電子部品の搭載を行っている。
そして、上記ヘッドによる電子部品の吸着を行う際、重力や所定の振動等の影響による吸着領域内での電子部品の吸着位置のバラツキに起因して、電子部品の吸着エラーが生じるという問題があった。
【0003】
上記電子部品フィーダは、電子部品を配置したキャビティ領域を有するキャリアテープと、キャリアテープを被覆して貼付されたカバーテープと、により構成さる部品テープを備える。そこで、例えば、吸着ノズルにより電子部品を吸着する直前に、キャビティ領域に対向するカバーテープに貫通孔を形成し、この貫通孔からキャビティ領域内にエアーを吹き込ませることにより、吹き込んだエアーが電子部品をキャビティ領域底面から浮き上がらせて、吸着ノズルで確実に電子部品を吸着保持できる電子部品搭載装置が知られている(特許文献1等参照)。
また、例えば、吸着ノズルによる吸着位置の確認箇所に移送された電子部品が、吸着ノズルと並設されたカメラにより撮影され、この電子部品の画像情報に基づいて、電子部品の供給箇所に供給された電子部品に対する吸着ノズルの吸着位置を確認し、当該吸着位置の誤差を補正等することができるものが知られている(特許文献2,3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−235647号公報
【特許文献2】特開2006−351911号公報
【特許文献3】特許第2590987号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電子部品搭載装置を用いた場合、エアーを吹き付ける手段が必要となるとともに、部品テープ自体に貫通孔が形成されたもので無ければならず、部品テープ内に異物が混入してしまうおそれがある。また、上記特許文献2又は特許文献3に記載の発明の如く吸着ノズルと並設されたカメラを用いる場合、一旦カメラ自体を電子部品の真上に合わせて撮像を行った上で吸着ノズルの位置を調整するため、余分な時間が発生し、電子部品の実装に要する時間が掛かるという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、簡易な構成で、電子部品における吸着ノズルの吸着位置調整を確実に行い、電子部品の実装に要する時間を短縮することができる電子部品搭載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、電子部品を供給する電子部品フィーダと、前記電子部品フィーダにより供給された電子部品を吸着する吸着ノズルを備えたヘッドと、を備え、前記吸着ノズルに吸着された電子部品を基板に搭載する電子部品搭載装置において、前記電子部品フィーダは、前記電子部品を個別に収容する収容部を有する部品テープを前記吸着ノズルにより前記電子部品が吸着される吸着領域まで搬送する搬送部と、前記搬送部を駆動する駆動モータと、前記吸着領域近傍で前記部品テープの下面に当接し、前記電子部品を上下振動させる振動部と、を有し、前記駆動モータの駆動パターンを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された駆動パターンに基づいて前記駆動モータを駆動制御するモータ制御手段と、前記モータ制御手段による駆動制御の際、前記振動部の上下振動を制御する振動部制御手段と、を備え、前記駆動パターンは、前記部品テープの搬送動作における加速と減速の一方の加速度による前記部品テープ内の電子部品の慣性力のみが、前記振動部による振動時の当該電子部品と当該電子部品が収容される収容部との摩擦に打ち勝つように設定され、前記振動部制御手段は、前記駆動モータの加速度の絶対値が所定値以上となるタイミングで前記振動部が上下振動するように制御することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子部品搭載装置において、前記基板に搭載する電子部品を搬送する部品テープを特定する特定手段を備え、前記電子部品フィーダは、複数の電子部品を各々供給するように複数設けられており、前記記憶手段は、前記駆動モータの駆動パターンを、電子部品を搬送する部品テープごとに記憶しており、前記モータ制御手段は、前記特定手段により特定された部品テープに応じた駆動パターンを前記記憶手段より抽出し、当該抽出した駆動パターンで前記駆動モータを駆動制御することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電子部品搭載装置において、前記電子部品に作用する前記搬送動作における加速の向きと逆方向の慣性力により、前記電子部品を前記摩擦による摩擦力の作用方向と逆向きに移動させることで、前記電子部品を吸着領域における収容部の端部に位置させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動モータは、部品テープの搬送動作における加速と減速の一方の加速度による部品テープ内の電子部品の慣性力のみが、当該電子部品と収容部との摩擦に打ち勝つように駆動制御することにより、電子部品を吸着領域における収容部の端部に位置させ、当該端部にて吸着ノズルに吸着させることが可能となる。具体的には、部品テープによる電子部品の搬送動作が行われる際に、当該電子部品に上記搬送動作による加速の向きと逆方向の慣性力が作用することを利用して、電子部品を摩擦力の作用方向と逆向きに移動させることで、電子部品を吸着領域における収容部の端部に位置させ、当該端部にて吸着ノズルに吸着させることが可能となる。さらに、本発明によると、駆動モータの加速度の絶対値が所定値以上となるタイミングで、部品テープの下面に当接する振動部が上下振動するように制御されるので、電子部品と収容部との摩擦の影響を緩和することが可能となり、一層確実に電子部品を収容部の端部へと移動させることができる。また、本発明では、上記のような構成で吸着位置が調整されるので、エアーを吹き付ける構造を必要とせず、カメラによる撮像を行う必要もない。
したがって、本発明は、簡易な構成で、電子部品における吸着ノズルの吸着位置調整を確実に行い、電子部品の実装に要する時間を短縮することができる電子部品搭載装置であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る電子部品搭載装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】X軸方向に沿った視線から見たヘッドの側面図である。
【図3】本発明に係る電子部品フィーダの概略構成を示す説明図である。
【図4】図3におけるT部の拡大図である。
【図5】本発明に係る電子部品搭載装置の制御を説明するためのブロック図である。
【図6】駆動モータにおいて電流を流すコイル端子をポインタごとに記載したテーブルである。
【図7】駆動モータの駆動パターンを例示した図であり、(A)は駆動モータの加速度及び速度の時間的変化を、(B)は振動部の振動状態の切換え(ON/OFF)を、(C)は駆動モータ内で電流を付与するコイル端子の切換えを、(D)は駆動モータ及び振動部に付与する電流値を、(E)は(C)の切換えられた各々の状態の継続時間(タイマ値)を、それぞれ示す。
【図8】本発明に係る電子部品搭載装置による電子部品の吸着位置調整処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図7に示す駆動パターンの別のパターンを例示した図であり、(A)は駆動モータの加速度及び速度の時間的変化を、(B)は振動部の振動状態の切換え(ON/OFF)を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の実施形態)
本発明の実施形態について、図1〜図8に基づいて説明する。以下、図示のように、水平面において互いに直交する二方向をそれぞれX軸方向とY軸方向とする。また、これらに直交する鉛直方向をZ軸方向とする。
【0013】
電子部品搭載装置100は、基板Kに各種の電子部品Cの搭載を行うものであって、例えば、X軸方向に基板を搬送する基板搬送手段108と、当該基板搬送手段108による基板搬送経路の途中に設けられた基板Kに対する電子部品搭載作業を行うための基板保持部104と、搭載の対象となる電子部品Cを供給する複数の電子部品フィーダ160をX軸方向に複数備えた部品供給部150と、吸着ノズル141を昇降可能に保持して電子部品Cの保持を行うヘッド140と、ヘッド140を部品供給部102と基板保持部104とを含んだ作業エリア内の任意の位置に駆動搬送するヘッド移動機構としてのX−Yガントリ107と、上記各構成を搭載支持するベースフレーム114と上記各構成の動作制御を行う制御部10と、を備えている。
【0014】
(基板搬送手段及び基板保持部)
基板搬送手段108は、図示しない搬送ベルトを備えており、その搬送ベルトにより基板KをX軸方向に沿って搬送する。
基板保持部104は、基板搬送手段108による基板搬送経路の途中に設けられ、電子部品Cを基板Kへ搭載する際の作業位置で基板Kを固定保持する。そして、この基板保持部104は、作業位置まで搬送された基板Kを保持し且つ下方から基板に接する図示しない複数の支持ピンで支持し、上方から電子部品Cの搭載時の基板Kの撓みを防止する。
これにより、基板Kは安定した状態で保持されて電子部品Cの搭載作業が行われる。
【0015】
(部品供給部)
部品供給部150は、各々の電子部品Cを供給する複数の電子部品フィーダ160と、当該電子部品フィーダ160をX軸方向に並べて保持するフィーダバンク151と、からなる。
【0016】
フィーダバンク151は、ベースフレーム114のY軸方向一端部に設けられ、X−Y平面に沿って各電子部品フィーダ160を載置する載置板151aと、各電子部品フィーダ160の先端部を突き当てて位置決めする立板151bと、から構成される。かかるフィーダバンク151は、ベースフレーム114に対して着脱可能であり、装着時には定位置に固定される構造となっている。そして、電子部品フィーダ160の先端部には位置決め用の図示しない突起が形成されており、上記フィーダバンク151の立板151bには、突起が挿入される位置決め用穴がX軸方向に並んで形成されている。これにより、各電子部品フィーダ160は、載置板151aの上面において、X軸方向に沿って羅列し且つX軸方向における定位置に装備される。
なお、各電子部品フィーダ160にはラッチ機構が設けられ、ラッチ機構の操作によりフィーダバンク151への着脱が可能となっている。
【0017】
電子部品フィーダ160は、例えば、図3及び図4に示すように、部品テープAをヘッダ140(吸着ノズル141)により電子部品Cが吸着される吸着領域160aまで搬送する搬送部160bと、搬送部160bを駆動させる駆動モータ164と、部品テープAの搬送方向Lにおいて吸着領域160aの下方に設けられた振動部165と、を含んで構成される。
【0018】
搬送部160bは、例えば、部品テープAが巻かれたテープリール161と、部品テープAを吸着領域160aに向けて送り出すスプロケットホイール162と、部品テープAの表面に貼付されたカバーテープBを回収する回収リール163と、を含んで構成される。
【0019】
テープリール161は、例えば、複数の電子部品Cを長手方向に均一間隔で形成された凹状の収容部161aに収容する部品テープAを巻回してなり、スプロケットホイール162の回転に応じて、当該部品テープAを搬送方向Lに向けて送り出す。
【0020】
スプロケットホイール162は、例えば、部品テープAの下面の孔部(図示省略)に係合する複数の突起部(図示省略)が外周面に形成されている。そして、スプロケットホイール162は、駆動モータ164と伝達ベルト162aを介して接続されており、駆動モータ164の回転に応じて回転する際に、上記突起部により部品テープAを確実に搬送方向Lへ送り出すことができる。
【0021】
回収リール163は、例えば、駆動モータ164と伝達ベルト163aを介して接続されており、駆動モータ164の回転に応じて回転する際に、図示しない剥離部により部品テープAの表面から剥離されるカバーテープBを回収して巻回する。このカバーテープBの剥離した部品テープA(キャリアテープ)では、収容部161aに収容される電子部品Cが上方から露出した状態となるため、吸着領域160aにおいて吸着ノズル141により電子部品Cが吸着可能な状態となる。
【0022】
駆動モータ164は、例えば、制御部10より出力される駆動信号に応じて回転するモータであり、コイルを1相2相交互に励磁する1−2相励磁ステッピングモータで構成され、回転角に応じて部品テープAを図3に示す搬送方向Lに搬送させる。
具体的には、駆動モータ164は、ロータを磁化する2つのコイル(一方のコイルの端子をXとX′、他方のコイルの端子をYとY′)を備えて構成され、例えば、図6のテーブル180で示すポインタ0〜7を順々に変化させて、電流を付与するコイル端子X,X′,Y,Y′を段階的に切換えることで、モータの回転角を8通りに(細やかに)調整することができる。なお、図6において、「1」と「0」は、各々のコイル端子に「電流が流れている状態」と「流れていない状態」をそれぞれ示す。
【0023】
振動部165は、例えば、搬送方向Lの吸着領域160aの下方において、部品テープAの下面に当接するように設けられ、制御部10より出力される駆動信号に応じて(電流が付与されることにより)上下方向に往復動可能に構成された、圧電スピーカ等と同様な直流振動子ユニットである。つまり、振動部165に電流が付与されて振動部165が上下振動することにより、上部の部品テープA(及び電子部品C)に所定の上下振動が作用する。
【0024】
(X−Yガントリ)
X−Yガントリ107は、X軸方向にヘッド140の移動を案内するX軸ガイドレール107aと、このX軸ガイドレール107aと共にヘッド140をY軸方向に案内する二本のY軸ガイドレール107bと、X軸方向に沿ってヘッド140を移動させる駆動源であるX軸モータ109と、X軸ガイドレール107aを介してヘッド140をY軸方向に移動させる駆動源であるY軸モータ110とを備えている。そして、各モータ109、110の駆動により、ヘッド140を二本のY軸ガイドレール107bの間となる領域のほぼ全体に搬送することを可能としている。
なお、各モータ109、110はサーボモータであり、ぞれぞれの回転量が制御部10に認識され、所望の回転量となるように制御されることにより、ヘッド140を介して吸着ノズル141の位置決めを行っている。
また、電子部品搭載作業の必要上、前述した部品供給部150、基板保持部104はいずれもX−Yガントリ107によるヘッド140の搬送可能領域内に配置されている。
【0025】
(ヘッド)
ヘッド140は、例えば、図1,図2,図5に示すように、その先端部で空気吸引により電子部品Cを保持する吸着ノズル141と、剛体からなる支持フレーム142と、吸着ノズル141に回転動作を付与する回転モータ144と、支持フレーム142に対してZ軸方向に沿って上下動可能に支持されると共に吸着ノズル141回転可能に支持する移動体145と、ノズル141に対してZ軸方向に沿って上下動動作を付与する駆動源であるZ軸モータ146と、を備えている。
【0026】
上記吸着ノズル141は、内部が中空であってその下端部で電子部品Cの吸着を行うと共にその上端部で図示しないエアーチューブから負圧の供給を受けている。
【0027】
さらに、吸着ノズル141は、図示しないスラスト軸受けを介して移動体145に支持されており、移動体145と共に上下動を行いつつ移動体145に対して回転動作を可能としており、電子部品Cの吸着、搬送、搭載等を行う際の上下動を可能としている。
【0028】
また、ヘッド140には、図1に示すように、電子部品Cの搭載時に基板Kに付された位置決めマークを撮像し、基板位置を認識するための基板撮像カメラ152が搭載されている。この基板撮像カメラ152は、その視線がZ軸方向に沿って下方を向くようにヘッド140に取り付けられている。
【0029】
(制御部)
制御部10は、図5に示すように、主に、X−Yガントリ107のX軸モータ109、Y軸モータ110、ヘッド140において吸着ノズル141の昇降を行うZ軸モータ146、吸着ノズル141の回転を行う回転モータ144、吸着ノズル141への負圧の供給と停止を切り換える切り換え用電磁弁153、電子部品Cの搭載時に基板位置を認識するための基板撮像カメラ152、搬送部160b(部品テープA)を搬送方向Lに搬送する駆動モータ164、電流が付与されて上下振動する振動部165等と接続される。
そして、制御部10は、例えば、上記各構成について各種の制御プログラムに従って各種の処理及び制御を実行するCPU30(モータ制御手段、振動部制御手段、特定手段)と、当該各種の処理及び制御を実行するためのプログラムが格納されたシステムROM12と、各種のデータを格納することで各種の処理の作業領域となるRAM13と、CPU30と各種の機器との接続を図るI/F(インターフェース)14と、各種設定情報等が格納される不揮発性の記憶装置17(記憶手段)と、各種の設定や操作に要するデータの入力を行うための操作パネル15と、各種設定の内容や必要情報の提示等を行う表示モニタ18と、を有している。
【0030】
記憶装置17は、基板に搭載する各電子部品Cの搭載順番や搭載位置、当該搭載する電子部品Cを識別する識別子等を記憶した搭載データと、各電子部品フィーダ160が供給する電子部品Cの識別子及び当該電子部品Cを送る部品テープAの番号(部品テープ番号)等を電子部品フィーダ160ごとに記憶したフィーダ情報と、部品テープ番号に対応付けて駆動モータ164の駆動パターンに関する情報を各々記憶した駆動パターンデータと、その他の設定情報等を格納する。
【0031】
ここで、駆動モータ164の駆動パターンとは、例えば、部品テープAの搬送動作における加速と減速の一方の加速度による部品テープA内の電子部品Cの慣性力のみが、振動部165による振動時における当該電子部品Cと当該電子部品Cが収容される収容部161aとの摩擦に打ち勝つように設定したものを、部品テープAの種類ごとに(部品テープ番号ごとに)パターン化したものである。つまり、部品テープAによる電子部品Cの搬送動作が行われる際に、当該電子部品Cに上記搬送動作による加速の向きと逆方向の慣性力が作用することを利用して、吸着領域160aに搬送される電子部品Cを摩擦力の作用方向と逆向きに移動させ、収容部161aの端部に位置させるための駆動モータ164の加減速パターンである。
【0032】
また、駆動パターンデータとは、図6に示す駆動モータ164内の電流を付与するコイル端子(X,Y,X′,Y′)をポインタ単位で記載したテーブル180と、上記各々のポインタに基づいて駆動モータ164を駆動する時間(例えば、図7(E)に示す、ポインタ「0」:4.5ms,「1」:3ms,「2」:2ms,「3」:1.5ms,・・・,などのタイマ値)と、駆動する際の電流値(例えば、図7(D)のAmov)と、等が部品テープAの種類に応じて記載されたデータである。
そして、例えば、CPU30が、当該駆動パターンデータに基づいて、ポインタを設定し、当該ポインタに基づく駆動時間で特定のコイル端子に電流を流し、ポインタを切換えて同様の過程を繰り返して駆動モータ164を駆動させることで、図7(A)に示すような加速度/速度変化をもたせることができる。これにより、例えば、図7(A)の「加速度」や「速度」に示すような、駆動モータ164を急激に加速させた後緩やかに減速させることで、図4の搬送方向Lと逆向きの慣性力が電子部品Cと収容部161aとの摩擦力に打ち勝った場合、電子部品Cが搬送方向Lと逆向きに移動を行うため、電子部品Cの吸着ノズル141による吸着位置を図4の収容部160aの端部A1に調整することが可能となる。
さらに、駆動パターンデータには、図7(A)(B)に示すように、駆動モータ164の加速度が最大値を示す近傍(加速度の絶対値が所定値以上となるタイミング)で振動部165に電流を付与し、振動部165を上下振動させるための電流値/電流を付与する時間に関するデータ(例えば、図7(D)のAvib)が含まれる。つまり、振動部165を上下振動させることにより、電子部品Cと収容部161aとの摩擦力の影響を緩和することができるので、一層確実に電子部品Cの吸着位置を収容部161aの端部に調整することが可能となる。
なお、図7(C)の「X」「Y」「X′」「Y′」は、駆動モータ164内の各々のコイル端子に電流が流れる状態/流れない状態の時間的変化を示しており、各々縦線で囲われた領域は、左から順に図6のテーブル180のポインタ0〜7の状態に対応している。
また、上記駆動パターンは、電子部品Cと収容部161aとの摩擦と駆動モータ164の加速度との対応関係を計算により求めて定めても良いが、振動部165により電子部品Cに振動を付与した状態で部品テープAを搬送して、実際に収容部161a内で電子部品Cが端部A1又はA2側に移動するための加減速パターンを試験的に求めることで定めても良い。
【0033】
CPU30は、システムROM12に記憶された各種制御プログラムを実行することにより、基板上への各電子部品Cの搭載等を制御する。
具体的には、CPU30は、搭載データを読み込み、基板に搭載する電子部品Cの識別子を取得し、当該識別子に基づいてフィーダ情報から当該電子部品Cを供給する電子部品フィーダ160を特定する。そして、CPU30は、特定された電子部品フィーダ160より部品テープ番号を取得して当該電子部品Cを送る部品テープAを特定し、上記部品テープ番号に対応する駆動モータ164の駆動パターンを駆動パターンデータより抽出する。そして、CPU30は、上記抽出した駆動パターンに基づいて駆動モータ164を駆動制御するとともに、振動部165の上下振動を制御することにより、基板上に搭載する電子部品Cの吸着ノズル141による吸着位置を収容部161aの端部に調整することができる。
【0034】
(電子部品の吸着位置調整処理)
図8のフローチャートを用いて本実施形態における電子部品搭載装置100による電子部品Cの吸着位置調整処理について説明する。
【0035】
まず、CPU30は、記憶装置17の搭載データを読み込み、電子部品Cのリストから基板に搭載する電子部品Cの識別子を取得し、当該識別子に基づいてフィーダ情報から当該電子部品Cを供給する電子部品フィーダ160を特定する(ステップS1)。
次いで、CPU30は、ステップS1にて特定された電子部品フィーダ160に配設される部品テープAの番号(部品テープ番号)をフィーダ情報より取得する(ステップS2)。
次いで、CPU30は、ステップS2にて特定した部品テープ番号に応じて駆動モータ164の駆動パターンを決定する(ステップS3)。
次いで、CPU30は、駆動パターンデータを参照して、ステップS3にて決定した駆動パターンで駆動モータ164が駆動するように、テーブル180や、上記テーブル180に記載される各々のポインタに基づいて駆動モータ164を駆動する時間(タイマ値)や、上記駆動時の電流値等を読み込み、現在ポインタ(例えば、図5のポインタ0)及びタイマ値(例えば、図4(C)及び図5のポインタ0に対応するコイル端子「X」「Y′」へ電流を付与する時間であり、図4(E)の4.5msに対応する)を設定し、当該ポインタに対応するコイル端子に電流を付与して駆動モータ164の駆動を開始する(ステップS4)。また、この際、CPU30は、駆動パターンデータに基づいて振動部165を上下振動させるタイミングを設定して当該タイミングに応じて振動部165に電流を付与するとともに、タイマ値に対する計時処理を開始する。なお、タイマ値が0msと設定されている場合を、駆動モータ164を停止するタイミングとする。
【0036】
次いで、CPU30は、ステップS4にて設定したタイマ値が0以下となったか否かを判断し(ステップS5)、0以下で無いと判断した場合、0以下となるまで当該ポインタに基づく駆動モータ164の駆動を継続する(ステップS5;No)。一方で、CPU30は、ステップS5で0以下となったと判断した場合(ステップS5;Yes)、現在のポインタに1を付加して次のポインタ(例えば、図5のポインタ1)に移行させる(ステップS6)。
次いで、CPU30は、移行させたポインタに該当する欄がテーブル180に存在するか否か(つまり、移行させたポインタがテーブル180のポインタの最大値を超過したものとなっているか否か)を判断し(ステップS7)、存在しないと判断した場合(ステップS7;No)、現在のポインタをテーブル180の先頭ポインタに戻す(ステップS8)。
次いで、CPU30は、ステップS7にて存在すると判断した場合(ステップS7;Yes)のポインタ、及び、ステップS8にて変更された先頭ポインタのタイマ値を駆動パターンデータより読み込む(ステップS9)。
そして、CPU30が、ステップS9にて読み込まれたタイマ値が0であると判断した場合(ステップS10;Yes)は本処理を終了し、0でないと判断した場合(ステップS10;No)はステップS5以降の処理を繰り返す。
【0037】
以上により本実施形態に係る電子部品搭載装置100によると、電子部品フィーダ160は、電子部品Cを個別に収容する収容部161aを有する部品テープAを吸着ノズル141により電子部品Cが吸着される吸着領域160aまで搬送する搬送部160bと、搬送部160bを駆動する駆動モータ164と、吸着領域160a近傍で部品テープAの下面に当接し、電子部品Cを上下振動させる振動部165と、を有し、駆動モータ164の駆動パターンを記憶する記憶装置17と、記憶装置17に記憶された駆動パターンに基づいて駆動モータ164を駆動制御するモータ制御手段,モータ制御手段による駆動制御の際、振動部165の上下振動を制御する振動部制御手段として機能するCPU30と、を備え、駆動パターンは、部品テープAの搬送動作における加速と減速の一方の加速度による部品テープA内の電子部品Cの慣性力のみが、振動部165の振動時の当該電子部品Cと当該電子部品Cが収容される収容部161aとの摩擦に打ち勝つように設定され、振動部制御手段は、駆動モータ164の加速度の絶対値が所定値以上となるタイミングで振動部165が上下振動するように制御する。
【0038】
つまり、電子部品搭載装置100において、駆動モータ164は、部品テープAの搬送動作における加速と減速の一方の加速度による部品テープA内の電子部品Cの慣性力のみが、当該電子部品Cと収容部161aとの摩擦に打ち勝つように駆動制御される。そのため、部品テープAによる電子部品Cの搬送動作が行われる際に、当該電子部品Cに上記搬送動作による加速の向きと逆方向の慣性力が作用することを利用して、電子部品Cを摩擦力の作用方向と逆向きに移動させることで、電子部品Cを吸着領域160aにおける収容部161aの端部に位置させることが可能となる。さらに、本発明によると、駆動モータ164の加速度の絶対値が所定値以上となるタイミングで振動部165が上下振動するように制御されるので、電子部品Cと収容部161aとの摩擦力の影響を緩和することが可能となり、一層確実に電子部品Cを収容部161aの端部へ移動させることができる。また、電子部品搭載装置100では、上記のような構成で吸着位置が調整されるので、エアーを吹き付ける構造を必要とせず、カメラによる撮像を行う必要もない。
したがって、本発明は、簡易な構成で、電子部品における吸着ノズルの吸着位置調整を確実に行い、電子部品の実装に要する時間を短縮することができる電子部品搭載装置であるといえる。
【0039】
また、電子部品搭載装置100によると、CPU30は、基板Kに搭載する電子部品Cを搬送する部品テープAを特定する特定手段としての機能を備え、電子部品フィーダ160は、複数の電子部品Cを各々供給するように複数設けられており、記憶装置17は、駆動モータ164の駆動パターンを、電子部品Cを搬送する部品テープAごとに記憶しており、モータ制御手段は、特定手段により特定された部品テープAに応じた駆動パターンを記憶装置17より抽出し、抽出した駆動パターンで駆動モータ164を駆動制御するように構成されている。
【0040】
つまり、電子部品搭載装置100は、モータ制御手段により部品テープAの種類に応じた駆動パターンで駆動モータ164を駆動制御するので、部品テープAの種類に左右されずに基板Kに搭載する複数の電子部品Cを収容部161aの端部へと一様に移動させることができる。したがって、例えば、複数の吸着ノズル141を備えたヘッド140により、複数の電子部品フィーダ160から同時に異なる電子部品Cを同じ吸着位置から吸着して、基板Kへと搭載することが可能となる。
【0041】
なお、本発明の範囲は上記実施形態に限られることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
具体的には、上記実施形態において、図7(A)(B)に示すように、駆動モータ164
を急激に加速させた後緩やかに減速させ、振動部165を上記加速時の最大加速度近傍より上下振動させることで、電子部品Cの吸着ノズル141による吸着位置を図4の収容部161aの端部A1に調整させているが、例えば、図9(A)(B)に示すように、駆動モータ164を緩やかに加速させた後急激に減速させ、振動部165を上記減速時の最大加速度近傍より上下振動させることで、電子部品Cの吸着ノズル141による吸着位置を図4の収容部161aの端部A2に調整させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 制御部
17 記憶装置(記憶手段)
30 CPU(モータ制御手段、振動部制御手段、特定手段)
100 電子部品搭載装置
140 ヘッド
141 吸着ノズル
160 電子部品フィーダ
160a 吸着領域
160b 搬送部
161a 収容部
164 駆動モータ
165 振動部
A 部品テープ
C 電子部品
K 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を供給する電子部品フィーダと、前記電子部品フィーダにより供給された電子部品を吸着する吸着ノズルを備えたヘッドと、を備え、前記吸着ノズルに吸着された電子部品を基板に搭載する電子部品搭載装置において、
前記電子部品フィーダは、
前記電子部品を個別に収容する収容部を有する部品テープを前記吸着ノズルにより前記電子部品が吸着される吸着領域まで搬送する搬送部と、
前記搬送部を駆動する駆動モータと、
前記吸着領域近傍で前記部品テープの下面に当接し、前記電子部品を上下振動させる振動部と、
を有し、
前記駆動モータの駆動パターンを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された駆動パターンに基づいて前記駆動モータを駆動制御するモータ制御手段と、
前記モータ制御手段による駆動制御の際、前記振動部の上下振動を制御する振動部制御手段と、
を備え、
前記駆動パターンは、前記部品テープの搬送動作における加速と減速の一方の加速度による前記部品テープ内の電子部品の慣性力のみが、前記振動部による振動時の当該電子部品と当該電子部品が収容される収容部との摩擦に打ち勝つように設定され、
前記振動部制御手段は、前記駆動モータの加速度の絶対値が所定値以上となるタイミングで前記振動部が上下振動するように制御することを特徴とする電子部品搭載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品搭載装置において、
前記基板に搭載する電子部品を搬送する部品テープを特定する特定手段を備え、
前記電子部品フィーダは、複数の電子部品を各々供給するように複数設けられており、
前記記憶手段は、前記駆動モータの駆動パターンを、電子部品を搬送する部品テープごとに記憶しており、
前記モータ制御手段は、
前記特定手段により特定された部品テープに応じた駆動パターンを前記記憶手段より抽出し、当該抽出した駆動パターンで前記駆動モータを駆動制御することを特徴とする電子部品搭載装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子部品搭載装置において、
前記電子部品に作用する前記搬送動作における加速の向きと逆方向の慣性力により、前記電子部品を前記摩擦による摩擦力の作用方向と逆向きに移動させることで、前記電子部品を吸着領域における収容部の端部に位置させることを特徴とする電子部品搭載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−49350(P2011−49350A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196306(P2009−196306)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】