説明

電子鍵盤楽器

【課題】電子オルガンなどの電子鍵盤楽器が備える鍵盤蓋が鍵盤および鍵盤の近傍に設置されたCDドライブなどの入出力部を覆うように閉じる際に、鍵盤蓋が入出力部や入出力部とデータの入出力可能な電子機器、メディアと接触するのを回避すること。
【解決手段】蓋検出センサ32からの出力信号に基づき鍵盤蓋40がケース44内から前方に引き出されたことを検出した場合に、CDドライブからの出力信号に基づきCDドライブのトレイ31aが装置外部に排出されていると判断したときには、鍵盤蓋40とトレイ31aとの接触が発生する可能性があると判断して、トレイ31aを装置内部へ収納するよう指示する指示信号をCDドライブの制御部に対して送信する。CDドライブでは、トレイ31aが装置外部に排出されているときには、受信した指示信号に応じて、トレイ31aを装置内部へ収納させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子オルガンなどの電子鍵盤楽器が備える鍵盤蓋が鍵盤および鍵盤の近傍に設置されたCDドライブなどの入出力部を覆うように閉じる際に、鍵盤蓋が入出力部や入出力部とデータの入出力可能な電子機器、メディアと接触するのを回避する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子オルガンなどの電子鍵盤楽器が備える鍵盤や操作パネルを不使用時に覆って保護する鍵盤蓋が知られている。
この種の鍵盤蓋には、特許文献1に例示されるようなスライド式の鍵盤蓋がある。このスライド式の鍵盤蓋は、演奏者から見て前後方向に並ぶ多数の細長い板状の蓋部材が蝶番により互いに連結されて構成され、不使用時には前方に引き出されて鍵盤および操作パネルを覆って閉じられ、使用時には開放されてガイドに沿って楽器本体のケース内に収納される。
【特許文献1】実開平06−2783号(第4頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、電子鍵盤楽器の中には、鍵盤の近傍や操作パネルの近傍にCDドライブを備えるものがある。このCDドライブの中には、コンパクトディスクを載置可能なトレイを有し、コンパクトディスクを出し入れする際にはトレイを装置外部に排出させ、コンパクトディスクを再生する際にはトレイを装置内部に収納するようになっているものがある。なお、このようなトレイの出し入れについては、CDドライブが備える操作スイッチから指示することもできるし、電子鍵盤楽器の操作パネルから遠隔で指示することもできる。
【0004】
しかしながら、CDドライブのトレイが装置外部に排出された状態である場合に鍵盤蓋を閉蓋させると、移動する鍵盤蓋がCDドライブのトレイに接触するおそれがあった。なお、このようなことはCDドライブを備える場合に限られず、DVDドライブなどの出し入れ可能なトレイを有する機器を備える場合においても同様である。
【0005】
また、コンパクトディスクを挿入口から装置内部へ挿入可能なCDドライブからコンパクトディスクが排出されたままになっている場合や、フロッピーディスク(登録商標)を挿入口から装置内部へ挿入可能なFDドライブからフロッピーディスク(登録商標)が排出されたままになっている場合などでも同様である。
【0006】
また、電子鍵盤楽器の中には、鍵盤近傍にヘッドフォン用出力端子を備えるものがあるが、このようなヘッドフォン用出力端子にヘッドフォンのジャックが挿入された状態である場合に鍵盤蓋を閉蓋させると、移動する鍵盤蓋がヘッドフォンのジャックに接触したりヘッドフォンのコードを挟んだりするおそれがあった。なお、このようなことはヘッドフォン用出力端子を備える場合に限られず、USB端子などの端子類を備える場合でも同様である。
【0007】
なお、このような問題が生じるのは、上述のような多数の蓋部材が蝶番により互いに連結されて構成される鍵盤蓋を備える場合に限られず、例えば、鍵盤および操作パネルの前方側を覆う板状の前蓋と後方側を覆う板状の後蓋とを蝶番で連結した構造を有する鍵盤蓋を備える場合や、回動軸によって楽器本体の蓋支持部に回動可能に支持された鍵盤蓋を備える場合においても同様の問題が生じていた。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、電子オルガンなどの電子鍵盤楽器が備える鍵盤蓋が鍵盤および鍵盤の近傍に設置されたCDドライブなどの入出力部を覆うように閉じる際に、鍵盤蓋が入出力部や入出力部とデータの入出力可能な電子機器、メディアと接触するのを回避する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る電子鍵盤楽器(1:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための最良の形態」欄で用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、演奏者から見て左右方向に並ぶ複数の鍵(210)を有する鍵盤(20)を備え、前記鍵盤に対する前記演奏者による押鍵動作に応じた楽音を発生する電子鍵盤楽器であって、前記鍵盤の近傍に設置され、電子機器またはメディアとの間でデータを入出力する入出力部(31,35)と、前記鍵盤および前記入出力部の上方を覆う位置である閉蓋位置と前記鍵盤および前記入出力部の上方を開放する位置である開蓋位置との間を移動可能な鍵盤蓋(40)と、前記閉蓋位置と前記開蓋位置との間で前記鍵盤蓋を案内する鍵盤蓋案内部(43)と、前記開蓋位置から前記閉蓋位置へ移動する前記鍵盤蓋を検出可能な鍵盤蓋検出手段(32)と、前記鍵盤蓋検出手段によって前記開蓋位置から前記閉蓋位置へ移動する前記鍵盤蓋が検出された場合に、前記開蓋位置から前記閉蓋位置へ移動する前記鍵盤蓋と前記入出力部、前記電子機器または前記メディアの少なくとも何れか一つとの接触が発生する可能性があるか否かを判断する接触判断手段(10)と、前記接触判断手段によって前記接触が発生する可能性があると判断された場合に、前記接触の発生を回避するための回避動作を実行する回避動作実行手段(10)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このように構成された本発明の電子鍵盤楽器によれば、鍵盤蓋検出手段によって開蓋位置から閉蓋位置へ移動する鍵盤蓋が検出された場合には、接触判断手段が、開蓋位置から閉蓋位置へ移動する鍵盤蓋と入出力部、電子機器またはメディアの少なくとも何れか一つとの接触が発生する可能性があるか否かを判断し、接触判断手段によって前記接触が発生する可能性があると判断された場合には、回避動作実行手段が、前記接触の発生を回避するための回避動作を実行する。つまり、閉蓋中の鍵盤蓋と入出力部などとの接触が発生する可能性があるときには、前記接触を回避するための回避動作を実行する。
【0011】
したがって、電子オルガンなどの電子鍵盤楽器が備える鍵盤蓋が鍵盤および鍵盤の近傍に設置されたCDドライブなどの入出力部を覆うように閉じる際に、鍵盤蓋が入出力部や電子機器、メディアと接触するのを回避することができる。
【0012】
なお、入出力部の具体例としては、CDドライブやDVDドライブ、FDドライブ、ヘッドフォン用出力端子、USB用入出力端子などが挙げられる。また、電子機器の具体例としては、入出力部としてのヘッドフォン用出力端子に接続されたヘッドフォンのコードおよびジャックや、USB用入出力端子に接続されたUSBメモリなどが挙げられる。また、メディアの具体例としては、CDドライブから排出された状態のコンパクトディスクやCDドライブから排出された状態のDVDディスク、FDドライブから排出された状態のフロッピーディスク(登録商標)などが挙げられる。
【0013】
また、上述の回避動作の具体例としては、次の(イ)〜(ニ)のような動作が挙げられる。
(イ)まず、回避動作の具体例としては、上述のような接触の発生を回避するよう促す旨の警告音を放音することが挙げられる。具体的には、請求項2のように、回避動作実行手段が、電子音を放音可能な放音手段(19)を有し、回避動作として、前記接触の発生を回避するよう促す旨の警告音を放音手段に放音させることが考えられる。一例を挙げると、ブザー音を放音することや、音声による警告メッセージを放音することなどが挙げられる。このようにすれば、利用者に対して前記接触の発生を回避するよう促すことができる。
【0014】
(ロ)また、回避動作の具体例としては、上述のような接触の発生を回避するよう促す旨の情報を表示することが考えられる。具体的には、請求項3のように、回避動作実行手段が、各種情報を表示可能な表示手段(330)を有し、回避動作として、前記接触の発生を回避するよう促す旨の情報を表示手段に表示させることが考えられる。このようにすれば、利用者に対して前記接触の発生を回避するよう促すことができる。
【0015】
(ハ)また、回避動作の具体例としては、鍵盤蓋が閉蓋位置へ移動するのを規制することが考えられる。具体的には、請求項4のように、回避動作実行手段が、鍵盤蓋が閉蓋位置へ移動するのを規制可能な規制手段(34,134)を有し、回避動作として、鍵盤蓋が閉蓋位置へ移動するのを規制手段によって規制することが考えられる。このようにすれば、鍵盤蓋が閉蓋位置へ移動するのを規制することで、前記接触の発生を回避することができる。
【0016】
(ハ−1)より具体的には、規制手段が開蓋位置と閉蓋位置との間に移動可能であり、回避動作実行手段が、回避動作として、規制手段を開蓋位置と閉蓋位置との間に移動させることで、鍵盤蓋が閉蓋位置へ移動するのを規制することが考えられる(請求項5)。一例を挙げると、ソレノイドの先端部を開蓋位置と閉蓋位置との間に移動可能に配置するといった具合である。このようにすれば、鍵盤蓋が閉蓋位置へ移動するのを停止させることで、前記接触の発生を回避することができる。
【0017】
(ハ−2)また、規制手段が、開蓋位置から閉蓋位置へ移動する鍵盤蓋に当接可能であり、回避動作実行手段が、回避動作として、開蓋位置から閉蓋位置へ移動する鍵盤蓋に規制手段を当接させることで、鍵盤蓋が閉蓋位置へ移動するのを規制することが考えられる(請求項6)。一例を挙げると、ゴム製のブレーキ部材を開蓋位置から閉蓋位置へ移動する鍵盤蓋へ押し付けるようにするといった具合である。このようにすれば、規制手段が鍵盤蓋に当接することで、規制手段と移動する鍵盤蓋との間の摩擦係数が大きくなって抵抗が生じ、鍵盤蓋が移動する速度が遅くなるとともに、利用者の手に伝わる鍵盤蓋の質感が変化するので、利用者に前記接触が発生する可能性があることを知らせることができ、利用者に対して前記接触の発生を回避するよう促すことができる。さらに、規制手段を鍵盤蓋に強く当接させれば、鍵盤蓋が閉蓋位置へ移動するのを停止させることもでき、前記接触の発生を回避することができる。
【0018】
(ニ)また、回避動作の具体例としては、入出力部の可動部を収納位置へ移動させるよう指示することが考えられる。具体的には、請求項7のように、入出力部(31)が、入出力部の内部に収納される収納位置と入出力部の外部に排出される排出位置との間で移動可能な可動部(31a)と、可動部を収納位置と排出位置との間で移動させる制御部(31b)と、を有し、回避動作実行手段が、回避動作として、可動部を収納位置へ移動させるよう指示する指示信号を入出力部の制御部に対して出力し、入出力部の制御部が、可動部が排出位置にある場合には、指示信号に応じて可動部を収納位置へ移動させることが考えられる。このようにすれば、前記接触の発生を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[第一実施形態]
図1(a)は電子オルガン1の構成を示すブロック図であり、図1(b)は電子オルガン1の鍵盤10を上方から見た外観図であり、図1(c)は図1(b)における操作パネル30を拡大して示す説明図である。
【0020】
[電子オルガン1の構成の説明]
電子鍵盤楽器としての電子オルガン1は、図1(a)に示すように、CPU10、各種処理をCPU10が実行するためのプログラムなどが記憶されているROM11、各種情報を一時記憶するRAM12、音源回路(TGとも称する。)14、波形メモリ15、デジタル信号処理回路(DSPとも称する。)16、D/A変換回路(D/Aとも称する。)17、スピーカ出力回路18、スピーカ19、鍵盤20、操作パネル30、CDドライブ31、鍵盤蓋40(図2参照)、蓋検出センサ32、駆動回路33、蓋ストッパ34、ヘッドフォン用出力端子35、ヘッドフォン検出センサ36、およびシステムバス50を備える。また、これらのうち、CPU10、ROM11、RAM12、TG14、DSP16、鍵盤20、操作パネル30、CDドライブ31、蓋検出センサ32、駆動回路33、ヘッドフォン用出力端子35およびヘッドフォン検出センサ36は、システムバス50によりそれぞれデータ送受信可能に接続されている。
【0021】
波形メモリ15は、例えばROMなどの読み出し専用メモリから構成されており、種々の音色を実現するべく、各音色、各鍵域、押鍵速度等に対応した種々の波形データを記憶する。
【0022】
TG14は、種々の波形データを格納している波形メモリ15から読み込んだ波形データに基づいて楽音波形及び効果音波形を生成してDSP16に出力する。
DSP16は、TG14によって出力された楽音波形及び効果音波形にエフェクト付与してD/A17に出力する。
【0023】
D/A17は、DSP16が出力するエフェクト付与された楽音波形及び効果音波形に関するデジタル信号をアナログ信号に変換してスピーカ出力回路18に出力する。
スピーカ出力回路18は、D/A17によって出力されたアナログ信号を増幅してスピーカ19に出力する。
【0024】
スピーカ19は、例えばコーンスピーカなどの音声出力装置から構成されており、スピーカ出力回路18から出力されたアナログ信号に基づいて楽音を出力する。なお、スピーカ19は放音手段に該当する。
【0025】
鍵盤20は、図1(b)に示すように、出力すべき楽音の音高を選択するための複数の鍵210を前後二段に備えている。各鍵210に対応して番号(キーコード)が付与されている。このキーコードは、楽音の音高を指定する。また、鍵盤20には、各鍵210に対応して、その鍵210の押鍵・離鍵を検出するための鍵スイッチ(図示せず)が設けられている。この鍵スイッチは、接点を備えており、押鍵の場合には接点がオンされ、一方、離鍵の場合には接点がオフされるように構成されている。鍵スイッチの接点がオンまたはオフされた旨の情報は、内蔵するスキャン回路が各鍵スイッチをスキャンすることにより検出され、そのキーコードとともに、システムバス50に送出される。
【0026】
操作パネル30は、図1(c)に示すように、入力パネル310および表示手段としての表示パネル330を備えている。この操作パネル30は、鍵盤20の後方に配置されている。このうち、入力パネル310は、電子オルガン1に各種の情報、指令を入力するための複数の操作子320から構成されている。複数の操作子320として、例えば楽音の音色の種類を選択するための音色スイッチ、エフェクトを選択するためのエフェクトスイッチ、ボリュームコントローラなどが設けられている。入力パネル310の操作子320が操作された旨の情報は、内蔵するスキャン回路が各操作子320をスキャンすることにより検出され、システムバス50に送出される。また、表示パネル330は、例えば液晶ディスプレイなどの画像表示装置から構成されており、CPU10の指示を受けて各種案内情報などを表示する。
【0027】
CDドライブ31は、図1(b)に示すように、メディアとしてのコンパクトディスクに記憶された音楽データを当該電子オルガン1に入力したり音楽データをコンパクトディスクを書き込んだりするための装置であり、本実施形態では鍵盤20の左側に設置されている。また、CDドライブ31は、コンパクトディスクを載置するためのトレイ31aを有している。このトレイ31aは、制御部31bに制御されて、装置内部(収納位置)に収納することや、装置外部(排出位置)に排出することが可能に構成されている。また、制御部31bは、トレイ31aが装置内部に収納されていることや装置外部に排出されていることを示す信号をシステムバス50に送出する。また、制御部31bは、操作パネル30やCPU10からの指示信号に基づき、トレイ31aを装置内部に収納させたり装置外部に排出させたりすることができる。なお、CDドライブ31は入出力部に該当し、トレイ31aは可動部に該当する。
【0028】
図2に示すように、鍵盤蓋40は、演奏者から見て前後方向に並ぶ多数の細長い板状の蓋部材41が蝶番(図示省略)により互いに連結されて構成され、不使用時には前方に引き出されて鍵盤20および操作パネル30を覆って閉じられ(閉蓋位置)、使用時には開放されて鍵盤蓋案内部としてのガイド43に沿ってケース44内に収納される(開蓋位置)。なお、図2では、鍵盤蓋40との位置関係を示すために、2段に構成された鍵盤20および操作パネル30を破線で図示し、装置外部に排出されたCDドライブ30のトレイ31aを一点鎖線で図示する。
【0029】
蓋検出センサ32は、ケース44内に収納される鍵盤蓋40の先頭部分の近傍に配置され、ケース44から前方に引き出され始めた鍵盤蓋40を検出可能である。なお、蓋検出センサ32の具体例としては、磁気感知式のホールセンサや光感知センサ、静電容量センサなどが挙げられる。より具体的には、蓋検出センサ32としてのホールセンサは、閉蓋位置へ移動する鍵盤蓋40の先頭部分に取り付けた磁石が発生させる磁気を検出し、蓋検出センサ32としての光感知センサは、閉蓋位置へ移動する鍵盤蓋40の先頭部分によって光が遮られたことを検出し、蓋検出センサ32としての静電容量センサは、閉蓋位置へ移動する鍵盤蓋40の先頭部分と接近したことを検出するといった具合である。
なお、蓋検出センサ32は、鍵盤蓋検出手段に該当する。
【0030】
蓋ストッパ34は、CPU10から送信された指示信号に応じて駆動回路33に制御されて、ケース44内に収納される鍵盤蓋40の前方にその先端が突出するよう配置されたソレノイドである。なお、蓋ストッパ34は規制手段に該当する。
【0031】
ヘッドフォン用出力端子35は、電子機器としてのヘッドフォンのジャック37を挿入可能な端子であり、図1(b)に示すように本実施形態では鍵盤20の右側に設置されている。ヘッドフォン用出力端子35は、楽曲信号を、ジャック37を介してヘッドフォンへ出力可能である。なお、ヘッドフォン用出力端子35は入出力部に該当する。
【0032】
ヘッドフォン検出センサ36は、ヘッドフォン用出力端子35に挿入されたジャック37を検出可能である。なお、ヘッドフォン検出センサ36の具体例としては、接触センサや光センサなどが挙げられる。より具体的には、ヘッドフォン検出センサ36としての接触センサは、ヘッドフォン用出力端子35に挿入されたジャック37に接触したときにジャック37を検出し、ヘッドフォン検出センサ36としての光センサは、ヘッドフォン用出力端子35に差し込む光がヘッドフォン用出力端子35に挿入されたジャック37によって遮られたことを検出するといった具合である。
【0033】
図1(a)に示すように、CPU10は、ROM11内に記憶されたプログラムに従って各種処理を実行する。また、CPU10は、上述した鍵盤20によってシステムバス50に送出された鍵スイッチの接点がオン又はオフされた旨の情報及びキーコードを取り込み、RAM12に記憶する。さらに、CPU10は、上述した操作パネル30によってシステムバス50に送出された入力パネルの操作子が操作された旨の情報を取り込む。また、CPU10は、後述する接触回避動作(1)および接触回避動作(2)を実行する。
【0034】
なお、CPU10は、接触判断手段および回避動作実行手段に該当する。
[接触回避動作(1)の説明]
次に、CPU30が実行する接触回避動作(1)について説明する。
【0035】
この接触回避動作(1)は、CDドライブ31のトレイ31aが装置外部に排出されている場合に、ケース44内から前方に引き出された鍵盤蓋40とトレイ31aとの接触を回避するために実行される。
【0036】
まず、蓋検出センサ32からの出力信号に基づき、鍵盤蓋40がケース44内から前方に引き出されたことを検出する。続いて、CDドライブ31からの出力信号に基づき、CDドライブ31のトレイ31aが装置内部に収納されているか装置外部に排出されているかを判断する。そして、鍵盤蓋40がケース44内から前方に引き出されたことを検出した場合に、CDドライブ31のトレイ31aが装置外部に排出されていると判断したときには、鍵盤蓋40とトレイ31aとの接触が発生する可能性があると判断して、次の(1−1)〜(1−4)のような前記接触の発生を回避するための回避動作を状況に応じて組み合わせて実行する。
【0037】
(1−1)CDドライブ31のトレイ31aを装置内部に収納させる。具体的には、CPU10が、トレイ31aを装置内部へ収納するよう指示する指示信号をCDドライブ31の制御部31bに対して送信する。一方、CDドライブ31では、トレイ31aが装置外部に排出されているときには、受信した指示信号に応じて、トレイ31aを装置内部へ収納させる。このようにすれば、前記接触の発生を回避することができる。
【0038】
(1−2)警告音を出力する。具体的には、前記接触の発生を回避するよう促す旨の警告音をスピーカ19から放音させる。一例を挙げると、ブザー音を放音することや、音声による警告メッセージを放音することなどが挙げられる。このようにすれば、利用者に対して前記接触の発生を回避するよう促すことができる。
【0039】
(1−3)警告メッセージを表示する。具体的には、前記接触の発生を回避するよう促す旨の情報を操作パネル30の表示パネル330に表示させる。このようにすれば、利用者に対して前記接触の発生を回避するよう促すことができる。
【0040】
(1−4)鍵盤蓋40を停止させる。具体的には、駆動回路33を介して蓋ストッパ34を制御し、蓋ストッパ34をケース44内に収納される鍵盤蓋40の前方に突出させる。このようにすれば、鍵盤蓋40が閉蓋位置へ移動するのを停止させることで、前記接触の発生を回避することができる。
【0041】
[接触回避動作(2)の説明]
次に、CPU30が実行する接触回避動作(2)について説明する。
この接触回避動作(2)は、ヘッドフォン用出力端子35にヘッドフォンのジャック37が挿入されている場合に、ケース44内から前方に引き出された鍵盤蓋40とヘッドフォンのジャック37とが接触したり鍵盤蓋40がヘッドフォンのコードを挟んだりすることを回避するために実行される。なお、以下の説明では、ケース44内から前方に引き出された鍵盤蓋40とヘッドフォンのジャック37とが接触すること、および鍵盤蓋40がヘッドフォンのコードを挟むことを含めて「接触」と表現する。
【0042】
まず、蓋検出センサ32からの出力信号に基づき、鍵盤蓋40がケース44内から前方に引き出されたことを検出する。続いて、ヘッドフォン検出センサ36からの出力信号に基づき、ヘッドフォン用出力端子35にジャック37が挿入されているか否かを判断する。そして、鍵盤蓋40がケース44内から前方に引き出されたことを検出した場合に、ヘッドフォン用出力端子35にジャック37が挿入されていると判断したときには、前記接触が発生する可能性があると判断して、上述の(1−2)〜(1−4)のような前記接触の発生を回避するための回避動作を状況に応じて組み合わせて実行する。
【0043】
[第一実施形態の効果]
(1)このように第一実施形態の電子オルガン1によれば、CPU30が、鍵盤蓋40がケース44内から前方に引き出されたことを検出した場合に、CDドライブ31のトレイ31aが装置外部に排出されているときには、鍵盤蓋40とトレイ31aとの接触が発生する可能性があると判断して、上述の(1−1)〜(1−4)のような前記接触の発生を回避するための回避動作を実行する。
【0044】
このことにより、電子オルガン1が備える鍵盤蓋40が鍵盤20および鍵盤20の近傍に設置されたCDドライブ31を覆うように閉じる際に、鍵盤蓋40がCDドライブ31のトレイ31aやコンパクトディスクと接触するのを回避することができる。
【0045】
(2)また、第一実施形態の電子オルガン1によれば、CPU30が、鍵盤蓋40がケース44内から前方に引き出されたことを検出した場合に、ヘッドフォン用出力端子35にジャック37が挿入されているときには、鍵盤蓋40とヘッドフォンのジャック37との接触や、鍵盤蓋40がヘッドフォンのコードを挟むこと(以下接触)が発生する可能性があると判断して、上述の(1−2)〜(1−4)のような前記接触の発生を回避するための回避動作を実行する。
【0046】
このことにより、電子オルガン1が備える鍵盤蓋40が鍵盤20および鍵盤20の近傍に設置されたCDドライブ31を覆うように閉じる際に、鍵盤蓋40がヘッドフォン用出力端子35に挿入されたヘッドフォンのジャック37やヘッドフォンのコードと接触するのを回避することができる。
【0047】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0048】
(1)上記実施形態では、CPU10が、鍵盤蓋40を停止させるために駆動回路33を介して蓋ストッパ34を制御し、蓋ストッパ34を鍵盤蓋40の前方に突出させるが、これには限られず、蓋ストッパ34を鍵盤蓋40の側面などに押し付けるように当接させてもよい。一例を挙げると、蓋ストッパ34をゴム製のブレーキ部材として構成するといった具合である。このようにすれば、蓋ストッパ34が鍵盤蓋40に当接することで、蓋ストッパ34と移動する鍵盤蓋40との間の摩擦係数が大きくなって抵抗が生じ、鍵盤蓋40が移動する速度が遅くなるとともに、利用者の手に伝わる鍵盤蓋40の質感が変化するので、利用者に前記接触が発生する可能性があることを知らせることができ、利用者に対して前記接触の発生を回避するよう促すことができる。また、蓋ストッパ34を鍵盤蓋40により強く当接させれば、鍵盤蓋40が閉蓋位置へ移動するのを停止させることもでき、前記接触の発生を回避することができる。
【0049】
(2)上記実施形態では、本発明を、演奏者から見て前後方向に並ぶ多数の細長い板状の蓋部材41が蝶番(図示省略)により互いに連結されて構成された鍵盤蓋40に適用した例を挙げたが、これには限られない。例えば、鍵盤の前方側を覆う板状の前蓋と後方側を覆う板状の後蓋とを蝶番で連結した構造を有する鍵盤蓋に本発明を適用してもよい。この場合、蓋検出センサ32については、ケース内に収納される鍵盤蓋の前蓋の先頭部分の近傍に配置し、ケースから前方に引き出され始めた鍵盤蓋の前蓋を検出可能にすることが考えられる。
【0050】
また、鍵盤蓋案内部としての回動軸によって楽器本体の蓋支持部に回動可能に支持された鍵盤蓋に本発明を適用してもよい。この場合、蓋検出センサ32については、閉蓋位置にある鍵盤蓋の後端部付近に配置し、開蓋位置へ向けて回動を始めた鍵盤蓋の後端部を検出可能にすることが考えられる。
【0051】
(3)上記実施形態では、鍵盤20の近傍に設置される入出力部の具体例としてCDドライブおよびヘッドフォン用出力端子を挙げたが、これには限られない。入出力部の具体例としては、上述のCDドライブやDVDドライブ、FDドライブ、ヘッドフォン用出力端子、USB用入出力端子などが挙げられる。また、電子機器の具体例としては、入出力部としてのヘッドフォン用出力端子に接続されたヘッドフォンのコードおよびジャックや、USB用入出力端子に接続されたUSBメモリなどが挙げられる。また、メディアの具体例としては、CDドライブから排出された状態のコンパクトディスクやCDドライブから排出された状態のDVDディスク、FDドライブから排出された状態のフロッピーディスク(登録商標)などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は電子オルガンの構成を示すブロック図であり、(b)は電子オルガンの鍵盤を上方から見た外観図であり、(c)は図1(b)における操作パネルを拡大して示す説明図である。
【図2】電子オルガンの側断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…電子オルガン、10…鍵盤、11…ROM、12…RAM、14…音源回路(TG)、15…波形メモリ、16…デジタル信号処理回路(DSP)、17…D/A変換回路(D/A)、18…スピーカ出力回路、19…スピーカ、20…鍵盤、30…操作パネル、31…CDドライブ、31a…CDドライブのトレイ、31b…CDドライブの制御部、32…蓋検出センサ、33…駆動回路、34…蓋ストッパ、35…ヘッドフォン用出力端子、36…ヘッドフォン検出センサ、37…ヘッドフォンのジャック、40…鍵盤蓋、41…蓋部材、43…ガイド、44…ケース、50…システムバス、210…鍵、310…入力パネル、320…操作子、330…表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者から見て左右方向に並ぶ複数の鍵を有する鍵盤を備え、前記鍵盤に対する前記演奏者による押鍵動作に応じて電子音を発生させる電子鍵盤楽器であって、
前記鍵盤の近傍に設置され、電子機器またはメディアとの間でデータを入出力する入出力部と、
前記鍵盤および前記入出力部の上方を覆う位置である閉蓋位置と前記鍵盤および前記入出力部の上方を開放する位置である開蓋位置との間を移動可能な鍵盤蓋と、
前記閉蓋位置と前記開蓋位置との間で前記鍵盤蓋を案内する鍵盤蓋案内部と、
前記開蓋位置から前記閉蓋位置へ移動する前記鍵盤蓋を検出可能な鍵盤蓋検出手段と、
前記鍵盤蓋検出手段によって前記開蓋位置から前記閉蓋位置へ移動する前記鍵盤蓋が検出された場合に、前記開蓋位置から前記閉蓋位置へ移動する前記鍵盤蓋と前記入出力部、前記電子機器または前記メディアの少なくとも何れか一つとの接触が発生する可能性があるか否かを判断する接触判断手段と、
前記接触判断手段によって前記接触が発生する可能性があると判断された場合に、前記接触の発生を回避するための回避動作を実行する回避動作実行手段と、
を備えることを特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子鍵盤楽器において、
前記回避動作実行手段は、電子音を放音可能な放音手段を有し、前記回避動作として、前記接触の発生を回避するよう促す旨の警告音を前記放音手段に放音させることを特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子鍵盤楽器において、
前記回避動作実行手段は、各種情報を表示可能な表示手段を有し、前記回避動作として、前記接触の発生を回避するよう促す旨の情報を前記表示手段に表示させることを特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の電子鍵盤楽器において、
前記回避動作実行手段は、前記鍵盤蓋が前記閉蓋位置へ移動するのを規制可能な規制手段を有し、前記回避動作として、前記鍵盤蓋が前記閉蓋位置へ移動するのを前記規制手段によって規制することを特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子鍵盤楽器において、
前記規制手段は、前記開蓋位置と前記閉蓋位置との間に移動可能であり、
前記回避動作実行手段は、前記回避動作として、前記規制手段を前記開蓋位置と前記閉蓋位置との間に移動させることで、前記鍵盤蓋が前記閉蓋位置へ移動するのを規制すること
を特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項6】
請求項4に記載の電子鍵盤楽器において、
前記規制手段は、前記開蓋位置から前記閉蓋位置へ移動する前記鍵盤蓋に当接可能であり、
前記回避動作実行手段は、前記回避動作として、前記開蓋位置から前記閉蓋位置へ移動する前記鍵盤蓋に前記規制手段を当接させることで、前記鍵盤蓋が前記閉蓋位置へ移動するのを規制すること
を特徴とする電子鍵盤楽器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れかに記載の電子鍵盤楽器において、
前記入出力部は、前記入出力部の内部に収納される収納位置と前記入出力部の外部に排出される排出位置との間で移動可能な可動部と、前記可動部を前記収納位置と前記排出位置との間で移動させる制御部と、を有し、
前記回避動作実行手段は、前記回避動作として、前記可動部を前記収納位置へ移動させるよう指示する指示信号を前記入出力部の前記制御部に対して出力し、
前記入出力部の前記制御部は、前記可動部が前記排出位置にある場合には、前記指示信号に応じて前記可動部を前記収納位置へ移動させること
を特徴とする電子鍵盤楽器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−244510(P2009−244510A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89791(P2008−89791)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】