説明

電子部品

【課題】高い電磁ノイズ除去性能を得ることができる電子部品を提供する。
【解決手段】光コネクタ1は、ハウジング3と、一対のレンズ4と、一対の電子素子である光トランシーバ5を有する電子部品本体2と、電子部品本体2の上面と両方の側面と後面に配置されるシールドケース20と、光トランシーバ5の前面に配置され、シールドケース20に導通され、着脱自在に設けられ、導電性の金属板より形成されたオプションピン7とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドケースを有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来例の電子部品として、特許文献1に開示されたものがある。この電子部品である光コネクタ100は、図10及び図11に示すように、電子部品本体101と、この電子部品本体101の外周を被うシールドケース110とを備えている。電子部品本体101は、ハウジング102と、このハウジング102の仕切壁(図示せず)の一対の孔に挿入された一対のスリーブ103と、一対のスリーブ103に後方より挿入された一対の導光部材104と、一対の導光部材104の後面側に配置された光トランシーバ(FOT:Fiber Optical Transceiver)105とを備えている。
【0003】
シールドケース110は、三つの上面片部111aと一対の側面部111bと後面部111cとを備えている。一対の側面部111bと後面部111cの下端面には、複数のグランドピン111dが下方に向かって突設されている。
【0004】
シールドケース110は、下方面側のケース開口より電子部品本体101の外周に被せることによって電子部品本体101に装着されている。
【0005】
各グランドピン111dは、光トランシーバ105のリード部105aと共に、実装される基板(図示せず)の所定の導体部(図示せず)に半田付け等によって接続される。
【0006】
上記従来例では、各光トランシーバ105から外部に射出される電磁波、及び、外部から各光トランシーバ105に入射する電磁波をシールドケース110でシールドするため、電磁波に起因する悪影響を極力防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−111114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来例の光コネクタ100では、シールドケース110が電子部品本体101の両側の側面と後面の全域と共に一部上面を被っているだけなので、高い電磁ノイズ除去性能を得ることができないという問題がある。特に、通信速度が速くなると、従来のシールドケース110では電磁ノイズを有効に除去することができない。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、高い電磁ノイズ除去性能を得ることができる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電子素子を有する電子部品本体と、前記電子部品本体の上面と両方の側面と後面に配置されるシールドケースと、前記電子素子の前面に配置され、前記シールドケースに導通される補助シールド部材とを備えたことを特徴とする。
【0011】
前記補助シールド部材は、前記電子部品本体に着脱自在に設けることが好ましい。
【0012】
前記補助シールド部材は、アース用接続部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シールドケースが電子素子の上面側、両方の側面側及び後面側に配置されるのみならず、補助シールド部材が電子素子の前面側に配置されている。その上、シールドケースに補助シールド部材が導通し、シールドケースと補助シールド部材の全体でノイズ除去できる。以上より、高い電磁ノイズ除去性能が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示し、光コネクタの前面側からの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、光コネクタの後面側からの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、光コネクタの前面側からの分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、図2のA−A線断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、オプションピンの正面面である。
【図6】本発明の一実施形態を示し、光コネクタの底面側から見た斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態を示し、シールドケースとオプションピンの一部破断斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態を示し、シールドケースを電子部品本体の上方より装着する過程を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態を示し、オプションピンを電子部品本体の下面より装着する過程を示す斜視図である。
【図10】従来例の光コネクタの分解斜視図である。
【図11】従来例の光コネクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図3において、電子部品である光コネクタ1は、電子部品本体2と、この電子部品本体2の外周を覆うシールドケース20とを備えている。
【0017】
電子部品本体2は、ハウジング3と、一対のレンズ4と、一対の電子素子である光トランシーバ(FOT:Fiber Optical Transceiver)5と、電子素子カバー6と、補助シールド部材であるオプションピン7とを備えている。
【0018】
ハウジング3は、図4に示すように、内部に仕切壁30を有する。ハウジング3内には、この仕切壁30を境としてコネクタ嵌合室31と部品収容室32が設けられている。コネクタ嵌合室31には、相手側コネクタ(図示せず)が嵌合される。尚、図1〜図3では、コネクタ嵌合室31にダストキャップ8が装着された状態が示されている。ダストキャップ8は、相手コネクタ(図示せず)の未装着時に、コネクタ嵌合室31への塵埃等の侵入を防止するために使用される。
【0019】
仕切壁30には、コネクタ嵌合室31に向かって円筒状の光ファイバ位置決め部33が一対突出されている。相手側コネクタ(図示せず)が嵌合されると、相手側コネクタ(図示せず)の光ファイバ(図示せず)の先端部が光ファイバ位置決め部33によって位置決めされる。各光ファイバ位置決め部33の内部は、部品収容室32に貫通されている。
【0020】
ハウジング3の仕切壁30より部品収容室32側の底部には、ピン圧入スリット34が設けられている。ピン圧入スリット34は、部品収容室32の底面に開口している。ハウジング3の仕切壁30より部品収容室32側の上壁部には、センタースリット35が設けられている。センタースリット35は、部品収容室32の上面に開口している。
【0021】
図1〜図4において、一対のレンズ4は、各光ファイバ位置決め部33の開口に臨むようにして部品収容室32に配置されている。一対のレンズ4は、ハウジング3のセンタースリット35の延長線上の位置を少なくとも空けて並列配置されている。
【0022】
一対の光トランシーバ5は、各レンズ4の後端位置で部品収容室32に配置されている。一対の光トランシーバ5は、例えば一方が発光素子であり、他方が受光素子である。各光トランシーバ5は、下方に突出する複数のリード部5aを有する。各リード部5aは、実装する基板(図示せず)の対応する導体部に半田付け等によって接続される。一対の光トランシーバ5は、ハウジング3のセンタースリット35の延長線上の位置を少なくとも空けて並列配置されている。
【0023】
電子素子カバー6は、一対の光トランシーバ5の双方の後面に配置されている。電子素子カバー6は、ハウジング3に嵌合されている。電子素子カバー6によって一対の光トランシーバ5がハウジング3に固定されている。電子素子カバー6の中央位置には、カバー側スリット6cが設けられている。カバー側スリット6cは、電子素子カバー6の上端面に開口して下方に向かって垂直に延びているが、下端面にまで達していない。カバー側スリット6cは、ハウジング3のセンタースリット35の延長線上に位置する。つまり、ハウジング3のセンタースリット35及びその延長線上の空間を利用してシールドケース20の下記する仕切ケース部24が配置されている。
【0024】
各電子素子カバー6の後面には、位置規制部10,11がそれぞれ設けられている。
【0025】
図5〜図7に詳しく示すように、オプションピン7は、必要に応じて組み付けされるオプション部材である。オプションピン7は、導電性の金属板より形成されている。オプションピン7は、シールドプレート部7Aと、シールドプレート部7Aの下方に突出する複数のアース用接続部であるグランドピン部7Bとから構成されている。シールドプレート部7Aには、係止孔7aが形成されている。オプションピン7は、ハウジング3のピン圧入スリット34に圧入されている。オプションピン7は、その係止孔7aがシールドケース20の係止突部24bに係止することによってシールドケース20に導通されている。オプションピン7のシールドプレート部7Aは、一対の光トランシーバ5の前面に配置される(図4参照)。オプションピン7の各グランドピン部7Bは、実装する基板(図示せず)のアース用導体部に半田付け等によって接続される。又、オプションピン7は、係止孔7aと係止突部24b間の係止力とハウジング3への圧入力に抗して引き抜けば、取り外すことができる。つまり、オプションピン7は、電子部品本体2に着脱自在に設けられている。
【0026】
シールドケース20は、導電性の金属板を打ち抜き、折り曲げ加工して形成されている。シールドケース20は、下方面がケース開口20aとされた略箱状である。シールドケース20は、上面ケース部21と左右の側面ケース部22と後面ケース部23を有すると共に、内部の後方を中央で仕切るように配置された仕切ケース部24とを備えている。後面ケース部23は、2枚の分割された分割ケース片部25,26より構成されている。仕切ケース部24は、2枚の分割ケース片部25,26の少なくとも一方の中央側の端面より折り曲げることによって形成されている。仕切ケース部24の先端面には、係止突部24bが設けられている。
【0027】
各側面ケース部22と仕切ケース部24と各分割ケース片部25,26の下端には、アース用接続部であるグランドピン22a,24a,25a,26aが下方に向かって突設されている。各グランドピン22a,24a,25a,26aは、実装する基板(図示せず)のアース用導体部に半田付け等によって接続される。
【0028】
左右の側面ケース部22には、内側への折り曲げによって係止爪22bがそれぞれ設けられている。各係止爪22bはハウジング3に係止されている。これによって、シールドケース20は電子部品本体2より外れないようになっている。
【0029】
次に、シールドケース20の装着作業を説明する。図8に示すように、シールドケース20を、そのケース開口20a側より電子部品本体2に被せる。すると、シールドケース20の両方の側面ケース部22及び後面ケース部23が電子部品本体2の外周を徐々に被うと共に、仕切ケース部24がハウジング3のセンタースリット35より部品収容室32に入り込む。そして、シールドケース20の上面ケース部21が電子部品本体2の上面に当接する位置まで被せると、各係止爪22bがハウジング3に係止される。又、仕切ケース部24の下端面が電子素子カバー6のカバー側スリット6cの下端近くまで入り込み、仕切ケース部24が一対の光トランシーバ5の間を仕切る。
【0030】
オプションピン7を装着する場合には、図9に示すように、ハウジング3のピン圧入スリット34よりオプションピン7を圧入する。圧入完了位置まで圧入すると、オプションピン7の係止孔7aに仕切ケース部24の係止突部24bが係止する。オプションピン7のシールドプレート部7Aは、各光トランシーバ5の前面に配置される(図4参照)。
【0031】
光コネクタ1の基板実装時に、各光トランシーバ5のリード部5aと、シールドケース20の各グランドピン22a,24a,25a,26aと、オプションピン7のグランドピン部7Bは、基板(図示せず)の対応する導体部に半田付け等によって接続される。
【0032】
上記構成において、各光トランシーバ5は、その上面側、両方の側面側及び後面側にシールドケース20が配置されるのみならず、その前面側にオプションピン7のシールドプレート部7Aが配置されている。その上、シールドケース20にオプションピン7が導通し、シールドケース20とオプションピン7の全体でノイズ除去できる。以上より、高い電磁ノイズ除去性能が得られる。
【0033】
一対の光トランシーバ5の間は、仕切ケース部24によって仕切られるので、一対の光トランシーバ5間の互いの電磁ノイズによる悪影響をも防止できる。
【0034】
オプションピン7は、電子部品本体2に着脱自在に設けられている。従って、必要のないときには、電子部品本体2に装着しなくて良い。又、電子部品本体2に装着されたオプションピン7は、解体時に容易に取り外すことができるため、容易解体性を考えた環境への配慮に優れている。
【0035】
オプションピン7は、グランドピン部7Bを有するので、ノイズ除去性能が向上する。
【0036】
尚、この実施形態では、電子部品は光コネクタ1であるが、本発明は、光コネクタ1以外の電子部品にも適用できるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0037】
1 光コネクタ(電子部品)
2 電子部品本体
5 光トランシーバ(電子素子)
7 オプションピン(補助シールド部材)
7B グランドピン部(アース用接続部)
20 シールドケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子を有する電子部品本体と、
前記電子部品本体の上面と両方の側面と後面に配置されるシールドケースと、
前記電子素子の前面に配置され、前記シールドケースに導通される補助シールド部材とを備えたことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
請求項1記載の電子部品であって、
前記補助シールド部材は、前記電子部品本体に着脱自在に設けられたことを特徴とする電子部品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の電子部品であって、
前記補助シールド部材は、アース用接続部を有することを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−9750(P2012−9750A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146290(P2010−146290)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】